電気自動車のバッテリパック構造
【課題】バッテリパックケースに対する強電遮断スイッチの搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させること。
【解決手段】バッテリモジュール2と、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断するSDスイッチ4と、を搭載したバッテリパックケース1を車体フロア100の下部位置に配置した。この電気自動車のバッテリパック構造において、バッテリパックケース1の内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域7に定めた。そして、SDスイッチ4を、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた他方の電装品搭載領域8を覆うケース上面位置に設けた。
【解決手段】バッテリモジュール2と、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断するSDスイッチ4と、を搭載したバッテリパックケース1を車体フロア100の下部位置に配置した。この電気自動車のバッテリパック構造において、バッテリパックケース1の内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域7に定めた。そして、SDスイッチ4を、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた他方の電装品搭載領域8を覆うケース上面位置に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールと強電遮断スイッチを搭載したバッテリパックを車体フロアの下部位置に配置した電気自動車のバッテリパック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリパック(バッテリモジュール体A)を車体フロアの下部位置に配置した電気自動車において、強電遮断スイッチ(ブレーカボックス30)を、バッテリケース(バッテリボックス28)の上面に載置したバッテリパック構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、バッテリパック(車両用電源ユニット10)をトランクルーム等に配置した電気自動車において、強電遮断スイッチ(スイッチユニット44)を、バッテリモジュール(サブモジュール24)と車幅方向に並列配置で設けたバッテリパック構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156826号公報
【特許文献2】特開2006−240502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリパック構造にあっては、バッテリケースのうち、バッテリモジュール搭載領域の上面位置に強電遮断スイッチが載置されているため、バッテリケースの高さが、バッテリモジュールと強電遮断スイッチの合計高さよりも高くなる。したがって、路面からバッテリケース下面までの必要地上高を確保しようとすると、上方に突出する強電遮断スイッチとの干渉を避ける位置まで車体フロアを高くせざるを得ない。この結果、車体フロアの下部位置に、特許文献1に記載のバッテリパックを配置すると、車体フロア面が高くなってしまい、車室スペースや荷室スペース等の車体フロア上部スペースを狭くしてしまう、という問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載されたバッテリパック構造は、強電遮断スイッチを搭載することによって車体フロア上部スペースを狭くするという上記問題を解決できる。しかし、強電遮断スイッチがバッテリモジュールと車幅方向に並列配置で設けられているため、バッテリケースの最大幅寸法が予め決まっている場合、バッテリモジュール搭載領域として設定可能な領域幅寸法を狭くせざるを得ない。この結果、バッテリケースの内部に搭載可能なバッテリ搭載スペースが減少してしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリパックケースに対する強電遮断スイッチの搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる電気自動車のバッテリパック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、バッテリモジュールと、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断する強電遮断スイッチと、を搭載したバッテリパックケースを車体フロアの下部位置に配置したものを前提とする。
この電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域に定めた。
前記強電遮断スイッチを、前記バッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた他方の領域を覆うケース上面位置に設けた。
【発明の効果】
【0009】
よって、強電遮断スイッチは、バッテリモジュールを搭載するバッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた他方の領域を覆うバッテリパックケースのケース上面位置に設けられる。
したがって、バッテリパックケースにおいて、強電遮断スイッチを設けた部分のスイッチ設定部ケース高さを決めるとき、バッテリモジュールの高さに全く影響されることなく、スイッチ設定部ケース高さを自由に決めることができる。例えば、バッテリパックケースの必要地上高と車体フロア面高さに基づいてケース最大高さが決まったとき、スイッチ設定部ケース高さをケース最大高さ以下に定めることが可能である。このように、車体フロア面の高さをより高くする設計変更を要さないため、所望の車体フロア上部スペース(車室スペースや荷室ペース等)が確保される。
一方、バッテリパックケースにおいて、バッテリモジュールを搭載するバッテリモジュール搭載領域を決めるとき、強電遮断スイッチの存在に全く影響されることなく、バッテリモジュール搭載領域の幅寸法を決めることができる。例えば、バッテリモジュールを搭載可能な車幅方向の最大搭載間隔が決まったとき、最大搭載間隔の幅寸法を持つバッテリモジュール搭載領域に定めることが可能である。このように、強電遮断スイッチを設けるために必要とする間隔を差し引いてバッテリモジュール搭載領域を定める必要がないため、最大限のバッテリ搭載スペースが確保される。
この結果、バッテリパックケースに対する強電遮断スイッチの搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略底面図である。
【図3】実施例1のバッテリパックBPを示す全体斜視図である。
【図4】実施例1のバッテリパックBPを示すバッテリケースアッパーカバーを外した斜視図である。
【図5】実施例1のバッテリパックBPの内部構成と温調風の流れを示すバッテリケースアッパーカバーを外した平面図である。
【図6】実施例1のバッテリパックBPの温調風ユニットの構成と温調風の流れを示す図5のA部拡大図である。
【図7】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。
【図8】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチを示すバッテリパック全体側面図である。
【図9】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチの詳細構成を示す斜視図である。
【図10】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチとスイッチ周辺構成を示す図11のB−B線による縦断面図である。
【図11】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチとスイッチ周辺構成を示す図10のC−C線による縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成」、「SDスイッチの構成」に分けて説明する。
【0013】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び図2は、実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、図1及び図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0014】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、車体フロア100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。車体フロア100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられ、車両前方から車両後方までのフロア面凹凸を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0015】
前記バッテリパックBPは、図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0016】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0017】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0018】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0019】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3〜図6は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、図3〜図6に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0020】
実施例1のバッテリパックBPは、図3及び図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(強電遮断スイッチ:以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0021】
前記バッテリパックケース1は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11とバッテリパックアッパーカバー12の2部品によって構成される。
【0022】
前記バッテリパックロアフレーム11は、図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このバッテリパックロアフレーム11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このバッテリパックロアフレーム11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と強電コネクタ端子15(車室内空調用)と弱電コネクタ端子16とが取り付けられている。
【0023】
前記バッテリパックアッパーカバー12は、図3に示すように、バッテリパックロアフレーム11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このバッテリパックアッパーカバー12には、バッテリパックロアフレーム11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0024】
前記バッテリモジュール2は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造であり、各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0025】
