電気工事用多機能工具及びカバー
【課題】多数種の工具が夫々有する機能を1つの工具にまとめるとともに、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる電気工事用多機能工具及びカバーを提供する。
【解決手段】二本のアーム11の中間部適所をヒンジ部14にて回動自在に軸支し、各アームのヒンジ部よりも後方部を把持部3とし、ヒンジ部よりも前方部をヘッド部2とした洋鋏状の電気工事用多機能工具1であって、ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面には、圧着端子を圧着するためのカシメ部20と、被覆線を切断するワイヤカッター30と、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパー40が前後方向位置を異ならせて配置されており、一方のアームの先端部の非対向面にはヤスリ部52を備え、他方のアームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材51を備え、少なくとも一方のアームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛り53を備えている。
【解決手段】二本のアーム11の中間部適所をヒンジ部14にて回動自在に軸支し、各アームのヒンジ部よりも後方部を把持部3とし、ヒンジ部よりも前方部をヘッド部2とした洋鋏状の電気工事用多機能工具1であって、ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面には、圧着端子を圧着するためのカシメ部20と、被覆線を切断するワイヤカッター30と、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパー40が前後方向位置を異ならせて配置されており、一方のアームの先端部の非対向面にはヤスリ部52を備え、他方のアームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材51を備え、少なくとも一方のアームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛り53を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工事の際に使用する電気工事用多機能工具及びそのカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
送配電設備の設置、修繕等の電気工事には様々な工具が必要である。例えば、2本の被覆線を接続するには、被覆線の被覆層を剥ぎ取り加工する電工ナイフ、被覆線を必要な長さに切断するペンチ、リングスリーブ(圧着端子)を用いて2本の被覆線を圧着接続する圧着ペンチ、切断すべき被覆線の長さや剥離すべき被覆層の長さを測定するメジャー等が必要である。
作業員はこれらの工具を腰袋に収容して、作業現場となる電柱や鉄塔等の高所に昇る必要がある。時には工具の総重量が20kgを超え、昇降動作だけでも重労働となっていた。
複数の工具を一つにまとめ軽量化を図った従来例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、プライヤー、ペンチ、カッター、ナイフ及びハンマの他、ドライバやボックスレンチを取り付けるソケットを備えた万能手動工具が記載されている。1つの工具に複数の機能を備えているため、携帯や保管に便利で作業性に優れるという長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−20278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の工具は複数の機能を備えているが、工具の持ち替えを減少させることについては考慮されていないという問題がある。例えば、万能手工具をプライヤーとして使用する場合は、把持部を握って作業することとなるが、ナイフとして使用する場合には、工具の前方側を把持するように持ち替える必要がある。
電気工事は電柱上や鉄塔上等の高所において行われるため、持ち替えに失敗した場合に工具を落下させる虞があり、持ち替え回数が多くなるほどその虞が増大する。工具を落下させた場合には、工具を拾いに行くための新たな昇降動作が必要となるだけではなく、作業現場の直下にいる人間に怪我をさせる虞がある。また、高所作業においては作業スペースが限られているため、工具の持ち替え時に他の作業員と接触して工具を落下させる虞もあり、工具の持ち替え回数は可能な限り少ない方がよい。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、多数種の工具が夫々有する機能を1つの工具にまとめるとともに、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる電気工事用多機能工具及び電気工事用多機能工具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、二本のアームの中間部適所をヒンジ部にて回動自在に軸支し、該各アームの該ヒンジ部よりも後方部を把持部とし、該ヒンジ部よりも前方部をヘッド部とした洋鋏状の電気工事用多機能工具であって、前記ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面には、圧着端子を圧着するためのカシメ部と、被覆線を切断するワイヤカッターと、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されており、一方の前記アームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方の前記アームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、少なくとも一方の前記アームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明では、ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面に、カシメ部とワイヤカッターとワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されており、一方のアームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方のアームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、少なくとも一方のアームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えているので、電気工事に必要な多数種の工具を1つの工具にまとめることができる。