説明

電気湯沸かし器

【課題】液体のpH値を効果的に調整し、お茶などの抽出に適した液質に積極的に改善することができる電気湯沸かし器を提供することを目的とする。
【解決手段】液体2を収容する容器3と、液体2を加熱する加熱手段6と、液体2の温度を検知する温度検知手段7と、検知された液温に応じて加熱手段6を制御する制御手段8と、液体の沸点到達後、さらに加熱手段6により所定加熱量加熱して液体2のpH値増加コースを実行するpH値増加手段10とを備え、前記液体2のpH値増加コースは、加熱する液量に応じて加熱量を調整するようにしたものである。これによって、沸点到達後さらに加熱手段6により液量に応じて所定加熱量加熱し、炭酸ガスなどの溶存成分を放出させることで効果的にpH値を一定値以上増加させ、容器3内の液体をお茶などの抽出に適した液質に改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスや家庭などで用いられ、液体を沸騰させることにより、液質を改善する電気湯沸かし器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気湯沸かし器においては、沸騰後の加熱の延長を行い、カルキなどの不純物の除去を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、沸騰維持手段を設けることにより、蒸気の温度を下げ、蒸気発生量を減少させながら長時間の沸騰維持を行うことにより、塩素(カルキ)成分の少ないおいしい水を提供できる電気湯沸かし器もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−154050号公報
【特許文献2】特許第3141706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の電気湯沸かし器においては、容器に収容される液体のカルキなどの不純物を除去するものの、お茶などの抽出に適した液質まで改善するものではない。お茶などを美味しく抽出するために、さらに積極的に液質を改善する必要があるという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、容器に収容する水や湯、飲料などの液体のpH値を効果的に調整し、お茶などの抽出に適した液質に積極的に改善することができる電気湯沸かし器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電気湯沸かし器は、液体を収容する容器と、容器内の液体を加熱する加熱手段と、容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段により検知された温度に応じて加熱手段を制御する制御手段と、液体の沸点到達後、さらに加熱手段により所定加熱量加熱して液体のpH値増加コースを実行するpH値増加手段とを備え、前記液体のpH値増加コースは、加熱する液量に応じて加熱量を調整するようにしたものである。
【0007】
これによって、沸点到達後さらに加熱手段により液量に応じて所定加熱量加熱し、炭酸ガスなどの溶存成分を放出させることで効果的にpH値を一定値以上増加させ、容器内の液体をお茶などの抽出に適した液質に改善することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気湯沸かし器は、容器に収容する液体のpH値を液量に応じて効果的に調整し、お茶などの抽出に適した液質に積極的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、液体を収容する容器と、容器内の液体を加熱する加熱手段と、容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段により検知された温度に応じて加熱手段を制御する制御手段と、液体の沸点到達後、さらに加熱手段により所定加熱量加熱して液体のpH値増加コースを実行するpH値増加手段とを備え、前記液体のpH値増加コースは、加熱する液量に応じて加熱量を調整するようにした電気湯沸かし器とする。これによって、沸点到達後さらに加熱手段により液量に応じて所定加熱量加熱し、炭酸ガスなどの溶存成分を放出させることで効果的にpH値を一定値以上増加させ、容器内の液体をお茶などの抽出に適した液質に改善することができる。したがって、お茶などの飲料を入れる際、その抽出に適した液質に改善することで、お茶の成分の抽出を促進し、美味しい飲料を提供することができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、液体のpH値増加コースは、追加液量に応じて加熱量を変化させることにより、追加液量に応じて必要最小量の加熱量を付加し、消費電力量や沸騰時の発生蒸気量を最低限に抑え、効果的に液質を改善することができる。
【0011】