前記第1バッテリモジュール21は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0026】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。
【0027】
前記温調風ユニット3は、図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの温調風通路に温調風(冷風、温風)を送風する。温調風ユニット3は、図6に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、温調風ダクト35と、を有して構成される。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子13を介して冷媒が導入される。
【0028】
前記SDスイッチ4は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。バッテリ強電回路は、内部バスバーを備えた各バッテリモジュール21,22,23と、ジャンクションボックス5と、SDスイッチ4と、を互いにバスバーを介して接続することで形成される。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0029】
前記ジャンクションボックス5は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。ジャンクションボックス5と外部の強電モジュール112は、充放電コネクタ端子14と充放電ハーネス111を介して接続される。ジャンクションボックス5と外部の電子制御システムは、弱電ハーネスを介して接続される。
【0030】
前記LBコントローラ6は、図4及び図5に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。そして、LBコントローラ6と外部の電子制御システムは、リレー回路のオン/オフ情報やバッテリ容量情報やバッテリ温度情報等を伝達する弱電ハーネスを介して接続される。
【0031】
[バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成]
図7は、実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。以下、図7に基づき、バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を説明する。
【0032】
実施例1のバッテリパックBPは、図7に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8の2つの車両前後方向領域に分けている。バッテリモジュール搭載領域7は、車両後方端から車両前方寄りの境界線Lまでのケース内部空間の大半の領域を占有する。電装品搭載領域8は、車両前方端から車両前方寄りの境界線Lまでのバッテリモジュール搭載領域7より狭い領域を占有する。
【0033】
前記バッテリモジュール搭載領域7は、T字通路(中央通路36と交差通路37)により第1分割矩形領域71と第2分割矩形領域72と第3分割矩形領域73の三つの分割矩形領域に区分される。第1分割矩形領域71には、一側面にLBコントローラ6を有する第1バッテリモジュール21が搭載される。第2分割矩形領域72には、第2バッテリモジュール22が搭載される。第3分割矩形領域73には、第3バッテリモジュール23が搭載される。
【0034】
前記電装品搭載領域8は、車幅方向に分けられた第1区分領域81と第2区分領域82と第3区分領域83の三つの区分領域に分けられる。第1区分領域81から第2区分領域82の下部にかけては、温調風ユニット3が搭載される。第2区分領域82の上部には、SDスイッチ4が搭載される。第3区分領域83には、ジャンクションボックス5が搭載される。
【0035】
前記バッテリパックBPの内部空間には、温調風ユニット3にて作り出された温調風の内部循環を確保するための温調風通路を、各バッテリモジュール21,22,23を分割矩形領域に搭載したときの隙間を利用して形成している。この温調風通路としては、温調風ユニット3から吹き出される温調風が最初に流れ出る中央通路36と、該中央通路36からの流れを車幅方向の両側に分ける交差通路37と、内部空間の外周に流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38と、を有する。中央通路36は、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の対向面に隙間を持たせることで形成される。交差通路37は、第1バッテリモジュール21と第2,第3バッテリモジュール22,23の対向面に隙間を持たせることで形成される。環状通路38は、バッテリパックロアフレーム11と各パック構成要素2,3,4,5,6との間に隙間余裕を持たせることで形成される。
【0036】
前記温調風通路としては、温調風が主に流れる通路である中央通路36と交差通路37と環状通路38以外に、ケース内部空間にパック構成要素2,3,4,5,6を搭載することにより形成される隙間や間隔や空間も含まれる。例えば、第1バッテリモジュール21については、構成要素であるバッテリセルの積み重ね隙間は、温調風の流れ方向と同じ方向となることで温調風通路になる。第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23については、4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、が温調風通路になる。電装品搭載領域8については、バッテリパックアッパーカバー12の内面と、温調風ユニット3及びジャンクションボックス5の構成部品と、の間に形成される空間が温調風通路になる。
【0037】
[SDスイッチの構成]
図8〜図11は、実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチの詳細を示す図である。以下、図8〜図11に基づき、SDスイッチの構成を説明する。
【0038】
実施例1のバッテリパック構造では、前提として、バッテリモジュール2と、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するSDスイッチ4と、を搭載したバッテリパックケース1を車体フロア100の下部位置に配置している。このバッテリパック構造において、図8に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち車両後方側領域(一方の領域)をバッテリモジュール搭載領域7に定める。そして、SDスイッチ4を、バッテリパックケース1の内部空間のうち、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた電装品搭載領域8(他方の領域)を覆うケース上面位置に設けている。
【0039】
前記SDスイッチ4は、図9に示すように、スイッチ操作部41と、スイッチ本体部42と、外側挟持枠43と、内側挟持枠44と、枠固定ブラケット45と、を有する。スイッチ操作部41は、車両前後方向の軸を中心にスイッチオン位置からスイッチオフ位置まで回動するレバーにより構成される。スイッチ本体部42は、レバー操作によりバッテリ強電回路を断接するスイッチ接点を内部に有し、外周面に内側挟持枠44に固定する鍔を有する。外側挟持枠43は、バッテリパックケースアッパーカバー12を挟んで内側挟持枠44に固定する。枠固定ブラケット45は、4本脚構造であり、内側挟持枠44をバッテリパックケースロアフレーム11に固定する。
【0040】
前記バッテリパックケース1のバッテリパックケースアッパーカバー12には、図10及び図11に示すように、車両前側位置に、車幅方向中央部領域にケース上面から下側に凹ませたケース段差面17aを有する段差凹部17を形成している。そして、SDスイッチ4を段差凹部17に設けている。SDスイッチ4のスイッチ操作部41は、段差凹部17からケース外部に露出して配置している。SDスイッチ4のスイッチ本体部42の一部は、段差凹部17からケース内部に埋め込み配置している。
【0041】
前記SDスイッチ4を車室102内から操作するスイッチ操作構成を説明する。
車体フロア100より上部の車室102内には、図10及び図11に示すように、車室内前方位置にインストルメントパネル105を配置し、インストルメントパネル105から車両前後方向延長してセンターコンソールボックス106を車体フロア100の中央部位置に配置している。センターコンソールボックス106は、車室102内から取り外し可能に設けられている。
車体フロア100より下部の車室102外には、図10及び図11に示すように、センターコンソールボックス106に覆われる領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内に含まれる位置にSDスイッチ4を設定している。
車体フロア100には、図10及び図11に示すように、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方に対応する位置に、レバー操作空間を確保するレバー操作穴120を設けている。なお、レバー操作穴120は、蓋121により閉鎖されていて、この蓋121は、車室102内から取り外し可能に設けられている。
【0042】
次に、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPの内部温度管理作用」、「SDスイッチ搭載位置設定作用」、「バッテリ強電回路遮断による点検・修理作用」に分けて説明する。
【0043】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0044】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0045】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0046】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0047】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0048】
[バッテリパックBPの内部温度管理作用]
バッテリは温度依存度が高く、バッテリ温度が高いか低いかによりバッテリ性能に差が出る。このため、高いバッテリ性能を維持するには、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を管理することが必要である。以下、図5及び図6に基づき、これを反映するバッテリパックBPの内部温度管理作用を説明する。
【0049】
まず、温調用コントローラ52により行われるバッテリパックBPの温調制御作用を述べる。例えば、バッテリ充放電負荷の継続や高い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第1設定温度より高くなると、冷媒を温調風ユニット3のエバポレータ33に導入し、送風ファン32を回す。これにより、エバポレータ33を通過する風から熱が奪われて冷風が作り出される。この冷風を第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23が搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を低下させる。
【0050】
これに対し、例えば、冷風循環や低い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第2設定温度より低くなると、温調風ユニットのPTCヒータに通電し、送風ファンを回す。これにより、PTCヒータを通過する風に熱が与えられて温風が作り出される。この温風を、第1バッテリモジュールと第2バッテリモジュールと第3バッテリモジュールが搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を上昇させる。
【0051】
このように、バッテリパックBPの温調制御を行うことで、バッテリパックBPの内部温度を、高いバッテリ性能が得られる第1設定温度〜第2設定温度の範囲に維持することができる。このとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風を循環させることが重要である。
