説明

電気機器

【課題】 機種依存データに従って所定の機種として動作するハードウェアを備えた電気機器において、機種依存データが容易に変更されてしまうのを回避することにある。
【解決手段】 この画像形成装置1は、メモリ7と、メイン基板5dと、各種制御基板5a〜5cとを備えている。メモリ7は、制御プログラムと、起動時に実行されるとともに機種依存データを含むブートプログラムとが格納されている。メイン基板5dは、機種依存データを読み取って機種判別を行う。制御基板5a〜5cは、メイン基板5dにより機種判別された機種として制御プログラムに従ってハードウェアの制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器、特に、制御プログラムに従って動作するとともに機種ごとに異なる機種依存データに従って所定の機種として動作するハードウェアを有する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気機器では、複数のハードウェアと、ハードウェアの動作を制御するための制御基板と、制御基板上に配置され所定の制御プログラムが格納されたメモリと、制御プログラムを実行する制御部とを備えたものが普及している。
この種の電気機器として、例えば、複写機等の画像形成装置では、複数のハードウェアとして、画像形成部や、感光体ドラム、CCD(Charge Coupled Device)等を備え、これらは制御プログラムが実行されることで協調して動作するよう構成されている。
【0003】
従来のこの種の画像形成装置において、異なる機種間で共通するハードウェアを用いるととともに、各機種に共通する制御プログラムと、機種ごとに異なるデータ等で構成された機種依存データとにより、同一のハードウェアで異なる機種として機能させるための技術が既に知られている。
また、この種の画像形成装置において、1台の装置のメモリに複数機種分の機種依存データを格納し、これらを適宜選択できるようにしたものが既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、選択操作によって容易に異なる機種に変更することができるので、通常の機種変更に伴う制御プログラム及び機種依存データの反映作業を短縮化でき、また、かかる作業に伴う変更漏れを防止することができる。
【特許文献1】特開平6−149550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、心許ないユーザーやディーラーによって、制御プログラム及び機種依存データが予期しない内容に書き換えられた場合、そのような変更によって調整すべき他のデータやハードウェアの設定がそのままにされて不具合が生じ、この結果、画質の劣化が生じたり、マシントラブル等が生じた場合にその原因を特定するのが困難になったりするおそれがある。
【0005】
さらには、低級機種の制御プログラム等が高級機種のものとして書き換えられて安値で販売されると、装置の製造者や正規のディーラーは、正当な利益を受けることができなくなってしまう。
本発明の課題は、機種依存データに従って所定の機種として動作するハードウェアを備えた電気機器において、機種依存データが容易に変更されてしまうのを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る電気機器は、制御プログラムに従って動作するとともに機種ごとに異なる機種依存データに従って所定の機種として動作する複数のハードウェアを有する機器であって、記憶部と、機種判別制御部と、ハードウェア制御部とを備えている。記憶部は、制御プログラムと、起動時に実行されるとともに機種依存データを含むブートプログラムとが格納されている。機種判別制御部は、機種依存データを読み取って機種判別を行う。ハードウェア制御部は、機種判別制御部により機種判別された機種として制御プログラムに従ってハードウェアの制御を行う。
【0007】
この電気機器では、機種依存データは、設計、生産段階以降は実質的に変更できないブートプログラムに含まれ、機器の製造者等以外の者による変更が困難になっていることから、機種依存データを他人に容易に変更されてしまうのを回避して、予期し得ない不具合の発生等を抑えることができる。
なお、本発明において、機種依存データとは、それが読み取られることで機種判別されるとともに各ハードウェアが所定の機種として動作するのに必要なデータをいい、例えば、電気機器が画像形成装置である場合は、単位時間当たりの印字枚数データや用紙の搬送速度、帯電電位、給紙間隔等についてのデータが挙げられる。
【0008】
また、ハードウェアとしては、感光体ドラムの周辺装置,搬送機構等を含むエンジンや、CCD、感光体ドラム等が含まれる。ハードウェア制御部としては、具体的に、エンジン基板、CCD基板、ドラム基板等が挙げられる。また、起動時には、電気機器に電源が投入されてから所定の立ち上げ動作が行われる間の時間が含まれる。
