説明

電気接続用端子及びその加熱処理方法並びに加熱処理装置

【課題】ウィスカの発生及びはんだ付け性の劣化を確実に防止するとともに量産性を向上させることの可能な電気接続用端子及びその加熱処理方法並びに加熱処理装置を提供する。
【解決手段】一端側のめっき層のみを、電磁波加熱によりリフローすることにより形成したので、ウィスカの発生を防止することができ、ウィスカによる各端子10間の短絡を確実に防止することができる。また、各端子10の他端側のめっき層の厚さ寸法にばらつきが発生しないので、他端側のはんだ付け性を劣化させることがなく、接触不良を確実に防止することができる。さらに、めっき層の加熱範囲を広くすることができるので、例えばレーザビームのように加熱範囲を移動させる必要がないことから、めっき層のリフローに要する時間を短縮することができ、電気接続端子の量産性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフレキシブルプリント回路(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)等と回路基板とを電気的に接続するための電気接続用端子及びその加熱処理方法並びに加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気接続用端子としては、一端側を一方の接続対象物に接触させるとともに、他端側を他方の接続対象物に接触させるように形成され、表面全体にはめっき層が形成されたものが知られている。
【0003】
この電気接続用端子のめっき層には、電子部品の無鉛化の要請に対応して錫からなるめっき層が用いられるようになっている。しかしながら、錫をめっき層として用いたときには、めっき層からウィスカが発生し易くなり、例えば複数の電気接続用端子を互いに隣接して配置した場合には、ウィスカが隣接する電気接続用各端子に接触して各端子間が短絡するという問題点があった。
【0004】
そこで、ウィスカの発生を防止するために、ガスバーナーを用いてめっき層を加熱溶融することによりリフローするようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この場合には、表面全体のめっき層の全てがガスバーナーによりリフローされるので、電気接続用端子の表面形状に応じてめっき層の厚さ寸法にばらつきが生じる。これにより、例えば電気接続用端子の一部をはんだ付けするように形成した場合において、電気接続用端子の一部のめっき層がリフローされることによりその厚さ寸法が小さくなると、はんだ付け性が劣化して接触不良になるおそれがあるという問題点があった。
【0005】
また、めっき層の一部のみを、レーザビームを用いて加熱することによりリフローするようにした電気接続用端子も知られている。
【特許文献1】特開2005−307240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来例では、レーザビームのスポット径が小さいことから、めっき層の加熱範囲が極めて狭くなり、例えばめっき層をリフローする範囲が広い場合には、レーザビームを移動させる必要がある。これにより、レーザビームの移動に伴ってめっき層のリフローに要する時間が増大するので、電気接続用端子の量産性が損なわれるという問題点があった。また、レーザビームを用いた場合にはめっき層の表面部分のみが局所的に加熱されることから、ウィスカの発生を確実に防止することができないという問題点もある。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウィスカの発生及びはんだ付け性の劣化を確実に防止するとともに量産性を向上させることの可能な電気接続用端子及びその加熱処理方法並びに加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気接続用端子は、前記目的を達成するために、一端側を一方の接続対象物に接触させるとともに、他端側を他方の接続対象物に接触させるように形成され、表面全体にはめっき層が形成された電気接続用端子において、前記一端側のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローすることにより形成している。
【0009】
また、本発明の電気接続用端子の加熱処理方法は、前記目的を達成するために、一端側が一方の接続対象物に接触するとともに他端側が他方の接続対象物に接触するように形成された電気接続用端子の表面全体に被覆されためっき層をリフローするようにした電気接続用端子の加熱処理方法において、前記電気接続用端子の一端側のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローする工程を有している。
