電池制御装置を備えた蓄電装置
【課題】蓄電装置を構成する、直並列接続された二次電池セルまたは組電池の異常およびこれらの接続異常を確実に検出し、蓄電装置の安全性や信頼性を確保する。
【解決手段】本発明による蓄電装置は、スイッチと1個以上の単電池とが直列に接続されたセルグループを、複数個並列または直並列に接続した電池モジュールと、この電池モジュールを制御するとともに、電池モジュールの単電池およびセルグループの接続経路の異常を検出する電池制御装置とを備え、この電池制御装置は、スイッチを切り替えてセルグループを選択するスイッチ制御部と、このスイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を検出する第1の電圧検出回路とを備え、スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を第1の電圧検出部で検出することによって、電池モジュールの異常および電池モジュールの接続異常を診断する診断手段とを備える。
【解決手段】本発明による蓄電装置は、スイッチと1個以上の単電池とが直列に接続されたセルグループを、複数個並列または直並列に接続した電池モジュールと、この電池モジュールを制御するとともに、電池モジュールの単電池およびセルグループの接続経路の異常を検出する電池制御装置とを備え、この電池制御装置は、スイッチを切り替えてセルグループを選択するスイッチ制御部と、このスイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を検出する第1の電圧検出回路とを備え、スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を第1の電圧検出部で検出することによって、電池モジュールの異常および電池モジュールの接続異常を診断する診断手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用などの大きな容量を必要とする蓄電装置においては、二次電池セル(単電池)を多数個、直並列に接続して大容量とした組電池が用いられている。このような大容量の組電池においては、その高いエネルギー密度や充放電効率などからリチウムイオン電池が好適であり、近年その性能の発達に伴い広く用いられるようになった。
【0003】
リチウムイオン電池はその高いエネルギー密度や低い内部抵抗ゆえに、異常が発生した際にそれを放置して充放電を継続すると異常発熱等を起こす恐れがある。このため、異常を確実に検出し、安全な充放電制御を行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、二次電池セルを複数個並列に接続した並列セルブロックを複数個直列に接続した組電池において、組電池の異常を検出するための異常検出装置が開示されている。この異常検出装置では、各々の並列セルブロックの電圧の変動を、各並列セルブロックの二次電池セルを接続する並列接続体での電圧を検出することによって検出し、これから各並列セルブロックの異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−216448
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載するような異常検出装置の構成では、並列接続する二次電池セルの種類や性能によって、個々の二次電池セルや並列接続体に異常が生じても他の健全な二次電池セルの特性に埋もれ、異常を検知できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、蓄電装置であって、スイッチと1個以上の単電池とが直列に接続されたセルグループを、複数個並列または直並列に接続した電池モジュールと、この電池モジュールを制御するとともに、電池モジュールの単電池およびセルグループの接続経路の異常を検出する電池制御装置とを備え、この電池制御装置は、スイッチを切り替えてセルグループを選択するスイッチ制御部と、このスイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を検出する第1の電圧検出回路とを備え、スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を第1の電圧検出部で検出することによって、電池モジュールの異常および電池モジュールの接続異常を診断する診断手段とを備えることを特徴とする蓄電装置である。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電装置において、電池制御装置は、スイッチ選択部により選択されたセルグループのスイッチに印加されている電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに備え、この第2の電圧検出部が検出した電圧によって、セルグループのスイッチの異常を診断することを特徴とする蓄電装置ある。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の蓄電装置において、第1の電圧検出部および第2の電圧検出部は、それぞれ、電圧検出器を備え、直列に接続された抵抗とスイッチが、この電圧検出器に並列に接続されていることを特徴とする蓄電装置である。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、電池制御装置は更に、複数のセルコントローラを備え、各々のセルコントローラはそれぞれの対応するセルグループに含まれる各単電池の充電状態を検出して、各単電池の放電を行うことによって、各単電池の充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置である。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置において、電池制御装置は、スイッチ制御部によってスイッチを制御してセルグループを選択し、セルグループの充電状態を検出し、必要に応じてセルグループの充電を行うことによって、セルグループの充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置である。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、各単電池の充電状態および電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離すことを特徴とする蓄電装置である。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、スイッチを制御してセルグループを選択し、この選択されたセルグループの充電または放電を行い、このセルグループの充電状態の均等化を行うことを特徴とする蓄電装置の充放電方法である。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、各単電池の充電状態および電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離し、残りの単電池によって電池機能の提供を継続することを特徴とする蓄電装置の運転方法である。
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電装置と、この蓄電装置で制御される電力で駆動される走行用電動機とを備えたことを特徴とする電動走行可能な車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による電池制御装置によって、直並列接続された二次電池セルまたは組電池の異常を確実に検出することが可能となり、複数の組電池を含む蓄電装置の安全性や信頼性を確保することができる。
また、各二次電池セルまたは各組電池の充電状態の均等化を効率的に行うことが可能となる。
さらに異常な二次電池セルまたは、複数の二次電池セルが直列に接続されたセルグループを蓄電装置から確実に切り離し、残りの健全な二次電池セルまたは組電池による縮退運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の組電池の接続異常を検出する回路全体の概略図である。
【図2】従来の組電池の接続異常を検出するための電圧検出回路の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による、組電池の接続異常を検出するセルモニターの回路全体の概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による、組電池の接続異常を検出するための電圧検出部の回路の概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による、組電池の接続異常を検出する方法のフローを示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による、組電池の接続異常を検出するセルモニターの回路全体の概略図である。(a)組電池のスイッチでの電圧のみを検出する場合であり、(b)はスイッチの接続経路である、バスバーと電圧検出線も含む部分での電圧を検出する場合である。
【図7】本発明の第3の実施形態による、組電池の接続異常を検出するセルモニターを組み込んだ電池制御装置の概略図である。
【図8】本発明第3の実施形態で用いている、複数の単電池を含むセルグループを制御するセルコントローラの概略図である。
【図9】本発明の第4の実施形態である、本発明の第3の実施形態による電池制御装置を組み込んだ蓄電装置を含む、電気自動車およびハイブリッド自動車に適用可能なモータの駆動装置全体の概略図である。