請求項2に係る電気機器は、請求項1の機器において、記憶部には、互いに異なる複数機種分の前記制御プログラムが格納されている。また、ハードウェア制御部は、機種判別制御部により機種判別された機種用の制御プログラムを選択して読み出す。そして、この機器は、複数機種の中からいずれか1つの機種を選択する機種選択手段をさらに備えている。ハードウェア制御部は、機種判別制御部により機種判別された機種と機種選択手段により選択された機種とが一致する場合に、その機種の制御プログラムを実行する。
【0009】
この機器では、ブートプログラムの機種依存データにより判別された機種と機種選択手段により選択された機種とが一致する場合にのみ、その機種としての動作を行うようになっており、万一機種依存データが変更されたとしても、変更された機種としては動作し得ないので、予期し得ない不具合を回避できるとともに、機器の製造業者等の不測の不利益を回避できる。
【0010】
請求項3に係る電気機器は、請求項2の機器において、ハードウェア制御部は、機種判別制御部により機種判別された機種と機種選択手段により選択された機種とが一致しない場合に、最下位の機種の制御プログラムを実行する。
この機器では、万一機種依存データが変更されて、機種選択手段により選択された機種と一致しないと判断された場合は、最も安価な最下位の機種として動作することで、他人が不正な改良によって利益を得るのを防止するようにしている。
【0011】
請求項4に係る電気機器は、請求項1から3のいずれか1項の機器において、ハードウェアには、転写材に対し画像形成を行う画像形成部が含まれる。
ここでは、特に、電気機器が画像形成装置である場合を対象として、機種依存データが容易に変更されるのを回避するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設計、生産段階以降は実質的に変更できないブートプログラムに含まれ、機器の製造者等以外の者による変更が困難になっていることから、機種依存データを他人に容易に変更されてしまうのを回避して、予期し得ない不具合の発生等を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[画像形成装置の構成]
図1に、本発明の一実施形態が採用された画像形成装置1を示す。
この画像形成装置1は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置及びスキャナ装置としての機能を併有する複合機であり、複数の入出力部(ハードウェア)と、4つの制御基板(機種判別制御部、ハードウェア制御部)5a,5b,5c,5dと、各制御基板5a〜5d上に配置されたメモリ(記憶部)7a,7b,7c,7dと、ディップスイッチ9とを備えている。
【0014】
各入出力部は、後述する制御プログラムに従って動作し、機種ごとの機種依存データに従って所定の機種として動作する電装品であり、エンジン部13と、画像読取部15と、感光体ドラム17と、電源部19とを備えている。
エンジン部13は、図示しない給紙部、搬送機構、画像形成部及び操作パネル等を含む。給紙部は、給紙カセットまたは手差しトレイから用紙を給紙するためのものである。搬送機構は、給紙された用紙を、画像形成部や、さらにその下流側に搬送するためのものである。画像形成部は、感光体ドラム17の周囲に配置された露光装置、帯電装置、現像装置及び転写装置等と、感光体ドラム17の下流側に配置された定着装置とを有している。操作パネルは、複数の操作キーや表示部を有している。
【0015】
画像読取部15は、図示しない原稿台上の原稿の画像情報を読み取るためのものであり、図示しないCCD及び光学系で構成される。
感光体ドラム17は、表面にトナー像が形成される円筒状の回転体である。
電源部19は、外部からの電源を取り込むためのものであり、エンジン基板5aに接続されている。
【0016】
制御基板5a〜5dは、具体的に、エンジン基板5aと、これに接続されたCCD基板5b、ドラム基板5c及びメイン基板5dとで構成され、それぞれにCPU及びメモリ7a〜7dが搭載されている。制御基板5a〜5cは、制御基エンジン部13、画像読取部15及び感光体ドラム17の動作を制御するためのIC等の各種電子部品を有している。また、メイン基板5dは、制御基板5a〜5c及び電源部19の動作を統括して管理するためのものである。
【0017】
各制御基板5a〜5dのCPUは、電源投入後の起動時にCPU内部のメモリや同じ制御基板にあるメモリ7a〜7dに格納されたブートプログラムを読み出して所定の立ち上げ動作を行うとともに、共通プログラムに含まれる複数の制御プログラムの中から、機種判別された機種用の制御プログラムを選択して読み出して実行する。
このとき、メイン基板5dは、ブートプログラムに含まれる機種依存データを読み取って機種判別を行うとともに(機種判別機能)、機種判別された機種とディップスイッチ9で選択された機種とを比較判断し、両者が一致する場合は、その機種の制御プログラムを読み出して実行するよう(ハードウェア制御機能)他の制御基板5a〜5cに指示する。一方、両者が不一致の場合は、機種依存データに不正な変更が加えられたとみなして、最も低級な機種の制御プログラムを読み出して実行するよう各制御基板5a〜5cに指示する。
【0018】
メモリ7a〜7dは、制御基板5a〜5d上に配置されたRAM及びROMで構成されている。各メモリ7a〜7dには、ブートプログラム及び共通プログラムが格納されている。ブートプログラムは、電源投入後の立ち上げ時に実行されるプログラムである。特にメイン基板5d上のメモリ7d内のブートプログラムには、機種依存データが含まれている。