その理由は、バッテリパックBPの内部温度制御が、ケース内部空間に搭載されている第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の温度を、高性能が発揮されるバッテリ温度域に維持することを目的とすることによる。以下、温調風のケース内部空間循環作用を述べる。
【0052】
温調風ユニット3の吹き出し口から吹き出される温調風(冷風、温風)は、図5の矢印Dに示すように、まず中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる。そして、中央通路36に交差する交差通路37により、図5の矢印E,Eに示すように、中央通路36からの流れが車幅方向の両側に分けられる。即ち、中央通路36と交差通路37によるT字通路を、温調風を流す幹線通路としている。そして、T字通路を流れる温調風は、流れの途中で多方向に分岐し、下記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23と熱交換する。
【0053】
第1バッテリモジュール21の熱交換は、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、図5の矢印Fに示すセル積み重ね隙間を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、の間で主に行われる。
第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の熱交換は、図5の矢印Dに示す中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。これに加えて、図5の矢印G,Gに示す4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。さらに、図5の矢印H,Hに示す5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。
【0054】
上記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との熱交換を終えた風は、内部空間の外周に形成された環状通路38に流れ込む。環状通路38に流れ込んできた熱交換後の風は、図5の矢印I,Iに示すように、第1バッテリモジュール21に沿う車両後方側通路部にて車幅方向の両側に分けられる。そして、2つの分けられた熱交換後の風は、図5の矢印J,Jに示すように、車両両側通路部をそれぞれ車両後方から車両前方に向かって流れ、車両前方側通路部にて合流し、温調風ユニット3の吸入側に戻される。
【0055】
次に、ユニット吸入側に戻された熱交換後の風から温調風ユニット3にて冷風または温風を作り出す作用を説明する。ユニット吸入側に戻された熱交換後の風は、図6の矢印に示すように、ユニットケース31内のエバポレータ33と送風ファン32を経過し、次いで、温調風ダクト35に設けられたPTCヒータ34を経過し、ダクト吹き出し口から中央通路36に吹き出される。このとき、エバポレータ33に冷媒を導入し、PTCヒータ34の通電を停止し、送風ファン32を回すと、熱交換後の風からエバポレータ33により熱が奪われて冷風が作り出される。一方、エバポレータ33への冷媒導入を停止し、PTCヒータ34を通電し、送風ファン32を回すと、PTCヒータ34を通過する熱交換後の風にPTCヒータ34から熱が与えられて温風が作り出される。
【0056】
上記のように、実施例1では、ケース内部空間に中央通路36と交差通路37と環状通路38を形成し、二系統から合流した熱交換後の風を吸い込み、作り出した温調風を中央通路36に吹き出す位置に温調風ユニット3を配置する構成を採用した。
この構成により、バッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により制御するとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風が循環する。
このように、バッテリパックBPの温調制御において、制御精度や制御応答性が高まるため、バッテリパックBPの内部温度変動範囲を狭い範囲に抑えることができる。言い換えると、バッテリパックBPの内部温度を、意図する高いバッテリ性能を発揮する最適温度域に維持することができる。
【0057】
[SDスイッチ搭載位置設定作用]
SDスイッチを搭載したバッテリパックBPをフロア下部に配置する場合、上面・下面・両側面・前面・後面の位置設定には要求される条件を満足することが必要である。以下、これを反映するSDスイッチ搭載位置設定作用を説明する。
【0058】
まず、フロア下部に配置したバッテリパックBPの位置設定要求条件を述べると、下記の通りである。
・上面位置要求条件
バッテリパックBPの上面は、図8に示すように、車体フロア100との干渉を防止するため、車体フロア100の下面から所定隙間tだけ離すという条件を満足させる必要がある。
・下面位置要求条件
バッテリパックBPの下面は、図8に示すように、バッテリパックBPの上面から所定のバッテリパック高さを確保する条件と、車両姿勢を変えたとしても路面と干渉しないように路面から必要地上高だけ離す条件と、を共に満足させる必要がある。
・両側面位置要求条件
バッテリパックBPの両側面は、図2に示すように、車体のシルアウターからバッテリパックBP内のバッテリモジュールまでの間隔として、側突必要ストローク以上の間隔を確保するという条件を満足させる必要がある。
・前面位置要求条件
バッテリパックBPの前面は、図8に示すように、前突要件を満足させる必要がある。
・後面位置要求条件
バッテリパックBPの後面は、図8に示すように、リアサスペンションの組み付けスペースを確保するという条件を満足させる必要がある。
【0059】
上記のように、SDスイッチを搭載したバッテリパックBPをフロア下部に配置する場合には、前面位置設定要求条件と後面位置設定要求条件に関し、下記のことがいえる。
前面位置設定要求条件は、他の条件に比べて厳しくなく、バッテリパックBPの前面位置設定に対する自由度が高い。よって、バッテリパックBPの車両前後方向の位置を決めるとき、リアタイヤ中心軸からバッテリパックBPの後面までの寸法を、後面位置設定要求条件を満足する寸法にする。そして、ホイールベース長が異なる車両に同じバッテリパックBPを搭載する場合、リアタイヤ中心軸からバッテリパックBPの後面までの寸法を一致させる。これによって、ホイールベース長が異なる車両毎にバッテリパックBPの車両前後方向の位置決めを要さず、バッテリパックBPの前面位置設定要求条件と後面位置設定要求条件を共に満足させることができる。
【0060】
上記のように、SDスイッチを搭載したバッテリパックBPをフロア下部に配置する場合には、位置設定要求条件のうち、特に、上面位置設定要求条件と下面位置設定要求条件が厳しく、これらの条件を共に満足させる必要がある。
これに対し、実施例1のSDスイッチ4は、バッテリモジュール2を搭載するバッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた電装品搭載領域8を覆うケース上面位置に設けた。即ち、バッテリモジュール搭載領域7から車両前後方向に外れることでスペース自由度が高い電装品搭載領域8を利用してSDスイッチ4の位置を定める構成とした。
【0061】
したがって、バッテリパックケース1において、SDスイッチ4が設けられている部分のスイッチ設定部ケース高さhを決めるとき、バッテリモジュール2の高さに全く影響されることなく、SDスイッチ4以上の高さであれば自由に高さを決めることができる。
例えば、路面からバッテリパックBPの下面までの必要地上高は、サスペンションを含む車体設計の段階で予め決まっている。同様に、所望の車室スペースや荷室スペースを確保する車体フロア100の高さ位置を仮決めした場合には、車体フロア100の下面位置から所定隙間tだけ離した位置がバッテリパックBPの上面位置として決まる。よって、バッテリパックBPの上面位置と下面位置の差によりケース最大高さhmaxが決まることになる。
このように、バッテリパックケース1のケース最大高さhmaxが決まると、ケース最大高さhmax以下になるようにSDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを決める。これにより、車体フロア100の高さ位置を仮決めした位置から車両上方へ移動させる設計変更をする必要がなく、所望の車体フロア上部スペース(車室スペースや荷室ペース等)が確保される。
【0062】
一方、バッテリパックケース1において、バッテリモジュール2を搭載するバッテリモジュール搭載領域7を決めるとき、SDスイッチ4の存在に影響されることなく、バッテリモジュール搭載領域7をケース幅に対し許容される幅寸法に決めることができる。
例えば、一対のサイドシルアウターの車幅方向間隔が予め決まっている場合、サイドシルアウター間隔の両側から側突必要ストロークの間隔を差し引くことで、バッテリモジュール2の最大搭載間隔が決まる。このとき、決まったバッテリモジュール2の最大搭載間隔からSDスイッチ4を設けるための必要間隔を差し引く必要がない。このため、バッテリモジュール2の最大搭載間隔の幅寸法を持つバッテリモジュール搭載領域7を定めることで、最大限のバッテリ搭載スペースが確保される。
【0063】
したがって、バッテリパックケース1へSDスイッチ4を搭載するスイッチ搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる。
【0064】
実施例1では、SDスイッチ4のスイッチ操作部41を、バッテリパックケース1のケース外部に露出配置し、スイッチ本体部42の一部を、バッテリパックケース1のケース内部に埋め込み配置する構成を採用した。
このように、SDスイッチ4のスイッチ操作部41をケース外部に露出配置したことで、スイッチ操作を外部から行えるというように、SDスイッチ4の操作性が確保される。そして、SDスイッチ4のスイッチ本体部42の一部をケース内部に埋め込み配置したことで、スイッチ本体部42に有するスイッチ接点の保護が図られると共に、SDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhが、埋め込み寸法分だけ低く抑えられる。
【0065】
実施例1では、バッテリパックケース1のケース上面のうち車幅方向の一部領域に、ケース上面から下側に凹ませたケース段差面17aを有する段差凹部17を形成し、SDスイッチ4を、段差凹部17の位置に設けた構成を採用した。
この構成により、バッテリパックケース1のケース上面とケース段差面17aの高さの差だけ、SDスイッチ4がバッテリパックケース1から突出する高さが低く抑えられるし、電装品搭載領域8であるケース内部スペースが確保される。
【0066】
即ち、上記のように、車体フロア上部スペースを確保するには、バッテリパックケース1のケース最大高さhmax以下になるようにSDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを決める必要がある。
これに対し、SDスイッチの設計変更を要することなく、段差凹部17の深さ寸法をケース高さ要求に対応して設定するだけで、SDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhが、容易に要求を満足する高さに決められる。
さらに、車幅方向の全領域を凹ませると、低いケース段差面により電装品搭載領域8となる内部スペースが縮小される。これに対し、段差凹部17は、車幅方向の一部領域を凹ませた構成であり、段差凹部17以外の車幅方向領域のケース上面は、高いケース上面のままであり、電装品搭載領域8であるケース内部スペースが確保される。実施例1の場合、図10に示すように、SDスイッチ4の下側スペースを含め、温調風ユニット3の搭載スペースと、ジャンクションボックス5の搭載スペースが確保される。
【0067】
[バッテリ強電回路遮断による点検・修理作用]