また、多数種の工具がヘッド部に配置されているので、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気工事用多機能工具の前記ヘッド部と、前記ヒンジ部までを覆うカバーであって、前記各アームの対向面を近接させた時に前記各凹所が形成する円筒状穴の両端開口に対応する前記カバーの2つの内壁には金属ピンが跨って固定されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、多機能工具のヘッド部をカバーに挿入して各アームの対向面を近接させるだけで、凹所が形成する円筒状穴の両端開口が金属ピンを噛み込むので、多機能工具を容易に収納可能であり、カバーからの脱落も防止できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面に、カシメ部とワイヤカッターとワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されて、一方のアームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方のアームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、少なくとも一方のアームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えているので、電気工事に必要な多数種の工具を1つの工具にまとめることができる。また、多数種の工具がヘッド部に配置されているので、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る電気工事用多機能工具を示す正面図である。
【図2】本発明に係る電気工事用多機能工具を示す斜視図である。
【図3】カシメ部の拡大正面図であり、(a)はカシメ部の閉止状態を示す図であり、(b)はカシメ部の開放状態を示す図である。
【図4】図3(a)を前方側から見たA−A断面図である。
【図5】ワイヤカッターの開放状態における部分拡大図であり、(a)は正面図であり、(b)は裏面図である。
【図6】ワイヤカッターを前方側から見た断面図であり、(a)は図5(a)のB−B断面図であり、(b)は(a)の閉止状態における断面図である。
【図7】ワイヤストリッパーの閉止状態における拡大裏面図である。
【図8】ワイヤストリッパーを前方側から見た断面図であり、(a)はC−C断面図であり、(b)は(a)のD部分の拡大図である。
【図9】ヘッド部の拡大図であり、(a)は上面図であり、(b)は下面図である。
【図10】カバーと多機能工具との関係を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)を前方側から見たE−E断面図である。
【図11】カバーと多機能工具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明に係る電気工事用多機能工具について図1、図2に基づいて説明する。図1は、本発明に係る電気工事用多機能工具を示す正面図である。図2は、本発明に係る電気工事用多機能工具を示す斜視図である。
多機能工具1は、二本のアーム11(第一アーム12及び第二アーム13)の中間部適所をヒンジ部14にて回動自在に軸支した洋鋏状の工具である。ヒンジ部14よりも前方部に位置するヘッド部2を構成する各アーム11先端の対向面15には、リングスリーブを圧着するためのカシメ部20と、被覆線を切断するワイヤカッター30と、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパー40が前後方向位置を異ならせて配置されている。また、第一アーム12の非対向面には打ち込み用のショックレスラバー51(衝撃吸収材)を備え、第二アーム13の先端部の非対向面にはヤスリ部52を備えている。また、第一アーム12の先端部には、稜線に沿って目盛り53が形成されている。
アーム11のヒンジ部14より後方側は、作業員が多機能工具1を把持、操作する把持部3となっている。把持部3の周囲は丸く面取り処理されており、作業員が把持部3を握ったときのフィット感を向上させて作業員の負傷を防止すると共に、把持部3の損傷を防止している。
本明細書においては、多機能工具1を把持したときに親指側に位置するアームを第一アーム12、小指側に位置するアームを第二アーム13として説明する。また、多機能工具1を把持したときに掌側となる面を裏面側、その反対面を正面側として説明する。なお、図1には右利き用の多機能工具1が示されている。
【0009】
第一アーム12の後端部には、多機能工具1の落下を防止するワイヤを取り付けるワイヤ孔61と、アーム11の開放を阻止する略C字状のロックピン62と、を有する。第二アーム13の後端部には、ロックピン62を掛止する掛止溝63を備える。ロックピン62は、第一アーム12に回動自在に軸支され、掛止溝63に掛止された状態ではアーム11を開くことができない。アーム11のロックを解除するには、把持部3をやや強く握りロックピン62を掛止溝63から外す。また、アーム11をロックする際には、把持部3をやや強く握りロックピン62を掛止溝63に掛止する。ワイヤ孔61とロックピン62及び掛止溝63は、第一アーム12と第二アームの何れに備えてもよい。
