説明

電気式脱イオン水製造装置

【課題】脱塩室2室構造の電気式脱イオン水製造装置において、配管の付け替えや配管の増設を伴うことなくアニオン除去室、カチオン除去室、濃縮室のいずれかまたは全部の洗浄を可能とする。
【解決手段】電気式脱イオン水製造装置は、カチオン除去室D1と、アニオン除去室D2と、を含む脱塩室と、脱塩室の両側に位置する一対の濃縮室C1,C2と、濃縮室C1,C2及び脱塩室を挟んで位置する一対の電極室と、を有している。第1のカチオン流路UU1は一方の電極室の外側から第1のカチオン除去室隣接部61まで延び、そこでカチオン除去室D1に接続している。第2のカチオン流路LL2、第1のアニオン流路UU2、第2のアニオン流路LL2,第1の濃縮室流路UU3、第2の濃縮室流路LL3も同様の構成である。流路UU1,LL1、流路UU2,LL2、または流路UU3,LL3の少なくともいずれかは、両電極室の外側から外側まで延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン水製造装置に関し、特に脱塩室がカチオン除去室とアニオン除去室とを有する形式の電気式脱イオン水製造装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
脱イオン水の製造装置として、イオン交換樹脂に被処理水を通水して脱イオンを行う製造装置が知られている。この装置ではイオン交換樹脂の脱塩性能が劣化したときに、薬剤によって再生を行う必要がある。近年、このような運転上の不利な点を解消するため、薬剤による再生が不要な電気式脱イオン水製造装置(以下、脱イオン水製造装置という場合がある。)が実用化されている。
【0003】
脱イオン水製造装置は、電気泳動と電気透析とを組み合わせた脱イオン水製造装置である。脱イオン水製造装置は、アニオン交換膜とカチオン交換膜との間にイオン交換体を充填し脱塩室とし、アニオン交換膜及びカチオン交換膜の外側に各々濃縮室を設け、さらにその外側に陽極を備える陽極室と、陰極を備える陰極室と、を配置した装置である。脱イオン水製造装置により脱イオン水を製造するには、電極に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水する。被処理水中のイオン成分はイオン交換体で吸着され、イオン交換膜まで電気泳動し、イオン交換膜で電気透析されて、濃縮室を流れる水に排出される。脱イオン水製造装置では、電気分解反応により水が解離して水素イオンと水酸化物イオンとが生成され、これらがイオン交換体を再生する酸、アルカリの再生剤として連続的に作用する。このため、脱イオン水製造装置では基本的には薬剤による再生は不要であり、薬剤によるイオン交換体の再生を行わずに連続運転ができる。
【0004】
近年では、脱塩室をカチオン除去室とアニオン除去室とに分割した脱塩室2室構造の脱イオン水製造装置が提案されている(例えば、特許文献1)。脱塩室2室構造の脱イオン水製造装置では、脱塩室は少なくともカチオン交換体が充填されるカチオン除去室と、少なくともアニオン交換体が充填されるアニオン除去室と、からなっている。カチオン除去室及びアニオン除去室は、中間イオン交換膜を介して互いに隣接している。被処理水はまずカチオン除去室に入り、カチオンが除去された後、渡し配管を通ってアニオン除去室に入り、アニオンが除去される。あるいは、被処理水はまずアニオン除去室に入り、次にカチオン除去室に入ってもよい。脱塩室2室構造の脱イオン水製造装置では、濃縮室の数が相対的に減少し、脱イオン水製造装置の電気抵抗を著しく低減できるため、印加電圧を抑え、運転コストを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3385553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、脱イオン水製造装置は薬剤によるイオン交換体の再生を行わずに連続運転が可能であるが、実際には、脱塩性能の低下がたびたび生じる。これは、被処理水中にシリカや硬度成分のような、吸着されたイオン交換体から除去しにくい不純物イオンが多く含まれているためである。このため、水質の予期せぬ悪化などに起因して脱イオン水製造装置の許容濃度を大きく超えるイオン濃度の被処理水が供給される場合や、長期間にわたって使用された場合は、脱塩性能が低下する可能性がある。脱塩室2室構造の脱イオン水製造装置においても、イオン交換体へのイオン成分の蓄積により、次第に電気抵抗の上昇や脱イオン水の水質低下を生じる。そこで、脱塩室にアルカリ性液もしくは酸性液を通水して洗浄するなどの方法により脱塩性能を回復する試みがたびたび実施されている。
【0007】
このような薬液による洗浄工程を行うにあたり、従来の脱イオン水製造装置では洗浄液の流入口及び流出口に通常運転時と同じ流入口及び流出口を利用するのが一般的である。しかし、洗浄液の流入口及び流出口に通常運転時と同じ流入口及び流出口を用いて脱イオン水製造装置の洗浄を行う場合、流入口及び流出口に接続された配管を取り外し、洗浄液を供給及び排出するための配管を新たに接続する必要がある。その操作は非常に煩雑で時間を要するものである。
【0008】
この問題を解決するためには、前もって脱イオン水製造装置の前後段の配管から薬液の供給及び排出用の配管を分岐させておくことも可能である。しかし、脱塩室2室構造の脱イオン水製造装置においては、カチオン除去室及びアニオン除去室には、渡し配管を介して、洗浄液がカスケード式に順次通水されるため、それぞれのイオン交換体を適切な薬液で洗浄することができない。結局のところ、カチオン除去室とアニオン除去室とをつなぐ渡し配管を取り外し、新たに薬液供給用及び排出用の配管を接続することになるため、操作が煩雑になる。渡し配管から洗浄液の供給及び排出用の配管を分岐させることも可能ではあるが、必要な配管が増え、複雑になるため省スペース化の装置には不向きである。
【0009】
さらに、被処理水の処理前の水質や処理後の要求水質によっては、アニオン除去室のみを頻繁に洗浄することが考えられる。例えば、原水の硬度成分(マグネシウム等のカチオン)が低く、シリカ濃度(アニオン)が高い場合である。
【0010】
