説明

電池パック、蓄電システム、電子機器、電動車両、電力システムおよび制御システム

【課題】電池パックの安全性を向上させる。
【解決手段】電池パック1の電流路に過電流が流れると、PTC付サーモスタット62の接点が開放する。PTC付サーモスタット62の接点が開放したことが、検出回路66により検出される。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が開放したことを示すローレベルの開放信号を放電制御FET64に供給する。検出回路66から供給されるローレベルの開放信号によって、放電制御FET64がオフする。PTC付サーモスタット62によって過電流を遮断するとともに放電制御FET64をオフすることができ、電池パックの安全性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、電動ドリルや電動ドライバなどの電動工具に適用可能な電池パックであり、電池パックが適用可能な蓄電システム、電子機器、電動車両、電力システムおよび制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具の電源(二次電池)として、リチウムイオンのドープ・脱ドープを利用したリチウムイオン二次電池(以下、リチウムイオン電池と適宜称する)が使用されている。リチウムイオン電池は例えば、LiCoO2やLiNiO2等のリチウム複合酸化物を用いた正極活物質層が正極集電体上に形成された正極と、リチウムをドープ・脱ドープ可能な例えばグラファイトや難黒鉛化性炭素材料等の炭素系材料を用いた負極活物質層が負極集電体上に形成された負極とを有している。この正極および負極はセパレータを介して積層され、屈曲または巻回されて電池素子とされる。この電池素子は、リチウム塩を非プロトン性有機溶媒に溶解させてなる非水電解液とともに、例えば金属缶やラミネートフィルムに収容されて電池が構成されている。
【0003】
リチウムイオン電池の過充電、過放電または過電流を防止するために保護回路が必要である。電動工具の場合、比較的大電流が流れるために、高い電流容量の保護素子が必要とされる。保護素子としては、例えば、FET(Field Effect Transistor )、ヒューズが使用される。さらに、過電流保護としてブレーカを使用する技術や、下記特許文献1に記載の技術が提案されている。下記特許文献1には、機械的スイッチと熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子、PTCサーミスタとも呼ばれる)とを組み合わせた過電流保護機能を有するスイッチが記載されている。PTC素子は、比較的低い温度では、その抵抗が低いが、ある温度を超えると抵抗が急激に増加する特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−222834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FETやヒューズ等の保護素子は高い電流容量を有する場合に大きなサイズとなり、コストも高くなる問題が生じる。さらに、ヒューズは、復帰できない特性を有するため、過電流防止のためにヒューズが溶断すると、電池は保護されるが再使用ができなくなる。ブレーカは、一旦動作した後にユーザが手動でブレーカを復帰しなければならない。
【0006】
再使用可能な素子として、過電流を防止した後に、一定時間後に接点が復帰して放電可能となる自己復帰型の素子が存在する。自己復帰型の素子を使用した場合でも、リチウムイオン電池の安全性を確保するために、自己復帰型の素子以外の安全機構を構築することが好ましい。
【0007】
さらに、従来は、自己復帰型の素子の接点が復帰し、放電可能となるタイミングをユーザが外部から認識することができない。このため、過電流により一旦、動作が停止した電動工具の状態をユーザが確認している最中に接点が復帰し、電動工具が再度、動作してしまうおそれがあった。
【0008】
したがって、本開示は、自己復帰型の素子が使用される電池パックの安全性および電池パックが使用される機器の安全性を向上させることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本開示は、例えば、電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、接点が開放したことを示す開放信号を出力する検出部とを有する電池パックである。
【0010】
本開示は、例えば、電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、接点が開放したことを示す開放信号を出力する検出部と、開放信号が供給されると、放電禁止状態となるように制御する制御部と、制御部により制御される放電禁止状態を保持する保持部とを有し、保持部は、開放した接点が復帰した場合に放電禁止状態を保持するように、制御部により制御される電池パックである。
【0011】
本開示は、例えば、上述した電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システムである。
【0012】
本開示は、例えば、上述した電池パックを有し、電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。
【0013】
本開示は、例えば、上述した電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
【0014】
本開示は、例えば、上述した電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両である。
【0015】
本開示は、例えば、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、電力情報送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
【0016】
本開示は、例えば、上述した電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【0017】
本開示は、例えば、外部機器と外部機器に装着される電池パックとからなる制御システムであり、
電池パックは、
電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、
外部機器と接続される端子と、
サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、接点が開放したことを示す開放信号を、端子を介して出力する検出部とを有し、
外部機器は、
開放信号に応じてオフされるスイッチング素子を有する制御システムである。
【0018】
本開示は、例えば、外部機器と外部機器に装着される電池パックとからなる制御システムであり、
電池パックは、
電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、
サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、接点が開放したことを示す開放信号を出力する検出部と、
開放信号が供給されると、放電禁止状態となるように制御するとともに、外部機器が動作禁止状態となるように制御する制御部と、
放電禁止状態および動作禁止状態を保持する保持部とを有し、
保持部は、開放した接点が復帰した場合に、放電禁止状態および動作禁止状態を保持するように制御部により、制御される制御システムである。
【発明の効果】
【0019】
少なくとも一つの実施形態によれば、電池パックの安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本開示におけるPTC付サーモスタットの説明に用いる略線図である。
【図2】本開示におけるPTC付サーモスタットの特性の一例を示す略線図である。
【図3】本開示を適用できる電動ドライバの概略的構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態における電池パックの接続図である。
【図5】第2の実施形態における電池パックの接続図である。
【図6】第3の実施形態における電池パックの接続図である。
【図7】第4の実施形態における電池パックの接続図である。
【図8】第5の実施形態における電池パックの接続図である。
【図9】第6の実施形態における電池パックの接続図である。
【図10】第6の実施形態における電池パックの動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】第7の実施形態における電池パックの接続図である。
【図12】第7の実施形態における電池パックの動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】第8の実施形態における電池パックの接続図である。
【図14】第8の実施形態における電池パックの動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】第8の実施形態における電池パックの動作を説明するためのタイムチャートである。
【図16】第9の実施形態における電池パックの接続図である。
【図17】第9の実施形態における電池パックの動作を説明するためのフローチャートである。
【図18】電池パックの応用例を説明するための略線図である。
【図19】電池パックの他の応用例を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、複数の実施形態および応用例、変形例について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態等は好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、以下の説明において、明示的に限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態等に限定されないものとする。説明は、以下の順序で行う。
