説明

電気油圧ハイブリッドモータ及び電気油圧ハイブリッドモータを搭載した建設機械

【課題】油圧モータと電動機を一軸上に並べて配置し、油圧モータのケース内作動油を用いて電動機を冷却することで、電動機専用の冷却ポンプおよび熱交換器を不要とし、電動機の冷却システムを簡素化することができる電気油圧ハイブリッドモータを提供する。
【解決手段】油圧モータと電動機を備える電気油圧ハイブリッドモータにおいて、同一の冷却媒体で冷却する。また、前記油圧モータの駆動軸と前記電動機の駆動軸のそれぞれ中心に冷却媒体通過用の通路を設ける。さらに、前記電動機の外周ケース内に冷却媒体通過用の通路を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機と油圧モータが連結されて構成される電気油圧ハイブリッドモータに係り、特に電動機の冷却に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械或いは農業機械などの作業機械における駆動装置の省エネルギ対策の一つとして、エネルギ回生方法が提案されている。具体的には、従来では熱として排出していたエネルギ、例えば油圧ショベルの旋回停止時の慣性エネルギ、或いはまたクレーン装置における巻下げ時の位置エネルギ等を電気エネルギに変換蓄積し、起動時に再利用する方法であり、この種の作業機械においては一般的となりつつある。このようなエネルギ回生を目的とした従来技術を特許文献1に示す。
【0003】
特許文献1では、建設機械車両の旋回駆動を行う電動機について記載されており、ステータの冷却を外部に設置されたポンプによる冷却水の循環で行われている。一方、ロータの冷却を軸端に設置されたポンプによる冷却油の循環で行われている。この冷却水と冷却油は、共に外部に設置された熱交換器により放熱が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、ステータとロータの冷却にポンプと熱交換器がそれぞれ2組必要になり、製造コストとランニングコストの両コスト増加および車両レイアウトの複雑化は避けられない。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、油圧モータと電動機を一軸上に並べて配置し、油圧モータのケース内作動油を用いて電動機を冷却することで、電動機専用の冷却ポンプおよび熱交換器を不要とし、電動機の冷却システムを簡素化することができる電気油圧ハイブリッドモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明による電気油圧ハイブリッドモータは、油圧モータと電動機を備える電気油圧ハイブリッドモータにおいて、油圧モータのケース内作動油を冷却媒体として電動機を冷却する。
【0008】
また、前記油圧モータの駆動軸と前記電動機の駆動軸のそれぞれ中心に冷却媒体通過用の通路を設けることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記電動機の外周ケース内に冷却媒体通過用の通路を設けることを特徴とする。
【0010】
一方、前記油圧モータの駆動軸と前記電動機の駆動軸は一軸上で連結されることを特徴とする。
【0011】
その上、前記冷却媒体は、冷却油であることを特徴とする。
【0012】
加えて、前記冷却媒体は、外部の熱交換器で冷却されることを特徴とする。
【0013】
前記目的を達成するための本発明による建設機械は、油圧モータと電動機を備える電気油圧ハイブリッドモータにおいて、油圧モータのケース内作動油を冷却媒体として電動機を冷却する電気油圧ハイブリッドモータを搭載する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧モータと電動機を一軸上に並べて配置し、油圧モータのケース内作動油を用いて電動機を冷却することで、電動機専用の冷却ポンプおよび熱交換器を不要とし、電動機の冷却システムを簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電気油圧ハイブリッドモータの第1の実施例の構成図である。
【図2】本発明に係る電気油圧ハイブリッドモータの第2の実施例の構成図である。