【0019】
共通プログラムは、共通する入出力部を有しかつ装置1と異なる機種の装置において共通して用いられるプログラムであり、入出力部の動作を制御するための複数機種分の複数の制御プログラムが含まれる。
ディップスイッチ9は、複数機種の中からいずれか1つの機種を選択するためのスイッチであり、メイン基板5dに接続されている。ディップスイッチ9は、装置1の製造時においていずれかの機種が選択されるが、装置1の製造後においてもユーザー、サービス担当者等による所定の操作によって変更可能である。
【0020】
[画像形成装置の動作]
次に、画像形成装置1の動作について説明する。
この画像形成装置1において、電源が投入されて各制御基板5a〜5dに電源が供給されると、各基板5a〜5dにおいて、ブートプログラムが実行されて立ち上げ動作が行われる。そして、メイン基板5dでは、ブートプログラムに含まれる機種依存データが読み取られて機種判別が行われるとともに、機種判別された機種とディップスイッチ9により選択された機種との比較判断が行われ、両者が一致する場合は、その機種の制御プログラムを読み出して実行するよう他の制御基板5a〜5cに指示される。一方、両者が不一致の場合は、機種依存データに不正な変更が加えられたとみなして、最も低級な機種の制御プログラムを読み出して実行するよう各制御基板5a〜5cに指示される。
【0021】
このような画像形成装置1によれば、設計、生産段階以降に機種依存データに変更を加えようとすると、他のプログラムを含め基板ごと交換する必要が生じることから、機器の製造者等以外の者による変更が実質的に不可能になっている。したがって、この装置1では、機種依存データを他人に容易に変更されてしまうのを回避して、予期し得ない不具合の発生等を抑えることができる。
【0022】
[他の実施形態]
(a)機種選択手段としては、上記のディップスイッチに代えて、感光体ドラムの速度制御を行うためのドラムエンコーダ、操作パネルの操作キー等の他の手段を採用してもよい。
(b)上記実施形態において、画像形成装置は、例えば、ブートプログラム内の機種依存データの内容が書き換えられたこと(例えば、初期設定の内容と異なっていること)を起動時に検知しさらにその旨報知するよう構成されても良い。これにより、万一機種依存データの内容が書き換えられた場合でも早期に対応可能となる。
【0023】
(c)本発明は、画像形成装置に限定されず、制御プログラム及び機種依存データに従って動作する複数のハードウェアを有するものであれば、他の電気機器にも適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態が採用された画像形成装置を模式的に示すブロック図。
【符号の説明】
【0025】
1 画像形成装置
5a エンジン基板
5b CCD基板
5c ドラム基板
5d メイン基板
7 メモリ(記憶手段)
9 ディップスイッチ(機種選択手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御プログラムに従って動作するとともに機種ごとに異なる機種依存データに従って所定の機種として動作する複数のハードウェアを有する電気機器であって、
前記制御プログラムと、起動時に実行されるとともに前記機種依存データを含むブートプログラムとが格納された記憶部と、
前記機種依存データを読み取って機種判別を行う機種判別制御部と、
前記機種判別制御部により機種判別された機種として前記制御プログラムに従って前記ハードウェアの制御を行うハードウェア制御部と、
を備えた電気機器。
【請求項2】
前記記憶部には、互いに異なる複数機種分の前記制御プログラムが格納され、
前記ハードウェア制御部は、機種判別制御部により機種判別された機種用の前記制御プログラムを選択して読み出し、
前記複数機種の中からいずれか1つの機種を選択する機種選択手段をさらに備え、
前記ハードウェア制御部は、前記機種判別制御部により機種判別された機種と前記機種選択手段により選択された機種とが一致する場合に、その機種の前記制御プログラムを実行する、
請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記ハードウェア制御部は、前記機種判別制御部により機種判別された機種と前記機種選択手段により選択された機種とが一致しない場合に、最下位の機種の前記制御プログラムを実行する、請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記ハードウェアには、転写材に対し画像形成を行う画像形成部が含まれる、請求項1から3のいずれか1項に記載の電気機器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−31221(P2006−31221A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206955(P2004−206955)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】