強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行う際、作業の安全性を確保するためにバッテリ強電回路からの通電を機械的に遮断することが必要である。以下、図10及び図11に基づいて、これを反映するバッテリ強電回路の遮断による点検・修理作用を説明する。
【0068】
強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行う際、図11に示すように、まず、インストルメントパネル105から車両前後方向延長して中央部位置に配置しているセンターコンソールボックス106の一部を、車室102内からの作業により車体フロア100から取り外す。次いで、車体フロア100に設けたレバー操作穴120を閉鎖している蓋121を、車室102内からの作業により車体フロア100から取り外す。
【0069】
このセンターコンソールボックス106と蓋121の取り外しが終了すると、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方に、レバー操作空間が確保される。よって、レバー操作穴120から手を差し込み、SDスイッチ4のスイッチ操作部41を把持し、図10の矢印に示すように、スイッチ操作部41を回動する。このスイッチ操作部41の回動操作によりSDスイッチ4は、スイッチ入状態からスイッチ断状態へと切り替わり、バッテリモジュール2を含むバッテリ強電回路が遮断される。このSDスイッチ操作により強電が流れないように回路を遮断した後、強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行うと、作業中、仮に剥き出しの強電線や強電回路に触れたとしても作業の安全性を確保することができる。
【0070】
ちなみに、電気自動車の電気系統をオフにして点検や修理や部品交換等の作業を行うときには、ジャンクションボックス5内のリレー回路が電気的にオフになっている。よって、ジャンクションボックス5内のリレー回路が正常に動作しているときは、SDスイッチ4による強電遮断操作を必要としない。しかし、リレー回路の場合には、稀に短絡等が発生する可能性があるため、作業安全性を確実に保証するため、SDスイッチ4により機械的に強電遮断を行う。
【0071】
点検・修理・部品交換等の作業が終了すると、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方に確保されているレバー操作空間及びレバー操作穴120から手を差し込み、SDスイッチ4のスイッチ操作部41を把持してスイッチ断状態からスイッチ入状態へと切り替える。そして、取り外した蓋121とセンターコンソールボックス106の一部を車体フロア100に取り付けることで、バッテリ強電回路を閉じて通電可能な作業前の状態に復帰させる。
【0072】
上記のように、実施例1では、車体フロア100のうち、車室内から取り外し可能なセンターコンソールボックス106に覆われるフロア領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内にレバー操作穴120を設ける。そして、レバー操作穴120から車両下方に延長した部分にSDスイッチ4のスイッチ操作部41を設定する構成を採用した。
この構成により、車室102内からの作業によりセンターコンソールボックス106の一部と蓋121を車体フロア100から取り外すことで、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方にレバー操作空間が確保され、そのまま車室102内からSDスイッチ4の手動操作を行える。
したがって、強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行う際、車室102内からSDスイッチ4が存在する領域を覆う部材を取り外すと、そのまま車室102内から容易にSDスイッチ4の手動操作が行える。
【0073】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0074】
(1) バッテリモジュール2と、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断する強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と、を搭載したバッテリパックケース1を車体フロア100の下部位置に配置した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケース1の内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域7に定め、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を、前記バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた他方の領域(電装品搭載領域8)を覆うケース上面位置に設けた。
このため、バッテリパックケース1に対する強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる。
【0075】
(2) 前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)は、スイッチ操作部41とスイッチ本体部42を有し、
前記スイッチ操作部41を、前記バッテリパックケース1のケース外部に露出配置し、
前記スイッチ本体部42の少なくとも一部を、前記バッテリパックケース1のケース内部に埋め込み配置した。
このため、(1)の効果に加え、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の操作性確保とスイッチ接点の保護を図ることができると共に、SDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを埋め込み寸法分だけ低く抑えることができる。
【0076】
(3) 前記バッテリパックケース1のケース上面のうち車幅方向の一部領域に、ケース上面から下側に凹ませたケース段差面17aを有する段差凹部17を形成し、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を、前記段差凹部17の位置に設けた。
このため、(1)または(2)の効果に加え、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを、容易に要求を満足する高さに決めることができると共に、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた領域(電装品搭載領域8)のケース内部スペースを確保することができる。
【0077】
(4) 前記車体フロア100のうち、車室102内から取り外し可能な部材(センターコンソールボックス106)に覆われるフロア領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内にレバー操作穴120を設け、
前記レバー操作穴120から車両下方に延長した部分に前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)のスイッチ操作部41を設定した。
このため、(3)の効果に加え、強電部品(強電モジュール112やインバータ113等)の点検・修理・部品交換等を行う際、車室102内から強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)が存在する領域を覆う部材(センターコンソールボックス106)を取り外すと、そのまま車室102内から容易に強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の手動操作を行うことができる。
【0078】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0079】
実施例1では、SDスイッチ4を、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた電装品搭載領域8を覆うケース上面位置に設けた例を示した。しかし、例えば、後輪駆動による電気自動車であって、強電遮断スイッチを、バッテリモジュール搭載領域から車両後方に定めた領域を覆うケース上面位置に設ける例としても良い。
【0080】
実施例1では、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた領域は、温調風ユニット3とSDスイッチ4とジャンクションボックス5を搭載する電装品搭載領域8とする例を示した。しかし、バッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた領域は、温調風ユニットやジャンクションボックス以外の構成部品を搭載する領域とする例であっても良いし、また、強電遮断スイッチのみを搭載するスイッチ専用搭載領域とする例であっても良い。
【0081】
実施例1では、SDスイッチ4のスイッチ本体部42の一部を、バッテリパックケース1のケース内部に埋め込み配置する例を示した。しかし、強電遮断スイッチのスイッチ本体部の全部を、バッテリパックケースのケース内部に埋め込み配置し、スイッチ操作部のみをケース外に露出配置するような例としても良い。
【0082】
実施例1では、SDスイッチ4を、段差凹部17の位置に設ける例を示した。しかし、段差凹部を設けることなく、強電遮断スイッチを、バッテリパックケースの上面位置に設ける例としても良い。
【0083】
実施例1では、SDスイッチ4のスイッチ手動操作を、センターコンソールボックス106の一部を外し、車室内から行える例を示した。しかし、強電遮断スイッチのスイッチ手動操作を、インストルメントパネルの一部を外し、あるいは、インストルメントパネルの一部のリッドを開き、車室内から行えるようにした例としても良い。
【0084】
実施例1では、本発明のバッテリパック構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、バッテリパックを車体フロアの下部位置に配置する電気自動車であれば適用できる。
【符号の説明】
【0085】
BP バッテリパック
1 バッテリパックケース
11 バッテリパックロアフレーム
12 バッテリパックアッパーカバー
17段差凹部
17a ケース段差面
2 バッテリモジュール
3 温調風ユニット
4 SDスイッチ(強電遮断スイッチ)
41 スイッチ操作部
42 スイッチ本体部
5 ジャンクションボックス
6 LBコントローラ
7 バッテリモジュール搭載領域(一方の領域)
8 電装品搭載領域(他方の領域)
100 車体フロア
102 車室
106 センターコンソールボックス(車室内から取り外し可能な部材)
120 レバー操作穴
121 蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュールと強電遮断スイッチを搭載したバッテリパックを車体フロアの下部位置に配置した電気自動車のバッテリパック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリパック(バッテリモジュール体A)を車体フロアの下部位置に配置した電気自動車において、強電遮断スイッチ(ブレーカボックス30)を、バッテリケース(バッテリボックス28)の上面に載置したバッテリパック構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、バッテリパック(車両用電源ユニット10)をトランクルーム等に配置した電気自動車において、強電遮断スイッチ(スイッチユニット44)を、バッテリモジュール(サブモジュール24)と車幅方向に並列配置で設けたバッテリパック構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156826号公報
