説明

電気自動車の暖房方法及び装置

【課題】電気自動車の走行可能距離をできるだけ延ばすために、暖房装置の温水回路に熱を回収可能にすること。
【解決手段】駆動系冷却回路と、温水回路の暖房装置を備え、温水回路は、循環路に加熱器から発生する熱を回収する電気自動車の暖房方法において、駆動系冷却回路を温水回路に、モータ及びインバータを加熱器に兼用すること。また、充電器から充電電流を供給し、二次電池の各セル電圧を均一にするために、充電電流を各セルに流しながら、各セルに対して並列接続可能な放電抵抗にも流すか否かを電池管理装置によって制御した上で、放電抵抗を加熱器として兼用すること。充電器から二次電池に対して充電電流を段階的に下げながら供給し、その供給中に二次電池と電気ヒータを並列接続して通電すると共に充電電流を増加させることによって電気ヒータから発生する熱を回収すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の車内を暖房する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9には、従来の電気自動車の暖房装置81と駆動系冷却回路91が示されている。電気自動車の暖房装置81としては、熱媒体である水を流すパイプ82を、電気ヒータ83で温める温水回路84が一般的に知られている。電気ヒータ83を加熱するために動力用の二次電池85が用いられているため、電気ヒータ83を使用すれば、動力用の二次電池85の電力消費量が多くなり、その分だけ電気自動車の走行可能距離が短くなる。
【0003】
そこで、本発明者は温水回路を利用しながらも、他の装置から発生する熱を温水回路に回収することができないかと考えた。
【0004】
ところで、電気自動車は、図9に示すように、走行用モータ92及び、走行用モータ92を制御するインバータ93が動作中に熱を発する。従って、これらを冷却する駆動系冷却回路91が温水回路84とは独立して設けられており、駆動系冷却回路91中の放熱器94により大気中に放熱し、走行用モータ92及びインバータ93を安定して動作させている。
【0005】
また、図9に示すように電気自動車には動力用の二次電池85として、複数のセル85aより構成されるものが用いられている。このような二次電池85を充電する充電装置としては、定電流の充電電流を流す充電器86と、電池管理装置87とを備えたものが知られている(特許文献1、2)。
【0006】
この充電装置で充電する際には、電池管理装置87が、充電電流を各セルに全部流す場合と、各セルに対して並列接続可能な放電抵抗にも流す場合を制御することによって、各セルの電圧をできるだけ均一に保ちながら充電している。また、充電器86が充電電流を段階的に小さくする充電方式(多段充電方式)を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−369398号公報
【特許文献2】特開2007−236115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者は、電気自動車での走行中における二次電池の電力消費量を抑え、走行可能距離を延ばすために、温水回路に回収することのできる熱として、今まで大気中に放出されていた熱、つまり、(1)前記した駆動系冷却回路から発生する熱、(2)充電装置の放電抵抗から発生する熱に着目した。
【0009】
また、(3)多段充電方式については、次のように考えた。充電電流の最大値は、二次電池側で制限がない場合には充電用ケーブルの太さで決まる。充電電流を段階的に小さくしたい場合には、充電器には、充電電流(充電用ケーブル)に余力があるということである。従って、充電器で小さくしていた分の充電電流を、熱として温水回路に回収することも可能なはずである。
【0010】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は、電気自動車の走行可能距離をできるだけ延ばすために、暖房装置の温水回路に熱を回収可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のうち請求項1の発明は、二次電池と、二次電池を駆動源とする走行用モータと、走行用モータを制御するインバータと、走行用モータ及びインバータを冷却するための駆動系冷却回路と、温水回路からなる暖房装置を備える電気自動車であって、温水回路は、温水が流れる循環路に加熱器から発生する熱を回収し、暖房時に回収した熱で空気を暖めて温風を車内に供給する電気自動車の暖房方法において、駆動系冷却回路を温水回路に、並びに走行用モータ及びインバータを加熱器に兼用することによって、走行中には、走行用モータ及びインバータから発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することを特徴とする。
