説明

電池、電池の製造方法および電池の製造装置

【課題】集電体の強度や耐久性等を確保することができる電池、電池の製造方法および電池の製造装置を提供することである。
【解決手段】集電体(正極集電体12または負極集電体22)上に活物質を含む電極層(正極層11,13または負極層21,23)がそれぞれ形成された正極板10および負極板20と、正極板10と負極板20との間に介在させる絶縁性のセパレータ30とを備える電池において、正極板10および負極板20のうちで一方または双方の電極板の全域に乾燥で生じたクラックC1,C2を有する。この構成によれば、乾燥で生じさせたクラックC1,C2は集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極板、負極板およびセパレータを備える電池と、その電池の製造方法、その電池の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、電極中に十分な電解液を保持し、充放電に伴う液枯れやLiイオン枯れを抑制し、十分な容量や入出力を確保することを目的とした非水電解質二次電池用電極に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。この非水電解質二次電池用電極は、捲回方向と交差する方向に伸び、かつ合剤層の表面から集電体に接する部分にまで達する深さの多数のクラックを有する。クラックは、電極をその長手方向に搬送する過程において電極に張力を加えながら複数の回転自在なローラにより搬送方向を転換させることにより、電極を長手方向に湾曲させることで形成する。
【0003】
また、注液効率(作業性)の向上や液漏れ防止を目的とした電池に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献2を参照)。この電池は、複合正極と複合負極を塗布した後、強制的に乾燥させることで、電極の表面や内部に割れを生じさせている。強制乾燥によって生じる割れ(クラック)には、ヘアクラック、浅割れ、クレージング、深割れなどがある(特許文献2の段落0009を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−294512号公報
【特許文献2】特開平07−263000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術を適用する場合、径が異なる複数のローラを配置して電極を曲げる工程が必要になるので(特許文献1の図2を参照)、製造コストが嵩む。また、複数のローラで電極を順次曲げてゆくので、集電体の強度によっては集電体自体にもクラックが生じる可能性があるだけでなく、電極の強度や耐久性が低下する。
【0006】
また、特許文献2の技術を適用しようとしても、ヘアクラック、浅割れ、クレージング、深割れのうちどのクラックが生じるか不明である。また、目的とするクラックを生じさせるための工程や制御方法等も不明である。そのため、実際に生じたクラックの種類や割合などによっては、液枯れやイオン枯れを確実に抑制できるとは限らない。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、第1の目的は集電体の強度や耐久性等を確保することができる電池、電池の製造方法および電池の製造装置を提供することである。第2の目的は、液枯れやイオン枯れを抑制することができる電池、電池の製造方法および電池の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池において、前記正極板および前記負極板のうちで一方または双方の電極板の全域に乾燥で生じたクラックを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電池を構成する電極板の全域には、乾燥で生じさせたクラックを有する。乾燥で生じたクラックは集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0010】
なお、「集電体」は導電性の材料(物質を含む。以下同じである。)で帯状(長尺シート状)に形成されるが、厚さ(板厚)は任意である。「セパレータ」は正極板と負極板とが接触するのを防止する部材であって、例えば絶縁性の板材や固体電解質などを含む。「電極層」は合剤層とも呼び、正極層と負極層とでは材料が異なる。正極層は、例えばリチウムイオンなどの軽金属イオンを吸蔵・離脱することが可能な金属硫化物、金属酸化物または高分子化合物などの材料で構成される。負極層は、例えばリチウム(Li)やナトリウム(Na)などの軽金属、これらの軽金属を含む合金または軽金属を吸蔵・離脱することが可能な材料などで構成される。電極層の厚さは、例えば片面ごとに10〜200[μm]である。電極板の「全域」には、ほぼ全域を含む。「ほぼ全域」は、電極板の周縁から所定範囲(例えば0[%]を超えて10[%]以下の範囲)内の領域を除いた部位を意味する。「クラック」は、電極板を構成する電極層の表面(表層を含む)や内部に含まれる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池において、前記正極板および前記負極板のうちで一方または双方の電極板の一部であって、電極に接続する接続部から所定距離以上離れた領域内に乾燥で生じたクラックを有することを特徴とする。この構成によれば、接続部から所定距離以上離れた領域内には、乾燥で生じさせたクラックを有する。乾燥で生じたクラックは集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記クラックは、前記集電体上に前記電極層が形成された前記電極板に対し、所定の乾燥速度で前記電極層を乾燥させて形成することを特徴とする。この構成によれば、クラックは所定の乾燥速度で形成されるので、電極層は大きく裂けることがない。乾燥で生じたクラックは集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記クラックは、前記電極層の内部にも有することを特徴とする。この構成によれば、クラックは電極層の表面に加えて、電極層の内部にも有する。表面だけでなく内部にも形成されているので、クラックの数量が増加する分だけ液枯れやイオン枯れを抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記クラックは、相互間距離が前記活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値とすることを特徴とする。クラックの相互間距離が活物質の平均粒子径に対して2倍未満では、単なる粒子間空隙と同レベルになるので、液枯れやイオン枯れを抑制することができない。一方、クラックの相互間距離が活物質の平均粒子径に対して10倍を超えると、電極層に物理的な欠陥が生じており、電極剥離などを引き起こし電池性能が損なわれるおそれがある。この構成によれば、クラックの相互間距離が活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値とするので、液枯れやイオン枯れをより確実に抑制することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記クラックは、前記電極板の面方向において、単位面積当たりの総クラック長(以下では単に「面方向総クラック長」と呼ぶ。)が0.1〜1.0[cm/cm2]の割合であることを特徴とする。面方向総クラック長が0.1[cm/cm2]未満では、クラックの数量が少な過ぎるので、液枯れやイオン枯れを抑制することが困難である。一方、面方向総クラック長が1.0[cm/cm2]を超えると、電極層に物理的な欠陥が生じており、電極剥離などを引き起こし電池性能が損なわれるおそれがある。この構成によれば、面方向総クラック長は0.1〜1.0[cm/cm2]に収まるので、液枯れやイオン枯れをより確実に抑制できる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記電極層は、繊維状の導電材を含むことを特徴とする。この構成によれば、繊維状の導電材は、クラックが生じた電極層の相互間を電気的に導通させ、かつクラックによる強度低下を補うことが可能となる。よって、電極層の相互間における電気的導通が損なわれるのを少なく抑えることができる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、前記クラックは、捲回した電極体における所定周回(「捲数」とも呼ぶ。以下同じである。)までの部位、または、積層した電極体における中央層から所定数層までの部位に形成されることを特徴とする。この構成によれば、非水電解質や電解液等が浸透し難い電極体の中央部分に対して、積極的にクラックを形成する。形成されたクラックには非水電解質や電解液等が浸透し易いので、クラックが形成されない場合に比べて電池性能を向上させることができる。なお、「所定周回」は集電体および電極層の各厚さによって異なるが、例えば総周回数の内周20[%]程度である。同様に「所定数層」は、例えば総積層数の中央20[%]程度である。