【図10】本発明の第5の実施形態である、本発明の第4の実施形態による蓄電装置を備えた、ハイブリッド自動車の構成全体の概略図である。
【図11】本発明の第1の実施形態によるセルモニターの変形実施例であり、セルグループに含まれる各単電池の充電状態の均等化を行う方法のフローの概略図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の変形実施例であり、リチウム電池以外の2次電池に適用するセルモニターの実施例である。
【図13】本発明の第1および第2の実施形態による電圧検出部の変形実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜13を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、ここでは二次電池セル(単電池)を複数個並列に接続したものを並列セルグループ、二次電池セルを複数個直列に接続したものを直列セルグループと呼称する。一般的にセルグループを複数個直並列に接続したものを電池モジュールと呼び、蓄電装置はこの電池モジュールを複数個備えることで大容量化を図っている。なお、単電池が複数個接続されている、セルグループ、電池モジュール等を総称して組電池と呼んでいる。
【0011】
<比較技術の説明>
まず、図1を参照して比較技術について説明する。
図1は、簡単な例として3つの単電池BC1〜BC3を並列に接続した並列セルグループで、これらの電池の接続異常を検出するセルモニター50の概略図である。単電池BC1〜BC3は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ウルトラキャパシタなどの蓄電素子からなる。3つの電池BC1〜のBC3の正極側はバスバー21、31で接続され、更にバスバー31は正極側の電圧検出線SLPでセルモニター50の電圧検出部51に接続されている。また、3つの電池BC1〜のBC3の負極側はバスバー22、32で接続され、更にバスバー32は負極側の電圧検出線SLNでセルモニター50の電圧検出部51に接続されている。
【0012】
電圧検出部51は、例えば図2に示すように、抵抗62とスイッチ63と電圧検出器64とで構成されている。スイッチ63は、例えばMOSFETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子またはメカニカルリレーなどのメカニカルスイッチ素子を用いて構成される。スイッチ63は不図示の外部のコントローラからON/OFF制御され、OFFの場合に並列セルグループの電圧が検出される。
【0013】
今、バスバー21、31、22、32のいずれかの接続が外れる異常が生じたケースを想定する。この場合、少なくとも電圧検出部51には電池BC3が接続され、常に正常な電圧が印加されているため、スイッチ63をON、OFFしても電圧検出器64には正常時と同様な電圧挙動が観測され、バスバー21、31、22、32のいずれかの接続異常を検出することができない。また、単電池BC1やBC2の異常を検出することは当然ながら不可能である。
【0014】
<第1の実施形態>
図3は本発明の第1の実施の形態を説明する概略図である。3つの単電池BC1、BC2、BC3にはそれぞれスイッチSW1、SW2、SW3が直列に接続されている。各々の単電池とスイッチは更に、バスバー21、31、22、32によって並列に接続されている。
【0015】
セルモニター50は、これら並列に接続された単電池BC1〜BC3の接続が異常かどうかを監視する電池監視装置であり、電圧検出部51と、スイッチSW1〜3を制御するスイッチ制御部52とを備える。バスバー31は正極側電圧検出線SLPを介して電圧検出部51に接続され、バスバー32は負極側電圧検出線SLNを介して電圧検出部51に接続されている。
【0016】
スイッチSW1、SW2、SW3には、MOSFETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子またはメカニカルリレーなどのメカニカルスイッチ素子が用いられる。単電池BC1、BC2、BC3として充放電可能な二次電池セルを用いる場合は、充放電によりスイッチSW1、SW2、SW3には双方向の電流が流れるため、これらのスイッチには上記のスイッチ素子を用いて、双方向電流に対応可能に構成されている。なお、Cvはノイズ対策用のコンデンサである。
【0017】
セルモニター50はスイッチ制御部52と電圧検出部51とを有する。また、図3には示していないが、セルモニター50は上位の制御装置から指示を受け、スイッチ制御部52および電圧検出部51を制御している。
【0018】
図4に本発明による電圧検出部51の回路の概略を示す。本発明による電圧検出部は図2に示す比較例の電圧検出部と比べ、2つの抵抗61A、61Bが追加され、更に電圧検出器64が、抵抗62とスイッチ63が直列に接続された回路に並列に接続されている。なお、図4は、図3で示すように、スイッチSW3をONし、スイッチSW1、SW2をOFFした場合に相当しており、これらのスイッチを省略したものである。
スイッチ63はMOSFETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子やメカニカルリレーなどのメカニカルスイッチ素子からなる。
【0019】
<経路異常検出の原理>
ここで図4に示す本発明の電圧検出部51を用いて、二次電池セルの配線経路の異常を検出する原理を説明する。
【0020】
図4においてスイッチ63をOFFにすると、電圧検出器64によって測定される電圧Vは単電池BC3の端子電圧VBC3そのものとなる。
スイッチ63をONにすると、電圧検出線SLP、抵抗61A、62、スイッチ63および抵抗61B、電圧検出線SLNを介して単電池BC3とで閉ループを形成する。このとき、電圧検出部51では、電圧検出線SLP、抵抗61Aおよび抵抗61B、電圧検出線SLNでの電圧ドロップを電池BC3の電圧から引いた電圧が検出される。
すなわち、単電池BC3の内部抵抗値をrBC3とし、接続点CBPでの接続抵抗と接続点CMPでの接続抵抗とを含む電圧検出線SLPの抵抗をrSLP、接続点CBNでの接続抵抗と接続点CMNでの接続抵抗とを含む電圧検出線SLNの抵抗値をrSLNとし、抵抗61A、61B、62の抵抗値をそれぞれ、これらの接続点までの配線抵抗を含めてr61A、r61B、r62とし、スイッチ63の抵抗値をこの接続点までの配線抵抗を含めてr63とすると、上記の閉ループを構成する素子がしっかり接続されていれば、電圧検出器64では以下の式(1)で示される電圧Vが検出される。
V=VBC3×(r62+r63)/(rBC3+rSLP+rSLN+r61A+r61B+r62+r63)
... (1)
なお、抵抗61A、61B、62、とスイッチ63の経路状の接続点CVP、CSR、CVNでの接続抵抗は電圧検出器51内部の配線での抵抗であり、それぞれ抵抗値r61A、r61B、r62およびr63に適宜繰り込んでおくことでよく、これらの抵抗値はここでの説明に本質的な影響を与えない。
【0021】
ここで、バスバー31、32、電圧検出線SLP、抵抗61Aおよび抵抗61B、電圧検出線SLNのどれかで接続が不十分である場合は、そこでの抵抗(または接触抵抗)が大きくなるために、スイッチ63をONにすると、上記の式(1)の右側の割り算分母が大きくなるため、電圧検出器64では上記の電圧Vよりも小さい値が検出される。更に上記の閉ループのどこかで、接続が外れている場合、もしくは断線が起こっている場合は単電池BC3の端子電圧VBC3が印加されないため、電圧検出器64で検出される電圧は0Vとなる。このように、スイッチ63をON、OFFしたときの電圧検出器64による電圧検出値により、上記の閉ループ回路の接続異常を診断することができる。
【0022】
<並列セルグループの経路異常の検出>
ここで上記で説明した、配線経路の異常を検出する原理を用いて、並列セルグループの経路異常の診断方法について説明する。
【0023】
図3ではスイッチSW3がON、それ以外はOFFとなっている。このため、バスバー21、31、22、32および電圧検出線SLP、SLNのいずれかが外れると、単電池BC1からの電圧印加が途絶えるため、電圧検出部51ではその異常を正しく検出することが可能となる。
【0024】
図5は診断フローの例を示す図である。この診断フローはセルモニター50の図示しない上位CPUに実装したプログラムに従って実行される。先ず、ステップS001にてスイッチSW3をON、SW1、SW2をOFFし、単電池BC3、電圧検出線SLP、SLN、電圧検出部51の経路を構成する。次に、ステップS002で電圧検出部51にて単電池BC3の電圧VBC3のみが印加された時の電圧V3を測定する。
【0025】
ステップS003ではV3の値が単電池BC3の正常電圧範囲かを判定する。V3が正常範囲ではない場合は、ステップS013に移行し、そこで電圧検出線114Aまたは114Bの接続異常と判定し、フローを終了する。V3が正常範囲内の場合はステップS004へ移行し、電圧検出線SLPまたはSLNは正常と判断する。
【0026】
ステップS005ではスイッチSW2をON、SW3、SW1をOFFし、単電池BC2、バスバー31、32、電圧検出線SLP、SLN、電圧検出部51の経路を構成する。そして、ステップS006で電圧検出部にて単電池BC2の電圧VBC2のみが印加されたときの電圧V2を測定する。
【0027】
