電池セル収納筺体及びその製造方法
【課題】電池セルを収納しやすく、電池セルの温度調整を効率よく行うことができる電池セル収納筺体を提供する。また、複数の有底穴と貫通穴とが形成された電池セル収納筺体を簡便に製造できる方法を提供する。
【解決手段】有底穴22の幅Wcを電池セル10の厚さWbより小さくし、有底穴22の変形を伴って電池セル10を有底穴22に収納する。こうした電池セル収納筺体20を製造するのに、複数の貫通穴が列状に形成された直方体状のアルミニウム合金製スラグを雌型内に配置し、貫通穴が形成されていないスラグの部位に雄型のポンチを押しつけて、雄型のポンチを押しつけた部位を凹ませて電池セル収納筺体20の有底穴22を形成すると共に雄型のポンチが押しつけられていない部分を立ち上げて電池セル収納筺体20の壁面を形成する。
【解決手段】有底穴22の幅Wcを電池セル10の厚さWbより小さくし、有底穴22の変形を伴って電池セル10を有底穴22に収納する。こうした電池セル収納筺体20を製造するのに、複数の貫通穴が列状に形成された直方体状のアルミニウム合金製スラグを雌型内に配置し、貫通穴が形成されていないスラグの部位に雄型のポンチを押しつけて、雄型のポンチを押しつけた部位を凹ませて電池セル収納筺体20の有底穴22を形成すると共に雄型のポンチが押しつけられていない部分を立ち上げて電池セル収納筺体20の壁面を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セル収納筺体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などには、電源装置として、複数の充電可能な電池セルによって構成されるバッテリパックが搭載される場合がある。バッテリパックは、例えば、複数の電池セルが積層されて電気的に直列に接続されて構成される。ここで、電池セルは、化学反応によって熱が発生するので電池セルの温度が高くなり過ぎないよう冷却する必要あり、逆に寒冷時には、良好に化学反応が行われるように電池セルを温める必要がある。すなわち、電池セルの性能を十分に発揮させるには、内部での化学反応が良好に行われるように電池セルを適正な温度範囲に保つ必要がある。
【0003】
このため、電池セルが収納される収納筺体には、電池セルを適正な温度範囲に保つための機能が求められる。特許文献1に開示された電池セルの収納筺体では、電池セルを収納するための複数の有底穴が設けられると共に、壁部の全体に亘って複数の貫通穴が設けられている。この収納筺体では、複数の有底穴のそれぞれに電池セルを収納した状態で複数の貫通穴に冷却流体を通すことにより、電池セルから収納筺体の壁部に伝わった熱を効率よく冷却流体に伝えることができる。また、この収納筐体では、1つの収納筺体に複数の電池セルを収納できるので、バッテリパックの部品点数や組付工数を低減することもできる。特許文献1では、こうした収納筺体の素材として、樹脂やアルミニウムなどの金属が挙げられており、特に、アルミニウムを用いて収納筐体を形成することにより、熱伝導性が良く温度調整が容易で且つ軽量な構造になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−199070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された収納筺体では、有底穴の大きさを電池セルの寸法通りに設計すると、製造誤差などによって有底穴の大きさが若干小さく形成されたときに電池セルを有底穴に収納することができなくなってしまう。一方、有底穴の大きさを電池セルの寸法に対して余裕を持って設計すると、収納筺体の壁面と電池セルの側面とに隙間ができ、電池セルから収納筺体への熱伝導効率が低下してしまう。また、特許文献1では、収納筺体の製造方法については述べられていない。特に、射出成形などが可能な樹脂とは異なり、金属で収納筺体を形成する場合に、有底穴と貫通穴とが形成された複雑な形状を簡便に製造する方法が望まれる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電池セルを収納しやすく、電池セルの温度調整を効率よく行うことができる電池セル収納筺体を提供することや、複数の有底穴と貫通穴とが形成された電池セル収納筺体を簡便に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる電池セル収納筺体は、
外形状が略直方体状であり、複数の電池セルを収納する電池セル収納筺体であって、
前記略直方体状の所定の1面に開口し、対向する開口長辺となる内壁部分同士の距離である開口幅が前記複数の電池セルの厚さより小さい複数の有底穴と、
前記複数の有底穴同士を仕切る壁の略全体に形成され、前記有底穴の深さ方向に沿って貫通する複数の貫通穴と、
を備え、
前記複数の有底穴の変形を伴って前記複数の有底穴に前記電池セルが収納される、
ことを特徴とする。
【0008】
前記有底穴の開口短辺となる壁部は、屈曲または湾曲していてもよい。
【0009】
電池セル収納筺体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって全体が一体に形成されることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の観点に係る電池セル収納筺体の製造方法は、
複数の電池セルを収納するための複数の有底穴と前記有底穴同士を仕切る壁の全体に形成される貫通穴とを有する電池セル収納筺体を製造する方法であって、
外形状が略直方体状のアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記略直方体状の所定の辺に沿って1つ以上の列状に並んだ複数の貫通穴を有するスラグを用意する工程と、
前記スラグの外形状に沿って内形状が形成された雌型内に前記スラグを配置する工程と、
前記雌型内に配置されたスラグにおける前記貫通穴が形成されていない予め定められた部位を、前記複数の貫通穴の貫通方向に沿って雄型のポンチで押して前記スラグを塑性変形させることにより、前記雄型のポンチで押された部位を凹まして前記電池セル収納筺体の有底穴を形成すると共に前記雄型のポンチで押されていない部位を立ち上げて前記電池セル収納筺体の壁面を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
