説明

電気炊飯器

【課題】炊飯の履歴を元に、クリーニングを行う最適な時期をユーザーに通知すること。
【解決手段】被炊飯物が投入される鍋と、鍋が収容される開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、を備える電気炊飯器において、制御手段は、炊飯毎に炊飯回数をカウントする回数算出手段と、炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、炊飯コース、炊飯回数及び炊飯量を記憶する記憶手段と、クリーニング時期を判定するクリーニング判定手段と、クリーニング時期を通知する通知手段を備え、クリーニング判定手段は、所定の炊飯コース、炊飯回数及び炊飯量に応じてあらかじめ設定された炊飯器内の汚れの程度を示す所定のポイントを記憶しておき、前記ポイントが一定量蓄積された場合にクリーニング時期に達したと判定し、前記クリーニング時期に達したと判定されると、通知手段はクリーニング時期に達したことを通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器の鍋及び蓋部分のクリーニングを行うクリーニングコースを有する電気炊飯器に関し、特にクリーニングを行う最適な時期をユーザーに通知することにより、効果的にクリーニングを行うことができる電気炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器(以下、炊飯器という)は、鍋内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この鍋内の被炊飯物を加熱して炊飯するものである。この種の炊飯器は、炊飯時に鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯するタイプのものと、所定圧力に昇圧して炊飯するタイプのものに大別されている。近年、これらの炊飯器には、マイクロコンピュータが搭載され、このマイクロコンピュータによって、様々な炊飯コース、例えば、白米・玄米などの米種に応じた米種炊飯コース、硬め・柔らかめなどを調節してお好みの炊飯ができるお好み炊飯コース、及び具材や調味料等を加えて炊き込みご飯を炊飯する炊き込み炊飯コースなどが1台でできるようになっている。
【0003】
また、圧力式炊飯器においては、この鍋内の被炊飯物を加熱すると共に蓋体に設けられた圧力弁により鍋内を昇圧して炊飯するため、炊飯時は、鍋内が高温となっていると共に、内圧が高くなっている。さらに、従来の炊飯器には、炊飯の立上加熱工程時に生じる蒸気を外部へ逃がすための蒸気口が設けられている。また、炊飯時には、鍋内の被炊飯物が沸騰するので、吹きこぼれが生じる。この吹きこぼれは、粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、通常、「おねば」と呼ばれている(以下、この吹きこぼれを「おねば」ともいう)。
【0004】
この吹きこぼれが、そのまま鍋外へ放出されてしまうと、旨み成分も排出されてしまうので、ご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、炊飯器内にこのおねばを貯留する貯留タンクを設けて、この貯留タンクにおねばを一時貯留して置き、立上加熱工程終了後に鍋内が負圧になったときにおねばを鍋内に戻して美味しく炊きあげる炊飯器が開発されている。
【0005】
このような炊飯器において、炊飯回数が増えると次第に鍋や内蓋、蓋パッキン等の部材に汚れが蓄積し、炊き上がったご飯に臭いが残ることがあった。また、具材や調味料等を加える炊き込み炊飯コースを実行した後にも、同様の問題が生じていた。一方、一定期間炊飯器を使用しない場合にも、炊飯器内部に埃等の汚れが蓄積し、炊飯器を使用する前に鍋や内蓋等を水洗いしても、取り外しのできない部分は汚れを完全に落とすことが難しかった。
【0006】
そこで、クリーニング機能を有し、このクリーニング機能によって炊飯器の鍋に入れられた水を加熱し、一定時間沸騰状態あるいは沸騰状態に近い状態を維持して、鍋や内蓋、蓋パッキン等のについた臭いを減少させることができる炊飯器が知られている。
【0007】
