説明

電気浸透材及びその製造方法と電気浸透流ポンプ

【課題】電気浸透流ポンプを構成する電気浸透材として好適な多孔質焼結体を作製する。
【解決手段】100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸(母材SiO2)に対し、BaO、SrO、CaO、TiO2、ZrO2、Na2O、K2Oの各成分の少なくともいずれか1種、又は、アルミニウムケイ酸を含有する天然鉱物(アルカリ長石、カオリナイト、葉長石等)、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの少なくともいずれか1種を合計で0.05〜10重量部の割合で添加する。母材は、溶融石英又は溶融ケイ酸に溶融アルミナが添加されたSiO2−Al23であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーや分析化学等に用いられるマイクロ流体チップ内部の液体駆動制御や、携帯型エレクトロニクス機器における液体駆動制御に好適な電気浸透流ポンプに用いられる電気浸透材及びその製造方法と、それを具備する電気浸透流ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体チップは、プラスチックやガラスからなる小さなチップ上に微細流路や液体制御機器を設け、前記液体制御機器内で化学反応や生化学反応等を行わせる装置であり、該マイクロ流体チップを採用することにより、前記の化学反応や生化学反応を実施するシステムを小型化することができる。また、該化学反応で必要とされるサンプルや試薬の量を大幅に低減することもできる。これにより、前記システムにおける測定時間の短縮や消費電力の低減を実現することが可能となる。
【0003】
このシステムでは、マイクロ流体チップ内の液体を駆動させるための小型ポンプが必要である。この種の小型ポンプとして、近時、電気浸透流現象を利用した電気浸透流ポンプが採用されつつある。
【0004】
電気浸透流ポンプの内部では、電気浸透材と指称される誘電体の多孔質焼結体が1対の電極間に介在されており、この電気浸透材に前記両電極を介して電圧が印加されると、一方の電極側から他方の電極側への液体の流れ(電気浸透流)が生じる。電気浸透流ポンプは、この電気浸透流現象を利用して液体を無脈動で輸送するポンプであり、マイクロ流体チップにおける液体駆動手段の他、例えば、エレクトロニクス機器用の液体駆動ポンプとしても有望視されている。
【0005】
電気浸透流ポンプを幅広い分野で利用可能とするべく、小型化、低電圧化、低価格化及び多量の安定供給が希求されている。例えば、本発明者は、携帯型エレクトロニクス機器向けの燃料電池では、形状の制約から液体駆動用ポンプの寸法が10mm以下、流路の断面積、換言すれば、電気浸透材の断面積が100mm2以下でありながらも、500μL/分程度の流量が確保され、且つ圧力特性としては50kPa程度、さらに、駆動電圧は24V以下、好ましくは6V以下が望ましいと考えている。加えて、安定した性能を長期間確保するため、長寿命あること、換言すれば、長期間にわたる耐久性を有することが必要である。さらには、1ロットあたり100万個単位の大量生産体制を整えることが望まれている。
【0006】
以上の要請に対応するために従来からなされた開発研究は、電気浸透材の形状やポンプの構造を工夫する等の機械的設計の観点から、必要とされるポンプ流量や圧力特性を得るものがほとんどである。一方、電気浸透流ポンプの諸特性や長期安定性、量産性を向上させるために電気浸透材を改善しようとする試みは、これまでのところなされていない。
【0007】
ここで、電気浸透材の材質は、酸化シリコン(シリカ;SiO2)が一般的であるが、特許文献1では、シリカの他、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化タンタルの各種酸化物をアモルファス質、ガラス質又は結晶質として用いることが記載されている。なお、該特許文献1においては、酸化物同士の混合体としてもよいとの記載もある。
【0008】
また、特許文献2には、シリコン窒化物、チタニア、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸塩、バイコール、プラスチックの群から選択されたいずれか1種以上をポンプ材料とすることが提案されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0189947号明細書
【特許文献2】特表2006−516831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、電気浸透流ポンプの実用化を図る上で、該電気浸透流ポンプを、流量・圧力を確保して小型化するとともに、駆動時の低電圧化、低価格化に加え、量産性の向上が望まれている。
【0011】
駆動する液体に対する電気浸透流ポンプの最大流量や最大圧力、効率等の諸特性は、該電気浸透流ポンプが如何なる構造であるかによっても相違する。すなわち、例えば、電気浸透材の幾何学的形状、電極の構造や配置等が異なれば、前記の諸特性も変化する。より具体的には、電気浸透材の厚みを小さくすれば電界強度が大きくなるので、液体の流量を増大することができる。また、液体が通過する断面積を大きくすることにより、同一の電界強度で流量を増大することができる。そして、駆動電圧が大きくすることでも、流量が増大する。すなわち、電気浸透材の厚みを小さくするとともに、液体の流通(駆動)方向に対する断面積を大きくし、さらに、駆動電圧を大きくすることによって、流量を増大することが可能となる。
【0012】
このことから諒解されるように、電気浸透流ポンプにおいて、液体の流量と圧力を変更する最も簡便な方法の1つは、電気浸透材の幾何学的形状及び駆動電圧を変更することである。
【0013】
しかしながら、電気浸透材の厚みを小さくすると、当該電気浸透材の強度が不足するようになるので、ポンプの組み立てが困難となる、耐圧性が不足する、長期間にわたる耐久性が確保できない懸念が生じる等の不具合を招く。また、電気浸透材の断面積を大きくすることは、電気浸透流ポンプの大型化を引き起こす。さらに、駆動電圧を大きくすることは消費電力の増大を招き、効率を低下させる。従って、ポンプ寸法や消費電力量が厳格に制約されるような用途では、電気浸透材の幾何学的形状及び駆動電圧を変更することで電気浸透流ポンプにおける流量・圧力等の諸特性向上を試みることは困難である。
【0014】
以上のような観点から、本発明者は、電気浸透材に着目した。液体の駆動力に優れるものを電気浸透材として採用すれば、電気浸透流ポンプの寸法や駆動電圧を変更することなく流量や圧力を向上することが可能となるからである。
【0015】
電気浸透材の材質の一例としては、シリカ粒子を焼結した多孔質焼結体が挙げられる。この場合、電気浸透材の諸特性は、シリカ粒子の粒子径にも依存して変化する。例えば、圧力特性を向上させるには、粒径が小さいシリカ粒子を焼結した多孔質焼結体を電気浸透材とすればよい。しかしながら、この場合、気孔率が小さくなるために流量や効率が低下する。このように、圧力特性と、流量及び効率とはトレードオフの関係にあり、一方を向上させると他方が低下するという不具合が顕在化している。換言すれば、小型、低電圧、高効率を同時に満足する電気浸透流ポンプを構成することは困難である。
【0016】
また、シリカ粒子を焼結する場合、焼結挙動が不安定となることが多く、得られた多孔質焼結体の強度も十分であるとはいい難い側面がある。すなわち、電気浸透流ポンプの量産性、品質安定性、製品寿命を十分に確保することも容易ではない。
【0017】
なお、特許文献1、2には、電気浸透材として多数の材質が例示されてはいるものの、各電気浸透材の諸特性(特に、メタノールに対する諸特性)についてはまったく検討されておらず、電気浸透流ポンプの小型化、低電圧化及び高効率化を同時に達成し得るか否かが今ひとつ明確ではない。しかも、特許文献1、2記載の各種材質からなる電気浸透材では、焼結性が不安定であるために電気浸透材(多孔質焼結体)としての強度も十分ではなく、これらの電気浸透材を用いた場合の電気浸透流ポンプの量産性や品質安定性、製品寿命を確保することができないことが懸念される。
【0018】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、所定の評価方法によって評価された諸特性が一般的な電気浸透材であるシリカに比して優れるとともに、長期にわたる耐久性を示し、しかも、大量生産が可能でロット毎の品質バラツキも小さい電気浸透材及びその製造方法と、該電気浸透材を具備する電気浸透流ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の目的を達成するために、本発明は、液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであることを特徴とする。
【0020】
