説明

電気機器設置構造

【課題】 ステーパイプを用いながらも、固定の際の引き付け力等の外力や後の残留応力の影響と絶縁し得るようにして薄型化や耐久性の向上を図り得る電気機器設置構造を提供する。
【解決手段】 ステーパイプ6の基端部61を取付金具5のステーパイプ取付部52に締結し、ステーパイプ6の先端部62を浴室壁の貫通孔に挿通して浴室外面においてナットにより締結することで、取付金具5の本体部51を浴室壁に固定設置させる。リモコン2のコード24を内孔521及びステーパイプ6内を通して浴室外に延ばした状態で、リモコン2の上部係止部221に係止爪531を係止させ、連結部532に下部連結部213,222を併せて連結片9で連結させることで、取付金具5に支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートコントローラ(リモコン)等の電気機器を壁面に設置するための電気機器設置構造に関し、特に取付・固定に伴う外力や残留応力の影響から絶縁された状態で設置し得るようにして電気機器の耐久性向上や薄型化を実現させ得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、リモコンを浴室の壁面に設置するための設置構造として、壁面に貫通配置させたステーパイプによってリモコンを壁面に設置すると共にリモコンへの接続コードをステーパイプ内を通して配線させるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。このものでは、リモコンの背面からステーパイプ取付部を浴室壁面の貫通孔内に突出させ、貫通孔内に挿通させたステーパイプの基端部をステーパイプ取付部に螺合させる一方、そのステーパイプの先端部を浴室外の壁面に対しナットにより締め付けることで、(壁を挟み込んで浴室外から締め付け力を付与した状態で)リモコンを固定するようにしている。
【0003】
又、ステーパイプ取付部をリモコンの背面からリモコンの内側に突出させ、つまりリモコン背面に凹状のステーパイプ取付部を形成し、このステーパイプ取付部に対し上記と同様に螺合させたステーパイプの先端部を浴室外の壁面に対しナットにより締め付けるようにした設置構造も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらに、ステーパイプ取付部の内周面と、ステーパイプの基端部の外周面との螺合関係を逆にして、貫通孔の内径をより小さくし得るようにすることも提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−98279号公報
【特許文献2】特開平10−42382号公報
【特許文献3】特開2002−295896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、いずれの提案に係る設置構造においても、浴室外でのナットの締め付けにより、その締め付け力(引き付け力)がステーパイプを介してステーパイプ取付部に作用し、このステーパイプ取付部が形成されているリモコンの背面壁に作用することになる。
【0007】
例えば図6に示すように、ナット101を締め付けていくと、ステーパイプ102が浴室外のナット101側(図面の右側)に引き付けられ、この引き付け力がステーパイプ取付部103に作用する結果、リモコン104の背面壁(裏蓋)105が浴室壁面106に密着するように引き付けられると共に、ステーパイプ取付部103が形成されたリモコン裏蓋105のほぼ中央部位に対し浴室外のナット101側へ向けた引張力が作用することになる。このように、従来の設置構造はリモコン104のステーパイプ取付部103に対しステーパイプ102を介して引き付け力を作用させることにより、リモコン104を浴室壁面106に対し密着するように固定するものであるため、特にその引き付け力が中央部位に作用するリモコン裏蓋105を上記の引き付け力に抗して平板状態を維持し得るように剛性を高める必要がある。このため、従来の設置構造ではその電気機器であるリモコン裏蓋105が分厚くなってリモコン104の薄型化を阻害する要因となっている。しかも、上記の引き付け力や、残留応力により、上記の例におけるリモコン裏蓋105にゆがみ等の変形が生じると、特にシール性の悪化に伴い内部の回路基板の損傷等を招くことになる。特にシール性の悪化は浴室用リモコン等の高温多湿環境下に設置される電気機器の場合には耐久性の点で不都合をもたらすため、これを確実に回避するためにも、上記の薄型化は困難となる。