例えば、下記特許文献1に開示された炊飯器は、内鍋を開閉自在に覆う鍋蓋と、鍋蓋の下部に配置され内鍋の上面開口部に当接する鍋パッキンと、内鍋を加熱する鍋加熱手段とを備え、少なくとも内鍋、鍋蓋、及び鍋パッキンの臭いを減少させるべく内鍋に入れた水を所定時間沸騰させるコースを有している。そして、制御手段が鍋加熱手段を駆動して内鍋に入れた水を一定時間沸騰させることにより、水蒸気を発生させる。内鍋表面と鍋蓋と鍋パッキンにこの水蒸気が当たると、その水蒸気により臭いが抽出され、内鍋表面と鍋蓋と鍋パッキンに付着浸透した臭いを減少させることができるようになる。
【0008】
また、下記特許文献2には、内鍋と、内鍋を取出し可能に収容する本体と、本体に取り付けられる蓋体と、内鍋を加熱する鍋加熱手段と、蓋体を加熱する蓋加熱手段と、内鍋の温度を検出する鍋温度検出手段と、蓋体の温度を検出する蓋温度検出手段と、鍋温度検出手段と蓋温度検出手段による検出温度に基づいて鍋加熱手段と蓋加熱手段を制御して炊飯を行うとともに、内鍋内に入れられた水を煮沸する制御手段とからなる炊飯調理器において、制御手段は、鍋加熱手段と蓋加熱手段により内鍋内の水を加熱して沸騰させる沸騰工程と、蓋温度検出手段により沸騰を検出すると蓋加熱手段による加熱を停止するとともに、鍋加熱手段による加熱量を低減して所定時間沸騰を維持する沸騰維持工程とを実行する炊飯調理器が開示されている。このように、沸騰維持工程で蓋加熱手段による加熱を停止するので、蓋内の蒸気通路を通過する蒸気の乾燥がなくなり、湿った蒸気により蓋内の蒸気通路のクリーニングを十分に行うことができるようになる。
【0009】
また、下記特許文献2に開示された炊飯調理器は、沸騰工程及び沸騰維持工程において、内鍋内を大気圧を越える一定の圧力に調節する調圧手段を備え、この調圧手段により、内鍋内の水の温度が100℃を越えるようにしているので、クリーニング性が向上する一方、煮沸中は蒸気が放出されないので、周囲に悪影響を及ぼすことがなく、安全である。
【0010】
また、下記特許文献3に開示された電気炊飯器は、米と水とを収容する内鍋を取出自在に収納する炊飯器本体と、内鍋を加熱する加熱手段と、内鍋の温度を検出する温度センサーと、マイコン機能とを備え、所定の炊飯曲線に従ってご飯を炊き上げる炊飯モード、所定の保温温度にご飯を保温する保温モード及び内鍋内に所定量の水を収容して加熱することにより内鍋等をクリーニングするクリーニングモードを択一的に選択できるように構成した電気炊飯器であって、クリーニングモードが選択された場合、保温温度よりも高いが沸騰には至らない設定温度にまで加熱する昇温工程と、昇温工程終了後において設定温度以下の第1の所定温度に所定時間保持する第1の温度保持工程とを行うことを特徴とする。
【0011】
下記特許文献3に開示された電気炊飯器では、クリーニングモードが選択された場合には、内鍋内に収容された水は、保温温度よりも高いが沸騰には至らない設定温度にまで加熱され、その後前記設定温度以下の第1の所定温度に所定時間保持されるため、昇温工程後における第1の温度保持工程において、内鍋を含む炊飯器本体内の部品は、高温にさらされて、炊飯の繰り返しにより付着した臭いが大幅に減少することとなる。また、クリーニング制御中においては、保温温度よりも高いが沸騰には至らない設定温度以下の第1の所定温度に所定時間保持されることとなるため、消費電力が抑制できるとともに、発生する水蒸気の量が可及的に少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3446515号公報
【特許文献2】特許第3029429号公報
【特許文献3】特許第4066957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1〜3に開示された炊飯器においては、クリーニングを実行することによって、鍋や内蓋等の汚れや臭いを減少させることができる。しかしながら、いずれもクリーニングは、ユーザーによる手動で任意に行われるため、クリーニングが適切な時期に行われず、汚れが蓄積しすぎたためにクリーニングを行っても汚れ落ちが不十分である場合や、あるいはあまり汚れていないにもかかわらずクリーニングが行われるために非効率となる場合があった。
【0014】