把持部3には絶縁処理が施され、低圧充電作業時の感電を防止する。また、把持部3には撥水加工が施され、雨天作業時における感電を防止する。
ヘッド部2には、ヒンジ部14から離間する方向へ順にカシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40が配置されている。また、カシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40部分を除く対向面15は、波形の凹凸が形成されたくわえ部16となっており、ナットを挟んで簡易レンチとして使用することができる。
【0010】
図3は、カシメ部の拡大正面図であり、(a)はカシメ部の閉止状態を示す図であり、(b)はカシメ部の開放状態を示す図である。図4は、図3(a)を前方側から見たA−A断面図である。
カシメ部20は、両端部から複数の心線が挿入されたリングスリーブを圧縮して被覆線を接続する圧着部材である。カシメ部20は、第一アーム12及び第二アーム13の幅方向全長に渡って形成された半円筒状の凹所からなり、第一カシメ部21及び第二カシメ部25を有する。第一カシメ部21と第二カシメ部25の構成は同一であるため、以下第一カシメ部21について説明する。
第一カシメ部21は、第一アーム12に形成されてリングスリーブを受け入れる受け部22と、第二アーム13に形成されてリングスリーブを圧縮する圧着部23とからなる。受け部22及び圧着部23の幅方向中間部の対向する部位には、スリーブを圧着する圧着面22a、23aが突出している。カシメ部20の幅が広い場合であっても、圧着面22a、23aの幅を小さく設定することにより、圧着面22a、23aに対して集中的に圧着力が加わり、スリーブを効果的に圧着することができる。例えば、カシメ部20の全幅が1.5cmである場合に、圧着面22a、23aの幅を0.3cmのように設定する。
【0011】
圧着部23の深さは受け部22の深さよりも浅く設定され、カシメ部20を完全に閉じたときに圧着部23が受け部22内に入り込み、カシメに必要なトルクがスリーブに加わるように構成されている。本発明では、大径のリングスリーブ用の第一カシメ部21と小径のリングスリーブ用の第二カシメ部25と有している。例えば、第一カシメ部21を14□に対応するカシメ部とし、第二カシメ部25を3.2m/m、2.6m/mに対応するカシメ部とすることができる。
ヘッド部2の対向面15に配置したカシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40のうち、一番強い力を必要とするカシメ部20をヒンジ部14に隣接した位置に配置したことにより、てこの原理を利用して軽い握り力で強い圧縮力を得られる。
【0012】
図5は、ワイヤカッターの開放状態における部分拡大図であり、(a)は正面図であり、(b)は裏面図である。また、図6は、ワイヤカッターを前方側から見た断面図であり、(a)は図5(a)のB−B断面図であり、(b)は(a)の閉止状態における断面図である。
ワイヤカッター30は、第二アーム13側に配置された上刃31と、第一アーム12側に配置された下刃35とからなる。上刃31と下刃35が噛合する部分は、ワイヤカッター30の前後方向において直線状に形成されている。
上刃31は、第二アーム13の幅方向中間部において下刃35に向かって突設されている。上刃31の刃先は、図中上下方向に対して正面側に所定の角度θだけ傾斜した片刃であり、上刃31の裏面側(刃裏)は平面状である。上刃31の刃先角度θは、上刃31の付け根部分側において刃表と刃裏とが成す角度φよりも鋭い。従って、θ=φとした場合に比べて、上刃31の付け根部分における幅を大きくとることができ、強度を高めることができる。
下刃35は上刃31の受け部であり、正面側が一段低い階段状である。アーム11を閉じると、上刃31の裏面側は下刃35の正面側に形成された壁面36に摺接して、ワイヤカッター30内に挿入されたワイヤにせん断力が働き、ワイヤが切断される。また、上刃31の刃先部分が下刃35の下段面37に当接しないように構成されており、アーム11を完全に閉じた状態でも上刃31を傷めることがない。
【0013】
図7は、ワイヤストリッパーの閉止状態における拡大裏面図である。また、図8はワイヤストリッパーを前方側から見た断面図であり、(a)はC−C断面図であり、(b)は(a)のD部分の拡大図である。
ワイヤストリッパー40は、第二アーム13及び第一アーム12先端の対向面15に、その幅方向全長に渡って夫々形成された半円筒状の凹所41、45から構成されている。各凹所41、45の内壁の対向する部位には夫々上刃42と下刃46が突設されている。
上刃42及び下刃46は、共に裏面側が刃裏となる片刃である。上刃42及び下刃46の刃裏側には、被覆線Wの外周面を支える支承部47となっている。夫々の支承部47からの上刃42と下刃46の最大突出量は、ワイヤストリッパー40に対応する被覆線Wの被覆層WAの厚さと略同一である。
【0014】
本発明に係るワイヤストリッパー40の上刃42、下刃46及び支承部47は、図7に示すように、多機能工具1の前後方向に直線状となっており、ワイヤストリッパー40に対応する被覆線Wの外形形状に合わせた形状ではない。このため、上刃42及び下刃46の突出量が被覆層WAの厚さに対応し、かつ各凹所41、45に挿入可能な太さの被覆線Wであれば、被覆線Wの外径の大小にかかわらず、被覆層WAを剥離することかできる。
ワイヤストリッパー40にて被覆線Wの被覆層WAを剥離する場合は、ワイヤストリッパー40内に被覆線Wを挿入し、把持部3を握る。そして、ワイヤストリッパー40を閉止した状態で、ワイヤストリッパー40を被覆線Wの周囲に半回転させる。ワイヤストリッパー40を開放して被覆線Wを外し、くわえ部16にて被覆層WA部分を挟持して心線に沿って移動させると被覆層WAを剥離することができる。従って、多機能工具1を持ち替える必要がない。