【0018】
請求項9に記載の発明は、集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池を製造する電池の製造方法において、前記集電体上に前記電極層が形成された前記電極板に対し、所定の乾燥速度で前記電極層を乾燥させてクラックを形成するクラック形成工程を有することを特徴とする。この構成によれば、電池を構成する電極板に対し、クラック形成工程でクラックを積極的に形成する。乾燥で生じたクラックは集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保できる。
【0019】
請求項10に記載の発明は、前記クラック形成工程は、前記電極板における幅方向の中央部を熱して乾燥させることを特徴とする。この構成によれば、非水電解質や電解液等が浸透し難い電極体の中央部に対してクラックを形成する。形成されたクラックには非水電解質や電解液等が浸透し易いので、クラックが形成されない場合に比べて電池性能を向上させることができる。
【0020】
請求項11に記載の発明は、前記クラック形成工程は、前記クラックの相互間距離が前記活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値となるように、前記所定の乾燥速度を制御することを特徴とする。この構成によれば、請求項5に記載の発明と同様に、液枯れやイオン枯れをより確実に抑制することができる。
【0021】
請求項12に記載の発明は、前記クラック形成工程は、前記クラックが、前記電極板の面方向において、単位面積当たりの総クラック長が0.1〜1.0[cm/cm2]の割合となるように、前記所定の乾燥速度を制御することを特徴とする。この構成によれば、請求項6に記載の発明と同様に、液枯れやイオン枯れをより確実に抑制することができる。
【0022】
請求項13に記載の発明は、集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池を製造する電池の製造装置において、前記集電体上に前記電極層が形成された前記電極板に対し、所定の乾燥速度で前記電極層を乾燥させてクラックを形成するクラック形成手段を有することを特徴とする。この構成によれば、電池を構成する電極板に対し、クラック形成手段でクラックを積極的に形成する。乾燥で生じたクラックは集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電極板の構成例を模式的に示す側面図である。
【図2】電極板の構成例を模式的に示す平面図である。
【図3】捲回型電池の製造方法を示すチャート図である。
【図4】クラックの形成過程を説明する模式図である。
【図5】内部応力と乾燥率との関係を示すグラフ図である。
【図6】乾燥速度と乾燥率との関係を示すグラフ図である。
【図7】捲回工程の一例を示す側面図である。
【図8】扁平プレス工程の一例を示す側面図である。
【図9】クラックを形成する部位の一例を示す側面図である。
【図10】電極板の構成例を模式的に示す平面図である。
【図11】積層型電池の製造方法を示すチャート図である。
【図12】クラックを形成する部位の一例を示す側面図である。
【図13】電極板の構成例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。「材料」には物質を含む。単に「電極板」と言う場合には、正極板および負極板のうちで一方または双方を意味する。
【0025】
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、捲回型電池に本発明を適用した例であって、図1〜図9を参照しながら説明する。まず、捲回型電池の基礎となる帯状電極板の構成例について、図1および図2を参照しながら説明する。電極板の構成例を模式的に図1に示す。図1(A)には乾燥前の状態を断面図で示し、図1(B)には乾燥によるクラック形成後の状態を断面図で示し、図1(C)にはさらにプレス後の状態を断面図で示す。図2には電極板におけるクラックの形成例を平面図で示す。図2(A)は電極板の全域にクラックを形成する例であり、図2(B)は電極板の一部(帯状中央部)にクラックを形成する例である。いずれの図も分かり易くするために、クラックの形成部位を網掛けで示す。
【0026】
捲回型電池の構成要素である電極体(後述する扁平体)は、帯状の電極板を捲回して渦巻き状にし、さらに扁平状にプレスすることで得られる。図1は捲回前における帯状の一部分を示す。捲回型電池の正極板と負極板とは、正負が異なるに過ぎない。よって正極板を代表して説明し、負極板については正極板と異なる内容を説明する。
【0027】
図1(A)に示す正極板10は、帯状をなす正極集電体12の面上に正極層11,13が形成される。正極集電体12は、導電性の材料(例えば金属や導電性プラスチック等)で帯状に形成される。厚さは製造する捲回型電池の仕様(例えば蓄電容量や外形寸法等)に合わせて設定され、例えば5〜300[μm]程度である。負極板については、正極板10と同じ厚さにしてもよく、異なる厚さにしてもよい。形状についても同様であり、例えば箔状,平板状,網状などが該当する。正極層11は捲回後の外周面側に形成され、正極層13は捲回後の内周面側に形成される。
【0028】
正極層11,13は、例えばリチウムイオンなどの軽金属イオンを吸蔵・離脱することが可能な金属硫化物、金属酸化物または高分子化合物などの材料で構成される。負極板20を構成する負極集電体22の面上に形成される負極層21,23は、例えばリチウムやナトリウムなどの軽金属、これらの軽金属を含む合金または軽金属を吸蔵・離脱することが可能な材料などで構成される。なお、正極層11,13および負極層21,23は、いずれの電極層も繊維状の導電材を含むのが望ましい。
【0029】
正極集電体12の面上には、ペースト状の正極層11,13を形成(塗工)する。塗工後に乾燥させることで、図1(B)に示すように、正極層11,13に多数のクラックC1を積極的に生じさせる。乾燥速度等を適切に制御することにより、クラックC1の態様(大きさ,長さ,深さ等)が制御可能になる。乾燥速度等の制御については後述する(図4〜図6を参照)。乾燥後に図面上下方向からプレスを行うと、図1(C)に示す構造になる。正極層11の厚みD1は厚みD3(D3<D1)に圧縮され、正極層13の厚みD2は厚みD4(D4<D2)に圧縮される。これらの厚みD1〜D4は任意に設定することが可能である。プレスに伴って一部のクラックC1は表面側が閉じられ、内部空間のみからなるクラックC2(いわゆる内部クラック)が生じる。
【0030】
一方、クラックC1,C2を生じさせる部位は任意に設定可能であるが、液枯れやイオン枯れを抑制するには正極板10の広範囲に生じさせるのが望ましい。クラックC1,C2を生じさせる部位の一例を図2に示す。図2(A)および図2(B)は、いずれも一面側(正極層11側)から見た平面図を示す。他面側(正極層13側)も同様であるので、以下では一面側(正極層11側)を代表して説明する。