前記スラグを用意する工程は、前記電池セル収納筺体の外形状における有底穴が形成される面と略同一の大きさの面を有し、前記複数の貫通穴が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を所定の厚さに切断して前記スラグを用意してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点に係る電池セル収納筺体によれば、電池セルを収納しやすく、電池セルの温度調整を効率よく行うことができる。また、本発明の第2の観点に係る電池セルの収納筺体の製造方法によれば、複数の有底穴と貫通穴とが形成された電池セル収納筺体を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電池セル収納筺体と電池セルとの外観の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の電池セル収納筺体の有底穴と貫通穴とに点線を付して示す斜視図である。
【図3】電池セル収納筺体の上面図である。
【図4】電池セル収納筺体の下面図である。
【図5】有底穴の開口端近傍の一例を示す模式図である。
【図6】電池セル収納筺体の基となるスラグの一例を示す斜視図である。
【図7】スラグにインパクト成形を施す前の状態の一例を示す模式図である。
【図8】スラグにインパクト成型を施したときの状態の一例を示す模式図である。
【図9】インパクト成形された電池セル収納筐体の断面の様子の一例を示す説明図である。。
【図10】変形例の雄型のポンチの一例を示す模式図である。
【図11】変形例の雄型のポンチを用いて形成された電池セル収納筺体の断面図である。
【図12】第2実施形態に係る電池セル収納筐体の有底穴近傍の様子の一例を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る電池セル収納筐体に電池セルが収納された際の様子を模式的に示す図である。
【図14】変形例の電池セルの収納筺体の有底穴近傍の様子の一例を示す図である。
【図15】変形例の電池セルの収納筺体の有底穴近傍の様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池セル収納筺体20と電池セル10との外観の一例を示す斜視図であり、図2は、図1の電池セル収納筺体20の有底穴22と貫通穴24とに点線を付して示す斜視図であり、図3は、電池セル収納筺体20の上面図であり、図4は、電池セル収納筺体20の下面図である。実施形態の電池セル収納筺体20は、複数の電池セル10を収納可能な筺体として構成されている。複数の電池セル10は、それぞれ内部の化学反応を伴って充放電可能な二次電池であり、図1に示すように、平たい直方体状のものが一般によく知られている。なお、電池セル10としては、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池など種々のものを用いることができる。
【0016】
電池セル収納筺体20は、アルミニウム合金によって全体が一体に形成されており、図1から図4に示すように、外形状が直方体であって、複数の有底穴22と貫通穴24とを有する。複数の有底穴22は、それぞれ直方体状であり、電池セル収納筺体20の外形状の所定の1つの面(図1では上側の面)に開口している。有底穴22の形状は、収納される電池セル10の形状に基づいて定めることができ、実施形態では、その深さDcや開口長辺の長さLcが、電池セル10の高さHbや底面における長辺の長さLbと等しく設計され、開口短辺の長さ、すなわち、対向する開口長辺となる壁面同士の距離(開口幅)Wcが、電池セル10の底面における短辺の長さ(電池セル10の幅)Wbより小さく設計されている。実施形態では、こうした有底穴22が、開口長辺となる壁部によって互いが仕切られるように一列に4つ並んで設けられている。
【0017】
また、有底穴22は、図5に示すように、入口の開口幅Wc1が電池セル10の幅Wbより大きくなるように、入口近傍がR状(丸角)に形成されている。これにより、有底穴22への電池セル10の挿入を容易に行うことができる。こうしたRは、例えば、有底穴22の入口となる壁部を面取りすることにより形成することができる。なお、有底穴22は、入口から底側に向かって開口幅が小さくなるように(例えば開口幅Wc1から開口幅Wcとなるように(Wc<Wb<Wc1))一様な又は段階的な傾斜状に形成されてもよい。
【0018】
複数の貫通穴24は、有底穴22の深さ方向に電池セル収納筺体20を貫通する穴であり、複数の有底穴22同士を仕切る壁部の全体に亘って形成されている。複数の貫通穴24は、有底穴22の開口長辺に沿って、列状に並んで設けられている。実施形態では、有底穴22は4つであり、有底穴22を仕切る壁部は3つとなるので、3列に並んで複数の貫通穴24が設けられている。なお、貫通穴24は、実施形態では長方形状に開口する穴としたが、丸状とするなど、製造が複雑とならない範囲で種々の形状を採用することができる。
【0019】
こうした電池セル収納筺体20に電池セル10を収納するときには、複数の有底穴22のそれぞれに電池セル10を一つずつ挿入する。実施形態の電池セル収納筺体20では、有底穴22の開口幅(対向する開口長辺となる壁面同士の距離)Wcが電池セル10の厚さWbより小さく形成されており、電池セル10は、有底穴22の変形を伴って有底穴22に挿入される。これにより、収納された電池セル10は、電池セル収納筺体20の変形に対する復元力によって有底穴22の開口長辺となる壁面と密着する。そして、複数の電池セル10を図示しない電源ラインによって電気的に直列または並列に接続することで、電池セル10と電池セル収納筺体20とは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車などで用いられるバッテリパックを構成する。
