説明

電気自動車充電スケジューリングシステム

【課題】多くの制約を満足するように、待ち状態にある電気自動車の充電をスケジューリングする。
【解決手段】充電予測用データベースは、充電のために到来すると予測される電気自動車の情報を保持する。プロフィール・充電情報データベースは、到来した充電待ちの電気自動車の情報を保持する。電力データベースは、電力網および定置型電池の少なくとも一方を含む電力源に関する情報を保持する。電力計算手段は、前記電力源から利用可能なエネルギを前記電力データベースに基づき計算する。スケジューリング手段は、前記予測される電気自動車を考慮して、前記充電待ちの電気自動車へ配分可能な電力を計算し、計算した電力量を、前記充電待ちの電気自動車へ、それぞれの要求電力量に応じて、配分するように充電スケジュールを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、プラグイン電気自動車(PEV:Plug-in Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、電池電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)の充電スケジューリングシステムに関し、たとえば、充電スタンド、オフィスビル、工場、スーパーマーケット、コインパーキング、コンビニエンスストアなどでのこれらの自動車の充電スケジューリングに関する。
【背景技術】
【0002】
将来、EVは、多くの国で世界に渡って大規模に採用されると見込まれる。これらの自動車は、環境の影響が少なく、維持費および走行費が安いからである。これらの自動車は、通常充電(緩慢充電)モードまたは急速充電モードで、充電される。充電時間と電力要求の間には、充電の間、トレードオフの関係がある。通常充電では、電力要求は急速充電よりも小さいが、充電時間は数時間におよぶ。一方、急速充電は、数分でEV電池を急速に充電するが、大量の電力を必要とする。EVの充電に対する電力要求をオフセットするために、多くの充電スタンド、サービスステーション、オフィスビルの充電スタンド、工場、スーパーマーケット、集合住宅ビル、ホテル、コインパーキングは、高容量定置型電池を持つようになるだろう。パワーグリッドからの電力供給および電気価格は1日の時間に応じて変動する可能性がある。以降、サービスステーション、オフィスビル、工場、スーパーマーケット、集合住宅ビル、ホテル、コンビニエンスストアおよびコインパーキングにおける充電設備は、充電スタンドと称する。
【0003】
パワーグリッドからの利用可能な電力に制限があることや、電池の充放電レート、異なる出発時刻のため、充電スタンドにおいて待ち状態のEV(キューのEV)は、同じレートで充電できない。さらに、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、あるいはコインパーキングセンターのような充電スタンドでのEVの到着が事実上、確率論的になるため、フェアユースポリシー(fair use policy)が適用されるならば、定置型電池からのすべての電力を、キューのEVを充電するのに用いることはできない。この場合、EVによる将来の電力要求の予測が必要とされる。次の時間ゾーンにおけるEVによる予測電力要求に応じて、またEVの出発時刻に応じて、現在到着したEVの充電レートを調整する必要がある。したがって、充電スタンドでのEVの充電の動的スケジューリングが将来、必要とされるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7679336号明細書
【特許文献2】特開2010-110044号公報
【特許文献3】特開2010-22099号公報
【特許文献4】特開2008-67418号公報
【特許文献5】米国公開2008-281663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェアユースポリシーにおいて、次の時間ゾーンでの可能性のあるEVを考慮して、充電スタンドにおける待ち状態の多くのEVに提供可能な充電電力を決定することが望まれる。また、各時刻におけるグリッドからの利用可能な電力や、定置型電池からの電力、電池の最大充放電レート、待ち状態にあるEVの出発時刻(使用時刻)といった多くの制約を満足するように、待ち状態にあるEVの充電をスケジューリングすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての電気自動車充電スケジューリングシステムは、充電予測用データベースと、プロフィール・充電情報データベースと、電力データベースと、電力計算手段と、スケジューリング手段とを備える。