なお、図6ではステーパイプ取付部103が突出するタイプのものを図示しているが、凹状に形成された場合も同様の不都合を抱えている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ステーパイプを用いながらも、固定の際の引き付け力等の外力や後の残留応力の影響と絶縁し得るようにして薄型化や耐久性の向上を図り得る電気機器設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、一端部が壁の一側面において締結される一方、他端部がその壁の貫通孔に対し挿通配置されて上記壁の他側面の側に延ばされたステーパイプによって、電気機器が上記壁の他側面において設置されるようにした電気機器設置構造を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記ステーパイプ内と連通する内孔が上記壁の他側面に開口するよう上記ステーパイプの他端部と結合される板状の取付部材を備えることとし、上記取付部材として、上記一端部からの締結力を受けることにより、その後面が上記壁の他側面に対し固定設置されるように構成される一方、前面側に対し上記電気機器を着脱可能に連結して支持可能な電気機器取付部を備えるものとした(請求項1)。
【0010】
本発明の場合、ステーパイプの一端部が壁の一側面において締結されることにより、取付部材が壁を挟み付けた状態でその壁の他側面に固定設置されることになる。そして、この取付部材に対し電気機器取付部により電気機器が連結されて支持されることになる。これにより、ステーパイプを介して壁を挟み付けることで固定設置するという設置構造を採用したとしても、固定設置に伴いステーパイプを介して作用する外力は取付部材に対してのみ作用し、その外力が電気機器に対し作用することはないため、電気機器を構成する筐体として特に背面壁部分を従来のものよりも薄肉厚化することが可能となる。つまり、電気機器は固定設置の際に作用することになる外力や固定設置後の残留応力と縁切りされているため、その外力に対抗し得るだけの剛性を確保し得る肉厚設定がなされていた従来の場合と比べ、その薄型化を阻害する要因を除去して、薄肉化することが可能となる。これにより、ステーパイプを用いて壁に設置するための電気機器において薄型化が図られることになる。しかも、電気機器が設置固定に伴う外力や残留応力等から縁切りされて、電気機器が内蔵している回路基板等の密着性やシール性に影響しないようにしているため、その電気機器の保護機能を増大させて耐久性の増大をも図り得ることになる。又、電気機器のメンテナンス時又は交換時においても、取付部材から電気機器のみを独立して外すことが可能となり、取付部材は固定設置状態のままにしておくことができるため、メンテナンス作業の容易化や、省力化や省部品化を図り得ることになる。さらに、当初設置の電気機器とは種類の異なる電気機器についても、上記取付部材の電気機器取付部により支持される構成としておけば、種類の異なる電気機器に対しても同じ取付部材を共用の部品として用いることが可能になる。
【0011】
上記の発明における取付部材として、その後面から突出して上記ステーパイプの他端部と取付可能なステーパイプ取付部を一体に備え、このステーパイプ取付部により上記ステーパイプの他端部と結合される構成とすることができる(請求項2)。このようにすることにより、設置対象の壁の厚みに応じてステーパイプの長さを選択することが可能となる。又、上記の発明における取付部材として、その後面から突出するよう予め一体に固定されたステーパイプを備える構成とすることができる(請求項3)。このようにすることにより、設置対象の壁が画一的であれば、ステーパイプを一体に固定しておくことで、設置の作業工程を省力化し得ることになる。
【0012】
又、上記発明において、上記取付部が板状の本体部を備え、この本体部に対し、その後面側に上記壁の他側面との間に挟み込むためのパッキン又はその前面側に上記電気機器との間に挟み込むためのパッキンを収容するための扁平凹部が段差を介して形成されている構成を採用することができる(請求項4)。このようにすることにより、シール性向上のためのパッキンの介装が可能になる上に、段差を介して形成される扁平凹部によって板状の本体部の剛性増大を図り得るようになる。この結果、本体部の板厚をより薄肉化して電気機器を含んだ設置構造全体の薄型化に寄与し得ることになる。
【0013】
