説明

電気機器

【課題】本発明は、温度検出センサを加圧することなく素線導体の正確な温度測定を行うことができる電気機器を提供することにある。
【解決手段】本発明は、素線導体12に素線導体延在方向に沿う収納空間(12G)を形成し、この収納空間(12G)内に温度検出センサ(15)を設置したのである。
このように素線導体12に形成した収納空間(12G)内に温度検出センサ(15)を設置することで、素線導体12の温度を直に測定することができると共に、温度検出センサ(15)は収納空間(12G)内に位置しているので、主絶縁層14の成形の過程で加圧されることはなく、正確に素線導体12の温度を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタービン発電機等の回転電機や変圧器等の静止誘導電機を含む電気機器に係り、特に、素線導体を集合させて形成した絶縁巻線を有する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
素線導体を集合させて形成した絶縁巻線を有する電気機器、例えばタービン発電機においては、素線導体の温度を測定するために、例えば特許文献1に開示のように、素線絶縁が施された素線導体に接近させて温度検出センサを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−222715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の素線導体の温度測定によれば、素線導体に接近して温度検出センサを設置しているので、素線導体の正確な温度検出を行うことができるものと思われる。
【0005】
しかしながら、温度検出センサが隣接素線導体間に配置されているので、絶縁テープ巻回時等の主絶縁層成形時の過程で温度検出センサを加圧することがあり、その結果、温度検出センサを損傷させたり、温度検出センサを加圧することにより測定値を変化させたりすることになり、素線導体の正確な温度測定が行われない恐れがあった。また、素線絶縁を介しての素線導体の温度測定となるので、素線導体の正確な温度測定が行われない恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、温度検出センサを加圧することなく素線導体の正確な温度測定を行うことができる電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、素線導体に素線導体延在方向に沿って収納空間を形成し、この収納空間内に温度検出センサを設置したのである。
【0008】
このように素線導体に形成した収納空間内に温度検出センサを設置することで、素線導体の温度を直に測定することができると共に、温度検出センサは収納空間内に位置しているので、絶縁テープ巻回時等の主絶縁層成形時の過程で加圧されることはなく、正確に素線導体の温度を測定することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、温度検出センサを加圧することなく素線導体の正確な温度測定を行うことができる電気機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が適用される電気機器の一実施の形態であるタービン発電機の上半分を示す概略縦断側面図。
【図2】図1のA−A線に沿う固定子巻線の拡大断面図。
【図3】図2の固定子巻線の素線導体の一部を示す拡大断面図。
【図4】図3の素線導体の1本を示す拡大斜視図。
【図5】別の素線導体の一部を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明による電気機器を、図1〜図5に示すタービン発電機に基づいて説明する。
【0012】
タービン発電機1は、回転軸2に一体に構成された回転子3と、この回転子3に径方向の隙間を介して配置された固定子4と、この固定子4を支持し図示しない軸受装置を介して前記回転軸2を軸支する固定子枠5とを備えている。
【0013】
前記回転子3は、回転軸2と一体に形成された塊状の回転子鉄心6と、この回転子鉄心6に形成された巻線溝(図示せず)内に装着された回転子巻線7とを有する。一方、前記固定子4は、電磁薄鋼板を多数枚積層して形成した固定子鉄心8と、この固定子鉄心8に形成された巻線溝(図示せず)内に装着された固定子巻線9とを有する。
【0014】
