説明

電池とその製造方法

【課題】電池において、正極層、負極層、及びセパレータ層を含む電極積層体が外装体の内部で移動したり位置ずれしたりすることを抑えるとともに、外装体の内の金属層と電極積層体との電気的短絡を防ぐ。
【解決手段】電池100が、セパレータ層2とセパレータ層2を間に挟んで互いに重ね合わせられている正極層1a及び負極層1bとを含む電極積層体3と、電極積層体3を包囲する外装体4と、を有している。セパレータ層2は、その外周の一部に正極層1a及び負極層1bに覆われていない非被覆部2aを有し、非被覆部2aに貫通孔6が設けられている。外装体4は、熱融着性樹脂と金属層とを含む1対もしくは折り返された1枚のラミネートフィルム4aからなり、ラミネートフィルム4a同士は、セパレータ層2の非被覆部2aの貫通孔6を介して互いに融着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータ層と、セパレータ層を間に挟んで互いに重ね合わせられている複数の電極層とを含む電極積層体を、1対のラミネートフィルムからなる外装体で包囲した構成の電池がある。
【0003】
このような電池において、図12に示すように、外装体内部での電極積層体21の移動や位置ずれを防止するために、平面的に見て、セパレータ層22を電極層23よりも外側に突出させた構成がある(特許文献1,2参照)。そして、電極積層体21を、外装体を構成する1対のラミネートフィルム20で両面から覆う際に、セパレータ層22の突出した部分を、1対のラミネートフィルム20で挟んでから、熱融着や超音波融着などの方法で、ラミネートフィルム20同士を互いに融着させる。このとき、互いに融着する1対のラミネートフィルム20に挟まれて、セパレータ層22の突出した部分が固定される。
【0004】
また、特許文献3には、複数の電極層とセパレータ層を含む電極積層体の、平面的に見て中央部分に貫通孔を形成し、この電極積層体を1対のラミネートフィルムで両面から覆い、ラミネートフィルム同士を、貫通孔を介して互いに直接接触させて互いに融着させた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−277062号公報
【特許文献2】特開2007−311323号公報
【特許文献3】実開平03−079162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載された構成では、セパレータ層22の、側方に突出した部分が、外装体を構成する1対のラミネートフィルム20に挟まれて固定されている。しかし、耐熱性が要求されるセパレータ層22の材質によっては、熱融着性が要求されるラミネートフィルム20の内面の熱融着性樹脂とは融着性が悪い場合がある。
【0007】
また、特許文献3に示すように、平面的に見て電極積層体の中央部分に貫通孔が形成された構成の場合には、電極層とラミネートフィルムの金属層との間で電気的短絡を生じるおそれがある。その理由の1つは、複数の電極層の貫通孔内面の端縁が、その貫通孔の内部に入り込んで互いに融着されるラミネートフィルムの内面に当接し、貫通孔内面の端縁がラミネートフィルムの内面を傷つけてしまうことである。その場合、ラミネートフィルムの内面の傷ついた部分において電極層とラミネートフィルムの金属層とが接触する可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、正極層、負極層、及びセパレータ層を含む電極積層体が外装体の内部で移動したり位置ずれしたりすることを抑えるとともに、外装体内の金属層と電極積層体との電気的短絡を防ぐことができる電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電池は、セパレータ層とセパレータ層を間に挟んで互いに重ね合わされる正極層及び負極層とを含む電極積層体と、電極積層体を包囲する外装体と、を有し、セパレータ層は、セパレータ層の外周の一部に前記正極層及び負極層に覆われていない非被覆部を有し、非被覆部に貫通孔が設けられており、外装体は少なくとも熱融着性樹脂と金属層とを含む1対もしくは折り返された1枚のラミネートフィルムからなり、ラミネートフィルム同士は、セパレータ層の非被覆部の貫通孔を介して互いに融着している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電池によると、セパレータ層の非被覆部に貫通孔が設けられ、この貫通孔を介してラミネートフィルム同士が融着されているため、電極積層体の外装体内での移動や位置ずれが抑えられる。また、貫通孔には電極が存在しないため、電極層とラミネートフィルムに含まれる金属層との間で電気的短絡を生じる危険性が小さい。更に、貫通孔はセパレータ層のみに形成されており、貫通孔が形成される部分は電極積層体の全厚に比べて薄く、かつセパレータ層は電極層と比べてやわらかい材質からなるため、貫通孔の端部により熱融着性樹脂が損傷する可能性も低減される。