無定形シリカを用いた場合、焼結時の体積収縮が大きいために多孔質焼結体を得ること自体が容易ではない。また、体積収縮量を小さくするべく焼結温度を低くすると、多孔質焼結体が低強度となる。さらに、液体に接触したときの溶出量が比較的大きいことから、長期間にわたる耐久性を確保することが容易でないと予想される。
【0021】
一方、溶融石英又は溶融ケイ酸の粉末は、略均一な球体である。このような粉末を用いると、SiO2多孔質焼結体を容易に得ることができる。しかも、作製されたSiO2多孔質焼結体は、強度に優れるとともに、長期間にわたって良好な耐久性を示す。
【0022】
その上、溶融石英又は溶融ケイ酸の平均粒径がこの範囲内に設定されることで、平均気孔径、平均気孔率を電気浸透材として好適な範囲に設定することが著しく容易となる。
【0023】
また、上記の成分を固溶した溶融石英又は溶融ケイ酸の多孔質焼結体は、機械的強度が優れるとともに、電気浸透材として要求される諸特性が単なるSiO2焼結体に比して優れている。しかも、化学的・物理的に安定であり、長期間にわたって安定した性能を示す。
【0024】
要するに、本発明によれば、優れた諸特性が長期間にわたって発現する電気浸透材を構成することができる。
【0025】
なお、本発明では、溶融石英と溶融ケイ酸の双方を同時に使用してもよい。以下においても同様である。
【0026】
上記の成分に代替し、別の添加成分を添加するようにしてもよい。すなわち、本発明は、液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであることを特徴とする。
【0027】
この場合においても、上記と同様に、優れた諸特性を長期間にわたって示す電気浸透材が構成される。
【0028】
なお、天然鉱物の好適な例としては、アルカリ長石、カオリナイト、葉長石を挙げることができる。
【0029】
さらに、溶融石英又は溶融ケイ酸の一部を溶融アルミナに置き換えたSiO2−Al23を母材としてもよい。すなわち、本発明は、液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナとの割合がモル%で65〜99.8:35〜0.2であるSiO2−Al23の100重量部に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであり、前記溶融アルミナの平均粒径が0.3〜10μmであることを特徴とする。
【0030】
勿論、SiO2−Al23を母材とする場合も、上記の添加成分を添加することができる。すなわち、本発明は、液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナとの割合がモル%で65〜99.8:35〜0.2であるSiO2−Al23の100重量部に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであり、前記溶融アルミナの平均粒径が0.3〜10μmであることを特徴とする。
【0031】
なお、SiO2(溶融石英又は溶融ケイ酸)−Al23(溶融アルミナ)を母材とする多孔質焼結体(電気浸透材)は、電気浸透流を生じさせる液体がアルコール、例えば、メタノールである場合に、優れた耐久性を示す。
【0032】
この場合においても、天然鉱物として、アルカリ長石、カオリナイト、葉長石を採用することが好適である。
【0033】
いずれの電気浸透材においても、平均気孔率が25〜52%であり、且つ平均気孔径が0.1〜8μmであることが好ましい。この場合、電気浸透材として最も効率的に機能するからである。
【0034】
また、本発明に係る電気浸透材の製造方法は、100重量部の溶融石英粉末又は溶融ケイ酸粉末に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種、又は、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種を含む粉末を合計で0.05〜10重量部添加して混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末に対して800℃〜1280℃で仮焼処理を施し、仮焼物を得る工程と、
前記仮焼物を平均粒径0.1〜8.5μmに粉砕して仮焼粉末とする工程と、
前記仮焼粉末にバインダを添加した後に成形加工を行って成形体を作製する工程と、
前記成形体に対して1000℃〜1350℃で焼成処理を施して多孔質焼結体とする工程と、
を有し、
前記溶融石英粉末又は前記溶融ケイ酸粉末として、平均粒径が0.2〜7.5μmであるものを用いることを特徴とする。
【0035】
さらに、本発明に係る別の電気浸透材の製造方法は、溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナとの割合がモル%で65〜99.8:35〜0.2であるSiO2−Al23粉末100重量部に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種、又は、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種を含む粉末を合計で0.05〜10重量部添加して混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末に対して800℃〜1280℃で仮焼処理を施し、仮焼物を得る工程と、
前記仮焼物を平均粒径0.1〜8.5μmに粉砕して仮焼粉末とする工程と、
前記仮焼粉末にバインダを添加した後に成形加工を行って成形体を作製する工程と、
前記成形体に対して1000℃〜1350℃で焼成処理を施して多孔質焼結体とする工程と、
を有し、
前記溶融石英粉末又は前記溶融ケイ酸粉末として平均粒径が0.2〜7.5μmであるものを用い、且つ前記溶融アルミナ粉末として平均粒径が0.3〜10μmであるものを用いることを特徴とする。
【0036】
以上のように、溶融石英粉末又は溶融ケイ酸粉末や溶融アルミナ粉末として平均粒径が所定の範囲内にあるものを使用することで、平均気孔径や平均気孔率が好適な範囲内である電気浸透材を得ることが著しく容易となる。
【0037】
また、仮焼温度や本焼成温度を上記の範囲内とすることで、諸特性、機械的強度、電気浸透材としての特性に優れた電気浸透材を得ることができる。
【0038】
しかも、上記した製造方法は、作業が著しく簡素であり、しかも、一度に多量の多孔質焼結体を作製することが可能である。このため、電気浸透材や電気浸透流ポンプの大量生産への希求に対応することができる。
【0039】
そして、本発明に係る電気浸透流ポンプは、上記した電気浸透材を具備することを特徴とする。
【0040】
この電気浸透流ポンプは、同一形状・寸法のSiO2多孔質焼結体を電気浸透材とする電気浸透流ポンプに比して流量を大きくすることができ、且つ圧力特性も良好である。すなわち、該電気浸透流ポンプでは、小型でありながらも流量や圧力を大きくすることが可能となる。さらに、これらの諸特性が長期間にわたって維持される。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、所定の平均粒径の溶融石英又は溶融ケイ酸、又はSiO2(溶融石英又は溶融ケイ酸)−Al23(溶融アルミナ)に対して、各種の添加成分を所定の割合で添加するようにして電気浸透材を構成しているので、該電気浸透材として要求される諸特性が単なるSiO2焼結体に比して優れ、且つ機械的強度にも優れたものとなる。従って、例えば、小型でありながらも流量や圧力を大きくすることが可能で、しかも、諸特性が長期間にわたって安定した電気浸透流ポンプを構成することができる。
【0042】
また、この電気浸透材は、1回の製造作業で大量に製造することが容易であるので、電気浸透流ポンプの大量生産への希求に対応することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明に係る電気浸透材及びその製造方法につき、該電気浸透材を具備する電気浸透流ポンプとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
図1は、本実施の形態に係る電気浸透流ポンプ10を備えるポンプシステム12の要部概略斜視図である。すなわち、このポンプシステム12では、マイクロ流体チップ14の上面に4つの電気浸透流ポンプ10が直付されている。
【0045】
マイクロ流体チップ14は、その寸法が縦10cm×横5cm×厚み2mm程度であり、ガラス、プラスチック又はシリコン等からなる第1基板16a及び第2基板16bの端面同士を互いに接着又は熱融着することにより形成される。
【0046】
この場合、第1基板16aの上面には所定形状の溝が形成され、第2基板16bには、前記溝の両端部に対向する孔が形成されている。第1基板16aと第2基板16bとを接合することにより、前記溝と第2基板16bの底面と前記孔とによって第2流路18が構成され、該孔は、電気浸透流ポンプ10に対する第2流路18の連通孔36となる。なお、図1に示すように、マイクロ流体チップ14内の中心部には、前記溝の一部であり且つ各第2流路18に連結された反応器20が形成されている。