【0010】
さらに、本発明の電気接続用端子の加熱処理装置は、前記目的を達成するために、一端側が一方の接続対象物に接触するとともに他端側が他方の接続対象物に接触するように形成された電気接続用端子の表面全体に被覆されためっき層をリフローするようにした電気接続用端子の加熱処理装置において、前記電気接続用端子の一端側のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローする電磁波加熱部を備えている。
【0011】
これにより、電気接続用端子の一端側のめっき層のみが電磁波加熱によりリフローされるので、一端側のめっき層からウィスカが発生することがない。また、他端側のめっき層がリフローされることがないことから、他端側のめっき層の厚さ寸法にばらつきが発生することがない。さらに、電磁波加熱によりリフローされるので、めっき層の加熱範囲が広くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウィスカの発生を防止することができるので、ウィスカによる各電気接続端子間の短絡を確実に防止することができる。また、電気接続端子の他端側のめっき層の厚さ寸法にばらつきが発生しないので、他端側のはんだ付け性を劣化させることがなく、接触不良を確実に防止することができる。さらに、めっき層の加熱範囲を広くすることができるので、例えばレーザビームのように加熱範囲を移動させる必要がないことから、めっき層のリフローに要する時間を短縮することができ、電気接続端子の量産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図6は本発明の一実施形態を示すもので、図1は電気接続用端子の基材の一例を示す図、図2は電磁波加熱部の斜視図、図3は電磁波加熱部の正面図、図4はコネクタの斜視図、図5及び図6はコネクタの動作を示す側面断面図である。
【0014】
本実施形態の電気接続用端子(以下、端子という)10は、一方の接続対象物としてのフレキシブル回路Aと他方の接続対象物としての回路基板Bとを電気的に接続するためのコネクタに用いられるものであり、一端側がフレキシブル回路Aに接触し、他端側が回路基板Bに接触するように形成されている。また、端子10の表面全体にはめっき層が形成されており、端子10の一端側のめっき層のみが加熱処理装置20を用いてリフローされている。以下に、端子10の加熱処理方法及び加熱処理装置20について説明する。
【0015】
端子10は銅合金等の導電性の基材1からなり、基材1は、周知のプレス加工方法を用いて打ち抜かれることにより、図1に示すように基材1の幅方向に互いに間隔をおいて配置された複数の端子10と、基材1の幅方向に延びる端子接続部1aと、各端子10と端子接続部1aとを連結する連結部1bとが形成されている。
【0016】
各端子10の一端側には、互いに基材1の幅方向に間隔をおいて上方に二股状に延びる固定片部11及び弾性片部12が形成されている。弾性片部12は、基材1の幅方向に弾性変形可能に形成され、その先端側には接触部12aが固定片部11側に向かって突設されている。各端子10の他端側は、固定片部11の下端側と弾性片部12の下端側とを連結するように形成されており、固定片部11の下端側は連結部1bと一体に形成されている。また、弾性片部12の下端側には、下方に延びる接続部13が形成されている。さらに、基材1の表面全体には、錫または錫合金からなるめっきが周知のめっき被覆方法を用いて被覆されている。
【0017】
加熱処理装置20は、図2に示すように各端子10の一端側、即ち固定片部11及び弾性片部12のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローする電磁波加熱部21と、各端子10を電磁波加熱部21に搬送する搬送機構22とから構成されている。電磁波加熱部21は水平方向に延びる導電部材としての金属板からなり、交流電源23に接続されている。また、電磁波加熱部21には、水平方向一端側から他端側(図中反Y方向)に向かって延びる切欠21aが形成されており、電磁波加熱部21は、切欠21aの先端側を含む金属板の一部が上方(図中Z方向)に屈曲するように形成されている。即ち、切欠21aは略L字状に形成されており、各端子10を電磁波加熱部21の水平方向他端側から一端側(図中Y方向)に向かって挿通させるようになっている。なお、切欠21aの先端側、即ち上方に延びるように形成された部分は各端子10の一端側のみを挿通可能に形成されており、本願請求項でいう溝部21bを構成している。搬送機構22は、レール等を備えた周知の構成をなし、切欠21aの下方において切欠21aに沿って延びるように設けられている。搬送機構22は、基材1の端子接続部1aを支持しながら電磁波加熱部21の水平方向他端側から一端側(図中Y方向)に搬送するようになっている。この場合、各端子10は、図3に示すように、その一端側の先端が切欠21aの上面、即ち水平方向に延びる金属板の上面に沿って搬送されるようになっている。