また、汚れは、単に炊飯回数が増えると蓄積するだけでなく、炊飯コースによって、特に玄米を炊飯する玄米コースや具材や調味料等を加える炊き込み炊飯コースなどを行うとより蓄積しやすいため、時間経過や炊飯回数のみでは十分なクリーニング時期の目安にはならなかった。
【0015】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、その目的は、炊飯回数、炊飯コース、炊飯量や保温時間といった炊飯の履歴を元に、クリーニングを行う最適な時期をユーザーに通知することにより、効果的にクリーニングを行うことができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被炊飯物が投入される鍋と、前記鍋が収容される開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程、炊きあがったご飯を保温する保温工程などを含む一連の炊飯工程からなる複数の炊飯コース又は前記鍋及び前記蓋体をクリーニングするクリーニングコースを実行する制御手段とを備える炊飯器において、前記制御手段は、炊飯毎に炊飯回数をカウントする回数算出手段と、炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、炊飯ごとに選択された前記炊飯コース、前記回数算出手段により算出された炊飯回数及び前記炊飯量判定手段により判定された炊飯量を記憶する記憶手段と、クリーニング時期を判定するクリーニング判定手段と、クリーニング時期を通知する通知手段を備え、前記クリーニング判定手段は、所定の炊飯コース、炊飯回数及び炊飯量に応じてあらかじめ設定された炊飯器内の汚れの程度を示す所定のポイントを記憶しておき、前記ポイントが一定量蓄積された場合にクリーニング時期に達したと判定し、前記クリーニング時期に達したと判定されると、前記通知手段はクリーニング時期に達したことを通知することを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記制御手段は、前記保温行程が実行された場合の保温時間を計測する計測手段を有し、前記記憶手段に前記計測された保温時間を記憶し、前記クリーニング判定手段は、記憶された前記保温時間に応じてあらかじめ設定された炊飯器内の汚れの程度を示す所定のポイントをも記憶しておき、前記ポイントが一定量蓄積された場合にクリーニング時期に達したと判定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電気炊飯器において、前記クリーニング判定手段は、あらかじめ定めた複数の前記ポイントの蓄積値に応じて複数回段階的にクリーニング時期に達するまでの時間を判定し、前記通知手段は前記クリーニング時期に達するまでの時間を通知することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の電気炊飯器において、前記通知手段は、前記通知を前記炊飯器の表示画面に表示又は音声によって通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の電気炊飯器の発明によれば、炊飯回数に加えて、炊飯量及び炊飯コースごとに細かく場合分けして炊飯器の汚れの蓄積度をポイント化して記憶し、クリーニング時期を判定することにより、最適なクリーニング時期をユーザーに通知することができるので、ユーザーはこの通知に従って効率的にクリーニングを行うことができる。
【0020】
また、請求項2に記載の電気炊飯器の発明によれば、汚れの蓄積度合いの判断に保温時間を加えることにより、長時間の保温が行われる場合に蓄積される汚れを反映して適切なクリーニング時期を判定することができ、より効率的にクリーニングを行うことができる。
【0021】
また、請求項3に記載の電気炊飯器の発明によれば、汚れ度合いによって段階的にクリーニング時期に達するまでの時間が通知されることにより、ユーザーがクリーニングに適当な時期を予測でき、よりクリーニングを効率的に行うことができる。
【0022】