さらに、上記発明における壁として浴室を区画形成する浴室壁とし、上記電気機器として浴室の浴室面に設置される浴室用リモコンとすることができる(請求項5)。このように浴室壁に設置される浴室用リモコンに本発明の電気機器設置構造を適用することにより、浴室用リモコンの筐体の強度を設計するにあたり、季節変化や浴室乾燥機の作動等に伴う高温・低温環境又は多湿・乾燥環境の繰り返しを受けることによる経時的なゆがみ変形等の発生のおそれを考慮する必要がないため、浴室用リモコンの大幅な薄型化を実現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の電気機器設置構造によれば、電気機器の固定設置の際に作用することになる外力や固定設置後の残留応力から電気機器を縁切りさせることができ、その外力に対抗し得るだけの剛性を確保し得る肉厚設定がなされていた従来の場合と比べ、その薄型化を阻害する要因を除去して、薄肉化することができるようになる。これにより、ステーパイプを用いて壁に設置するための電気機器において薄型化を図ることができるようになる。しかも、設置固定に伴う外力や残留応力等が電気機器内の回路基板等の密着性やシール性に直接影響しないようにすることができ、電気機器の保護機能を増大させて耐久性の増大をも図ることができるようになる。又、電気機器のメンテナンス時又は交換時においても、取付部材から電気機器のみを独立して外すことができる一方、取付部材を固定設置状態のままにしておくことができるため、メンテナンス作業の容易化や、省力化や省部品化を図ることができるようになる。さらに、当初設置の電気機器とは種類の異なる電気機器についても、取付部材の電気機器取付部により支持される構成とすることにより、種類の異なる電気機器に対しても同じ取付部材を共用の部品として用いることができるようになる。
【0015】
特に請求項2によれば、取付部材にステーパイプ取付部を一体に備えることで、設置対象の壁の厚みに応じてステーパイプの長さを選択することができ、又、請求項3によれば、取付部材にステーパイプを予め一体に固定しておくことで、設置対象の壁が画一的であれば、設置の作業工程の省力化を図ることができるようになる。
【0016】
又、請求項4によれば、取付部材に対しパッキンを収容するための扁平凹部を形成することで、シール性向上のためのパッキンを介装することができる上に、扁平凹部によって板状の本体部の剛性増大を図ることができる。この結果、本体部の板厚をより薄肉化して電気機器を含んだ設置構造全体の薄型化に寄与することができる。
【0017】
さらに、請求項5によれば、浴室壁に設置される浴室用リモコンに本発明の電気機器設置構造を適用することにより、浴室用リモコンの筐体の強度を設計するにあたり、季節変化や浴室乾燥機の作動等に伴う高温・低温環境又は多湿・乾燥環境の繰り返しを受けることによる経時的なゆがみ変形等の発生のおそれを考慮する必要がないため、浴室用リモコンの大幅な薄型化を実現させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電気機器設置構造を浴室用リモコンに適用した第1実施形態の断面説明図である。
【図2】第1実施形態を前面側から見た分解斜視図である。
【図3】第1実施形態を後面側から見た分解斜視図である。
【図4】第2実施形態を示す図3対応図である。
【図5】第1実施形態の取付金具を例にした他の形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の課題を示すための従来の電気機器設置構造の例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る電気機器設置構造の断面説明図を示す。この第1実施形態は、電気機器として浴室用リモコン2(以下、単に「リモコン2」と記載する)を対象にし、このリモコン2を、浴室3と外部とを区画する壁である浴室壁4の浴室面41に設置するものである。同図において、符号5はリモコン2とは独立して形成された金属板状の取付部材としての取付金具であり、この取付金具5が後面側(浴室面41側;図1の右側)においてステーパイプ6及びナット(図示省略)によって浴室壁4の浴室面41に固定される一方、この取付金具5に対しその前面側(浴室3の内方側;図1の左側)においてリモコン2が着脱可能に連結されて支持されるようになっている。上記浴室壁4の浴室面が特許請求の範囲における「他側面」を構成し、反対側の浴室外の壁面が「一側面」を構成する。以下、図1に加えて図2及び図3をも参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