<PTC付サーモスタットについて>
<第1の実施形態>
<第2の実施形態>
<第3の実施形態>
<第4の実施形態>
<第5の実施形態>
<第6の実施形態>
<第7の実施形態>
<第8の実施形態>
<第9の実施形態>
<応用例>
<変形例>
【0022】
<PTC付サーモスタットについて>
本開示における発明者は、先に、自己復帰型の素子の一例であるPTC付サーモスタットに関する技術を、特願2009−229915として提案している。本開示は、該出願の内容を包含するものである。以下、本開示の理解を容易にするためにPTC付サーモスタットに関して説明する。
【0023】
「PTC付サーモスタットの構成」
PTC付サーモスタット12は、例えば、断面が台形の棒状の外形を有する。図1に示すように、PTC付サーモスタット12は、可動接点21および固定接点22を有する。可動接点21がバイメタル23の可動端に固定される。バイメタル23の固定端が入力端子24に固定されている。バイメタル23は、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせたもので、温度が高くなると湾曲する。固定接点22が出力端子25に固定されている。バイメタル23によって、接点21および22を接触、離間させるスイッチの構成は、サーモスタットと称される。
【0024】
入力端子24と接続された導電性の支持板26と、出力端子25と接続された導電性の支持板28との間に、熱感抵抗素子としてのPTC素子27が挟まれている。すなわち、入力端子24および出力端子25間には、バイメタル23を含むサーモスタットを経由する電流路と、PTC素子27を経由する電流路とが並列に接続されている。PTC付サーモスタット12は、例えば、電池パックにおける電流セルの放電電流路に挿入される。
【0025】
「PTC付サーモスタットの動作」
かかるPTC付サーモスタット12の動作について説明する。通常の放電状態(または充電状態)では、バイメタル23の抵抗は、PTC素子27の抵抗より充分小であるため、電流がバイメタル23を通じて流れている。図1Aに示すように、PTC付サーモスタット12に対してモータのロック等によって過電流I1が流れると、過電流I1によってバイメタル23が発熱する。
【0026】
図1Bに示すように、発熱によってバイメタル23が湾曲して可動接点21および固定接点22が離間し始める。この状態で、過電流が流れていると、接点21および22間にアーク放電が生じ、接点同士が溶着するおそれがある。しかしながら、接点が開放し始めた時に、過電流の殆どの成分I2は、より抵抗の低いPTC素子27にバイパスされるので、アーク放電が抑制される。
【0027】
図1Cに示すように、バイメタル23の湾曲によって、接点同士が完全に開放される時には、過電流I2によってPTC素子27が発熱し、PTC素子27の抵抗が高くなる。その結果、PTC素子27を流れる電流が制限または遮断される。通常は、小さいリーク電流がPTC素子27に流れる。過電流が流れている限り、PTC素子27が高抵抗を維持し、バイメタル23は、PTC素子27で発生した熱によって湾曲状態を維持する。PTC素子27を設けないと、温度変化に応じて接点の開放、接続が繰り返され、チャタリングが発生するおそれがある。
【0028】
若し、過電流が消失し、図1Dに示すように、正常電流I3が流れる状態になると、PTC素子27の熱が下がるために、PTC素子27の抵抗値が小さくなる。その結果、バイメタル23の湾曲がなくなり、接点21および22が接触する。正常電流I3は、抵抗値が充分小さいバイメタル23を経由して流れる。このように、過電流を遮断するのみならず、通常状態に復帰することができる。
【0029】
「PTC付サーモスタットの特性の最適化」
電池セルのリード電極、セパレータ等がダメージを受けるのは、過電流の電流値と流れる時間の積で規定される熱量が大きい場合である。電池セルBTにダメージを与えないように過電流を制限するPTC付サーモスタット12の特性は、実際に使用する電池セルの複数のサンプルを使用した測定結果に基づいて決定できる。すなわち、電池セルの多数のサンプルを用意し、各サンプルに対する放電電流値と放電時間とを変化させ、電池セルがダメージを受けたか否かを調べる。好ましくは、複数回の放電を行った後にダメージが調べられる。
【0030】
図2は、上述したような測定結果から得られたリチウムイオン二次電池(例えば円筒型)の過負荷ダメージマップの一例である。横軸が放電電流(A)であり、縦軸が放電時間(秒)である。曲線31が放電率100%を表している。破線の曲線32の内側の領域41がダメージ無しの領域である。曲線32と破線の曲線33とで挟まれた領域42は、電池セルにダメージが与えられる可能性が存在する領域である。例えば電池セルのセパレータの収縮が発生するセパレータ収縮領域である。曲線33と曲線31とで挟まれた領域43は、電池セルにダメージが与えられる領域である。例えば電池セルのセパレータの溶融が発生するセパレータ溶融領域である。
【0031】
PTC付サーモスタット12は、上述したように、バイメタル23の湾曲(接点の離間)、PTC素子27の抵抗値が高い値に変化することによって、過電流を制限する。すなわち、過電流が流れ始めるタイミングから過電流が影響しない程度まで制限されるタイミングまでの遮断時間が存在する。測定のバラツキを考慮して、PTC付サーモスタット12の遮断時間の特性が図2の曲線32より僅かに下側の曲線34で示す(放電電流対放電時間の特性)を実現するように設定される。曲線32は、ダメージ無し領域41とセパレータ収縮領域42との境界を規定するものであるので、曲線34の特性によって、電池セルに対するダメージの発生を防止することができる。PTC付サーモスタット12の遮断時間の特性をこのように設定することは、バイメタル23の厚み等で規定される特性、PTC素子27の特性等の設定によって可能である。
【0032】
以上のようなPTC付サーモスタットを保護回路として電池パックに組み込むことで、パック内部に損傷が生じる前に過電流を停止させることが可能となる。さらに、過電流が消滅した後に通常動作に回復することができる。
【0033】
PTC付サーモスタットが組み込まれた電池パックが、電動工具、例えば、電動式丸ノコの電源として使用される。電動式丸ノコを用いて、木材や塩化ビニル製のパイプ、アルミパイプ等を切断するときに負荷電流が大きくなる。このとき、ユーザが無理に電動式丸ノコを押し込んで使用した場合に、電動式丸ノコの刃が切断対象に咬みこんでしまいモータがロックされる。モータがロックされることで過電流が流れる。
【0034】
過電流が流れることに応じて、PTC付サーモスタットが動作して、電動式丸ノコの動作が停止する。このとき、ユーザは、電動式丸ノコに異常が生じたと思い、電動式丸ノコの状態を確認したり、電動式丸ノコのトリガースイッチを何度も押す等の操作をする可能性がある。このような操作の最中にPTC付サーモスタットの接点が復帰し、電動式丸ノコが突然、動作することは好ましくない。したがって、PTC付サーモスタットの接点が復帰したタイミングをユーザが認識できることが望ましい。
【0035】
以上の点に鑑み、本開示は、先に提案したPTC付サーモスタットを改良し、電池パックや電池パックが使用される電動工具等の安全性を向上させたものである。以下、複数の実施形態により本開示の内容を詳細に説明する。
【0036】
<第1の実施形態>
「電動工具の一例」
図3を参照して、本開示に適用可能な電動工具例えば電動ドライバの一例について概略的に説明する。電動ドライバ51は、本体内にDCモータ等のモータ53が収納されている。モータ53の回転がシャフト54に伝達され、シャフト54によって被対象物にねじが打ち込まれる。電動ドライバ51には、ユーザが操作するトリガースイッチ52が設けられている。
【0037】
電動ドライバ51の把手の下部筐体内に、後述する電池パック1およびモータ制御部55が収納されている。モータ制御部55は、モータ53を制御する。モータ53以外の電動ドライバ51の各部が、モータ制御部55によって制御されてもよい。図示しないが電池パック1と電動ドライバ51はそれぞれに設けられた係合部材によって係合されている。後述するように、電池パック1およびモータ制御部55のそれぞれにマイクロコンピュータが備えられている。電池パック1からモータ制御部55に対して電池電源が供給されると共に、両者のマイクロコンピュータ間で電池パックの情報が通信される。
【0038】
電池パック1は、例えば、電動ドライバ51に対して着脱自在とされる。電池パック1は、電動ドライバ51に内蔵されていてもよい。電池パック1は、充電時には充電装置に装着される。なお、電池パック1が電動ドライバ51に装着されているときに、電池パック1の一部が電動ドライバ51の外部に露出し、露出部分をユーザが視認できるようにしてもよい。例えば、電池パック1の露出部分に後述するLEDが設けられ、LEDの発光および消灯をユーザが確認できるようにしてもよい。なお、後述する電池パック2、3・・9についても、電動ドライバ51に対して装着される。
【0039】
モータ制御部55は、例えば、モータ53の回転/停止、並びに回転方向を制御する。さらに、過放電時に負荷への電源供給を遮断する。トリガースイッチ52は、例えば、モータ53とモータ制御部55の間に挿入され、ユーザがトリガースイッチ52を押し込むと、モータ53に電源が供給され、モータ53が回転する。ユーザがトリガースイッチ52を戻すと、モータ53の回転が停止する。
【0040】
「電池パックの構成」