【特許文献2】特開2006−240502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリパック構造にあっては、バッテリケースのうち、バッテリモジュール搭載領域の上面位置に強電遮断スイッチが載置されているため、バッテリケースの高さが、バッテリモジュールと強電遮断スイッチの合計高さよりも高くなる。したがって、路面からバッテリケース下面までの必要地上高を確保しようとすると、上方に突出する強電遮断スイッチとの干渉を避ける位置まで車体フロアを高くせざるを得ない。この結果、車体フロアの下部位置に、特許文献1に記載のバッテリパックを配置すると、車体フロア面が高くなってしまい、車室スペースや荷室スペース等の車体フロア上部スペースを狭くしてしまう、という問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載されたバッテリパック構造は、強電遮断スイッチを搭載することによって車体フロア上部スペースを狭くするという上記問題を解決できる。しかし、強電遮断スイッチがバッテリモジュールと車幅方向に並列配置で設けられているため、バッテリケースの最大幅寸法が予め決まっている場合、バッテリモジュール搭載領域として設定可能な領域幅寸法を狭くせざるを得ない。この結果、バッテリケースの内部に搭載可能なバッテリ搭載スペースが減少してしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリパックケースに対する強電遮断スイッチの搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる電気自動車のバッテリパック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、バッテリモジュールと、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断する強電遮断スイッチと、を搭載したバッテリパックケースを車体フロアの下部位置に配置したものを前提とする。
この電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域に定めた。
前記強電遮断スイッチを、前記バッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた他方の領域を覆うケース上面位置に設けた。
【発明の効果】
【0009】
よって、強電遮断スイッチは、バッテリモジュールを搭載するバッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた他方の領域を覆うバッテリパックケースのケース上面位置に設けられる。
したがって、バッテリパックケースにおいて、強電遮断スイッチを設けた部分のスイッチ設定部ケース高さを決めるとき、バッテリモジュールの高さに全く影響されることなく、スイッチ設定部ケース高さを自由に決めることができる。例えば、バッテリパックケースの必要地上高と車体フロア面高さに基づいてケース最大高さが決まったとき、スイッチ設定部ケース高さをケース最大高さ以下に定めることが可能である。このように、車体フロア面の高さをより高くする設計変更を要さないため、所望の車体フロア上部スペース(車室スペースや荷室ペース等)が確保される。
一方、バッテリパックケースにおいて、バッテリモジュールを搭載するバッテリモジュール搭載領域を決めるとき、強電遮断スイッチの存在に全く影響されることなく、バッテリモジュール搭載領域の幅寸法を決めることができる。例えば、バッテリモジュールを搭載可能な車幅方向の最大搭載間隔が決まったとき、最大搭載間隔の幅寸法を持つバッテリモジュール搭載領域に定めることが可能である。このように、強電遮断スイッチを設けるために必要とする間隔を差し引いてバッテリモジュール搭載領域を定める必要がないため、最大限のバッテリ搭載スペースが確保される。
この結果、バッテリパックケースに対する強電遮断スイッチの搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図である。
【図2】実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略底面図である。
【図3】実施例1のバッテリパックBPを示す全体斜視図である。
【図4】実施例1のバッテリパックBPを示すバッテリケースアッパーカバーを外した斜視図である。
【図5】実施例1のバッテリパックBPの内部構成と温調風の流れを示すバッテリケースアッパーカバーを外した平面図である。
【図6】実施例1のバッテリパックBPの温調風ユニットの構成と温調風の流れを示す図5のA部拡大図である。
【図7】実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。
【図8】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチを示すバッテリパック全体側面図である。
【図9】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチの詳細構成を示す斜視図である。
【図10】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチとスイッチ周辺構成を示す図11のB−B線による縦断面図である。
【図11】実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチとスイッチ周辺構成を示す図10のC−C線による縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成」、「SDスイッチの構成」に分けて説明する。
【0013】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び図2は、実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、図1及び図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0014】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、車体フロア100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。車体フロア100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられ、車両前方から車両後方までのフロア面凹凸を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0015】
前記バッテリパックBPは、図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0016】
前記バッテリパックBPは、図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0017】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0018】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0019】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3〜図6は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、図3〜図6に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0020】
実施例1のバッテリパックBPは、図3及び図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(強電遮断スイッチ:以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0021】
前記バッテリパックケース1は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11とバッテリパックアッパーカバー12の2部品によって構成される。
【0022】
前記バッテリパックロアフレーム11は、図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このバッテリパックロアフレーム11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このバッテリパックロアフレーム11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と強電コネクタ端子15(車室内空調用)と弱電コネクタ端子16とが取り付けられている。
【0023】
前記バッテリパックアッパーカバー12は、図3に示すように、バッテリパックロアフレーム11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このバッテリパックアッパーカバー12には、バッテリパックロアフレーム11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0024】
前記バッテリモジュール2は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造であり、各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0025】
前記第1バッテリモジュール21は、図4及び図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0026】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。
【0027】
前記温調風ユニット3は、図5に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの温調風通路に温調風(冷風、温風)を送風する。温調風ユニット3は、図6に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、温調風ダクト35と、を有して構成される。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子13を介して冷媒が導入される。
【0028】
前記SDスイッチ4は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。バッテリ強電回路は、内部バスバーを備えた各バッテリモジュール21,22,23と、ジャンクションボックス5と、SDスイッチ4と、を互いにバスバーを介して接続することで形成される。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0029】
前記ジャンクションボックス5は、図3及び図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。ジャンクションボックス5と外部の強電モジュール112は、充放電コネクタ端子14と充放電ハーネス111を介して接続される。ジャンクションボックス5と外部の電子制御システムは、弱電ハーネスを介して接続される。
【0030】
前記LBコントローラ6は、図4及び図5に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。そして、LBコントローラ6と外部の電子制御システムは、リレー回路のオン/オフ情報やバッテリ容量情報やバッテリ温度情報等を伝達する弱電ハーネスを介して接続される。
【0031】
[バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成]
図7は、実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。以下、図7に基づき、バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を説明する。
【0032】
実施例1のバッテリパックBPは、図7に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8の2つの車両前後方向領域に分けている。バッテリモジュール搭載領域7は、車両後方端から車両前方寄りの境界線Lまでのケース内部空間の大半の領域を占有する。電装品搭載領域8は、車両前方端から車両前方寄りの境界線Lまでのバッテリモジュール搭載領域7より狭い領域を占有する。
【0033】