ステップS007ではV2の値が電池111Bの正常電圧範囲かを判定する。V2が正常範囲ではない場合は、ステップS014に移行し、そこでバスバー31または32の接続異常と判定し、フローを終了する。V2が正常範囲内の場合はステップS008にてバスバー31または32は正常と判断する。
【0028】
ステップS009ではスイッチSW1をON、SW2、SW3をOFFし、単電池BC1、バスバー21、22、31、32、電圧検出線SLP、SLN、電圧検出部51経路を構成する。そして、ステップS010で電圧検出部51にて単電池BC1電圧VBC1のみを印加した時の電圧V1を測定する。
【0029】
ステップS011ではV1の値が単電池BC1の正常電圧範囲かを判定する。V1が正常範囲ではない場合は、ステップS015に移行し、そこでバスバー21または22の接続異常と判定し、フローを終了する。V1が正常範囲内の場合はステップS012にてバスバー21または22は正常と判断されフローを終了する。
【0030】
このようにして、本発明の実施形態によれば、スイッチSW1、SW2、SW3を用いて、診断対象としている単電池、バスバー及び電圧検出線のどこで異常が起こっているかが特定され、これらの異常を確実に検出することが可能となる。
【0031】
検出された異常は上位の制御装置に信号伝達され、適切な安全対策が行われるとともに、上記のようなセルグループを搭載した電気自動車等の運転者に対しても適宜必要な情報を提示することで、この電気自動車の安全と信頼性を確保することが可能となる。
【0032】
電気自動車等で用いられる蓄電装置では、図3のような並列セルグループや、あるいは後述のように直列セルグループが複数個直並列に接続されている。これらの二次電池セル(単電池)またはセルグループの異常を検出した場合、セルモニター50は異常な単電池に接続されたスイッチを制御して、縮退運転を行うことが可能となる。異常な単電池または、この異常な単電池を含む並列セルグループあるいは直列セルグループを切り離し、残りの健全な単電池または、並列セルグループあるいは直列セルグループにより電池機能の提供を継続する。これにより、電池システムの機能を停止することなく、縮退しながらも電気自動車の動作を続けることが可能となる。
【0033】
なお、上記の本発明による診断は蓄電システムの始動(車両のキーオン)時、または終了(車両のキーオフ)後に行うと良い。また、スイッチSW1、SW2、SW3をOFFすることは当該単電池の電力の授受を遮断することになるが、電気自動車で必要とする電力が満足できる範囲であれば稼動時も診断を行うことが出来る。
【0034】
<第2の実施形態>
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態を説明する図である。図3に比べ、単電池BC1〜3がそれぞれ、スイッチSW1〜3と直列に接続され、更に直列に接続された単電池とスイッチの各々の組が並列に、スイッチ診断部65にスイッチ選択部60を介して接続されている。
【0035】
スイッチ選択部60は、マルチプレクサなどからなり、単電池BC1、BC2、BC3と、スイッチSW1、SW2、SW3とのそれぞれの接続点を一つ選択し、スイッチ診断部65とを接続する。
なお、図6(a)では、スイッチ選択部60から各単電池のスイッチの下側(単電池側)に接続されており、これらのスイッチの上側(バスバー側)に共通の接続線がスイッチ診断部65から接続されているが、これらのスイッチの上下の接続線を入れ替えてもよい。
【0036】
スイッチ診断部65は、前述の電圧検出部51と同様の回路を有し、スイッチSW1、SW2、SW3からスイッチ選択部60で選択されたスイッチの端子間電圧を測定し、それらの導通状態を診断する。
スイッチSW1、SW2、SW3の導通状態を診断することにより、スイッチSW1、SW2、SW3により、診断対象の単電池、バスバー及び電圧検出線が確実に選択されていることが確認される。このため、これらの異常を確実に検出することが可能で安全性や信頼性を確保することが可能となる。
【0037】
すなわち、上記のように、選択された単電池の接続経路全体の異常を検出する電圧検出部51と、これに加えて、選択された単電池のスイッチの導通状態を検出する、電圧検出部51と同等の機能を持つスイッチ診断部65を備えることによって、診断対象の単電池が確実に選択されていることを確認することができ、この単電池の接続経路の異常を確実に検出することができる。
【0038】
なお、本発明の第1の実施形態で説明したように、スイッチ以外のバスバーや電圧検出線SLPの接続も同時に確認する場合は、図6(b)のように接続しても良い。
【0039】
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施の形態を説明する図である。図6に比べ、4個の単電池BC11〜14とスイッチSW1が直列に接続され、4個の単電池BC21〜24とスイッチSW2が直列に接続され、4個の単電池BC31〜34とスイッチSW3が直列に接続され、それぞれ直列セルグループ20A1、20A2、20A3を構成している。これら3つの直列セルグループは並列に接続され、電池モジュールブロック20Aを構成している。3つの直列セルグループ20A1、20A2、20A3は、それぞれ、これらのセルグループに含まれる単電池の状態を監視し、必要に応じて充放電等を行う、セルコントローラIC1、IC2、IC3によって制御されている。この構成は、各電池の状態を個別に監視する必要のある、リチウムイオン電池など有機溶媒系電解液を有した二次電池に好適である。
なお、図7では図4、図6に記載したノイズ対策用のコンデンサは省略してある。
【0040】
実際の電気自動車用蓄電装置では、このような直並列に接続された複数の単電池からなる電池モジュールブロックを、更に複数直並列に接続して使用している。図7に示すセルモニター50Aは、上記の本発明の第1の実施形態で説明した、セルモニター50と同様の構成と機能を持ち、図7に示す第3の実施形態では電池モジュールブロック20Aの接続異常の検出を行う。
なお、これ以降、特に誤解のない限り、直列セルグループにスイッチを直列接続したものも、直列セルグループと呼ぶ。
【0041】
各セルグループを制御するセルコントローラIC1〜3は、各々通信系602と1ビット通信系604とを備えている。後述するようにこれら通信系を介して、セルコントローラIC1〜3は上位制御装置(マイコン30と呼ぶ)と通信を行い、電池モジュールブロックの各二次電池セルの充電状態の制御と診断を行う。1ビット通信系604は、図7に示さないが、電池モジュールブロック20Aに直列接続された、もう1つの電池モジュールブロックに更に接続されている。
【0042】
ここで図8を参照して、セルコントローラICの構成ならびに、各単電池の充電状態の制御の方法について説明する。
【0043】
<セルコントローラICの構成>
図8は電池制御用ICである、セルコントローラICの内部ブロックの概略を示す図であり、セルグループ20A1の4つの電池セルBC11〜BC14が接続されるセルコントローラIC1を例に示した。なお、説明は省略するが、他のICに関しても同様の構成となっている。また上述したように、各セルグループに含まれる電池セルは4個に限定されず、6個あるいはこれ以上であってもよい。セルコントローラICはセルグループに含まれる電池セルの個数に対応できるように設計されている。例えば、セルコントローラICでは6個の電池セルに対応できるように既に6個のバランシングスイッチを備えているが、セルグループに含まれる電池セルの個数が4個の場合は、6個のバランシングスイッチの内4個のみ使用する。
【0044】
セルコントローラIC1には、電池状態検出回路としてのマルチプレクサ120やアナログデジタル変換器122A、IC制御回路123、診断回路130、伝送入力回路138、142、伝送出力回路140、143、起動回路254、タイマ回路150、制御信号検出回路160、差動増幅器262およびOR回路288が設けられている。
【0045】
電池セルBC11〜BC14の端子電圧は、電圧検出線SL1〜SL5、電圧入力端子CV1〜CV4およびGND端子を介してマルチプレクサ120に入力される。マルチプレクサ120は電圧入力端子CV1〜CV4およびGND端子のいずれかを選択して、端子間電圧を差動増幅器262に入力する。差動増幅器262の出力は、アナログデジタル変換器122Aによりデジタル値に変換される。デジタル値に変換された端子間電圧はIC制御回路123に送られ、内部のデータ保持回路125に保持される。電圧入力端子CV1〜CV4,GND端子に入力される各電池セルBC1〜BC4の端子電圧は、セルコントローラIC1のGND電位に対して、直列接続された電池セルの端子電圧に基づく電位でバイアスされている。上記差動増幅器262により上記バイアス電位の影響が除去され、各電池セルBC1〜BC4の端子電圧に基づくアナログ値がアナログデジタル変換器122Aに入力される。
【0046】
IC制御回路123は、演算機能を有すると共に、データ保持回路125と、電圧測定や状態診断を周期的に行うタイミング制御回路126と、診断回路130からの診断フラグがセットされる診断フラグ保持回路128とを有している。IC制御回路123は、伝送入力回路138から入力された通信コマンドの内容を解読し、その内容に応じた処理を行う。コマンドとしては、例えば、各電池セルの端子間電圧の計測値を要求するコマンド、各電池セルの充電状態を調整するための放電動作を要求するコマンド、当該セルコンロトーラICの動作を開始するコマンド(Wake UP)、動作を停止するコマンド(スリープ)、アドレス設定を要求するコマンド、等を含んでいる。
【0047】