【図3】本発明に係る電気油圧ハイブリッドモータを搭載した建設機械の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図2を用いて、本発明に係る電気油圧ハイブリッドモータの構成について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1を用いて本発明に係る電気油圧ハイブリッドモータの第一の実施例について説明する。第一の実施例は、図面上部が油圧モータ2であり、図面下部が電動機4である。
【0018】
図1において、油圧モータ2は、図面に向かって上端に設けられた端板6と油圧モータハウジング8から構成される。この端板6の下側面の中央には、下向きに突設される固定軸10が設けられる。この固定軸10の周囲に第一軸受12が装着される。第一軸受12の外周に油圧モータ回転軸14が回転可能に取り付けられる。油圧モータ回転軸14上端は、固定軸10と第一軸受12を挿入できるように油圧モータ回転軸凹部16が設けられる。油圧モータ回転軸凹部16の底面から、油圧モータ回転軸14の中心部を軸方向に沿って冷却油通路18が油圧モータ回転軸14の下端20まで設けられる。この油圧モータ回転軸14は、斜板22の中央孔を貫通しており、油圧モータハウジング8に第二軸受24で軸支されている。
【0019】
一方、油圧モータハウジング8はその下端で電動機ハウジング26と連結される。電動機ハウジング26の中心には、電動機4の回転軸であるロータシャフト28が貫通しており、その上部と下部で第三軸受30と第四軸受32で回転可能に軸支されている。
【0020】
ロータシャフト28の外周に導線を巻きつけたコイルであるステータ29が設けられている。
【0021】
第二軸受24と第三軸受30の間に第一油室42が設けられ、第三軸受30と第1オイルシール44との間に第二油室36が設けられている。
【0022】
ロータシャフト28は、その上端部に電動機回転軸凹部34が設けられており、油圧モータ回転軸14の下端20と電動機回転軸凹部34とが一軸上で連結する。電動機回転軸凹部34の底面から、ロータシャフト28の中心を貫通する電動機冷却油通路40がロータシャフト28の下端まで設けられる。
【0023】
他方、電動機回転軸凹部34の直ぐ下部に横方向に貫通する冷却油通路38が設けられ、冷却油通路38は第二油室36と電動機冷却油通路40を連結する。電動機冷却油通路40は、その下端でロータシャフト28に対して径方向に貫通する冷却油通路46と連結される。ロータシャフト28の下部と電動機ハウジング26との間はオイルシール48によりシールされる。冷却油通路46は、電動機ハウジング26の底部に設けられる冷却油通路52から、電動機ハウジング26の側壁内を螺旋状に貫通して冷却油通路54、冷却油通路56を経由して、電動機ハウジング26の側面上部に設けられる冷却油通路開口部58に連結される。開口部58は図示されない熱交換器と連結される。
【0024】
本構成では、油圧モータ2の出力軸を電動機4の出力軸に接続することで、電動機4の出力軸であるロータシャフト28から油圧モータ2のトルクと電動機4のトルクを合成したトルクが出力される。
【0025】
以上のように構成した電気油圧ハイブリッドモータの第一の実施例の動作について説明する。
【0026】
油圧モータ2内の冷却油は、冷却油通路18を通過して、油圧モータ2内を冷却する。電動機4内の電動機回転軸凹部34に到達して冷却油通路38を通過して電動機冷却油通路40へ向かうものと、油圧モータ回転軸14の外周から、第二軸受24を通過し、第一油室42を通過して電動機4に向かう。ここから、冷却油はロータシャフト28を冷却する。
【0027】
第三軸受30を通過して第二油室36を通過して、冷却油通路38を通過して電動機冷却油通路40へ向かうものとがある。さらに、冷却油は電動機冷却油通路40から冷却油通路46を経由し、冷却油通路52から、電動機ハウジング26の側壁内を螺旋状に貫通して冷却油通路54、冷却油通路56を経由して、電動機ハウジング26の側面上部に設けられる冷却油通路開口部58に到達する。その結果、電動機ハウジング26内の特にステータ29を冷却する。熱交換器に向かい冷却されて再び、油圧モータ2内に戻る。本経路を通過することで、冷却油は、ステータ29と接触しないことから、電動機4の回転の障害となることはない。また、たとえ、電気油圧ハイブリッドモータを傾斜させたとしても冷却油が電動機4の回転の障害とはならない。
【0028】
また、冷却油は油圧モータのケースドレンとして排出されるため、冷却用のポンプは必要とならない。
【実施例2】
【0029】