また、上刃42及び下刃46の裏面側が刃裏となっているため、ワイヤストリッパー40を被覆線W周囲に半回転させた後、そのまま多機能工具1を裏面側へ移動させることでも、被覆層WAを剥離することができる。
本発明に係る多機能工具1においては、カシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40をヘッド部2側に配置したので、被覆線を加工する際に、多機能工具1を把持する作業員の手とヒンジ部14とが作る空間内に被覆線を挿入する必要がなく、作業効率が向上する。
【0015】
ショックレスラバー51、ヤスリ部52及び目盛り53について図9に基づいて説明する。図9は、ヘッド部の拡大図であり、(a)は上面図であり、(b)は下面図である。
第一アーム12の非対向面には、打ち込み用のショックレスラバー51が固着されている。非対向面とショックレスラバー51には、それぞれ嵌合する凹部と凸部(いずれも不図示)が形成されており、打ち込み作業時におけるショックレスラバー51の横ずれを防止する。
第二アーム13の非対向面には、被覆線を磨くためのヤスリ部52が形成されている。ヤスリ部52は、非対向面に直接やすりパターンを削り込んだ後に、ヤスリ部52の固さを増大させるために焼き入れを行い、また粘りを出すために焼き戻しが行われている。
目盛り53は、第一アーム12の正面側及び裏面側の稜線に直接目盛り53を刻むと共に、白塗り加工又は反射加工を施して、視認性を高めておく。目盛り53の長さは例えば2cm程度とすることができる。
ショックレスラバー51、ヤスリ部52及び目盛り53は、第一アーム12と第二アーム13の何れに備えても良い。また、目盛り53は、第一アーム12と第二アーム13の双方に備えても良い。
【0016】
本発明に係る多機能工具を用いて2本の被覆線Wを接続する場合について説明する。
まず、被覆線Wの切断長さを目盛り53にて測定し、被覆線を必要な長さに調整する。続いて、剥離すべき被覆層WAの長さを目盛り53にて測定する。ワイヤストリッパー40を用いて被覆層WA剥離する。このとき、被覆線Wと多機能工具1とを互いに逆方向に回転させることによって、被覆線Wの剥離に必要な回転量を得ることができるので、多機能工具1を持ち替える必要はない。ヤスリ部52にて心線WBを磨く。このようにして準備した2本の被覆線Wを、リングスリーブの各端部から夫々挿入し、カシメ部20にて圧縮する。
以上のように本発明によれば、作業員は多機能工具を持ち替えずに、多機能工具の各部の機能を発揮させることができる。また、多数種の工具を1つの工具にまとめたので、作業現場に持参する工具が軽量化され、携帯に有利である。
【0017】
続いて、本発明に係る多機能工具を収納するカバーについて図10、図11に基づいて説明する。図10は、カバーと多機能工具との関係を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)を前方側から見たE−E断面図である。図11はカバーと多機能工具を示す斜視図である。
図示するカバー70は、把持部3の一部も覆っているが、少なくともヘッド部2とヒンジ部14を覆うように構成する。
図示するように、ヘッド部2の対向面15を近接させた状態でカバー70に収納したときに、ワイヤストリッパー40の凹所41、45に対応するカバー70の内壁には、金属ピン71が跨って固定されている。
金属ピン71は、両端部側の直径が大きく、中央部の直径が小さい円柱状である。金属ピン71の両端部側の直径は、ワイヤストリッパー40の凹所41、45が構成する円筒状筒の幅方向両端部の内径と略同一若しくはやや大きい。従って、対向面15を近接させたときに凹所41、45の幅方向両端部と、金属ピン71の対応する部位とが当接する。
【0018】
一方、金属ピン71の中央部は、金属ピン71の幅方向両端部と凹所41、45の対応する部位とが当接したときに、ワイヤストリッパー40の上刃42と下刃46に接触しない直径となっている。
カバー70の内面形状は、ヘッド部2の外形形状に対応するように、前方側がやや先細りに構成されている。ヘッド部2をやや開いた状態で多機能工具1をカバー70に挿入すると、ヘッド部2はカバー70の内壁に当接しつつ進入し、対向面15が徐々に近接する。ヘッド部2をカバー70の先端部まで挿入して、アーム11を閉止すると、ワイヤストリッパー40が金属ピン71を噛み込んだ状態となる。さらに、ロックピン62を掛止溝63に掛止すると、対向面15が離間することがないので、多機能工具1がカバー70から抜け落ちることなく収納される。
以上のように、本発明によれば、収納時にワイヤストリッパーの凹所の端部が金属ピンの端部を噛み込むので、カバーからの脱落を防止できる。また、多機能工具がカバーから脱落してアームが開放されることによる事故を防止することができる。
【符号の説明】
【0019】
1…多機能工具、2…ヘッド部、3…把持部、11…アーム、12…第一アーム、13…第二アーム、14…ヒンジ部、15…対向面、16…くわえ部、20…カシメ部、21…第一カシメ部、22…受け部、22a…圧着面、23…圧着部、23a…圧着面、25…第二カシメ部、30…ワイヤカッター、31…上刃、35…下刃、36…壁面、37…下段面、40…ワイヤストリッパー、41…凹所、42…上刃、45…凹所、46…下刃、47…支承部、51…ショックレスラバー、52…ヤスリ部、53…目盛り、61…ワイヤ孔、62…ロックピン、63…掛止溝、70…カバー、71…金属ピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工事の際に使用する電気工事用多機能工具及びそのカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