【0012】
このような暖房方法に対応する暖房装置は、請求項4の発明のように、走行用モータ及び走行用モータを制御するインバータを冷却するための駆動系冷却回路を備えると共に、温水回路からなる暖房装置を備える電気自動車であって、温水回路は、温水が流れる循環路に加熱器から発生する熱を回収し、暖房時に回収した熱で空気を暖めて温風を車内に供給する電気自動車の暖房装置において、駆動系冷却回路を温水回路に、並びに走行用モータ及びインバータを加熱器に兼用するものである。
【0013】
また、二次電池を充電する場合に、駆動系冷却回路を暖める方法の一例としては、以下の方法がある。
すなわち、請求項2の発明のように、充電器から充電電流を供給し、二次電池を構成する複数の各セルの電圧を均一にするために、充電電流を各セルに流しながら、各セルに対して並列接続可能な放電抵抗にも流すか否かを電池管理装置によって制御し、放電抵抗を加熱器として兼用することによって、充電中には、放電抵抗から発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収する方法である。
また、この暖房方法に対応する暖房装置は、請求項5の発明のように、複数のセルから構成される二次電池に充電電流を供給する充電器と、各セルの電圧を均一にするために充電電流を各セルに流しながらも各セルに対して並列接続可能な放電抵抗にも流すか否かを制御する電池管理装置とを備え、放電抵抗を加熱器として兼用するものである。
【0014】
同様に二次電池を充電する場合に、駆動系冷却回路を効率良く暖める方法の一例としては、以下の方法がある。
すなわち、請求項3の発明のように、二次電池に対して並列接続可能な加熱器としての電気ヒータを切り離した状態を保ちつつ、充電器から二次電池に対して充電電流を段階的に下げながら供給し、その供給中に以下の(一)の条件が満たされた場合には、二次電池と電気ヒータを並列接続して通電すると共に充電電流を増加させることによって、充電中に、電気ヒータから発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収する方法である。(一)充電器から供給する充電電流を増加させた上で電気ヒータを接続した場合に二次電池に流れる予定の充電電流と、二次電池に流れている現時点の充電電流とが一致すること。
また、この暖房方法に対応する暖房装置は、請求項6の発明のように、加熱器としての電気ヒータと、二次電池に対して電気ヒータを並列接続可能なヒータスイッチとを備える予熱装置を設けると共に、ヒータスイッチのON・OFFを制御するヒータ用コントローラを備え、ヒータ用コントローラのヒータスイッチのOFF制御によって電気ヒータを切り離した状態を保ちつつ、充電器から二次電池に対して充電電流を段階的に下げながら供給し、その供給中に以下の(一)の条件が満たされた場合には、ヒータ用コントローラがヒータスイッチのON制御によって二次電池と電気ヒータを通電すると共に充電器が充電電流を増加させることによって、充電中に、電気ヒータから発生する熱を温水回路の循環路に回収するものである。(一)充電器から供給する充電電流を増加させた上で電気ヒータを接続した場合に二次電池に流れる予定の充電電流と、二次電池に流れている現時点の充電電流とが一致すること。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、4に記載の発明によれば、駆動系冷却回路を温水回路に、並びに走行用モータ及びインバータを加熱器に兼用することによって、走行中には、走行用モータ及びインバータから発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することが可能になる。
【0016】
また、請求項2、5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、放電抵抗を加熱器として兼用することによって、二次電池を構成する複数の各セルの電圧を均一にするために、充電電流を各セルに流しながら放電抵抗にも流した場合に、放電抵抗から発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することが可能になる。
【0017】