【0047】
電気浸透流ポンプ10は、高さ10mm程度以下のサイズであり、図1及び図2に示すように、中空円筒状のポンプ本体24の内側が、第2流路18に対して駆動用の液体38を供給し、あるいは吸入する第1流路22とされている。この第1流路22には、液体が流通可能な孔31が複数形成された第1電極30と、電気浸透材28と、複数の孔33が形成された第2電極32とが、第1流路22の軸方向に沿って上記した順序で設けられている。
【0048】
この場合、電気浸透流ポンプ10では、電気浸透材28に対して第1電極30側を上流側とし、第2電極32側を下流側としている。
【0049】
また、第1流路22における第1電極30の上流側は、外部より液体38が充填される液溜め(リザーバ)26とされ、一方で、電気浸透流ポンプ10における下流側の外周面には、マイクロ流体チップ14に向かって突出形成され且つ連通孔36と嵌合可能な突起35が形成され、該突起35には、第1流路22の軸方向に沿って液体38の排出口34が開口されている。
【0050】
ポンプ本体24は、第1流路22内を通過する電解質溶液等の液体38に対して耐液性を有するプラスチック、セラミックス、ガラス、又は、表面が電気絶縁処理された金属材料からなる。
【0051】
第1電極30及び第2電極32は、白金、銀、カーボン、ステンレス鋼等の導電性材料からなり、図2に示すように、多孔質体として構成される。なお、多孔質体の他、ワイヤ形状体、メッシュ形状体、シート形状体、あるいは電気浸透材28の上流側及び下流側に蒸着された導電性蒸着体であってもよい。これら第1電極30及び第2電極32は、図示しない電源と電気的に接続されている。
【0052】
そして、本実施の形態においては、電気浸透材28として、基材の溶融石英又は溶融ケイ酸に各種物質が添加された以下の第1〜第4の多孔質焼結体のいずれかが用いられている。
【0053】
第1の多孔質焼結体は、100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加されたものである。
【0054】
この場合、溶融石英又は溶融ケイ酸は第1の多孔質焼結体の母材であり、第1の多孔質焼結体に良好なゼータ電位を発現させるとともに、液体に対する化学的安定性、換言すれば、耐久性を確保する。また、後述する製造過程における焼成処理時の熱収縮が小さいので、設計寸法を保つことが容易である。すなわち、多孔質焼結体(電気浸透材28)を所望の寸法で得ることが容易となる。さらに、機械的強度が高く、且つ諸特性のバラツキが小さい多孔質焼結体を構成することもできる。
【0055】
ここで、溶融石英からなる電気浸透材28の電子顕微鏡(SEM)写真を図3に示す。倍率が5000倍であるSEM写真から求められる長径と短径の和を2で除すことによって求められる溶融石英の平均粒径は、0.2〜7.5μmである。なお、電気浸透材28(多孔質焼結体)の原材料である溶融石英粉末の平均粒径も、同様の値である。
【0056】
このSEM写真から諒解されるように、電気浸透材28中で、溶融石英は略球体である。このような略球体の溶融石英を含む多孔質焼結体を電気浸透材28として電気浸透流ポンプ10を構成した場合、バルク体が粉砕されて得られたSiO2粉末を原材料粉末とし、且つ上記の諸成分が添加された電気浸透材28を具備する電気浸透流ポンプ10に比して、後述する規格化流量係数、規格化圧力係数、規格化輸送係数に基づいて評価される諸特性が著しく優れたものとなる。溶融ケイ酸、及び後述する溶融アルミナについても同様である。
【0057】
なお、溶融石英の粉末自体も略球体である。すなわち、溶融石英の粉末を原材料として用いて多孔質焼結体を作製すると、該多孔質焼結体では、溶融石英及び上記各成分を含む原材料粉末が球体形状を維持した状態で互いに結合する。場合によっては、原材料粉末が塊状や複合体状で互いに結合することもあるが、このような結合状態であってもよい。
【0058】
原材料粉末、ひいては電気浸透材28中の溶融石英又は溶融ケイ酸の平均粒径が0.2μm未満であると、該電気浸透材28の平均気孔率が小さくなるとともに平均気孔径が0.1μm以下となるので、流量が小さく効率が低下する。また、7.5μmを超えると焼成ムラが発生し、その結果、平均気孔率が大きくなり、平均気孔径も8μm以上になるので、十分なポンプ特性が得られなくなる。溶融石英又は溶融ケイ酸のより好ましい平均粒径は、0.7〜3.0μmである。この場合、諸特性の制御が容易であり、しかも、均質性に富む電気浸透材28を得ることができる。
【0059】
溶融石英又は溶融ケイ酸の平均粒径は、上記の理由から、後述する残余の第2〜第4の多孔質焼結体においても0.2〜7.5μm、より好ましくは0.7〜3.0μmに設定される。
【0060】
添加物であるBaO成分、SrO成分、CaO成分は、第1の多孔質焼結体を得る際の焼成可能温度幅を拡張する作用を営む。すなわち、広い温度範囲にわたって焼成を可能とする。このため、品質が安定し、さらには厚みが小さい電気浸透材28を作製することが可能となる。
【0061】
しかも、BaO成分、SrO成分、CaO成分の少なくともいずれか1種が添加されたSiO2(溶融石英又は溶融ケイ酸)多孔質焼結体を電気浸透材28とした場合、電気浸透流ポンプ10の流量/電流比が、SiO2単体からなる多孔質焼結体を用いた場合に比して向上する。また、BaO成分、SrO成分、CaO成分をすべてを添加した場合では、例えば、メタノールを流通させた際に、流量係数、圧力係数、輸送効率係数の各々を、0.1、2.0、0.5よりも大きくすることができる。
【0062】
BaO成分、SrO成分、CaO成分の少なくともいずれか1種が合計で0.05重量部未満では、内部まで均質に焼結する効果が乏しくなる。一方、10重量部を超えると均一な焼結が起こり難くなるとともに、平均粒径が増大して気孔径が大きくなることがある。また、このために機械的強度が小さくなるので、寿命特性等の劣化を招くこともある。
【0063】
TiO2成分は、第1の多孔質焼結体の気孔率、気孔径の制御を容易にするための成分である。すなわち、TiO2成分を添加することにより、第1の多孔質焼結体の気孔率、気孔径を所望の範囲内に調整することが容易となる。
【0064】
このように気孔率、気孔径を制御することによっても、電気浸透流ポンプ10の流量/電流比を向上させることが可能となり、後述する規格化流量係数、規格化圧力係数、規格化輸送効率係数の各々を大きくすることができる。なお、TiO2成分が0.05重量部未満の場合や10重量部を超える場合、第1の多孔質焼結体における気孔率、気孔径を制御する効果に乏しい。
【0065】
ZrO2成分は、第1の多孔質焼結体の機械的強度を向上させる。すなわち、ZrO2成分を添加することにより、形状が小さいながらも十分な機械的強度を有する電気浸透材28を構成することができる。従って、小型且つ高性能の電気浸透流ポンプ10を構成することができる。
【0066】
なお、ZrO2成分が0.05重量部未満では機械的強度を向上させる効果に乏しく、10重量部を超える場合は均一な焼結が容易でなくなり、気孔率が大きくなる。
【0067】
Na2O成分、K2O成分は、第1の多孔質焼結体の焼結可能温度を低下させる。このため、比較的大寸法であっても内部まで均質な第1の多孔質焼結体(電気浸透材28)を得ることが可能となる。また、Na2O成分、K2O成分の少なくともいずれかが添加された電気浸透材28では、流量の改善効果が著しく、同一電圧での流量と圧力が大きく向上する。
【0068】
Na2O成分、K2O成分の少なくともいずれかが0.05重量部未満では、内部まで均質に焼結する効果が乏しい。また、10重量部を超えると、焼結可能な温度幅が著しく狭くなり、焼成処理時の温度管理が容易でなくなるので繁雑である。
【0069】
BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の添加量は、合計で0.05重量部〜10重量部とする。すなわち、いずれか1種のみを添加する場合には当該成分を100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対して0.05〜10重量部とし、2種以上を添加する場合には、100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対して全添加成分の合計を0.05〜10重量部とすればよい。
【0070】
次に、第2の多孔質焼結体につき説明する。第2の多孔質焼結体は、100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加されたものである。
【0071】
溶融石英又は溶融ケイ酸(SiO2)については、前記第1の多孔質焼結体と同様である。
【0072】
アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物は、主成分である溶融石英又は溶融ケイ酸との固相反応が容易に進行するものであるので、諸特性が良好な第2の多孔質焼結体を得ることが容易となる。このため、電気浸透流ポンプ10としてのポンプ特性が向上し、しかも、安定化する。