また、請求項4に記載の電気炊飯器の発明によれば、クリーニング時期に達したことないしクリーニング時期に達するまでの時間を表示画面又は音声によってユーザーに通知することにより、ユーザーはクリーニングが必要な時期に達したことないしクリーニング時期に達するまでの時間を容易に理解することができ、適切な時期にクリーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の正面図である。
【図2】図1の炊飯器の部分断面図である。
【図3】図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【図4】図4Aは米種、図4Bは炊飯コース、図4Cは炊飯量、図4Dは保温炊飯量、図4Eは保温時間と、それぞれに対応する汚れ具合を示すポイントの関係を示す表である。
【図5】本発明の実施形態に係る炊飯器の炊飯工程のフローチャート図である。
【図6】図5に引き続く炊飯工程のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための電気炊飯器を例示するものであって、本発明をこの電気炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0025】
本発明の実施形態に係る電気炊飯器の構造について、図1〜図3を用いて説明する。なお、図1は本発明の一実施例に係る炊飯器の正面図である。図2は図1の炊飯器の部分断面図である。また、図3は図2の圧力弁開放機構を拡大した拡大断面図である。
【0026】
電気炊飯器1は、炊飯器本体(以下「本体」という)2と本体2を覆う開閉自在の蓋体3とで構成される。本体2には、被炊飯物である米及び水が投入される深底の容器からなる鍋4と、上方にこの鍋4が収容される開口部及び内部にこの鍋4を加熱して被炊飯物を加熱する加熱手段5を有しており、さらに炊飯を制御する制御部(図示省略)と、炊飯コースを操作する操作部6と、操作された炊飯コースを表示する表示部7とが、正面側に設けられている。
【0027】
操作部6は、炊飯コース選択ボタン8、炊飯スタート/保温ボタン9、予約ボタン10、取り消しボタン11、十字キー12よりなり、これらの操作ボタンを適宜操作して、炊飯やクリーニングを行うように設定できるようになっている。
【0028】
本体2は、有底箱状の外部ケース13と、この外部ケース13に収容される収納ケース14(図2参照)とからなり、外部ケース13と収納ケース14との間に隙間が形成され、この隙間に制御部(制御手段)を構成する制御装置(図示省略)が配設されている。収納ケース14には鍋4が収容される。この鍋4は、例えばアルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。
【0029】
蓋体3は、一端をヒンジ15により本体2に枢着した着脱自在の内蓋16と、外方を覆う外蓋17とで構成されており、内蓋16には、圧力弁18及び圧力弁開放機構23が形成されている。また、内蓋16には鍋4内が異常に加圧された時、例えば炊飯中に圧力弁18が故障して開かないときなどに開放して鍋内の圧力を逃がす安全弁24を備えている。
【0030】
圧力弁18は、図3に示すように、圧力孔19を有する弁座20と、この弁座20の上に自重により圧力孔19を塞ぐ金属性のボール21と、このボール21を覆うカバー22とからなる。この圧力弁18は、鍋4内の圧力とボール21の自重とのバランスによって、ボール21が圧力孔19上に移動されたり離れたりすることにより、さらには圧力弁開放機構23の制御によって強制的にボール21を移動させることにより、圧力孔19の開閉が行われる。
【0031】
また、圧力弁開放機構23は、電磁コイルが巻回されたシリンダー23aと、このシリンダー内を電磁コイルの励磁により入出し、ボール21を移動させるプランジャー23bと、プランジャー23bの先端に装着された作動棹25と、シリンダーの一端部と作動棹25との間に設けられたバネ26とで構成されている。
【0032】
圧力弁開放機構23は、制御手段27(図2参照)により制御される。すなわち、圧力弁開放機構23は、制御手段27からの出力を受けていないときは、プランジャー23bがシリンダー23aから突出して圧力孔19上のボール21を圧力孔19の横方向に押し、圧力孔19を強制的に開放する。また、制御手段27の出力を受けた時には、プランジャー23bがシリンダー23a内に引き込まれる。このときボール21は、自重により圧力孔19上に戻り、圧力孔19を閉塞する。このように圧力弁開放機構23が動作すると、このプランジャー23bによる圧力弁18の開放動作により、炊飯工程中に加圧された鍋4内の圧力を強制的に低下させることができる。