また、請求項3、6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、充電器から二次電池に充電電流を段階的に下げながら供給しているうちに、一定条件下において二次電池と電気ヒータを並列接続して通電すると共に充電電流を増加させることによって、二次電池に対してはそれまでと同様に充電電流を段階的に下げながら供給することを継続して行い、その上で、電気ヒータから発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による電気自動車の暖房装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】標準的な充電装置の構成を示す説明図である。
【図3】標準的な充電方法を示すフローチャートである。
【図4】標準的な充電方法における充電電流、セルの両端電圧の時間推移を示すグラフである。
【図5】本発明による電気自動車の暖房装置の第2実施形態を示す説明図である。
【図6】暖房装置の第2実施形態による暖房方法を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態による暖房方法を実施した場合に充電器から出力される電流の時間推移を示すグラフである。
【図8】第2実施形態による暖房方法を実施した場合における充電電流の時間推移を、予熱用の電流と併せて示すグラフである。
【図9】従来の電気自動車の暖房装置及び駆動系冷却回路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明を適用した電気自動車の概略が示されている。この電気自動車は、二次電池11を動力源として搭載し、インバータ16で制御される走行用モータMで駆動するものである。二次電池11は、通常、複数のセルC、…を直列接続することによって1つのセルユニットUを形成し、このような複数のセルユニットUを並列接続したものである。図示の例では、説明の便宜上、二次電池11が1つのセルユニットUで構成されている。このような二次電池11を充電するために、充電装置12が設けられている。
【0020】
図2には電気自動車に限らない、標準的な充電装置12の構成が示されている。充電装置12は、二次電池11に定電流を充電電流として流す充電器13と、充電器13から流された充電電流を各セルCに全部流す場合と一部を各セルCに対して並列接続可能な放電抵抗33に流す場合とを制御する電池管理装置14とを備えている。
【0021】
充電器13は、二次電池11に対して二次電池電圧検出回路21を並列接続すると共に、この二次電池電圧検出回路21に対して、直流電流電源22と電流検出回路23が直列接続された直列回路を並列接続し、電流検出回路23から二次電池11に向かう配線の途中に充電スイッチ24が接続されている。また、充電器13には、CPUが内蔵された専用のコントローラ(以下、「充電器用コントローラ」という。)25が設けられている。
【0022】
充電器用コントローラ25は、二次電池電圧検出回路21、直流電流電源22、電流検出回路23、及び充電スイッチ24に接続されている。そして、充電器用コントローラ25は、各種の情報信号を取り込み、充電スイッチ24を開閉して二次電池11への通電を制御すると共に、情報信号に基づいて直流電流電源22の電流値を設定する。ここで各種の情報信号とは、二次電池電圧検出回路21から得られる二次電池11の電圧、電流検出回路23から得られる直流電流電源22の電流値、電池管理装置用コントローラ32から得られるセルC…の両端電圧に関する情報である。
【0023】
電池管理装置14は、各セルCに対して容量調整回路31を並列接続し、容量調整回路31に対してこの回路の通電を制御する電池管理装置用コントローラ32を接続してある。容量調整回路31は、放電抵抗33と放電スイッチ34を直列接続したバイパス回路である。電池管理装置用コントローラ32は、セルCの両端電圧を検出すると共に、放電スイッチ34のON・OFFを制御する。
【0024】
図3のフローチャートには、上述した充電装置12が二次電池11を充電する標準的な充電方法が示されている。以下、この充電方法を説明する。
まず、充電器用コントローラ25が充電スイッチ24を閉じて定充電工程S1を最初に行う。定充電工程S1では、徐々に充電電流を増やしていきながら予め定められた所定の定電流を流す。続いて、容量調整工程S2が行われる。
【0025】