第3の発明は、液体を収容する容器と、容器内の液体を加熱する加熱手段と、容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段により検知された温度に応じて加熱手段を制御する制御手段と、液体の沸点到達後、さらに加熱手段により所定加熱量加熱して液体のpH値増加コースを実行するpH値増加手段と、容器内の液体のpH値を検知するpH値センサーとを備えた電気湯沸かし器とする。これによって、pH値センサーによりpH値を検知しながら、容器内の液体のpH値が一定の値になるまで加熱することができ、液質や液量に関わらずお茶などの抽出に最適なpH値に調整した湯を提供することができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第3の発明において、液体のpH値増加コースは、液体のpH値に応じて加熱量を調整することにより、pH値センサーにより検知されたpH値により液体への加熱量を調整しつつ所定のpH値に到達するまで加熱を行うため、液質や液量に関わらずお茶などの抽出に最適なpH値に調整した湯を提供することができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、液体のpH値増加コースは、pH値の変化率が一定値以下になった場合に加熱を終了することにより、加熱によるpH値の上昇が飽和に近い状態で加熱を終了させ、加熱によるエネルギー消費と、沸騰による蒸気の発生を最小限に抑制しつつ、効果的に液質改善を行うことができる。
【0014】
第6の発明は、特に、第3〜第5のいずれか1つの発明において、pH値センサーは容器の底部に設置したことにより、容器内の液量に関わらずpH値を検知することができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第3〜第6のいずれか1つの発明において、液体のpH値増加コースは、メニュー毎に設定されたpH値まで加熱を継続することにより、お茶やコーヒーなどの飲料毎に予め設定された最適なpH値に調整された湯を提供することができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第3〜第7のいずれか1つの発明において、液体のpH値を表示するpH値表示手段を設けたことにより、ユーザーが液質の変化度合いを容易に知ることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における電気湯沸かし器を例示したものである。
【0019】
図1に示すように、この電気湯沸かし器は、ボデー1と、液体(水)2を収容する有底筒状の容器3と、ボデー1上方に載置した上枠4と、容器3の上方開口部を開閉自在に覆う蓋体5と、容器3内の液体2を加熱・保温する加熱手段6と、容器3内の液体の温度を検知するサーミスターなどの温度検知手段7と、温度検知手段7により検知された温度に応じて加熱手段6を制御する制御手段8と、液体2の沸点到達後、さらに加熱手段6により所定加熱量加熱して液体2のpH値増加コースを実行するpH値増加手段10とを備えている。そして、前記液体のpH値増加コースは、加熱する液量に応じて加熱量を調整するようにしている。液量検知は、加熱する液温の温度上昇勾配から行っている。詳細は後述する。
【0020】
ここで、加熱手段6は容器3の底部、側面、または液体2の中など配設位置は特に限定されない。ここでは、加熱手段6は主ヒーター6aと保温ヒーター6bからなる電熱線ヒーターとし、ヒーターの加熱部の面積は140平方センチメートル、ヒーターの入力は主ヒーター6aが835W、保温ヒーター6bが75W、合計910Wとした。
【0021】
また、pH値増加手段10は、上枠4上の操作部(後述)において、pH値増加の切替えを選択する専用キーを設けたものとしている。
【0022】
次に、本実施の形態における電気湯沸かし器の作用について説明する。
【0023】
例示した電気湯沸かし器は、一般によく知られているように、蓋体5を開放して容器3内に液体2を入れ、液体2を加熱・保温し、ポンプなどからなる排出手段12により湯は矢印のように導出パイプ12aを通り、吐出口12bから適宜吐出させることができる。
【0024】
液体2は加熱手段6により加熱され、温度検知手段7により沸騰検知後、pH値増加手段10によりpH値増加コースが選択されている場合には、加熱手段6によりさらに一定の加熱量で加熱され、一定温度(60℃〜98℃)に保温される。
【0025】
図2は、本実施の形態における電気湯沸かし器の湯沸かし時の加熱時間と液体2の温度の関係を示したものである。湯沸かし時は主ヒーター6aおよび保温ヒーター6bにより、一定の加熱量で湯沸かしされるため、沸騰点に達するまでは、容器3内の液体2の温度上昇勾配Δθ/ΔTは、液量に反比例し一定の値となる。これにより、液量を検知することで、沸騰検知後さらに液体の液量に応じた加熱量で加熱することで、沸騰状態が継続し、加えた熱量に比例し、液体2に溶解した炭酸ガスの放出が促進される。
【0026】
つまり、液体2の性状がアルカリ側にシフトし、その液体2を用いるとお茶や紅茶、コーヒーなどの飲料を入れる際、その抽出力が増加し、美味しい飲料を提供することができる。また、このアルカリ側にシフトした液体2を用いて茹で物などの調理を行うと、茹で上がりの時間が早く、また良く茹で上がるという効果もある。
【0027】
また、本実施の形態における液体のpH値増加コースは、追加給液された場合、温度上昇勾配Δθ/ΔTを検知することで、追加された液量を検知し、追加液量に応じて加熱量を変化させるようにしている。これにより、追加液量に応じて必要最小量の加熱量を付加し、消費電力量や沸騰時の発生蒸気量を最低限に抑え、効果的に液質を改善することができる。
【0028】
(実施の形態2)
図3〜図6は、本発明の本実施の形態2における電気湯沸かし器を例示したものである。実施の形態1と同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、この電気湯沸かし器は、容器3の内底部に液体2のpH値を検知するpH値センサー13を備えている。この点で実施の形態1と相違し他は同一である。