【0033】
外蓋17には、吹きこぼれるおねばを一時貯留する貯留タンク28が着脱自在に装着されている。貯留タンク28の内部は蒸気とおねばとを分離させるために上下から分離構造を設けた多室構造となっており、蒸気口28aを蒸気のみが通過できるようになっている。おねばは、立上加熱工程、沸騰維持工程で貯留タンク28に溜まり、蒸らし工程で、鍋4内の圧力が低下すると、負圧弁(図示省略)より、鍋4内に還元されるようになっている。
【0034】
本体2は、図1に示すように、炊飯メニュー選択ボタン8により各種の炊飯コースを選択するための選択手段29を備えている。制御手段27は、周知のようにCPU、ROM、RAMなどで構成されたハードウエアと、後述するフローチャートの内容を実行するためのソフトウエアとにより構成される。
【0035】
鍋4の底部には、図2に示すように、炊飯量検出手段としても機能する鍋底温度を検出するための温度センサー30bが取り付けられており、また、蓋体3には適切な位置に蒸気温度を検出するための沸騰検出手段となる蒸気センサー30aが取付けられており、各センサー30a、30bの出力は制御手段27に送られるようになっている。なお、温度センサー30bの出力により鍋内の炊飯量を検出することは、既に公知であるので詳細な説明を省略する。
【0036】
前記圧力弁18の下部には、図2、図3に示すように、弁座20に着脱自在に装着され複数個の小孔を穿設したフィルター31が装着されている。このフィルター31を装着することにより、圧力弁18の開放時に鍋内を一気に流動する米粒がこのフィルター31によって阻止されて外気中に放出されるのを防止できる。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係る電気炊飯器1における制御手段27による各種制御工程を図4〜図8を用いて説明する。なお、図4Aは米種、図4Bは炊飯コース、図4Cは炊飯量、図4Dは保温炊飯量、図4Eは保温時間と、それぞれに対応する汚れ具合を示すポイントの関係を示す表である。図5は炊飯工程のフローチャート図である。図6は図5に引き続く炊飯工程のフローチャート図である。
【0038】
炊飯工程は、鍋4内の被炊飯物に水を吸わせる吸水工程Iと、この吸水した被炊飯物を急激に加熱する立上加熱工程IIと、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程IIIと、この沸騰維持工程III後に被炊飯物を所定時間蒸らす蒸らし工程IVと、炊きあがった被炊飯物を保温する保温行程Vに分けられる。
【0039】
まず、任意の炊飯コース及び米種が選択される(S301)と、米種及び炊飯コースが記憶され(S302)、これらに対応する汚れ具合を示すポイントに換算し、記憶される(S303)。
【0040】
このポイントは、図4に示すように、米種及び炊飯コースごとにあらかじめ実験に基づいて定められている。例えば図4Aに示すように、米種に対応するポイントAは、「白米」はa、「無洗米」はb、「玄米」はc、「雑穀」はd、「分づき米」はeとされ、本実施形態においてはa=b=e=1<c=2となっている。玄米はぬかなどが炊飯時に蓋体にこびりつき、汚れやすいために他の米種よりもポイントが高く設定されている。
【0041】
図4Bに示すように、炊飯コースに対応するポイントBにおいては、「ふつう」はf、「かため」はg、「やわらか」はh、「甘み」はi、「省エネ」はj、「おかゆ」はk、「炊き込み」はl、「調理」はmとされ、本実施形態においてはf=g=h=i=j=1<k=2<l=m=5と設定されている。おかゆは水分が多く、また粘度が高いため、沸騰時に飛び散って蓋体に付着しやすいため、「ふつう」コース等よりも高めに設定されている。また、「炊き込み」コースと「調理」コースにおいては、他の炊飯コースと異なり、調味料及び具材を用いるため、においや汚れが付着しやすいため、最も高いポイントが設定されている。
【0042】