【0007】
前記充電予測用データベースは、充電のために到来すると予測される電気自動車の情報を保持する。
【0008】
前記プロフィール・充電情報データベースは、到来した充電待ちの電気自動車の情報を保持する。
【0009】
前記電力データベースは、電力網および定置型電池の少なくとも一方を含む電力源に関する情報を保持する。
【0010】
前記電力計算手段は、前記電力源から利用可能なエネルギを前記電力データベースに基づき計算する。
【0011】
前記スケジューリング手段は、前記充電待ちの電気自動車への充電スケジュールを行う。
【0012】
前記スケジューリング手段は、前記電力源から利用可能な電力を、前記予測される電気自動車と前記充電待ちの電気自動車との合計数で除算することにより、平均利用可能エネルギを計算する。
【0013】
前記スケジューリング手段は、前記プロフィール・充電情報データベースに基づき、前記充電待ちの電気自動車による要求充電エネルギを計算する。
【0014】
前記スケジューリング手段は、前記充電待ちの電気自動車のうち、前記平均利用可能エネルギ以下の要求充電エネルギを有する第1電気自動車については、前記要求充電エネルギを、前記第1電気自動車の充電エネルギとして決定するとともに、前記第1電気自動車について、前記平均利用可能エネルギと前記要求充電エネルギとの差分を計算する。
【0015】
前記スケジューリング手段は、前記平均利用可能エネルギより大きい要求充電エネルギを有する第2電気自動車について、前記平均利用可能エネルギと前記要求充電エネルギとの差分の大きさに比例して、前記第1電気自動車について計算した前記差分の合計を分割し、前記第2電気自動車への充電エネルギを、前記第2電気自動車へ分割されたエネルギと、前記平均利用可能エネルギとの合計エネルギに決定する。
【0016】
前記スケジューリング手段は、前記第1電気自動車および第2電気自動車に対して、それぞれに決定された充電エネルギを供給するようにスケジューリングする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】EV充電スケジューリングシステムのブロック図である。
【図2】異なった時刻におけるEVの予測数の例を示す図である。
【図3】待ち状態にあるEVに提供可能な充電電力の計算例を示す図である。
【図4】初期充電電流の計算例を示す図である。
【図5】待ち状態にあるEV間で、利用可能な電流を比例的に分配する例を示す図である。
【図6】EVが一定レートで充電されるとき充電電流の更新例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る処理の他の例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、充電スタンドにおける電気自動車(EV:Electric Vehicle)の動的充電のための全体システムを示す。
【0020】
このシステムは、電力データ1、定置型電池情報2、EV充電予測用データ3、EVプロフィール・充電情報4、待ち状態のEV(キューのEV)に提供可能な充電電力の計算モジュール5、キューのEVへ利用可能な電力を分配するためのスケジューリングを行う充電スケジューリングモジュール6、電池充電パラメータ計算モジュール7を備える。電池充電パラメータには、たとえばSOCがある。
【0021】
EV充電予測用データ3は、EVの予測される到着時刻と、それらのプロフィールに関する情報を含む。このデータを得るための例をいくつか示す。
【0022】