リモコン2は、正面壁を構成する本体ケース21と、背面壁を構成する裏蓋22と、電子回路を搭載した回路基板23とを備えたものである。この実施形態のリモコン2の裏蓋22は、特にその肉厚設定が従来とは異なり、単にリモコン2の密閉ケースとしての役割を果たすだけの構成を有するものとして肉厚設定されて合成樹脂成形により形成されている。すなわち、ステーパイプ6からの引張力に対抗し得る強度を有するように肉厚設定を行うという意図は、本実施形態のリモコン2にはない。
【0022】
本体ケース21は、前面上部に液晶等の表示窓211(図1又は図2参照)と、前面下部に各種の操作ボタンを備えた操作部212(図2参照)とが設けられたもので、内部に収容される回路基板23と連係接続されて各種の指令入力や、各種状況の表示が行われるようになっている。この本体ケース21の下端部の左右両側位置には、それぞれ後述の連結片9を用いて、裏蓋22のみならず取付金具5をも併せて連結するためのスリット状開口部により構成された下部連結部213(図1又図3参照)がそれぞれ設けられている。
【0023】
裏蓋22は本体ケース21に対し後面側から内嵌することにより一体組み付けされるようになっている。この裏蓋22には、取付金具5の後述のリモコン取付部53との結合のための上部係止部221,221と、下部連結部222,222とが一体に形成されている。上部係止部221は、上部の左右両側位置にそれぞれ配設され、後面に開口して後述の係止爪531を受け入れる受入開口部221a(図1又は図3参照)と、その上側位置で係止爪531と係合する係止壁部221b(図1又図3参照)とを備えたものである。又、下部連結部222は、下端部の左右両側位置においてそれぞれスリット状に開口する開口部により構成されたものであり、後述の連結片9を用いて、取付金具5の後述の連結部532を本体ケース21の下部連結部213と共に連結するものである。
【0024】
取付金具5は、矩形板状の本体部51と、この本体部51の中央位置から後面側に突出する筒状のステーパイプ取付部52と、前面側においてリモコン2を連結させて支持するリモコン取付部53とを備えたものである。本体部51はリモコン2の浴室面41に対する投影形状に対応する金属板材により構成され、ステーパイプ取付部52の周囲を含む所定の矩形範囲にパッキン7が入り込むための扁平凹部511が例えばプレス加工により形成されている。この扁平凹部511は後面側に凹むように周囲に段差を付けて形成され、その中央位置からステーパイプ取付部52が後面側に向けて突出するように配置されている。上記扁平凹部511の前面側にはシール用のパッキン7が裏蓋22との間に挟まれた状態で介装される一方、扁平凹部511の後面側には他のシール用のパッキン8が浴室面41との間に挟まれた状態で介装されるようになっている。上記の各パッキン7,8は設置工事の際に挟み込んでもよいが、上記扁平凹部511の前後面それぞれに予め貼り付けしておくようにしてもよい。
【0025】
ステーパイプ取付部52は金属パイプ片により構成され、上記の扁平凹部511の位置で本体部51を貫通する内孔521には螺ネジ522が形成されている。この螺ネジ522に対し、ステーパイプ6の他端部に該当する基端部61の外周面に形成された螺ネジ611を螺合させることにより、ステーパイプ取付部52に対するステーパイプ6の取付が行われるようになっている。リモコン取付部53は、本体部51の上端縁の左右両側位置から前面側に僅かに突出された係止爪531,531と、本体部51の下端縁の左右両側位置から前面側に屈曲された連結部532,532とから構成されている。
【0026】
上記各係止爪531は前面側に僅かに突出した後に上向きに突出するように略Lの字状のものに形成されている。そして、この係止爪531に対し係止爪531が裏蓋22の受入開口部221a内に入り込むように裏蓋22を被せた後(図1参照)、裏蓋22を下方にずらすことで、係止爪531の上向き突出部分が係止壁部221bに接合して係止される結果、裏蓋22の前面側への位置ずれが阻止されるようになっている。又、各連結部532はスリット状の開口部により構成され、この連結部532,532に対し、裏蓋22の下部連結部222,222及び本体ケース21の下部連結部213が連結片9,9を用いて連結されることにより、リモコン2が取付金具5に支持されるようになっている。すなわち、裏蓋22を本体ケース21に対し内嵌させることで、両者の下部連結部222,213のスリット状開口部が上下方向に合致すると共に、両者の下部連結部222,213間に隙間が形成されることになる。