その後、炊飯が開始される(S304)と、まず、吸水工程I(S305)では、吸水温度は所定の温度、例えば60℃前後の温度に一定時間、例えば15分間維持し、米が水を吸いやすい温度に制御されている。なお、この吸水工程Iでは、圧力弁18は開放されている。
【0043】
吸水工程Iが終了すると、立上加熱工程II(S306)に移行する。立上加熱工程IIでは、圧力弁18は閉じられ、加熱手段5によってフルパワーで加熱され、鍋4内の温度は急上昇する。そのとき、鍋4内は、圧力弁18によって密閉されているため、圧力が上昇し、例えば1.2気圧の加圧状態となる。
【0044】
この立上加熱工程IIでは、炊飯量の量判定が行なわれる(S307)。
【0045】
この量判定の具体的方法は、既に周知であるので、その詳細な説明は省略するが、この実施形態では、量値Qとして、Q=1(小容量(たとえば0.5〜1.5カップ))、Q=2(中容量(2.0〜3.5カップ))、Q=3(大容量(4.0カップ超))の3段階に分類した。なお、量値Qの境界は、必ずしも厳密なものでなくても良く、実験的に適宜に定めればよい。
【0046】
この量判定結果は、量判定結果メモリに記憶される(S308)。ここで判定された炊飯量に応じて、次の沸騰維持工程III以降の工程で、炊飯量によって制御条件が変えられる。また、炊飯量に応じて、汚れ具合を示すポイントCに換算し、記憶される(S309)。このポイントCは図4Cに示すように、炊飯量小のときn、中のときo、大のときpとされ、本実施形態においてはn=1<o=2<p=3と設定されている。炊飯量が多いほど、炊飯器内が汚れやすくなるためである。
【0047】
立上加熱工程IIが終了すると、沸騰維持工程IIIに移行する(S310)。沸騰維持工程IIIでは、加熱手段5への通電及び圧力弁18の開閉が所定時間間隔で行われる。すなわち、圧力弁開放機構23の制御により圧力弁18の開閉が行われ、この圧力弁18の開閉は、この沸騰維持工程IIIの初期段階に1回乃至数回行われる。圧力弁18の開成により、鍋4内の圧力は1.2気圧の加圧状態から略大気圧近傍まで一気に低下する。この圧力変化により、鍋4内が激しく沸騰し、いわゆる突沸現象が発生する。
【0048】
この突沸現象により、鍋4内の米粒などの被炊飯物が撹拌される。特に、沸騰維持工程IIIの初期段階に圧力弁18の開閉が行われると、この段階では鍋4内の水が多いので米粒は効率よく撹拌される。一方、加熱手段5への通電は、圧力弁18の開閉に同期してオン/オフされる。すなわち、圧力弁18が閉成されているときは加熱手段5への通電がオン状態とされ、圧力弁18が開成されているときはオフ状態とされる。なお、加熱手段5への通電は圧力弁18の開閉と非同期的に制御されるようにしてもよい。
【0049】
沸騰維持工程IIIにおいて、鍋4内の水がなくなると鍋4の温度が上昇する。鍋底温度を検出するための温度センサー30bによって130℃に達したことが検出されると、沸騰中の鍋4内の水がなくなったことを意味するドライアップ状態と判定される。ドライアップ状態と判定されると、加熱手段5への通電が停止され、蒸らし工程IVへ移行される(S311)。このとき、圧力弁18は閉じられている。
【0050】
蒸らし工程IVでは、最初に一定時間(例えば240秒間)の間、加熱手段5への通電が停止されると共に、圧力弁18の閉成状態が維持される。加熱手段5への通電がオフされると、鍋4内の温度が下がり、温度が下がることにより鍋4内の圧力も下がる。その後、一定時間(例えば60秒)の間、圧力弁18が開成される。圧力弁18が開成されると、鍋4内の圧力がさらに下がり、負圧弁(図示省略)の作用により、貯留タンク28(図2参照)に溜まっていたおねばが鍋4内に環流される。
【0051】
おねばが鍋内に環流されると、圧力弁18を閉成すると共に加熱手段5に通電し、鍋4内の温度を上昇させるとともに鍋4内を加圧状態にする。ついで加熱手段5への通電をオフ状態とし、同時に圧力弁18を開いて一気に鍋4内の圧力を低下させる。このように、鍋4内の温度及び圧力を上昇させた後に鍋4内の圧力を低下させると、ご飯及びおねばが撹拌され、おねばがご飯全体に混ざるようになる。
【0052】