診断回路130は、IC制御回路123からの計測値に基づいて、各種診断、例えば過充電診断や過放電診断を行う。データ保持回路125は、例えばレジスタ回路で構成されており、検出した各電池セルBC11〜BC14の各端子間電圧を各電池セルBC11〜BC14に対応づけて記憶し、また、その他の検出値を、予め定められたアドレスに読出し可能に保持する。
【0048】
セルコントローラIC1の内部回路には、少なくとも2種類の電源電圧VCC,VDDが使用される。図8に示す例では、電圧VCCは並列接続された電池セルグループ20A1、20A2、20A3で構成される電池モジュールブロックの電圧であり、電圧VDDは定電圧電源134によって生成される。マルチプレクサ120および信号伝送のための伝送入力回路138,142は高電圧VCCで動作する。また、アナログデジタル変換器122A、IC制御回路123、診断回路130、信号伝送のための伝送出力回路140,143は低電圧VDDで動作する。
【0049】
セルコントローラIC1の受信端子LIN1で受信した信号は伝送入力回路138に入力され、受信端子FFIで受信した信号は伝送入力回路142に入力される。伝送入力回路142は、伝送入力回路138と同様の回路構成となっている。伝送入力回路138は、隣接する他のセルコントローラICからの信号を受信する回路231とフォトカプラPHからの信号を受信する回路234とを備えている。
【0050】
図8に示すように、最上位のセルコントローラIC1の場合には、フォトカプラPHからの信号が受信端子LIN1に入力され、セルコントローラIC2の場合には、隣接するIC1からの信号が受信端子LIN1に入力される。そのため、回路231および234のどちらを使用するかは、図8の制御端子CTに印加される制御信号に基づき、切換器233により選択される。制御端子CTに印加された制御信号は、制御信号検出回路160に入力され、切換器233は制御信号検出回路160からの指令により切り替え動作を行う。
【0051】
すなわち、セルコントローラICの中の伝送方向最上位のセルコントローラIC、すなわち、セルコントローラIC1の受信端子LIN1に上位コントローラ(マイコン30)からの信号が入力される場合には、切換器233は下側接点が閉じ、回路234の出力信号が伝送入力回路138から出力される。一方、伝送方向最上位ではない、下位のセルコントローラICの受信端子LIN1に隣接セルコントローラICからの信号が入力される場合には、切換器233は上側接点が閉じ、回路232の出力信号が伝送入力回路138から出力される。セルコントローラIC2の場合、伝送入力回路138には隣接IC1からの信号が入力されるので、切換器233は上側接点が閉じる。上位コントローラ(マイコン30)からの出力と隣接セルコントローラICの送信端子LIN2からの出力とでは出力波形の波高値が異なるため、判定する閾値が異なる。そのため、制御端子TCの制御信号に基づいて、回路138の切換器233を切り換えるようにしている。なお、通信系604についても同様の構成となっている。
【0052】
受信端子LIN1で受信された通信コマンドは、伝送入力回路138を通ってIC制御回路123に入力される。IC制御回路123は、受信した通信コマンドに応じたデータやコマンドを伝送出力回路140へ出力する。それらのデータやコマンドは、伝送出力回路140を介して送信端子LIN2から送信される。なお、伝送出力回路143も、伝送出力回路140と同様の構成である。
【0053】
端子FFIから受信した信号は、異常状態(過充電信号)を伝送するために使用される。端子FFIから異常を表す信号を受信すると、その信号は伝送入力回路142およびOR回路288を介して伝送出力回路143に入力され、伝送出力回路143から端子FFOを介して出力される。また診断回路130で異常を検知すると、端子FFIの受信内容に関係なく、診断フラグ保持回路128からOR回路288を介して伝送出力回路143に異常を表す信号が入力され、伝送出力回路143から端子FFOを介して出力される。
【0054】
隣接セルコントローラICまたはフォトカプラPHから伝送されてきた信号を起動回路147により受信すると、タイマ回路150が動作し、定電圧電源134に電圧VCCを供給する。この動作により定電圧電源134は動作状態となり、定電圧VDDを出力する。定電圧電源134から定電圧VDDが出力されるとセルコントローラIC2はスリープ状態から立ち上がり動作状態となる。
【0055】
セルコントローラIC1の電圧入力端子CV1〜CV4は電池セルのセル電圧を計測するための端子である。電圧入力端子CV1〜CV4には、それぞれ電圧検出線SL1〜SL4が接続されており、各々の電圧検出線には端子保護及び容量調整の放電電流制限のための抵抗RCVがそれぞれ設けられている。各電圧検出線SL1〜SL4は電圧入力端子CV1〜CV4と各電池セルBCの正極または負極を接続している。なお、電圧検出線SL5は電池セルBC4の負極からGND端子に接続されている。例えば、電池セルBC11のセル電圧を計測する場合には、電圧入力端子CV1−CV2間の電圧を計測する。また、電池セルBC14のセル電圧を計測する場合には、電圧入力端子CV4−GND端子間の電圧を計測する。電圧検出線間には、コンデンサCv、Cinが、ノイズ対策として設けられている。また後述するように、これらの電圧検出線の電池セル側の部分とセルコントローラIC側の部分は、電池モジュールと電池制御装置を接続するコネクタで接続されている。
【0056】
図7の電池モジュール20Aの性能を最大限に活用するためには、全部で12個の電池セルのセル電圧を均等化する必要がある。例えば、セル電圧のばらつきが大きい場合、回生充電時に最も高い電池セルが上限電圧に達した時点で回生動作を停止する必要がある。この場合、その他の電池セルのセル電圧は上限に達していないにもかかわらず、回生動作を停止して、ブレーキとしてエネルギーを消費することになる。このようなことを防止するために、各セルコントローラICは、マイコン30からのコマンドで電池セルの容量調整のための放電を行う。
【0057】
図8に示すように、各セルコントローラICは、CV1−BR1、BR2−CV3、CV3−BR3およびBR4−GNDの各端子間にセル容量調整用のバランシングスイッチBS1〜BS4を備えている。例えば、電池セルBC1の放電を行う場合には、バランシングスイッチBS1をオンする。そうすると、電池セルCV1の正極→抵抗RCV→CV1端子→バランシングスイッチBS1→BR1端子→抵抗RB→電池セルCV1の負極の経路でバランシング電流が流れる。なお、RBまたはRBBはこのバランシング用の抵抗であり、BR1〜BR4はこのバランシングを行うための端子である。
【0058】
このように、セルコントローラIC内には、電池セルBC11〜BC14の充電量を調整するためのバランシングスイッチBS1〜BS4が設けられている。実際のセルコントローラICでは、バランシングスイッチBS1,BS3にはPMOSスイッチが用いられ、バランシングスイッチBS2,BS4にはNMOSスイッチが用いられている。
【0059】
これらのバランシングスイッチBS1〜BS4の開閉は、放電制御回路132によって制御される。マイコン30からの指令に基づいて、放電させるべき電池セルに対応したバランシングスイッチを導通させるための指令信号が、IC制御回路123から放電制御回路132に送られる。IC制御回路123は、マイコン30から各電池セルBC1〜BC4に対応した放電時間の指令を通信により受け、上記放電の動作を実行する。
【0060】
セルコントローラIC1とセルコントローラIC2の間には、上述したように通信系602,604が設けられている。マイコン30からの通信コマンドは、フォトカプラPHを介して通信系602に入力され、通信系602を介してセルコントローラIC1の受信端子LIN1で受信される。セルコントローラIC1の送信端子LIN2からは、通信コマンドに応じたデータやコマンドが送信される。このようにセルコントローラIC間で順に受信および送信を行い、伝送信号は、セルコントローラIC2の送信端子LIN2から送信され、フォトカプラPHを介してマイコン30の受信端子で受信される。セルコントローラIC1とIC2は、受信した通信コマンドに応じて、セル電圧等の測定データのマイコン30への送信や、バランシング動作を行う。さらに、各セルコントローラIC1とIC2は、測定したセル電圧に基づいてセル過充電を検知する。その検知結果(異常信号)は、信号系604を介してマイコン30へ送信される。
【0061】
この第3の実施形態では、上記のように各単電池はそれぞれ対応するセルコントローラIC1、IC2、IC3によって常に監視されており、各単電池の充電状態が均等化されている。また各単電池の充電状態の情報をセルコントローラが上位制御装置(マイコン30)に送信することにより、必要に応じて、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した接続経路の診断が行われる。直列セルグループ、バスバー及び電圧検出線が確実に選択されていることが確認され、またこれらの診断を確実に行うことができるため、蓄電装置の安全性や信頼性を確保することが可能となる。
【0062】
<第4の実施形態>
図9は、本発明の電池制御装置および蓄電装置の第4の実施の形態を説明するとともに、この第4の実施形態を用いた電気自動車およびハイブリッド自動車に適用可能なモータの駆動装置全体の概略図である。図7に示した電池モジュールブロックが2つ(20Aおよび20B)直列に接続されている。
【0063】