図2を用いて本発明に係る電気油圧ハイブリッドモータの第二の実施例について説明する。第二の実施例は、図面上部が電動モータ62であり、図面下部が油圧モータ64である。
【0030】
電動機62は、電動機ハウジング66と下端側を端板69とから構成される。電動機ハウジング66の中央に第五の軸受70と第六の軸受72に支持されてロータシャフト74が回動自在に設けられる。そのロータシャフト74の外周にコイルであるステータ75が設けられる。
【0031】
ロータシャフト74は、その中央軸方向に電動機冷却油通路76が貫通する。
【0032】
電動機冷却油通路76は、その上端で第五軸受70で確定される冷却油室78と連結される。
【0033】
冷却油室78は、一方が冷却通路80と連結され、冷却通路80は、電動機ハウジング66の側壁内に設けられる冷却通路82と連結し、冷却通路82は同じく電動機ハウジング66の側壁内に設けられる冷却通路84と連結し、この冷却通路84は電動機ハウジング66内を螺旋状に周回して設けられており、冷却通路86から途中の冷却通路を通過して冷却通路88を介して開口部90へ連結される。開口部90から図示しない熱交換器へ連結される。
【0034】
ロータシャフト74には、軸に対して垂直な方向に冷却油通路92が貫通して電動機冷却油通路76と連結する。この冷却油通路92は、オイルシール94と第六軸受72と電動機ハウジング66で確定される油室96に連結される。
【0035】
一方、ロータシャフト74の底部には、軸方向に窪んだ電動機回転軸凹部98が設けられる。電動機回転軸凹部98と冷却油通路92とが連結される。
【0036】
この電動機回転軸凹部98には、油圧モータ64の軸部である油圧モータ回転軸100が挿入される。
【0037】
油圧モータ64は、端板68と連結される油圧モータハウジング106から構成される。その中心に油圧モータ回転軸100が、端板68の中心に設けられる第七軸受104と油圧モータハウジング106の底部に設けられる第八軸受108に回動可能に軸支される。油圧モータ回転軸100の中心に冷却油を通過させる。
【0038】
油圧モータ回転軸100は、中心部を軸方向に沿って冷却油通路102が油圧モータ回転軸100の下端まで設けられる。この油圧モータ回転軸100は、斜板112の中央孔を貫通している。
【0039】
油圧モータ回転軸100の下部には、軸に対して垂直方向に貫通する冷却通路114が設けられる。冷却通路114は、斜板112と第八軸受108と油圧モータハウジング106で確定される油室116と連結される。油圧モータ回転軸100は、油圧モータハウジング106とオイルシール110で封止される。
【0040】
本構成では、電動機62の出力軸を油圧モータ64の出力軸に接続することで、油圧モータ64の出力軸から油圧モータ64のトルクと電動機62のトルクを合成したトルクが出力される。
【0041】
以上のように構成した電気油圧ハイブリッドモータの第二の実施例の動作について説明する。
【0042】
図示されない熱交換器より戻された冷却油は油圧モータ64の油室116から冷却通路114を通過して、油圧モータ回転軸100内の冷却油通路102を通過する。その後、ロータシャフト74内へ移動し、冷却油通路92内を通過する。このため、ロータシャフト74が冷却される。さらに、ロータシャフト74内の電動機冷却油通路76を通過して、上端部から冷却油室78を通り、冷却通路80と冷却通路82を通過する。その後、油圧モータハウジング106内の冷却通路84、86、88を通り、開口部90より放出する。開口部90より放出された冷却油は、図示されない熱交換器に送られる。このため、油圧モータハウジング106の内側に位置するステータ75が冷却される。
【0043】
以上のように動作することで、電動機62と油圧モータ64を同一の冷却媒体で冷却でき、冷却油は、ステータ75と接触しないことから、電動機62の回転の障害となることはない。また、たとえ、電気油圧ハイブリッドモータを傾斜させたとしても冷却油が電動機62の回転の障害とはならない。冷却油は油圧モータのケースドレンとして排出されるため、冷却用のポンプは必要とならない。
【0044】
以上本発明の好適な実施例について図面により説明したが、当業者であれば、上記の図面および説明に基づいて種々の変形をすることが可能であることはもちろんである。
【実施例3】
【0045】