送配電設備の設置、修繕等の電気工事には様々な工具が必要である。例えば、2本の被覆線を接続するには、被覆線の被覆層を剥ぎ取り加工する電工ナイフ、被覆線を必要な長さに切断するペンチ、リングスリーブ(圧着端子)を用いて2本の被覆線を圧着接続する圧着ペンチ、切断すべき被覆線の長さや剥離すべき被覆層の長さを測定するメジャー等が必要である。
作業員はこれらの工具を腰袋に収容して、作業現場となる電柱や鉄塔等の高所に昇る必要がある。時には工具の総重量が20kgを超え、昇降動作だけでも重労働となっていた。
複数の工具を一つにまとめ軽量化を図った従来例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、プライヤー、ペンチ、カッター、ナイフ及びハンマの他、ドライバやボックスレンチを取り付けるソケットを備えた万能手動工具が記載されている。1つの工具に複数の機能を備えているため、携帯や保管に便利で作業性に優れるという長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−20278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の工具は複数の機能を備えているが、工具の持ち替えを減少させることについては考慮されていないという問題がある。例えば、万能手工具をプライヤーとして使用する場合は、把持部を握って作業することとなるが、ナイフとして使用する場合には、工具の前方側を把持するように持ち替える必要がある。
電気工事は電柱上や鉄塔上等の高所において行われるため、持ち替えに失敗した場合に工具を落下させる虞があり、持ち替え回数が多くなるほどその虞が増大する。工具を落下させた場合には、工具を拾いに行くための新たな昇降動作が必要となるだけではなく、作業現場の直下にいる人間に怪我をさせる虞がある。また、高所作業においては作業スペースが限られているため、工具の持ち替え時に他の作業員と接触して工具を落下させる虞もあり、工具の持ち替え回数は可能な限り少ない方がよい。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、多数種の工具が夫々有する機能を1つの工具にまとめるとともに、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる電気工事用多機能工具及び電気工事用多機能工具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、二本のアームの中間部適所をヒンジ部にて回動自在に軸支し、該各アームの該ヒンジ部よりも後方部を把持部とし、該ヒンジ部よりも前方部をヘッド部とした洋鋏状の電気工事用多機能工具であって、前記ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面には、圧着端子を圧着するためのカシメ部と、被覆線を切断するワイヤカッターと、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されており、一方の前記アームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方の前記アームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、少なくとも一方の前記アームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明では、ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面に、カシメ部とワイヤカッターとワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されており、一方のアームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方のアームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、少なくとも一方のアームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えているので、電気工事に必要な多数種の工具を1つの工具にまとめることができる。また、多数種の工具がヘッド部に配置されているので、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気工事用多機能工具の前記ヘッド部と、前記ヒンジ部までを覆うカバーであって、前記各アームの対向面を近接させた時に前記各凹所が形成する円筒状穴の両端開口に対応する前記カバーの2つの内壁には金属ピンが跨って固定されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、多機能工具のヘッド部をカバーに挿入して各アームの対向面を近接させるだけで、凹所が形成する円筒状穴の両端開口が金属ピンを噛み込むので、多機能工具を容易に収納可能であり、カバーからの脱落も防止できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面に、カシメ部とワイヤカッターとワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されて、一方のアームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方のアームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、少なくとも一方のアームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えているので、電気工事に必要な多数種の工具を1つの工具にまとめることができる。また、多数種の工具がヘッド部に配置されているので、工具の持ち替えを可能な限り減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る電気工事用多機能工具を示す正面図である。
【図2】本発明に係る電気工事用多機能工具を示す斜視図である。
