説明

電気自動車

【課題】開発工数や開発コストを低減することができる電気自動車を提供する。
【解決手段】既存の、駆動力源がエンジンである車両の車体フレーム22およびトランスアクスル26を流用して、駆動用電動機24と燃料電池用酸化ガス送給機20および空調用冷媒圧縮機58とを搭載することができる。そのため、車体フレーム22と、上記駆動用電動機24、燃料電池用酸化ガス送給機20、および空調用冷媒圧縮機58で生じた振動が車体フレーム22に伝わらないようにするための防振部材とを新たに開発する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に係り、特に、その電気自動車の開発工数や開発コストを低減するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動力源としてエンジン(内燃機関)を備えた車両が知られている。その車両には、変速機と差動歯車装置とを同一のケース内に有して成るトランスアクスルを備えたものがある。それらエンジンおよびトランスアクスルは、互いに連結され、マウントブッシュを介して車体に取り付けられる。上記マウントブッシュは、エンジンおよびトランスアクスルで生じた振動を吸収あるいは減衰する機能を有する。
【0003】
それに対し、エンジン(内燃機関)を備えない車両もある。たとえば、駆動力源として電動機を備えた電気自動車である。特許文献1〜4には、燃料電池からの電力により作動する電動機を備えた電気自動車(燃料電池車)が記載されている。また、特許文献5には、蓄電池からの電力により作動する電動機を備えた電気自動車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−285647号公報
【特許文献2】特開2003−285652号公報
【特許文献3】特開2003−288908号公報
【特許文献4】特開2010−212121号公報
【特許文献5】特開平09−224301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえば、燃料電池車には、燃料電池に空気などの酸化ガス或いは水素を含む燃料ガスを圧送するための燃料電池用ガス送給機が必要となる。この燃料電池用ガス送給機は、駆動力源がエンジンである車両には不要である。そのため、燃料電池車を作る際には、燃料電池用ガス送給機を搭載することができる車体と、その燃料電池用ガス送給機の振動が車体に伝わらないようにするための防振部材とを新たに開発する必要があり、燃料電池車の開発工数および開発コストが比較的大きくなるという問題があった。
【0006】
また、従来の、駆動力源がエンジンである車両においては、空調用冷媒圧縮機が上記エンジンに固定されていたために、そのエンジンが備えられない電気自動車を作る際には、その空調用冷媒圧縮機を設置可能な車体と、その空調用冷媒圧縮機の振動の車体への伝達抑制のための防振部材とを新たに開発する必要があり、電気自動車の開発工数および開発コストが比較的大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、開発工数や開発コストを低減することができる電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a)マウントブッシュを介して車体に取り付けられたトランスアクスルケースを備えた車両において、(b)前記トランスアクスルケースのエンジンおよびトルクコンバータの装着部位に、それらエンジンおよびトルクコンバータに替えて、駆動用電動機と燃料電池用ガス送給機および/または空調用冷媒圧縮機とが設けられていることにある。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、既存の、駆動力源がエンジンである車両の車体およびトランスアクスルケースを流用して、駆動用電動機と燃料電池用ガス送給機および/または空調用冷媒圧縮機とが搭載された電気自動車を作ることができる。そのため、駆動用電動機と、燃料電池用ガス送給機および/または空調用冷媒圧縮機とを搭載することができる車体と、それらで生じた振動が車体に伝わらないようにするための防振部材とを新たに開発する必要がないので、電気自動車の開発工数および開発コストを低減することができる。
【0010】
ここで、好適には、前記トランスアクスルケースは、変速機を収容して横置きに配置されており、前記駆動用電動機と燃料電池用ガス送給機および/または空調用圧縮機とは、該変速機の入力軸と軸心が共通した位置、或いは該軸心よりも車両前方側位置に配置されている。このようにすれば、駆動用電動機と燃料電池用ガス送給機および/または空調用圧縮機とは、該変速機の入力軸と軸心が共通した位置、或いは該軸心よりも車両前方側位置に配置されているので、トランスアクスルケースの重量バランスが、エンジンおよびトルクコンバータが装着されていた場合と比較して、それほど変化しないので、マウントの振動吸収特性、或いは振動減衰特性がそのまま維持される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の電気自動車の構成を概念的に示す図である。