【0031】
図2(A)には、正極板10のうちで正極層11が形成された部位の全域にクラックC1,C2を形成する例を示す。図示する帯状の正極板10(電極幅B1)は、クラックC1,C2を形成するクラック形成部11a(活物質形成幅B2)や、集電体露出部12aなどを有する。本例のクラック形成部11aは、正極集電体12の面上に正極層11を形成する全域にあたる。集電体露出部12aは「電極に接続する接続部」に相当し、正極層11を形成しないで正極集電体12を露出させ、後述する扁平プレス工程(図3に示すステップS32)を行った後、集電体露出部12aどうしを接続して正極とする。このことは、負極板20の負極集電体22についても同様である。すなわち負極集電体22の集電体露出部どうしを接続して負極とする。
【0032】
図2(B)には、正極板10のうちで正極層11が形成された部位の一部(ほぼ全域)にクラックC1,C2を形成する例を示す。図示する帯状の正極板10は、クラック形成部11aや集電体露出部12aに加えて、非クラック形成部11bを有する。本例のクラック形成部11a(クラック形成幅B4)は、正極集電体12の面上に形成する正極層11のうち、非クラック形成部11bを除いた領域である。言い換えれば、クラック形成部11aは帯状の正極板10における中央部領域に相当する。非クラック形成部11b(非クラック形成幅B3,B5)は、正極層11にクラックを生じさせない領域である。言い換えれば、クラック形成部11aは、集電体露出部12aから所定距離(すなわち非クラック形成幅B3)だけ離れている。
【0033】
上記図2(B)に示す正極板10は、例えば図2(C)に示す構成で作製することができる。すなわち、既に正極層11を形成(塗工)した帯状の正極板10を所定方向(例えば矢印D5方向)に移動させ、クラック形成部11aに対応する位置に離隔して備えた乾燥手段40によって正極層11を乾燥させる。すなわち、正極板10における幅方向の中央部を熱して乾燥させることでクラックC1を生じさせる。
【0034】
乾燥手段40は「クラック形成手段」に相当する。この乾燥手段40には正極層11を乾燥させる任意の手段を適用することができる。例えば、電熱線,ガスバーナー,温風送風機などが該当する。図2(C)はクラック形成幅B4に対応する幅の乾燥手段40を備える例であるが、活物質形成幅B2に対応する幅の乾燥手段40を備えれば図2(A)の正極板10を作製することができる。
【0035】
上述のようにクラックC1,C2を形成した正極板10および負極板20の相互間に絶縁性のセパレータ30を介在させて捲回し(図7を参照)、さらに扁平プレスすると(図8を参照)、図9に示すような扁平体200が形成される。
【0036】
次に、それぞれが帯状をなす正極板10,負極板20,セパレータ30などを捲回して捲回型電池を製造する工程について、チャート図で示す図3を参照しながら説明する。図3に示す製造方法は、正極板10を形成する第1工程と、負極板20を形成する第2工程と、形成された正極板10および負極板20とともにセパレータ30を積層して捲回および扁平プレスを行う第3工程とに大きく分けられる。
【0037】
以下では第1工程から第3工程の順番に説明するが、第1工程と第2工程は順不同で行ってよい。塗工工程(ステップS12,S22)、乾燥工程(ステップS14,S24)、プレス工程(ステップS16,S26)はこの順番で行うが、材質や形状等の条件に応じて、電極板の一部で適用してもよく、電極板の全体で適用してもよい。前者(電極板の一部への適用)は、集電体の面上に混練物が電極層として形成(塗工)された後、続いて乾燥が行われ、さらに続いてプレスが行われる。後者(電極板の全部への適用)は、集電体の面上に混練物が電極層として形成(塗工)が全体に行われた後、電極板全体について乾燥が行われ、電極板全体についてプレスが行われる。
【0038】
(第1工程)正極板10の形成工程
まず、正極集電体12の面上に形成する正極層11,13の混練物を作製する混練工程を行う〔ステップS10〕。混練物は、バインダ10a、正極活物質10b、導電材10c、溶媒10dなどを混合してペースト状(あるいは液状)にした物である。
【0039】
バインダ10aは、任意の結着剤を用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着剤などが該当する。なお、反応性官能基を導入したアクリレートモノマーや、アクリレートオリゴマーなどを混入してもよい。
【0040】
正極活物質10bは、例えばリチウムイオンなどの軽金属イオンを吸蔵・離脱することが可能な物質で構成される。具体的には、金属硫化物、金属酸化物または高分子化合物などが該当する。金属硫化物や金属酸化物には、例えば硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、セレン化ニオブ(NbSe2)または酸化バナジウム(V25)などのリチウムを含有しないものが挙げられる。金属酸化物には、上記したリチウムを含有しない物質のほか、LixMOyなどで表されるリチウム複合酸化物が挙げられる。なお、Mは、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、Al、Co、Ni、Ti、Siのうちで一以上の金属元素、あるいはリン(P)やホウ素(B)などの非金属元素であり、二種以上組み合わせて用いてもよい。組成式の添字について、xは0.05≦x≦2.0の範囲内で、yは2≦y≦4の範囲内でそれぞれ設定するのが望ましい。
【0041】
正極活物質10bは、高電位、高容量、耐久性などの要求特性により、リチウム・鉄複合酸化物、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル酸化物などのリチウム複合酸化物を選定する。上述した金属硫化物や金属酸化物などのうちで二種以上組み合わせて用いてもよい。正極活物質10bに用いる材料は、電池の種類や用途等に応じて任意に選択可能である。
【0042】
導電材10cは、導電性材料(導電性複合材料を含む)であれば任意である。乾燥によってクラックC1,C2が生じた正極層11,13の相互間でも電気的に導通させるため、繊維状の導電性材料を用いるのが望ましい。例えば、炭素繊維や、繊維状のカーボンブラックなどが該当する。前者の炭素繊維には、カーボンナノチューブ(CNT;Carbon Nano Tube)や、その一種である気相成長炭素繊維(「結晶性炭素繊維」とも呼ぶ。VGCF;Vapor Grown Carbon Fiber)などを含む。後者のカーボンブラックを用いる場合には、BET法による比表面積が30[m2/g]以上の高比表面積が望ましい。
【0043】
溶媒10dには、混練に適したものを用いる。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの単独溶媒や、これらの溶媒のうちで二種以上を選択して混合させた混合溶媒などが該当する。
【0044】
ステップS10で作製した混練物を正極集電体12の面上に正極層11,13として形成する塗工工程を行う〔ステップS12〕。具体的には、混練物を正極集電体12の面上に所定の形成法で正極層11,13を形成する。所定の形成法は、例えばブレード、コンマ、ダイ、転写、押出し、塗装(塗り付けや吹き付けを含む)、蒸着等が該当する。正極層11,13の厚さ(図1に示す厚みD1〜D4)は、例えば片面ごとで10〜200[μm])となるように調整する。なお、正極集電体12の厚さは例えば5〜30[μm]程度である。こうして帯状の正極板10が形成される。
【0045】
正極集電体12の面上に正極層11,13が形成された後、図1(B)に示すようなクラックC1を生じさせるため、正極層11,13を乾燥する乾燥工程を行う〔ステップS14〕。乾燥工程における正極層11,13の変化について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4にはクラックの形成過程を模式図で示す。なお図4に示す模式図では、分かり易くするために正極集電体12の片面上に正極層11のみを形成した例を示す。図5には内部応力と乾燥率との関係をグラフ図で示す。図6には乾燥速度と乾燥率との関係をグラフ図で示す。