【0018】
ここで、加熱処理装置20の動作を説明する。まず、電磁波加熱部21には交流電源23から交流電流が通電しており、切欠21aには、交流電流による磁力線が発生している。ここで、各端子10が搬送機構22によって電磁波加熱部21側(図中Y方向)に搬送されると、各端子10の一端側のみが溝部21bを介して切欠21aに挿通される。そして、各端子10の一端側のめっき層は、切欠21aにおいて交流電流の電磁誘導作用によって加熱溶融され、各端子10が切欠21aを通過した後に冷却される。これにより、各端子10の一端側のめっき層のみがリフローされる。なお、リフローされた各端子10は、その他端側と連結部1bとを切断することにより、基材1から分離される。
【0019】
次に、本実施形態の端子10を備えたコネクタ及びその動作について説明する。このコネクタは、フレキシブル回路Aの一端側が挿入されるコネクタ本体30と、コネクタ本体30に回動自在に設けられた押圧部材40と、コネクタ本体30内に互いに幅方向に等間隔で配列された複数の端子10とから構成されている。
【0020】
フレキシブル回路Aは、いわゆるフレキシブルフラットケーブル(FFC)またはフレキシブルプリント回路(FPC)からなり、その先端側の下方の面には複数の電気接点(図示省略)が互いに幅方向に間隔をおいて設けられている。
【0021】
コネクタ本体30は合成樹脂の成形品からなり、その前面にはフレキシブル回路Aを挿入するための開口部30aが設けられている。即ち、コネクタ本体30は、上面部31、背面部32、側面部33及び底面部34からなり、背面部32側には各端子10を保持する複数の端子孔30bが互いに幅方向に等間隔で設けられている。
【0022】
また、各端子10は、コネクタ本体30の各端子孔30bにそれぞれ背面部32側から圧入することによって保持される。この場合、各端子10の弾性片部12はフレキシブル回路Aの下方の面側に配置されるとともに、固定片部11はフレキシブル回路Aを間にして弾性片部12と対向するように配置されている。固定片部11はコネクタ本体30の上面部31に沿って前後方向に延び、その先端側は端子孔30bから前方に突出している。各端子10の他端側はコネクタ本体30の背面部32に沿って上下方向に延びるとともに、コネクタ本体30の背面部32から外部に露出している。また、接続部13は回路基板Bに接触するようになっている。
【0023】
押圧部材40は合成樹脂の成形品からなり、コネクタ本体30の外部に配置される操作部41と、コネクタ本体30内に配置される押圧片42と、コネクタ本体30内に挿入される左右一対のアーム部43とから構成されている。操作部41は押圧部材40の幅方向に延び、その両端には把持部41aが突設されている。また、操作部41の下面中央にはフレキシブル回路Aを挿通可能な凹部41bが設けられている。押圧片42は操作部41の背面中央から後方に延び、各端子10の固定片部11の下方に位置するようになっている。各アーム部43は操作部41の背面両端側から後方に向かって延び、それぞれコネクタ本体30に上下方向に回動可能に支持されている。
【0024】
以上のように構成されたコネクタは、各端子10の接続部13を回路基板Bにはんだ付けすることにより、各端子10が回路基板Bに接続される。ここで、押圧部材40が上方に回動した状態でフレキシブル回路Aをコネクタ本体30の開口部30aからコネクタ本体30の後方に向かって挿入すると、フレキシブル回路Aは、その下方の面が弾性片部12の接触部12aに接触しながら、背面部32の前面側に係止する。次に、押圧部材40を下方に回動すると、フレキシブル回路Aは押圧部材40によって下方に押圧される。このとき、各端子10の接触部12aがフレキシブル回路Aの電気接点に接触することにより、フレキシブル回路Aと回路基板Bとが各端子10を介して電気的に接続される。この場合、固定片部11が押圧片42に接触するとともに、接触部12aがフレキシブル回路Aに接触しているが、各端子10の一端側、即ち固定片部11及び弾性片部12はリフローされているため、ウィスカが発生することがない。
【0025】
このように、本実施形態の端子10及びその加熱処理方法並びに加熱処理装置20によれば、一端側のめっき層のみを、電磁波加熱によりリフローすることにより形成したので、ウィスカの発生を防止することができ、ウィスカによる各端子10間の短絡を確実に防止することができる。また、各端子10の他端側のめっき層の厚さ寸法にばらつきが発生しないので、他端側のはんだ付け性を劣化させることがなく、接触不良を確実に防止することができる。さらに、めっき層の加熱範囲を広くすることができるので、例えばレーザビームのように加熱範囲を移動させる必要がないことから、めっき層のリフローに要する時間を短縮することができ、電気接続端子の量産性を向上させることができる。