容量調整工程S2は、各セルCの両端電圧を電池管理装置用コントローラ32で検出する。満充電電圧V1未満のセルCについては、そのまま定電流での充電を継続する。そして、例えば特定のセルCが満充電電圧V1以上に該当するに至ると、該当セルC専用の放電スイッチ34を閉じて、放電抵抗33に電流を導き、該当セルCへの電流の減少に伴って該当セルCの充電電圧が低下する。充電電圧が低下しても満充電電圧V1以上の場合にはそのままの状態を維持し、満充電電圧V1未満に落ちると、放電スイッチ34を開いて放電抵抗33への通電を停止し、再度、該当セルCを定充電で充電する。なお、定充電工程S1の有無に関わらず、容量調整工程S2が常時行われているのであるが、通常、定充電工程S1が行われない限り、容量調整工程S2は行われないので、図3のフローチャートでは、定充電工程S1の後に容量調整工程S2を記載してある。また、容量調整工程S2とは関係なく、定充電工程S1の後には、多段充電工程S3が行われる。
【0026】
多段充電工程S3では、電池管理装置用コントローラ32がセルCの両端電圧を充電器用コントローラ25に対して出力し、いずれかのセルCが過充電限界電圧V2以上をA秒(例えば2秒)継続することを確認すると、充電器用コントローラ25から直流電流電源22に指令を送って、定電流の充電電流を設定分ΔIだけ下げる。充電電流を下げてもセルCが過充電限界電圧V2以上をB秒(>A例えば8秒)継続することを確認すると、充電器用コントローラ25が充電スイッチ24を開いて充電を強制停止する。過充電限界電圧V2がB秒継続しない場合には、充電器用コントローラ25が充電電流を検出して、停止電流(初期設定された定電流よりもかなり小さい)未満にまで落ち込んだか否かを判定する。停止電流未満に落ち込んでいない場合には再度、セルCが過充電限界電圧V2以上をA秒(例えば2秒)継続することを確認するステップに戻る。次にいずれかのセルCが過充電限界電圧V2以上をA秒継続することを確認すると、同様のループ処理が行われる。このループ処理を繰り返すと図4に示すように、電圧波形がギザギザの形状となりながら、セルCが充電され、このとき、充電電流の波形は、時間経過に伴って段階的に下がる形状となる。そして、このループ処理を繰り返しているうちに、充電電流が停止電流未満に落ち込んだ場合には二次電池11が十分に充電されたものとして、充電スイッチ24を開いて充電を停止する。以上で、二次電池11の充電が終了する。
【0027】
充電をするための各種の判断や指令は、上述した標準的な充電装置12では、充電器用コントローラ25と電池管理装置用コントローラ32が協同して行っていたが、図1に示す電気自動車の充電装置12では、充電器用コントローラ25と電池管理装置用コントローラ32とビークルコントローラ35(以下「VC」と言う。)が協同して行う。従って、一般的な充電装置12における充電器用コントローラ25と電池管理装置用コントローラ32の役割を、電気自動車の充電装置12における充電器用コントローラ25と電池管理装置用コントローラ32とVC35とが役割り分担して行う。また、図1に示す電気自動車では、充電装置12は、充電器13と電池管理装置14とVC35を主として備えている。なお、図1の例では、充電スイッチ24が充電器13ではなく、二次電池11と充電器13を繋ぐ線の途中にある。
【0028】
電気自動車の電池管理装置用コントローラ32は、セル電圧だけでなく、二次電池11の電圧、充電電流、放電電流、電池表面温度を監視し、放電スイッチ34に放電の開始や停止、VC35に充電及び走行用放電の開始や停止、充電電流及び走行用放電電流等の指令を出力する。
【0029】
VC35は、電池管理装置用コントローラ32からの指令を受けて、充電器用コントローラ25に充電の開始や停止、充電電流の指令を出力する。また、VC35は、電気自動車の運転制御を行うもので、例えば走行用モータMを適切に駆動させるために、二次電池11から走行用モータMへの通電を制御する走行用放電スイッチ36をON・OFFすると共に、インバータ16に対して指令を出力し、それによって、電気自動車を走行させる。その結果、インバータ16及び走行用モータMから熱が発生するので、これらを冷却する駆動系冷却回路15が設けられている。
【0030】
駆動系冷却回路15は、走行用モータMとインバータ16の双方を冷却する循環路41を備えている。より詳しく言えば、この循環路41は、走行用モータMとインバータ16の双方の周囲にそれぞれ形成されたウォータジャケット(図ではM、INVとして簡略表示している。)と、熱交換器としての放熱器42と、ポンプPと、これら繋いで熱媒体を循環させるパイプ43とから構成されている。図示の例では、ポンプPから送られる熱媒体としての冷却水が、インバータ16、走行用モータM、放熱器42を順番に通過するように、配置されている。また、放熱器42の近傍にはファン44が設置され、室内に温風を供給するように構成してある。