図4は、第1の実施形態における電池パック1の構成例を示す。電池パック1では、二次電池例えば、リチウムイオン二次電池の電池セルBT1、BT2、BT3(これらの電池を特に区別する必要がない場合には、電池セルBTと総称する)が、例えば、直列接続されている。複数の電池セルが並列接続されてもよく、複数の電池セルが直列接続されたものが並列接続されていてもよい。一つの電池セル当たりの満充電電圧が、例えば、4.2Vのリチウムイオン電池を用いた場合、電池パック1の満充電電圧は12.6Vとなる。
【0041】
電池セルBTの+側が、PTC付サーモスタット62を介して+側電源端子に接続される。電流制御素子の一例であるPTC付サーモスタット62は、上述したPTC付サーモスタット12と同様の構成であり、PTC付サーモスタット12と同様の動作をする。電池セルBTの−側が放電制御FET64および充電制御FET63を介して−側電源端子に接続される。充電制御FET63および放電制御FET64は、例えば、NチャンネルのFETとされる。充電制御FET63および放電制御FET64は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子により構成されてもよい。
【0042】
電池セルBTのそれぞれの電圧が制御IC(Integrated Circuit)65によって測定される。制御IC65は、電池セルBTの充電電流および放電電流を測定する。電圧および電流の測定は所定の頻度で自動的に行われる。例えば、過充電状態になると、制御IC65の制御によって充電制御FET63がオフされる。過放電状態になると、制御IC65の制御によって放電制御FET64がオフされる。
【0043】
電池パック1は、検出部の一例としての検出回路66を有する。検出回路66は、例えば、PTC付サーモスタット62の両端の電圧を測定する。PTC付サーモスタット62の接点(図1では図示は省略している)が接触している際の両端の電圧と、PTC付サーモスタット62の接点が離間(開放)している際の両端の電圧は異なる。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧を検出することで、PTC付サーモスタット62の接点が接触または離間しているかを判断する。検出回路66は、接点が接触または離間している状態に応じて、ローレベルまたはハイレベルの開放信号を出力する。
【0044】
例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が接触しているときに、ハイレベルの開放信号を出力し、PTC付サーモスタット62の接点が開放したときに、ローレベルの開放信号を出力する。勿論、PTC付サーモスタット62の接点が接触しているときに、ローレベルの開放信号を出力し、PTC付サーモスタット62の接点が開放したときに、ハイレベルの開放信号を出力するようにしてもよい。なお、ローレベルが例えば、0ボルト(V)である場合は、ローレベルの開放信号を出力することは、開放信号の出力を停止していることと等価である。検出回路66から出力された開放信号が放電制御FET64に供給される。
【0045】
「電池パックの動作」
電池パック1の動作例について説明する。放電可能な状態では、PTC付サーモスタット62の接点は接触している。PTC付サーモスタット62の接点が接触していることから、検出回路66は、例えば、ハイレベルの開放信号を出力する。出力されたハイレベルの開放信号が放電制御FET64に供給され、放電制御FET64がオンする。なお、制御IC65の制御により、放電制御FET64がオンされてもよい。
【0046】
電池パック1の電流路に過電流が流れると、PTC付サーモスタット62の接点が開放する。PTC付サーモスタット62の接点が開放することにより、PTC付サーモスタット62の両端の電圧が変化する。この電圧の変化が検出回路66により検出される。検出回路66は、電圧の変化を検出すると、例えば、開放信号のレベルをハイからローに切り換えて出力する。そして、ローレベルの開放信号が放電制御FET64に供給される。ローレベルの開放信号が供給されることにより、放電制御FET64がオフし、放電が禁止される。
【0047】
第1の実施形態では、電池パック1内に過電流が流れるとPTC付サーモスタット62の接点が開放して過電流が遮断される。さらに、PTC付サーモスタット62の接点が開放されることに応じて、放電制御FET64がオフされる。したがって、二重の保護機能が動作し、電池パック1の安全性を向上させることができる。
【0048】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態における電池パック2の構成例を示す。なお、第2の実施形態において、上述した実施形態と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0049】
第2の実施形態では、検出回路66が出力する開放信号によって、外部機器のスイッチが強制的にオフされる。外部機器は、例えば、電動ドライバ51である。外部機器のスイッチは、例えば、トリガースイッチ52である。なお、外部機器のスイッチは、トリガースイッチ52とは別個に設けられたスイッチでもよい。
【0050】
電動ドライバ51のトリガースイッチ52は、例えば、モータ53と直列に接続される。電池パック2は、電動ドライバ51と接続される制御端子67を有する。制御端子67は、コネクタなどの接続部である。なお、制御端子67は、通信可能な端子であってもよい。検出回路66から出力される開放信号は、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給される。
【0051】
電池パック2の動作例について説明する。電池パック2に過電流が流れるとPTC付サーモスタット62の接点が開放する。PTC付サーモスタット62の接点が開放することに応じて、検出回路66は、電動ドライバ51のトリガースイッチ52をオフするための開放信号を出力する。例えば、検出回路66は、ローベルの開放信号を出力する。検出回路66から出力されたローレベルの開放信号が、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給される。電動ドライバ51は、供給された開放信号を受信する。電池パック2から供給された開放信号に応じて、トリガースイッチ52が強制的にオフされる。
【0052】
なお、電動ドライバ51の制御部を介してトリガースイッチ52がオフされてもよい。例えば、ローレベルの開放信号が供給されたモータ制御部55の制御によって、トリガースイッチ52がオフされてもよい。トリガースイッチ52は、ハイレベルの開放信号によりオフされてもよい。
【0053】
第2の実施形態では、電池パック2に過電流が流れるとPTC付サーモスタット62の接点が開放して過電流が遮断される。さらに、PTC付サーモスタット62の接点が開放することに応じて、電池パック2と接続される外部機器のスイッチがオフされる。したがって、電池パック2において過電流を遮断することができるとともに、外部機器が動作しないようにすることができる。
【0054】
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態における電池パック3の構成例を示す。電池パック3において、上述した実施形態と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0055】
第3の実施形態では、検出回路66が出力する開放信号によって、放電制御FET64および外部機器のスイッチが強制的にオフされる。外部機器は、例えば、電動ドライバ51である。電池パック3の動作例について説明する。電池パック3に過電流が流れるとPTC付サーモスタット62の接点が開放する。PTC付サーモスタット62の接点が開放したことに応じて、検出回路66は、例えば、ローレベルの開放信号を出力する。検出回路66から出力されたローレベルの開放信号は、放電制御FET64に供給される。検出回路66から供給されたローレベルの開放信号により、放電制御FET64がオフされる。
【0056】
さらに、検出回路66から出力されたローレベルの開放信号は、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給される。ローレベルの開放信号によって、電動ドライバ51のトリガースイッチ52が強制的にオフされる。トリガースイッチ52が強制的にオフされるため、ユーザがトリガースイッチ52を操作しても電動ドライバ51は動作しない。
【0057】
なお、電動ドライバ51の制御部を介してトリガースイッチ52がオフされてもよい。例えば、ローレベルの開放信号が供給されたモータ制御部55の制御によって、トリガースイッチ52が強制的にオフされてもよい。
【0058】
第3の実施形態では、電池パック3内に過電流が流れるとPTC付サーモスタット62の接点が開放して過電流が遮断される。さらに、PTC付サーモスタット62の接点が開放することに応じて放電制御FET64がオフされるとともに、電動ドライバ51のトリガースイッチ52が強制的にオフされる。したがって、電池パックの安全性を向上できるとともに、外部機器が動作しないようにすることができる。
【0059】
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態における電池パック4の構成例を示す。なお、電池パック4において、上述した実施形態で説明した箇所と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0060】
電池パック4は、マイクロコンピュータ68およびレギュレータ(REG)69を有する。制御部の一例であるマイクロコンピュータ68は、電池パック4の各部を制御する。例えば、マイクロコンピュータ68は、放電制御FET64をオン/オフする制御を行う。レギュレータ69は、例えば、シリーズレギュレータである。レギュレータ69の入力ラインは、例えば、電池セルBTの+側とPTC付サーモスタット62との間のラインに接続される。レギュレータ69は、電池セルBTの電圧を使用して、マイクロコンピュータ68を動作させる電圧を生成する。レギュレータ69は、例えば、3.3〜5.0Vの電圧を生成する。