【0020】
電池セル10は、その性能を十分に発揮させるために、内部での化学反応が良好に行われるよう適正な温度範囲に調整する必要がある。例えば、電池セル10は、内部の化学反応による発熱によって温度が高くなりすぎないように冷却する必要があり、寒冷地など電池セル10の温度が低い場合には化学反応が良好に行われるように温める必要がある。実施形態の電池セル収納筐体20では、有底穴22を仕切る壁の全体に亘って貫通穴24が設けられており、この貫通穴24に冷却流体を流すことで、電池セル収納筺体20から冷却流体に効率よく熱を伝えることができる。なお、冷却流体としては、例えば、水やLLC、空気、フロン系の冷媒などを用いることができる。実施形態の電池セル収納筐体20は、電池セル10が収納される有底穴22の開口幅Wcがバッテリの厚さWbより小さく形成され、有底穴22の開口長辺となる壁面と電池セル10とが密着するから、電池セル10と電池セル収納筐体20との熱伝統が効率よく行われ、電池セル10の温度調整を効率よく行うことができる。また、実施形態の電池セル収納筐体20は、アルミニウム合金によって一体に形成されているので、複数の部材が組み合わされて形成されるものや、樹脂などによって形成されるものに比して、電池セル収納筐体20自体の熱伝導性が良く、電池セル10の温度調整が容易で軽量なバッテリパックとすることができる。
【0021】
次に、こうした複数の有底穴22と貫通穴24とを有する電池セル収納筺体20の製造方法について説明する。上述した電池セル収納筺体20をアルミニウム合金で一体に形成するために、アルミニウム合金にいわゆる「インパクト成形」を施す。図6に、電池セル収納筺体20の素材となるスラグ30の一例を示し、図7に、スラグ30にインパクト成形を施す前の状態の一例を示し、図8に、スラグ30にインパクト成形を施したときの状態の一例を示す。
【0022】
スラグ30は、外形状が直方体状であって、この外形状を貫通する複数の貫通穴34を有するホロー型のアルミニウム押出し材である。スラグ30は、貫通穴34が開口する面の形状が電池セル収納筺体20の貫通穴24が開口する面の形状と等しく形成され、体積が電池セル収納筐体20の体積と等しくなるように高さ(貫通穴34が貫通する方向の長さ)Hsが定められている。スラグ30の貫通穴34は、電池セル収納筺体20の貫通穴24の配置と等しく位置しており、図6に示すように、複数の貫通穴34がスラグ30の外形状の辺に沿って複数の列を成すように位置している。なお、スラグ30を上または下から見た様子は、電池セル収納筺体20を下から見た様子に等しくなる(図4参照)。スラグ30は、例えば、貫通穴34が形成されたアルミニウム押出し材を適当な長さで切断することで用意することができる。
【0023】
こうしたスラグ30を、図7に示すように、雌型40内に配置する。雌型40は、スラグ30を配置するための有底の穴状部を有し、穴状部の形状がスラグ30の外形状と等しくなるように形成されている。雌型40内にスラグ30が配置されると、スラグ30は、貫通穴34が形成された面の一方の面側のみが開放され、その他の面が雌型40にぴったりと接する。なお、雌型40には、潤滑剤が表面に施されていてもよい。
【0024】
次に、スラグ30を雄型のポンチ42で押す。雄型のポンチ42は、直方体状の複数の凸部42aを有し、この凸部42aは、電池セル収納筺体20の有底穴22の形状に対応する形状に形成されている。雄型のポンチ42は、スラグ30の貫通穴34が形成されていない部位に当てられ、スラグ30は、雄型のポンチ42から受ける圧力によって塑性変形する。すなわち、雄型のポンチ42で押された部分のアルミニウム合金は、雄型のポンチ42で押されていない部分に移動する。スラグ30の雄型のポンチ42で押された部分は、スラグ30の元の高さHsより凹んで電池セル収納筺体20の有底穴22となり、スラグ30の雄型のポンチ42で押されていない部分は、スラグ30の元の高さHsより立ち上がって電池セル収納筺体20の壁面となる。図9に、インパクト成形された電池セル収納筐体20の断面の様子の一例を示す。実施形態では、雄型のポンチ42は、スラグ30の貫通穴34と離れた位置を押すため、雄型のポンチ42によって移動するアルミニウム合金は、貫通穴34を塞ぐことなく貫通穴34の近傍部分に移動して、雄型のポンチ42の押し込み方向と反対方向に立ち上がる。
【0025】
ここで、雄型のポンチ42とスラグ30の貫通穴34との距離Lは、近すぎるとアルミニウム合金の塑性変形による移動が困難になったり雄型のポンチ42を押すときに必要となる荷重が高くなってしまい、距離Lを遠くすると、貫通穴34近傍の材料の立ち上がりが少なくなってしまう。このため、両者の兼ね合いから、距離Lを適宜定めればよい。
【0026】
このように、外形状が直方体状で複数の貫通穴34が列を成すように並んだアルミニウム合金であるスラグ30を雌型40内に配置し、雄型のポンチ42でスラグ30の貫通穴34が形成されていない部位を押してスラグ30を塑性変形させることにより、雄型のポンチ42で押された部位を凹まして電池セル収納筺体20の有底穴22を形成すると共に雄型のポンチ42で押されていない部分を立ち上げて電池セル収納筺体20の壁面を形成することで、複数の有底穴22と貫通穴24とを有する電池セル収納筺体20を金属で一体に且つ簡便に形成することができる。また、このように、いわゆるインパクト成形によって電池セル収納筐体20を形成することにより、面取りなどを行わなくても、有底穴22の入口をR状に形成することができる(図5参照)。
【0027】
上述した雄型のポンチ42は、直方体状の雄型の凸部42aを複数有するものとしたが、雄型のポンチは、スラグ30の材料の移動が適正となるように決められれば良く、例えば、図10の変形例の雄型のポンチ142に示すように、複数の凸部142aの先端143が段差状が形成されていても良い。なお、図10の例では、有底穴22の開口長辺となる方向に沿って見たときに、ポンチ142の先端143の両端と中央の3箇所に長方形状に凹となる段差が設けられている。図11に、雄型のポンチ142を用いて形成される電池セル収納筺体20の有底穴122の様子を示す。有底穴122の底部123には、雄型のポンチ142の形状に合った段差が形成される。この場合、電池セル10の底が直方体状であれば、有底穴122の底部123の段差によって隙間ができる。この隙間は、断熱の役割を果たすので、電池セル収納筺体20の底からの熱を断熱する必要がある場合などに有効となる。