図9に示す駆動装置は、電池モジュール20、電池モジュール20を監視する電池制御装置100、この電池制御装置100と電池モジュール20を含む蓄電装置11、電池モジュール20からの直流電力を3相交流電力に変換するインバータ装置9、車両駆動用の電動発電機7を備えている。モータ230は、インバータ装置9からの3相交流電力により駆動される。インバータ装置9と電池制御装置100とはCAN通信で結ばれており、インバータ装置9は電池制御装置100に対して上位コントローラとして機能する。また、インバータ装置9は、さらに上位の制御装置10(後述)からの指令情報に基づいて動作する。
【0064】
インバータ装置9は、パワーモジュール226と、インバータ装置を制御するMCU222と、パワーモジュール226を駆動するためのドライバ回路224とを有している。パワーモジュール226は、電池モジュール20から供給される直流電力を、電動発電機7をモータとして駆動するための3相交流電力に変換する。なお、図示していないが、パワーモジュール226に接続される強電ラインHV+,HV−間には、約700μF〜約2000μF程度の大容量の平滑キャパシタが設けられている。この平滑キャパシタは、電池制御装置100に設けられた集積回路に加わる電圧ノイズを低減する働きをする。
【0065】
インバータ装置9の動作開始状態では平滑キャパシタの電荷は略ゼロであり、リレーRLを閉じると大きな初期電流が平滑キャパシタへ流れ込む。そして、この大電流のためにリレーRLが融着して破損するおそれがある。この問題を解決するために、MCU222は、さらに上位の制御装置10からの命令に従い、電動発電機7の駆動開始時に、プリチャージリレーRLPを開状態から閉状態にして平滑キャパシタを充電し、その後にリレーRLを開状態から閉状態として、電池モジュール20からインバータ装置9への電力の供給を開始する。平滑キャパシタを充電する際には、抵抗RPを介して最大電流を制限しながら充電を行う。このような動作を行うことで、リレー回路を保護すると共に、電池セルやインバータ装置9を流れる最大電流を所定値以下に低減でき、高い安全性を維持できる。
【0066】
なお、インバータ装置9は、電動発電機7の回転子に対するパワーモジュール226により発生する交流電力の位相を制御して、車両制動時には電動発電機7を発電機として動作させる。すなわち回生制動制御を行い、発電機運転により発電された電力を電池モジュール20に回生して電池モジュール20を充電する。電池モジュール20の充電状態が基準状態より低下した場合には、インバータ装置9は電動発電機7を発電機として運転する。電動発電機7で発電された3相交流電力は、パワーモジュール226により直流電力に変換されて電池モジュール20に供給される。その結果、電池モジュール部20は充電される。
【0067】
一方、電動発電機7をモータとして力行運転する場合、MCU222は制御装置10の命令に従い、電動発電機7の回転子の回転に対して進み方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は、電池モジュール20から直流電力がパワーモジュール226に供給される。また、回生制動制御により電池モジュール20を充電する場合には、MCU222は、電動発電機7の回転子の回転に対して遅れ方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は電動発電機7から電力がパワーモジュール226に供給され、パワーモジュール226の直流電力が電池モジュール20へ供給される。結果的に電動発電機7は発電機として作用することとなる。
【0068】
インバータ装置9のパワーモジュール226は、導通および遮断動作を高速で行い直流電力と交流電力間の電力変換を行う。このとき、大電流を高速で遮断するので、直流回路の有するインダクタンスにより大きな電圧変動が発生する。この電圧変動を抑制するため、上述した大容量の平滑キャパシタが設けられている。
【0069】
電池モジュール20は、例えばここでは直列接続された2つの電池モジュールブロック20A、20Bで構成されている。各電池モジュールブロック20A、20Bは、各々複数の電池セルを直列接続したセルグループを複数直列に接続されたものを備えている。電池モジュールブロック20Aと電池モジュールブロック20Bとは、スイッチとヒューズとが直列接続された保守・点検用のサービスディスコネクトSD−SWを介して直列接続される。このサービスディスコネクトSD−SWが開くことで電気回路の直接回路が遮断され、仮に電池モジュールブロック20A、20Bのどこかで車両との間に1箇所接続回路ができたとしても電流が流れることはない。このような構成により高い安全性を維持できる。又、点検時に作業者がHV+とHV−の間を触っても、高電圧は人体に印加されないので安全である。
【0070】
電池モジュール20とインバータ装置9との間の強電ラインHV+には、リレーRL,抵抗RPおよびプリチャージリレーRLPを備えた電池ディスコネクトユニットBDUが設けられている。抵抗RPとプリチャージリレーRLPとの直列回路は、リレーRLと並列に接続されている。
【0071】
電池制御装置100は、主に各セル電圧の測定、総電圧の測定、電流の測定、セル温度およびセルの容量調整等を行う。そのために、セルコントローラとして、複数の電池制御用IC(集積回路)が設けられている。各電池モジュールブロック20A、20B内に設けられた複数の電池セルは、複数のセルグループ(組電池)に分けられ、各セルグループ毎に、各セルグループに含まれる電池セルを制御するセルコントローラが1つずつ設けられている。
簡単のため、以下の説明では各セルグループは4個の電池セルで構成されているとする。また各電池モジュールブロック20A、20B、は各々2つのセルグループ(20A1、20A2、20A3と20B1、20B2、20B3)で構成されるとする。
【0072】
図8も参照して説明すると、各セルグループを制御するセルコントローラIC1〜IC6は、各々通信系602と1ビット通信系604とを備えている。セル電圧値読み取りや各種コマンド送信のための通信系602においては、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)PHを介してデイジーチェーン方式で電池モジュール20を制御するマイコン30とシリアル通信を行う。1ビット通信系604は、セル過充電が検知されたときの異常信号を送信する。図9に示す例では、通信系602は、電池モジュールブロック20AのセルコントローラIC1、IC2、IC3に対する上位の通信経路と、電池モジュールブロック20BのセルコントローラIC4、IC5、IC6に対する下位の通信経路とに分けられている。
【0073】
各セルコントローラICは異常診断を行い、自分自身が異常と判断した場合、あるいは上位のセルコントローラICから異常信号を受信端子FFIで受信した場合に、送信端子FFOから異常信号を送信する。一方、既に受信端子FFIで受信していた異常信号が消えたり、あるいは自分自身の異常判断が正常判断となったりした場合には、送信端子FFOから伝送される異常信号は消える。この異常信号は本実施形態では1ビット信号である。
【0074】
マイコン30は異常信号をセルコントローラICに送信しないが、異常信号の伝送路である1ビット通信系604が正しく動作することを診断するために、擬似異常信号であるテスト信号を1ビット通信系604に送出する。このテスト信号を受信したセルコントローラIC1は異常信号を通信系604へ送出し、その異常信号がセルコントローラIC2によって受信される。異常信号はセルコントローラIC2からセルコントローラIC3、IC4、IC5、IC6の順に送信され、最終的にはセルコントローラIC6からマイコン30へと返信される。通信系604が正常に動作していれば、マイコン30から送信された擬似異常信号は通信系604を介してマイコン30に戻ってくる。このように擬似異常信号をマイコン30が送受することで通信系604の診断ができ、システムの信頼性が向上する。
【0075】
電池ディスコネクトユニットBDU内にはホール素子等の電流センサSiが設置されており、電流センサSiの出力はマイコン30に入力される。電池モジュール20の総電圧および温度に関する信号もマイコン30に入力され、それぞれマイコン30のAD変換器(ADC)によって測定される。温度センサは電池モジュールブロック20A、20B内の複数箇所に設けられている。
【0076】
この様に、本発明によれば、複数のセルコントローラICを直列または並列または直並列に接続し、これらの複数のセルコントローラICと上位制御装置とを通信で接続することが可能である。これにより、さらに大規模で高い安全性を有し、かつ高信頼性を有する蓄電装置を容易に構築することが可能となる。また、電池または電池の直列セルグループの異常を検出した場合、セルモニター50は異常電池または異常な直列セルグループと接続されたスイッチを制御し、異常電池または異常な直列セルグループを切り離し、残りの健全な各電池または各直列セルグループ電池機能を提供することが可能である。これにより、充放電といった電池システムの機能を停止することなく縮退しながらもその機能を提供し続けることが可能となる。
【0077】
<第5の実施形態>
図10は、本発明の第5の実施の形態を説明する図である。本発明の蓄電装置をハイブリッド自動車に適用した例である。なお、この第5の実施形態を含め、本発明の実施形態の構成は、ハイブリッド電車などの鉄道車両などにも適用できる。また本発明による電池制御装置および蓄電装置は電気自動車にも適用可能である。
【0078】
<ハイブリッド自動車用駆動システムの概略構成>
図10に示すハイブリッド自動車1の駆動システムは、駆動輪2に機械的に接続された車軸3がデファレンシャルギア4と接続され、デファレンシャルギア4の入力軸が変速機5と接続されている。そして、駆動源として、内燃機関であるエンジン6と電動発電機7の駆動力を切替える駆動力切替装置8を介して変速機5の入力となっている。