また、脱塩室と濃縮室の洗浄頻度は同じではなく、濃縮室の洗浄頻度の方が脱塩室の洗浄頻度よりも大きい場合があり得る。濃縮室では、イオン交換膜の膜面に炭酸カルシウムを主成分とするスケールがたびたび付着するため、付着したスケールを除去する必要性がある。
【0011】
以上より、濃縮室のみを洗浄する場合、濃縮室とアニオン除去室のみを洗浄する場合、アニオン除去室のみを洗浄する場合など、様々な場合が想定される。
【0012】
そこで、本発明では、配管の付け替えや配管の増設を伴うことなくアニオン除去室、カチオン除去室、濃縮室のいずれかまたは全部の洗浄が可能な、脱塩室2室構造の電気式脱イオン水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電気式脱イオン水製造装置は、少なくともカチオン交換体が充填されるカチオン除去室と、中間イオン交換膜を介してカチオン除去室と隣接して位置する、少なくともアニオン交換体が充填されるアニオン除去室と、を含む脱塩室と、脱塩室の両側に位置する一対の濃縮室であって、カチオン除去室側の濃縮室がカチオン交換膜を介して、アニオン除去室側の濃縮室がアニオン交換膜を介して、脱塩室と隣接して位置する一対の濃縮室と、カチオン交換膜が陰極側、アニオン交換膜が陽極側となるように濃縮室及び脱塩室を挟んで位置する一対の電極室と、を有している。電気式脱イオン水製造装置はさらに、一方の電極室の外側から、カチオン除去室の上方または側方に位置する第1のカチオン除去室隣接部まで延び、第1のカチオン除去室隣接部でカチオン除去室に接続する第1のカチオン流路と、一方の電極室の外側から、カチオン除去室を挟んで第1のカチオン除去室隣接部と対向して位置する第2のカチオン除去室隣接部まで延び、第2のカチオン除去室隣接部でカチオン除去室に接続する第2のカチオン流路と、一方の電極室の外側から、アニオン除去室の上方または側方に位置する第1のアニオン除去室隣接部まで延び、第1のアニオン除去室隣接部でアニオン除去室に接続する第1のアニオン流路と、一方の電極室の外側から、アニオン除去室を挟んで第1のアニオン除去室隣接部と対向して位置する第2のアニオン除去室隣接部まで延び、第2のアニオン除去室隣接部でカチオン除去室に接続する第2のアニオン流路と、一方の電極室の外側を始点として延びる第1の濃縮室流路であって、第1の濃縮室流路は各濃縮室の上方または側方に位置する一対の第1の濃縮室隣接部を含み、第1の濃縮室流路は、始点からみて近い側の濃縮室の第1の濃縮室隣接部を通って遠い側の濃縮室の第1の濃縮室隣接部まで延び、一対の第1の濃縮室隣接部の各々で一対の濃縮室の各々に接続する第1の濃縮室流路と、一方の電極室の外側を始点として延びる第2の濃縮室流路であって、第2の濃縮室流路は各濃縮室を挟んで一対の第1の濃縮室隣接部の各々と対向して位置する一対の第2の濃縮室隣接部を含み、第2の濃縮室流路は、第2の濃縮室流路の始点からみて近い側の濃縮室の第2の濃縮室隣接部を通って遠い側の濃縮室の第2の濃縮室隣接部まで延び、一対の第2の濃縮室隣接部の各々で一対の濃縮室の各々に接続する第2の濃縮室流路と、を有している。第2のカチオン流路と第1のアニオン流路、または第2のアニオン流路と第1のカチオン流路は、同じ電極室の外側で連通している。第1のカチオン流路及び第2のカチオン流路、または第1のアニオン流路及び第2のアニオン流路、または第1の濃縮室流路及び第2の濃縮室流路の少なくともいずれかは、一方の電極室の外側から他方の電極室の外側まで延びている。
【0014】
通常運転時は、被処理水は第1のカチオン流路からカチオン除去室に流入し、第2のカチオン流路及び第1のアニオン流路を通ってアニオン除去室に流入し、第2のアニオン流路から排出される。あるいは、第1のアニオン流路からアニオン除去室に流入し、第2のアニオン流路及び第1のカチオン流路を通ってカチオン除去室に流入し、第2のカチオン流路から排出される。この過程で除去されたカチオンあるいはアニオンは第1及び第2の濃縮室へ移行し、装置外へと排出される。
【0015】
一方、例えばカチオン除去室のみを配管の付け替えなどを伴うことなく容易に洗浄できればよい場合は、第1のカチオン流路及び第2のカチオン流路が一方の電極室の外側から他方の電極室の外側まで延びる構成を採用する。このような構成の第1のカチオン流路では、一方の電極室の外側から第1のカチオン除去室隣接部までの部分は通常運転時に用いられるが、第1のカチオン除去室隣接部から他方の電極室の外側までの部分は、被処理水は進入するが滞留しているだけであり、流路としては機能していない。同様に、第2のカチオン流路では、一方の電極室の外側から第2のカチオン除去室隣接部までの部分は通常運転時に用いられるが、第2のカチオン除去室隣接部から他方の電極室の外側までの部分は、被処理水は進入するが滞留しているだけであり、流路としては機能していない。そこでこれらの通常運転時の流路として機能していない部分を洗浄液の供給経路及び排出経路として用いることで、洗浄を行うことが可能となる。アニオン除去室の洗浄時あるいは濃縮室の洗浄時も同様である。さらに、カチオン除去室、アニオン除去室、濃縮室のいずれか2つまたは全部を洗浄する場合は、第1のカチオン流路及び第2のカチオン流路、または第1のアニオン流路及び第2のアニオン流路、または第1の濃縮室流路及び第2の濃縮室流路の2組または全部が、一方の電極室の外側から他方の電極室の外側まで延びる構成を採用すればよい。従って、配管の付け替えなどの繁雑な操作を要することなく通常運転及び洗浄の切り替えが可能となり、分岐配管等の配管の増設も不要である。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、配管の付け替えや配管の増設を伴うことなくアニオン除去室、カチオン除去室、濃縮室のいずれかまたは全部の洗浄が可能な、脱塩室2室構造の電気式脱イオン水製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す電気式脱イオン水製造装置のより具体的な構造を示す側方分解図である。
【図3】図1に示す電気式脱イオン水製造装置の各面の側面図である。