【図3】カシメ部の拡大正面図であり、(a)はカシメ部の閉止状態を示す図であり、(b)はカシメ部の開放状態を示す図である。
【図4】図3(a)を前方側から見たA−A断面図である。
【図5】ワイヤカッターの開放状態における部分拡大図であり、(a)は正面図であり、(b)は裏面図である。
【図6】ワイヤカッターを前方側から見た断面図であり、(a)は図5(a)のB−B断面図であり、(b)は(a)の閉止状態における断面図である。
【図7】ワイヤストリッパーの閉止状態における拡大裏面図である。
【図8】ワイヤストリッパーを前方側から見た断面図であり、(a)はC−C断面図であり、(b)は(a)のD部分の拡大図である。
【図9】ヘッド部の拡大図であり、(a)は上面図であり、(b)は下面図である。
【図10】カバーと多機能工具との関係を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)を前方側から見たE−E断面図である。
【図11】カバーと多機能工具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明に係る電気工事用多機能工具について図1、図2に基づいて説明する。図1は、本発明に係る電気工事用多機能工具を示す正面図である。図2は、本発明に係る電気工事用多機能工具を示す斜視図である。
多機能工具1は、二本のアーム11(第一アーム12及び第二アーム13)の中間部適所をヒンジ部14にて回動自在に軸支した洋鋏状の工具である。ヒンジ部14よりも前方部に位置するヘッド部2を構成する各アーム11先端の対向面15には、リングスリーブを圧着するためのカシメ部20と、被覆線を切断するワイヤカッター30と、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパー40が前後方向位置を異ならせて配置されている。また、第一アーム12の非対向面には打ち込み用のショックレスラバー51(衝撃吸収材)を備え、第二アーム13の先端部の非対向面にはヤスリ部52を備えている。また、第一アーム12の先端部には、稜線に沿って目盛り53が形成されている。
アーム11のヒンジ部14より後方側は、作業員が多機能工具1を把持、操作する把持部3となっている。把持部3の周囲は丸く面取り処理されており、作業員が把持部3を握ったときのフィット感を向上させて作業員の負傷を防止すると共に、把持部3の損傷を防止している。
本明細書においては、多機能工具1を把持したときに親指側に位置するアームを第一アーム12、小指側に位置するアームを第二アーム13として説明する。また、多機能工具1を把持したときに掌側となる面を裏面側、その反対面を正面側として説明する。なお、図1には右利き用の多機能工具1が示されている。
【0009】
第一アーム12の後端部には、多機能工具1の落下を防止するワイヤを取り付けるワイヤ孔61と、アーム11の開放を阻止する略C字状のロックピン62と、を有する。第二アーム13の後端部には、ロックピン62を掛止する掛止溝63を備える。ロックピン62は、第一アーム12に回動自在に軸支され、掛止溝63に掛止された状態ではアーム11を開くことができない。アーム11のロックを解除するには、把持部3をやや強く握りロックピン62を掛止溝63から外す。また、アーム11をロックする際には、把持部3をやや強く握りロックピン62を掛止溝63に掛止する。ワイヤ孔61とロックピン62及び掛止溝63は、第一アーム12と第二アームの何れに備えてもよい。
把持部3には絶縁処理が施され、低圧充電作業時の感電を防止する。また、把持部3には撥水加工が施され、雨天作業時における感電を防止する。
ヘッド部2には、ヒンジ部14から離間する方向へ順にカシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40が配置されている。また、カシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40部分を除く対向面15は、波形の凹凸が形成されたくわえ部16となっており、ナットを挟んで簡易レンチとして使用することができる。
【0010】
図3は、カシメ部の拡大正面図であり、(a)はカシメ部の閉止状態を示す図であり、(b)はカシメ部の開放状態を示す図である。図4は、図3(a)を前方側から見たA−A断面図である。
カシメ部20は、両端部から複数の心線が挿入されたリングスリーブを圧縮して被覆線を接続する圧着部材である。カシメ部20は、第一アーム12及び第二アーム13の幅方向全長に渡って形成された半円筒状の凹所からなり、第一カシメ部21及び第二カシメ部25を有する。第一カシメ部21と第二カシメ部25の構成は同一であるため、以下第一カシメ部21について説明する。
第一カシメ部21は、第一アーム12に形成されてリングスリーブを受け入れる受け部22と、第二アーム13に形成されてリングスリーブを圧縮する圧着部23とからなる。受け部22及び圧着部23の幅方向中間部の対向する部位には、スリーブを圧着する圧着面22a、23aが突出している。カシメ部20の幅が広い場合であっても、圧着面22a、23aの幅を小さく設定することにより、圧着面22a、23aに対して集中的に圧着力が加わり、スリーブを効果的に圧着することができる。例えば、カシメ部20の全幅が1.5cmである場合に、圧着面22a、23aの幅を0.3cmのように設定する。
【0011】
圧着部23の深さは受け部22の深さよりも浅く設定され、カシメ部20を完全に閉じたときに圧着部23が受け部22内に入り込み、カシメに必要なトルクがスリーブに加わるように構成されている。本発明では、大径のリングスリーブ用の第一カシメ部21と小径のリングスリーブ用の第二カシメ部25と有している。例えば、第一カシメ部21を14□に対応するカシメ部とし、第二カシメ部25を3.2m/m、2.6m/mに対応するカシメ部とすることができる。