【0028】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態に係る電池セル収納筐体120の有底穴122近傍の様子の一例を示す図であり、図13は、第2実施形態に係る電池セル収納筐体120に電池セル10が収納された際の様子を模式的に示す図である。第2実施形態に係る電池セル収納筐体120は、第1実施形態に係る電池セル収納筐体20と同様に、複数の電池セル10を収納するための複数の有底穴122と、冷却流体が通過する複数の貫通穴24とを有する。第2実施形態に係る電池セル収納筐体120では、有底穴122は、対向する開口長辺となる壁面同士の距離すなわち有底穴122の幅Wcが電池セル10の幅Wbより小さく形成されると共に、開口短辺となる壁部(以下、「短辺壁部」という)126が電池セル収納筐体120の外側に湾曲するように形成されている。これにより、電池セル収納筐体120の有底穴122に電池セル10を収納するときに、弾性変形によって短辺壁部126が変形しやすく、長辺壁部28同士の距離Wcを広がりやすくすることができ(図13中、白抜き矢印参照)、電池セル収納筐体120に電池セル10をより収納しやすくすることができる。
【0029】
上述した電池セル収納筐体120では、有底穴122の短辺壁部126が外側に凸となるように湾曲するものとしたが、例えば、図14の変形例の短辺壁部226に示すように内側に凸となるように湾曲するものとしたり、図15の変形例の短辺壁部326に示すように波状に形成してもよい。このように短辺壁部を屈曲または湾曲する形状にすることにより、電池セル10を収納しやすくすることができる。つまり、短辺壁部の断面形状に必要な条件は、その長さ(曲がっている場合にはそれを伸ばした場合の長さ)が、相対する長辺壁部28同士の距離Wcより大きければよい。ただ、形状が複雑になると、素材となるアルミニウム押出し材が製造しにくくなったり、インパクト成型で塑性変形による材料の移動が行われにくくなるので、例えば、上述した電池セル収納筐体120のように、できるだけ単純な形状とすることが好ましいと考えられる。
【0030】
なお、こうした有底穴22の短辺壁部が屈曲または湾曲する電池セル収納筺体は、素材となるアルミニウム押出し材の形状や、雄型のポンチ42の形状、雌型40の内形状を、それぞれ有底穴22の短辺壁部126,226,326に合わせた形状とすることにより、第1実施形態で説明した製造方法と同様の製造方法によって製造することができる。
【0031】
上述した電池セル収納筐体は、アルミニウム合金で形成されるものとしたが、アルミニウムで形成されてもよいし、その他の金属で形成されてもよい。また、上述した電池セル収納筐体は、電池セル10を収納する有底穴を4つ有するものとしたが、2つや3つ有するものでもよいし、5つ以上有するものでもよい。
【0032】
上述した電池セル収納筐体の製造方法では、電池セル収納筐体は、有底穴の長辺壁部同士の距離Wcが電池セルの厚さWbに比して小さいものとしたが、有底穴の長辺壁部同士の距離が電池セルの厚さと等しかったり大きいものも、実施形態で説明した製造方法と同様の製造方法によって製造し得ることはいうまでもない。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、例えば電池セル収納筐体に求められる機能のために必要な形状や構成が付与、形成されるなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10 電池セル
20,120 電池セル収納筺体
22,122,222,322 有底穴
24 貫通穴
30 スラグ
34 貫通穴
40 雌型
42,142 ポンチ
123 底部
143 先端
126,226,326 短辺壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セル収納筺体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などには、電源装置として、複数の充電可能な電池セルによって構成されるバッテリパックが搭載される場合がある。バッテリパックは、例えば、複数の電池セルが積層されて電気的に直列に接続されて構成される。ここで、電池セルは、化学反応によって熱が発生するので電池セルの温度が高くなり過ぎないよう冷却する必要あり、逆に寒冷時には、良好に化学反応が行われるように電池セルを温める必要がある。すなわち、電池セルの性能を十分に発揮させるには、内部での化学反応が良好に行われるように電池セルを適正な温度範囲に保つ必要がある。
【0003】
このため、電池セルが収納される収納筺体には、電池セルを適正な温度範囲に保つための機能が求められる。特許文献1に開示された電池セルの収納筺体では、電池セルを収納するための複数の有底穴が設けられると共に、壁部の全体に亘って複数の貫通穴が設けられている。この収納筺体では、複数の有底穴のそれぞれに電池セルを収納した状態で複数の貫通穴に冷却流体を通すことにより、電池セルから収納筺体の壁部に伝わった熱を効率よく冷却流体に伝えることができる。また、この収納筐体では、1つの収納筺体に複数の電池セルを収納できるので、バッテリパックの部品点数や組付工数を低減することもできる。特許文献1では、こうした収納筺体の素材として、樹脂やアルミニウムなどの金属が挙げられており、特に、アルミニウムを用いて収納筐体を形成することにより、熱伝導性が良く温度調整が容易で且つ軽量な構造になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−199070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された収納筺体では、有底穴の大きさを電池セルの寸法通りに設計すると、製造誤差などによって有底穴の大きさが若干小さく形成されたときに電池セルを有底穴に収納することができなくなってしまう。