【0046】
上記ステップS12によって正極集電体12の面上に形成された正極層11,13は、活物質、導電材、結着材などが溶媒10d中に分散しているため、図4(A)のような状態である。この状態で乾燥を行うと溶媒10dが蒸発してゆくので、図4(B)に示すような状態になる。図4(B)の状態では正極活物質10bどうしの間隔が次第に狭くなってゆくのに伴い、矢印で示すように多方向から応力が生じる。詳細にみると、図4(C)に示すように、正極活物質10b粒子表面の固液気界面にて矢印で示すような引張り応力が生じる。この引張り応力が生じると、正極活物質10bの相互間で結合力が強い部位と弱い部位とが生じる。さらに溶媒10dが蒸発してゆくと結合力が弱い部位は結合を維持できなくなり、図4(D)に示すようにクラックC1が生じる。クラックC1は、次に示す第1特性および第2特性のうちで一方または双方を満たすことが望ましい。
【0047】
第1特性は、クラックC1どうしの最大間隔が、正極層11,13の平均粒子径に対して2〜10倍の範囲内に収めることである。最大間隔が2倍を下回ると単なる粒子間空隙と同レベルになるので、液枯れやイオン枯れを抑制し難くなるためである。一方、最大間隔が10倍を超えると物理的な欠陥が生じていると考えられ、逆に電極剥離などを引き起こし電池性能が損なわれる恐れがある。
【0048】
第2特性は、正極板10の面方向において、クラックC1の面方向総クラック長が0.1〜1.0[cm/cm2]の範囲内となる割合に収めることである。面方向総クラック長が0.1[cm/cm2]を下回ると、クラック内に浸入可能な非水電解質や電解液等の量が少なくなり、液枯れやイオン枯れに対する十分な効果が得られなくなるためである。一方、面方向総クラック長が1.0[cm/cm2]を超えると電極としての強度が不十分になり、電極剥離などを引き起こし逆に電池性能(特に耐久性)に悪影響を与える恐れがある。
【0049】
図4(D)に示すクラックC1が生じさせるにあたって、どのような制御法があるのかについて検討する。まず、一般的には図5に示すような内部応力と乾燥率との関係がある。図5では、縦軸を内部応力σとし、横軸を乾燥率Wとし、乾燥率Wが増えるに伴う内部応力σの変化を特性線L1で示す。乾燥率Wは、正極層11,13の固形分濃度を意味する。溶媒10dの比率を「X」とすると、W=1−Xである。
【0050】
図5において、特性線L1(実線)で示すように、乾燥率Wが高まるにつれて内部応力σも大きくなる。乾燥率W1(例えば70[%]程度)までは、図4(A)で示すように溶媒10dが蒸発するので、内部応力σに大きな変化は見られない。乾燥率W1を超えると内部応力σが次第に高まり、さらに乾燥率W3(例えば80[%]程度)の前後から内部応力σが急激に高まってゆく。これは、図4(B)で示すように溶媒10d自体の減少に伴う縮小で矢印(内部に「応力」を示す)のような応力や、図4(C)に「→」の矢印で示す溶媒10dの表面張力などの影響を受けて減率乾燥が起きるためである。このように内部応力σの急激な上昇は、図4(D)に示すクラックC1を生じさせる。そして、完全に乾燥する乾燥率Wx(100[%])では内部応力σが最高値になる。
【0051】
上述した第1特性や第2特性を満たすクラックC1,C2を正極層11,13に生じさせるには、図6に示すような乾燥制御に従って乾燥を行うのが望ましい。図6では、縦軸を乾燥条件(本例では乾燥速度dw/dt[min-1])とし、横軸を乾燥率W[%]とし、乾燥制御を制御線L2で示す。制御線L2によれば、乾燥開始後は、乾燥率W1から乾燥率W3の間における乾燥率W2(例えば85[%]程度)までは乾燥速度dw/dtをほぼ一定にして乾燥を行う。上述したように乾燥率W1を超えると内部応力σが急激に高まってゆくため、乾燥率W2から乾燥速度dw/dtを乾燥率Wxまで次第に低くしてゆく。
【0052】
乾燥率W2を超えるときの乾燥速度dw/dtは、面方向総クラック長やクラックC2(内部クラック)の形成量などに応じて適切に調整する。面方向総クラック長は、正極層11,13の表面を撮像する撮像手段(例えばCCDカメラ等)と、撮像された画像データを2値化処理するとともに、当該2値化データに基づいて画像解析を行う画像処理解析手段とを備えることで算出可能である。クラックC2の形成量は、イオンビームを用いた断面加工あるいは液体窒素などで凍結させた電極の破断面を同様に撮影することにより把握することが可能である。以上により、クラックC1が正極板10の正極層11,13に適切に形成される。
【0053】
図3に戻り、ステップS14の乾燥工程を終えた後、プレス機(例えばローラ等)によって正極板10をプレスするプレス工程を行う〔ステップS16〕。プレスによってクラックC1の一部で表面が閉じられ、図1(C)に示すクラックC2が形成される。クラックC2の形成量は、プレスする圧力によって制御(増減)することも可能である。なおプレス工程とともに、加工機によって正極板10を所定形状(板長,板厚,板幅等)に切断する工程を行ってもよい。こうして捲回可能な正極板10が形成される。
【0054】
(第2工程)負極板20の形成工程
負極集電体22に形成する負極層21,23の混練物を作製する混練工程を行う〔ステップS20〕。混練物は、バインダ20a、負極活物質20b、導電材20c、溶媒20dなどを混練した物である。
【0055】
バインダ20aは、バインダ10aと同様に任意の結着剤を用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、その変性体などが該当する。なお、リチウムイオン受入れ性を向上させるため、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体に対し、カルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等を併用したり、少量添加したりするのが望ましい。
【0056】
負極活物質20bは、軽金属、当該軽金属を含む合金、当該合金や軽金属自体を吸蔵・離脱することが可能な材料などで構成される。軽金属は、例えばリチウム(Li)やナトリウム(Na)などが該当する。軽金属を吸蔵・離脱することが可能な材料は、例えば炭素材料、珪素(Si)、珪素化合物、金属酸化物または高分子化合物などが該当する。炭素材料は、例えば熱分解炭素類、コークス類、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭などが該当する。コークス類には、例えばピッチコークス,ニードルコークス,石油コークスなどを含む。ガラス状炭素類には、難黒鉛化炭素材料などを含む。有機高分子化合物焼成体は、不活性ガス気流中または真空中において高分子化合物(例えばフェノール樹脂やフラン樹脂など)を高温(例えば約500℃以上)で焼成して炭素化された物質である。珪素化合物は、例えばCaSi2やCoSi2などが該当する。金属酸化物は、例えば酸化スズ(SnO2)などが該当する。高分子化合物は、例えばポリアセチレンやポリピロールなどが該当する。負極活物質20bとして用いる材料は、電池の種類や用途等に応じて任意に選択可能である。
【0057】
導電材20cは、導電性材料(導電性複合材料を含む)であれば任意である。導電材10cと同じ導電性材料であってもよく、異なる導電性材料であってもよい。溶媒20dには、溶媒10dと同様にして、混練に適したものを用いる。溶媒10dと同じ溶媒であってもよく、異なる溶媒であってもよい。
【0058】
絶縁性のセパレータ30は、多孔質の高分子材料や固体電解質などから形成できる。セパレータ30の厚さは、10〜50[μm]の範囲が例示できる。高分子材料は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどが該当する。さらには、これらの高分子材料から形成した不織布や、延伸多孔質化したフィルムなどを用いてもよい。固体電解質には、例えばジルコニア等が用いられる。