【0073】
アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物の好適な例としては、アルカリ長石、カオリナイト、葉長石が挙げられる。この中、アルカリ長石及び葉長石は、第2の多孔質焼結体の焼結可能温度を低下させる作用を営む。従って、上記のNa2O成分、K2O成分と同様に、比較的大寸法であっても内部まで均質な第2の多孔質焼結体(電気浸透材28)を得ることが可能となる。また、アルカリ長石又は葉長石の少なくともいずれかが添加された電気浸透材28でも、流量の改善効果が著しく、同一電圧での流量と圧力が大きく向上する。なお、アルカリ長石又は葉長石の少なくともいずれかが0.05重量部未満では、内部まで均質に焼結する効果が乏しく、10重量部を超えると、焼結可能な温度幅が著しく狭くなり、焼成処理時の温度管理が容易でなくなる。
【0074】
また、カオリナイトは、第2の多孔質焼結体の焼成可能温度幅を拡張する。その上、第2の多孔質焼結体を作製する焼成時に還元を防止し、平均気孔率、平均気孔径のバラツキを抑制する。カオリナイトの添加量が0.05重量部未満では以上の効果に乏しく、一方、10重量部を超えると、第2の多孔質焼結体の焼結性が低下して脆くなる傾向がある。
【0075】
また、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCも、主成分である溶融石英又は溶融ケイ酸との固相反応が容易に進行する。このため、焼成時の収縮率が小さく、均質な第2の多孔質焼結体を安定して得ることができる。しかも、液体に対する化学的安定性や機械的強度が確保される。
【0076】
さらに、焼成時の収縮率が小さいので設計寸法を保つことが容易であり、従って、第2の多孔質焼結体(電気浸透材28)を所望の寸法で得ることが容易となる。
【0077】
BaSiO3は、第2の多孔質焼結体を得る際の焼成可能温度幅を拡張し、広い温度範囲にわたる焼成を可能とする。このため、品質が安定し、さらには厚みが小さい電気浸透材28を作製することが可能となる。特に、電気浸透流ポンプ10の流量/電流比が、SiO2単体からなる多孔質焼結体を用いた場合に比して向上する。しかも、電気浸透流ポンプ10として組込み長時間にわたり電気浸透流を生じさせても、流量係数、圧力係数、輸送効率係数、強度等の諸特性の劣化がほとんど認められない。
【0078】
BaSiO3の添加量が0.05重量部未満では、内部まで均質に焼結する効果に乏しい。また、10重量部を超えると均一な焼結が容易ではなくなり、平均粒径が増大して気孔径が大きくなることがある。また、このために機械的強度が小さくなるので、寿命特性等の劣化を招くこともある。BaSiO3のより好ましい添加量は、1.5〜6重量部である。
【0079】
BaTiO3は、第2の多孔質焼結体の気孔率、気孔径の制御を容易にするための成分である。すなわち、BaTiO3を添加することにより、第2の多孔質焼結体の気孔率、気孔径を所望の範囲内に調整することが容易となる。従って、TiO2が添加された第1の多孔質焼結体と同様に、電気浸透流ポンプ10の流量/電流比を向上させることが可能となり、流量係数、圧力係数、輸送効率係数の各々を、0.1、2.0、0.5よりも大きくすることも可能となる。BaTiO3が0.05重量部未満の場合や10重量部を超える場合、第2の多孔質焼結体における気孔率、気孔径を制御する効果に乏しい。
【0080】
BaZrO3又はSrSiO3のいずれかを添加した場合、第2の多孔質焼結体の機械的強度が向上する。従って、形状が小さいながらも十分な機械的強度を有する電気浸透材28を構成することができ、結局、小型且つ高性能の電気浸透流ポンプ10を構成することができる。BaZrO3又はSrSiO3のいずれかが0.05重量部未満では、その効果に乏しい。また、10重量部を超える場合、均一な焼結が容易でなくなり、気孔率が大きくなる。
【0081】
SiCも、第2の多孔質焼結体の機械的強度を著しく向上させる成分である。従って、SiCを添加することにより、厚みが小さいながらも複雑な形状の電気浸透材28を作製することが可能となる。このため。電気浸透流ポンプ10の小型化を図ることができる。
【0082】
電気浸透材28には、さらに、アルミナを含めることもできる。すなわち、第3、第4の多孔質焼結体は、それぞれ、前記第1の多孔質焼結体、前記第2の多孔質焼結体の溶融石英又は溶融ケイ酸(SiO2)の一部が溶融アルミナ(Al23)に置換され、SiO2−Al23を母材とするものである。
【0083】
より具体的には、第3の多孔質焼結体は、100重量部のaSiO2−bAl23に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加されたものである。第3の多孔質焼結体は、溶融石英又は溶融ケイ酸の粉末、溶融アルミナの粉末、各成分の原材料粉末の混合粉末を焼結することで作製することができる。
【0084】
ここで、a、bはモル%を表し、その合計は100である。そして、aが65〜99.8に設定される一方、bが35〜0.2に設定される。すなわち、SiO2は65〜99.8モル%、Al23は35〜0.2モル%に調整される。SiO2が65モル%未満では、第3の多孔質焼結体の焼結温度が高くなるとともに品質のバラツキが若干大きくなる傾向がある。また、第3の多孔質焼結体の平均気孔率が25%以下となる。一方、SiO2が99.8モル%を超えると、均一な焼結が容易でなくなり、所要の気孔率さらには気孔径を制御することが困難となる。
【0085】
この中、溶融石英又は溶融ケイ酸の平均粒径に関しては、上記第1及び第2の多孔質焼結体と同様である。一方、溶融アルミナの平均粒径は、0.3〜10μmに設定される。0.3μm未満では第3の多孔質焼結体の平均気孔率が小さくなり、平均気孔径も小さくバラツキが発生する。また、10μmを超えると焼成ムラが発生するので、平均気孔率が大きくなる。
【0086】
第3の多孔質焼結体において、添加成分であるBaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分が営む機能、及び添加割合を0.05〜10重量部とする理由は、上記第1の多孔質焼結体と同一である。
【0087】
また、第4の多孔質焼結体は、100重量部のaSiO2−bAl23に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加されたものである。第4の多孔質焼結体も、溶融石英又は溶融ケイ酸の粉末、溶融アルミナの粉末、各物質の原材料粉末の混合粉末を焼結することで作製することができる。
【0088】
第4の多孔質焼結体においても、第3の多孔質焼結体と同様に、SiO2が65〜99.8モル%、Al23が35〜0.2モル%に設定される。また、添加成分のアルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCが営む機能、及び添加割合を0.05〜10重量部とする理由は、上記第2の多孔質焼結体と同一である。
【0089】
アルミナを含む第3又は第4の多孔質焼結体を電気浸透材28として用いると、液体がアルコール、特にメタノールであるときに、電気浸透流ポンプ10に優れた諸特性が発現する。
【0090】
第1〜第4の多孔質焼結体のいずれにおいても、平均気孔率が25〜52%、平均気孔径が0.1〜8μmであることが好ましい。平均気孔率25%未満、平均気孔径0.1μm未満では、安定した諸特性を得ることが容易でなくなる。また、平均気孔率52%超、平均気孔径8μm超では、電気浸透材28として機能することが容易ではない。
【0091】
また、第1〜第4の多孔質焼結体の結晶状態は、球状、塊状又は複合体状のいずれかであることが好ましい。このような結晶状態の電気浸透材28では、溶融石英又は溶融ケイ酸単体の多孔質焼結体からなる電気浸透材に比して、優れた諸特性が長期間にわたって確保される。例えば、後述する規格化流量係数、規格化圧力係数、規格化輸送効率係数の各々が、長期間にわたって安定して0.1、2.0、0.5を超えるようになる。
【0092】
結晶状態の相違は、作製された第1〜第4の多孔質焼結体が良品であるか不良品であるかの判定基準とすることもできる。すなわち、結晶状態が球状、塊状又は複合体状のいずれかでない多孔質焼結体を不良品として選別するようにしてもよい。なお、結晶状態はSEM観察で確認することが可能である。
【0093】
次に、第1〜第4の多孔質焼結体の製造方法につき、第1の多孔質焼結体を例として説明する。
【0094】
先ず、SiO2の原材料粉末、すなわち、溶融石英又は溶融ケイ酸の粉末を用意する。この原材料粉末としては、上記したように、平均粒径が0.2〜7.5μmであるものが使用される。このような原材料粉末を用いることで、添加成分との固相反応が速やかに進行し、その結果、均質で且つ良好な諸特性を示す多孔質焼結体を得ることが容易となる。また、量産化も可能となる。
【0095】