【0079】
図10では駆動輪2の駆動源として、エンジン6と電動発電機7とが並列に配置された、いわゆるパラレルハイブリッド方式である。また、ハイブリッド自動車用駆動システムには、駆動輪2の駆動源として電動発電機7のエネルギーを用い、エンジン6のエネルギーは電動発電機7の駆動源、すなわち蓄電器を充電するようにした、いわゆるシリアルハイブリッド方式があり、本発明はこれらの方式、又は組合せた方式共に採用することができる。
【0080】
電動発電機7にはインバータ装置9を介して、電源装置である蓄電装置11が電気的に接続されている。インバータ装置9は制御装置10によって制御される。
【0081】
電動発電機7を電動機として作動させる時には、インバータ装置9は、蓄電装置11から出力された直流電力を三相交流電力に変換する直流−交流変換回路として機能する。また、回生制動の際に電動発電機7を発電機として作動させる時には、インバータ装置9は、電動発電機7から出力された三相交流電力を直流電力に変換する交流−直流変換回路として機能する。インバータ装置9の直流側には、蓄電装置11の電池モジュールの正負極端子が電気的に接続される。インバータ装置9の交流側には2つのスイッチング半導体素子による3直列回路があり、直列回路の2つのスイッチング半導体素子の中間には、電動発電機4の電機子巻線の3つの相の巻線が電気的に接続されるようになっている。
【0082】
電動発電機7は、駆動輪5を駆動するための原動機として機能し、電機子(固定子)と、電機子に対向配置され、回転可能に保持された界磁(回転子)とを備え、永久磁石の磁束を界磁に用いた永久磁石界磁式三相交流同期回転電機である。電動発電機7は、電機子巻線に供給された三相交流電力により形成されて同期速度で回転する回転磁界と、永久磁石の磁束との磁気的な作用に基づいて、駆動輪5の駆動に必要な回転動力を発生する
【0083】
電動発電機7を電動機として駆動する時には、電機子は、インバータ装置9によって制御された三相交流電力の供給を受けて回転磁界を発生させる。一方、電動発電機9を発電機として駆動する時には、電機子は、磁束の鎖交により三相交流電力を発生させる部位となり、磁性体である電機子鉄心(固定子鉄心)と、電機子鉄心に装着された三相の電機子巻線(固定子巻線)とを備えている。界磁は、電動発電機7を電動機或いは発電機として駆動する時、界磁磁束を発生させる部位であり、磁性体である界磁鉄心(回転子鉄心)と、界磁鉄心に装着された永久磁石とを備えている。
【0084】
電動発電機7としては、電機子巻線に供給された三相交流電力により形成されて同期速度で回転する回転磁界と、巻線の励磁による磁束との磁気的な作用に基づいて、回転動力を発生する巻線界磁式三相交流同期回転電機、或いは三相交流誘導回転電機などを採用してもよい。巻線界磁式三相交流同期回転電機の場合、電機子の構成は永久磁石界磁式三相交流同期回転電機と基本的に同じである。一方、界磁の構成は異なっており、磁性体である界磁鉄心に界磁巻線(回転子巻線)を巻く構成になっている。尚、巻線界磁式三相交流同期回転電機では、界磁巻線が巻かれた界磁鉄心に永久磁石を装着し、巻線による磁束の漏れを抑える場合もある。界磁巻線は外部電源から界磁電流の供給を受けて励磁されることにより磁束を発生する。
【0085】
電動発電機7には駆動力切替装置8、変速機5、デファレンシャルギア4を介して駆動輪2の車軸3が機械的に接続されている。変速機5は、電動発電機7から出力された回転動力を変速してデファレンシャルギア4に伝達する。デファレンシャルギア4は、変速機5から出力された回転動力を左右の車軸3に伝達する。駆動力切替装置8は、エンジン制御や走行制御などの上位制御装置(不図示)によって切替えられ、エンジン制御での加速走行、アイドルストップからの電動発電機7によるエンジン始動、ブレーキ制御における回生ブレーキ協調などで切替えて電動機又は発電機として動作させる。
【0086】
蓄電装置11は、電動発電機7が回生時に発生した電力を自身の駆動用電力として充電し、電動発電機7を発電機として駆動する際に、この駆動に必要な電力を放電する駆動用車載電源である。例えば、100V以上の定格電圧を有するように、数十本のリチウムイオン電池により構成されたバッテリシステムである。尚、蓄電装置11の詳細な構成については後述する。
【0087】
蓄電装置11には、電動発電機7の他に、車載補機(たとえばパワーステアリング装置,エアーブレーキ)に動力を供給する電動アクチュエータ、蓄電装置11よりも定格電圧が低く、車内電装品(たとえばライト,オーディオ、車載電子制御装置)に駆動電力を供給する電装用電源である低圧バッテリなどがDC/DCコンバータを介して電気的に接続されている。DC/DCコンバータは、蓄電装置11の出力電圧を降圧して電動アクチュエータや低圧バッテリなどに供給したり、低圧バッテリの出力電圧を昇圧して蓄電装置11などに供給したりする昇降圧装置である。低圧バッテリには定格電圧12Vの鉛バッテリを用いている。低圧バッテリとしては、同じ定格電圧を有するリチウムイオンバッテリ或いはニッケル水素バッテリを用いてもよい。
【0088】
ハイブリッド自動車1の力行時(発進、加速、通常走行など)、制御装置10に正のトルク指令が与えられてインバータ装置9の作動が制御されると、蓄電装置11に蓄電された直流電力はインバータ装置9により三相交流電力に変換されて電動発電機7に供給される。これにより、電動発電機7が駆動されて回転動力が発生する。発生した回転動力は、駆動力切替装置8、変速機5及びデファレンシャルギア4を介して車軸3に伝達され、駆動輪2を駆動する。
【0089】
ハイブリッド自動車1の回生時(減速、制動など)、制御装置10に負のトルク指令が与えられてインバータ装置9の作動が制御されると、駆動輪2の回転動力により駆動される電動発電機7から発生した三相交流電力は直流電力に変換されて蓄電装置11に供給される。これにより、変換された直流電力は蓄電装置11に充電される。
【0090】
制御装置10は、上位制御装置(不図示)から出力されたトルク指令値から電流指令値を演算すると共に、電流指令値と、インバータ装置9の間を流れる実電流との差分に基づいて電圧指令値を演算し、この演算された電圧指令値に基づいてPWM(パルス幅変調)信号を発生させ、そのPWM信号をインバータ装置9に出力する。
【0091】
<第1の実施形態の変形実施例>
図3を用いて説明した、本発明によるセルモニター50では、上記の診断以外にもスイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して並列接続された単電池BC1、BC2、BC3の充放電制御を個別に行い、充電状態や劣化状態などの電池状態の均等化や、逆に電池状態の不均衡化を行うことが可能である。
【0092】
ここで図11を参照してスイッチ素子の制御によって充電状態を均等化する方法を説明する。ここでは、前提条件として図3の単電池BC3の電圧VBC3が、単電池BC1、BC2の電圧VBC1、VBC2に比べ低下しているとする。また第1の実施形態で説明したように、セルモニターで測定している単電池の電圧は単電池の端子電圧ではないが、配線経路に異常がなければ、単電池の端子電圧に簡単に換算できるので、以下の説明ではセルモニターで単電池の端子電圧を測定しているとして説明する。
【0093】
まず、ステップS101にて動作モードを検出し、ステップS102にて充電中か判定する。充電中の場合は、ステップS103にて、図3のようにスイッチSW3をON、SW1、SW2をOFFし、単電池BC3を選択する。これにより、単電池BC3のみが充電され、単電池BC3 の電圧VBC3は上昇する。このVBC3はステップS104でモニタされる。
【0094】
一方、ステップS102が充電中ではない場合、ステップS106にて放電中か判定される。放電中の場合は、ステップS107にてスイッチSW3をOFF、SW1、SW2をONし、単電池BC1、BC2を選択する。これにより、単電池BC1、BC2のみが放電され、単電池BC1、BC2の電圧VBC1、VBC2は減少する。このVBC1(=VBC2)はステップS108でモニタされる。なお、ステップS106で放電中ではない場合は、休止中であり、ステップS101に戻る。
【0095】
そして、ステップS105でVBC3=VBC1=VBC2が成立すればフローを終了する。また、成立しない場合はステップS101に戻り、上述のステップが繰り返される。
【0096】
ここでは、前提条件として単電池BC3の電圧VBC3が、単電池BC1、BC2の電圧VBC1、VBC2に比べ低下しているケースで説明したが、単電池BC1やBC2の電圧が他に比べ低い場合でも同様にスイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して単電池BC1、BC2、BC3の電圧を均等化することが可能である。
【0097】
このように本発明によれば、診断以外にもスイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して単電池BC1、BC2、BC3の充放電制御を個別に行い、各電池の充電状態を均等化することが可能である。
【0098】
また、これとは逆に、スイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して単電池BC1、BC2、BC3の充放電制御を個別に行い、各電池の充電状態の不均衡化をすることも可能である。各電池の充電状態を不均衡化することにより各電池に印加される充放電ストレスにも不均衡を生じさせ、劣化状態を制御することも可能である。