【0031】
前記した駆動系冷却回路15と電池管理装置14を主として構成されたものが本発明の暖房装置であり、その第一実施形態が図1に示されている。暖房装置の第一実施形態は、駆動系冷却回路15を従来までの暖房装置に設けられていた温水回路として兼用し、それによって走行用モータM及びインバータ16を暖房用の加熱器として兼用するものである。また、暖房装置の第一実施形態は、電池管理装置14の放電抵抗33を加熱器として兼用し、駆動系冷却回路15における循環路41の一部に、放電抵抗33を配置したものである。より詳しく言えば、走行用モータM及びインバータ16の双方に対する二次側であって、放熱器42よりも一次側のパイプ43に放電抵抗(電気ヒータ、より詳しく言えば抵抗発熱体)33を熱交換可能に配置してある。熱交換する具体的な配置としては、例えば放電抵抗33をパイプ43の周囲に配置する。
【0032】
この暖房装置は、前述した標準的な充電方法を利用して、二次電池11の充電中に駆動系冷却回路15の熱媒体を予熱する。なお、標準的な充電装置12と電気自動車の充電装置12とでは、コントローラの数が異なっている。従って、前記したように、標準的な充電装置12における充電器用コントローラ25と電池管理装置用コントローラ32の役割を、電気自動車の充電装置12における充電器用コントローラ25と電池管理装置用コントローラ32とVC35で役割り分担して行う。その結果、電圧波形が図4に示すようなギザギザの形状でセルCが充電されることになり、ここで放電した熱によって駆動系冷却回路15の熱媒体が加熱される。また、この暖房装置では、電気自動車の走行によって、インバータ16や走行用モータMから熱が発生すると、その熱が駆動系冷却回路15の熱媒体に回収される。暖房する場合には、ファン44を回すことによって放熱器42で熱を奪い、その上で、温風を車内に供給する。暖房をしない場合には、インバータ16や走行用モータMの運転に支障のないように、放熱器42で単に放熱するか、ファン44を回して、駆動系冷却回路15の熱媒体の温度を所定の温度範囲内に保つ。
【0033】
図5は、本発明の暖房装置の第二実施形態が示されている。暖房装置の第二実施形態は、放電抵抗33が駆動系冷却回路15から離れて設けてあること、駆動系冷却回路15を予熱する専用の予熱装置48を備えたことが、第一の実施形態と大きく相違する。予熱装置48は、加熱器としての専用の電気ヒータ45とヒータスイッチ46とが直列接続された直列回路を、二次電池11に対して並列接続し、ヒータスイッチ46をVC35からの指令によってON・OFF制御するものである。図示の例では、電気ヒータ45とヒータスイッチ46が直列接続された直列回路が3つ存在し、これらが二次電池11に対して並列接続されている。そして、図では、3つの電気ヒータ45を区別するために上から順に、第1のヒータ45A、第2のヒータ45B、第3のヒータ45Cと記載してある。同様に、ヒータスイッチ46も上から順に、第1のヒータSW46A、第2のヒータSW46B、第3のヒータSW46Cと記載してある。これら第1〜3のヒータSW46A〜CをON・OFF制御するのが、ヒータ用コントローラとして機能するVC35である。また、駆動系冷却回路15の熱媒体である冷却水の温度を検出する温度センサ47が設けられており、この温度センサ47が温度をVC35に出力する。
【0034】
図6のフローチャートには、この暖房装置は、二次電池11の充電中に駆動系冷却回路15の熱媒体を予熱する暖房方法が示されている。以下、この暖房方法を説明する。
【0035】
まず、予熱装置48のヒータスイッチ46を全てOFFにした状態に保っておく。第1のステップS51では、温度センサ47からの出力によって、VC35が冷却水の温度を把握し、冷却水の温度が設定温度よりも高いか否かを判定する。Yesの場合には、前述した第一実施形態と同様に、標準的な充電方法(定充電工程S1、容量調整工程S2、多段充電工程S3)が行われる。また、Noの場合には、定充電工程S1、容量調整工程S2が行われる。また、定充電工程S1、容量調整工程S2が行われている間においては、第2のステップS52も平行して行われる。
【0036】
第2のステップS52では、VC35から充電器用コントローラ25に出力されている現時点の充電電流の指令値IBMSと、充電器13が現時点で供給している充電電流の現実値Ichrとが一致しているか否かを、VC35が判定する。このために、充電器用コントローラ25から充電電流の現実値IchrがVC35に出力される。