【図2】図1の電気自動車の車体フレームの一部とそれに搭載された駆動装置および燃料電池用酸化ガス送給機を示す図である。
【図3】図2のIII-III矢視の駆動装置および燃料電池用酸化ガス送給機を示す図である。
【図4】駆動力源としてエンジンを備えた従来の車両を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例における電気自動車の車体フレームに搭載された駆動装置と、トランスアクスルケースに固定されたアダプターの車両前方側に固定された空調用冷媒圧縮機とを示す図である。
【図6】本発明の他の実施例における電気自動車の車体フレームに搭載された駆動装置と、トランスアクスルケースのミッションケースの車両前方側に固定された燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図である。
【図7】本発明の他の実施例における電気自動車の車体フレームに搭載された駆動装置と、トランスアクスルケースのミッションケースおよびハウジングの車両前方側に固定された燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図である。
【図8】本発明の他の実施例における電気自動車の車体フレームに搭載された駆動装置と、トランスアクスルケースのケースカバーの車両左方側に固定された燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図である。
【図9】本発明の他の実施例における電気自動車の車体フレームに搭載された駆動装置と、トランスアクスルケースのケースカバーおよびミッションケースの車両前方側に固定された燃料電池用酸化ガス送給機とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施例の電気自動車10の構成を概念的に示す図である。図1においては、矢印FR方向が車両前方方向である。図1に示すように、電気自動車10は、車両中央に設けられた燃料電池12と、車両後方に設けられ、燃料電池12へ燃料としての水素ガスを供給する燃料電池用燃料送給機14と、車両前方に設けられ、燃料電池12または図示しない蓄電池からの電力により作動して駆動輪16を駆動する駆動装置18と、その駆動装置18に隣接して設けられて燃料電池12へ酸化ガスとしての圧縮空気を供給する燃料電池用酸化ガス送給機20とを備えている。電気自動車10は、燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車である。なお、上記燃料電池用酸化ガス送給機20は、本発明における燃料電池用ガス送給機に相当するものである。
【0014】
燃料電池12は、高分子電解質膜の両側にアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体をセパレータによって挟持した発電セルが、所定数(例えば、数十〜数百)だけ積層されることで構成されている。この燃料電池12は、燃料電池用燃料送給機14からアノード側電極に供給される水素ガス中の水素と、燃料電池用酸化ガス送給機20からカソード側電極に供給される空気中の酸素との電気化学反応によって発電する。この燃料電池12で発電した電力は、駆動装置18、燃料電池用燃料送給機14、および燃料電池用酸化ガス送給機20を作動させるために使用される他、必要に応じて図示しない蓄電池を充電するために使用される。
【0015】
燃料電池用燃料送給機14は、圧縮された水素ガスが貯蔵された図示しない水素タンクを備えており、燃料電池12のアノード側電極に燃料ガスとしての水素ガスを圧送する。
【0016】
図2は、電気自動車10の車体フレーム22の一部とそれに搭載された駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20を示す図である。図2では、矢印FRで示す方向が車両前方である。また、図3は、図2のIII矢視の駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20を示す図である。図2および図3に示すように、駆動装置18は、電気自動車10の駆動力源としての駆動用電動機24と、その駆動用電動機24の回転を変速しつつその回転を左右一対の駆動輪16に伝達する変速機30と、それらをそれぞれ収容したトランスアクスルケース26を備えている。トランスアクスルケース26は、変速機30および差動歯車装置34を収容した円筒状のミッションケース28と、ミッションケース28の車両左側の開口を塞ぐように固定されたケースカバー27と、駆動用電動機24を収容した円筒状のハウジング29とを、相互に締結することで構成されている。このハウジング29は、従来ではトルクコンバータを収容していたものである。
【0017】