次に、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分又はK2O成分の供給源となる粉末を添加する。ここで、例えば、CaO成分の供給源はCaOであってもよく、CaCO3であってもよい。その他の成分についても同様に、分解によってBaO成分やSrO成分等を供給する物質であればよい。具体的には、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、アルコキシド等を用いることができる。いずれの場合においても、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分としての合計を、溶融石英又は溶融ケイ酸の原材料粉末100重量部に対して0.05〜10重量部とすればよい。
【0096】
このようにして得られた混合粉末に対し、次に、800℃〜1280℃の範囲内で仮焼処理を施す。この仮焼処理を施すことで溶融石英又は溶融ケイ酸と添加成分との固相反応が若干進行し、その結果、最終製品である第1の多孔質焼結体(電気浸透材28)に優れた化学的安定性、機械的強度が均等に付与されるとともに、電気浸透材としての諸特性が発現する。800℃未満では、均質性に富んだ仮焼物が得られず、また、1280℃を超えると固相反応が過度に進行して仮焼物が硬くなり、後述する粉砕が容易でなくなる。また、成形工程以降の工数がかかるとともに気孔率、気孔径の制御が困難となり、電気浸透材としての諸特性も低下する。
【0097】
次に、上記の仮焼物を、平均粒径が0.1〜8.5μmの範囲内となるように粉砕する。0.1μm未満では、次工程である成形工程時に、成形体に亀裂やひずみ、割れが発生し易くなる傾向がある。また、8.5μmを超えると、第1の多孔質焼結体の気孔径が著しく大きくなり、このために機械的強度が低下する。
【0098】
換言すれば、仮焼物を粉砕した仮焼粉末の平均粒径を上記した範囲内とすることにより、成形工程を行う際に成形体に亀裂やひずみ、割れが発生することを回避することができるので、用途に応じて、複雑な形状の成形体を得ることも可能となる。また、焼成後の第1の多孔質焼結体の機械的強度、さらには諸特性を安定にする。
【0099】
次に、仮焼粉末に有機バインダ等のバインダを添加した後に成形を行い、成形体を作製する。この際、仮焼粉末の平均粒径が上記の範囲内にあるので、成形体に亀裂やひずみ、割れが発生することが回避される。また、複雑な形状の成形体であっても、比較的容易に成形することが可能である。
【0100】
次に、この成形体に対し、1000℃〜1350℃で焼成処理を施す。この温度範囲では、気孔率、気孔径を容易に制御することが可能である。また、著しく安定した諸特性を有する多孔質焼結体が得られる。焼成温度が1000℃未満では不均質となり、多孔質焼結体の結晶状態も球状、塊状、複合体状になり難い。さらに、気孔率、気孔径も所定の範囲内に制御することが困難となる。一方、1350℃を超えると、多孔質焼結体の機械的強度が低下するとともに他の諸特性も低下する。
【0101】
結晶状態が相違すると諸特性も異なることから、結晶状態を相違させて所望の諸特性を示す多孔質焼結体を自在に作製することもできる。結晶状態は、焼成温度を変更することで制御することが可能である。
【0102】
第2〜第4の多孔質焼結体は、第1の多孔質焼結体の製造方法に準拠して作製することができる。すなわち、第2の多孔質焼結体は、溶融石英又は溶融ケイ酸の原材料粉末100重量部に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種の粉末を合計で0.05〜10重量部添加した後、上記の各工程を実施すればよい。また、第3の多孔質焼結体は、溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナの原材料粉末100重量部に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種を合計で0.05〜10重量部添加し、その後、上記の各工程を実施することによって作製することができる。さらに、第4の多孔質焼結体は、溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナの原材料粉末100重量部に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種の粉末を合計で0.05〜10重量部添加した後、上記の各工程を実施することで作製可能である。
【0103】
なお、第3及び第4の多孔質焼結体を作製するための溶融アルミナの原材料粉末としては、平均粒径が0.3〜10μmのものが用いられる。そして、溶融石英又は溶融ケイ酸の原材料粉末が65〜99.8モル%、溶融アルミナの原材料粉末が35〜0.2モル%に設定される。
【0104】
このようにして作製された第1〜第4の多孔質焼結体(電気浸透材28)では、平均気孔率が25〜52%、平均気孔径が0.1〜8μmの範囲内となる。
【0105】
電気浸透材28の高さ方向寸法、及び直径は、例えば、ともに3mmに設定される。この場合、電気浸透流ポンプ10の高さ方向寸法の好適な一例は、13mmである。このうちポンプ本体24の高さ方向寸法は11mmであり、突起35の高さ方向寸法は2mmである。また、ポンプ本体24の外径は6mmであり、突起35の外径は2mmである。さらに、液溜め26の内径は4mmであり、排出口34の直径は0.5mmである。
【0106】
なお、上記の寸法は一例であり、ポンプシステム12の仕様に合わせて適宜変更可能である。
【0107】
このポンプシステム12は、以下のように動作する。
【0108】
先ず、電気浸透流ポンプ10の各々の液溜め26に外部から液体38を供給して、該液体38を液溜め26に充填する。この場合、液溜め26に供給された液体38は、該液体38の自重又は毛細管現象により電気浸透材28の上流側(第1電極30側)に到達し、到達した液体38は、第1電極30及び前記第2電極32に電圧を印加しなくても、電気浸透材28内部における毛細管現象により該電気浸透材28内を浸透して、電気浸透材28の下流側(第2電極32側)に到達する。
【0109】
すなわち、電気浸透材28は、上記したように、複数の微細な孔を有する第1〜第4の多孔質体焼結体から構成されているので、該電気浸透材28の第1電極30側の表面が液体38で濡れると、該液体38が自重で電気浸透材28の内部に浸透し、最終的に第2電極32側の表面を濡らす。このように、液体溜め26に液体38が充填されていれば、電気浸透材28は、毛細管現象による自己充填作用に基づいて該液体38を自動的に吸い込むので、第1電極30及び第2電極32に電圧Vを印加したときに液体38を電気浸透現象により駆動することができる。
【0110】
次いで、図示しない電源によって第1電極30と第2電極32に対して電圧を印加する。これにより、電気浸透現象に基づいて電気浸透材28内に浸透した液体38や液溜め26内の液体38が下流側に向かって移動し、排出口34を介して第2流路18内に供給される。すなわち、電気浸透流が生じる。
【0111】
その結果、マイクロ流体チップ14の第2流路18内に液体38を導入することができる。この場合、液体38が第2電極32より第2流路18に向かって移動すると、第2流路18内の気体42は、液体38による押圧力に基づいて液体40を押圧し、この結果、該液体40を所望の位置にまで移動させることが可能となる。
【0112】
なお、液体38を第2流路18の左側に移動させ、該液体38を第2流路18から電気浸透流ポンプ10に吸入する場合には、第1電極30及び第2電極32に対して上記とは逆極性の電圧を印加すればよい。
【0113】
電気浸透流ポンプ10のポンプ特性は、その最大圧力と最大流量から評価することができる。すなわち、流量がゼロになるときの後背圧、及び後背圧がゼロになるときの流量である。しかしながら、最大流量及び最大圧力は、電気浸透材28の材質を変更した場合にのみ変化する値ではなく、同一材質の電気浸透材28を用いた場合であっても、電気浸透流ポンプ10のポンプ寸法や駆動電圧等に依存して変化する。従って、最大流量及び最大圧力を、電気浸透材28自体の固有の特性を示す指標とすることは適切ではない。そこで、本実施の形態では、本発明者によって提案された評価手法を採用し、電気浸透材28それ自体の諸特性を評価するものとする。
【0114】
具体的には、以下の式(1)〜(4)に表される通りに定義される規格化流量Qs、規格化圧力Ps、規格化ポンプ電流Is、輸送効率係数εsを用いる。
【0115】
【数1】

【0116】
【数2】

【0117】
【数3】

【0118】
【数4】

【0119】
式(1)〜(4)において、Aは電気浸透材の液体通過部分の断面積、Lは電気浸透材の厚み(電極間距離)、Vは駆動電圧(電極間電圧)、Qmaxは電気浸透流ポンプの最大流量、Pmaxは電気浸透流ポンプの最大圧力、Ipumpは電気浸透ポンプの電流値である。
【0120】