【0059】
ステップS12と同様にして、ステップS20で作製した混練物を負極集電体20e上に負極層21,23として形成する塗工工程を行う〔ステップS22〕。具体的には、ステップS12と同様の形成法で混練物を負極集電体22の面上に負極層21,23を形成する。負極層21,23の厚さは、例えば片面ごとに10〜200[μm])となるように調整する。負極集電体20eの厚さは、例えば5〜50[μm]程度である。こうして帯状の負極板20が形成される。
【0060】
その後、ステップS14と同様にして負極板20を乾燥してクラックC1を生じさせる乾燥工程を行い〔ステップS24〕、ステップS16と同様にして負極板20をプレス機によって負極板20をプレスするプレス工程を行う〔ステップS26〕。こうして、捲回可能な負極板20が形成される。
【0061】
(第3工程)捲回および扁平プレス
第1工程で形成された正極板10、第2工程で形成された負極板20、セパレータ30などを積層して渦巻き状に捲回する捲回工程を行い〔ステップS30〕、当該捲回工程によって形成される捲回体100を扁平状にプレスする扁平プレス工程を行う〔ステップS32〕。扁平プレス後は、電極体となる扁平体200が形成される(図9を参照)。
【0062】
ステップS30では、図7に示すように、正極板10,負極板20,セパレータ30などを積層して、捲回手段50に捲回する。捲回手段50は、例えば円柱状や円筒状のローラ等が該当し、所定方向(例えば矢印D6方向)に回転して捲き取る。
【0063】
ステップS32では、図8に示すように平面台54(平面状の作業台)上に固定した捲回体100に対して、扁平プレス手段52をプレス方向(例えば矢印D7方向)に移動させて扁平プレスする。扁平プレス手段52は、所定形状(例えば平面形状)のプレス面52aを有するプレス機などが該当する。
【0064】
上述した第1工程から第3工程を経て、図9に示すような扁平体200が形成される。クラックC1,C2を形成する部位は、扁平体200の全体であってもよく一部であってもよい。扁平体200の一部に形成する場合は、斜線ハッチで示すクラック形成部位A1とするのが望ましい。このクラック形成部位A1は、扁平体200の中央部分(所定周回までの部位)であり、クラックが無い場合には非水電解質や電解液等が浸入しにくい。所定周回は、例えば総周回数の内周20[%]程度である。この部位にクラックC1,C2を形成することで、捲回型電池の電池性能を向上させることができる。
【0065】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、正極板10および負極板20のうちで一方または双方の電極板の全域に乾燥で生じたクラックC1,C2を有する構成とした(図1(B),図1(C),図2(A)を参照)。この構成によれば、乾燥で生じさせたクラックC1,C2は集電体(正極集電体12および負極集電体22)には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0066】
請求項2に対応し、正極板10および負極板20のうちで一方または双方の電極板の一部であって、集電体露出部12a(電極に接続する接続部)から所定距離(非クラック形成幅B3)以上離れた領域内に乾燥で生じたクラックC1,C2を有する構成とした(図2(B)を参照)。この構成によれば、接続部から所定距離以上離れた領域内には、乾燥で生じさせたクラックC1,C2を有する。乾燥で生じたクラックC1,C2は集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0067】
請求項3に対応し、クラックC1,C2は、集電体上に電極層(正極層11,13および負極層21,23)が形成された電極板に対し、所定の乾燥速度(図6の制御線L2)で電極層を乾燥させて形成する構成とした(図6を参照)。この構成によれば、クラックC1,C2は所定の乾燥速度で形成されるので、電極層は大きく裂けることがない。乾燥で生じたクラックC1,C2は集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0068】
請求項4に対応し、クラックC2は電極層の内部に有する構成とした(図2(C)を参照)。この構成によれば、電極層の表面に現れるクラックC1に加えて、電極層に内在するクラックC2を有する。表面だけでなく内部にも形成されているので、クラックC1,C2が増加する分だけ液枯れやイオン枯れを抑制できる。
【0069】
請求項5および請求項11に対応し、クラックC1,C2は、相互間距離が活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値とする構成とした。この構成によれば、クラックC1,C2の相互間距離が活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値とするので、液枯れやイオン枯れをより確実に抑制することができる。
【0070】
請求項6および請求項12に対応し、クラックC1,C2は、電極板の面方向において、面方向総クラック長が0.1〜1.0[cm/cm2]の割合である構成とした。この構成によれば、面方向総クラック長が0.1〜1[cm/cm2]であるので、液枯れやイオン枯れをより確実に抑制することができる。
【0071】
請求項7に対応し、電極層は、繊維状の導電材10cを含む構成とした。この構成によれば、繊維状の導電材10cは、クラックC1,C2が生じた電極層の相互間を電気的に導通させ、かつクラックC1,C2による強度低下を補うことが可能となる。よって、電極層の相互間における電気的導通が損なわれるのを少なく抑えることができる。
【0072】
請求項8に対応し、クラックC1,C2は、捲回体100(捲回した電極体)における所定周回までの部位に形成される構成とした(図9を参照)。この構成によれば、電解液が浸透し難い電極体の中央部分に対して、積極的にクラックC1,C2を形成する。形成されたクラックC1,C2には電解液が浸透し易いので、クラックC1,C2が形成されない場合に比べて電池性能を向上させることができる。
【0073】
請求項9に対応し、電池の製造方法において、集電体上に電極層が形成された電極板に対し、所定の乾燥速度で電極層を乾燥させてクラックC1,C2を形成する乾燥工程(クラック形成工程)を有する構成とした(図3を参照)。この構成によれば、乾燥で生じたクラックC1,C2は集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0074】
請求項10に対応し、乾燥工程(クラック形成工程)は、電極板における幅方向の中央部を熱して乾燥させる構成とした(図1(C)を参照)。この構成によれば、形成されたクラックC1,C2には電解液が浸透し易いので、クラックC1,C2が形成されない場合に比べて電池性能を向上させることができる。
【0075】
請求項13に対応し、電池の製造装置において、集電体上に電極層が形成された電極板に対し、所定の乾燥速度で電極層を乾燥させてクラックC1,C2を形成する乾燥手段40(クラック形成手段)を有する構成とした(図2(C),図6を参照)。この構成によれば、乾燥で生じたクラックC1,C2は集電体には影響を及ぼさないので、集電体の強度や耐久性等を確保することができる。
【0076】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、積層型電池に本発明を適用した例であって、図10〜図12を参照しながら説明する。なお説明を簡単にするために、実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
実施の形態2の積層型電池が実施の形態1の捲回型電池と実質的に異なるのは、電極板の形状である。すなわち電極板の形状は、捲回型電池が帯状であるのに対して、積層型電池は長方形状(正方形状を含む)である点が相違する。クラックC1,C2を形成する部位について、図10を参照しながら説明する。
【0078】