【図4】図2に示す各断面位置における電気式脱イオン水製造装置の断面図である。
【図5】各室に接続する流路の構成を示す概念図である。
【図6】電気式脱イオン水製造装置の脱イオン運転時の作動を説明する図である。
【図7】電気式脱イオン水製造装置の洗浄時の作動を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の脱イオン運転時の作動を説明する図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の洗浄時の作動を説明する図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の電気式脱イオン水製造装置のいくつかの実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の概略構成図である。
【0019】
電気式脱イオン水製造装置1はカチオン除去室D1とアニオン除去室D2とからなる脱塩室Dと、脱塩室Dを両側から挟む一対の濃縮室C1,C2と、濃縮室C1,C2及び脱塩室Dを挟む一対の電極室E1,E2と、を備えている。
【0020】
カチオン除去室D1とアニオン除去室D2は中間イオン交換膜13を介して互いに隣接して位置している。一対の濃縮室C1,C2は、脱塩室Dの両側に、脱塩室Dと隣接して、各々カチオン交換膜12及びアニオン交換膜14を介して位置している。すなわち、カチオン除去室D1のアニオン除去室D2と対向する面の反対面は濃縮室C1となっており、カチオン除去室D1と濃縮室C1の間はカチオン交換膜12で仕切られている。同様に、アニオン除去室D2のカチオン除去室D1と対向する面の反対面は濃縮室C2となっており、アニオン除去室D2と濃縮室C2の間はアニオン交換膜14で仕切られている。
【0021】
カチオン除去室D1にはカチオン交換体が充填され、主に被処理水中のカチオン成分(Na+、Ca2+、Mg2+等)が除去される。カチオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。カチオン交換体の種類としては、弱酸性カチオン交換体、強酸性カチオン交換体等が挙げられる。カチオン除去室D1には少なくともカチオン交換体が充填されればよく、カチオン除去室D1に充填するイオン交換体の充填形態としては、カチオン交換体の単床形態、カチオン交換体とアニオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0022】
アニオン除去室D2にはアニオン交換体が充填され、主に被処理水中のアニオン成分(Cl-、CO32-、HCO2-、SiO2等)が除去される。アニオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。アニオン交換体の種類としては、弱塩基性アニオン交換体、強塩基性アニオン交換体等が挙げられる。アニオン除去室D2には少なくともアニオン交換体が充填されればよく、アニオン除去室D2に充填するイオン交換体の充填形態としては、アニオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0023】
中間イオン交換膜13は、被処理水の水質、脱イオン水に求める水質、カチオン除去室D1またはアニオン除去室D2に充填するイオン交換体の種類等を勘案して選択することができる。中間イオン交換膜13としては、アニオン交換膜もしくはカチオン交換膜の単一膜、または、アニオン交換膜とカチオン交換膜との両方を配置した複合膜のいずれであってもよい。
【0024】
一対の電極室E1,E2は各々、内部に電極16,17を収容しており、電極16が陰極、電極17が陽極となるように直流電源(図示せず)と接続される。陰極室E1は仕切り膜11を介して濃縮室C1と隣接している。陽極室E2は仕切り膜15を介して濃縮室C2と隣接している。電極室E1,E2には電極水が流れる。仕切り膜11,15は被処理水の水質や、脱イオン水製造装置1の運転条件等を考慮して選択することができ、カチオン交換膜またはアニオン交換膜を用いることができる。
【0025】
図2は、図1に示す電気式脱イオン水製造装置1のより具体的な構造を示す側方分解図である。図3は、装置の各面の側面図であり、同図(a),(b)は各々、図2の3A−3A線、3B−3B線から見た陰極室側の正面図及び陽極室側の背面図、同図(c),(d)は各々、側方図及び底面図である。図4は、図2に示す各断面位置における断面図であり、同図(a)〜(d)は各々、図2のA−A線、B−B線、C−C線、及びD−D線に沿った断面図である。図5は各室に接続する流路の構成を示す概念図である。
【0026】
各電極室E1,E2、カチオン除去室D1、アニオン除去室D2、及び各濃縮室C1,C2は各々、開口部を備えた板状部材である枠体21〜26の内部に設けられている。図2では、各枠体21〜26は互いに離間した状態で示されているが、実際には図3(c),(d)に示すように互いに密着して設けられている。電極室E1,E2を収める枠体21,26は一方が閉じ、一方に開口の設けられた枠体である。カチオン除去室D1、アニオン除去室D2、及び各濃縮室C1,C2を収める枠体22〜25は両面に開口の設けられた枠体である。枠体21の開口と、濃縮室C1の枠体22の枠体21側の開口と、の間に、上述の仕切り膜11が設けられている。同様に、濃縮室C1の枠体22とカチオン除去室D1の枠体23の間にカチオン交換膜12が、カチオン除去室D1の枠体23とアニオン除去室D2の枠体24の間に中間イオン交換膜13が、アニオン除去室D2の枠体24と濃縮室C2の枠体25の間にアニオン交換膜14が、濃縮室C2の枠体25と電極室E2の枠体26の間に仕切り膜15が設けられている。枠体は絶縁性を有し、洗浄に用いる薬剤に対する耐性を備え、被処理水が漏洩しない素材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)等の樹脂を挙げることができる。
【0027】