式(1)で表される規格化流量Qsは、単位電界強度、単位断面積当たりの流量を示し、電気浸透材28として異なる材質のものを採用した際、各電気浸透材28の形状、及び電界強度が同一であれば、この数値が大きくなる材質の方が流量を大きくすることができることを意味する。このことは、電気浸透材28の厚みを一定とした場合、ある流量を得るために必要な流路断面積を小さくできることを意味する。なお、式(1)中のL/Vは、電界強度(V/L)の逆数を表す。
【0121】
電気浸透材28の厚みLが小さいほど流量を大きくできることになるが、過度に小さくすると強度が低下することから、厚みLは少なくとも0.5mm程度とすることが好ましい。
【0122】
式(2)に示される規格化圧力Psは、単位駆動電圧あたりのポンプ最大圧力を表す。この数値が大きくなるほど、同一駆動電圧における最大圧力が大きくなることを意味する。
【0123】
式(3)の規格化ポンプ電流Isは、単位電界強度、単位断面積当たりのポンプ電流を示す。
【0124】
また、式(4)で定義される輸送効率係数εsの値が大きいほど、ポンプ効率が高いことを意味する。ここで、ポンプ効率は、ポンプの行う機械的な仕事量とそれに必要なエネルギとの比率であらわされる。一般的に、ポンプをQ=1/2Qmax、P=1/2Pmaxで運転するのが最も効率が良い条件になる。そのときのポンプ効率ηは、下記の式(5)によって求められる。
【0125】
【数5】

【0126】
この式(5)と上記式(4)から、輸送効率係数εsは、その電気浸透材28を使用した際に得られる最良効率の1/4に相当する数値となることが諒解される。なお、流量、電流、圧力の単位がμL/分、μA、kPaである場合には、ηとεsとの関係は、下記の式(6)で表される。
【0127】
【数6】

【0128】
輸送効率係数εsの意義につき、電気浸透流ポンプ10を燃料電池用ポンプとして適用する場合を例示してさらに説明する。
【0129】
1molのメタノールが電池反応に関与した際に得られるエネルギは698.2kJ/molであるから、メタノール1molを輸送することは、それに相当する利用可能エネルギを輸送することになる。メタノール輸送効率を、輸送する利用可能エネルギと輸送に要するエネルギの比として定義すると、メタノール1μL/分の流れが0.288Wに相当することから、メタノール輸送効率ηmは下記の式(7)で求められる。
【0130】
【数7】

【0131】
式(7)中、wはエネルギ輸送密度0.288[w/(μL/分)]、Qはポンプ流量[μL/分]、Iはポンプ電流[A]、Vは駆動電圧[V]である。
【0132】
例えば、Q=100μL/分、V=20V、I=0.2mAである場合、メタノール輸送効率ηmは、式(7)から7.2×103となる。これは、輸送に要するエネルギ消費が輸送量の7200分の1であることを意味している。ある材質からなる多孔質焼結体が電気浸透流ポンプ10の電気浸透材28として適切であるためには、この数値がある程度大きくなければならない。
【0133】
メタノール輸送時に後背圧がゼロの状態でポンプを駆動するとした場合、あるメタノール輸送効率ηmを得るために必要な輸送効率係数εsは、式(7)に基づき、下記の式(8)によって求められる。
【0134】
【数8】

【0135】
Pmaxの単位はkPa、wは2.88×105[μw/μL/分]である。
【0136】
以上の規格化流量Qs、規格化圧力Ps、輸送効率係数εsが大きい多孔質焼結体ほど、同一寸法・形状であれば、流量や圧力が大きく効率が高い電気浸透流ポンプ10を構成することができる。換言すれば、流量が同じである場合には、電気浸透流ポンプ10を一層小型にすることが可能となる。
【0137】
なお、規格化流量Qs、規格化圧力Ps、輸送効率係数εsは、電気浸透材28の材質と、それに流通させる液体の種類との組み合わせに応じて定義される指標である。
【0138】
例えば、携帯型エレクトロニクス機器向けの燃料電池では、上記したように、液体駆動用ポンプの寸法が10mm以下、流路(電気浸透材28)の断面積が100mm2以下、流量500μL/分程度、圧力特性50kPa程度、駆動電圧24V程度が望ましいとされている場合、メタノールを流通させるのに好ましい電気浸透材28の特性は、以下のようにまとめることができる。
規格化流量Qs:
Qs≧500μL/分/100mm2/(24V/0.5mm)
=0.104[μL/分/mm/V]
規格化圧力Ps:
Ps≧50kPa/24V
=2.08[kPa/V]
輸送効率係数εs
εs≧3000/{2.88×105(μA・V)/(μL/分)}
×50kPa
=0.5[(kPa/V)/(μL/min/μA)]
【0139】
すなわち、メタノールを流通させる場合、規格化流量>0.1、規格化圧力>2、輸送効率係数>0.5を同時に満足するような多孔質焼結体が、電気浸透材28として望ましいものとなる。
【0140】
なお、従来から電気浸透材として広汎に採用されているSiO2多孔質焼結体では、上記に従って上記した3条件をすべて満足させることは困難であり、電気浸透流ポンプ10の設計自由度が非常に制限されていた。これに対し、本実施の形態に係る上記第1〜第4の多孔質焼結体は、上記の3条件を同時に満足する。しかも、これら第1〜第4の多孔質焼結体は、SiO2多孔質焼結体に比して高強度を示すので、長期間にわたる耐久性にも優れている。
【0141】
従って、これら第1〜第4の多孔質焼結体を電気浸透材28として採用することにより、小型でありながらも良好な効率を示し、より大流量・高圧で液体を駆動することが可能で、しかも、長期間にわたる耐久性が確保された電気浸透流ポンプ10を構成することが可能となる。
【0142】
以上のように、電気浸透流が生じた際の電気浸透材28の諸特性は、規格化流量係数、規格化圧力係数、規格化輸送効率係数等で評価することができる。なお、必要とされる規格化流量係数、規格化圧力係数、規格化輸送効率係数は、流通する液体に応じて異なる。すなわち、規格化流量係数、規格化圧力係数、規格化輸送効率係数は、駆動しようとする液体で必要とされる値を満足すればよい。
【0143】
電気浸透材28(多孔質焼結体)中では、複数の気孔が互いに交差しながら一方の端面から他端面まで連結した、いわゆる3次元網目構造となっている。このため、気孔の形状や数密度、又は気孔率等を調整したり、電気浸透材28の形状、寸法(流通方向に対して垂直方向の断面積、流通方向の厚み)等を変更したりすることにより、最大流量や最大圧力についての設計自由度を広げることができる。定性的に言えば、電気浸透材28の微細構造や駆動電圧の他、材質選定や多孔質焼結体の空隙率、気孔径、その形状等がポンプ特性を変更するためのパラメータとなる。
【0144】
そして、この設計自由度は、第1〜第4の多孔質焼結体を用いた場合に一層大きくなる。上記したように、第1〜第4の多孔質焼結体は諸特性が優れているからである。
【0145】
なお、上記した実施の形態においては、電気浸透流ポンプ10を例示して説明したが、電気浸透材28を取り付ける電気浸透流ポンプは、特にこれに限定されるものではない。すなわち、本実施の形態に係る電気浸透材28は、如何なる構成の電気浸透流ポンプであっても適用可能である。
【実施例1】
【0146】
SiO2原材料粉末として、純度99%以上の溶融石英(透明粉末)又は溶融ケイ酸(不透明粉末)を選定した。なお、平均粒径が0.2μm未満、0.2〜0.7μm、0.7〜1.5μm、1.5〜3.0μm、3.0〜7.0μm、7.5μm超であるものを用意した。
【0147】
その一方で、純度99%以上のBaCO3(BaO成分源)、SrCO3(SrO成分源)、CaCO3(CaO成分源)、TiO2、ZrO2、Na2O、K2Oの添加粉末をそれぞれ用意した。なお、各添加粉末の平均粒径は、0.05〜2.5μmであった。
【0148】
以上のSiO2原材料粉末と添加粉末とを、純水又はメタノールを媒体とし、300ccのウレタン内張りポットミル内で、直径5mm〜12mmの高純度ZrO2ボールを用いて12時間のボールミル混合を行った。その後、混合粉末を120℃で乾燥した。
【0149】
乾燥粉末した混合粉末をアルミナ製乳鉢で塊粉砕した後、高純度アルミナ質ルツボに入れ750℃〜1250℃で仮焼成して仮焼体を得た。さらに、上記のポットミル及び高純度ZrO2ボールを用いてこの仮焼体を12時間解砕することで、仮焼粉末とした。この時点でX線回折測定を行ったところ、固溶体化合物が生成していることが確認された。
【0150】
次に、沈降分離方法によって、平均粒径が相違する仮焼粉末同士を分離した。すなわち、0.1μm未満、0.1〜1.0μm、1.0〜3.0μm、3.0〜8.5μm、8.5μm超のものに分けた。
【0151】
各仮焼粉末に対し、5%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液を8重量部添加した後に乳鉢で均一になるように撹拌し、さらに、#320の篩を通過したものを、プレス圧1ton/cm2で直径12mm、厚み3mmの円盤状成形体を設けた。その一方で、機械的強度測定用試料として、厚み3mm、幅5mm、長さ25mmの直方体状成形体も作製した。これら円板状成形体及び直方体状成形体を高純度アルミナ質平板上に載置した状態で、カンタルヒータを用いた電気炉内で980℃〜1380℃の温度範囲内で約2時間保持することで、円板形状及び直方体形状である第1の多孔質焼結体を作製した。