前記バッテリモジュール搭載領域7は、T字通路(中央通路36と交差通路37)により第1分割矩形領域71と第2分割矩形領域72と第3分割矩形領域73の三つの分割矩形領域に区分される。第1分割矩形領域71には、一側面にLBコントローラ6を有する第1バッテリモジュール21が搭載される。第2分割矩形領域72には、第2バッテリモジュール22が搭載される。第3分割矩形領域73には、第3バッテリモジュール23が搭載される。
【0034】
前記電装品搭載領域8は、車幅方向に分けられた第1区分領域81と第2区分領域82と第3区分領域83の三つの区分領域に分けられる。第1区分領域81から第2区分領域82の下部にかけては、温調風ユニット3が搭載される。第2区分領域82の上部には、SDスイッチ4が搭載される。第3区分領域83には、ジャンクションボックス5が搭載される。
【0035】
前記バッテリパックBPの内部空間には、温調風ユニット3にて作り出された温調風の内部循環を確保するための温調風通路を、各バッテリモジュール21,22,23を分割矩形領域に搭載したときの隙間を利用して形成している。この温調風通路としては、温調風ユニット3から吹き出される温調風が最初に流れ出る中央通路36と、該中央通路36からの流れを車幅方向の両側に分ける交差通路37と、内部空間の外周に流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38と、を有する。中央通路36は、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の対向面に隙間を持たせることで形成される。交差通路37は、第1バッテリモジュール21と第2,第3バッテリモジュール22,23の対向面に隙間を持たせることで形成される。環状通路38は、バッテリパックロアフレーム11と各パック構成要素2,3,4,5,6との間に隙間余裕を持たせることで形成される。
【0036】
前記温調風通路としては、温調風が主に流れる通路である中央通路36と交差通路37と環状通路38以外に、ケース内部空間にパック構成要素2,3,4,5,6を搭載することにより形成される隙間や間隔や空間も含まれる。例えば、第1バッテリモジュール21については、構成要素であるバッテリセルの積み重ね隙間は、温調風の流れ方向と同じ方向となることで温調風通路になる。第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23については、4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔と、が温調風通路になる。電装品搭載領域8については、バッテリパックアッパーカバー12の内面と、温調風ユニット3及びジャンクションボックス5の構成部品と、の間に形成される空間が温調風通路になる。
【0037】
[SDスイッチの構成]
図8〜図11は、実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチの詳細を示す図である。以下、図8〜図11に基づき、SDスイッチの構成を説明する。
【0038】
実施例1のバッテリパック構造では、前提として、バッテリモジュール2と、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するSDスイッチ4と、を搭載したバッテリパックケース1を車体フロア100の下部位置に配置している。このバッテリパック構造において、図8に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち車両後方側領域(一方の領域)をバッテリモジュール搭載領域7に定める。そして、SDスイッチ4を、バッテリパックケース1の内部空間のうち、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた電装品搭載領域8(他方の領域)を覆うケース上面位置に設けている。
【0039】
前記SDスイッチ4は、図9に示すように、スイッチ操作部41と、スイッチ本体部42と、外側挟持枠43と、内側挟持枠44と、枠固定ブラケット45と、を有する。スイッチ操作部41は、車両前後方向の軸を中心にスイッチオン位置からスイッチオフ位置まで回動するレバーにより構成される。スイッチ本体部42は、レバー操作によりバッテリ強電回路を断接するスイッチ接点を内部に有し、外周面に内側挟持枠44に固定する鍔を有する。外側挟持枠43は、バッテリパックケースアッパーカバー12を挟んで内側挟持枠44に固定する。枠固定ブラケット45は、4本脚構造であり、内側挟持枠44をバッテリパックケースロアフレーム11に固定する。
【0040】
前記バッテリパックケース1のバッテリパックケースアッパーカバー12には、図10及び図11に示すように、車両前側位置に、車幅方向中央部領域にケース上面から下側に凹ませたケース段差面17aを有する段差凹部17を形成している。そして、SDスイッチ4を段差凹部17に設けている。SDスイッチ4のスイッチ操作部41は、段差凹部17からケース外部に露出して配置している。SDスイッチ4のスイッチ本体部42の一部は、段差凹部17からケース内部に埋め込み配置している。
【0041】
前記SDスイッチ4を車室102内から操作するスイッチ操作構成を説明する。
車体フロア100より上部の車室102内には、図10及び図11に示すように、車室内前方位置にインストルメントパネル105を配置し、インストルメントパネル105から車両前後方向延長してセンターコンソールボックス106を車体フロア100の中央部位置に配置している。センターコンソールボックス106は、車室102内から取り外し可能に設けられている。
車体フロア100より下部の車室102外には、図10及び図11に示すように、センターコンソールボックス106に覆われる領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内に含まれる位置にSDスイッチ4を設定している。
車体フロア100には、図10及び図11に示すように、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方に対応する位置に、レバー操作空間を確保するレバー操作穴120を設けている。なお、レバー操作穴120は、蓋121により閉鎖されていて、この蓋121は、車室102内から取り外し可能に設けられている。
【0042】
次に、実施例1の電気自動車のバッテリパック構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPの内部温度管理作用」、「SDスイッチ搭載位置設定作用」、「バッテリ強電回路遮断による点検・修理作用」に分けて説明する。
【0043】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0044】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0045】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0046】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0047】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0048】
[バッテリパックBPの内部温度管理作用]
バッテリは温度依存度が高く、バッテリ温度が高いか低いかによりバッテリ性能に差が出る。このため、高いバッテリ性能を維持するには、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を管理することが必要である。以下、図5及び図6に基づき、これを反映するバッテリパックBPの内部温度管理作用を説明する。
【0049】
まず、温調用コントローラ52により行われるバッテリパックBPの温調制御作用を述べる。例えば、バッテリ充放電負荷の継続や高い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第1設定温度より高くなると、冷媒を温調風ユニット3のエバポレータ33に導入し、送風ファン32を回す。これにより、エバポレータ33を通過する風から熱が奪われて冷風が作り出される。この冷風を第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23が搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を低下させる。
【0050】
これに対し、例えば、冷風循環や低い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第2設定温度より低くなると、温調風ユニットのPTCヒータに通電し、送風ファンを回す。これにより、PTCヒータを通過する風に熱が与えられて温風が作り出される。この温風を、第1バッテリモジュールと第2バッテリモジュールと第3バッテリモジュールが搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を上昇させる。
【0051】
このように、バッテリパックBPの温調制御を行うことで、バッテリパックBPの内部温度を、高いバッテリ性能が得られる第1設定温度〜第2設定温度の範囲に維持することができる。このとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風を循環させることが重要である。
その理由は、バッテリパックBPの内部温度制御が、ケース内部空間に搭載されている第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の温度を、高性能が発揮されるバッテリ温度域に維持することを目的とすることによる。以下、温調風のケース内部空間循環作用を述べる。
【0052】
温調風ユニット3の吹き出し口から吹き出される温調風(冷風、温風)は、図5の矢印Dに示すように、まず中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる。そして、中央通路36に交差する交差通路37により、図5の矢印E,Eに示すように、中央通路36からの流れが車幅方向の両側に分けられる。即ち、中央通路36と交差通路37によるT字通路を、温調風を流す幹線通路としている。そして、T字通路を流れる温調風は、流れの途中で多方向に分岐し、下記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23と熱交換する。
【0053】
第1バッテリモジュール21の熱交換は、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、図5の矢印Fに示すセル積み重ね隙間を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、の間で主に行われる。
第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の熱交換は、図5の矢印Dに示す中央通路36を車両前方から車両後方に向かって流れる温調風と、図5の矢印E,Eに示す交差通路37を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。これに加えて、図5の矢印G,Gに示す4枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。さらに、図5の矢印H,Hに示す5枚平積みバッテリセルと5枚平積みバッテリセルの搭載間隔を車幅方向の両側に分けて流れる温調風と、の間で行われる。
【0054】
上記のように、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との熱交換を終えた風は、内部空間の外周に形成された環状通路38に流れ込む。環状通路38に流れ込んできた熱交換後の風は、図5の矢印I,Iに示すように、第1バッテリモジュール21に沿う車両後方側通路部にて車幅方向の両側に分けられる。そして、2つの分けられた熱交換後の風は、図5の矢印J,Jに示すように、車両両側通路部をそれぞれ車両後方から車両前方に向かって流れ、車両前方側通路部にて合流し、温調風ユニット3の吸入側に戻される。
【0055】