このほか、前記回転子鉄心6の巻線溝から張り出した回転子巻線7の巻線端を遠心力から保持するために回転子鉄心6の軸方向端部に保持環10が固定されている。また、回転子鉄心6の両側に延在する回転軸2には、冷却媒体を回転子3及び固定子4に循環させるために冷却ファン11が設けられている。
【0015】
上記構成のタービン発電機1の固定子巻線9は、図2及び図3に示すように、外周に素線絶縁層13を形成した平角導体より成る素線導体12を複数まとめて素固めし、その外周に主絶縁層14を形成している。
【0016】
そして、素線絶縁層13を施した素線導体12の広幅面側には、素線導体の延在方向に沿って収納空間となる削設して断面矩形状の凹溝12Gを形成し、この凹溝12G内に温度検出センサである例えば、光ファイバ温度検出センサ15を収納している。この光ファイバ温度検出センサ15は、光ファイバに沿って複数のブラック格子センサが所定間隔毎に設置されるセンサであり、同時に複数個所の温度を測定することができる。
【0017】
このように、凹溝12G内に光ファイバ温度検出センサ15を収納した素線導体12を素固めする際には、図3に示すように、例えば、下側に位置する素線導体12の上面側に凹溝12Gの削設により素線絶縁層13に切れ目が存在していても、上側に隣接する素線導体12の素線絶縁層13が凹溝12Gを塞ぐように位置するので、隣接素線導体の短絡は発生しない。さらに、最頂部に位置する素線導体12の上面側に凹溝12Gの削設により素線絶縁層13に切れ目が存在していても、その上には主絶縁層14が形成されるので、何ら問題はない。
【0018】
以上のように、凹溝12G内に収納された光ファイバ温度検出センサ15は、素線絶縁層13や主絶縁層14により覆われた収納空間内に位置し、素線導体12に直に接しているので、外力を受けることなく素線導体12の温度を直接測定することができる。
【0019】
そして、光ファイバ温度検出センサ15を凹溝12G内に収納した素線導体12を複数集合させた後、主絶縁テープを巻き付けて主絶縁層14を形成する。尚、主絶縁層14の形成は、周知のように、主絶縁テープを巻き付けた後、絶縁樹脂を含浸させて加熱硬化させて形成しても良く、半硬化状の絶縁樹脂を含浸させた主絶縁テープを巻き付けた後、加熱硬化させて形成しても良い。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態においては、主絶縁テープの巻き付け時に、光ファイバ温度検出センサ15を加圧することなく、また、光ファイバ温度検出センサ15と素線導体12が直に接しているので、素線導体12の温度を正確に測定することができる。
【0021】
ところで、線絶縁層13を形成した素線導体12に凹溝12Gを削設し、この凹溝12G内に光ファイバ温度検出センサ15を収納した後、これら光ファイバ温度検出センサ15を収納した素線導体12を複数集合させる作業を行うが、この集合作業時に光ファイバ温度検出センサ15が凹溝12Gから飛び出すことがある。そのために、光ファイバ温度検出センサ15が凹溝12Gから飛び出さないようにしながら素線導体12の集合作業を行わねばならず、作業が煩雑になることが懸念される。
【0022】
そのような場合には、図4に示すように、凹溝12G内に光ファイバ温度検出センサ15を収納した後、凹溝12Gの開口側の複数個所に、絶縁性の粘着テープ16を貼り付けることで、光ファイバ温度検出センサ15は凹溝12Gから飛び出さないようになるので、素線導体12の集合作業の煩雑さを解消することができる。
【0023】
以上の説明は、電気機器の絶縁巻線として、タービン発電機1の固定子巻線9について説明したが、回転子鉄心6に形成された巻線溝内に装着された回転子巻線7の温度測定についても本実施の形態は適用することができる。
【0024】
即ち、タービン発電機1の回転子巻線7は、一般的に、固定子巻線9の素線導体12よりも幅広の平角導体より成る素線導体を巻線溝の上下方向に絶縁シートを介して積層しているので、これら素線導体の広幅面に収納空間となる凹溝を形成し、この凹溝内に光ファイバ温度検出センサ15を収納することで、固定子巻線9と同様に、回転子巻線7の温度を多点に亘って測定することができる。
【0025】
尚、回転子巻線7の場合、タービン発電機1の運転中に遠心力を受けるので、前記素線導体に形成する凹溝は、回転子3の内径側に向いて開口するように形成することで、収納された光ファイバ温度検出センサ15は凹溝底部の素線導体に遠心力で密着するので、素線導体の温度を正確に測定することができる。
【0026】