ヘッド部2の対向面15に配置したカシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40のうち、一番強い力を必要とするカシメ部20をヒンジ部14に隣接した位置に配置したことにより、てこの原理を利用して軽い握り力で強い圧縮力を得られる。
【0012】
図5は、ワイヤカッターの開放状態における部分拡大図であり、(a)は正面図であり、(b)は裏面図である。また、図6は、ワイヤカッターを前方側から見た断面図であり、(a)は図5(a)のB−B断面図であり、(b)は(a)の閉止状態における断面図である。
ワイヤカッター30は、第二アーム13側に配置された上刃31と、第一アーム12側に配置された下刃35とからなる。上刃31と下刃35が噛合する部分は、ワイヤカッター30の前後方向において直線状に形成されている。
上刃31は、第二アーム13の幅方向中間部において下刃35に向かって突設されている。上刃31の刃先は、図中上下方向に対して正面側に所定の角度θだけ傾斜した片刃であり、上刃31の裏面側(刃裏)は平面状である。上刃31の刃先角度θは、上刃31の付け根部分側において刃表と刃裏とが成す角度φよりも鋭い。従って、θ=φとした場合に比べて、上刃31の付け根部分における幅を大きくとることができ、強度を高めることができる。
下刃35は上刃31の受け部であり、正面側が一段低い階段状である。アーム11を閉じると、上刃31の裏面側は下刃35の正面側に形成された壁面36に摺接して、ワイヤカッター30内に挿入されたワイヤにせん断力が働き、ワイヤが切断される。また、上刃31の刃先部分が下刃35の下段面37に当接しないように構成されており、アーム11を完全に閉じた状態でも上刃31を傷めることがない。
【0013】
図7は、ワイヤストリッパーの閉止状態における拡大裏面図である。また、図8はワイヤストリッパーを前方側から見た断面図であり、(a)はC−C断面図であり、(b)は(a)のD部分の拡大図である。
ワイヤストリッパー40は、第二アーム13及び第一アーム12先端の対向面15に、その幅方向全長に渡って夫々形成された半円筒状の凹所41、45から構成されている。各凹所41、45の内壁の対向する部位には夫々上刃42と下刃46が突設されている。
上刃42及び下刃46は、共に裏面側が刃裏となる片刃である。上刃42及び下刃46の刃裏側には、被覆線Wの外周面を支える支承部47となっている。夫々の支承部47からの上刃42と下刃46の最大突出量は、ワイヤストリッパー40に対応する被覆線Wの被覆層WAの厚さと略同一である。
【0014】
本発明に係るワイヤストリッパー40の上刃42、下刃46及び支承部47は、図7に示すように、多機能工具1の前後方向に直線状となっており、ワイヤストリッパー40に対応する被覆線Wの外形形状に合わせた形状ではない。このため、上刃42及び下刃46の突出量が被覆層WAの厚さに対応し、かつ各凹所41、45に挿入可能な太さの被覆線Wであれば、被覆線Wの外径の大小にかかわらず、被覆層WAを剥離することかできる。
ワイヤストリッパー40にて被覆線Wの被覆層WAを剥離する場合は、ワイヤストリッパー40内に被覆線Wを挿入し、把持部3を握る。そして、ワイヤストリッパー40を閉止した状態で、ワイヤストリッパー40を被覆線Wの周囲に半回転させる。ワイヤストリッパー40を開放して被覆線Wを外し、くわえ部16にて被覆層WA部分を挟持して心線に沿って移動させると被覆層WAを剥離することができる。従って、多機能工具1を持ち替える必要がない。
また、上刃42及び下刃46の裏面側が刃裏となっているため、ワイヤストリッパー40を被覆線W周囲に半回転させた後、そのまま多機能工具1を裏面側へ移動させることでも、被覆層WAを剥離することができる。
本発明に係る多機能工具1においては、カシメ部20とワイヤカッター30とワイヤストリッパー40をヘッド部2側に配置したので、被覆線を加工する際に、多機能工具1を把持する作業員の手とヒンジ部14とが作る空間内に被覆線を挿入する必要がなく、作業効率が向上する。
【0015】
ショックレスラバー51、ヤスリ部52及び目盛り53について図9に基づいて説明する。図9は、ヘッド部の拡大図であり、(a)は上面図であり、(b)は下面図である。
第一アーム12の非対向面には、打ち込み用のショックレスラバー51が固着されている。非対向面とショックレスラバー51には、それぞれ嵌合する凹部と凸部(いずれも不図示)が形成されており、打ち込み作業時におけるショックレスラバー51の横ずれを防止する。
第二アーム13の非対向面には、被覆線を磨くためのヤスリ部52が形成されている。ヤスリ部52は、非対向面に直接やすりパターンを削り込んだ後に、ヤスリ部52の固さを増大させるために焼き入れを行い、また粘りを出すために焼き戻しが行われている。
目盛り53は、第一アーム12の正面側及び裏面側の稜線に直接目盛り53を刻むと共に、白塗り加工又は反射加工を施して、視認性を高めておく。目盛り53の長さは例えば2cm程度とすることができる。
ショックレスラバー51、ヤスリ部52及び目盛り53は、第一アーム12と第二アーム13の何れに備えても良い。また、目盛り53は、第一アーム12と第二アーム13の双方に備えても良い。
【0016】
本発明に係る多機能工具を用いて2本の被覆線Wを接続する場合について説明する。
まず、被覆線Wの切断長さを目盛り53にて測定し、被覆線を必要な長さに調整する。続いて、剥離すべき被覆層WAの長さを目盛り53にて測定する。ワイヤストリッパー40を用いて被覆層WA剥離する。このとき、被覆線Wと多機能工具1とを互いに逆方向に回転させることによって、被覆線Wの剥離に必要な回転量を得ることができるので、多機能工具1を持ち替える必要はない。ヤスリ部52にて心線WBを磨く。このようにして準備した2本の被覆線Wを、リングスリーブの各端部から夫々挿入し、カシメ部20にて圧縮する。
以上のように本発明によれば、作業員は多機能工具を持ち替えずに、多機能工具の各部の機能を発揮させることができる。また、多数種の工具を1つの工具にまとめたので、作業現場に持参する工具が軽量化され、携帯に有利である。
【0017】