図10には、長方形状に形成された正極板10(あるいは負極板20)について、クラックC1,C2を形成する部位を網掛けで示す。図10(A)に示すクラックC1,C2の形成例は、実施の形態1における図2(A)に対応する。同様に図10(B)に示すクラックC1,C2の形成例は、実施の形態1における図2(B)に対応する。これらのクラックC1,C2の形成方法は実施の形態1と同様である(図2(C)を参照)。
【0079】
図11には、正極板10,負極板20,セパレータ30などを積層して積層型電池を製造する工程についてチャート図で示す。図11に示す製造方法は図3に示す製造方法とほぼ同様であるので、相違する工程について説明する。相違する工程は第3工程、すなわちステップS40の切断工程と、ステップS42の積層工程である。
【0080】
ステップS40の切断工程では、帯状の正極板10、帯状の負極板20、帯状のセパレータ30をそれぞれ長方形状に切断する。すなわち、切断用の加工機によって図10に示す正極板10(負極板20)のような形状に切断する。
【0081】
ステップS42の積層工程では、ステップS40の切断工程で切断された正極板10、負極板20、セパレータ30などを積層する。積層後は、電極体となる積層体300が形成される(図12を参照)。
【0082】
上述した第1工程から第3工程を経て、図12に示すような積層体300が形成される。クラックC1,C2を形成する部位は、積層体300の全体であってもよく一部であってもよい。積層体300の一部に形成する場合は、斜線ハッチで示すクラック形成部位A2とするのが望ましい。このクラック形成部位A2は、積層体300の中央部分(中央層から所定数層までの部位)であり、クラックが無い場合には非水電解質や電解液等が浸入しにくい。所定数層は、例えば総積層数の中央20[%]程度である。この部位にクラックC1,C2を形成することで、積層型電池の電池性能を向上させることができる。
【0083】
上述した実施の形態2によれば、請求項8に対応し、クラックC1,C2は、積層体300(積層した電極体)における中央層から所定数層までの部位に形成される構成とした(図12を参照)。この構成によれば、電解液が浸透し難い電極体の中央部分に対して、積極的にクラックC1,C2を形成する。形成されたクラックC1,C2には電解液が浸透し易いので、クラックC1,C2が形成されない場合に比べて電池性能を向上させることができる。なお、請求項1〜7,9〜13にかかる発明については実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0084】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0085】
上述した実施の形態1,2では、バインダ10a,正極活物質10b,導電材10c,溶媒10dを混練した混練物を正極集電体12上に正極層11,13として形成する構成とした(図3,図11のステップS12,S22に示す塗工工程を参照)。この形態に代えて、バインダ10a,正極活物質10b,導電材10c,溶媒10dを正極集電体12上に並行して(あるいは前後して順番に)塗工することで、正極集電体12上に直接的に正極層11,13として形成する構成としてもよい。負極集電体22上に負極層21,23として形成する場合も同様である。この形態によれば、混練工程が不要になるので、電極板の形成に要する時間を短縮することができる。
【0086】
上述した実施の形態1,2では、集電体(正極集電体12や負極集電体22)の両面に電極層(正極層11,13や負極層21,23)を形成した電極板を適用した(図1等を参照)。この形態に代えて、集電体の片面にのみ電極層を形成した電極板を適用することもできる。電極層の形成面が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0087】
実施の形態2では、長方形状をなす正極板10のうちで正極層11が形成された部位の全域にクラックC1,C2を形成する構成や(図10(A)を参照)、長方形状をなす正極板10のうちで正極層11が形成された部位の一部(ほぼ全域)にクラックC1,C2を形成する構成とした(図10(B)を参照)。この形態に代えて、長方形状をなす正極板10のうちで正極層11が形成された部位にかかる中央部にクラックC1,C2を形成する構成としてもよい。例えば図13(A)に示すように、集電体露出部12a(電極に接続する接続部)を含めて正極板10の周縁から所定距離以上離れた領域、すなわち図示するクラック形成部11c内にクラックC1,C2を形成する。図12に示す積層体300は積層板(すなわち正極板10、負極板20、セパレータ30等)が密着するため、中心側ほど浸入可能な非水電解質や電解液等の量が少なくなる。そこで、中心側のクラック形成部11c内にクラックC1,C2を形成して非水電解質や電解液等を浸入し易くし、積層型電池の電池性能を向上させることができる。正極板10の正極層11を例に説明したが、正極層13や負極板20(負極層21,23)についても同様である。
【0088】
実施の形態1,2では、第1特性および第2特性のうちで一方または双方を有するクラックC1,C2が電極板の所望領域内でほぼ均等に形成されるように構成した(図1,図2,図10等を参照)。この形態に代えて、中心側に向かってクラックC1,C2の割合が増加するように構成してもよい。電極体の中心側は、図9の扁平体200では最内周であり、図12の積層体300では積層の中心層である。電極板の中心側は、図10(A)や図10(B)に示すようにクラック形成部11a内の一点鎖線(本例では横線)で示す位置であり、図13(A)や図13(B)に示すようにクラック形成部11c内の一点鎖線(本例では縦線と横線)で示す位置である。中心側ほどクラックC1,C2の割合が増加すれば非水電解質や電解液等が浸入し易くなり、電池(捲回型電池や積層型電池等)の電池性能を向上させることができる。
【実施例】
【0089】
実施の形態1,2に対応する実施例について、下記に示す表1〜3を参照しながら説明する。表1には正極板10に関するデータを示す。表2には負極板20に関するデータを示す。表3には正極板10や負極板20などを有する電池の性能試験結果を示す。各表において、面方向総クラック長を単に「クラック長」と示す。実施例1〜6は実施の形態1,2のいずれにも対応し、これらの実施例1〜6に対する比較例1〜3も併せて示す。なお、バインダ10a,20aにはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を共通して用い、溶媒10d,20dにはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を共通して用いた。本発明は各実施例には何ら限定されず、特許請求の範囲に記載された事項を満たす種々の変更を行うことが可能である。種々の変更を行った場合でも、上述した実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
【0090】
〔実施例1〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのリチウム燐酸鉄(LiFePO4)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)および気相成長炭素繊維(VGCF)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が100[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.2[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.6[cm/cm2]になった。
【0091】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が100[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.6[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.2[cm/cm2]になった。