【0061】
電池パック4の動作例を説明する。電池パック4に過電流が流れると、PTC付サーモスタット62が動作して、PTC付サーモスタット62の接点が開放する。PTC付サーモスタット62の接点が開放したことに応じて、検出回路66は、例えば、ローレベルの開放信号を出力する。検出回路66から出力されたローレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68に供給される。検出回路66からのローレベルの開放信号が供給されると、マイクロコンピュータ68は、放電制御FET64をオフする制御を行う。例えば、マイクロコンピュータ68は、ローレベルの制御信号を放電制御FET64に供給する。供給されたローレベルの制御信号により、放電制御FET64がオフされる。
【0062】
このように、マイクロコンピュータ68の制御によって、放電制御FET64がオフされてもよい。電池パック4に過電流が流れると、PTC付サーモスタット62の接点が開放して過電流が遮断される。さらに、マイクロコンピュータ68の制御によって放電制御FET64がオフされる。したがって、二重の過電流保護機能が動作し、電池パックの安全性が向上する。
【0063】
<第5の実施形態>
図8は、第5の実施形態における電池パック5の構成例を示す。なお、電池パック5において、上述した実施形態で説明した箇所と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0064】
電池パック5は、外部機器と接続される。外部機器は、例えば、電動ドライバ51である。電動ドライバ51は、例えば、モータ53と直列に接続されるトリガースイッチ52を有する。電池パック5の動作例を説明する。電池パック5に過電流が流れるとPTC付サーモスタット62が動作し、PTC付サーモスタット62の接点が開放する。PTC付サーモスタット62の接点が開放したことが検出回路66により検出される。
【0065】
接点が開放したことを検出した検出回路66は、例えば、ローレベルの開放信号を出力する。検出回路66から出力されたローレベルの開放信号は、マイクロコンピュータ68に供給される。ローレベルの開放信号が供給されると、マイクロコンピュータ68は、放電制御FET64をオフする制御を行う。例えば、マイクロコンピュータ68は、放電制御FET64に対してローレベルの制御信号を供給する。供給されたローレベルの制御信号により、放電制御FET64がオフされる。
【0066】
さらに、マイクロコンピュータ68は、電動ドライバ51のトリガースイッチ52をオフする制御信号(トリガースイッチオフ信号)を生成する。マイクロコンピュータ68は、生成したトリガースイッチオフ信号を、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給する。マイクロコンピュータ68から供給されたトリガースイッチオフ信号によって、トリガースイッチ52がオフされる。
【0067】
なお、電動ドライバ51の制御部によって、トリガースイッチ52がオフされてもよい。例えば、トリガースイッチオフ信号がモータ制御部55に供給される。トリガースイッチオフ信号が供給されたモータ制御部55の制御により、トリガースイッチ52がオフされてもよい。
【0068】
第5の実施形態では、電池パック5に過電流が流れると、PTC付サーモスタット62の接点が開放して過電流が遮断される。さらに、PTC付サーモスタット62の接点が開放されることに応じて、放電制御FET64およびトリガースイッチ52をオフする制御が行われる。したがって、電池パック5の安全性を向上させることができる。さらに、電動ドライバ51が動作しないように制御できる。
【0069】
<第6の実施形態>
図9は、第6の実施形態における電池パック6の構成例を示す。なお、電池パック6において、上述した実施形態で説明した箇所と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0070】
電池パック6は、発光部の一例としてのLED(Light Emitting Diode)70を有する。LED70は、例えば、電池パック6が外部機器や充電装置に装着された際に、ユーザがLED70を視認できる位置に設けられる。LED70の発光および消灯は、マイクロコンピュータ68により制御される。マイクロコンピュータ68は、検出回路66から供給されるハイレベルまたはローレベルの開放信号に応じて、LED70の発光を制御する。
【0071】
電池パック6の動作例を、図10に示すフローチャートを使用して説明する。ステップS1では、電池パック6の電流路に放電電流が流れる。放電可能な状態では、PTC付サーモスタット62の接点は接触している。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が接触していることを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、ローレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。そして、処理がステップS2に進む。ステップS2では、放電電流によりPTC付サーモスタット62が発熱する。そして、処理がステップS3に進む。
【0072】
ステップS3では、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。すなわち、電池パック6の電流路に過電流が流れることでPTC付サーモスタット62の発熱が大きくなり、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。接点が開放していない場合は、処理がステップS1に戻る。接点が開放した場合は、処理がステップS4に進む。
【0073】
ステップS4では、PTC付サーモスタット62の接点が開放したことが、検出回路66により検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧の変化を検出することにより、接点が開放したことを検出する。そして、処理がステップS5に進む。
【0074】
ステップS5において、検出回路66は、接点が開放したことを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、信号レベルをローからハイに切り換え、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が開放している間、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。そして、処理がステップS6に進む。
【0075】
ステップS6では、検出回路66から出力されたハイレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68により受信される。そして、処理がステップS7に進む。ステップS7において、ハイレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、LED70を点灯させる制御を行う。そして、処理がステップS8に進む。
【0076】
ステップS8では、PTC付サーモスタット62の接点が再度、接触したか否か、すなわち、接点が復帰したか否かが判断される。復帰していない場合は、処理がステップS5に戻り、検出回路66がハイレベルの開放信号を出力し続ける。PTC付サーモスタット62が冷却し、PTC付サーモスタット62の接点が復帰すると処理がステップS9に進む。
【0077】
ステップS9では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が復帰したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧の変化を検出することにより、接点が復帰したことを検出する。検出回路66は、接点が復帰したことを検出すると、ハイレベルの開放信号の出力を停止する。例えば、検出回路66は、信号レベルをハイからローに切り換え、ローベルの開放信号を出力する。そして、処理がステップS10に進む。
【0078】
ステップS10では、検出回路66から出力されたローレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68により受信される。ローレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、LED70を消灯するように制御する。そして、処理がステップS11に進む。ステップS11では、LED70が消灯したことにより、ユーザは、電池パック6が放電可能な状態になったことを認識できる。そして、処理がステップS1に戻る。
【0079】
第6の実施形態では、PTC付サーモスタット62の接点の開閉に応じてLED70の発光が制御される。したがって、ユーザは、PTC付サーモスタット62の接点が復帰し、電池パック6が放電可能な状態になったことを視覚的に認識することができる。なお、放電可能な状態のときにLED70が点灯するようにしてもよい。LEDを複数設け、PTC付サーモスタット62の接点の開閉に応じて異なる色のLEDが発光するようにしてもよい。さらに、LEDに限らず、音声の再生や文字の表示によって、電池パック6が放電可能な状態になったことをユーザが認識できるようにしてもよい。
【0080】
<第7の実施形態>
図11は、第7の実施形態における電池パック7の構成例を示す。なお、電池パック7において、上述した実施形態で説明した箇所と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0081】