一方、有底穴の大きさを電池セルの寸法に対して余裕を持って設計すると、収納筺体の壁面と電池セルの側面とに隙間ができ、電池セルから収納筺体への熱伝導効率が低下してしまう。また、特許文献1では、収納筺体の製造方法については述べられていない。特に、射出成形などが可能な樹脂とは異なり、金属で収納筺体を形成する場合に、有底穴と貫通穴とが形成された複雑な形状を簡便に製造する方法が望まれる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電池セルを収納しやすく、電池セルの温度調整を効率よく行うことができる電池セル収納筺体を提供することや、複数の有底穴と貫通穴とが形成された電池セル収納筺体を簡便に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる電池セル収納筺体は、
外形状が略直方体状であり、複数の電池セルを収納する電池セル収納筺体であって、
前記略直方体状の所定の1面に開口し、対向する開口長辺となる内壁部分同士の距離である開口幅が前記複数の電池セルの厚さより小さい複数の有底穴と、
前記複数の有底穴同士を仕切る壁の略全体に形成され、前記有底穴の深さ方向に沿って貫通する複数の貫通穴と、
を備え、
前記複数の有底穴の変形を伴って前記複数の有底穴に前記電池セルが収納される、
ことを特徴とする。
【0008】
前記有底穴の開口短辺となる壁部は、屈曲または湾曲していてもよい。
【0009】
電池セル収納筺体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって全体が一体に形成されることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の観点に係る電池セル収納筺体の製造方法は、
複数の電池セルを収納するための複数の有底穴と前記有底穴同士を仕切る壁の全体に形成される貫通穴とを有する電池セル収納筺体を製造する方法であって、
外形状が略直方体状のアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記略直方体状の所定の辺に沿って1つ以上の列状に並んだ複数の貫通穴を有するスラグを用意する工程と、
前記スラグの外形状に沿って内形状が形成された雌型内に前記スラグを配置する工程と、
前記雌型内に配置されたスラグにおける前記貫通穴が形成されていない予め定められた部位を、前記複数の貫通穴の貫通方向に沿って雄型のポンチで押して前記スラグを塑性変形させることにより、前記雄型のポンチで押された部位を凹まして前記電池セル収納筺体の有底穴を形成すると共に前記雄型のポンチで押されていない部位を立ち上げて前記電池セル収納筺体の壁面を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
前記スラグを用意する工程は、前記電池セル収納筺体の外形状における有底穴が形成される面と略同一の大きさの面を有し、前記複数の貫通穴が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を所定の厚さに切断して前記スラグを用意してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点に係る電池セル収納筺体によれば、電池セルを収納しやすく、電池セルの温度調整を効率よく行うことができる。また、本発明の第2の観点に係る電池セルの収納筺体の製造方法によれば、複数の有底穴と貫通穴とが形成された電池セル収納筺体を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電池セル収納筺体と電池セルとの外観の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の電池セル収納筺体の有底穴と貫通穴とに点線を付して示す斜視図である。
【図3】電池セル収納筺体の上面図である。
【図4】電池セル収納筺体の下面図である。
【図5】有底穴の開口端近傍の一例を示す模式図である。
【図6】電池セル収納筺体の基となるスラグの一例を示す斜視図である。
【図7】スラグにインパクト成形を施す前の状態の一例を示す模式図である。
【図8】スラグにインパクト成型を施したときの状態の一例を示す模式図である。
【図9】インパクト成形された電池セル収納筐体の断面の様子の一例を示す説明図である。。
【図10】変形例の雄型のポンチの一例を示す模式図である。
【図11】変形例の雄型のポンチを用いて形成された電池セル収納筺体の断面図である。
【図12】第2実施形態に係る電池セル収納筐体の有底穴近傍の様子の一例を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る電池セル収納筐体に電池セルが収納された際の様子を模式的に示す図である。
【図14】変形例の電池セルの収納筺体の有底穴近傍の様子の一例を示す図である。
【図15】変形例の電池セルの収納筺体の有底穴近傍の様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池セル収納筺体20と電池セル10との外観の一例を示す斜視図であり、図2は、図1の電池セル収納筺体20の有底穴22と貫通穴24とに点線を付して示す斜視図であり、図3は、電池セル収納筺体20の上面図であり、図4は、電池セル収納筺体20の下面図である。実施形態の電池セル収納筺体20は、複数の電池セル10を収納可能な筺体として構成されている。複数の電池セル10は、それぞれ内部の化学反応を伴って充放電可能な二次電池であり、図1に示すように、平たい直方体状のものが一般によく知られている。なお、電池セル10としては、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池など種々のものを用いることができる。
【0016】