【0011】
また、本発明の電池の製造方法によると、電極積層体を構成した後に、セパレータ層の非被覆部に貫通孔を形成することができる。特に非被覆部に複数のセパレータ層が存在する場合には、複数のセパレータ層に一括して貫通孔を形成できるので、作業効率が非常に良好で製造コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の電池を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す電池をA−A線で切断した要部拡大断面図である。
【図3】(a)は図1に示す電池の製造方法において電極積層体を構成した状態を示す要部拡大断面図、(b)は貫通孔を形成する工程を示す要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の電池を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の電池を模式的に示す平面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態の電池を模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態の電池を模式的に示す平面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態の電池を模式的に 示す平面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態の電池を模式的に示す平面図である。
【図10】(a)は本発明の第8の実施形態の電池を模式的に示す平面図、(b),(c)はその電池を保持する2種類の電池ホルダーをそれぞれ示す平面図及び側面図である。
【図11】(a)は図10に示す電池及び電池ホルダーを含む電池モジュールの要部を示す斜視図、(b)はその断面図である。
【図12】特許文献1,2に記載の電池を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1に本発明の電池100の第1の実施形態の概略平面図、図2は図1のA−A断面の拡大図が示されている。なお、以下に説明する各実施形態の電池100を平面的に見た各図面においては、見やすくするために、外装体の内部の電極積層体等の各部材を明確に示しつつ、ラミネートフィルム同士の融着部もハッチングにて明確に示している。
【0015】
本実施形態の電池100は、複数の正極層1a及び複数の負極層1bとこれらの間に介在するセパレータ層2とが積層されてなる電極積層体3が、1対のラミネートフィルム4aからなる外装体4によって包囲された構成である。電極積層体3の複数の正極層1aは正極端子5aに、複数の負極層1bは負極端子5bに接続されている。
【0016】
セパレータ層2としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂からなるものが使用可能である。さらに、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂材料またはポリアミド系樹脂材料を延伸などにより多孔化したフィルムや、前記した樹脂材料からなる不織布なども使用可能である。
【0017】
さらに、これらのフィルムや不織布の表面にシリカやアルミナなどの無機微粉末を多孔質の状態で付着させたものや、これらのフィルムや不織布の内部にシリカやアルミナなどの無機微粉末を分散させたものも、セパレータ層2として用いることができる。
【0018】
後述するように、本発明では、ラミネートフィルム4aからなる外装体4に対してセパレータ層2を固定するにあたり、貫通孔6を介してラミネートフィルム4a同士を融着するため、ラミネートフィルム4aの熱融着性樹脂の材料とセパレータ層2の材料との融着性のよい組み合わせを考慮する必要がない。
【0019】
外装体4を構成するラミネートフィルム4aとしては、例えば、アルミニウム等の金属層の片面にポリエステル系の樹脂を有し、他方の面にポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を有し、後者の層が熱融着性樹脂であるものを利用できる。
【0020】