【0026】
また、めっき層は錫または錫合金からなるようにしたので、めっき層を安価に形成することができ、各端子10の製造コストを低減することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の加熱処理装置20によれば、電磁波加熱部21は導電部材を有し、導電部材には各端子10の一端側のみを挿通可能な溝部21bを設けたので、各端子10の一端側のみを溝部21bに挿通させることで各端子10の一端側のめっき層のみを電磁波加熱することができ、各端子10一端側のめっき層のみを容易にリフローすることができる。
【0028】
さらにまた、導電部材は、各端子10の挿通方向(図中Y方向)に延びる切欠21aを有する金属板からなり、溝部21bを、切欠21aの先端側を含む金属板の一部を各端子10の挿通方向に直交する方向(図中Z方向)に屈曲させることにより形成したので、簡易な構成で各端子10一端側のめっき層のみをリフローすることができ、結果として各端子10の製造コストを低減させることができる。
【0029】
なお、上記実施形態は本発明の一具体例に過ぎず本発明が上記実施形態のみに限定されることはない。例えば、前記実施形態では、交流による電磁波加熱を用いたものを示したが、マイクロ波を用いて電磁波加熱を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態による電気接続用端子の基材の一例を示す図
【図2】電磁波加熱部の斜視図
【図3】電磁波加熱部の正面図
【図4】コネクタの斜視図
【図5】コネクタの動作を示す側面断面図
【図6】コネクタの動作を示す側面断面図
【符号の説明】
【0031】
10…電気接続用端子、20…加熱処理装置、21…電磁波加熱部、21a…切欠、21b…溝部、A…フレキシブル回路、B…回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側を一方の接続対象物に接触させるとともに、他端側を他方の接続対象物に接触させるように形成され、表面全体にはめっき層が形成された電気接続用端子において、
前記一端側のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローすることにより形成した
ことを特徴とする電気接続用端子。
【請求項2】
前記めっき層は錫または錫合金からなる
ことを特徴とする請求項1記載の電気接続用端子。
【請求項3】
一端側が一方の接続対象物に接触するとともに他端側が他方の接続対象物に接触するように形成された電気接続用端子の表面全体に被覆されためっき層をリフローするようにした電気接続用端子の加熱処理方法において、
前記電気接続用端子の一端側のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローする工程を有する
ことを特徴とする電気接続用端子の加熱処理方法。
【請求項4】
前記めっき層は錫または錫合金からなる
ことを特徴とする請求項3記載の電気接続用端子の加熱処理方法。
【請求項5】
一端側が一方の接続対象物に接触するとともに他端側が他方の接続対象物に接触するように形成された電気接続用端子の表面全体に被覆されためっき層をリフローするようにした電気接続用端子の加熱処理装置において、
前記電気接続用端子の一端側のめっき層のみを電磁波加熱によりリフローする電磁波加熱部を備えた
ことを特徴とする電気接続用端子の加熱処理装置。
【請求項6】
前記電磁波加熱部は導電部材を有し、
導電部材には電気接続用端子の一端側のみを挿通可能な溝部を設けた
ことを特徴とする請求項5記載の電気接続用端子の加熱処理装置。
【請求項7】
前記導電部材は、電気接続用端子の挿通方向に延びる切欠を有する金属板からなり、
溝部を、切欠の先端側を含む金属板の一部を電気接続用端子の挿通方向に直交する方向に屈曲させることにより形成した
ことを特徴とする請求項6記載の電気接続用端子の加熱処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−21559(P2008−21559A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193288(P2006−193288)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(390012977)イリソ電子工業株式会社 (76)
【Fターム(参考)】