電池パック7は、外部機器(本体)に着脱される。外部機器は、例えば、電動ドライバ51である。電動ドライバ51は、LED71を有する。電動ドライバ51のユーザは、LED71の発光状態を視認できる。LED71の発光は、電池パック7のマイクロコンピュータ68から出力される点灯信号および消灯信号によって制御される。
【0082】
電池パック7の動作例を、図12のフローチャートを使用して説明する。ステップS21では、電池パック7の電流路に放電電流が流れる。放電可能な状態では、PTC付サーモスタット62の接点は接触している。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が接触していることを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、ローレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。そして、処理がステップS22に進む。ステップS22では、放電電流によりPTC付サーモスタット62が発熱する。そして、処理がステップS23に進む。
【0083】
ステップS23では、電池パック7の電流路に過電流が流れることにより、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。接点が開放してない場合は、処理がステップS21に戻る。接点が開放した場合は、処理がステップS24に進む。
【0084】
ステップS24では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が開放したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端における電圧の変化を検出することにより、接点が開放したことを検出する。そして、処理がステップS25に進む。
【0085】
ステップS25において、検出回路66は、接点が開放したことを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、信号レベルをローからハイに切り換え、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が開放している間、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。そして、処理がステップS26に進む。
【0086】
ステップS26では、検出回路66から出力されたハイレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68により受信される。そして、処理がステップS27に進む。ステップS27において、ハイレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、LED71を点灯させる点灯信号を生成する。マイクロコンピュータ68は、生成した点灯信号を出力する。そして、処理がステップS28に進む。
【0087】
ステップS28において、マイクロコンピュータ68から出力された点灯信号は、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給される。そして、処理がステップS29に進む。ステップS29では、電池パック7から供給された点灯信号によって、電動ドライバ51のLED71が点灯する。LED71が点灯したことで、ユーザは、電池パック7が放電禁止状態となり、電動ドライバ51が動作しなくなったことを認識できる。そして、処理がステップS30に進む。
【0088】
ステップS30では、PTC付サーモスタット62の接点が再度、接触したか否か、すなわち、接点が復帰したか否かが判断される。復帰していない場合は、処理がステップS25に戻り、検出回路66がハイレベルの開放信号を出力し続ける。PTC付サーモスタット62が冷却し、PTC付サーモスタット62の接点が復帰すると処理がステップS31に進む。
【0089】
ステップS31では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が復帰したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧の変化を検出することにより、接点が復帰したことを検出する。検出回路66は、接点が復帰したことを検出すると、ハイレベルの開放信号の出力を停止する。例えば、検出回路66は、信号レベルをハイからローに切り換え、ローベルの開放信号を出力する。そして、処理がステップS32に進む。
【0090】
ステップS32では、検出回路66から出力されたローレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68により受信される。ローレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、LED71を消灯する消灯信号を出力する。マイクロコンピュータ68から出力された消灯信号は、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給される。そして、処理がステップS33に進む。
【0091】
ステップS33では、電池パック7から供給された消灯信号によって、電動ドライバ51のLED71が消灯する。そして、処理がステップS34に進む。ユーザは、LED71が消灯したことで、電池パック7が放電可能状態となり、電動ドライバ51が動作する状態になったことを認識できる。そして、処理がステップS21に戻る。
【0092】
なお、電動ドライバ51のLED71の発光は、電動ドライバ51の制御部によって制御されてもよい。例えば、電動ドライバ51のモータ制御部55に点灯または消灯信号が供給される。モータ制御部55は、供給された点灯または消灯信号に応じてLED71の発光を制御するようにしてもよい。
【0093】
第7の実施形態では、PTC付サーモスタット62の接点の開閉に応じて、電動ドライバ51に設けられたLED71の発光を制御しているようにしている。したがって、ユーザは、PTC付サーモスタット62の接点が復帰し、電動ドライバ51が動作する状態になったことを視覚的に認識することができる。なお、第7の実施形態において、第6の実施形態と同様に電池パック側に対してもLEDを設けるようにしてもよい。
【0094】
<第8の実施形態>
図13は、第8の実施形態における電池パック8の構成例を示す。なお、電池パック8において、上述した実施形態で説明した箇所と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0095】
電池パック8は、保持部の一例として、ラッチ回路72およびラッチ回路73を有する。ラッチ回路72およびラッチ回路73は、マイクロコンピュータ68によってなされる制御を保持する。電池パック8に対して外部機器と通信を行う通信端子74を設けてもよい。
【0096】
外部機器は、例えば、電動ドライバ51である。電動ドライバ51は、通信端子75を有する。通信端子74および通信端子75を介して、マイクロコンピュータ68と電動ドライバ51の制御部との間で通信がなされる。電動ドライバ51の制御部は、例えば、モータ制御部55である。マイクロコンピュータ68とモータ制御部55との間で、例えば、SMBus(System Management Bus)規格に準じた通信がなされる。
【0097】
電池パック8は、PTC付サーモスタット62の接点が復帰した場合でも放電禁止状態を維持する。なお、電池パック8は、PTC付サーモスタット62の接点が復帰した場合に、放電禁止状態および外部機器の動作禁止状態を維持するようにしてもよい。
【0098】
以下、電池パック8の動作例を、図14のフローチャートを使用して説明する。ステップS41では、電池パック8の電流路に放電電流が流れる。放電可能な状態では、PTC付サーモスタット62の接点が接触している。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧を測定し、PTC付サーモスタット62の接点が接触していることを示す開放信号を出力する。検出回路66は、例えば、ローレベルの開放信号を出力する。出力された開放信号がマイクロコンピュータ68に供給される。
【0099】
通常の放電状態(放電可能な状態)では、ラッチ回路72およびラッチ回路73はオープンとされてもよい。通常の放電状態では、放電制御FET64のオン/オフは、例えば、制御IC65により制御される。ラッチ回路72を経由しない信号路を使用して、マイクロコンピュータ68が放電制御FET64のオン/オフを制御してもよい。トリガースイッチ52は、ユーザによる操作が有効となる状態に制御される。そして、処理がステップS42に進む。
【0100】
ステップS42では、放電電流によりPTC付サーモスタット62が発熱する。そして、処理がステップS43に進む。ステップS43では、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。すなわち、電池パック8の電流路に過電流が流れることでPTC付サーモスタット62の発熱が大きくなり、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。接点が開放していない場合は、処理がステップS41に戻る。接点が開放した場合は、処理がステップS44に進む。
【0101】
ステップS44では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が開放したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端における電圧の変化を検出することにより、接点が開放したことを検出する。そして、処理がステップS45に進む。
【0102】
