説明

電気機械およびそのダンパ

【課題】トーショナルダンパをより小型化し、ジェネレータとエンジンのフライホイールとの間に取り付ける。
【解決手段】電気機械10は、フライホイール12に接続されるとともに中心軸18に沿って配置されたジェネレータシャフト20を備える。ジェネレータシャフト20は、入れ子にされたトーショナルダンパ24を備える。少なくとも1つのシャフトセグメント26は、ジェネレータシャフト20に接続されるとともに、少なくとも1つのセグメント末端部28によって隣接したシャフトセグメント26に接続されている。セグメント末端部28は、第2のシャフトセグメント36の第2の端部34に第1のシャフトセグメント32の第1の端部30を接続している。また、少なくとも1つのシャフトセグメント26は、トーショナルダンパ24の捩りへの追従性を向上させるための複数のスロット38を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気機械に関し、特に、電気機械のトーショナルダンパに関する。
【0002】
なお、本発明の関連出願として、2009年7月8日に米国で出願された「NESTED EXCITER AND MAIN GENERATOR STAGES FOR A WOUND FIELD GENERATOR」という題名の米国特許出願(出願番号12/499,292)および2009年7月14日に米国で出願された「HYBRID CASCADING LUBRICATION AND COOLING SYSTEM」という題名の米国特許出願(出願番号12/502,492)がある。
【背景技術】
【0003】
従来では、地上用の車両は、エンジンのクランクシャフトに接続されたプーリにより駆動されるジェネレータ(オルタネータ)を用いて充電されてきた。輸送体の電力要求が高まるにつれて、クランクシャフトからジェネレータへと機械的負荷を伝達するプーリ駆動式のオルタネータの能力が制限されてきた。プーリ駆動式のオルタネータの代わりに、ジェネレータをエンジンの動力伝達経路に直接に取り付けることもできる。ジェネレータをエンジンの動力伝達経路に取り付けると、ジェネレータからエンジンへ負荷を伝達したり、エンジンからジェネレータへ動力を送るのに必要なプーリ、ギアやチェーンが不要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地上用の車両の一般の動力伝達経路では、フライホイールを使用することにより、エンジンのトルク・出力の急激な変動が低減される。しかし、フライホイールを使用しても、エンジンの出力シャフトから生じる周期的な速度変動を完全に取り除くことはできない。エンジンのトルク・出力の変動をより低減させるために、トーショナルダンパや流体継手のような他の手段が、トランスミッションとエンジンとの間に取り付けられる。エンジンのクランクシャフトにジェネレータが取り付けられた状態では、ジェネレータの慣性モーメント(rotational inertia)によりクランクシャフトに作用する捩り応力が増加し、クランクシャフトが破損するので、動力伝達経路にジェネレータを取り付けることによって、問題がより複雑なものとなってしまう。この問題を解消するために、一般に長いシャフトであるトーショナルダンパが、ジェネレータとエンジンのフライホイールとの間に取り付けられる。動力伝達経路とジェネレータとの取付の全体的な長さを短くするために、トーショナルダンパは、より小型であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの特徴は、電気機械のためのダンパが、シャフトと、シャフトと同心であるとともに該シャフトに機能的に接続された少なくとも1つのシャフトセグメントと、を備えていることである。少なくとも1つのシャフトセグメントは、該シャフトセグメントの捩りへの追従性を向上させるようにこのシャフトセグメントの壁を貫通して延びる複数のシャフトスロットを備える。
【0006】
本発明の他の特徴は、動力伝達経路に取り付けられた電気機械が、電気機械の中心軸を中心に配置された少なくとも1つのロータと、ダンパと、を備えていることである。ダンパは、少なくとも1つのロータに機能的に接続されたシャフトと、シャフトと同心であるとともに該シャフトに機能的に接続された少なくとも1つのシャフトセグメントと、を備える。少なくとも1つのシャフトセグメントは、該シャフトセグメントの捩りへの追従性を向上させるようにこのシャフトセグメントの壁を貫通して延びる複数のシャフトスロットを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】動力伝達経路に取り付けられた電気機械の実施例を示した断面図である。
【図2】電気機械のトーショナルダンパの実施例を示した斜視図である。
【図3】電気機械のトーショナルダンパの実施例を示した断面図である。
【図4】電気機械のトーショナルダンパの他の実施例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1には、電気機械10の実施例が示されている。電気機械10、本実施例ではジェネレータは、エンジンのフライホイール12とトランスミッション14との間の動力伝達経路に沿って配置されている。電気機械10は、中心軸18を中心に回転可能とされた少なくとも1つのロータ16を備える。
【0009】