ハウジング29に収容された駆動用電動機24は、本実施例では駆動源として機能するものであり、例えば燃料電池12や前記蓄電池からの電力により作動する交流同期型のモータである。この駆動用電動機24の出力は、図示しないインバータにより例えばアクセル開度等の要求出力関連値に基づいて制御される。
【0018】
ミッションケース28には、駆動用電動機24の出力軸に連結された良く知られたベルト式無段変速機から成る変速機30と、その変速機30の出力軸に一対のギヤ対32を介して連結された良く知られた差動歯車装置34とが収容されている。ミッションケース28およびハウジング29を備えたトランスアクスルケース26は、横置型のものであり、車幅方向の左側に配設されている。
【0019】
駆動装置18は、図2に示すように、トランスアクスルケース26の車両前方側に配設された第1マウント部材36と、トランスアクスルケース26の車両後方側に配設された第2マウント部材38と、トランスアクスルケース26の車両左側に配設された第3マウント部材40とを介して車体フレーム(車体)22にマウントされている。第1マウント部材36は、車体フレーム22の第1クロスメンバ42に固定されている。また、第2マウント部材38は、車体フレーム22の第2クロスメンバ44に固定されている。また、第3マウント部材40は、左フロントサイドメンバ46に固定されている。上記マウント部材36、38、および40は、トランスアクスルケース28側の部材と車体フレーム22側の部材との間に介在させられたゴムなどから成るマウントブッシュ(弾性部材)36a、38a、および40aを有している。駆動装置18で生じた振動は上記マウントブッシュ36a、38a、および40aにより吸収あるいは減衰させられる。
【0020】
燃料電池用酸化ガス送給機20は、図示しないフィルタを介して外気を取り込むエアクリーナ48と、そのエアクリーナ48から供給された空気を圧縮する圧縮機50と、その圧縮機50を駆動する圧縮機用電動機52と、圧縮機50から吐出された圧縮空気を冷却するインタークーラ54(図1参照)とを備えている。
【0021】
圧縮機用電動機52は、例えば燃料電池12や前記蓄電池からの電力により作動するモータたとえば交流同期型のモータである。この圧縮機用電動機52は、トランスアクスルケース26の車両右側にアダプター56を介して配設され、その圧縮機用電動機52のケースがハウジング29に例えばボルト等の締結具により固定されている。アダプター56は、ハウジング29の開口に締結された円筒状部材であり、その車両右側部分が半円筒状とされている。
【0022】
圧縮機50は、例えばルーツ式ポンプ、ベーンポンプ、またはブロア等から構成されている。燃料電池用酸化ガス送給機20は、その圧縮機用電動機52がアダプター56内に収容された状態で、その圧縮機50のケースが圧縮機用電動機52のケースに例えばボルト等の締結具により固定されることにより、アダプター56に支持されている。
【0023】
インタークーラ54は、熱交換器であり、圧縮機50から吐出された圧縮空気の温度を燃料電池12の運転に適した温度、例えば80℃以下に冷却し、燃料電池12に供給する。本実施例では、インタークーラ54は、水冷式の多管式熱交換器が使用されている。
【0024】
このように構成された電気自動車10の作用について以下に説明する。先ず、エアクリーナ48を通じて圧縮機50へ外気(空気)が供給される。圧縮機50に供給された空気は、その圧縮機50により圧縮されて吐出される。その吐出された圧縮空気は、インタークーラ54へ導かれて冷却される。インタークーラ54で冷却され、燃料電池12ヘ供給するガス温度として適温(例えば80℃)になった空気は燃料電池12ヘ供給される。燃料電池12では、インタークーラ54からカソード側電極に供給された空気中の酸素と、燃料電池用燃料送給機14からアノード側電極に供給された水素ガス中の水素との電気化学反応によって発電が行われる。その発電により得られた電力は、駆動用電動機24および圧縮機用電動機52等を駆動するために利用される。
【0025】
従来では、図4に示すような、駆動力源としてエンジン70を備えた車両72において、トランスアクスルケース28のうちの変速機30に隣接する部位にトルクコンバータ74が変速機30の入力軸の軸心Cと同心に装着され、そのトルクコンバータ74の入力部材(フロントカバー)に隣接する部位にエンジン70が変速機30の入力軸の軸心Cと同心に装着されていた。それに対し、本実施例では、トランスアクスル26のトルクコンバータ74およびエンジン60の装着部位に、それらトルクコンバータ74およびエンジン70に替えて、重量物である駆動用電動機24と燃料電池用酸化ガス送給機20とが変速機30の入力軸の軸心Cと同心に設けられている。そして、駆動用電動機24はトランスアクスルケース26のハウジング28内に収容され、燃料電池用酸化ガス送給機20はアダプター56を介してハウジング28に固定されており、それら駆動用電動機24および燃料電池用酸化ガス送給機20とトランスアクスルケース26との間のマウントが共用させられている。すなわち、駆動用電動機24および燃料電池用酸化ガス送給機20で発生した振動は、マウント部材36、38、および40のマウントブッシュ36a、38a、および40aで吸収あるいは減衰させられるようになっている。なお、上記トランスアクスルケース26のうちの変速機30を収容するミッションケース28に隣接するハウジング29が、従来におけるトルクコンバータ74の収容部位に相当する。また、上記トルクコンバータ74の入力部材(フロントカバー)に隣接する部位であるハウジング29の車両右端部分が、従来のエンジンの装着部位に相当する。