オフィルビルあるいは工場の充電スタンドの場合、EV充電予測データが、従業員が使用するEVに関する登録情報に沿って、オフィスビルまたは工場における従業員作業時間データから得ることができる。EVの到着時刻および出発時刻は、従業員の勤務表から予測でき、EVプロフィールは、EVの登録の間、作業場情報システムで登録される。到着時刻、出発時刻および充電量の各々の平均は、予測到着時刻、予測出発時刻および予測充電量と取ることができる。たとえば、従業員の到着時刻が、8:16、8:25、8:19、出発時刻が、17:12、17:15、17:09、充電量が9kWh,11kWh, and 10kWhであるとすると、予測到着時刻、予測出発時刻および充電量は、対応する値の平均を取ることによって、8:20、17:12、10kWhである。
【0023】
ホテルの充電スタンドの場合、EV充電予測用データは、ホテル予約データから得ることができる。ホテルの予約の間、EVデータを入力することによって、EV充電を予約でき、EVの到着時刻とプロフィールが、予約データから予測できる。
【0024】
タクシー充電スタンドに対するデータは、タクシー制御センターのタクシー走行データから得ることができる。乗客がタクシーに乗ったとき、出発地と目的地が無線通信を用いて、タクシー制御センターに報告される。これらのデータが用いられて、タクシーが最も近い充電スタンドに行くかどうかを決定し、残存電池電力を計算し、EVプロフィールを得る。
【0025】
スーパーマーケットやコインパーキングにおける充電スタンドの場合、EVの到着が、実際確率論的であり、以前の履歴充電データが、EVの到着とプロフィールを予測するのに用いることができる。データが利用できない場合、ポアソン プロセスといった確率モデルが、EVの到着を予測するのに用いられてもよい。
【0026】
図2に、EV充電予測用データの一例を示す。種々の時刻における種々のタイプのEVの時間的な到着が、テーブルに示される。EVのあるタイプの到着時刻は、各時刻に均等に分割されてもよい。たとえば4台のEVがAM10時に来ると期待されるならば、EVは、AM10:00、AM10:15、AM10:30、AM10:45に到着すると期待される。
【0027】
EVプロフィール・充電情報データベース4は、充電を待機しているEVおよび充電中のEVに関する情報を含む。このデータベース4は、EV Id、EV電池容量、最大充電電圧、最大充電電流、充電効率、最大充電・放電サイクル数、充電・放電サイクル数の履歴、最小SOC(劣化防止のため)、目標SOCまたはエネルギ消費効率(kWh/km)、期待走行距離(km)、および出発時刻(出発時刻/運転スタート時刻)、充電情報を含む。この充電情報には、EVSE (Electric Vehicle Supply Equipment)コネクタId、充電開始時刻、充電終了時刻、充電電流・電圧、現在SOC、または充電エネルギ(kWh)、目標SOCまでの残りの充電時間が含まれる。到着時刻および出発時刻間の期間は、充電可能期間に相当する。
【0028】
電力データベース1は、時間ベースまたは日ベースで、パワーグリッドおよび/またはDER(Distributed Energy Resource)からの利用可能な電力に関する情報を含む。電気の動的価格に関する情報をさらに含んでも良い。
【0029】
定置型電池情報データベース2は、電池容量、最大充電電流、公称放電電圧、最大放電電流、最小SOC、最大充電・放電サイクル数の履歴、といった定置型電池情報を含む、
スケジューリングモジュール(スケジューリング手段)6は、EV充電予測用データ3に基づき、次の時間ゾーンに到着するEVの台数を計算する。電力計算モジュール5は、電力データ1および定置型電池情報2に基づき、待ち状態にあるEVに提供可能な充電エネルギー(kWh)を、フェアユースポリシーを用いて計算する。パラメータ計算部7は、電池のSOCなど、パラメータ計算を行う。スケジューリングモジュール6は、待ち状態にあるEVの充電のためのスケジューリングを、利用可能な電力を各時刻に分割することによって生成する。フェアユースポリシーを用いた、待ち状態にあるEVに提供される充電エネルギの計算のためのアルゴリズムを、以下に示す。
【0030】
ステップ1: 次の時間ゾーンにおけるEVの予測台数EVpred(t+1,t+2,…)を得る。
ステップ2: 充電スタンドにおける待ち状態にあるEVの台数EVqueue(t)を得る。
ステップ3: EVの合計数EV(t,t+1,..)= EVpred(t+1,t+2,…)+ EVqueue(t)を得る。
ステップ4: グリッドから利用可能な合計電力(エネルギ)を計算する。
【数1】