【0152】
その後、得られた第1の多孔質焼結体の気孔率、気孔径、機械的強度、結晶状態等を測定及び観察した。ここで、気孔率は、次式(9)に従って求めた。
気孔率[%]=(1−嵩密度/見掛密度)×100 …(9)
【0153】
式(9)において、嵩密度、見掛密度の単位は、例えば、g/cm3、g/ccである。
【0154】
また、気孔径は水銀圧入法により、機械的強度は島津製作所製抗折試験機によりそれぞれ求め、結晶状態は、SEM観察で判断した。
【0155】
そして、第1の多孔質焼結体の電気浸透材としての諸特性を評価するため、円板形状体の第1の多孔質焼結体の両端面にPt電極をスパッタ法で形成した。さらに、直径0.1mmのPt線を測定用リード端子として両端面に設け、電気浸透流ポンプを組み立てた。
【0156】
この電気浸透流ポンプにメタノールを供給して電気浸透流を生じさせ、電気浸透流ポンプの最大流量、最大圧力、電流を計測し、上記の式(1)〜(4)に基づいて、電気浸透材の性能指標となる規格化流量係数、規格化圧力係数、輸送効率係数を求めた。なお、後述する実施例においても同様に、メタノールに対する規格化流量係数、規格化圧力係数、輸送効率係数を算出した。
【0157】
比較のため、SiO2原材料粉末のみを用いたことを除いては上記と同様にして多孔質焼結体を作製した。さらに、添加成分が10重量部を超える混合粉末を用いて多孔質焼結体を作製した。これらについても、気孔率、気孔径、機械的強度、結晶状態、電気浸透材の性能指標(メタノールに対する規格化流量係数、規格化圧力係数、輸送効率係数)を求めた。
【0158】
以上の結果を、添加粉末の添加割合及び製造条件とともに図4、図5に併せて示す。これら図4及び図5から、SiO2原材料粉末として平均粒径が0.2〜7.5μmであるものを用い、且つ上記の各種添加成分を0.05〜10重量部の割合で添加することで、気孔率、気孔径が電気浸透材として採用するに適切であり、且つ機械的強度に優れ、しかも、電気浸透材として要求される特性を満足する多孔質焼結体を得ることができることが明らかである。
【0159】
特に、流量係数>0.1、圧力係数>2.0、輸送効率係数>0.5を満足していることから、電気浸透材としての能力が極めて高いといえる。とりわけ、第1の多孔質焼結体中のNo.2は、機械的強度が14.2MPaと高く、また、流量係数0.25、圧力係数4.0、輸送効率係数1.58と優れていた。
【0160】
なお、図4中の最適焼成温度は、各々の多孔質焼結体において、収縮率、焼結状態(結晶状態)、密度等の諸物性を総合評価した際に最も適切であると判断された焼成温度を意味する。
【実施例2】
【0161】
天然鉱物粉末として、平均粒径が0.1〜4.0μmであるアルカリ長石(Na2O・Al23・6SiO2)、カオリナイト(Al23・2SiO2・2H2O)、葉長石(Li2O・Al23・8SiO2)の各粉末を選定した。
【0162】
その一方で、純度99%以上、平均粒径0.05〜2.5μmのBaCO3、TiO2、SiO2、ZrO2、SrCO3の粉末から、固溶体化合物であるBaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3を得た。
【0163】
さらに、市販品のSiCを用意した。
【0164】
以上のアルカリ長石、カオリナイト、葉長石、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCを添加粉末としたことを除いては蒸気と同様にして、第2の多孔質焼結体を得た。比較のため、添加成分が10重量部よりも大きな多孔質焼結体も作製し、これらの多孔質焼結体につき、気孔率、気孔径、機械的強度、結晶状態、電気浸透材の性能指標(規格化流量係数、規格化圧力係数、輸送効率係数)を求めた。
【0165】
以上の結果を、添加粉末の添加割合及び製造条件と併せて図6、図7に示す。図6及び図7から諒解されるように、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCを添加成分としても、適切な気孔率、気孔径を有し、且つ機械的強度に優れ、しかも、電気浸透材として要求される特性を満足する多孔質焼結体を得ることができる。
【0166】
特に、アルカリ長石とBaSiO3とを同時に添加したNo.34の第2の多孔質焼結体では、SiO2単体からなる多孔質焼結体に比して電気浸透材の性能指標が大きく向上した。
【実施例3】
【0167】
Al23の原材料粉末として、純度99%以上の溶融アルミナ(α−Corundum)粉末を選定した。なお、平均粒径が0.3μm未満、0.3〜1.5μm、1.5〜5.0μm、5.0〜8.0μm、8.0〜10.0μm、10.0μm超の6種類のものを用意した。
【0168】
このAl23原材料粉末を、上記したSiO2原材料粉末に対して所定量で混合した。さらに、このSiO2−Al23粉末に対し、上記のBaCO3、SrCO3、CaCO3、TiO2、ZrO2、Na2O、K2Oの各種粉末を添加し、混合粉末とした。
【0169】
以下、上記に準拠して第3の多孔質焼結体を作製した。比較のため、添加成分が10重量部よりも大きな多孔質焼結体も作製し、これらの多孔質焼結体につき、気孔率、気孔径、機械的強度、結晶状態、電気浸透材の性能指標(規格化流量係数、規格化圧力係数、輸送効率係数)を求めた。
【0170】
結果を、添加粉末の添加割合及び製造条件とともに図8、図9に示す。図8及び図9から、SiO2−Al23を母材とした場合においても、適切な気孔率、気孔径を有するとともに機械的強度に優れ、さらに、電気浸透材として要求される特性を満足する多孔質焼結体を得ることができることが諒解される。
【0171】
特に、SiO2が90モル%、Al23が10モル%であるNo.52の第3の多孔質焼結体は、機械的強度が17MPaと高く、また、流量係数0.16、圧力係数5.1、輸送効率係数1.26と高い値を示した。
【0172】
また、各種の第3の多孔質焼結体を電気浸透材とした電気浸透流ポンプでは、アルコール(特にメタノール)系溶液に対し、長期間にわたって略同等の諸特性を示した。すなわち、経時変化(劣化)がほとんど認められなかった。
【実施例4】
【0173】
上記のSiO2原材料粉末、Al23原材料粉末、アルカリ長石、カオリナイト、葉長石、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの各添加粉末を用い、上記と同様にして第4の多孔質焼結体を作製した。比較のため、添加成分が10重量部よりも大きな多孔質焼結体も作製し、これらの多孔質焼結体につき、気孔率、気孔径、機械的強度、結晶状態、電気浸透材の性能指標(規格化流量係数、規格化圧力係数、輸送効率係数)を求めた。
【0174】
結果を、添加粉末の添加割合及び製造条件と併せて図10、図11に示す。これら図10及び図11から、この第4の多孔質焼結体も、電気浸透材として好適であることが諒解される。
【0175】
特に、1.5重量部のアルカリ長石と2.0重量部のBaSiO3が添加されたNo.74の第4の多孔質焼結体では、機械的強度が24MPaと高く、しかも、流量係数0.29、圧力係数3.5、輸送効率係数1.82と優れた値を示した。
【0176】
また、5.0重量部のSiCを添加したNo.77の第4の多孔質焼結体では、機械的強度が27MPaと著しく高かった。このような多孔質焼結体は、厚みが小さい電気浸透材を作製する際に有用である。
【0177】
第4の多孔質焼結体を電気浸透材とした電気浸透流ポンプも、上記第3の多孔質焼結体の場合と同様に、アルコール(特にメタノール)系溶液に対し、長期間にわたって略同等の諸特性を示した。
【実施例5】
【0178】
各種混合粉末から仮焼体を得る際の仮焼温度、仮焼体を粉砕した後の仮焼粉末の平均粒径、本焼成温度、得られた多孔質焼結体の結晶状態と、諸特性との関係を図12、図13に示す。
【0179】
No.85及びNo.86は、仮焼温度を950℃、仮焼粉末の平均粒径を0.1〜1.0μm、本焼成温度を1220℃〜1260℃としたものであり、この場合、多孔質焼結体の結晶状態は、球・塊状であった。また、諸特性、電気浸透材の性能指標も、電気浸透材として十分であった。
【0180】
No.87〜No.89は、仮焼温度を750℃〜1220℃、仮焼粉末の平均粒径を1.0〜3.0μmとし、本焼成温度を1120℃として得られたものである。
【0181】
平均気孔率は、仮焼温度の上昇とともに大きくなる傾向を示した。一方、平均気孔径は0.5〜0.6μmで略安定していた。また、結晶状態はいずれも球・塊状を示しており、諸特性、機械的強度、性能指標も十分であった。さらに、長寿命も示した。
【0182】
No.90及びNo.101〜No.103は、仮焼温度を950℃で一定とし、仮焼粉末の平均粒径を変化させて得られた多孔質焼結体である。この中、No.90では結晶状態が球・塊状であり、物性特性、機械的強度、性能指標も優れた値が得られた。
【0183】