続いて、本発明に係る多機能工具を収納するカバーについて図10、図11に基づいて説明する。図10は、カバーと多機能工具との関係を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)を前方側から見たE−E断面図である。図11はカバーと多機能工具を示す斜視図である。
図示するカバー70は、把持部3の一部も覆っているが、少なくともヘッド部2とヒンジ部14を覆うように構成する。
図示するように、ヘッド部2の対向面15を近接させた状態でカバー70に収納したときに、ワイヤストリッパー40の凹所41、45に対応するカバー70の内壁には、金属ピン71が跨って固定されている。
金属ピン71は、両端部側の直径が大きく、中央部の直径が小さい円柱状である。金属ピン71の両端部側の直径は、ワイヤストリッパー40の凹所41、45が構成する円筒状筒の幅方向両端部の内径と略同一若しくはやや大きい。従って、対向面15を近接させたときに凹所41、45の幅方向両端部と、金属ピン71の対応する部位とが当接する。
【0018】
一方、金属ピン71の中央部は、金属ピン71の幅方向両端部と凹所41、45の対応する部位とが当接したときに、ワイヤストリッパー40の上刃42と下刃46に接触しない直径となっている。
カバー70の内面形状は、ヘッド部2の外形形状に対応するように、前方側がやや先細りに構成されている。ヘッド部2をやや開いた状態で多機能工具1をカバー70に挿入すると、ヘッド部2はカバー70の内壁に当接しつつ進入し、対向面15が徐々に近接する。ヘッド部2をカバー70の先端部まで挿入して、アーム11を閉止すると、ワイヤストリッパー40が金属ピン71を噛み込んだ状態となる。さらに、ロックピン62を掛止溝63に掛止すると、対向面15が離間することがないので、多機能工具1がカバー70から抜け落ちることなく収納される。
以上のように、本発明によれば、収納時にワイヤストリッパーの凹所の端部が金属ピンの端部を噛み込むので、カバーからの脱落を防止できる。また、多機能工具がカバーから脱落してアームが開放されることによる事故を防止することができる。
【符号の説明】
【0019】
1…多機能工具、2…ヘッド部、3…把持部、11…アーム、12…第一アーム、13…第二アーム、14…ヒンジ部、15…対向面、16…くわえ部、20…カシメ部、21…第一カシメ部、22…受け部、22a…圧着面、23…圧着部、23a…圧着面、25…第二カシメ部、30…ワイヤカッター、31…上刃、35…下刃、36…壁面、37…下段面、40…ワイヤストリッパー、41…凹所、42…上刃、45…凹所、46…下刃、47…支承部、51…ショックレスラバー、52…ヤスリ部、53…目盛り、61…ワイヤ孔、62…ロックピン、63…掛止溝、70…カバー、71…金属ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本のアームの中間部適所をヒンジ部にて回動自在に軸支し、該各アームの該ヒンジ部よりも後方部を把持部とし、該ヒンジ部よりも前方部をヘッド部とした洋鋏状の電気工事用多機能工具であって、
前記ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面には、圧着端子を圧着するためのカシメ部と、被覆線を切断するワイヤカッターと、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されており、
一方の前記アームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方の前記アームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、
少なくとも一方の前記アームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えていることを特徴とする電気工事用多機能工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電気工事用多機能工具の前記ヘッド部と、前記ヒンジ部までを覆うカバーであって、
前記各アームの対向面を近接させた時に前記各凹所が形成する円筒状穴の両端開口に対応する前記カバーの2つの内壁には金属ピンが跨って固定されていることを特徴とするカバー。
【請求項1】
二本のアームの中間部適所をヒンジ部にて回動自在に軸支し、該各アームの該ヒンジ部よりも後方部を把持部とし、該ヒンジ部よりも前方部をヘッド部とした洋鋏状の電気工事用多機能工具であって、
前記ヘッド部を構成する各アーム先端の対向面には、圧着端子を圧着するためのカシメ部と、被覆線を切断するワイヤカッターと、被覆線の被覆層を剥離するワイヤストリッパーが前後方向位置を異ならせて配置されており、
一方の前記アームの先端部の非対向面にはヤスリ部を備え、他方の前記アームの先端部の非対向面には打ち込み用衝撃吸収材を備え、
少なくとも一方の前記アームの先端部には、稜線に沿って形成された目盛りを備えていることを特徴とする電気工事用多機能工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電気工事用多機能工具の前記ヘッド部と、前記ヒンジ部までを覆うカバーであって、
前記各アームの対向面を近接させた時に前記各凹所が形成する円筒状穴の両端開口に対応する前記カバーの2つの内壁には金属ピンが跨って固定されていることを特徴とするカバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−120722(P2011−120722A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280431(P2009−280431)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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