図3(a),(b),図4,図5を参照すると、各枠体21〜26の上部に貫通孔U1〜U3が設けられている。同様に、各枠体21〜26の下部に貫通孔L1〜L3が設けられている。これらの貫通孔U1〜U3,L1〜L3は互いに共通する位置に設けられており、互いに共通する位置に設けられた貫通孔同士が連通することによって、電極室E1,E2の外側間を延びる連絡流路UU1〜LL3が形成されている。以下、図2〜5を参照して、これらの流路の構成について説明する。
【0028】
第1のカチオン流路UU1(貫通孔U1)は、陰極室E1の外側からカチオン除去室D1の上方(第1のカチオン除去室隣接部61)まで延び、さらに陽極室E2の外側まで延びている。すなわち、第1のカチオン流路UU1は、装置1の正面、背面間を貫通して延び、陰極室E1を収容する枠体21と陽極室E2を収容する枠体26とに端部となる開口部41,42を有している。第1のカチオン流路UU1は、第1のカチオン除去室隣接部61でカチオン除去室D1と連通している。具体的には図4(c)に示すように、枠体のカチオン除去室D1の上部に、カチオン除去室D1と第1のカチオン流路UU1を結ぶ三角形状の分配部31が設けられ、分配部31を介して第1のカチオン流路UU1とカチオン除去室D1とが連通するようになっている。
【0029】
同様に、第2のカチオン流路LL1(貫通孔L1)は、陰極室E1の外側からカチオン除去室D1の下方(第2のカチオン除去室隣接部62)まで延び、さらに陽極室E2の外側まで延びている。すなわち、第2のカチオン流路LL1は、装置1の正面、背面間を貫通して延び、陰極室E1を収容する枠体21と陽極室E2を収容する枠体26に端部となる開口部43,44を有している。第2のカチオン流路LL1は第1のカチオン流路UU1の分配部31と同様の構成の分配部32によって、第2のカチオン除去室隣接部62でカチオン除去室D1と連通している。
【0030】
同様に、第1のアニオン流路UU2(貫通孔U2)は、陰極室E1の外側からアニオン除去室D2の上方(第1のアニオン除去室隣接部63)まで延び、さらに陽極室E2の外側まで延びている。すなわち、第1のアニオン流路UU2は、装置1の正面、背面間を貫通して延び、陰極室E1を収容する枠体21と陽極室E2を収容する枠体26に端部となる開口部45,46を有している。第1のアニオン流路UU2は図4(d)に示すように、第1のカチオン流路UU1の分配部31と同様の構成の分配部33によって、第1のアニオン除去室隣接部63でアニオン除去室D2と連通している。
【0031】
同様に、第2のアニオン流路LL2(貫通孔L2)は、陰極室E1の外側からアニオン除去室D2の下方(第2のアニオン除去室隣接部64)まで延び、さらに陽極室E2の外側まで延びている。すなわち、第2のアニオン流路LL2は、装置1の正面、背面間を貫通して延び、陰極室E1を収容する枠体21と陽極室E2を収容する枠体26に端部となる開口部47,48を有している。第2のアニオン流路LL2は第1のカチオン流路UU1の分配部31と同様の構成の分配部34によって、第2のアニオン除去室隣接部64でアニオン除去室D2と連通している。
【0032】
同様に、第1の濃縮室流路UU3(貫通孔U3)は、陰極室E1の外側から、陰極室E1から見て近いほうの濃縮室C1の上方(第1の濃縮室隣接部65a)を通って、陰極室E1から見て遠いほうの濃縮室C2の上方(第1の濃縮室隣接部65b)まで延び、さらに陽極室E2の外側まで延びている。すなわち、第1の濃縮室流路UU3は、装置1の正面、背面間を貫通して延び、陰極室E1を収容する枠体21と陽極室E2を収容する枠体26に端部となる開口部49,50を有している。第1の濃縮室流路UU3は図4(b)に示すように、第1のカチオン流路UU1の分配部31と同様の構成の分配部35によって、一対の第1の濃縮室隣接部65a,65bの各々で、一対の濃縮室C1,C2の各々と連通している。
【0033】
同様に、第2の濃縮室流路LL3(貫通孔L3)は、陰極室E1の外側から、陰極室E1から見て近いほうの濃縮室C1の下方(第1の濃縮室隣接部66a)を通って、陰極室E1から見て遠いほうの濃縮室C2の下方(第1の濃縮室隣接部66a)まで延び、さらに陽極室E2の外側まで延びている。すなわち、第2の濃縮室流路LL3は、装置1の正面、背面間を貫通して延び、陰極室E1を収容する枠体21と陽極室E2を収容する枠体26に端部となる開口部51,52を有している。第2の濃縮室流路LL3は、第1のカチオン流路UU1の分配部31と同様の構成の分配部36によって、一対の第2の濃縮室隣接部66a,66bの各々で、一対の濃縮室C1,C2の各々と連通している。
【0034】
第1のカチオン流路UU1と第2のカチオン流路LL1は、本実施形態では枠体の各々上部及び下部を通っているが、枠体の、カチオン除去室D1を挟んで互いに対向する側方位置を通っていてもよい。第1のアニオン流路UU2と第2のアニオン流路LL2も、枠体の、アニオン除去室D2を挟んで互いに対向する側方位置を通っていてもよい。同様に、第1の濃縮室流路UU3と第2の濃縮室流路LL3も、枠体の、濃縮室C1,C2を挟んで互いに対向する側方位置を通っていてもよい。
【0035】
第2のカチオン流路LL1と第1のアニオン流路UU2は同じ電極室E2側の端部同士44,46で連通している。連通方法は特に限定されないが、一例として渡り配管30で端部同士を連結することができる。第1、2のカチオン流路UU1,LL1、第1、2のアニオン流路UU2,LL2、及び第1、第2の濃縮室流路UU3,LL3は、渡り配管30で連結されている第2のカチオン流路LL1と第1のアニオン流路UU2の各端部を除き、電極室E1,E2の外側に図示しないバルブが設けられており、後述する通常運転時及び洗浄時に開閉が切り替えられる。
【0036】
以上のように構成された電気式脱イオン水製造装置1の脱イオン運転時の作動について図6を用いて説明する。図6(a)は、カチオン除去室D1と、アニオン除去室D2と、濃縮室C1,C2の水の流れを模式的に示す図であり、図6(b)は図5と同様の図面で水の流れを模式的に示す図である。図6(a)、(b)において、太い実線は被処理水の流れを、太い破線は濃縮室への原水あるいは濃縮水から排出されるイオン含有水の流れを示す。細い破線は脱イオン運転時には使用されない部分である。
【0037】