【0092】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は98[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は97[%]であった。
【0093】
〔実施例2〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのリチウム燐酸鉄(LiFePO4)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)および気相成長炭素繊維(VGCF)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が120[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.1[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0094】
負極板20は、負極活物質20bとしての炭素(C)や、導電材20cとしての気相成長炭素繊維(VGCF)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が90[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.6[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.4[cm/cm2]になった。
【0095】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は92[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は85[%]であった。
【0096】
〔実施例3〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのリチウム燐酸鉄(LiFePO4)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が100[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.2[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は1.0[cm/cm2]になった。
【0097】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)および硫化銅(II)(CuS)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が60[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.4[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0098】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は96[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は80[%]であった。
【0099】
〔実施例4〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのニッケル酸リチウム(LiNiO2)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が80[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.3[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.2[cm/cm2]になった。
【0100】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が50[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.7[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.7[cm/cm2]になった。
【0101】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は95[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は88[%]であった。
【0102】
〔実施例5〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのニッケル酸リチウム(LiNiO2)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が100[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.3[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.6[cm/cm2]になった。
【0103】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が60[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.3[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0104】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は91[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は82[%]であった。
【0105】
〔実施例6〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO2)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が80[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.3[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.3[cm/cm2]になった。
【0106】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が50[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.8[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、形成されたクラックC1,C2の面方向総クラック長は0.2[cm/cm2]になった。
【0107】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は94[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は88[%]であった。
【0108】
〔比較例1〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのリチウム燐酸鉄(LiFePO4)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)および気相成長炭素繊維(VGCF)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が100[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.1[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0109】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が80[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.3[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0110】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は86[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は72[%]であった。