ステップ5: 定置型電池電力Psbat(t)を得る。
ステップ6: 充電中のEVのエネルギ要求Pincharge(t,..)を計算する。つまり、待ち状態にあるEVより前から充電しているEVについて、現時点でのエネルギ要求を計算する。
ステップ7: 各EV(待ち状態EVと予測EV)に対して利用可能な充電エネルギの平均Ptavail(t)を計算する。
ステップ8: キューのEVのうち、要求充電エネルギが利用可能平均充電エネルギPtavail(t)より小さいEV(第1電気自動車)を見つけ、余りのエネルギ(差分のエネルギ)を、合計してPtdist(t)を得る。
ステップ 9: キューのEVのうち、要求充電エネルギが利用可能平均充電エネルギPtavail(t)より大きいEV(第2電気自動車)を見つけ、Ptdist(t)をこれらのEV(第2電気自動車)に、比例的に分割する。
【0031】
各EV(待ち状態EVと予測EV)に対する利用可能平均充電エネルギは、以下のように計算される。
【数2】

【0032】
次に、高い充電エネルギ要求のEV間への割り当てのために、利用可能な充電エネルギは以下のように計算される。
【数3】

PtEVireqは、EV iによる要求充電エネルギである。
【0033】
最後に、利用可能エネルギをEVに比例的に分割して、待ち状態にあるEVに提供可能な充電エネルギを、計算する。
【数4】

【0034】
図3に、充電スタンドで待ち状態にあるEVに提供可能な充電電力の計算例を示す。
【0035】
待ち状態にある各EV(図中の現時点のEV)に対して、一定の公称放電電圧(Vi)を想定して、充電すべき電池容量(充電すべき電荷量)、および充電すべきSOC(充電SOC)が、以下のように計算される。Qi は、EVの電池容量である。
【数5】

【0036】
充電SOCに、現在のSOCを加算したものが、目標SOCとなる。上記の式(4)から理解されるように、目標SOCは、EVが要求するSOCに一致する場合もあるし、一致しない(満たない)場合もある。
【0037】
次に、充電期間中の各時刻での利用可能な電力が計算される。この目的のために、予測EVに対する充電レート(SOCでのレート)が仮定される。EVは、First Come First Serve (FCFS) ポリシーを用いて、充電される。FCFSポリシーは、先に到着したEVから優先的に充電を行うことを意味する。
【0038】
その充電レートを用いて、予測EVに対する充電時間が計算される。充電電力は、電圧と電流とを乗算することによって、すなわちP=V×Iによって、計算される。
【0039】
予測EV電力要求が以下のように計算される。
【数6】

tは、時刻であり、Qi はEViの電池の容量であり、CRi(t)は充電レート(SOCでのレート)であり、Vi (t) は、充電電圧であり、nは充電スタンドにおけるEVの台数(待ち状態のものと、将来に到着すると予測されるもの)である。δi(t)は、EViが充電中ならば1,そうでないならば(たとえば、まだ予測到着時刻に達していないEVの場合など)、0である。
【0040】
予測電力要求が与えられると、定置型電池からの予測エネルギ要求(すなわち、定置型電池から必要なエネルギ)は以下のように計算される。
【数7】

ここでPgrid (i) は時刻iでグリッドから利用可能な電力であり、Tはスケジュールの時間期間(たとえば1日(1440分))である。
次に、時刻tでグリッドおよび定置型電池から利用可能な合計電力が以下のように計算される。
【数8】

ここで PSbat(t) は、定置型電池から利用可能な電力である。
【0041】
利用可能な電力が与えられると、待ち状態にあるEVの充電レートが決定される。ここで、利用可能な電力をEVへ分割することによって充電レートを計算する例を3つ示す。
【0042】
[第1の例]
第1の例では、各時刻で利用可能な電力が、待ち状態にあるEVに比例的に分割される。したがって、EVの充電レートは、時間とともに変化する。
【0043】
まず、EVの出発時刻がEVプロフィールから検索される。次に、各EVの利用可能充電時間が計算される。利用可能充電時間は、出発時刻と現在時刻との差と見積もることができる。期待される出発時刻内に、EVの充電を目標SOCまで完了するために、各時刻における最小平均充電電力が計算される。各時刻における最小平均充電電流は、たとえば次のように計算されることができる。SOCi(t)は現在のSOCである。SOCifinalは目標SOCである。
【数9】

Qiは、EViの電池容量であり、Tidiffは充電の利用可能時間(出発時刻と現在時刻との差)であり、round関数は、最も近い整数へ値を丸める(四捨五入)。この計算例が図4に示される。期待充電容量Qe は (目標SOC-残存SOC) ×Q/100である。初期の充電レートは、次の式(10)ように計算される。SOCiinitは、電池の初期のSOCである。図4のテーブル中の「必要な容量」は、期待充電容量Qeである。当該テーブルの「充電レート」は、式(10)で計算される。当該テーブルの「充電電流」は、電池容量×充電レートにより計算される。図4に示される充電電流は、初期充電電流である。
【数10】