本実施形態では、セパレータ層2の外周の一部に、正極層1a及び負極層1bに覆われていない非被覆部2aが設けられている。具体的には、図1に示すように本実施形態の正極層1a及び負極層1bは四角形(矩形)の平面形状を有しており、セパレータ層2の非被覆部2aは、平面的に見て正極層1a及び負極層1bの四角形の平面形状から外側に突出する部分である。そして、この非被覆部2aに貫通孔6が開けられている。このように正極層1a及び負極層1bに覆われていない非被覆部2aに貫通孔6が開けられているため、外装体4を構成するラミネートフィルム4a同士は、貫通孔6を介して互いに直接接触する。ラミネートフィルム4a同士は、電極積層体3の外側に位置する外周部分7で互いに融着されて、袋状の外装体4が構成されている。
【0021】
外装体4の外周部分7の一辺から、正極端子5a及び負極端子5bが融着部分を経由して引き出されている。正極端子5a及び負極端子5bは、図示しない金属融着性樹脂を介してラミネートフィルム4aに融着することで、正極端子5a及び負極端子5bは外装体4に固定される。そして、ラミネートフィルム4a同士は、外周部分7のみならず、貫通孔6を介して互いに接触する部分においても、融着している。この融着部分を、便宜上、「セパレータ層固定用融着部分8」という。このように貫通孔6の内部でラミネートフィルム4a同士が互いに接合しているため、セパレータ層2は、貫通孔6とセパレータ層固定用融着部分8との間の遊びの範囲内でしか平面的に移動することができず、実質的に固定される。すなわち、この貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8によって、電極積層体3の、外装体4の内部での移動及び位置ずれが実質的に防止される。
【0022】
特に、本実施形態では、正極端子5a及び負極端子5bが電極積層体3の外部に突出する側部(図1左側)とは反対側の側部(図1右側)に、貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が位置している。すなわち、正極層1a及び負極層1bに固定された正極端子5a及び負極端子5bが1対のラミネートフィルム4aに挟み付けられることによって電極積層体3の固定に寄与する部分と、前記したように貫通孔6とセパレータ層固定用融着部分8によって電極積層体3の固定に寄与する部分とが、平面的に見て同一の側部ではなく、互いに反対側の側部にそれぞれ設けられている。これは、電極積層体3が両側部でそれぞれ固定されることを意味し、正極端子5a及び負極端子5bが延びている方向に対する力が加わることによる電極積層体3の移動及び位置ずれを防止するためにより効果的である。
【0023】
なお、図7を使用して後述するが、貫通孔6とセパレータ層固定用融着部分8が複数あって、そのうちの一部の融着部分8と、それとは別の融着部分8とが、電極積層体3の対向する側部にあっても、同様に電極積層体3の移動及び位置ずれ防止において効果的である。
【0024】
さらに、本実施形態では、複数の貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が、正極端子5a及び負極端子5bの延びている方向と直交する方向に並んで位置している。従って、正極端子5a及び負極端子5bに引っ張りまたは圧縮の力が加わった場合でも、その力の方向に直交する方向に並ぶ複数の固定部(セパレータ層固定用融着部分8)が電極積層体3の移動や位置ずれを抑える。
【0025】
また、図2に示すように、本実施形態では、電極積層体3の固定用の穴は電極1a,1bの外側の領域に位置するセパレータ層2の非被覆部2aに形成されているため、貫通孔6には短絡を引き起こすおそれのある電極が存在せず、ラミネートフィルム4aの金属層との短絡が防止できる。
【0026】
すなわち、セパレータ層2の非被覆部2aに設けられた貫通孔6を介してラミネートフィルム4a同士が互いに融着されているため、セパレータ層2の平面的な移動や位置ずれを抑えるにあたり、ラミネートフィルム融着層とセパレータ層2の材料の組合せ範囲を広くできると共に、ラミネートフィルム4a同士が融着される貫通孔6には電極が存在せず、また電極との間に絶縁性のセパレータ層2を介在して貫通孔6が配置されているため、電気的短絡を生じる可能性を低減できる。
【0027】