【0111】
〔比較例2〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのニッケル酸リチウム(LiNiO2)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が80[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.2[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0112】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が50[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.4[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0113】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は88[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は76[%]であった。
【0114】
〔比較例3〕
正極板10は、正極活物質10bとしてのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO2)や、導電材10cとしてのアセチレンブラック(AB)などを混合して、正極集電体12の面上に厚みD1,D2が80[μm]となるように正極層11,13を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.2[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って正極層11,13を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0115】
負極板20は、導電材20cを用いずに、負極活物質20bとしての炭素(C)などを混合して、負極集電体22の面上に厚みD1,D2が50[μm]となるように負極層21,23を形成した。初期の乾燥速度dw/dtを0.4[min-1]として、図6に示す制御線L2に従って負極層21,23を乾燥させたところ、クラックC1,C2は形成されなかった。
【0116】
上述した正極板10および負極板20を含む電池を作製して性能試験を行ったところ、3時間率(3C)の定放電にかかる設計容量比は87[%]であり、60[℃]の温度下で1ヶ月間保管したときの容量維持率は78[%]であった。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【符号の説明】
【0120】
10 正極板(電極板)
10a,20a バインダ(結着剤)
10b 正極活物質(電極活物質)
10c,20c 導電材
10d,20d 溶媒
11,13 正極層(電極層)
12 正極集電体(集電体)
20 負極板(電極板)
20b 負極活物質(電極活物質)
21,23 負極層(電極層)
22 負極集電体(集電体)
30 セパレータ
40 乾燥手段
50 捲回手段
52 扁平プレス手段
100 捲回体
200 扁平体(電極体)
300 積層体(電極体)
A1,A2 クラック形成部位
C1,C2 クラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池において、
前記正極板および前記負極板のうちで一方または双方の電極板の全域に乾燥で生じたクラックを有することを特徴とする電池。
【請求項2】
集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池において、
前記正極板および前記負極板のうちで一方または双方の電極板の一部であって、電極に接続する接続部から所定距離以上離れた領域内に乾燥で生じたクラックを有することを特徴とする電池。
【請求項3】
前記クラックは、前記集電体上に前記電極層が形成された前記電極板に対し、所定の乾燥速度で前記電極層を乾燥させて形成することを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記クラックは、前記電極層の内部にも有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記クラックは、相互間距離が前記活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記クラックは、前記電極板の面方向において、単位面積当たりの総クラック長が0.1〜1.0cm/cm2の割合であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記電極層は、繊維状の導電材を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
【請求項8】
前記クラックは、捲回した電極体における所定周回までの部位、または、積層した電極体における中央層から所定数層までの部位に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
【請求項9】
集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池を製造する電池の製造方法において、
前記集電体上に前記電極層が形成された前記電極板に対し、所定の乾燥速度で前記電極層を乾燥させてクラックを形成するクラック形成工程を有することを特徴とする電池の製造方法。
【請求項10】
前記クラック形成工程は、前記電極板における幅方向の中央部を熱して乾燥させることを特徴とする請求項9に記載の電池の製造方法。
【請求項11】
前記クラック形成工程は、前記クラックの相互間距離が前記活物質の平均粒子径に対して2〜10倍を最大値となるように、前記所定の乾燥速度を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の電池の製造方法。
【請求項12】
前記クラック形成工程は、前記クラックが、前記電極板の面方向において、単位面積当たりの総クラック長が0.1〜1.0cm/cm2の割合となるように、前記所定の乾燥速度を制御することを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載の電池の製造方法。
【請求項13】
集電体上に活物質を含む電極層がそれぞれ形成された正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に介在させる絶縁性のセパレータとを備える電池を製造する電池の製造装置において、
前記集電体上に前記電極層が形成された前記電極板に対し、所定の乾燥速度で前記電極層を乾燥させてクラックを形成するクラック形成手段を有することを特徴とする電池の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−248477(P2012−248477A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120779(P2011−120779)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】