【0044】
次に、利用可能な電力に基づき、利用可能電流I(t)=Pavail(t)/V が、一定電圧充電を想定して、計算される。この利用可能電流は、ポリシーと優先の重みとにしたがって、待ち状態にあるEV間で分割される。優先の重みは、たとえば先に到着した方の重みが大きいとしてもよいし、別の基準を用いてもよい。利用可能電流を比例的に分割する例を、以下に示する。
【数11】

Iimax: EViに対して定格最大充電電流
Iiavg (t): 残りの時間で目標SOCまでにEViを充電するのに必要な平均充電電流
SOCi(t): EViの現在SOC
Q1, Q2, …,Qn: EVの電池容量
I(t)=Pavail(t)/V: 一定電圧を想定した、利用可能電流
Pavail(t): 利用可能電力
【0045】
Iimax(t)と、Iiprop(t)とのうち、値の小さい方がIi(t)として、決定される。上記(11)の計算例ではrounddown関数を用いた処理により、桁調整を行っている。Rounddown関数は、最も近い最も低い整数へ値を丸める。たとえば4.5を4へ変換する。
【0046】
いくつかのEV電池に対して、充電電流は降順、すなわちIi(t)>=Ii(t+1)であることが要求されてもよい。この場合、充電中のEVのIi(t)は減少され、新しく接続されたEVのそれが比例的に上昇される。
【0047】
図5に、EV間で利用可能な電力を分割する例を示す。AとCとDのEVの場合、許容される最大充電電流は125A 、200A、144Aであるため、これらの値が、比例計算により得られたより高い値に代わって、用いられる。
【0048】
[第2の例]
利用可能な電力をEVへ分割する第2の例は、一定充電レートでEVを充電することである。すなわち、EVの充電の間、電流は変化しないが、異なったEVは、異なったレートで充電され得る。ここで、目的は、すべての時刻で以下の条件を満足する充電電流Iiを、決定することである。ChargingFinishingTimeiは、EViの充電終了時刻、DepartureTimeiは、EViの出発時刻である。
【数12】

ここでVi は、EViの充電電圧である。またδi(t)は以下のように定義される。
【数13】

【0049】
まず、EVの出発時刻が、EVプロフィールから検索される。次に各EVに、たとえば最小平均充電電流といった充電電流が、割り当てられる。次に、各EVの充電時間が計算される。充電時間は、以下のように計算される。
【数14】

CTi: 充電時間
Ii: 充電電流
SOCiinit: EV電池の初期SOC
SOCifinal: 目標SOC
βi>0: 一定の充電/放電レートであり、定格容量、放電時間、放電電流に依存する。たとえば、リチウムイオン電池に対して、βi=1である。
【0050】
次に、各時刻での要求充電電力PEV(t)が以下のように計算される。CSi は充電開始時間である。
【数15】

【0051】
もし利用可能電力が、時刻で十分でないならば、低い優先度のEVの充電時間スロットが調整される。たとえば低い優先度のEVは、右へシフトされることができる。次に、充電スケジュールが実現可能か検査する。つまり、出発時刻までに目標とする充電が完了可能かを検査する。もし充電スケジュールが実現可能ならば、充電スケジュールおよび充電電流情報が、電池のSOCといった、計算された電池パラメータに沿って、EVプロフィール・充電情報データベースに書き込まれる。さもなければ、充電電流が更新される。充電電流の更新例は以下に示される。
【数16】

Ii(k)は、繰り返しkでの充電電流であり、Tiwithin(k) は、出発時刻の前の充電時間であり、Tiextra(k) は出発の後の充電時間である。図6に具体例を示す。EV Aのスケジュールされた出発時刻が10:30であるとする。もしEVが20Aで充電され、9:15に充電器に割り当てられ、期待される充電終了時刻は11:15であるならば、更新される電流は32A (=20+20*(11:15-10:30)/(10:30-9:15))になる。
【0052】
[第3の例]
充電電流を決定する第3の例を示す。グリッドからの電力が不十分なとき、定置型電池が、EVの充電のために余分な電力を供給できるとすると、充電レートの計算の一例は、充電エネルギを、充電スタンドでのEVに対する残りの時間長(すなわち出発時刻と現在時刻の差)によって分割することである。すなわち、充電電流は以下のように計算される。
【数17】