一例として、第1のカチオン流路UU1の陰極室E1の開口41を被処理水の入口であるとする。被処理水は陰極室E1を収める枠体21及び濃縮室C1を収める枠体22を通って、カチオン除去室D1を収める枠体23に流入する。この際、被処理水が陰極室E1及び濃縮室C1を流れる電極水及び濃縮水(原水)と混合することはない。被処理水のごく一部は第1のカチオン流路UU1の陽極側まで進入するが、ほとんどの被処理水は分配部31を通ってカチオン除去室D1に流入し、カチオン除去が行われる。除去されたカチオンは陽極17、陰極16間の電位によって陰極16側に引き寄せられ、カチオン交換膜12を通過して濃縮室C1に流入する。カチオン除去の行われた被処理水は分配部32を通って第2のカチオン流路LL1に流入する。第2のカチオン流路LL1に流入した被処理水は陽極17側に流れ、渡り配管30を介して第1のアニオン流路UU2に流入する。
【0038】
第1のアニオン流路UU2に流入した被処理水は同様にして、アニオン除去室D2を収める枠体24に流入し、分配部33を通ってアニオン除去室D2に流入し、アニオン除去が行われる。この際、被処理水が陰極室E2及び濃縮室C2を流れる電極水及び濃縮水(原水)と混合することはない。除去されたアニオンは陽極17、陰極16間の電位によって陽極17側に引き寄せられ、アニオン交換膜14を通過して濃縮室C2に流入する。アニオン除去の行われた被処理水は分配部34を通って第2のアニオン流路LL2に流入する。第2のアニオン流路LL2に流入した被処理水は陰極室E1の開口47から装置1外に排出される。
【0039】
濃縮室C1,C2への原水は第1の濃縮室流路UU3の陰極16側の開口49から供給され、電極水と混合することなく陰極室E1を収める枠体21を通過し、枠体22に達する。原水の一部は分配部35aを通って濃縮室C1に流入する。原水の残りはさらに、被処理水と混合することなく、カチオン除去室D1及びアニオン除去室D2を各々収める各枠体23,24を順次通過し、枠体25に達し、分配部35bを通って濃縮室C2に流入する。濃縮室C1,C2に流入した原水は除去されたアニオン及びカチオンを含むイオン含有水となって、濃縮室C1の分配部36a及び濃縮室C2の分配部36bを通って第2の濃縮室流路LL3に流入し、陽極17側の出口52から排出される。
【0040】
次に、電気式脱イオン水製造装置1の洗浄時の作動について図7を用いて説明する。図7は図5と同様の模式図である。図7(a),(b)において、太い実線はカチオン除去室洗浄液の流れを、太い二点鎖線はアニオン除去室洗浄液の流れを、太い破線は濃縮室洗浄液の流れを示す。細い破線は洗浄時には使用されない部分である。
【0041】
まず、被処理水、濃縮室用原水、及び電極水の装置1内への流入を、図示しないバルブの閉止などの適宜の方法で停止し、さらに直流電源を停止する。次に、第2のカチオン流路LL1の陰極16側の入口43からカチオン除去室洗浄液を供給する。カチオン除去室洗浄液は、カチオン交換体を再生できるものであればよく、例えば、塩酸、硫酸等の酸性水溶液が挙げられる。供給された洗浄液は、第2のカチオン流路LL1を陽極17側に向かって流れ、分配部32を通ってカチオン除去室D1に流入する。カチオン交換体に吸着したNa+、Ca2+、Mg2+等のカチオン成分と、酸性液のH+とが置換されて、カチオン交換体が再生される。洗浄液は分配部31を通って第1のカチオン流路UU1に流入し、陽極17側の出口42から排出される。この間、カチオン除去室洗浄液が電極室E1,E2、濃縮室C1,C2、及びアニオン除去室D2に流入することはない。
【0042】
次に、同様にして、アニオン除去室D2の洗浄を行う。まず、第2のアニオン流路LL2の陽極17側の入口48からアニオン除去室洗浄液を供給する。アニオン除去室洗浄液は、アニオン交換体を再生できるものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性水溶液が挙げられる。供給された洗浄液は、第2のアニオン流路LL2を陰極16側に向かって流れ、分配部34を通ってアニオン除去室D2に流入し、アニオン交換体に吸着したCl-、CO32-、HCO3-、SiO2等のアニオン成分と、アルカリ性液のOH-とが置換されて、アニオン交換体が再生される。洗浄液は分配部33を通って第1のアニオン流路UU2に流入し、陰極16側の出口45から排出される。この間、アニオン除去室洗浄液が電極室E1,E2、濃縮室C1,C2、及びカチオン除去室D1に流入することはない。
【0043】
次に、同様にして、濃縮室C1,C2の洗浄を行う。濃縮室C1,C2の内部では、予期せぬ水質の悪化などに起因して被処理水中に含まれる硬度成分や炭酸成分が脱イオン水製造装置1の許容濃度を大きく超える場合や、長期間にわたって使用された場合に、炭酸カルシウムを主成分とするスケール生成がたびたび生じる。スケールが濃縮室C1,C2内部に生成されると、電圧の上昇や脱塩性能の低下、差圧上昇に起因した濃縮水の閉塞を招くため、濃縮室C1,C2内に生成したスケールを塩酸等の酸で溶解する洗浄工程を行うことが望ましい。
【0044】
この工程は、基本的に上述の洗浄工程と同様である。すなわち、第2の濃縮室流路LL3の陰極16側の入口51から塩酸等の濃縮室洗浄液を供給する。供給された洗浄液は、第2の濃縮室流路LL3を陽極17側に向かって流れ、濃縮室C1の分配部36a及び濃縮室C2の分配部36bを通って濃縮室C1,C2に流入し、スケールを除去する。洗浄液は濃縮室C1の分配部35a及び濃縮室C2の分配部35bを通って第1の濃縮室流路UU3に流入し、陽極17側の出口50から排出される。この間、濃縮室洗浄液が電極室E1,E2、カチオン除去室D1、及びアニオン除去室D2に流入することはない。
【0045】