ところで、定充電工程S1では、徐々に充電電流が増加しながら初期設定された定電流に達するため、この増加中においては充電電流の指令値IBMSは、充電電流の現実値Ichrよりも大きくなる。従って、充電電流の増加中においては、この第2のステップS52の判定処理は、Noとなり、この判定処理が繰り返し行われる。一方、充電電流が定電流に達した場合には、充電電流の指令値IBMSと、充電電流の現実値Ichrとが一致するので、第2のステップS52での判定処理がYesとなり、第3のステップS53に移行する。
【0037】
第3のステップS53では、第1のヒータ45Aを通電させてもよいか否かの判定処理が行われる。より具体的に言えば、充電器13の許容電流値Icapが、充電電流の指令値IBMSに第1のヒータ45Aに必要な電流値IheAを加えた値よりも大きいか否かが、VC35によって判定される。ところで、第1のヒータSW46AをONにして二次電池11と第1のヒータ45Aを並列接続すると、充電器13からの充電電流が二次電池11だけでなく、第1のヒータ45Aにも流れる。従って、並列接続する前と後で、充電器13から充電電流を同じだけ流していたのでは、二次電池11の充電電流が急激に減少してしまう。並列接続の前後で、二次電池11の充電電流を維持するには、並列接続する際には充電器13から流す充電電流を、第1のヒータ45Aに流れる分だけ増加すればよい。つまり、第1のヒータ45Aの抵抗値と、二次電池11の抵抗値と、現時点で流れている充電電流IBMSを考慮して、増加分の充電電流ΔIを決定すればよい。この増加分の充電電流ΔIが、第1のヒータ45Aに必要な電流値IheAとなる。前記したように、この第3のステップS53が行われている初期段階では、定充電工程S1が別処理で行われている。通常、定充電工程S1では、充電器13から供給される充電電流を、充電器13の許容電流値と同等に設定してあるので、充電器13の許容電流値Icap<充電電流の指令値IBMS+第1のヒータ45Aに必要な電流値IheAの関係となり、第3のステップS53の判定処理は、初期段階では、Noになる。Noの場合には、この判定処理が繰り返し行われる。判定処理が繰り返し行われるうちに、定充電工程S1から多段充電工程S3に移行すると、充電電流が段階的に減少するので、そのうちにIcap>IBMS+IheAの関係となり、第3のステップS53での判定処理がYesになる。Yesとなると、第4のステップS54に移行する。
【0038】
第4のステップS54では、VC35からの指令によって、第1のヒータSW46AをONにして第1のヒータ45Aに通電し、充電器13の充電電流を第1のヒータ45Aに必要な電流値IheAの分だけ増加させてやる。つまり、IBMS+IheA→IBMSとなる。これによって、第1のヒータ45Aに通電する前後において、二次電池11に流れる充電電流が変わらないものとなる。従って、Icap>IBMS+IheAの関係が満たされるということは、充電器13から供給する充電電流を増加させた上で第1のヒータ45Aを接続した場合に二次電池11に流れる予定の充電電流と、二次電池11に流れている現時点の充電電流IBMSとが一致することになる。そして、第4のステップS54の後には、充電器13については、多段充電工程S3が同様に行われる。より詳しく言えば、セルCが過充電限界電圧V2以上をB秒継続するか否かの判定処理に移行し、以後元通りの多段充電工程S3が行われる。また、第4のステップS54の後には、第5のステップS55が行われる。
【0039】
第5のステップS55では、第2のヒータ45Bを通電させてもよいか否かの判定処理が行われる。より具体的に言えば、充電器13の許容電流値Icapが、充電電流の指令値IBMSに第2のヒータ45Bに必要な電流値IheBを加えた値よりも大きいか否かが、VC35によって判定される。そして、この第5のステップS55が行われている初期段階では、充電器13から供給されている電流は、充電電流の指令値IBMSであって、二次電池11の多段充電工程S3に必要な充電電流に、第1のヒータ45Aに必要な電流を加えた値である。それ故、充電器13から供給されている電流IBMSは、充電器13の許容電流値Icapに近い値である。従って、充電器13の許容電流値Icap<充電電流の指令値IBMS+第2のヒータ45Bに必要な電流値IheBの関係となり、判定処理はNoになる。Noの場合には、この判定処理が繰り返し行われる。判定処理が繰り返し行われるうちに、多段充電工程S3が進行し、充電電流が段階的に減少するので、そのうちにIcap>IBMS+IheBの関係となり、第5のステップS55での判定処理がYesになる。Yesとなると、第6のステップS56に移行する。