【0053】
この場合、任意の時刻における定置型電池から要求される電力は以下のようになる。
【数18】

【0054】
もし、EV電池からの要求電力が、定置型電池の最大レートより大きいならば、電池の充電時間スロットと充電レートが調整される。
図1の電池充電パラメータ計算(SOCなど計算)モジュール7は、EV電池および定置型電池の種々のパラメータを計算する。1つのパラメータは電池の現在SOCであり、別のパラメータは、残りの充電時間である。間隔tの間、一定の充電電流を想定すると、SOCと充電時間は以下のように計算される。
【数19】

tおよびt0 の単位は、たとえば秒であり、Iiは一定充電あるいは放電電流であり、 Qi は、EViの電池容量(Ampere-hour (Ah))である。
【0055】
目標SOC(目標充電容量)は、ユーザによって設定されることができ、EVのプロフィールから計算されることができる。EVプロフィールから目標SOCの計算例を示す。EV電池に対する目標SOCは、以下に示される。下記の運転距離Dは、たとえばこれからユーザが何km、EVを走らせたいかを示す。
【数20】

・ Q: 電池容量 (Ah)
・ V:定格電池電圧(Volts)
・ E:エネルギ使用量効率(kWh/km)
・ D:運転距離 (km)
・ m:劣化防止のため最小のSOC (%)
・α: 他の未知の要因に対する要求SOC(%)
【数21】

【0056】
以上、本発明の実施形態によれば、待ち状態にある電気自動車(EV:Electric Vehicle)へ提供可能な充電電力の決定のため、まず、EVの将来の到着が、EV充電予測用データを用いて予測され、次に、EVの平均充電電力が計算される。最後に、待ち状態にあるEV間で、各々の平均充電電力が、比例的に調整される。充電スタンドにおいて、待ち状態のEVのスケジュールを作るため、種々の制約を考慮して、利用可能な電力を、EVに分配することによって、EVの充電レート(充電電流)が決定される。利用可能な電力を公平に共有し、これにより充電可用性(availability of charging)をより高めることができる。また、本実施形態による動的なスケジューリングのため、急速充電が可能な場合もあり、その結果、充電は短時間になる。
【0057】
(第2実施形態)
EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)コネクタが制限されることがあり、この場合、EVへEVSEコネクタを割り当てるスケジュールがなされる必要がある。優先度を割り当てる例は、First Come First Serve (FCFS)と、出発時刻と、EVタイプと、到着時刻、出発時刻および目標充電容量等の組み合わせと、である。FCFSでは、EVは、充電スタンドでのEVの到着順に従って充電される。出発時刻に応じて優先度を割り当てる場合、最も早い出発時刻を有するEVが、早く充電される。もし、EVが、EVタイプに基づいて優先度を割り当てられるならば、救急車や消防車といった緊急車や、エグゼクティブのEVが、他のEVよりも高い優先度を有する。到着時刻、出発時刻、目標充電容量およびEVタイプの組み合わせが、EVへ優先度を割り当てるのに用いられるとき、以下の比率が用いられても良い。
【数22】