【0026】
さらに、電気自動車10は、ポンプおよびモータを有する空調用冷媒圧縮機58を必要に応じて備えている。この空調用冷媒圧縮機58は、燃料電池用酸化ガス送給機20よりも比較的軽量であり、アダプター56の車両前方側すなわち変速機30の入力軸の軸心Cよりも車両前方側にマウント部材60を介してマウントされる。上記マウント部材60は、空調用冷媒圧縮機58側の部材とアダプター56側の部材との間に介在させられたプレス部品またはゴムなどから成るマウントブッシュ(弾性部材)を有している。
【0027】
従来、図4に示すようなエンジン70を備えた車両72においては、トランスアクスルケース26に隣接してエンジン70が連結され、そのエンジン70に空調用冷媒圧縮機58が固定されていた。それに対し、本実施例では、そのエンジン70に替えてトランスアクスル26のエンジン70の装着部位に燃料電池用酸化ガス送給機20が装着され、その燃料電池用酸化ガス送給機20に空調用冷媒圧縮機58が必要に応じて固定される。エンジン70に替わる重量物である燃料電池用酸化ガス送給機20が固定されたトランスアクスルケース26のマウントがそのまま流用されている。すなわち、燃料電池用酸化ガス送給機20で生じた振動は、副マウント部材58とマウント部材36、38、および40とにより吸収あるいは減衰させられる。
【0028】
本実施例の電気自動車10によれば、既存の、駆動力源がエンジン70である車両72の車体フレーム(車体)22およびトランスアクスルケース26を流用して、駆動用電動機24と、燃料電池用酸化ガス送給機(燃料電池用ガス送給機)20或いはそれに加えて空調用冷媒圧縮機58とを搭載することができる。そのため、駆動用電動機24と、燃料電池用ガス送給機20および空調用冷媒圧縮機58とを搭載することができる車体フレーム22と、それらで生じた振動が車体フレーム22に伝わらないようにするための防振部材(マウント部材36、38、および40)とを新たに開発する必要がないので、電気自動車10の開発工数および開発コストを低減することができる。
【0029】
また、本実施例の電気自動車10によれば、トランスアクスルケース26は、変速機30を収容して車幅方向の横置きに配置されており、駆動用電動機24と燃料電池用ガス送給機20および/または空調用圧縮機58とは、変速機30の入力軸と軸心Cが共通した位置、或いはその軸心Cよりも車両前方側位置に配置されていることから、駆動用電動機24と燃料電池用ガス送給機20および/または空調用圧縮機58とが、変速機30の入力軸の軸心Cが共通した位置、或いはその軸心よりも車両前方側位置に配置させられているので、トランスアクスルケース26の重量バランスが、エンジン70およびトルクコンバータ74が装着されていた場合と比較して、それほど変化しないので、マウント36,38,40の振動吸収特性或いは振動減衰特性がそのまま維持される。
【実施例2】
【0030】
図5は、電気自動車10の車体フレーム22に搭載された駆動装置18を示している。本実施例では、重量物である空調用冷媒圧縮機58が、トランスアクスルケース26の右端側に固定されたアダプター56の車両前方側すなわち変速機30の入力軸の軸心Cよりも前方側にマウント部材60を介して固定されている。本実施例においても、前述の実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0031】
図6は、電気自動車10の車体フレーム22に搭載された駆動装置18を示している。本実施例では、重量物である燃料電池用酸化ガス送給機20が、トランスアクスルケース26のミッションケース28の車両前方側すなわち変速機30の入力軸の軸心Cよりも前方側にマウント部材60を介して固定されている。本実施例においても、前述の実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0032】
図7は、電気自動車10の車体フレーム22に搭載された駆動装置18を示している。本実施例では、重量物である燃料電池用酸化ガス送給機20が、トランスアクスルケース26のミッションケース28およびハウジング29の車両前方側すなわち変速機30の入力軸の軸心Cよりも前方側にマウント部材60を介して固定されている。本実施例においても、前述の実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0033】