この電池100の製造方法について説明すると、まず、セパレータ層2を間に挟んで正極層1aと負極層1bを重ね合わせて電極積層体3を形成する。電極積層体3は、正極層1aと負極層1bと1層のセパレータ層2との組み合わせであってもよいが、複数の正極層1a及び負極層1bと2層以上のセパレータ層2との組み合わせであってもよい。そして、セパレータ層2の外周の一部には、正極層1aと負極層1bによって覆われない非被覆部分2aが設けられる。一例としては、図1に示すように、平面的に見て四角形状の電極層1a,1bから外側にセパレータ層2が突出した部分が非被覆部2aである。平面的に見て非被覆部2aとは反対側の側部において、各正極層1aを正極端子5aに、各負極層1bを負極端子5bに電気的に接続する。そして、電極積層体3の非被覆部2aに貫通孔6を形成する。図3(a)に示すように、非被覆部2aにおいて複数のセパレータ層2を重ね、例えば図3(b)に示すようにパンチ9とダイ10を用いて、複数のセパレータ層2に一括して貫通孔6を形成する。なお、電極積層体3が複数のセパレータ層2を含む場合であっても、非被覆部2aには1層のセパレータ層2のみが存在するように、複数のうちの1層のセパレータ層2のみが正極層1a及び負極層1bの外側まで延びている構成にしてもよい。
【0028】
このように、正極端子5aと負極端子5bが接続され、非被覆部2aに貫通孔6が形成された電極積層体3を、図2に示すように、1対のラミネートフィルム4aで表裏両面から覆う。それから、ラミネートフィルム4a同士を、外周部分7において、注液口となる一辺を残して熱融着または超音波融着などの方法で互いに接合する。さらに、非被覆部2aの貫通孔6内において、ラミネートフィルム4a同士を直接接触させ、互いに融着させる。一例としては、貫通孔6よりも細い径を有する細長いヒータを外側から当接させて、ラミネートフィルム4a同士を互いに熱融着させる。次に、図示しない電解液を注液口から注入して、最終封止辺を融着する。なお、電解液を注入した後に貫通孔6においてラミネートフィルム4a同士を融着してもよい。
【0029】
本実施形態の製造方法では、貫通孔6を形成する穴開け工程は1回で済むため、作業効率が非常に良好で製造コストの低減につながる。
【0030】
図4に示す本発明の第2の実施形態では、多数の貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が形成され、互い違い(千鳥状)の2列をなすように配置されている。そのために、第1の実施形態よりも大面積の非被覆部2aが設けられている。この構成によると、セパレータ層固定用融着部分8が多いため、電極積層体3の移動及び位置ずれの防止の効果が大きい。さらに、一方の列内のセパレータ層固定用融着部分8同士の間のセパレータ層2が、正極端子5a及び負極端子5bの延びる方向と平行に移動しようとする力を受けても、他方の列のセパレータ層固定用融着部分8がその力に抗するため、電極積層体3をより強固に固定できる。本実施形態でも、正極端子5a及び負極端子5bが電極積層体3の外部に突出する側部と反対側の側部において、複数の貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が、正極端子5a及び負極端子5bが突出する方向と直交する方向に並んで位置しているため、電極積層体3の移動や位置ずれを起こしにくい。貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8を、3列以上の列をなすように形成してもよい。
【0031】
図5に示す本発明の第3の実施形態では、正極層1a及び負極層1bが四角形の平面形状を有し、セパレータ層2は正極層1a及び負極層1bよりも一回り大きい四角形の平面形状を有し、セパレータ層2が、正極層1a及び負極層1bよりも、正極端子5a及び負極端子5bが電極積層体3の外部に突出する側部(図4左側)と反対側の側部(図4右側)の方にはみ出している。このはみ出した部分が非被覆部2aであり、複数の貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が、セパレータ層2の全長にわたって1列に並んで設けられている。本実施形態でも、正極端子5a及び負極端子5bが電極積層体3の外部に突出する側部と反対側の側部において、複数の貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が、正極端子5a及び負極端子5bが突出する方向と直交する方向に並んで位置しているため、電極積層体3の移動や位置ずれを起こしにくい。さらに、本実施形態の場合、電極積層体3の平面形状、ひいては電池100の平面形状を四角形にすることができ、保管や取り扱いや配置が容易である。
【0032】
セパレータ層2が正極層1a及び負極層1bよりもはみ出している部分、すなわち非被覆部2aが、平面的に見て四角形のセパレータ層2のいずれの辺に設けられていてもよく、複数の辺にそれぞれ設けられていてもよい。
【0033】