次に、ユニット吸入側に戻された熱交換後の風から温調風ユニット3にて冷風または温風を作り出す作用を説明する。ユニット吸入側に戻された熱交換後の風は、図6の矢印に示すように、ユニットケース31内のエバポレータ33と送風ファン32を経過し、次いで、温調風ダクト35に設けられたPTCヒータ34を経過し、ダクト吹き出し口から中央通路36に吹き出される。このとき、エバポレータ33に冷媒を導入し、PTCヒータ34の通電を停止し、送風ファン32を回すと、熱交換後の風からエバポレータ33により熱が奪われて冷風が作り出される。一方、エバポレータ33への冷媒導入を停止し、PTCヒータ34を通電し、送風ファン32を回すと、PTCヒータ34を通過する熱交換後の風にPTCヒータ34から熱が与えられて温風が作り出される。
【0056】
上記のように、実施例1では、ケース内部空間に中央通路36と交差通路37と環状通路38を形成し、二系統から合流した熱交換後の風を吸い込み、作り出した温調風を中央通路36に吹き出す位置に温調風ユニット3を配置する構成を採用した。
この構成により、バッテリパックBPの内部温度を温調風(冷風、温風)により制御するとき、温調風循環量が不足する空間ができないように、ケース内部空間の全体にわたって均等に、かつ、スムーズに温調風が循環する。
このように、バッテリパックBPの温調制御において、制御精度や制御応答性が高まるため、バッテリパックBPの内部温度変動範囲を狭い範囲に抑えることができる。言い換えると、バッテリパックBPの内部温度を、意図する高いバッテリ性能を発揮する最適温度域に維持することができる。
【0057】
[SDスイッチ搭載位置設定作用]
SDスイッチを搭載したバッテリパックBPをフロア下部に配置する場合、上面・下面・両側面・前面・後面の位置設定には要求される条件を満足することが必要である。以下、これを反映するSDスイッチ搭載位置設定作用を説明する。
【0058】
まず、フロア下部に配置したバッテリパックBPの位置設定要求条件を述べると、下記の通りである。
・上面位置要求条件
バッテリパックBPの上面は、図8に示すように、車体フロア100との干渉を防止するため、車体フロア100の下面から所定隙間tだけ離すという条件を満足させる必要がある。
・下面位置要求条件
バッテリパックBPの下面は、図8に示すように、バッテリパックBPの上面から所定のバッテリパック高さを確保する条件と、車両姿勢を変えたとしても路面と干渉しないように路面から必要地上高だけ離す条件と、を共に満足させる必要がある。
・両側面位置要求条件
バッテリパックBPの両側面は、図2に示すように、車体のシルアウターからバッテリパックBP内のバッテリモジュールまでの間隔として、側突必要ストローク以上の間隔を確保するという条件を満足させる必要がある。
・前面位置要求条件
バッテリパックBPの前面は、図8に示すように、前突要件を満足させる必要がある。
・後面位置要求条件
バッテリパックBPの後面は、図8に示すように、リアサスペンションの組み付けスペースを確保するという条件を満足させる必要がある。
【0059】
上記のように、SDスイッチを搭載したバッテリパックBPをフロア下部に配置する場合には、前面位置設定要求条件と後面位置設定要求条件に関し、下記のことがいえる。
前面位置設定要求条件は、他の条件に比べて厳しくなく、バッテリパックBPの前面位置設定に対する自由度が高い。よって、バッテリパックBPの車両前後方向の位置を決めるとき、リアタイヤ中心軸からバッテリパックBPの後面までの寸法を、後面位置設定要求条件を満足する寸法にする。そして、ホイールベース長が異なる車両に同じバッテリパックBPを搭載する場合、リアタイヤ中心軸からバッテリパックBPの後面までの寸法を一致させる。これによって、ホイールベース長が異なる車両毎にバッテリパックBPの車両前後方向の位置決めを要さず、バッテリパックBPの前面位置設定要求条件と後面位置設定要求条件を共に満足させることができる。
【0060】
上記のように、SDスイッチを搭載したバッテリパックBPをフロア下部に配置する場合には、位置設定要求条件のうち、特に、上面位置設定要求条件と下面位置設定要求条件が厳しく、これらの条件を共に満足させる必要がある。
これに対し、実施例1のSDスイッチ4は、バッテリモジュール2を搭載するバッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた電装品搭載領域8を覆うケース上面位置に設けた。即ち、バッテリモジュール搭載領域7から車両前後方向に外れることでスペース自由度が高い電装品搭載領域8を利用してSDスイッチ4の位置を定める構成とした。
【0061】
したがって、バッテリパックケース1において、SDスイッチ4が設けられている部分のスイッチ設定部ケース高さhを決めるとき、バッテリモジュール2の高さに全く影響されることなく、SDスイッチ4以上の高さであれば自由に高さを決めることができる。
例えば、路面からバッテリパックBPの下面までの必要地上高は、サスペンションを含む車体設計の段階で予め決まっている。同様に、所望の車室スペースや荷室スペースを確保する車体フロア100の高さ位置を仮決めした場合には、車体フロア100の下面位置から所定隙間tだけ離した位置がバッテリパックBPの上面位置として決まる。よって、バッテリパックBPの上面位置と下面位置の差によりケース最大高さhmaxが決まることになる。
このように、バッテリパックケース1のケース最大高さhmaxが決まると、ケース最大高さhmax以下になるようにSDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを決める。これにより、車体フロア100の高さ位置を仮決めした位置から車両上方へ移動させる設計変更をする必要がなく、所望の車体フロア上部スペース(車室スペースや荷室ペース等)が確保される。
【0062】
一方、バッテリパックケース1において、バッテリモジュール2を搭載するバッテリモジュール搭載領域7を決めるとき、SDスイッチ4の存在に影響されることなく、バッテリモジュール搭載領域7をケース幅に対し許容される幅寸法に決めることができる。
例えば、一対のサイドシルアウターの車幅方向間隔が予め決まっている場合、サイドシルアウター間隔の両側から側突必要ストロークの間隔を差し引くことで、バッテリモジュール2の最大搭載間隔が決まる。このとき、決まったバッテリモジュール2の最大搭載間隔からSDスイッチ4を設けるための必要間隔を差し引く必要がない。このため、バッテリモジュール2の最大搭載間隔の幅寸法を持つバッテリモジュール搭載領域7を定めることで、最大限のバッテリ搭載スペースが確保される。
【0063】
したがって、バッテリパックケース1へSDスイッチ4を搭載するスイッチ搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる。
【0064】
実施例1では、SDスイッチ4のスイッチ操作部41を、バッテリパックケース1のケース外部に露出配置し、スイッチ本体部42の一部を、バッテリパックケース1のケース内部に埋め込み配置する構成を採用した。
このように、SDスイッチ4のスイッチ操作部41をケース外部に露出配置したことで、スイッチ操作を外部から行えるというように、SDスイッチ4の操作性が確保される。そして、SDスイッチ4のスイッチ本体部42の一部をケース内部に埋め込み配置したことで、スイッチ本体部42に有するスイッチ接点の保護が図られると共に、SDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhが、埋め込み寸法分だけ低く抑えられる。
【0065】
実施例1では、バッテリパックケース1のケース上面のうち車幅方向の一部領域に、ケース上面から下側に凹ませたケース段差面17aを有する段差凹部17を形成し、SDスイッチ4を、段差凹部17の位置に設けた構成を採用した。
この構成により、バッテリパックケース1のケース上面とケース段差面17aの高さの差だけ、SDスイッチ4がバッテリパックケース1から突出する高さが低く抑えられるし、電装品搭載領域8であるケース内部スペースが確保される。
【0066】
即ち、上記のように、車体フロア上部スペースを確保するには、バッテリパックケース1のケース最大高さhmax以下になるようにSDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを決める必要がある。
これに対し、SDスイッチの設計変更を要することなく、段差凹部17の深さ寸法をケース高さ要求に対応して設定するだけで、SDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhが、容易に要求を満足する高さに決められる。
さらに、車幅方向の全領域を凹ませると、低いケース段差面により電装品搭載領域8となる内部スペースが縮小される。これに対し、段差凹部17は、車幅方向の一部領域を凹ませた構成であり、段差凹部17以外の車幅方向領域のケース上面は、高いケース上面のままであり、電装品搭載領域8であるケース内部スペースが確保される。実施例1の場合、図10に示すように、SDスイッチ4の下側スペースを含め、温調風ユニット3の搭載スペースと、ジャンクションボックス5の搭載スペースが確保される。
【0067】
[バッテリ強電回路遮断による点検・修理作用]
強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行う際、作業の安全性を確保するためにバッテリ強電回路からの通電を機械的に遮断することが必要である。以下、図10及び図11に基づいて、これを反映するバッテリ強電回路の遮断による点検・修理作用を説明する。
【0068】
強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行う際、図11に示すように、まず、インストルメントパネル105から車両前後方向延長して中央部位置に配置しているセンターコンソールボックス106の一部を、車室102内からの作業により車体フロア100から取り外す。次いで、車体フロア100に設けたレバー操作穴120を閉鎖している蓋121を、車室102内からの作業により車体フロア100から取り外す。
【0069】
このセンターコンソールボックス106と蓋121の取り外しが終了すると、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方に、レバー操作空間が確保される。よって、レバー操作穴120から手を差し込み、SDスイッチ4のスイッチ操作部41を把持し、図10の矢印に示すように、スイッチ操作部41を回動する。このスイッチ操作部41の回動操作によりSDスイッチ4は、スイッチ入状態からスイッチ断状態へと切り替わり、バッテリモジュール2を含むバッテリ強電回路が遮断される。このSDスイッチ操作により強電が流れないように回路を遮断した後、強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行うと、作業中、仮に剥き出しの強電線や強電回路に触れたとしても作業の安全性を確保することができる。
【0070】
ちなみに、電気自動車の電気系統をオフにして点検や修理や部品交換等の作業を行うときには、ジャンクションボックス5内のリレー回路が電気的にオフになっている。よって、ジャンクションボックス5内のリレー回路が正常に動作しているときは、SDスイッチ4による強電遮断操作を必要としない。しかし、リレー回路の場合には、稀に短絡等が発生する可能性があるため、作業安全性を確実に保証するため、SDスイッチ4により機械的に強電遮断を行う。
【0071】
点検・修理・部品交換等の作業が終了すると、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方に確保されているレバー操作空間及びレバー操作穴120から手を差し込み、SDスイッチ4のスイッチ操作部41を把持してスイッチ断状態からスイッチ入状態へと切り替える。そして、取り外した蓋121とセンターコンソールボックス106の一部を車体フロア100に取り付けることで、バッテリ強電回路を閉じて通電可能な作業前の状態に復帰させる。
【0072】