さらに、タービン発電機1は、運転中に機械的振動や電磁的振動を受けるので、前記回転子巻線7や固定子巻線9の凹溝12G内に収納された光ファイバ温度検出センサ15が振動を受けて凹溝内を移動することがある。
【0027】
このような凹溝内の光ファイバ温度検出センサ15の移動を嫌う場合には、凹溝を収納される光ファイバ温度検出センサ15の断面形状に合わせて形成して移動しないようにしても良く、さらに、凹溝底面に接している光ファイバ温度検出センサ15の周囲に絶縁性の充填剤を充填したり絶縁性の接着剤で接着したりして移動しないようにしても良い。このほか、凹溝内の光ファイバ温度検出センサ15が多少変位しても差し支えない場合には、保護チューブに光ファイバ温度検出センサ15を挿入して振動による損傷を防止するようにしてもよい。
【0028】
また、素線導体12に設ける収納空間としての凹溝12Gは、断面矩形状に形成した例を説明したが、これらに限定されるものではなく、例えば、断面V溝あるいは断面半円形溝としてもよく、さらに図5に示すように、収納空間として素線導体12に素線導体延在方向に沿う穴12Hを形成し、この穴12H内に温度検出センサである光ファイバ温度検出センサ15を収納するようにしてもよい。
【0029】
このほか、温度検出センサとして、光ファイバ温度検出センサを一例に説明したが、通常の温度測定素子を絶縁巻線の凹溝12Gや穴12H内に設置して測温するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上の説明は、絶縁巻線を有する電気機器として、タービン発電機1を説明したが、水車発電機や大型電動機等の回転電機に使用される絶縁巻線に適用することができるのは勿論のこと、変圧器等の静止誘導電機に使用される絶縁巻線にも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…タービン発電機、2…回転軸、3…回転子、4…固定子、5…固定子枠、6…回転子鉄心、7…回転子巻線、8…固定子鉄心、9…固定子巻線、10…保持環、11…冷却ファン、12…素線導体、12G…凹溝、12H…穴、13…素線絶縁層、14…主絶縁層、15…光ファイバ温度検出センサ、16…粘着テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周に主絶縁層を形成した絶縁巻線を備えた電気機器において、前記素線導体に素線導体延在方向に沿う収納空間を形成し、この収納空間内に温度検出センサを収納したことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
素線絶縁層を形成した平角導体より成る素線導体を集合させてその外周に主絶縁層を形成した絶縁巻線を備えた電気機器において、前記素線絶縁層を形成した素線導体の広幅面側に素線導体延在方向に沿う収納空間を形成し、この収納空間内に温度検出センサを収納したことを特徴とする電気機器。
【請求項3】
素線絶縁層を形成した平角導体より成る素線導体を集合させてその外周に主絶縁層を形成した絶縁巻線を回転体側に備えた電気機器において、前記素線絶縁層を形成した素線導体の内径側に面する広幅面側に素線導体延在方向に沿う収納空間を形成し、この収納空間内に温度検出センサを収納したことを特徴とする電気機器。
【請求項4】
前記温度検出センサは、光ファイバ温度検出センサであることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気機器。
【請求項5】
前記収納空間は、凹溝であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気機器。
【請求項6】
前記収納空間は、穴であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気機器。
【請求項7】
平角導体より成る素線導体に素線絶縁層を形成し、その後、素線導体の広幅面側に前記素線絶縁層を含めて凹溝を形成し、この凹溝内に光ファイバ温度検出センサを収納して仮止めした後、前記素線導体を複数まとめて素固めし、その上に主絶縁層を形成したことを特徴とする電気機器巻線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44773(P2012−44773A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183614(P2010−183614)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】