そして、上記の如く両係止爪531,531に対し裏蓋22の上部係止部221によりリモコン2の上側部位を係止した後に、上記の裏蓋22及び本体ケース21の下部連結部222,213間の隙間に対し、取付金具5の連結部532を差し込むと、下から上に下部連結部213、連結部532及び下部連結部222の各スリット状開口部が上下方向に合致することになる。これら下部連結部213、連結部532及び下部連結部222の各スリット状開口部に対し、下から連結片9を圧入気味に挿入して係合させることで、取付金具5の連結部532に対しリモコン2が前後方向及び上下方向の位置ずれが阻止された状態に連結されて支持されることになる。以上の如く、裏蓋22及び本体ケース21により筐体が構成されるリモコン2は、その上下各部位において取付金具5により支持されるようになっている。
【0027】
以上の実施形態によりリモコン2を設置する手順について説明すると、リモコン2自体は内部に回路基板23を収容させた状態で本体ケース21に対し裏蓋22を内嵌させて予め一体に組み付けた状態にしておく。要するにリモコンとして完成品の状態にしておく。この状態では回路基板23に接続された電源線や信号線からなるコード24が裏蓋22から後面側に出されているため、このコード24をパッキン7、ステーパイプ取付部52の内孔521、パッキン8及びステーパイプ6内に挿通させた状態にする。取付金具5を浴室壁4の浴室面41に固定設置するには次の手順で行う。コード24が挿通された状態で、ステーパイプ6の基端部61をステーパイプ取付部52の内孔521にねじ込んで両者の螺ネジ611,522により締結させ、このステーパイプ6の一端部を構成する先端部62を浴室壁4(図1参照)に開けられた貫通孔42に浴室3の側から差し込んで、浴室壁4を貫通させて先端部62を浴室外に飛び出させる。そして、このステーパイプ6の先端部62の螺ネジ621に対し図外のナット(例えば図6に例示するナット101参照)をねじ込んで浴室壁4の外面に対し締結することで、取付金具5を浴室面41に密着させた状態に固定する。
【0028】
次に、この取付金具5に対しリモコン2を次の手順により支持させる。まず、リモコン2の裏蓋22の後面側に開口する受入開口部221a,221aに取付金具5の係止爪531,531が入り込むように、リモコン2を若干斜めに傾けて上部を取付金具5に押し当てて、次に、僅かに下方にずらすことで各係止爪531を係止壁部221bに係止させる。続いて、リモコン2の下部連結部213,222間の隙間に取付金具5の連結部532が入り込むように、リモコン2の下部を取付金具5側に押し込む。これにより、下部連結部213、連結部532及び下部連結部222を上下方向に揃えた状態にし、この状態で連結片9,9を下から上に押し込んでリモコン2を取付金具5に対し位置ずれしない状態に連結・固定することで、支持させる。なお、浴室外では、上記のコード24の先端に対し図外のコントローラからの電源線や信号線を接続させることになる。
【0029】
以上の説明では、リモコン2と取付金具5とを別々にしておき、まず取付金具5を浴室壁4に固定設置し、次に固定設置された取付金具5に対しリモコン2を連結させて支持させるようにする例を説明したが、これに限らず、リモコン2を取付金具5に対し予め連結して支持させた状態で浴室壁4に対する設置作業を行うようにしてもよい。この場合には、リモコン2が予め支持された状態の取付金具5に対しステーパイプ6を締結し、締結したステーパイプ6の先端部62を貫通孔42に貫通させた後、この先端部62を浴室外でナットにより締結するようにすればよい。
【0030】
本実施形態の場合、ステーパイプ6を介して浴室壁4を挟み付けることで固定設置するという設置構造を採用したとしても、その浴室壁4への固定設置に伴いステーパイプ6を介して作用する外力は取付金具5に対してのみ作用し、その外力がリモコン2に対し作用することはないため、リモコン2を構成する筐体として特に裏蓋22を従来のものよりも薄肉厚化することができる。つまり、リモコン2は、上記の固定設置のナット締め付けに伴い作用する引張外力F(図1の点線の矢印参照)と縁切りされているため、引張外力Fに対抗し得るだけの剛性を確保し得る肉厚設定がなされていた従来の場合と比べ、その薄型化を阻害する要因を除去して、上記裏蓋22等の肉厚設定を薄肉化することができるようになる。しかも、上記の固定設置時の引張外力Fのみならず、設置後も継続的に作用する残留応力や、季節変化や浴室乾燥機の作動等に伴う高温・低温環境又は多湿・乾燥環境の繰り返しを受けることによる経時的なゆがみ変形等の発生のおそれを考慮して分厚いものにする必要もないため、特に浴室3内に設置するためのリモコン2を対象にした場合には大幅な薄型化を実現させることができるようになる。
