説明

電池パック

【課題】 高出力モータを負荷とする電池式電動工具や電池式掃除機などの機器の場合は、電池への通電電流が数十アンペアから100アンペア以上に及ぶ為、従来の保護回路の構成では非常に高価となり、かつ信頼性が不充分となる恐れがあった。
【解決手段】 放電回路に電流ヒューズ2を配置すると共に、二次電池1及び電流ヒューズ2よりも端子側の位置に制御手段3によって制御される半導体スイッチング素子7または電磁式コンタクタを備え、半導体スイッチング素子7または電磁式コンタクタによりプラス側充放電端子4とマイナス側放電端子6とを短絡させ得る構成とすることで、安価で信頼性の高い電池パックを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池パックの出力回路を遮断する電流遮断回路を用いた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、特に密閉型の二次電池は、適正量を超えて過充電されたり、過放電や逆充電された場合には、電解液の漏液や可燃性ガスの放出などが起こり、危険な状態となることが知られている。このため、二次電池を充放電する回路には回路を開くことで充放電を停止させる為の電流回路開閉素子として電磁式コンタクタや半導体スイッチング素子などが配されるのが一般的である。特に、過充電や過放電の際に危険性が高いリチウム二次電池では、多くの場合、電池パックにこれらの電流回路開閉素子が内蔵されている。また、二重保護の観点での過充電防止を主目的とする電池の保護手段としては、電池の電圧が既定値を超えた場合にサイリスタなどによりプラス端子とマイナス端子間に設置した半導体スイッチング素子を駆動させて回路を短絡させ、電流ヒューズを溶断する手法などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−095157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、高出力モータを負荷とする電池式電動工具や電池式掃除機などの機器の場合は、電池への通電電流が数十アンペアから100アンペア以上に及ぶ為、出力回路に設置すべき電磁式コンタクタや半導体スイッチング素子などの電流遮断素子は内部抵抗の低く信頼性の高いものが必要であり、これらは非常に大きくかつ高価なものとなる。また、モータ停止時の逆起電力による瞬間的なサージ電流も流れる為、特許文献1に示されるようなサイリスタなどによる保護回路では、誤動作の可能性が極めて高くなる。本発明は、このような高出力が要求される電池パックにおける安価で信頼性の高い電流遮断回路を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の電池パックは、単数または複数の二次電池と、プラス側充放電端子と、マイナス側充電端子と、マイナス側放電端子と、前記二次電池の状態を監視及び制御する制御手段とを備えると共に、放電回路に電流ヒューズを配置し、前記二次電池及び前記電流ヒューズよりも端子側の位置に前記制御手段によって制御される半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタを備え、前記半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタにより前記プラス側充放電端子とマイナス側放電端子とを短絡させ得る構成としたことを特徴とするものである。
【0005】
本発明では、大電流が通電される放電端子と放電時のような大電流が通電されない充電端子とが分離されているので、充電回路側には従来通りに通電遮断するための電磁式コンタクタや半導体スイッチング素子などの電流遮断素子を設置することが出来る。一方、これらの素子の設置が難しい放電回路では、電池の状態を監視及び制御する制御手段がこの放電端子からの過充電を検出したり、過放電に至ることを予想したような場合に、プラス、マイナス両放電端子の内側かつ二次電池及びヒューズの外側の位置に配された半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタを作動させることにより電池を短絡させ、過大な短絡電流を流して電流ヒューズを溶断するので、回路が安全に遮断される。さらにこの回路構成によれば、放電回路を遮断する時のみ該半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタに通電され、通常の動作時には全く通電されないことから、制御回路の消費電力も
大幅に削減することが可能となる。さらに、これらの素子は通常は作動しないので、繰り返し寿命の要求値も少ないことから、この用途として十分な信頼性を有する素子は放電回路を直接開閉する素子より安価に入手することが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
以上の通り、本発明によれば大電流の通電が必要な放電回路に半導体スイッチング素子や電磁式コンタクタなどの電流遮断手段を設けることなく、二次電池の過充電などの異常使用時に放電回路を遮断することが可能となる。
【0007】
また、異常の判断は、単純な電池電圧や温度のみに依存するのではなく、制御手段における演算によって行われるため、誤作動の無い信頼性の高い判断が可能である。さらに、プラス側放電端子とマイナス側放電端子間を短絡させる半導体スイッチング素子や電磁式コンタクタは、通常使用時には動作しない為、電力を消費することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明し、発明の理解に供する。尚、以下に示す実施形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