ステップS45において、検出回路66は、接点が開放したことを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、信号レベルをローからハイに切り換え、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が開放している間、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給し続ける。そして、処理がステップS46に進む。
【0103】
ステップS46において、検出回路66から出力されたハイレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68によって受信される。そして、処理がステップS47およびステップS50、ステップS53に進む。ステップS47において、ハイレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、トリガースイッチ52をオフする制御を行う。例えば、マイクロコンピュータ68は、トリガパルスをラッチ回路73に供給する。そして、処理がステップS48に進む。
【0104】
ステップS48では、マイクロコンピュータ68から供給されたトリガパルスによってラッチ回路73が動作する。例えば、ラッチ回路73は、トリガパルスに応じてローレベルの信号を出力する。ラッチ回路73から出力されたローレベルの信号が、制御端子67を介してトリガースイッチ52に供給される。そして、処理がステップS49に進む。ステップS49では、ラッチ回路73から供給されたローレベルの信号により、トリガースイッチ52が強制的にオフされる。トリガースイッチ52が強制的にオフされることで、電動ドライバ51は動作禁止状態とされる。ラッチ回路73は、ローレベルの信号の出力を保持する。
【0105】
ステップS50において、ハイレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、放電制御FET64をオフする制御を行う。例えば、マイクロコンピュータ68は、トリガパルスをラッチ回路72に供給する。そして、処理がステップS51に進む。
【0106】
ステップS51では、マイクロコンピュータ68からのトリガパルスによってラッチ回路72が動作する。例えば、ラッチ回路72は、トリガパルスに応じてローレベルの信号を出力する。ラッチ回路72から出力されたローレベルの信号が放電制御FET64に供給される。そして、処理がステップS52に進む。
【0107】
ステップS52では、ラッチ回路72から供給されたローレベルの信号により放電制御FET64がオフされる。放電制御FET64がオフされることで、電池パック8は放電禁止状態とされる。ラッチ回路72は、ローレベルの信号の出力を保持する。ラッチ回路72が動作した後は、ラッチ回路72からの信号のみによって放電制御FET64のオン/オフが制御されるようにしてもよい。
【0108】
ステップS53において、電池パック8または電動ドライバ51に設けられたLED(図示は省略している)を点灯する制御がなされてもよい。なお、この制御の内容は、上述した第6または第7の実施形態と同様である。トリガースイッチ52および放電制御FET64をオフする制御がなされると、処理がステップS54に進む。
【0109】
ステップS54では、PTC付サーモスタット62の接点が再度、接触したか否か、すなわち、接点が復帰したか否かが判断される。復帰していない場合は、処理がステップS45に戻る。PTC付サーモスタット62が冷却し、PTC付サーモスタット62の接点が復帰すると処理がステップS55に進む。
【0110】
ステップS55では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が復帰したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧の変化を検出することにより、接点が復帰したことを検出する。検出回路66は、接点が復帰したことを検出すると、ハイレベルの開放信号の出力を停止する。例えば、検出回路66は、信号レベルをハイからローに切り換え、ローベルの開放信号を出力する。そして、処理がステップS56およびステップS57に進む。
【0111】
検出回路66から出力されたローレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68により受信される。マイクロコンピュータ68は、ローレベルの開放信号を受信した場合でも、ラッチ回路72およびラッチ回路73に対してトリガパルスを出力しない。したがって、ラッチ回路72およびラッチ回路73は、ローレベルの信号が出力し続ける。ステップS56では、トリガースイッチ52がオフされた状態(動作禁止状態)が保持される。ステップS57では、放電制御FET64がオフされた状態(放電禁止状態)が保持される。そして処理がステップS58に進む。
【0112】
ステップS58では保持解除条件が成立したか否かが判断される。保持解除条件は、例えば、負荷が開放された状態になることであり、具体的には、電池パック8が電動ドライバ51から離脱された状態になることである。マイクロコンピュータ68は、電池パック8が電動ドライバ51から離脱されたことを電気的または物理的な検出機構により検出する。保持解除条件が成立していない、すなわち、電池パック8が電動ドライバ51から離脱していない場合は、処理がステップS56およびステップS57に戻る。保持解除条件が成立する、すなわち、電池パック8が電動ドライバ51から離脱されたときは、処理がステップS59に進む。
【0113】
ステップS59では、ラッチ回路72およびラッチ回路73を動作させる処理が行われる。マイクロコンピュータ68は、ラッチ回路72およびラッチ回路73に対して、トリガパルスを出力する。そして、処理がステップS60およびステップS61、ステップS62に進む。
【0114】
ステップS60において、マイクロコンピュータ68から出力されたトリガパルスがラッチ回路73に供給される。ラッチ回路73は、供給されたトリガパルスに応じて、出力信号のレベルをローからハイに変更し、ハイレベルの信号を出力する。
【0115】
ステップS61において、マイクロコンピュータ68から出力されたトリガパルスがラッチ回路72に供給される。ラッチ回路72は、供給されたトリガパルスに応じて、出力信号のレベルをローからハイに変更し、ハイレベルの信号を出力する。ラッチ回路72から出力されたハイレベルの信号が放電制御FET64に供給される。供給されたハイレベルの信号により、放電制御FET64がオンされる。なお、ステップS61において、第6または第7の実施形態において説明したようにして、LEDが消灯されるようにしてもよい。そして、処理がステップS63に進む。
【0116】
ステップS63において、電池パック8が放電可能な状態となる。電池パック8が放電可能な状態となった後に、ラッチ回路72およびラッチ回路73をオープンとする制御がマイクロコンピュータ68により行われてもよい。そして、処理がステップS41に戻る。
【0117】
図15は、電池パック8における動作のタイムチャートである。時間t0から時間t1までの間は、電池パック8が放電可能な期間である。この期間では、放電制御FET64は、例えば、制御IC65の制御によりオンされる。トリガースイッチ52は、ユーザによる操作が有効な状態に制御される。ラッチ回路72およびラッチ回路73は、例えば、オープンとされる。したがって、ラッチ回路72から出力される信号は、放電制御FET64に供給されない。ラッチ回路73から出力される信号は、トリガースイッチ52に供給されない。
【0118】
時間t1のタイミングで、過電流によりPTC付サーモスタット62の接点が開放し、検出回路66からハイレベルの開放信号が出力される。検出回路66から出力されたハイレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68に供給される。マイクロコンピュータ68は、トリガパルスをラッチ回路72およびラッチ回路73に出力する。
【0119】
マイクロコンピュータ68から供給されるトリガパルスにより、ラッチ回路72およびラッチ回路73が動作する。ラッチ回路72およびラッチ回路73は、ローレベルの信号を出力する。ラッチ回路72から供給されるローレベルの信号により、放電制御FET64がオフされる。ラッチ回路73から供給されるローレベルの信号により、トリガースイッチ52が強制的にオフされる。放電制御FET64がオフされることにより、電池パック8は放電禁止状態となる。トリガースイッチ52がオフされることにより、電動ドライバ51の操作が禁止される。電動ドライバ51は、動作禁止状態となる。
【0120】
時間t2のタイミングで、PTC付サーモスタット62の接点が復帰する。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が復帰したことを検出すると、ローレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。マイクロコンピュータ68は、検出回路66からローレベルの開放信号が供給されても、ラッチ回路72およびラッチ回路73に対してトリガパルスを出力しない。すなわち、放電禁止状態および動作禁止状態が保持される。
【0121】
時間t3のタイミングで、例えば、電池パック8が電動ドライバ51から離脱される。電池パック8が電動ドライバ51から離脱したことが、マイクロコンピュータ68により検出される。すると、マイクロコンピュータ68は、トリガパルスをラッチ回路72およびラッチ回路73に出力する。
【0122】
ラッチ回路72およびラッチ回路73は、マイクロコンピュータ68から供給されるトリガパルスに応じて、信号のレベルをローからハイに切り換える。ラッチ回路72からハイレベルの信号が出力されることで、放電制御FET64がオンされる。時間t3以降は、電池パック8が放電可能な状態になる。なお、電池パック8が電動ドライバ51から離脱されたことにより、ラッチ回路73からトリガースイッチ52へのローレベルの信号の供給が停止する。したがって、トリガースイッチ52が強制的にオフされる状態が解除される。電池パック8が再度、電動ドライバ51に装着された場合は、電池パック8から供給される電力により電動ドライバ51が動作する。