上述の例では、脱イオン運転時には、被処理水は陰極16側の入口から入り、陰極16側の出口から排出され、原水は陰極16側の入口から入り、イオン含有水は陽極17側の出口から排出される。洗浄運転時には、洗浄対象により、洗浄液は陽極17側の入口から入り、陰極16側の出口から排出されるか、あるいは陰極16側の入口から入り、陽極17側の出口から排出される。しかし、水や薬剤の流れはこれに限定されない。例えばカチオン除去室D1の場合、カチオン除去室D1につながる流路の開口は陰極16側の上下に各1箇所(開口41,47)、陽極17側の上下に各1箇所(開口42,48)の合計4箇所設けられているが、これらの4箇所の開口のうち任意の2つを脱イオン運転用の入口及び出口に、残りの2つを洗浄用の入口及び出口に割り当てればよい。これによって、4箇所の開口のうち2つを脱イオン運転専用とし、残りの2つを洗浄運転専用とし、各開口に接続される配管を固定し、配管の付け替えを不要とすることができるのである。アニオン除去室D2及び濃縮室C1,C2についても同様である。なお、脱イオン運転時の被処理水の流れは、イオン交換体を安定化させるために、下向きまたは横向きの流れとすることが好ましいが、洗浄時には洗浄効果を高めるため、脱イオン運転時とは逆向きの流れ(向流)とすることが好ましい。
【0046】
(第2の実施形態)
上述の実施形態では、第1の流路UU1〜UU3及び第2の流路LL1〜LL3は全て、電極室E1,E2の外側間を延びており、この構成によってカチオン除去室、アニオン除去室、及び濃縮室を順次洗浄することが可能となっている。しかし、前述したように、カチオン除去室、アニオン除去室、及び濃縮室は洗浄の頻度に差がある場合があり、これらのうちのいずれかのみ、またはいずれか2つだけが上記の方法で洗浄可能であれば十分である場合もある。この場合、流路の一部を省略することができる。
【0047】
図8、9は濃縮室だけに洗浄用の流路が設けられている構成を示す図で、各々運転時と洗浄時の状態を示している。各図の見方は各々図6,7に準ずる。第1のカチオン流路UU1は、陰極室E1の外側から、カチオン除去室D1の上方に位置する第1のカチオン除去室隣接部61まで延び、第1のカチオン除去室隣接部61でカチオン除去室D1に接続している。第2のカチオン流路LL1は、陽極室E2の外側から、カチオン除去室D1を挟んで第1のカチオン除去室隣接部61と対向して位置する第2のカチオン除去室隣接部62まで延び、第2のカチオン除去室隣接部62でカチオン除去室D1に接続している。第1のアニオン流路UU2は、陽極室E2の外側から、アニオン除去室D2の上方に位置する第1のアニオン除去室隣接部63まで延び、第1のアニオン除去室隣接部63でアニオン除去室D2に接続している。第2のアニオン流路LL2は陰極室E1の外側から、アニオン除去室D2を挟んで第1のアニオン除去室隣接部63と対向して位置する第2のアニオン除去室隣接部64まで延び、第2のアニオン除去室隣接部64でアニオン除去室D2に接続している。しかしこれらの流路は反対側の電極室まで延びていない。この結果、電極室の枠体21,26には開口が上下合わせて4つしか設けられていない。これに対して第1、第2の濃縮室流路UU3,LL3は第1の実施形態と同様、電極室E1,E2の外側間を延びている。従って、濃縮室C1,C2の洗浄は第1の実施形態と全く同様の方法で実施することができる。
【0048】
図8,9の実施形態では、枠体に設ける貫通孔の位置、個数を共通化し、枠体の構成を画一化するため、カチオン除去室D1、アニオン除去室D2及び濃縮室C1,C2を収める枠体22〜25には上下各々3つの開口が設けられている。しかし、枠体22〜25に設けられる貫通孔は、運転に必要な貫通孔のみに限定することもできる。
【0049】
(第3の実施形態)
以上説明した実施形態では脱塩室は1つだけ設けられていたが、脱塩室は2以上設けられていてもよい。脱塩室を構成するカチオン除去室及びアニオン除去室、並びに濃縮室は上述したように枠体に収められてユニット化されているため、これらの枠体を必要な数だけ連結することによって、処理流量を容易に増加させることができる。
【0050】
図10は、脱塩室を2つ備えた電気式脱イオン水製造装置の概念図を示している。濃縮室C1,C2,C2’と脱塩室D,D’とが、一対の電極室E1,E2の間に、両端を濃縮室C1,C2’として交互に位置している。脱塩室Dはカチオン除去室D1及びアニオン除去室D2からなり、脱塩室D’はカチオン除去室D1’及びアニオン除去室D2’からなっている。脱塩室E1から濃縮室C2までの構成は脱塩室が1つしかない上述の実施形態と同様である、濃縮室C2とカチオン除去室D1’の間はカチオン交換膜12と同様のカチオン交換膜12’で仕切られ、カチオン除去室D1’とアニオン除去室D2’の間は中間イオン交換膜13と同様の中間イオン交換膜13’で仕切られ、アニオン除去室D2’と濃縮室C2’の間はアニオン交換膜14と同様のアニオン交換膜14’で仕切られ、濃縮室C2’と電極室E2の間は仕切り膜15で仕切られている。
【0051】
図示は省略するが、第1のカチオン流路は、一方の電極室の外側を始点として、各カチオン除去室の第1のカチオン除去室隣接部を通って、第1のカチオン流路の始点からみて最も遠いカチオン除去室の第1のカチオン除去室隣接部まで延び、各第1のカチオン除去室隣接部で各カチオン除去室と連通している。第2のカチオン流路は、一方の電極室の外側を始点として、各カチオン除去室の第2のカチオン除去室隣接部を通って、第2のカチオン流路の始点からみて最も遠いカチオン除去室の第2のカチオン除去室隣接部まで延び、各第2のカチオン除去室隣接部で各カチオン除去室と連通している、第1のアニオン流路は、一方の電極室の外側を始点として、各アニオン除去室の第1のアニオン除去室隣接部を通って、第1のアニオン流路の前記始点からみて最も遠いアニオン除去室の第1のアニオン除去室隣接部まで延び、各第1のアニオン除去室隣接部で各アニオン除去室と連通している。第2のアニオン流路は、一方の電極室の外側を始点として、各アニオン除去室の第2のアニオン除去室隣接部を通って、第2のアニオン流路の始点からみて最も遠いアニオン除去室の第2のアニオン除去室隣接部まで延び、各第2のアニオン除去室隣接部で各アニオン除去室と連通している。第1の濃縮室流路は、一方の電極室の外側を始点として、各濃縮室の第1の濃縮室隣接部を通って、第1の濃縮室流路の始点からみて最も遠い濃縮室の第1の濃縮室隣接部まで延び、各濃縮室の第1の濃縮室隣接部で各濃縮室と接続している。第2の濃縮室流路は、一方の電極室の外側を始点として、各濃縮室の第2の濃縮室隣接部を通って、第2の濃縮室流路の始点からみて最も遠い濃縮室の第2の濃縮室隣接部まで延び、各濃縮室の第2の濃縮室隣接部で各濃縮室と接続している。