Qie は期待される充電容量である。βi∈[0,1] is ペナルティファクタである。Tid および Tia はEViの出発時刻および到着時刻である。比率が高いほど(riの値が大きいほど)、EVの優先度が高くなる。
【0058】
EVSEコネクタが制限されるとき、EVはその優先度に従って、EVSEコネクタに割り当てられ、キューのEV間での利用可能な電力の分割は、それに応じて調整される。EVSEコネクタ制約を考慮するとき、前述したEVの充電レートの計算の2つの方法は、図7および図8に示されるステップのフローによって表される。
【0059】
図7は、前述した第1の例として説明した可変の充電レートの場合のフローを示す。
【0060】
まず、EVの出発時刻あるいは使用時刻を、EVプロフィールから得る(S101)。次に、EVの優先度が、前述したように計算される(S102)。次に、EVに優先度に従って利用可能EVSEコネクタが割り当てられる(S103)。次に、各EVの利用可能充電時間が計算される(S104)。期待される出発時刻までにEVの充電を完了するため、各時刻での最小平均充電電力が計算される(S105)。次に、EVによる将来の電力要求を考慮して、現在時刻での利用可能電力を得る(S106)。この利用可能電力が、ポリシーと優先度の重みとに応じて、EVSEコネクタに位置するEV間に分割される(S107)。分割電力を用いて、EVのSOCを計算する(S108)。コネクタに接続されたEVに対して、SOCが目標SOCに達したら、リストから当該EVを除去する(S109)。キューのすべてのEVについて、そのSOCが目標SOC以上になったら(S110)、EV充電情報を更新する(S111)。 充電スケジュールが得られる。
【0061】
図8は、前述した第2の例として説明した固定レート充電の場合のフローを示す。
【0062】
まず、EVの出発時刻あるいは使用時刻を、EVプロフィールから得る(S201)。次に、EVの優先度が、前述したように計算される(S202)。次に、EVの優先度を得る。次に、それぞれ、最小平均充電電力といった充電電流を、EVに割り当てる(S203)。次に、各EVの充電時間を計算する(S204)。優先度に応じて、EVを、EVSEコネクタに割り当てる(S205)。各時刻での要求充電電力PEV(t)を、計算する(S206)。もし各時刻で、要求充電電力PEV(t)が利用可能電力を超えていたら(S207のYES)、すなわち利用可能な電力が十分でないならば、優先度に従ってEVの充電時間スロットを調整する(S208)。たとえば、低い優先度をもつEVが右へシフトするように、低い優先度のEVの充電時間スロットを調整する。次に、充電スケジュールが実現可能かの検査を行う(S209)。もし実現可能ならば、充電スケジュールと充電電流情報が、電池のSOCといった、計算された電池パラメータに沿って、EVプロフィール・充電情報データベースに書き込まれ、充電スケジュールが得られる(S210)。さもなければ、充電電流を更新する(S211)。
【0063】
(第3実施形態)
本実施形態では、システムの拡張が示される。拡張されたシステムでは、電池の充電・放電サイクルが、充電・放電電流および充電時間の計算の間に、考慮される。充電・放電時間および、充電式電池の有効な充電電力または放電電力が、複数の要因に依存する。複数の要因は、充電・放電サイクルおよび充電・放電レートの履歴を含む。使用された充電・放電サイクルからの劣化に起因して、電池の有効容量は低くなり、有効な容量を計算する1つの例が以下に示される。
【数23】