【0031】
しかも、上記の設置固定に伴う引張外力Fや残留応力等からリモコン2が縁切りされてそれら引張外力Fや残留応力等の影響を受けることがないため、特にリモコン2に対するシール性を当初組み付け時のまま高度に維持することができ、内部の回路基板23の保護機能を増大させることができる。このようにステーパイプ6へのナット締め付けによる変形やゆがみを引き起こす外力作用が回路基板23の密着性やシール性に対し直接に影響しないようにしているため、リモコン2自体の耐久性をも大幅に増大させることができる。
【0032】
又、リモコン2のメンテナンス時、あるいは、リモコン2の交換時においても、取付金具5からリモコン2のみを独立して外すことができ、取付金具5は固定設置状態のままにしておくことができるため、リモコン2のメンテナンスを容易に行うことができる一方、交換時にもリモコン2のみを交換し取付金具5はそのまま共用することができ、省力化や省部品化を図ることができる。さらに、リモコン2以外の電気機器においても、取付金具5を基本として支持させ得るように構成することで、リモコン2以外の電気機器を対象にして取付金具5を共用の部品として用いることができるようになる。
【0033】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態に係る電気機器設置構造について第1実施形態の図3に対応した分解斜視図により示したものである。この第2実施形態は、第1実施形態と同様に電気機器として浴室3用のリモコン2aを対象にしたものであるが、第1実施形態とはサイズ・形状等の相違の他に、特に取付部材5aの材質が合成樹脂である点で大きく異なるものである。設置構造の原理そのものは第1実施形態と同じであり、特に説明するものを除き、第1実施形態と同じ構成のものは第1実施形態と同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0034】
取付部材5aは、第1実施形態のものよりも横長のリモコン2a(例えば浴室テレビを組み込んだリモコン)を対象にしたものであり、このリモコン2aに対応して本体部51aも第1実施形態のそれよりも横長に形状設定されている。又、扁平凹部511aが後面側から前面側に凹むように形成されてパッキン8を配設し得るになっている点で、第1実施形態の扁平凹部511(図3参照)とは逆になっている。そして、合成樹脂成形により取付部材5が一体形成されているため、ステーパイプ取付部52の構成自体は第1実施形態のそれと同じであるものの、設置固定時の引張外力F(図1参照)に対抗し得るように本体部51aが比較的厚肉に設定されている点で第1実施形態の金属製の本体部51と大きく異なる。
【0035】
この第2実施形態の設置手順も第1実施形態のそれと基本的に同じである。すなわち、リモコン2aの裏蓋22aから後面側に出されているコード24をパッキン7、ステーパイプ取付部52の内孔521、パッキン8及びステーパイプ6内に挿通させた状態にする。そして、ステーパイプ6の基端部61をステーパイプ取付部52の内孔521にねじ込んで両者の螺ネジ611,522により締結させ、このステーパイプ6の先端部62を浴室壁4(図1参照)に開けられた貫通孔42に浴室3の側から差し込んで、浴室壁4を貫通させて先端部62を浴室外に飛び出させる。そして、このステーパイプ6の先端部62の螺ネジ621に対し図外のナット(例えば図6に例示するナット参照)をねじ込んで浴室壁4の外面に対し締結することで、取付部材5aを浴室面41に密着させた状態に固定する。次に、この取付部材5aに対し例えばビス孔223,223,…を利用してビス止めすることによりリモコン2aを連結・固定して支持させる。浴室外では、第1実施形態と同様に、上記のコード24の先端に対し図外のコントローラからの電源線や信号線を接続させる。
【0036】
この第2実施形態の場合、取付部材5aは第1実施形態よりも肉厚にはなるものの、リモコン2aに対すると同様に、設置固定に伴う引張外力Fや残留応力等からリモコン2aが縁切りされてそれら引張外力Fや残留応力等の影響を受けることがないため、リモコン2a自体の大幅な薄型化を実現させることができ、又、特にリモコン2aに対するシール性を当初組み付け時のまま高度に維持することができ、内部の回路基板の保護機能を増大させてリモコン2a自体の耐久性をも大幅に増大させることができる。又、リモコン2aのメンテナンス時、あるいは、リモコン2aの交換時においても、取付部材5aからリモコン2aのみを独立して外すことができ、取付部材5aは固定設置状態のままにしておくことができるため、リモコン2aのメンテナンスの容易化や、取付部材5aの共用化による省力化や省部品化を図ることができる。