例えば、劣化の程度の小さい電池電圧を高めに制御し、優先して充放電することにより劣化が加速され、結果として劣化状態を均等化することも可能である。
【0099】
なお、上記のようにセルグループを選択して充電する方法は、本発明の第3の実施形態(図7)で説明したような、複数の単電池を直列に接続したセルグループが複数並列に接続されている場合においても、上記のスイッチを制御して、セルグループを選択し、このセルグループの充電状態を検出し、必要に応じてこのセルグループの充電を行うことにより、セルグループの充電状態を均等化することができる。
またこの直列セルグループに含まれる、各単電池の充電状態は本発明の第3の実施形態で図8を用いて説明したように、各単電池毎に必要に応じて放電を行うことによって、各単電池の充電状態を均等化することができる。
このようにセルグループを選択して、各セルグループ毎に充放電を行うことにより各セルグループおよびこれに含まれる各単電池の充電状態を均等化することができる。
【0100】
<本発明の第2の実施形態の変形実施例>
本発明はリチウム電池以外の二次電池にも適用できる。
図12では図6に比べ、単電池が3個直列接続された直列セルグループに更にスイッチが直列に接続されている。または図8と比較し、3つの直列セルグループ20A1、20A2、20A3の各々を制御するセルコントローラが削除されている。本構成は、各単電池の状態を個別に監視する必要のない鉛電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など水系電解液を有した二次電池に好適である。この変形実施例は、更に直列セルグループを2つ以上直列接続した電池モジュールブロックにスイッチを直列接続したものを並列接続したものにも適用可能であり、更に多くの並列接続数とすることも可能である。
【0101】
<電圧検出部の変形実施例>
図13は、本発明による第1および第2の実施形態で用いられた電圧検出部51の変形実施例を示す。ここでは、図4に示した電圧検出部51の回路と比べ、スイッチ63を用いる代わりに、電圧検出部51の正極側と負極側の両端を微小電流でプルアップまたはプルダウンすることにより、同様な機能を達成することが可能である。すなわち、電圧検出線SLP、抵抗61A及び抵抗61B、電圧検出線SLNが正しく接続されていない場合は、電圧検出器64でプルアップ電圧またはプルダウン電圧が検出され、電圧検出経路の異常を診断することができる。
【0102】
図12ではスイッチ63と定電流源66が直列に接続され、スイッチ67と定電流源68が直列に接続されている。スイッチ63とスイッチ67は電圧検出器64の両端に接続されている。また、定電流源802と定電流源804の他端はグランドに接続される。この定電流源802、804の電流値は電池電圧が低下しないレベルの微小電流値に設定されている。
【0103】
診断時はスイッチ801とスイッチ803をONする。これにより、電圧検出器64の両端は定電流源66、68によりプルダウンされるが、その電流値は電池電圧が低下しないレベルの微小電流値に設定されているため、電圧検出器64では正常時は電池電圧とほぼ等しい電圧が検出される。一方、例えば、電圧検出線SLPまたはSLNが正しく接続されていない場合は、電池電圧が印加されないため、ゼロに近い電圧が検出される。
【0104】
ここでは、定電流源66と68をスイッチ63と67をそれぞれ介して電圧検出器64の両端に接続した。これは診断時のみにスイッチ63と67をONすることにより消費電流を削減し、また、電圧検出精度の低下を防止するためである。従って、消費電流や電圧検出精度の仕様によってはスイッチ63、67を削除することが可能である。また、ここでは微小電流によるプルダウンのケースを示したが、同様に微小電流により電圧検出器64の両端を電源電圧にプルアップする方法でも同様な機能を果たすことが出来る。このように、電圧検出器64の両端を微小電流でプルアップまたはプルダウンすることにより、電圧検出経路の異常を診断することができる。
【0105】
<その他の変形実施例>
上記の本発明の実施形態の説明では、単電池はリチウムイオン電池やニッケル水素電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池などの二次電池、およびウルトラキャパシタなどの蓄電素子であるとして説明したが、本発明の経路異常検出方法は、二次電池でない一般的な電池、例えば二酸化マンガン電池等の単電池に対しても、同様に適用することができる。
【0106】
なお、本発明の第1の実施形態では説明を簡単にするため、1個の単電池とスイッチが直列接続された構成としたが、複数の単電池とスイッチを直列に接続されたものが並列に接続されている場合にも、本発明は適用可能である。
【0107】
また、本発明の第1の実施形態では、図3において、単電池BC1〜3のそれぞれにスイッチSW1〜3が直列に接続されたものが並列接続された構成となっているとした。すなわち単電池が3個並列に接続された並列セルグループを構成しているが、本発明はこの並列セルグループを2つ以上、直列または並列または直並列に接続した電池モジュールブロック、およびこの電池モジュールブロックを並列または直列または直並列に接続した電池モジュールにおいても適用可能である。
【0108】
また、本発明の第1の実施形態では、図4において、2個の抵抗61A、62、61Bを設けたが、電圧検出線SLP、SLNの抵抗値の大きさによってこれらを削除することも、更に多数の抵抗を設けることも可能である。
【0109】
本発明の第4の実施形態では、各セルグループは4個の電池セルで構成され、各電池モジュールブロック20A、20B、は各々2つのセルグループ(20A1、20A2、20A3と20B1、20B2、20B3)で構成されるとした。
しかしながら、各セルグループに含まれる電池セルは4個に限定するものでなく、5個あるいはこれ以上であってよく、また例えば4個のセルグループと6個のセルグループが組み合わされていてもよい。各セルグループに対応して設けられるセルコントローラICは、これらのセルグループに含まれる電池セルの数が4個であっても、また5個以上であっても使用できるように設計したものを使用することができる。
また電気自動車やハイブリッド自動車で必要とされる電圧および電流を得るために、上記のように各電池モジュールブロックはセルグループを複数個直列または直並列に接続してもよく、更に複数の電池モジュールブロックを直列または直並列に接続してよい。
【0110】
上記で、本発明の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
<図1〜4、6〜7、11、12>
BC1〜BC3、BC11〜BC14、BC21〜BC24、BC31〜BC34:二次電池セル
VBC1、VBC2、VBC3:二次電池セルBC1〜BC3の端子電圧
rBC3:二次電池セルBC3の内部抵抗値
21、22、31、32:バスバー
SLP、SLN、SL1〜SL5:電圧検出線
SL11〜15、SL21〜25、SL31〜35:電圧検出線
rSLP、rSLN:SLP、SLNの抵抗値
CBP、CBN、CNP、CMN、CVP、CVN:接続点
Cv:コンデンサ
SW1〜3:スイッチ
IC1〜3:セルコントローラ
50:セルモニター
51:電圧検出部
52:スイッチ制御部
61A、61B、62:抵抗
r61A、r61B、r62:抵抗61A、61B、62の抵抗値
63:スイッチ
r63:スイッチ63の抵抗値
64:電圧検出器
65:スイッチ診断部
66:定電流源
67:スイッチ
68:定電流源
801、803:スイッチ
<図8>
120:マルチプレクサ
122A:アナログデジタル変換器
123:IC制御回路
130:診断回路
138および142:伝送入力回路
140および143:伝送出力回路
147:起動回路
150:タイマ回路
160:制御信号検出回路
262差動増幅器
288:OR回路
BC1〜BC4:電池セル
123:IC制御回路
125:データ保持回路
IC1:セルコントロールIC
126:タイミング制御回路
130:診断回路
128:診断フラグ保持回路
BR1〜BR4:バランシング用端子
CV1〜CV4:電圧入力端子
GND:GND端子
SL1〜SL5:電圧検出線
VCCおよびVDD:電源電圧
CvおよびCin:コンデンサ
RCVおよびRB:抵抗
PH:フォトカプラ
LIN1:通信系602の入力端子
LIN2:通信系602の入力端子
FFI:通信系604の入力端子
FFO:通信系604の出力端子
D1およびD2:ESD対策用ダイオード
<図9>
20:電池モジュール
20A、20B:電池モジュールブロック
30:マイコン
100:電池制御装置
9:インバータ装置
602,604:通信系
IC1〜IC4:セルコントローラIC
SD−SW:サービスディスコネクト(スイッチ)
RC−net:保護回路および放電回路を含む配線回路部
<図13>
1:ハイブリッド自動車
2:駆動輪
3:車軸
4:デファレンシャルギア
5:変速機
6:エンジン
7:電動発電機
8:駆動力切替装置
9:インバータ装置
10:制御装置
11:蓄電装置
HV+およびHV−:強電ライン
RL:リレー
RP:抵抗
RLP:プリチャージリレー
BDU:電池ディスコネクトユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用などの大きな容量を必要とする蓄電装置においては、二次電池セル(単電池)を多数個、直並列に接続して大容量とした組電池が用いられている。このような大容量の組電池においては、その高いエネルギー密度や充放電効率などからリチウムイオン電池が好適であり、近年その性能の発達に伴い広く用いられるようになった。