【0052】
第1及び第2のカチオン流路、第1及び第2のアニオン流路、並びに第1及び第2の濃縮室流路は、前述のように、各濃縮室の互いに対向する側方を延びていてもよい。脱イオン運転時及び洗浄時の運転方法は脱塩室が1つしか設けられていない上述の実施態様の場合と同様である。脱塩室が3つ以上設けられる場合も同様の構成となることはいうまでもない。
【0053】
以上、電気式脱イオン水製造装置の実施形態について説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されないことは勿論である。一例として、被処理水は、まずアニオン除去室に入ってアニオン除去が行われ、次にカチオン除去室に入ってカチオン除去が行われてもよい。この場合、アニオン除去室に連通する第2のアニオン流路とカチオン除去室に連通する第1のカチオン流路とが、同じ電極室側の端部同士で連通する。
【実施例】
【0054】
次に実施例、比較例を挙げて、本発明の電気式脱イオン水製造装置の効果を説明する。
【0055】
(実施例1)
上述の構成の電気式脱イオン水製造装置を用いて、下記仕様、運転条件にて1年間の連続運転を行った。
【0056】
1年間の連続運転後、あらかじめ洗浄液を供給及び排出する配管を接続し、通電通水を停止してすぐに、カチオン除去室、アニオン除去室及び濃縮室を薬品洗浄した。カチオン除去室の洗浄は、3.5質量%塩酸水溶液を被処理水の通水方向と向流で通水し、その後、比抵抗値15MΩ・cm以上の超純水を通水して行った(カチオン洗浄)。アニオン除去室の洗浄は、4質量%水酸化ナトリウム水溶液を被処理水の通水方向と向流で通水し、その後、比抵抗値15MΩ・cm以上の超純水を通水して行った(アニオン洗浄)。濃縮室の洗浄は、3.5質量%塩酸水溶液を被処理水の通水方向と同方向で通水し、その後、比抵抗値15MΩ・cm以上の超純水を通水して行った。洗浄後、同様の条件で運転を再開した。
【0057】
〈電気式脱イオン水製造装置仕様〉
脱塩室陽極側イオン交換膜:アニオン交換膜
脱塩室陰極側イオン交換膜:カチオン交換膜
脱塩室中間イオン交換膜:アニオン交換膜
陽極室と濃縮室との仕切り膜:カチオン交換膜
陰極室と濃縮室との仕切り膜:アニオン交換膜
アニオン除去室:縦300mm、横80mm、厚さ5mm
アニオン除去室の充填イオン交換体:アニオン交換樹脂
アニオン除去室の数:3室
カチオン除去室:縦300mm、横80mm、厚さ5mm
カチオン除去室の充填イオン交換体:カチオン交換樹脂
カチオン除去室の数:3室
濃縮室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
濃縮室の充填イオン交換体:アニオン交換樹脂
陽極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陽極室の充填イオン交換体:カチオン交換体
陰極室:縦300mm、横80mm、厚さ4mm
陰極室の充填イオン交換体:アニオン交換体
〈運転条件〉
被処理水の導電率:5±2 μS/cm(RO膜の透過水)
脱塩室の被処理水流量:80 L/h
濃縮水の原水の導電率:5±2 μS/cm(RO膜の透過水)
濃縮水流量:8 L/h
電極水の原水の導電率:5±2 μS/cm(RO膜の透過水)
電極水流量:10 L/h
運転電流値:1 A
電流密度:0.42 A/dm2
【0058】
(比較例1)
本発明のような洗浄液の流路を持たないこと以外は、実施例1と同様の仕様、運転条件にて1年間の連続運転を行った。
【0059】
1年間の連続運転後、通電通水を停止して流入口及び流出口に接続された配管を取り外し、洗浄液を供給及び排出する配管を同じ流入口と流出口にそれぞれ接続し、カチオン除去室、アニオン除去室及び濃縮室を薬品洗浄した。洗浄方法は、実施例1と同様である。洗浄後、同様の条件で運転を再開した。
【0060】
(比較例2)
比較例1と同様の仕様、運転条件にて1年間の連続運転を行った。ただし、電気式脱イオン水製造装置の前後段の配管は、洗浄液が供給及び排出できるように分岐した構造とした。
【0061】
1年間の連続運転後、電気式脱イオン水製造装置の前後段から分岐した配管を洗浄用の配管とあらかじめ接続し、通電通水を停止してすぐにカチオン除去室、アニオン除去室及び濃縮室を薬品洗浄した。この場合、カチオン除去室とアニオン除去室の洗浄は別々に行うことはできないため、脱塩室の洗浄は、カチオン洗浄、アニオン洗浄の順で行った。それぞれの洗浄方法は、実施例1と同様である。洗浄後、同様の条件で運転を再開した。
【0062】
表1に示すように、比較例1では、配管の取り外しや接続の手間がかかるため、運転を停止してから洗浄を開始するまでに時間がかかってしまうが、実施例1では洗浄開始までの時間を大幅に短縮できることが分かる。比較例2では、配管の取り外し等は不要であるが、カチオン除去室及びアニオン除去室を別々に洗浄することができない。このため、洗浄作業に時間がかかる上、洗浄後の再開運転において採水可能な水質(比抵抗値15MΩ・cm以上)になるまで長い時間を要した。実施例1では、このような課題も解消されていることがわかる。
【0063】
【表1】

【符号の説明】
【0064】
1,1’ 電気式脱イオン水製造装置
11,15 仕切り膜
12 カチオン交換膜
13 中間イオン交換膜
14 アニオン交換膜
16 陰極
17 陽極
21〜26 枠体
30 渡り配管
31〜36 分配部
41〜52 開口部
C1,C2,C2’ 濃縮室
D,D 脱塩室
D1,D1’ カチオン除去室
D2,D2’ アニオン除去室
E1,E2 電極室
UU1〜UU3,LL1〜LL3 貫通孔
UU1〜UU2 第1〜第1のアニオン流路
UU3 第1の濃縮室流路
LL1〜LL2 第1〜第2のアニオン流路
LL3 第2の濃縮室流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカチオン交換体が充填されるカチオン除去室と、中間イオン交換膜を介して前記カチオン除去室と隣接して位置する、少なくともアニオン交換体が充填されるアニオン除去室と、を含む脱塩室と、