【0037】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記第1実施形態では、取付部材としての取付金具5を金属製としたが、これに限らず、金属製と同等肉厚で同等以上の強度・剛性を備える材質(例えばエンジニアリングプラスティックス等)であれば、金属以外の他の材質のもので構成するようにしてもよい。
【0038】
上記第1及び第2実施形態では、取付部材5,5aと、ステーパイプ6とを別体にして、ステーパイプ6をステーパイプ取付部52,52aに対し螺合させて一体に組み付けるようにした例を示したが、これに限らず、取付部材に対しステーパイプが一体に形成されている、又は、予め一体に固定されているように、取付部材を構成するようにしてもよい。例えば図5に第1実施形態の他の形態として例示するように取付金具5bの本体部51の扁平凹部511の位置にステーパイプ6aの基端部61を例えば溶接手段により固定し、ステーパイプ6aの基端部61の開口が本体部51の前面側に臨んで開口するようにすればよい。つまり、ステーパイプ取付部52とステーパイプ6とを合体させて取付金具5bを構成するのである。
【符号の説明】
【0039】
2,2a 浴室用リモコン(電気機器)
3 浴室
4 浴室壁(壁)
41 浴室面(他側面)
42 貫通孔
5,5b 取付金具(取付部材)
5a 取付部材
6,6a ステーパイプ
7,8 パッキン
51,51a 本体部
52 ステーパイプ取付部
53 リモコン取付部(電気機器取付部)
61 基端部(他端部)
62 先端部(一端部)
511,511a 扁平凹部
521 内孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が壁の一側面において締結される一方、他端部がその壁の貫通孔に対し挿通配置されて上記壁の他側面の側に延ばされたステーパイプによって、電気機器が上記壁の他側面において設置されるようにした電気機器設置構造であって、
上記ステーパイプ内と連通する内孔が上記壁の他側面に開口するよう上記ステーパイプの他端部と結合される板状の取付部材を備え、
上記取付部材は、上記一端部からの締結力を受けることにより、その後面が上記壁の他側面に対し固定設置されるように構成される一方、前面側に対し上記電気機器を着脱可能に連結して支持可能な電気機器取付部を備えている、
ことを特徴とする電気機器設置構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器設置構造であって、
上記取付部材は、その後面から突出して上記ステーパイプの他端部と取付可能なステーパイプ取付部を一体に備えており、このステーパイプ取付部により上記ステーパイプの他端部と結合されるように構成されている、電気機器設置構造。
【請求項3】
請求項1に記載の電気機器設置構造であって、
上記取付部材は、その後面から突出するよう予め一体に固定されたステーパイプを備えている、電気機器設置構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の電気機器設置構造であって、
上記取付部は板状の本体部を備え、この本体部には、その後面側に上記壁の他側面との間に挟み込むためのパッキン又はその前面側に上記電気機器との間に挟み込むためのパッキンを収容するための扁平凹部が段差を介して形成されている、電気機器設置構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電気機器設置構造であって、
上記壁は浴室を区画形成する浴室壁であり、上記電気機器は浴室の浴室面に設置される浴室用リモコンである、電気機器設置構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−250326(P2011−250326A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123587(P2010−123587)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】