図8は、電気自動車10の車体フレーム22に搭載された駆動装置18を示している。本実施例では、重量物である燃料電池用酸化ガス送給機20が、トランスアクスルケース26のケースカバー27の車両左方側であって変速機30の入力軸の軸心Cと同心にマウント部材60を介して固定されている。本実施例においても、前述の実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0034】
図9は、電気自動車10の車体フレーム22に搭載された駆動装置18を示している。本実施例では、重量物である燃料電池用酸化ガス送給機20が、トランスアクスルケース26のケースカバー27およびミッションケース28の車両前方側すなわち変速機30の入力軸の軸心Cよりも前方側にマウント部材60を介して固定されている。本実施例においても、前述の実施例1と同様の効果が得られる。
【0035】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0036】
例えば、前述の実施例では、燃料電池用酸化ガス送給機20および空調用圧縮機56の両方がトランスアクスル26に直接的あるいは間接的に固定され、それら燃料電池用酸化ガス送給機20および空調用圧縮機56とトランスアクスル26とのマウントが共用されるように構成されていたが、上記燃料電池用酸化ガス送給機20および空調用圧縮機56のどちらかがトランスアクスル26に固定されることでそのトランスアクスル26とマウントが共用されるように構成されても、本発明の効果が得られる。
【0037】
また、前述の実施例では、駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20を車体フレーム22にマウントするために、トランスアクスルケース28の車両前方側、車両後方側、および車両左側にそれぞれ設けられた3個のマウント部材36、38、および40が用いられていたが、上記駆動装置18および燃料電池用酸化ガス送給機20の振動を抑えることができれば、マウント部材の数や材質、設置箇所等は適宜変更可能である。
【0038】
また、前述の実施例では、水素ガスを貯蔵した水素タンクが燃料電池用燃料送給機14に備えられ、その水素タンクに貯蔵された水素ガスが燃料電池12のアノード側電極に供給されるようになっていたが、上記アノード側電極に水素を供給できれるものであれば水素の貯蔵形態はガスに限られない。例えば、液体水素などの他の形態で水素を貯蔵してもよい。また、例えば有機系の含水素化合物を貯蔵し、その含水素化合物を改質器で改質することにより生成した改質水素を供給するようにしてもよい。
【0039】
また、前述の実施例では、圧縮機50を駆動するための圧縮機用電動機52が設けられていたが、圧縮機50は、駆動装置18の動力の一部により駆動させられるように構成されてもよい。その場合、圧縮機用電動機52は必ずしも必要ない。
【0040】
また、前述の実施例において、変速機30は、ベルト式無段変速機から成るものであったが、これに限らず、例えば、トロイダル式無段変速機、あるいは遊星歯車式や常時噛合式などの有段変速機など、駆動用電動機24の動力を駆動輪16へ伝達できる他の公知の変速機であればよい。
【0041】
また、前述の実施例において、インタークーラ54は、水冷式の多管式熱交換器が使用されていたが、これに限らず、圧縮空気を燃料電池12の運転に適した温度に冷却できるものであれば、例えば、空冷式のフィン付き熱交換器や水冷式のコルゲート管熱交換器等が使用されても良い。
【0042】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
10:電気自動車
22:車体フレーム(車体)
26:トランスアクスル
24:駆動用電動機
20:燃料電池用酸化ガス送給機(燃料電池用ガス送給機)
58:空調用冷媒圧縮機
36a,38a,40a:マウントブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウントブッシュを介して車体に取り付けられたトランスアクスルケースを備えた車両において、
前記トランスアクスルケースのエンジンおよびトルクコンバータの装着部位に、該エンジンおよびトルクコンバータに替えて、駆動用電動機と、燃料電池用ガス送給機および/または空調用圧縮機とが設けられていることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記トランスアクスルケースは、変速機を収容して横置きに配置されており、
前記駆動用電動機と、燃料電池用ガス送給機および/または空調用圧縮機とは、該変速機の入力軸と軸心が共通した位置、或いは該軸心よりも車両前方側位置に配置されていることを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206582(P2012−206582A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73185(P2011−73185)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】