図1は本発明の形態に係る回路の構成を示すものである。1はリチウムイオン二次電池等の二次電池、2は二次電池1への充放電を遮断する電流ヒューズ、3は二次電池1の電圧・温度情報や電流センサ10等からの情報を受け、充放電制御等を行う制御手段、4はプラス側充放電端子、5はマイナス側充電端子、6はマイナス側放電端子である。7は制御手段3からの信号を受け二次電池1を短絡させる半導体スイッチング素子、8は二次電池1の周囲温度を測定して制御手段3へ情報を送るための温度センサ、9は制御手段3からの信号を受け二次電池1への充電を停止する充電回路開閉半導体スイッチング素子、10は二次電池1へ流れる電流値を測定する電流センサである。
【0010】
プラス側のプラス側充放電端子4とマイナス側放電端子6との間に接続された二次電池1に電流ヒューズ2が接続されている。制御手段3は、二次電池1の温度を温度センサ8により監視し、電圧も監視している。さらに電流センサ10により充放電の電流を監視している。放電回路と並列にマイナス側充電端子5及び制御手段3により制御される充電回路開閉半導体スイッチング素子9からなる充電回路が設けられている。放電回路は、制御手段3によって制御される半導体スイッチング素子7を介して、回路の最も端子よりの位置で接続されている。なお、電流ヒューズ2は二次電池1のプラス側に接続されているが、放電回路のマイナス側に接続されていても同様に機能する。
【0011】
以下、本構成による一連の動作を説明する。充電時にはプラス側充放電端子4とマイナス側充電端子5から充電電流が供給される。通常、充電器ではプラス側充放電端子4とマイナス側充電端子5間の電圧を計測し、二次電池1が過充電されることを防いでいる。しかしながら、充電器の故障などにより通電が続けられた場合には、制御手段3が二次電池1の電圧や温度センサ8により検出される温度に基づいて二次電池1への過充電を検出し、充電回路開閉半導体スイッチング素子9を開くことで充電を停止させることが出来る。
【0012】
一方、プラス側充放電端子4とマイナス側放電端子6からは通常は放電のみがなされるので、このような過充電に対する保護は不要となる。しかしながら、誤った使用方法により放電回路から充電されたような場合にも、安全を確保することは重要である。このようにプラス側充放電端子4とマイナス側放電端子6から充電されたような場合、制御手段3が二次電池1の電圧や温度センサ8により検出される温度に基づいて二次電池1への過充電を検出すると、半導体スイッチング素子7を作動させる。これにより、半導体スイッチ
ング素子7を介して二次電池1が短絡し、電流ヒューズ2に過大電流が流れ、電流ヒューズ2が溶断することで回路が開くので、放電回路からの充電が停止され、電池の安全が守られる。
【0013】
本実施の形態においては、充電回路と放電回路とを分けており、マイナス側充電端子5とマイナス側放電端子6とを別個に設けているが、充電回路と放電回路を分けない構成とすることもできる。この場合には、端子はマイナス側充放電端子として一つだけを設ければ良い。
【0014】
この場合においても通常の過放電に対する保護は充電回路開閉半導体スイッチング素子9の開閉により行うことができる。そして逆接続等の誤った使用方法により充電された場合や制御手段3により充電回路開閉半導体スイッチング素子9を開く信号が出されているにも関わらず通電が続いている場合には、二次電池1の電圧や温度センサ8により検出される温度に基づいて制御手段3から半導体スイッチング素子7を作動させる。これにより、半導体スイッチング素子7を介して二次電池1が短絡し、電流ヒューズ2に過大電流が流れ、電流ヒューズ2が溶断することで回路が開くので、電池の安全を守ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の二次電池パックは、簡便かつ高い信頼性を有し、消費電力も極めて小さいので、二次電池パックの出力回路を遮断する電流遮断回路を用いた電池パックとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる電流遮断回路の一例を示す図
【符号の説明】
【0017】
1 二次電池
2 電流ヒューズ
3 制御手段
4 プラス側充放電端子
5 マイナス側充電端子
6 マイナス側放電端子
7 半導体スイッチング素子
8 温度センサ
9 充電回路開閉半導体スイッチング素子
10 電流センサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の二次電池と、プラス側充放電端子と、マイナス側充電端子と、マイナス側放電端子と、前記二次電池の状態を監視及び制御する制御手段とを備えた電池パックであって、
放電回路に電流ヒューズを配置すると共に、前記二次電池及び前記電流ヒューズよりも端子側の位置に前記制御手段によって制御される半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタを備え、前記半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタにより前記プラス側充放電端子とマイナス側放電端子とを短絡させ得る構成としたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
単数または複数の二次電池と、プラス側充放電端子と、マイナス側充放電端子と、前記二次電池の状態を監視及び制御する制御手段とを備えた電池パックであって、
充放電回路に電流ヒューズを配置すると共に、前記二次電池及び前記電流ヒューズよりも端子側の位置に前記制御手段によって制御される半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタを備え、前記半導体スイッチング素子または電磁式コンタクタにより前記プラス側充放電端子とマイナス側充放電端子とを短絡させ得る構成としたことを特徴とする電池パック。



【図1】
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【公開番号】特開2006−174664(P2006−174664A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367169(P2004−367169)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】