【0123】
第8の実施形態では、PTC付サーモスタット62が復帰した場合でも放電制御FET64をオンせず、放電禁止状態を保持するようにしている。このため、PTC付サーモスタット62の接点が復帰したことにより、突然、電動工具が動作し始めることがない。例えば、過電流によって一旦停止した電動工具の状態をユーザ確認している最中に、電動工具が突然、動作することを防止できる。さらに、電池パックが電動工具から離脱された場合のように、電池パックにより駆動される機器がない場合には放電を禁止する必要がない。このような状態のときは、電池パックを再度、放電可能な状態にすることができる。
【0124】
なお、上述したように、PTC付サーモスタット62が復帰した場合でもトリガースイッチ52をオンせず、電動ドライバ51の動作禁止状態を保持するようにしてもよい。トリガースイッチ52をオンしないことにより、上述したような電動工具が突然、動作することを防止できる。
【0125】
なお、保持解除条件は、負荷の開放に限られない。例えば、電池パック8が充電装置に接続されたことを条件としてもよい。すなわち、電池パック8が充電装置に接続されたことをマイクロコンピュータ68が検出した場合に、放電制御FET64がオンされてもよい。放電制御FET64がオンされることで、電池パック8は、放電可能な状態となる。電池パック8が充電装置に接続されたか否かの判断は、例えば、電池パック8と充電装置との間で、通信端子74を使用した認証通信が開始されることにより判断できる。
【0126】
なお、ラッチ回路72およびラッチ回路73は、いずれか一方のみを設けるようにしてもよい。例えば、ラッチ回路72のみを設け、放電制御FET64に対する制御状態を保持するようにしてもよい。ラッチ回路72やラッチ回路73の機能がマイクロコンピュータ68に組み込まれていてもよい。
【0127】
<第9の実施形態>
図16は、第9の実施形態における電池パック9の構成例を示す。なお、電池パック9において、上述した実施形態で説明した箇所と同一の箇所には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0128】
電池パック9は、レギュレータ69の出力端子および端子GND間に抵抗81およびFET82の直列接続、ならびに、抵抗83およびFET84の直列接続が挿入される。FET82およびFET84は、制御IC65によってそのオン/オフが制御される。FET82およびFET84は、例えばNチャンネル型FETである。FET82は、制御IC65が出力する過充電検出信号によってオンされる。FET84は、制御IC65が出力する過放電検出信号によってオンされる。マイクロコンピュータ68は、消費電力の節減のために、通常状態では、スリープ状態で動作しており、制御IC65からの信号を受けると、スリープ状態から通常動作状態に遷移するようになされている。
【0129】
FET82およびFET84のそれぞれのオン/オフに応じて、プルアップされたマイクロコンピュータ68のポートは、ハイまたはローに変化する。したがって、マイクロコンピュータ68は、過充電や過放電になったことを認識できる。例えば、過充電の場合は、マイクロコンピュータ68は、通信端子74を介して充電異常信号を充電装置に対して送信する。充電異常信号を受信した充電装置は、充電動作を停止する。
【0130】
電池パック9の動作例を、図17に示すフローチャートを使用して説明する。ステップS71では、電池パック9の電流路に放電電流が流れる。放電可能な状態では、PTC付サーモスタット62の接点は接触している。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が接触していることを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、ローレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。そして、処理がステップS72に進む。ステップS72では、放電電流によりPTC付サーモスタット62が発熱する。そして、処理がステップS73に進む。
【0131】
ステップS73では、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。すなわち、電池パック9の電流路に過電流が流れることでPTC付サーモスタット62の発熱が大きくなり、PTC付サーモスタット62の接点が開放したか否かが判断される。接点が開放してない場合は、処理がステップS71に戻る。接点が開放した場合は、処理がステップS74に進む。
【0132】
ステップS74では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が開放したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端における電圧の変化を検出することにより、接点が開放したことを検出する。そして、処理がステップS75に進む。
【0133】
ステップS75において、検出回路66は、接点が開放したことを示す開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。例えば、検出回路66は、信号レベルをローからハイに切り換え、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。検出回路66は、PTC付サーモスタット62の接点が開放している間、ハイレベルの開放信号をマイクロコンピュータ68に供給する。そして、処理がステップS76に進む。
【0134】
ステップS76では、検出回路66から出力されたハイレベルの開放信号が、マイクロコンピュータ68によって受信される。そして、処理がステップS77に進む。ステップS77において、ハイレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、トリガースイッチ52をオフするためのトリガースイッチオフ信号を生成する。マイクロコンピュータ68は、生成したトリガースイッチオフ信号を出力する。そして、処理がステップS78に進む。
【0135】
ステップS78において、マイクロコンピュータ68から出力されたトリガースイッチオフ信号は、制御端子67を介して電動ドライバ51に供給される。トリガースイッチオフ信号によって、電動ドライバ51のトリガースイッチ52がオフされる。そして、処理がステップS79に進む。
【0136】
ステップS79では、PTC付サーモスタット62の接点が再度、接触したか否か、すなわち、接点が復帰したか否かが判断される。PTC付サーモスタット62の接点が復帰していない場合は、処理がステップS75に戻り、検出回路66がハイレベルの開放信号を出力し続ける。PTC付サーモスタット62が冷却し、PTC付サーモスタット62の接点が復帰すると処理がステップS80に進む。
【0137】
ステップS80では、検出回路66により、PTC付サーモスタット62の接点が復帰したことが検出される。例えば、検出回路66は、PTC付サーモスタット62の両端の電圧の変化を検出することにより、接点が復帰したことを検出する。検出回路66は、接点が復帰したことを検出すると、ハイレベルの開放信号の出力を停止する。例えば、検出回路66は、信号レベルをハイからローに切り換え、ローベルの開放信号を出力する。そして、処理がステップS81に進む。
【0138】
ステップS81では、検出回路66から出力されたローレベルの開放信号がマイクロコンピュータ68により受信される。ローレベルの開放信号を受信したマイクロコンピュータ68は、トリガースイッチオフ信号の出力を停止する。そして、処理がステップS82に進み、トリガースイッチ52を動作させることが可能な状態となる。そして、処理がステップS83に進み、電池パック9が放電可能な状態になる。そして、処理がステップS71に戻る。このように、充放電を制御するFET等の素子を有しない電池パックに対しても本開示を適用できる。
【0139】
<応用例>
上述した実施形態では、電池パックは、電動工具に使用されるものとして説明したが、これに限られない。以下、応用例について説明する。
【0140】
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図18を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0141】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池、風車等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。電動車両106は、電動アシスト自転車等でもよい。
【0142】