図6に示す本発明の第4の実施形態では、セパレータ層2が四角形の平面形状を有し、正極層1a及び負極層1bの外周の一部が、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状に形成されている。このように正極層1a及び負極層1bの外周の平面的に見て内側に後退した部分にセパレータ層2が対向し、このセパレータ層2の対向する部分が、正極層1a及び負極層1bに覆われない非被覆部2aになっている。そこで、この非被覆部2aに貫通孔6を形成し、貫通孔6を介してラミネートフィルム4a同士を互いに直接接触させ、融着させている。本実施形態の場合、第2の実施形態と同様に、電極積層体3及び電池100の平面形状を四角形にして保管や取り扱いや配置を容易にできる。また、スペース効率が良く小型化に適する。さらに、正極層1a及び負極層1bの、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状が、曲線状(円弧状)の輪郭11を有しているので、この部分がラミネートフィルム4aの内面を傷つける可能性が低い。
【0034】
なお、本実施形態の変形例として、正極層1a及び負極層1bの、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状の部分を、正極層1a及び負極層1bの互いに対向する2辺に設けたり、電極1の4辺全てに設けたりすることもできる。
【0035】
図7に示す本発明の第5の実施形態では、2つのセパレータ層固定用融着部分8が平面的に見て同一の側部ではなく、互いに反対側の側部にそれぞれ設けられている。この場合、電極積層体3が両側部でそれぞれ固定されることになり、図8上下方向の力が加わることによる電極積層体3の移動及び位置ずれを防止するために効果的である。
【0036】
図8に示す本発明の第6の実施形態では、セパレータ層2が四角形の平面形状を有し、正極層1a及び負極層1bは、その四角形の2つの角部に位置する部分が面取りされて後退している。これにより電極の外側の領域にセパレータ層2の対向部分が形成されて非被覆部2aとなっている。そして、この非被覆部2aに貫通孔6を形成し、貫通孔6を介してラミネートフィルム4a同士を互いに直接接触させ、融着させている。本実施形態でも、正極端子5a及び負極端子5bが電極積層体3の外部に突出する側部と反対側の側部の両端において、複数の貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が、正極端子5a及び負極端子5bが突出する方向と直交する方向に並んで位置しているため、電極積層体3の移動や位置ずれを起こしにくい。また、本実施形態は、電極積層体3及び電池100の平面形状を四角形にして保管や取り扱いや配置を容易できるとともに、スペース効率がさらに向上し小型化に適する。しかも、正極層1a及び負極層1bの、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状が、曲線状(円弧状)の輪郭11を有しているので、ラミネートフィルム4aの内面を傷つける可能性が低い。
【0037】
第6の実施形態の変形例として、図示しないが、正極層1a及び負極層1bが四角形の平面形状を有し、正極層1a及び負極層1bの四角形の2つの角部において、セパレータ層2が、正極層1a及び負極層1bの四角形の平面形状から外側に突出した形状になっていてもよい。正極層1a及び負極層1bとセパレータ層2のいずれを四角形の平面形状に形成した方が有利であるかを適宜に判断して、この変形例を採用するか否かを決定すればよい。
【0038】
第4の実施形態と第6の実施形態とを組み合わせて、正極層1a及び負極層1bの一辺には、第4の実施形態と同様に、その辺の中央付近に、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状の部分を設け、その辺に対向する辺には、第6の実施形態と同様に、両端部に、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状の部分を設けてもよい。この場合、一辺の中央付近と、それに対向する辺の両端部との合計3個所に非被覆部2aが設けられ、各非被覆部2aにそれぞれ貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8が形成されている。この構成では、3個所で固定することにより、電極積層体3の移動及び位置ずれの防止の効果が大きい。
【0039】