本発明に係る実施例3の構成図を図3に示す。実施例3は、実施例1で示された電気油圧ハイブリッドモータ124を搭載した建設機械である油圧ショベル120を示す。
【0046】
この油圧ショベル120は、走行手段としての左・右無限軌道履帯を備えた下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けた上部旋回体122と、この上部旋回体122に俯仰動可能に接続され、ブーム、アーム、バケットからなる多関節型の油圧作業機(フロント装置)と、ブーム、アーム、バケット、上部旋回体122、左・右無限軌道履帯をそれぞれ駆動するブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、バケット用油圧シリンダ、旋回用電気油圧ハイブリッドモータ124、左・右走行用油圧モータとを備えている。
【0047】
旋回用電気油圧ハイブリッドモータ124は、実施例1に記載される油圧モータと電動機とからなる駆動装置である。
【0048】
本願発明を適用することで油圧モータと電動機を一軸上に並べて配置し、油圧モータのケース内作動油を用いて電動機を冷却することで、電動機専用の冷却ポンプおよび熱交換器を不要とし、電動機の冷却システムを簡素化した電気油圧ハイブリッドモータを搭載した建設機械を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
2 油圧モータ
4 電動機
6 端板
8 油圧モータハウジング
10 固定軸
12 第一軸受
14 油圧モータ回転軸
16 油圧モータ回転軸凹部
18 冷却油通路
20 下端
22 斜板
24 第二軸受
26 電動機ハウジング
28 ロータシャフト
29 ステータ
30 第三軸受
32 第四軸受
34 電動機回転軸凹部
36 第二油室
38 冷却油通路
40 電動機冷却油通路
42 第一油室
44 第1オイルシール
46 冷却油通路
48 オイルシール
52 冷却油通路
54 冷却油通路
56 冷却油通路
58 冷却油通路開口部
62 電動機
64 油圧モータ
66 電動機ハウジング
68 端板
69 端板
70 第五軸受
72 第六軸受
74 ロータシャフト
75 ステータ
76 電動機冷却油通路
78 冷却油室
80 冷却通路
82 冷却通路
84 冷却通路
86 冷却通路
88 冷却通路
90 開口部
92 冷却油通路
94 オイルシール
96 油室
98 電動機回転軸凹部
100 油圧モータ回転軸
102 冷却油通路
104 第七軸受
106 油圧モータハウジング
108 第八軸受
110 オイルシール
112 斜板
114 冷却通路
116 油室
120 油圧ショベル
122 上部旋回体
124 電気油圧ハイブリッドモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モータと電動機を備える電気油圧ハイブリッドモータにおいて、油圧モータのケース内作動油を冷却媒体として電動機を冷却する電気油圧ハイブリッドモータ。
【請求項2】
前記油圧モータの駆動軸と前記電動機の駆動軸のそれぞれ中心に冷却媒体通過用の通路を設けることを特徴とする請求項1記載の電気油圧ハイブリッドモータ。
【請求項3】
前記電動機の外周ケース内に冷却媒体通過用の通路を設けることを特徴とする請求項2記載の電気油圧ハイブリッドモータ。
【請求項4】
前記油圧モータの駆動軸と前記電動機の駆動軸は一軸上で連結されることを特徴とする請求項2記載の電気油圧ハイブリッドモータ。
【請求項5】
前記冷却媒体は、冷却油であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一つに記載の電気油圧ハイブリッドモータ。
【請求項6】
前記冷却媒体は、外部の熱交換器で冷却されることを特徴とする請求項1乃至4記載の電気油圧ハイブリッドモータ。
【請求項7】
油圧モータと電動機を備える電気油圧ハイブリッドモータにおいて、油圧モータのケース内作動油を冷却媒体として電動機を冷却する電気油圧ハイブリッドモータを搭載する建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81272(P2013−81272A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218760(P2011−218760)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】