蓄電装置103は、二次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両106で使用されるものでも良い。この蓄電装置103に対して、上述した本開示の電池パックが適用可能とされる。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0143】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種センサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0144】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0145】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0146】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種センサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0147】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0148】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0149】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図19を参照して説明する。図19に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0150】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本開示の電池パックが適用される。
【0151】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0152】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0153】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0154】
バッテリー208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0155】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0156】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用できる。
【0157】
<変形例>
本開示は、上述した実施形態に限られることなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した第2の実施形態において、例えば、ユーザによりトリガースイッチ52が押し込まれた状態で過電流が発生し、PTC付サーモスタット62が動作する。検出回路66は、PTC付サーモスタット62が動作したことを検出し、開放信号を出力する。開放信号によって、トリガースイッチ52が強制的にオフされる。
【0158】
PTC付サーモスタット62が冷却し接点が復帰すると、開放信号の出力が停止する。開放信号の出力が停止することにより、トリガースイッチ52の動作が有効になる。このとき、トリガースイッチ52が押し込まれた状態が継続していると、モータ53が動作する。モータ53が動作することで電動ドライバ51が突然、動作することになり好ましくない。よって、トリガースイッチ52が押し込まれた状態が継続している場合において、PTC付サーモスタット62が復帰したときには、モータ53が動作しないようにしてもよい。
【0159】
例えば、PTC付サーモスタット62が復帰した後に、トリガースイッチ52が戻されたか否かを検出するようにしてもよい。トリガースイッチ52が一旦戻され、再度、トリガースイッチ52が押し込まれた場合にモータ53を動作させる制御が、電動ドライバ51においてなされてもよい。このような制御は、例えば、第3の実施形態や第5の実施形態でなされてもよい。
【0160】
本開示は、例えば、リチウムイオン電池以外の二次電池に対しても適用できる。また、本開示は、PTC付サーモスタットが使用される機器に適用可能である。さらに、他の自己復帰型の素子に本開示の技術を適用してもよい。
【0161】
本開示の技術は、制御方法や制御システムとして実現することもできる。上述した複数の実施形態におけるそれぞれの技術事項は、技術的矛盾が生じない範囲で組み合わせることができる。さらに、本開示の内容に必須でない構成は、適宜、追加または削除することができる。
【符号の説明】
【0162】
1−9・・・・電池パック
12、62・・・PTC付サーモスタット
51・・・電動ドライバ
52・・・トリガースイッチ
53・・・モータ
55・・・モータ制御部
64・・・放電制御スイッチ
66・・・検出回路
67・・・制御端子
68・・・マイクロコンピュータ
70、71・・・LED
72、73・・・ラッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、
前記サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、前記接点が開放したことを示す開放信号を出力する検出部とを有する電池パック。
【請求項2】
前記開放信号により、放電制御スイッチング素子がオフされる請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
外部機器と接続される端子を有し、
前記外部機器のスイッチング素子をオフするために、前記開放信号を、前記端子を介して前記外部機器に出力する請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記開放信号が供給される制御部を有し、
前記制御部は、前記開放信号が供給されると、放電制御スイッチング素子をオフするように制御する請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記開放信号が供給される制御部と、
外部機器と接続される端子とを有し、
前記制御部は、前記開放信号が供給されると、前記外部機器のスイッチング素子をオフするための制御信号を、前記端子を介して前記外部機器に出力する請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、
前記サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、前記接点が開放したことを示す開放信号を出力する検出部と、
前記開放信号が供給されると、放電禁止状態となるように制御する制御部と、
前記放電禁止状態を保持する保持部とを有し、
前記保持部は、前記開放した接点が復帰した場合に、前記放電禁止状態を保持するように前記制御部により制御される電池パック。
【請求項7】
前記制御部は、前記接点が復帰した後に所定状態となると、前記放電禁止状態を解除するように前記保持部を制御する請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記所定状態は、負荷が開放される状態または充電器と接続される状態である請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
発光部を有し、
前記開放信号の状態に応じて、前記発光部の発光が制御される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項10】
発光部を有する外部機器と接続され、
前記開放信号の状態に応じて、前記発光部の発光が制御される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システム。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか1項に記載の電池パックを有し、前記電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システム。
【請求項13】
請求項1〜10の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
【請求項14】
請求項1〜10の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
【請求項15】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、請求項1〜10の何れか1項に記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
【請求項16】
請求項1〜10の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【請求項17】
外部機器と前記外部機器に装着される電池パックとからなる制御システムであり、
前記電池パックは、
電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、
前記外部機器と接続される端子と、
前記サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、前記接点が開放したことを示す開放信号を、前記端子を介して出力する検出部とを有し、
前記外部機器は、
前記開放信号に応じてオフされるスイッチング素子を有する制御システム。
【請求項18】
外部機器と前記外部機器に装着される電池パックとからなる制御システムであり、
前記電池パックは、
電池セルの放電電流路に挿入され、サーモスタットと、温度の上昇に対して抵抗値が増大する熱感抵抗素子とが並列接続された電流制御素子と、
前記サーモスタットの接点が開放したことを検出すると、前記接点が開放したことを示す開放信号を出力する検出部と、
前記開放信号が供給されると、放電禁止状態となるように制御するとともに、前記外部機器を、動作禁止状態となるように制御する制御部と、
前記放電禁止状態および前記動作禁止状態を保持する保持部とを有し、
前記保持部は、前記開放した接点が復帰した場合に、前記放電禁止状態および前記動作禁止状態を保持するように、前記制御部により制御される制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−182909(P2012−182909A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44281(P2011−44281)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】