電池セル収納筺体20は、アルミニウム合金によって全体が一体に形成されており、図1から図4に示すように、外形状が直方体であって、複数の有底穴22と貫通穴24とを有する。複数の有底穴22は、それぞれ直方体状であり、電池セル収納筺体20の外形状の所定の1つの面(図1では上側の面)に開口している。有底穴22の形状は、収納される電池セル10の形状に基づいて定めることができ、実施形態では、その深さDcや開口長辺の長さLcが、電池セル10の高さHbや底面における長辺の長さLbと等しく設計され、開口短辺の長さ、すなわち、対向する開口長辺となる壁面同士の距離(開口幅)Wcが、電池セル10の底面における短辺の長さ(電池セル10の幅)Wbより小さく設計されている。実施形態では、こうした有底穴22が、開口長辺となる壁部によって互いが仕切られるように一列に4つ並んで設けられている。
【0017】
また、有底穴22は、図5に示すように、入口の開口幅Wc1が電池セル10の幅Wbより大きくなるように、入口近傍がR状(丸角)に形成されている。これにより、有底穴22への電池セル10の挿入を容易に行うことができる。こうしたRは、例えば、有底穴22の入口となる壁部を面取りすることにより形成することができる。なお、有底穴22は、入口から底側に向かって開口幅が小さくなるように(例えば開口幅Wc1から開口幅Wcとなるように(Wc<Wb<Wc1))一様な又は段階的な傾斜状に形成されてもよい。
【0018】
複数の貫通穴24は、有底穴22の深さ方向に電池セル収納筺体20を貫通する穴であり、複数の有底穴22同士を仕切る壁部の全体に亘って形成されている。複数の貫通穴24は、有底穴22の開口長辺に沿って、列状に並んで設けられている。実施形態では、有底穴22は4つであり、有底穴22を仕切る壁部は3つとなるので、3列に並んで複数の貫通穴24が設けられている。なお、貫通穴24は、実施形態では長方形状に開口する穴としたが、丸状とするなど、製造が複雑とならない範囲で種々の形状を採用することができる。
【0019】
こうした電池セル収納筺体20に電池セル10を収納するときには、複数の有底穴22のそれぞれに電池セル10を一つずつ挿入する。実施形態の電池セル収納筺体20では、有底穴22の開口幅(対向する開口長辺となる壁面同士の距離)Wcが電池セル10の厚さWbより小さく形成されており、電池セル10は、有底穴22の変形を伴って有底穴22に挿入される。これにより、収納された電池セル10は、電池セル収納筺体20の変形に対する復元力によって有底穴22の開口長辺となる壁面と密着する。そして、複数の電池セル10を図示しない電源ラインによって電気的に直列または並列に接続することで、電池セル10と電池セル収納筺体20とは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車などで用いられるバッテリパックを構成する。
【0020】
電池セル10は、その性能を十分に発揮させるために、内部での化学反応が良好に行われるよう適正な温度範囲に調整する必要がある。例えば、電池セル10は、内部の化学反応による発熱によって温度が高くなりすぎないように冷却する必要があり、寒冷地など電池セル10の温度が低い場合には化学反応が良好に行われるように温める必要がある。実施形態の電池セル収納筐体20では、有底穴22を仕切る壁の全体に亘って貫通穴24が設けられており、この貫通穴24に冷却流体を流すことで、電池セル収納筺体20から冷却流体に効率よく熱を伝えることができる。なお、冷却流体としては、例えば、水やLLC、空気、フロン系の冷媒などを用いることができる。実施形態の電池セル収納筐体20は、電池セル10が収納される有底穴22の開口幅Wcがバッテリの厚さWbより小さく形成され、有底穴22の開口長辺となる壁面と電池セル10とが密着するから、電池セル10と電池セル収納筐体20との熱伝統が効率よく行われ、電池セル10の温度調整を効率よく行うことができる。また、実施形態の電池セル収納筐体20は、アルミニウム合金によって一体に形成されているので、複数の部材が組み合わされて形成されるものや、樹脂などによって形成されるものに比して、電池セル収納筐体20自体の熱伝導性が良く、電池セル10の温度調整が容易で軽量なバッテリパックとすることができる。
【0021】
次に、こうした複数の有底穴22と貫通穴24とを有する電池セル収納筺体20の製造方法について説明する。上述した電池セル収納筺体20をアルミニウム合金で一体に形成するために、アルミニウム合金にいわゆる「インパクト成形」を施す。図6に、電池セル収納筺体20の素材となるスラグ30の一例を示し、図7に、スラグ30にインパクト成形を施す前の状態の一例を示し、図8に、スラグ30にインパクト成形を施したときの状態の一例を示す。
【0022】
スラグ30は、外形状が直方体状であって、この外形状を貫通する複数の貫通穴34を有するホロー型のアルミニウム押出し材である。スラグ30は、貫通穴34が開口する面の形状が電池セル収納筺体20の貫通穴24が開口する面の形状と等しく形成され、体積が電池セル収納筐体20の体積と等しくなるように高さ(貫通穴34が貫通する方向の長さ)Hsが定められている。スラグ30の貫通穴34は、電池セル収納筺体20の貫通穴24の配置と等しく位置しており、図6に示すように、複数の貫通穴34がスラグ30の外形状の辺に沿って複数の列を成すように位置している。なお、スラグ30を上または下から見た様子は、電池セル収納筺体20を下から見た様子に等しくなる(図4参照)。スラグ30は、例えば、貫通穴34が形成されたアルミニウム押出し材を適当な長さで切断することで用意することができる。
【0023】
こうしたスラグ30を、図7に示すように、雌型40内に配置する。雌型40は、スラグ30を配置するための有底の穴状部を有し、穴状部の形状がスラグ30の外形状と等しくなるように形成されている。雌型40内にスラグ30が配置されると、スラグ30は、貫通穴34が形成された面の一方の面側のみが開放され、その他の面が雌型40にぴったりと接する。なお、雌型40には、潤滑剤が表面に施されていてもよい。
【0024】