電気機械10は、フライホイール12に接続されるとともに中心軸18に沿って配置されたジェネレータシャフト20を備える。図2を参照すると、ある実施例では、ジェネレータシャフト20は、スプラインによってフライホイール12に接続されている。図2の実施例では、ジェネレータシャフト20は、該ジェネレータシャフト20から外周側へと突出した複数のスプライン歯部22を備えており、該スプライン歯部22は、フライホイール12から内周側へと突出したフライホイールの複数のスプライン歯部(図示せず)と噛み合うことができる。図示した構成は、単なる例示であり、ジェネレータシャフト20とフライホイール12との間の接続が他の方法によっても達成され得ることを理解されたい。例えば、ジェネレータシャフトのスプライン歯部22が、内周側へと延び、この内周側へと延びたスプライン歯部22は、フライホイール12の一部から外周側へと延びるフライホイールのスプライン歯部と噛み合うことができる。さらに、構成要素間を、(ナットやボルトのような)螺条の締結具、キーやピン、圧入を利用して接続してもよい。
【0010】
ジェネレータシャフト20は、入れ子にされたトーショナルダンパ24を備える。図3では、トーショナルダンパ24は、ジェネレータシャフト20を中心として配置された少なくとも1つの同心シャフトセグメント26を備える。図3の実施例では、トーショナルダンパ24は、3つの同心シャフトセグメント26を備えているが、本発明において、他の数のシャフトセグメント26、例えば、4つまたは5つのシャフトセグメント26を考慮することができる。少なくとも1つのシャフトセグメント26は、ジェネレータシャフト20に接続されるとともに、少なくとも1つのセグメント末端部28によって隣接したシャフトセグメント26に接続されている。図示したように、例えば、セグメント末端部28は、第2のシャフトセグメント36の第2の端部34に第1のシャフトセグメント32の第1の端部30を接続している。ここで、第2のシャフトセグメント36は、半径方向において、第1のシャフトセグメント32の直ぐ外周側に配置されている。
【0011】
図2を再び参照すると、少なくとも1つのシャフトセグメント26は、トーショナルダンパ24の捩りへの追従性を向上させるための複数のスロット38を備えている。複数のスロット38は、少なくとも1つのシャフトセグメントの壁40を貫通して延びており、壁40が捩りによる負荷に応じて接線方向に変形することでトーショナルダンパ24の捩りへの追従能力を向上させることができるように構成されている。図示した実施例では、複数のスロット38は、少なくとも1つのシャフトセグメント26の周囲に周方向に配置されるとともに、中心軸18に沿って長手方向へと延びている。しかし、望ましい減衰特性を達成するために、複数のスロット38の他の構成を考慮することができる。例えば、スロットをより小さく形成して数を増やしたり、スロットをより大きく形成して数を減らしたり、もしくは、望ましい方向に減衰特性を偏向するために、複数のスロットが中心軸18に対して傾斜した角度で延びるようにすることができる。さらに、図4のように、複数のスロット38のうちの1つまたは複数のスロット38の所定の位置にゴム製ダンパ42を加硫することができ、これにより、トーショナルダンパ24およびジェネレータシャフト20に作用する荷重をさらに減衰させることができる。
【0012】
ある実施例では、図4に示したように、トーショナルダンパ24は、電気機械10の少なくとも1つのロータ16と接するスプラインないしギアの噛合部44を備える。ギア接触部44は、少なくとも1つのロータ16の相補的な特徴部(図示せず)と噛み合うように構成されており、これにより、ジェネレータシャフト20の回転に応じて、少なくとも1つのロータ16が回転する。トーショナルダンパ24がジェネレータシャフト20と一体に形成されている実施例は、単なる例示であることを理解されたい。他の実施例、例えば、トーショナルダンパ24が少なくとも1つのロータ16または他の回転構成要素と一体に形成されている実施例や、トーショナルダンパ24が少なくとも1つのロータ16またはジェネレータシャフト20の一方に、ある機械的手段によって固定されている実施例も、本発明の範囲内において考慮することができる。
【0013】
限定された数の実施例のみと組み合わせて本発明を詳細に説明してきたが、本発明がこのような実施例に限定されないことを理解されたい。本発明を、上述していない種々の変更、代替案や同等の構成を組み込むように修正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(20)と、
前記シャフト(20)と同心であるとともに該シャフト(20)に機能的に接続された少なくとも1つのシャフトセグメント(26)と、
を備え、
前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)は、捩りへの追従性を向上させるように前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)の壁(40)を貫通して延びる複数のシャフトスロット(38)を有することを特徴とする電気機械(10)のダンパ。
【請求項2】
前記複数のシャフトスロット(38)の各々は、前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)に沿って実質的に長手方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)は、端部セグメント(28)によって前記シャフト(20)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項4】