前記脱塩室の両側に位置する一対の濃縮室であって、前記カチオン除去室側の濃縮室がカチオン交換膜を介して、前記アニオン除去室側の濃縮室がアニオン交換膜を介して、該脱塩室と隣接して位置する一対の濃縮室と、
前記カチオン交換膜が陰極側、前記アニオン交換膜が陽極側となるように前記濃縮室及び前記脱塩室を挟んで位置する一対の電極室と、
一方の前記電極室の外側から、前記カチオン除去室の上方または側方に位置する第1のカチオン除去室隣接部まで延び、該第1のカチオン除去室隣接部で前記カチオン除去室に接続する第1のカチオン流路と、
一方の前記電極室の外側から、前記カチオン除去室を挟んで前記第1のカチオン除去室隣接部と対向して位置する第2のカチオン除去室隣接部まで延び、該第2のカチオン除去室隣接部で前記カチオン除去室に接続する第2のカチオン流路と、
一方の前記電極室の外側から、前記アニオン除去室の上方または側方に位置する第1のアニオン除去室隣接部まで延び、該第1のアニオン除去室隣接部で前記アニオン除去室に接続する第1のアニオン流路と、
一方の前記電極室の外側から、前記アニオン除去室を挟んで前記第1のアニオン除去室隣接部と対向して位置する第2のアニオン除去室隣接部まで延び、該第2のアニオン除去室隣接部で前記カチオン除去室に接続する第2のアニオン流路と、
一方の前記電極室の外側を始点として延びる第1の濃縮室流路であって、該第1の濃縮室流路は各濃縮室の上方または側方に位置する一対の第1の濃縮室隣接部を含み、該第1の濃縮室流路は、前記始点からみて近い側の濃縮室の前記第1の濃縮室隣接部を通って遠い側の濃縮室の前記第1の濃縮室隣接部まで延び、該一対の第1の濃縮室隣接部の各々で前記一対の濃縮室の各々に接続する第1の濃縮室流路と、
一方の前記電極室の外側を始点として延びる第2の濃縮室流路であって、該第2の濃縮室流路は各濃縮室を挟んで前記一対の第1の濃縮室隣接部の各々と対向して位置する一対の第2の濃縮室隣接部を含み、該第2の濃縮室流路は、前記第2の濃縮室流路の前記始点からみて近い側の濃縮室の前記第2の濃縮室隣接部を通って遠い側の濃縮室の前記第2の濃縮室隣接部まで延び、該一対の第2の濃縮室隣接部の各々で前記一対の濃縮室の各々に接続する第2の濃縮室流路と、
を有し、
前記第2のカチオン流路と前記第1のアニオン流路、または前記第2のアニオン流路と前記第1のカチオン流路は、同じ電極室の外側で連通しており、
前記第1のカチオン流路及び前記第2のカチオン流路、または前記第1のアニオン流路及び前記第2のアニオン流路、または前記第1の濃縮室流路及び前記第2の濃縮室流路の少なくともいずれかは、一方の前記電極室の外側から他方の前記電極室の外側まで延びている、電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記第1のカチオン流路及び前記第2のカチオン流路、及び前記第1のアニオン流路及び前記第2のアニオン流路、及び前記第1の濃縮室流路及び前記第2の濃縮室流路は全て、一方の前記電極室の外側から他方の前記電極室の外側まで延びている、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
前記一対の電極室、前記カチオン除去室、前記アニオン除去室、及び前記一対の濃縮室は、貫通孔を備え互いに密接して配置された枠体の内部に個々に設けられており、前記第1及び第2のカチオン流路、前記第1及び第2のアニオン流路、及び前記第1及び第2の濃縮室流路は、一部または全部の枠体の互いに共通する位置に設けられた前記貫通孔同士が互いに連通することによって形成されている、請求項1または2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記脱塩室は2以上設けられ、前記濃縮室と前記脱塩室とが、前記一対の電極室の間に、両端を前記濃縮室として交互に位置しており、
前記第1のカチオン流路は、一方の前記電極室の外側を始点として、各カチオン除去室の前記第1のカチオン除去室隣接部を通って、該第1のカチオン流路の前記始点からみて最も遠いカチオン除去室の前記第1のカチオン除去室隣接部まで延び、各第1のカチオン除去室隣接部で各カチオン除去室と連通し、
前記第2のカチオン流路は、一方の前記電極室の外側を始点として、各カチオン除去室の前記第2のカチオン除去室隣接部を通って、該第2のカチオン流路の前記始点からみて最も遠いカチオン除去室の前記第2のカチオン除去室隣接部まで延び、各第2のカチオン除去室隣接部で各カチオン除去室と連通し、
前記第1のアニオン流路は、一方の前記電極室の外側を始点として、各アニオン除去室の前記第1のアニオン除去室隣接部を通って、該第1のアニオン流路の前記始点からみて最も遠いアニオン除去室の前記第1のアニオン除去室隣接部まで延び、各第1のアニオン除去室隣接部で各アニオン除去室と連通し、
前記第2のアニオン流路は、一方の前記電極室の外側を始点として、各アニオン除去室の前記第2のアニオン除去室隣接部を通って、該第2のアニオン流路の前記始点からみて最も遠いアニオン除去室の前記第2のアニオン除去室隣接部まで延び、各第2のアニオン除去室隣接部で各アニオン除去室と連通し、
前記第1の濃縮室流路は、一方の前記電極室の外側を始点として、各濃縮室の前記第1の濃縮室隣接部を通って、該第1の濃縮室流路の前記始点からみて最も遠い濃縮室の前記第1の濃縮室隣接部まで延び、各濃縮室の前記第1の濃縮室隣接部で各濃縮室と接続し、
前記第2の濃縮室流路は、一方の前記電極室の外側を始点として、各濃縮室の前記第2の濃縮室隣接部を通って、該第2の濃縮室流路の前記始点からみて最も遠い濃縮室の前記第2の濃縮室隣接部まで延び、各濃縮室の前記第2の濃縮室隣接部で各濃縮室と接続している、請求項1から3のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−56407(P2011−56407A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209357(P2009−209357)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】