次に、スラグ30を雄型のポンチ42で押す。雄型のポンチ42は、直方体状の複数の凸部42aを有し、この凸部42aは、電池セル収納筺体20の有底穴22の形状に対応する形状に形成されている。雄型のポンチ42は、スラグ30の貫通穴34が形成されていない部位に当てられ、スラグ30は、雄型のポンチ42から受ける圧力によって塑性変形する。すなわち、雄型のポンチ42で押された部分のアルミニウム合金は、雄型のポンチ42で押されていない部分に移動する。スラグ30の雄型のポンチ42で押された部分は、スラグ30の元の高さHsより凹んで電池セル収納筺体20の有底穴22となり、スラグ30の雄型のポンチ42で押されていない部分は、スラグ30の元の高さHsより立ち上がって電池セル収納筺体20の壁面となる。図9に、インパクト成形された電池セル収納筐体20の断面の様子の一例を示す。実施形態では、雄型のポンチ42は、スラグ30の貫通穴34と離れた位置を押すため、雄型のポンチ42によって移動するアルミニウム合金は、貫通穴34を塞ぐことなく貫通穴34の近傍部分に移動して、雄型のポンチ42の押し込み方向と反対方向に立ち上がる。
【0025】
ここで、雄型のポンチ42とスラグ30の貫通穴34との距離Lは、近すぎるとアルミニウム合金の塑性変形による移動が困難になったり雄型のポンチ42を押すときに必要となる荷重が高くなってしまい、距離Lを遠くすると、貫通穴34近傍の材料の立ち上がりが少なくなってしまう。このため、両者の兼ね合いから、距離Lを適宜定めればよい。
【0026】
このように、外形状が直方体状で複数の貫通穴34が列を成すように並んだアルミニウム合金であるスラグ30を雌型40内に配置し、雄型のポンチ42でスラグ30の貫通穴34が形成されていない部位を押してスラグ30を塑性変形させることにより、雄型のポンチ42で押された部位を凹まして電池セル収納筺体20の有底穴22を形成すると共に雄型のポンチ42で押されていない部分を立ち上げて電池セル収納筺体20の壁面を形成することで、複数の有底穴22と貫通穴24とを有する電池セル収納筺体20を金属で一体に且つ簡便に形成することができる。また、このように、いわゆるインパクト成形によって電池セル収納筐体20を形成することにより、面取りなどを行わなくても、有底穴22の入口をR状に形成することができる(図5参照)。
【0027】
上述した雄型のポンチ42は、直方体状の雄型の凸部42aを複数有するものとしたが、雄型のポンチは、スラグ30の材料の移動が適正となるように決められれば良く、例えば、図10の変形例の雄型のポンチ142に示すように、複数の凸部142aの先端143が段差状が形成されていても良い。なお、図10の例では、有底穴22の開口長辺となる方向に沿って見たときに、ポンチ142の先端143の両端と中央の3箇所に長方形状に凹となる段差が設けられている。図11に、雄型のポンチ142を用いて形成される電池セル収納筺体20の有底穴122の様子を示す。有底穴122の底部123には、雄型のポンチ142の形状に合った段差が形成される。この場合、電池セル10の底が直方体状であれば、有底穴122の底部123の段差によって隙間ができる。この隙間は、断熱の役割を果たすので、電池セル収納筺体20の底からの熱を断熱する必要がある場合などに有効となる。
【0028】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態に係る電池セル収納筐体120の有底穴122近傍の様子の一例を示す図であり、図13は、第2実施形態に係る電池セル収納筐体120に電池セル10が収納された際の様子を模式的に示す図である。第2実施形態に係る電池セル収納筐体120は、第1実施形態に係る電池セル収納筐体20と同様に、複数の電池セル10を収納するための複数の有底穴122と、冷却流体が通過する複数の貫通穴24とを有する。第2実施形態に係る電池セル収納筐体120では、有底穴122は、対向する開口長辺となる壁面同士の距離すなわち有底穴122の幅Wcが電池セル10の幅Wbより小さく形成されると共に、開口短辺となる壁部(以下、「短辺壁部」という)126が電池セル収納筐体120の外側に湾曲するように形成されている。これにより、電池セル収納筐体120の有底穴122に電池セル10を収納するときに、弾性変形によって短辺壁部126が変形しやすく、長辺壁部28同士の距離Wcを広がりやすくすることができ(図13中、白抜き矢印参照)、電池セル収納筐体120に電池セル10をより収納しやすくすることができる。
【0029】
上述した電池セル収納筐体120では、有底穴122の短辺壁部126が外側に凸となるように湾曲するものとしたが、例えば、図14の変形例の短辺壁部226に示すように内側に凸となるように湾曲するものとしたり、図15の変形例の短辺壁部326に示すように波状に形成してもよい。このように短辺壁部を屈曲または湾曲する形状にすることにより、電池セル10を収納しやすくすることができる。つまり、短辺壁部の断面形状に必要な条件は、その長さ(曲がっている場合にはそれを伸ばした場合の長さ)が、相対する長辺壁部28同士の距離Wcより大きければよい。ただ、形状が複雑になると、素材となるアルミニウム押出し材が製造しにくくなったり、インパクト成型で塑性変形による材料の移動が行われにくくなるので、例えば、上述した電池セル収納筐体120のように、できるだけ単純な形状とすることが好ましいと考えられる。
【0030】
なお、こうした有底穴22の短辺壁部が屈曲または湾曲する電池セル収納筺体は、素材となるアルミニウム押出し材の形状や、雄型のポンチ42の形状、雌型40の内形状を、それぞれ有底穴22の短辺壁部126,226,326に合わせた形状とすることにより、第1実施形態で説明した製造方法と同様の製造方法によって製造することができる。
【0031】
上述した電池セル収納筐体は、アルミニウム合金で形成されるものとしたが、アルミニウムで形成されてもよいし、その他の金属で形成されてもよい。また、上述した電池セル収納筐体は、電池セル10を収納する有底穴を4つ有するものとしたが、2つや3つ有するものでもよいし、5つ以上有するものでもよい。
【0032】