図9に示す本発明の第7の実施形態は、セパレータ層2が四角形の平面形状を有し、セパレータ層2の四角形の4つの角部に、正極層1a及び負極層1bの、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状が位置する構成である。本実施形態によると、第6の実施形態の効果に加えて、セパレータ層固定用融着部分8が四隅に位置することにより電極積層体3をより強固に固定できるという効果が大きい。
【0040】
さらに、第6,7の実施形態及びその変形例において、図示しないが、正極層1a及び負極層1bの、セパレータ層2の四角形の平面形状から内側に後退した形状が、曲線状(円弧状)の輪郭11ではなく、角部を直線的に三角に切り落とした形状であってもよい。
【0041】
図10,11には、本発明の第8の実施形態の電池100を含む電池モジュールを示している。この電池モジュールは、互いに重ね合わせた複数の電池100を含む構成である。図11(b)に示すように、電池モジュールは、複数の電池100を収容する筐体であるモジュールケース12と、モジュールケース12内で個々の電池100を保持するための複数の電池ホルダー13と、重ね合わせられた複数の電池ホルダー13にそれぞれ設けられた位置決め穴13aを貫通しながらモジュールケース12を貫通する位置決めする貫通ボルト14と、モジュールケース12を貫通した貫通ボルト14がねじ込まれるナット15と、を含んでいる。本実施形態の電池100は、前記した各実施形態と同様に、セパレータ層2の非被覆部2aに貫通孔6が設けられ、貫通孔6の内部がセパレータ層固定用融着部分8になっている。そして、本実施形態では、セパレータ層固定用融着部分8を貫通する穴16がさらに設けられている。また、非被覆部2aが存在しない側部(正極端子5a及び負極端子5bが接続されている側部)においては、外周部分7に穴16が設けられている。そして、これらの穴16に、電池ホルダー13に設けられたピン13bをそれぞれ貫通させながら、電池100が電池ホルダー13上に置かれている。
【0042】
本実施形態では、1つの電池100が、その両側部にそれぞれ位置する2つの電池ホルダー13によって保持される構成になっている。このように、本実施形態では、電池ホルダー13のピン13bが、電池100の穴16に貫通することによって、電池ホルダー13に対する電池100の位置合わせが行われている。そして、貫通ボルト14が、複数の電池ホルダー13にそれぞれ設けられた位置決め穴13aを連続的に貫通する。ピン13bと穴16の嵌合によって電池100を精度良く保持する電池ホルダー13が複数重ね合わされた状態で、各電池ホルダー13にそれぞれ設けられた位置決め穴13aを貫通ボルト14が貫通する。それによって、モジュールケース12内で、各電池ホルダー13が位置精度良く保持され、ひいては各電池100が位置精度良く保持される。しかも、前記した各実施形態にて説明したとおり、各電池100において正極層1a及び負極層1bを含む電極積層体3の移動や位置ずれが防止できるため、この電池モジュールは、複数の電池100の電極積層体3の移動や位置ずれを一括して防止することにつながっている。
【0043】
本実施形態では、電池100の位置決めに用いられる穴16が、ラミネートフィルム4aの融着部分(特にセパレータ層固定用融着部分8)に設けられているため、位置合わせ用の穴を別途形成する必要はなく、スペース効率がよく小型化に寄与する。また、電池ホルダー13のピン13bが穴16に挿入されていることにより、電池ホルダー13が直接的に電池積層体3の位置ずれ防止に寄与している。これは、穴16の位置が、電池100の外装体4のみならずセパレータ層2の固定にも寄与する位置であるからである。
【0044】
なお、本実施形態の電池100は、前記した第1〜7の実施形態及びその変形例のセパレータ層固定用融着部分8に穴16を形成したもの(必要に応じて外周部分7にも穴を形成したもの)であってよく、非被覆部2a及び貫通孔6及びセパレータ層固定用融着部分8の配置については、前記した第1〜7の実施形態及びその変形例のいずれかと同じであっても構わない。
【0045】
本発明の実施形態は、上述した形態に限定されるものではない。電極積層体は巻回型であってもよく、折り曲げ型であってもよい。外装体は1枚のラミネートフィルムを折り返して3辺を融着してなる構成であってもよい。また、電極積層体3の移動を抑制するために、少なくとも電極積層体3の一辺側に、貫通孔6を設けた非被覆部2aがあればよいが、より効果的なものとするために、上記した各実施形態では、正極端子5a及び負極端子5bと貫通孔6とが電極積層体3の対向する辺にある例及び各貫通孔6が電極積層体3の対向する辺にある例を示している。
【符号の説明】
【0046】
1a 正極層
1b 負極層