蒸らし工程IVが終了すると保温工程Vに移行し(S312)、保温時間の計測が開始される(S313)。その後保温が停止されて保温工程が終了する(S314)と、保温時間の計測を終了し(S315)、計測された保温時間を記憶する(S316)。続いて、記憶されている炊飯量を読み出し(S317)、保温時間及び保温炊飯量を汚れの程度を示すポイントに換算し、記憶する(S318)。保温炊飯量に対応するポイントDは、炊飯量に対応するポイントCと同様に、図4Dに示すように、炊飯量小のときq、中のときr、大のときsとすると、q=1<r=2<s=3と設定されている。また、保温時間のポイントEは、図4Eに示すように、保温時間短(例えば、保温時間5時間未満)のときt、保温時間中(5時間以上10時間未満)のときu、保温時間長(10時間以上20時間未満)のときv、保温時間最長(20時間以上)のときwとすると、t=1<u=2<v=3<w=4となっている。保温時間が長くなるほど、保温されている被炊飯物からにおいが鍋及び蓋体により付着する様になるためである。
【0053】
その後、前回の炊飯時に記憶されているポイントの蓄積値Nを読み出し(S319)、米種、炊飯コース、炊飯量、保温炊飯量、保温時間から決定されたポイントA〜Eを読み出してNに加算し(S320)、新たな蓄積値N’を求める。すなわち、N’ =N+A+B+C+D+Eとなる。続いて、N’が所定量K(例えば100)以上か否かを判定する(S321)。
【0054】
N’が所定量K以上の場合(S322)には、汚れが蓄積してクリーニング時期に達したと判定し、クリーニングの表示を音声または表示装置に表示することにより通知する(S323)。その後、炊飯工程を終了する。所定量Kを超えない場合(S324)には通知を行わず、N’を新たな蓄積値Nとして記憶し、次回の炊飯時にはこの新たな蓄積値Nを読み出す。
【0055】
また、クリーニングの表示を行った後、クリーニングコースが実行されると、蓄積値をリセットしてN=0とし、次回の炊飯時からは新たにポイントを蓄積する。
【0056】
なお、この実施形態では、電気炊飯器1が圧力式炊飯器の場合について説明したが、圧力弁を備えていない通常の常圧で炊飯する炊飯器に対しても等しく適用可能である。この場合、圧力弁の開閉工程を除外して実施すればよい。
【0057】
以上のように、本発明の第1の実施形態にかかる電気炊飯器によれば、炊飯回数に加えて、炊飯量及び炊飯コースごとに細かく場合分けして炊飯器の汚れの蓄積度をポイント化して記憶し、クリーニング時期を判定することにより、最適なクリーニング時期をユーザーに通知することができるので、ユーザーはこの通知に従って効率的にクリーニングを行うことができる。さらに、汚れの蓄積度合いの判断に保温時間を加えることにより、長時間の保温が行われる場合に蓄積される汚れを反映して適切なクリーニング時期を判定することができ、より効率的にクリーニングを行うことができるようになる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施形態に係る電気炊飯器1における制御手段27による各種制御工程を説明する。本発明の第2の実施形態の制御工程は、第1の実施形態の制御工程の一部を変更したものであるので、重複する部分の説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0059】
本発明の第2の実施形態の制御工程においては、第1の実施形態の制御工程において、換算ポイントが所定値に達したか否かの判定を複数段回に分けて行うことを特徴とする。
【0060】
図6において、炊飯後、前回の炊飯時に記憶されているポイントの蓄積値Nを読み出し(S319)、米種、炊飯コース、炊飯量、保温炊飯量、保温時間から決定されたポイントA〜Eを読み出し(S320)Nに加算し、N’とすることまでは第1の実施形態の制御工程と同様である。続いて、第2の実施形態においては、N’が所定値K1、K2、K3以上か否かを判定する。N<K1のときは、第1の実施形態同様に、汚れがあまり蓄積していないとしてクリーニングの通知を行わず、N’を新たな蓄積値Nとして記憶し、次回の炊飯時にはこの新たな蓄積値Nを読み出す。
【0061】