上記のように、実施例1では、車体フロア100のうち、車室内から取り外し可能なセンターコンソールボックス106に覆われるフロア領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内にレバー操作穴120を設ける。そして、レバー操作穴120から車両下方に延長した部分にSDスイッチ4のスイッチ操作部41を設定する構成を採用した。
この構成により、車室102内からの作業によりセンターコンソールボックス106の一部と蓋121を車体フロア100から取り外すことで、SDスイッチ4のスイッチ操作部41の上方にレバー操作空間が確保され、そのまま車室102内からSDスイッチ4の手動操作を行える。
したがって、強電モジュール112やインバータ113等の点検・修理・部品交換等を行う際、車室102内からSDスイッチ4が存在する領域を覆う部材を取り外すと、そのまま車室102内から容易にSDスイッチ4の手動操作が行える。
【0073】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0074】
(1) バッテリモジュール2と、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断する強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と、を搭載したバッテリパックケース1を車体フロア100の下部位置に配置した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケース1の内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域7に定め、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を、前記バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた他方の領域(電装品搭載領域8)を覆うケース上面位置に設けた。
このため、バッテリパックケース1に対する強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の搭載位置設定において、車体フロア上部スペースの確保と、バッテリ搭載スペースの確保と、を両立させることができる。
【0075】
(2) 前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)は、スイッチ操作部41とスイッチ本体部42を有し、
前記スイッチ操作部41を、前記バッテリパックケース1のケース外部に露出配置し、
前記スイッチ本体部42の少なくとも一部を、前記バッテリパックケース1のケース内部に埋め込み配置した。
このため、(1)の効果に加え、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の操作性確保とスイッチ接点の保護を図ることができると共に、SDスイッチ4を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを埋め込み寸法分だけ低く抑えることができる。
【0076】
(3) 前記バッテリパックケース1のケース上面のうち車幅方向の一部領域に、ケース上面から下側に凹ませたケース段差面17aを有する段差凹部17を形成し、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を、前記段差凹部17の位置に設けた。
このため、(1)または(2)の効果に加え、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を設けた部分のスイッチ設定部ケース高さhを、容易に要求を満足する高さに決めることができると共に、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた領域(電装品搭載領域8)のケース内部スペースを確保することができる。
【0077】
(4) 前記車体フロア100のうち、車室102内から取り外し可能な部材(センターコンソールボックス106)に覆われるフロア領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内にレバー操作穴120を設け、
前記レバー操作穴120から車両下方に延長した部分に前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)のスイッチ操作部41を設定した。
このため、(3)の効果に加え、強電部品(強電モジュール112やインバータ113等)の点検・修理・部品交換等を行う際、車室102内から強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)が存在する領域を覆う部材(センターコンソールボックス106)を取り外すと、そのまま車室102内から容易に強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の手動操作を行うことができる。
【0078】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0079】
実施例1では、SDスイッチ4を、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた電装品搭載領域8を覆うケース上面位置に設けた例を示した。しかし、例えば、後輪駆動による電気自動車であって、強電遮断スイッチを、バッテリモジュール搭載領域から車両後方に定めた領域を覆うケース上面位置に設ける例としても良い。
【0080】
実施例1では、バッテリモジュール搭載領域7から車両前方に定めた領域は、温調風ユニット3とSDスイッチ4とジャンクションボックス5を搭載する電装品搭載領域8とする例を示した。しかし、バッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた領域は、温調風ユニットやジャンクションボックス以外の構成部品を搭載する領域とする例であっても良いし、また、強電遮断スイッチのみを搭載するスイッチ専用搭載領域とする例であっても良い。
【0081】
実施例1では、SDスイッチ4のスイッチ本体部42の一部を、バッテリパックケース1のケース内部に埋め込み配置する例を示した。しかし、強電遮断スイッチのスイッチ本体部の全部を、バッテリパックケースのケース内部に埋め込み配置し、スイッチ操作部のみをケース外に露出配置するような例としても良い。
【0082】
実施例1では、SDスイッチ4を、段差凹部17の位置に設ける例を示した。しかし、段差凹部を設けることなく、強電遮断スイッチを、バッテリパックケースの上面位置に設ける例としても良い。
【0083】
実施例1では、SDスイッチ4のスイッチ手動操作を、センターコンソールボックス106の一部を外し、車室内から行える例を示した。しかし、強電遮断スイッチのスイッチ手動操作を、インストルメントパネルの一部を外し、あるいは、インストルメントパネルの一部のリッドを開き、車室内から行えるようにした例としても良い。
【0084】
実施例1では、本発明のバッテリパック構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、バッテリパックを車体フロアの下部位置に配置する電気自動車であれば適用できる。
【符号の説明】
【0085】
BP バッテリパック
1 バッテリパックケース
11 バッテリパックロアフレーム
12 バッテリパックアッパーカバー
17段差凹部
17a ケース段差面
2 バッテリモジュール
3 温調風ユニット
4 SDスイッチ(強電遮断スイッチ)
41 スイッチ操作部
42 スイッチ本体部
5 ジャンクションボックス
6 LBコントローラ
7 バッテリモジュール搭載領域(一方の領域)
8 電装品搭載領域(他方の領域)
100 車体フロア
102 車室
106 センターコンソールボックス(車室内から取り外し可能な部材)
120 レバー操作穴
121 蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールと、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断する強電遮断スイッチと、を搭載したバッテリパックケースを車体フロアの下部位置に配置した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域に定め、
前記強電遮断スイッチを、前記バッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた他方の領域を覆うケース上面位置に設けた
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記強電遮断スイッチは、スイッチ操作部とスイッチ本体部を有し、
前記スイッチ操作部を、前記バッテリパックケースのケース外部に露出配置し、
前記スイッチ本体部の少なくとも一部を、前記バッテリパックケースのケース内部に埋め込み配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースのケース上面のうち車幅方向の一部領域に、ケース上面から下側に凹ませたケース段差面を有する段差凹部を形成し、
前記強電遮断スイッチを、前記段差凹部の位置に設けた
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項4】
請求項3に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記車体フロアのうち、車室内から取り外し可能な部材に覆われるフロア領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内にレバー操作穴を設け、
前記レバー操作穴から車両下方に延長した部分に前記強電遮断スイッチのスイッチ操作部を設定した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項1】
バッテリモジュールと、手動操作によりバッテリ強電回路を遮断する強電遮断スイッチと、を搭載したバッテリパックケースを車体フロアの下部位置に配置した電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースの内部空間を車両前後方向の2つの領域に分け、2つの領域のうち一方の領域をバッテリモジュール搭載領域に定め、
前記強電遮断スイッチを、前記バッテリモジュール搭載領域から車両前方または車両後方に定めた他方の領域を覆うケース上面位置に設けた
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記強電遮断スイッチは、スイッチ操作部とスイッチ本体部を有し、
前記スイッチ操作部を、前記バッテリパックケースのケース外部に露出配置し、
前記スイッチ本体部の少なくとも一部を、前記バッテリパックケースのケース内部に埋め込み配置した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記バッテリパックケースのケース上面のうち車幅方向の一部領域に、ケース上面から下側に凹ませたケース段差面を有する段差凹部を形成し、
前記強電遮断スイッチを、前記段差凹部の位置に設けた
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【請求項4】
請求項3に記載された電気自動車のバッテリパック構造において、
前記車体フロアのうち、車室内から取り外し可能な部材に覆われるフロア領域を、そのまま車両下方に投影した投影領域内にレバー操作穴を設け、
前記レバー操作穴から車両下方に延長した部分に前記強電遮断スイッチのスイッチ操作部を設定した
ことを特徴とする電気自動車のバッテリパック構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−240476(P2012−240476A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110193(P2011−110193)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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