【0040】
第6のステップS56では、VC35からの指令によって、第2のヒータSW46BをONにして第2のヒータ45Bに通電し、充電器13の充電電流を第2のヒータ45Bに必要な電流値IheBの分だけ増加させてやる。つまり、IBMS+IheB→IBMSとなる。そして、第6のステップS56の後には、充電器13については、多段充電工程S3が同様に行われる。また、第6のステップS56の後には、第7のステップS57が行われる。
【0041】
第7のステップS57では、第3のヒータ45Cを通電させてもよいか否かの判定処理が行われる。この具体的な処理は、第3のステップS53及び第5のステップS55と同様に行われる。つまり、Icap>IBMS+IheCとなるか否かが判定され、最初はIcap<IBMS+IheCとなり、判定処理がNoとなる。Noの場合には、この判定処理が繰り返し行われる。判定処理が繰り返し行われるうちに、多段充電工程S3が進行し、充電電流が段階的に減少するので、そのうちにIcap>IBMS+IheCとなり、第7のステップS57での判定処理がYesになる。Yesとなると、第8のステップS58に移行する。
【0042】
第8のステップS58では、VC35からの指令によって、第3のヒータSW46CをONにして第3のヒータ45Cに通電し、充電器13の充電電流を第3のヒータ45Cに必要な電流値の分だけ増加させてやる。つまり、IBMS+IheC→IBMSとなる。そして、第8のステップS58の後には、充電器13について、多段充電工程S3が同様に行われる。
【0043】
多段充電工程S3が進行していくと、二次電池11に対する充電電流が段階的に下がっていき、その終わりには、二次電池11に対する充電電流≦停止電流の関係が満たされるようになる。このとき二次電池11は十分に充電されており、二次電池11の充電電流が停止電流に達したことを、電池管理装置14内の図示しない電流検出回路からの検出値により、電池管理装置用コントローラ32は把握する。そして、電池管理装置用コントローラ32は、二次電池に11対する充電を終了させるために、VC35に対して充電電流の指令値IBMSを0にする指令を出力する。すると、VC35は、IBMS=0の指令値を充電器用コントローラ25に対して出力し、併せて、充電スイッチ24をOFFに、全てのヒータスイッチ46をOFFにする指令を出力する。IBMS=0の指令値が入力されると、充電器用コントローラ25は充電電流を0にする。以上の手順で予熱が行われる。なお、図6のフローチャートには示していないが、第2のステップS52以降の処理の最中に、冷却水の温度が設定温度を上回った場合には、二次電池11に対する充電処理のみが行われ、予熱装置48のヒータスイッチ46を全てOFFにする。
【0044】
図7には、上述した暖房方法を利用した場合の、充電器13から供給される電流の時間推移が示されている。また、図8には、二次電池11に流れる充電電流の推移が示されており、併せて予熱に使用する電流が示されている。これら図により、充電器13から供給される電流は、時間の推移に伴って、段階的に上下動するにも関わらず、第1〜第3のヒータ45A〜45Cによって駆動系冷却回路15を予熱しながら、二次電池11に対しては、定充電工程S1、多段充電工程S3が標準的な充電方法と同じように行われていることが分かる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、予熱装置48の電気ヒータ45の個数は限定されない。また、暖房装置は、第1の実施形態と第2の実施形態を合わせたものであっても良い。
【符号の説明】
【0046】
11二次電池
12充電装置
13充電器
14電池管理装置
15駆動系冷却回路
16インバータ
21二次電池電圧検出回路
22直流電流電源
23電流検出回路
24充電スイッチ
25充電器用コントローラ
31容量調整回路
32電池管理装置用コントローラ
33放電抵抗
34放電スイッチ
35VC
36走行用放電スイッチ
41循環路
42放熱器
43パイプ
44ファン
45電気ヒータ
45A第1のヒータ
45B第2のヒータ
45C第3のヒータ
46ヒータスイッチ
46A第1のヒータSW
46B第2のヒータSW
46C第3のヒータSW
47温度センサ
48予熱装置
【0047】
Cセル
Uセルユニット
Pポンプ
M走行用モータ
【0048】
S1定充電工程
S2容量調整工程
S3多段充電工程
S51第1のステップ
S52第2のステップ
S53第3のステップ
S54第4のステップ