2 セパレータ層
2a 非被覆部
3 電極積層体
4 外装体
4a ラミネートフィルム
5a 正極端子
5b 負極端子
6 貫通孔
7 外周部分
8 セパレータ層固定用融着部分
9 パンチ
10 ダイ
11 輪郭
12 モジュールケース
13 電池ホルダー
13a 位置決め穴
13b ピン
14 貫通ボルト
15 ナット
16 穴
100 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ層と前記セパレータ層を間に挟んで互いに重ね合わされる正極層及び負極層とを含む電極積層体と、該電極積層体を包囲する外装体と、を有し、
前記セパレータ層は、前記セパレータ層の外周の一部に前記正極層及び前記負極層に覆われていない非被覆部を有し、該非被覆部に貫通孔が設けられており、
前記外装体は熱融着性樹脂と金属層とを含む1対もしくは折り返された1枚のラミネートフィルムからなり、前記ラミネートフィルム同士は、前記セパレータ層の前記非被覆部の前記貫通孔を介して互いに融着している、電池。
【請求項2】
前記正極層及び前記負極層は四角形の平面形状を有し、前記セパレータ層の前記非被覆部は、平面的に見て前記正極層及び前記負極層の四角形の平面形状から外側に突出する部分である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記セパレータ層は四角形の平面形状を有し、前記セパレータ層の前記非被覆部は、平面的に見て、前記正極層及び前記負極層が前記セパレータ層の四角形の平面形状から内側に後退した形状に形成された部分に対向する部分である、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記セパレータ層の前記非被覆部は、該セパレータ層の四角形の平面形状の少なくとも一つの角部に位置する、請求項3に記載の電池。
【請求項5】
平面的に見て前記正極層及び前記負極層が前記セパレータ層の四角形の平面形状から内側に後退した形状に形成された部分は、曲線的な輪郭を有している、請求項3または4に記載の電池。
【請求項6】
前記正極層及び前記負極層に接続されており、前記外装体を貫通して外部に突出する端子をさらに有し、
前記非被覆部は、平面的に見て、前記セパレータ層の、前記端子が外部に突出する側部と反対側の側部に位置する、請求項1から5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
複数の前記貫通孔を有し、該複数の貫通孔は、前記端子が突出する方向と直交する方向に並んで位置している、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記貫通孔を介して互いに融着している前記ラミネートフィルムには、該融着部分を貫通する穴が設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
請求項8に記載の電池と、前記電池の前記融着部分に設けられた前記穴を貫通するピンを備えた電池ホルダーとの組み合わせが、複数重ね合わせて保持されている、電池モジュール。
【請求項10】
正極層及び負極層を、セパレータ層を間に挟んで互いに重ね合わせて、電極積層体を構成するステップと、
前記電極積層体中の前記セパレータ層の外周の一部であって、前記正極層及び前記負極層に覆われていない非被覆部に、貫通孔を形成するステップと、
前記貫通孔を形成するステップの後に、前記電極積層体を、1対もしくは折り返された1枚のラミネートフィルムで覆うステップと、
前記ラミネートフィルム同士の、前記貫通孔を介して互いに接触している部分を、互いに融着させるステップと、
を含む、電池の製造方法。
【請求項11】
前記電極積層体を形成するステップでは、複数の前記正極層及び前記負極層と2層以上の前記セパレータ層とを重ね合わせて前記電極積層体を構成し、
前記貫通孔を形成するステップでは、2層以上の前記セパレータ層の前記非被覆部に対して一括して前記貫通孔を形成する、
請求項10に記載の電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−84410(P2013−84410A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222757(P2011−222757)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(507357232)オートモーティブエナジーサプライ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】