第1のシャフトセグメント(32)の第1の端部(30)が、端部セグメント(28)によって第2のシャフトセグメント(36)の第2の端部(34)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項5】
前記第1のシャフトセグメント(32)は、前記第2のシャフトセグメント(36)と半径方向に隣接していることを特徴とする請求項4に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項6】
充填材(42)が、少なくとも1つの前記複数のシャフトスロット(38)に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項7】
前記充填材(42)は、加硫ゴムであることを特徴とする請求項6に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項8】
前記シャフト(20)は、複数のスプライン歯部(22)を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気機械(10)のダンパ。
【請求項9】
中心軸(18)を中心に配置された少なくとも1つのロータ(16)と、
ダンパと、
を備える動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)において、
前記ダンパは、
前記少なくとも1つのロータ(16)に機能的に接続されたシャフト(20)と、
前記シャフト(20)と同心であるとともに該シャフト(20)に機能的に接続された少なくとも1つのシャフトセグメント(26)と、
を備え、
前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)は、捩りへの追従性を向上させるように前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)の壁(40)を貫通して延びる複数のシャフトスロット(38)を有することを特徴とする動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項10】
前記複数のシャフトスロット(38)の各々は、前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)に沿って実質的に長手方向に延びていることを特徴とする請求項9に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)は、端部セグメント(28)によって前記シャフト(20)に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項12】
第1のシャフトセグメント(32)の第1の端部(30)が、端部セグメント(28)によって第2のシャフトセグメント(36)の第2の端部(34)に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項13】
前記第1のシャフトセグメント(32)は、前記第2のシャフトセグメント(36)と半径方向に隣接していることを特徴とする請求項12に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項14】
充填材(42)が、少なくとも1つの前記複数のシャフトスロット(38)に配置されることを特徴とする請求項12に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項15】
前記充填材(42)は、加硫ゴムであることを特徴とする請求項14に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項16】
前記シャフト(20)は、フライホイール(12)に前記シャフト(20)を機能的に接続する複数のスプライン歯部(22)を備えることを特徴とする請求項9に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項17】
前記少なくとも1つのシャフトセグメント(26)に配置された複数のギア歯部(44)を備えることを特徴とする請求項9に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項18】
前記ダンパは、前記複数のギア歯部(44)によって前記少なくとも1つのロータ(16)に機能的に接続されていることを特徴とする請求項17に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。
【請求項19】
前記ダンパは、前記少なくとも1つのロータ(16)に直接に組み込まれることを特徴とする請求項9に記載の動力伝達経路に取り付けられた電気機械(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−4591(P2011−4591A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130615(P2010−130615)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】