【0030】
この構成によって、pH値センサー13によりpH値を検知しながら、容器3内の液体2のpH値が一定の値になるまで加熱することができ、液質や液量に関わらずお茶などの抽出に最適なpH値に調整した湯を提供することができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、pH値センサー13を容器3の内底部に設けているが、特に限定するものではない。
【0032】
また、本実施の形態における液体のpH値増加コースは、液体2のpH値に応じて加熱量を調整するようにしている。これにより、pH値センサー13により検知されたpH値により液体2への加熱量を調整しつつ所定のpH値に到達するまで加熱を行うため、液質や液量に関わらずお茶などの抽出に最適なpH値に調整した湯を提供することができる。
【0033】
図4は、本実施の形態における電気湯沸かし器の加熱量とpH値の関係を示したものであり、本実施の形態における液体のpH値増加コースは、pH値の変化率ΔH/ΔTを検知し、pH値の変化率ΔH/ΔTが一定値以下になった場合に加熱を終了するようにしている。これにより、加熱によるpH値の上昇が飽和に近い状態で加熱を終了させ、加熱によるエネルギー消費と、沸騰による蒸気の発生を最小限に抑制しつつ、効果的に液質改善を行うことができる。
【0034】
図5は、本実施の形態における電器湯沸かし器の操作部9を示すものであり、操作部9にはメニュー表示手段18が設けられている。本実施の形態では操作部9のキー操作(例えば選択キー)によりメニューを選択し、メニュー毎に設定されたpH値まで加熱を継続するようにしている。これにより、お茶やコーヒーなどの飲料毎に予め設定された最適なpH値に調整された湯を提供することができる。なお、操作部9には、前記したpH値増加手段10としてのpH値増加の切替えを選択する専用キー10aが設けられている。
【0035】
図6は、本実施の形態における電気湯沸かし器の操作部9にpH値を表示するpH値表示手段19を設けているものである。これにより、pH値センサー13により検知したpH値をpH値表示手段19に表示する。したがって、ユーザーが液質の変化度合いを容易に知ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる電気湯沸かし器は、容器に収容する液体のpH値を液量に応じて効果的に調整し、お茶などの抽出に適した液質に積極的に改善することができるので、所謂ポットに限らず湯沸かしが行える機器、すなわち、炊飯器、保温調理器、給湯器など主に液体からなる収容物の加熱・調理を目的とする機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1における電気湯沸かし器の縦断面図
【図2】同電気湯沸かし器の加熱時間と液温の関係を示す関係図
【図3】本発明の実施の形態2における電気湯沸かし器の縦断面図
【図4】同電気湯沸かし器の加熱量とpH値の関係を示す関係図
【図5】(a)同電気湯沸かし器の操作部を示す斜視図(b)同電気湯沸かし器のメニュー表示手段を示す操作部の拡大平面図
【図6】同電気湯沸かし器のpH値表示手段を示す操作部の拡大平面図
【符号の説明】
【0038】
2 液体
3 容器
6 加熱手段
7 温度検知手段
8 制御手段
9 操作部
10 pH値増加手段
13 pH値センサー
18 メニュー表示手段
19 pH値表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器と、容器内の液体を加熱する加熱手段と、容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段により検知された温度に応じて加熱手段を制御する制御手段と、液体の沸点到達後、さらに加熱手段により所定加熱量加熱して液体のpH値増加コースを実行するpH値増加手段とを備え、前記液体のpH値増加コースは、加熱する液量に応じて加熱量を調整するようにした電気湯沸かし器。
【請求項2】
液体のpH値増加コースは、追加液量に応じて加熱量を変化させる請求項1に記載の電気湯沸かし器。
【請求項3】
液体を収容する容器と、容器内の液体を加熱する加熱手段と、容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段により検知された温度に応じて加熱手段を制御する制御手段と、液体の沸点到達後、さらに加熱手段により所定加熱量加熱して液体のpH値増加コースを実行するpH値増加手段と、容器内の液体のpH値を検知するpH値センサーとを備えた電気湯沸かし器。
【請求項4】
液体のpH値増加コースは、液体のpH値に応じて加熱量を調整する請求項3に記載の電気湯沸かし器。
【請求項5】
液体のpH値増加コースは、pH値の変化率が一定値以下になった場合に加熱を終了する請求項3または4に記載の電気湯沸かし器。
【請求項6】
pH値センサーは容器の底部に設置した請求項3〜5のいずれか1項に記載の電気湯沸かし器。
【請求項7】
液体のpH値増加コースは、メニュー毎に設定されたpH値まで加熱を継続する請求項3〜6のいずれか1項に記載の電気湯沸かし器。
【請求項8】
液体のpH値を表示するpH値表示手段を設けた請求項3〜7のいずれか1項に記載の電気湯沸かし器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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