K1≦N’<K2の場合には、クリーニングが必要になるまでの時間を音声または表示装置に表示することにより通知する。K2≦N’<K3の場合には、汚れが蓄積しつつあり、まもなくクリーニング時期に達するとして、再度クリーニングが必要になるまでの時間を音声または表示装置に表示することにより通知する。K3≦N’の場合には、第1の実施形態同様にクリーニングが必要である旨を通知する。
【0062】
以上のように、本発明の第2の実施形態の電気炊飯器の発明によれば、汚れ度合いによって段階的にクリーニング時期に達するまでの時間が通知されることにより、ユーザーがクリーニングに適当な時期を予測でき、よりクリーニングを効率的に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0063】
1…電気炊飯器
2…炊飯器本体
3…蓋体
4…鍋
5…加熱手段
6…操作部
7…表示部
8…炊飯コース選択ボタン
9…炊飯スタート/保温ボタン
10…予約ボタン
11…取り消しボタン
12…十字キー
13…外部ケース
14…収納ケース
15…ヒンジ
16…内蓋
17…外蓋
18…圧力弁
19…圧力孔
20…弁座
21…ボール
22…カバー
23…圧力弁開放機構
23a…シリンダー
23b…プランジャー
24…安全弁
25…作動棹
26…バネ
27…制御手段
28…貯留タンク
28a…蒸気口
29…選択手段
30a…蒸気センサー
30b…温度センサー
31…フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物が投入される鍋と、
前記鍋が収容される開口部及び前記鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、
前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ開閉自在な蓋体と、
前記加熱手段を制御して前記鍋内の米に水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、沸騰状態を維持して炊き上げる沸騰維持工程、炊き上ったご飯から余分な水分を除去する蒸らし工程、炊きあがったご飯を保温する保温工程などを含む一連の炊飯工程からなる複数の炊飯コース又は前記鍋及び前記蓋体をクリーニングするクリーニングコースを実行する制御手段とを備える電気炊飯器において、
前記制御手段は、炊飯毎に炊飯回数をカウントする回数算出手段と、炊飯量を判定する炊飯量判定手段と、炊飯ごとに選択された前記炊飯コース、前記回数算出手段により算出された炊飯回数及び前記炊飯量判定手段により判定された炊飯量を記憶する記憶手段と、クリーニング時期を判定するクリーニング判定手段と、クリーニング時期を通知する通知手段を備え、
前記クリーニング判定手段は、所定の炊飯コース、炊飯回数及び炊飯量に応じてあらかじめ設定された炊飯器内の汚れの程度を示す所定のポイントを記憶しておき、前記ポイントが一定量蓄積された場合にクリーニング時期に達したと判定し、前記クリーニング時期に達したと判定されると、前記通知手段はクリーニング時期に達したことを通知することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記保温行程が実行された場合の保温時間を計測する計測手段を有し、前記記憶手段に前記計測された保温時間を記憶し、前記クリーニング判定手段は、記憶された前記保温時間に応じてあらかじめ設定された炊飯器内の汚れの程度を示す所定のポイントをも記憶しておき、前記ポイントが一定量蓄積された場合にクリーニング時期に達したと判定することを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項3】
前記クリーニング判定手段は、あらかじめ定めた複数の前記ポイントの蓄積値に応じて複数回段階的にクリーニング時期に達するまでの時間を判定し、前記通知手段は前記クリーニング時期に達するまでの時間を通知することを特徴とする請求項1に記載の電気炊飯器。
【請求項4】
前記通知手段は、前記通知を前記炊飯器の表示画面に表示又は音声によって通知することを特徴とする請求項1〜3に記載の電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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