Qi: 定格容量
Hi: 使用された充電・放電サイクル
αi(Hi): 劣化レートであり、以下のように定義されることができる。
【数24】

Nirated は、定格充電・放電サイクルである。
Nimax は、電池が使用可能な充電・放電サイクルの最大数である。
【0064】
なお以上に説明した図1の電気自動車充電スケジューリングシステムは、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウエアとして用いることでも実現することが可能である。すなわち、図1の装置が備える各モジュールは、各要素の処理を行う指示を記述したプログラムをコンピュータに実行させることにより実現してもよい。このとき、当該電気自動車充電スケジューリングシステムは、上記のプログラムをコンピュータ装置にあらかじめインストールすることで実現してもよいし、ハードディスク、メモリ装置、光ディスク等の記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して上記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータ装置に適宜インストールすることで実現してもよい。また、図1の各データベースは、上記のコンピュータ装置に内蔵あるいは外付けされたメモリ、ハードディスクもしくはCD−R、CD−RW、DVD−RAM、DVD−Rなどの記憶媒体などを適宜利用して実現することができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電のために到来すると予測される電気自動車の情報を保持する充電予測用データベースと、
到来した充電待ちの電気自動車の情報を保持するプロフィール・充電情報データベースと、
電力網および定置型電池の少なくとも一方を含む電力源に関する情報を保持する電力データベースと、
前記電力源から利用可能なエネルギを前記電力データベースに基づき計算する電力計算手段と、
前記充電待ちの電気自動車への充電スケジュールを行うスケジューリング手段と、を備え、
前記スケジューリング手段は、
前記電力源から利用可能な電力を、前記予測される電気自動車と前記充電待ちの電気自動車との合計数で除算することにより、平均利用可能エネルギを計算し、
前記プロフィール・充電情報データベースに基づき、前記充電待ちの電気自動車による要求充電エネルギを計算し、
前記充電待ちの電気自動車のうち、前記平均利用可能エネルギ以下の要求充電エネルギを有する第1電気自動車については、前記要求充電エネルギを、前記第1電気自動車の充電エネルギとして決定するとともに、前記第1電気自動車について、前記平均利用可能エネルギと前記要求充電エネルギとの差分を計算し、
前記平均利用可能エネルギより大きい要求充電エネルギを有する第2電気自動車について、前記平均利用可能エネルギと前記要求充電エネルギとの差分の大きさに比例して、前記第1電気自動車について計算した前記差分の合計を分割し、前記第2電気自動車への充電エネルギを、前記第2対象電気自動車へ分割されたエネルギと、前記平均利用可能エネルギとの合計エネルギに決定し、
前記第1電気自動車および第2電気自動車に対して、それぞれに決定された充電エネルギを供給するようにスケジューリングする
ことを特徴とする電気自動車充電スケジューリングシステム。
【請求項2】
前記充電待ちの電気自動車は、それぞれごとに設定された充電可能期間の間、充電されることができ、
前記スケジューリング手段は、
前記充電予測用データベースに基づき、前記予測される電気自動車について充電可能期間を仮定し、
時刻ごとに、前記時刻で充電される電気自動車について、残りの充電時間に対する残りの充電エネルギの比率を計算し、前記時刻において前記電力源から提供可能なエネルギを、前記時刻において充電中の電気自動車間で、前記比率の大きさに比例して分割することにより、前記時刻で充電するエネルギを計算し、計算したエネルギを前記電気自動車に供給するようスケジューリングする
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車充電スケジューリングシステム。
【請求項3】
前記計算したエネルギが、電気自動車毎に定められた所定の最大値を超えるときは、前記最大値のエネルギを、前記電気自動車に供給するように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車充電スケジューリングシステム。
【請求項4】
前記充電待ちの電気自動車は、それぞれごとに設定された充電可能期間の間、充電されることができ、
前記スケジューリング手段は、
前記充電予測用データベースに基づき、前記予測される電気自動車について充電可能期間を仮定し、
前記充電待ちの電気自動車の充電可能期間における時刻毎に、充電中の電気自動車に必要な要求充電電力が、前記電力源により供給可能な電力以下に収まり、かつ、前記充電可能期間内に、前記電気自動車への前記充電エネルギの供給が完了するような一定電流を決定し、前記充電中に前記電気自動車に前記一定電流を供給するようにスケジューリングする
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車充電スケジューリングシステム。
【請求項5】
前記スケジューリング手段は、前記予測される電気自動車および前記充電待ちの電気自動車の電池の充放電履歴に基づいて、前記電気自動車の電池の有効容量を計算し、前記電気自動車の電池が有効容量をもつとして、スケジューリングを行う
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電気自動車充電スケジューリングシステム。
【請求項6】
充電プラグの個数の情報をさらに備え、
前記プロフィール・充電情報および前記充電予測用データベースに基づき、前記予測される電気自動車および前記充電待ちの電気自動車の優先度を計算し、
前記スケジューリング手段は、優先度の高い電気自動車を優先的に充電プラグに接続して充電するとして、スケジューリングを行う
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電気自動車スケジューリングシステム。
【請求項7】
前記充電待ちの電気自動車は、それぞれごとに設定された充電可能期間の間、充電されることができ、
前記スケジューリング手段は、
前記プロフィール・充電情報、またはユーザ設定に基づき、前記電気自動車の目標充電容量を計算し、
前記電力源は、各目標充電容量まで充電するのに十分な供給エネルギを有し、
前記充電可能期間内に、前記目標充電容量まで充電を行うように充電スケジューリングを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車スケジューリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205425(P2012−205425A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68638(P2011−68638)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願 平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「蓄電複合システム化技術開発/要素技術開発/既存都市再生開発型スマートコミュニティモデル構築に向けた蓄電池利用技術及びエネルギーマネジメントシステムの開発実証」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】