S55第5のステップ
S56第6のステップ
S57第7のステップ
S58第8のステップ
【0049】
81暖房装置
82パイプ
83電気ヒータ
84温水回路
85二次電池
91駆動系冷却回路
92走行用モータ
93インバータ
94放熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、二次電池を駆動源とする走行用モータと、走行用モータを制御するインバータと、走行用モータ及びインバータを冷却するための駆動系冷却回路と、温水回路からなる暖房装置を備える電気自動車であって、
温水回路は、温水が流れる循環路に加熱器から発生する熱を回収し、暖房時に回収した熱で空気を暖めて温風を車内に供給する電気自動車の暖房方法において、
駆動系冷却回路を温水回路に、並びに走行用モータ及びインバータを加熱器に兼用することによって、走行中には、走行用モータ及びインバータから発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することを特徴とする電気自動自動車の暖房方法。
【請求項2】
充電器から充電電流を供給し、二次電池を構成する複数の各セルの電圧を均一にするために、充電電流を各セルに流しながら、各セルに対して並列接続可能な放電抵抗にも流すか否かを電池管理装置によって制御し、
放電抵抗を加熱器として兼用することによって、充電中には、放電抵抗から発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の暖房方法。
【請求項3】
二次電池に対して並列接続可能な加熱器としての電気ヒータを切り離した状態を保ちつつ、充電器から二次電池に対して充電電流を段階的に下げながら供給し、
その供給中に以下の(一)の条件が満たされた場合には、二次電池と電気ヒータを並列接続して通電すると共に充電電流を増加させることによって、充電中に、電気ヒータから発生する熱を駆動系冷却回路の循環路に回収することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気自動車の暖房方法。
(一)充電器から供給する充電電流を増加させた上で電気ヒータを接続した場合に二次電池に流れる予定の充電電流と、二次電池に流れている現時点の充電電流とが一致すること。
【請求項4】
走行用モータ及び走行用モータを制御するインバータを冷却するための駆動系冷却回路を備えると共に、温水回路からなる暖房装置を備える電気自動車であって、
温水回路は、温水が流れる循環路に加熱器から発生する熱を回収し、暖房時に回収した熱で空気を暖めて温風を車内に供給する電気自動車の暖房装置において、
駆動系冷却回路を温水回路に、並びに走行用モータ及びインバータを加熱器に兼用することを特徴とする電気自動車の暖房装置。
【請求項5】
複数のセルから構成される二次電池に充電電流を供給する充電器と、各セルの電圧を均一にするために充電電流を各セルに流しながらも各セルに対して並列接続可能な放電抵抗にも流すか否かを制御する電池管理装置とを備え、
放電抵抗を加熱器として兼用することを特徴とする請求項4に記載の電気自動車の暖房装置。
【請求項6】
加熱器としての電気ヒータと、二次電池に対して電気ヒータを並列接続可能なヒータスイッチとを備える予熱装置を設けると共に、ヒータスイッチのON・OFFを制御するヒータ用コントローラを備え、
ヒータ用コントローラのヒータスイッチのOFF制御によって電気ヒータを切り離した状態を保ちつつ、充電器から二次電池に対して充電電流を段階的に下げながら供給し、
その供給中に以下の(一)の条件が満たされた場合には、ヒータ用コントローラがヒータスイッチのON制御によって二次電池と電気ヒータを通電すると共に充電器が充電電流を増加させることによって、充電中に、電気ヒータから発生する熱を温水回路の循環路に回収することを特徴とする請求項4又は5に記載の電気自動車の暖房装置。
(一)充電器から供給する充電電流を増加させた上で電気ヒータを接続した場合に二次電池に流れる予定の充電電流と、二次電池に流れている現時点の充電電流とが一致すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183958(P2012−183958A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49448(P2011−49448)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000242644)北陸電力株式会社 (112)
【Fターム(参考)】