No.91〜No.93及びNo.104、No.105は、仮焼温度を950℃、仮焼粉末の平均粒径を1.0〜3.0μmとし、本焼成温度を980℃〜1360℃の範囲内で変化させることで得られた多孔質焼結体である。この場合、本焼成温度の上昇とともに平均気孔率が小さくなる傾向を示した。一方、平均気孔径は、0.3〜0.6μmと略安定していた。また、結晶状態は、いずれも球・塊状を示しており、諸特性、機械的強度、性能指標も良好な値であり、且つ長寿命であった。
【0184】
No.94、No.95は、100重量部のSiO2−Al23母材に対してBaO成分を2.0重量部添加したものであり、電気浸透材として適切な平均気孔率、平均気孔径を有し、結晶状態が球状の多孔質焼結体である。この多孔質焼結体は、優れた諸物性、機械的強度、性能指標を示した。
【0185】
No.96〜No.98は、100重量部のSiO2−Al23母材に対して1.5重量部のアルカリ長石と、2.0重量部のBaSiO3とを添加して得られた多孔質焼結体であり、この場合も、電気浸透材として適切な平均気孔率、平均気孔径を有していた。また、結晶状態は球状であり、優れた諸物性、機械的強度、性能指標を示した。
【0186】
なお、No.94〜No.98の多孔質焼結体を電気浸透材とする電気浸透流ポンプは、アルコール(特にメタノール)系溶液を用いて電気浸透流を生じさせた場合でも、流量係数が長期にわたって略一定であった。すなわち、劣化がほとんど認められず、長期間にわたって安定していた。
【0187】
表には示していないが、液体として水を用いて電気浸透流を生じさせた場合においても、第1〜第4の多孔質焼結体には、化学的変化や物理的変化がほとんど起こらず、長期間にわたって安定した諸特性を示した。
【0188】
これに対し、SiO2単体からなるNo.99、仮焼温度を750℃、1220℃として得られたNo.100、No.101、仮焼粉末の平均粒径が0.1μm未満、8.5μm超であるNo.102、No.103、本焼成温度を1360℃として得られたNo.105の各多孔質焼結体は、結晶状態が不均質であるものが大半であり、また、諸特性、機械的強度、性能指標の少なくともいずれかが低い値となった。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】本実施の形態に係る電気浸透材を具備する電気浸透流ポンプが設けられたポンプシステムの要部概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】本実施の形態に係る電気浸透材の原材料の1つである溶融石英のSEM写真である。
【図4】第1の多孔質焼結体における添加成分及びその組成比を示す図表である。
【図5】図4に示す各多孔質焼結体の諸特性等を示す図表である。
【図6】第2の多孔質焼結体における添加成分及びその組成比を示す図表である。
【図7】図6に示す各多孔質焼結体の諸特性等を示す図表である。
【図8】第3の多孔質焼結体における添加成分及びその組成比を示す図表である。
【図9】図8に示す各多孔質焼結体の諸特性等を示す図表である。
【図10】第4の多孔質焼結体における添加成分及びその組成比を示す図表である。
【図11】図10に示す各多孔質焼結体の諸特性等を示す図表である。
【図12】多孔質焼結体の作製条件を示す図表である。
【図13】図12の各多孔質焼結体の諸特性等を示す図表である。
【符号の説明】
【0190】
10…電気浸透流ポンプ 12…ポンプシステム
14…マイクロ流体チップ 16a、16b…基板
18、22…流路 20…反応器
24…ポンプ本体 26…液溜め
28…電気浸透材 30、32…電極
34…排出口 35…突起
36…連通孔 38、40…液体
42…気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであることを特徴とする電気浸透材。
【請求項2】
液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
100重量部の溶融石英又は溶融ケイ酸に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであることを特徴とする電気浸透材。
【請求項3】
請求項2記載の電気浸透材において、前記天然鉱物がアルカリ長石、カオリナイト、葉長石であることを特徴とする電気浸透材。
【請求項4】
液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナとの割合がモル%で65〜99.8:35〜0.2であるSiO2−Al23の100重量部に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであり、前記溶融アルミナの平均粒径が0.3〜10μmであることを特徴とする電気浸透材。
【請求項5】
液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質焼結体からなり、電気浸透流ポンプ内で第1電極と第2電極とによって電圧が印加された際に前記第1電極側から前記第2電極側、又はその逆方向の電気浸透流を生じさせる電気浸透材であって、
溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナとの割合がモル%で65〜99.8:35〜0.2であるSiO2−Al23の100重量部に対し、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種が合計で0.05〜10重量部添加され、
且つ前記溶融石英又は前記溶融ケイ酸の平均粒径が0.2〜7.5μmであり、前記溶融アルミナの平均粒径が0.3〜10μmであることを特徴とする電気浸透材。
【請求項6】
請求項5記載の電気浸透材において、前記天然鉱物がアルカリ長石、カオリナイト、葉長石であることを特徴とする電気浸透材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気浸透材において、平均気孔率が25〜52%、平均気孔径が0.1〜8μmであることを特徴とする電気浸透材。
【請求項8】
100重量部の溶融石英粉末又は溶融ケイ酸粉末に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種、又は、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種を含む粉末を合計で0.05〜10重量部添加して混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末に対して800℃〜1280℃で仮焼処理を施し、仮焼物を得る工程と、
前記仮焼物を平均粒径0.1〜8.5μmに粉砕して仮焼粉末とする工程と、
前記仮焼粉末にバインダを添加した後に成形加工を行って成形体を作製する工程と、
前記成形体に対して1000℃〜1350℃で焼成処理を施して多孔質焼結体とする工程と、
を有し、
前記溶融石英粉末又は前記溶融ケイ酸粉末として、平均粒径が0.2〜7.5μmであるものを用いることを特徴とする電気浸透材の製造方法。
【請求項9】
溶融石英又は溶融ケイ酸と溶融アルミナとの割合がモル%で65〜99.8:35〜0.2であるSiO2−Al23粉末100重量部に対し、BaO成分、SrO成分、CaO成分、TiO2成分、ZrO2成分、Na2O成分、K2O成分の群から選択される少なくとも1種、又は、アルミニウムケイ酸塩を含む天然鉱物、BaSiO3、BaTiO3、BaZrO3、SrSiO3、SiCの群から選択される少なくとも1種を含む粉末を合計で0.05〜10重量部添加して混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末に対して800℃〜1280℃で仮焼処理を施し、仮焼物を得る工程と、
前記仮焼物を平均粒径0.1〜8.5μmに粉砕して仮焼粉末とする工程と、
前記仮焼粉末にバインダを添加した後に成形加工を行って成形体を作製する工程と、
前記成形体に対して1000℃〜1350℃で焼成処理を施して多孔質焼結体とする工程と、
を有し、
前記溶融石英粉末又は前記溶融ケイ酸粉末として平均粒径が0.2〜7.5μmであるものを用い、且つ前記溶融アルミナ粉末として平均粒径が0.3〜10μmであるものを用いることを特徴とする電気浸透材の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された電気浸透材を具備することを特徴とする電気浸透流ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−74677(P2008−74677A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257542(P2006−257542)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(506320875)ナノフュージョン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】