上述した電池セル収納筐体の製造方法では、電池セル収納筐体は、有底穴の長辺壁部同士の距離Wcが電池セルの厚さWbに比して小さいものとしたが、有底穴の長辺壁部同士の距離が電池セルの厚さと等しかったり大きいものも、実施形態で説明した製造方法と同様の製造方法によって製造し得ることはいうまでもない。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、例えば電池セル収納筐体に求められる機能のために必要な形状や構成が付与、形成されるなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10 電池セル
20,120 電池セル収納筺体
22,122,222,322 有底穴
24 貫通穴
30 スラグ
34 貫通穴
40 雌型
42,142 ポンチ
123 底部
143 先端
126,226,326 短辺壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形状が略直方体状であり、複数の電池セルを収納する電池セル収納筺体であって、
前記略直方体状の所定の1面に開口し、対向する開口長辺となる内壁部分同士の距離である開口幅が前記複数の電池セルの厚さより小さい複数の有底穴と、
前記複数の有底穴同士を仕切る壁の略全体に形成され、前記有底穴の深さ方向に沿って貫通する複数の貫通穴と、
を備え、
前記複数の有底穴の変形を伴って前記複数の有底穴に前記電池セルが収納される、
ことを特徴とする電池セル収納筺体。
【請求項2】
前記有底穴の開口短辺となる壁部は、屈曲または湾曲している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池セル収納筺体。
【請求項3】
アルミニウムまたはアルミニウム合金によって全体が一体に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池セル収納筺体。
【請求項4】
複数の電池セルを収納するための複数の有底穴と前記有底穴同士を仕切る壁の全体に形成される貫通穴とを有する電池セル収納筺体を製造する方法であって、
外形状が略直方体状のアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記略直方体状の所定の辺に沿って1つ以上の列状に並んだ複数の貫通穴を有するスラグを用意する工程と、
前記スラグの外形状に沿って内形状が形成された雌型内に前記スラグを配置する工程と、
前記雌型内に配置されたスラグにおける前記貫通穴が形成されていない予め定められた部位を、前記複数の貫通穴の貫通方向に沿って雄型のポンチで押して前記スラグを塑性変形させることにより、前記雄型のポンチで押された部位を凹まして前記電池セル収納筺体の有底穴を形成すると共に前記雄型のポンチで押されていない部位を立ち上げて前記電池セル収納筺体の壁面を形成する工程と、
を備えることを特徴とする電池セル収納筺体の製造方法。
【請求項5】
前記スラグを用意する工程は、前記電池セル収納筺体の外形状における有底穴が形成される面と略同一の大きさの面を有し、前記複数の貫通穴が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を所定の厚さに切断して前記スラグを用意する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電池セル収納筺体の製造方法。
【請求項1】
外形状が略直方体状であり、複数の電池セルを収納する電池セル収納筺体であって、
前記略直方体状の所定の1面に開口し、対向する開口長辺となる内壁部分同士の距離である開口幅が前記複数の電池セルの厚さより小さい複数の有底穴と、
前記複数の有底穴同士を仕切る壁の略全体に形成され、前記有底穴の深さ方向に沿って貫通する複数の貫通穴と、
を備え、
前記複数の有底穴の変形を伴って前記複数の有底穴に前記電池セルが収納される、
ことを特徴とする電池セル収納筺体。
【請求項2】
前記有底穴の開口短辺となる壁部は、屈曲または湾曲している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池セル収納筺体。
【請求項3】
アルミニウムまたはアルミニウム合金によって全体が一体に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池セル収納筺体。
【請求項4】
複数の電池セルを収納するための複数の有底穴と前記有底穴同士を仕切る壁の全体に形成される貫通穴とを有する電池セル収納筺体を製造する方法であって、
外形状が略直方体状のアルミニウムまたはアルミニウム合金であって、前記略直方体状の所定の辺に沿って1つ以上の列状に並んだ複数の貫通穴を有するスラグを用意する工程と、
前記スラグの外形状に沿って内形状が形成された雌型内に前記スラグを配置する工程と、
前記雌型内に配置されたスラグにおける前記貫通穴が形成されていない予め定められた部位を、前記複数の貫通穴の貫通方向に沿って雄型のポンチで押して前記スラグを塑性変形させることにより、前記雄型のポンチで押された部位を凹まして前記電池セル収納筺体の有底穴を形成すると共に前記雄型のポンチで押されていない部位を立ち上げて前記電池セル収納筺体の壁面を形成する工程と、
を備えることを特徴とする電池セル収納筺体の製造方法。
【請求項5】
前記スラグを用意する工程は、前記電池セル収納筺体の外形状における有底穴が形成される面と略同一の大きさの面を有し、前記複数の貫通穴が形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金を所定の厚さに切断して前記スラグを用意する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電池セル収納筺体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−252898(P2012−252898A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125115(P2011−125115)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】
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