【0003】
リチウムイオン電池はその高いエネルギー密度や低い内部抵抗ゆえに、異常が発生した際にそれを放置して充放電を継続すると異常発熱等を起こす恐れがある。このため、異常を確実に検出し、安全な充放電制御を行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、二次電池セルを複数個並列に接続した並列セルブロックを複数個直列に接続した組電池において、組電池の異常を検出するための異常検出装置が開示されている。この異常検出装置では、各々の並列セルブロックの電圧の変動を、各並列セルブロックの二次電池セルを接続する並列接続体での電圧を検出することによって検出し、これから各並列セルブロックの異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−216448
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載するような異常検出装置の構成では、並列接続する二次電池セルの種類や性能によって、個々の二次電池セルや並列接続体に異常が生じても他の健全な二次電池セルの特性に埋もれ、異常を検知できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明は、蓄電装置であって、スイッチと1個以上の単電池とが直列に接続されたセルグループを、複数個並列または直並列に接続した電池モジュールと、この電池モジュールを制御するとともに、電池モジュールの単電池およびセルグループの接続経路の異常を検出する電池制御装置とを備え、この電池制御装置は、スイッチを切り替えてセルグループを選択するスイッチ制御部と、このスイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を検出する第1の電圧検出回路とを備え、スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を第1の電圧検出部で検出することによって、電池モジュールの異常および電池モジュールの接続異常を診断する診断手段とを備えることを特徴とする蓄電装置である。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電装置において、電池制御装置は、スイッチ選択部により選択されたセルグループのスイッチに印加されている電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに備え、この第2の電圧検出部が検出した電圧によって、セルグループのスイッチの異常を診断することを特徴とする蓄電装置ある。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の蓄電装置において、第1の電圧検出部および第2の電圧検出部は、それぞれ、電圧検出器を備え、直列に接続された抵抗とスイッチが、この電圧検出器に並列に接続されていることを特徴とする蓄電装置である。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、電池制御装置は更に、複数のセルコントローラを備え、各々のセルコントローラはそれぞれの対応するセルグループに含まれる各単電池の充電状態を検出して、各単電池の放電を行うことによって、各単電池の充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置である。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置において、電池制御装置は、スイッチ制御部によってスイッチを制御してセルグループを選択し、セルグループの充電状態を検出し、必要に応じてセルグループの充電を行うことによって、セルグループの充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置である。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、各単電池の充電状態および電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離すことを特徴とする蓄電装置である。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、スイッチを制御してセルグループを選択し、この選択されたセルグループの充電または放電を行い、このセルグループの充電状態の均等化を行うことを特徴とする蓄電装置の充放電方法である。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、各単電池の充電状態および電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離し、残りの単電池によって電池機能の提供を継続することを特徴とする蓄電装置の運転方法である。
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電装置と、この蓄電装置で制御される電力で駆動される走行用電動機とを備えたことを特徴とする電動走行可能な車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による電池制御装置によって、直並列接続された二次電池セルまたは組電池の異常を確実に検出することが可能となり、複数の組電池を含む蓄電装置の安全性や信頼性を確保することができる。
また、各二次電池セルまたは各組電池の充電状態の均等化を効率的に行うことが可能となる。
さらに異常な二次電池セルまたは、複数の二次電池セルが直列に接続されたセルグループを蓄電装置から確実に切り離し、残りの健全な二次電池セルまたは組電池による縮退運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の組電池の接続異常を検出する回路全体の概略図である。
【図2】従来の組電池の接続異常を検出するための電圧検出回路の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による、組電池の接続異常を検出するセルモニターの回路全体の概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による、組電池の接続異常を検出するための電圧検出部の回路の概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による、組電池の接続異常を検出する方法のフローを示す概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による、組電池の接続異常を検出するセルモニターの回路全体の概略図である。(a)組電池のスイッチでの電圧のみを検出する場合であり、(b)はスイッチの接続経路である、バスバーと電圧検出線も含む部分での電圧を検出する場合である。
【図7】本発明の第3の実施形態による、組電池の接続異常を検出するセルモニターを組み込んだ電池制御装置の概略図である。
【図8】本発明第3の実施形態で用いている、複数の単電池を含むセルグループを制御するセルコントローラの概略図である。
【図9】本発明の第4の実施形態である、本発明の第3の実施形態による電池制御装置を組み込んだ蓄電装置を含む、電気自動車およびハイブリッド自動車に適用可能なモータの駆動装置全体の概略図である。
【図10】本発明の第5の実施形態である、本発明の第4の実施形態による蓄電装置を備えた、ハイブリッド自動車の構成全体の概略図である。
【図11】本発明の第1の実施形態によるセルモニターの変形実施例であり、セルグループに含まれる各単電池の充電状態の均等化を行う方法のフローの概略図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の変形実施例であり、リチウム電池以外の2次電池に適用するセルモニターの実施例である。
【図13】本発明の第1および第2の実施形態による電圧検出部の変形実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜13を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、ここでは二次電池セル(単電池)を複数個並列に接続したものを並列セルグループ、二次電池セルを複数個直列に接続したものを直列セルグループと呼称する。一般的にセルグループを複数個直並列に接続したものを電池モジュールと呼び、蓄電装置はこの電池モジュールを複数個備えることで大容量化を図っている。なお、単電池が複数個接続されている、セルグループ、電池モジュール等を総称して組電池と呼んでいる。
【0011】
<比較技術の説明>
まず、図1を参照して比較技術について説明する。
図1は、簡単な例として3つの単電池BC1〜BC3を並列に接続した並列セルグループで、これらの電池の接続異常を検出するセルモニター50の概略図である。単電池BC1〜BC3は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ウルトラキャパシタなどの蓄電素子からなる。3つの電池BC1〜のBC3の正極側はバスバー21、31で接続され、更にバスバー31は正極側の電圧検出線SLPでセルモニター50の電圧検出部51に接続されている。また、3つの電池BC1〜のBC3の負極側はバスバー22、32で接続され、更にバスバー32は負極側の電圧検出線SLNでセルモニター50の電圧検出部51に接続されている。
【0012】
電圧検出部51は、例えば図2に示すように、抵抗62とスイッチ63と電圧検出器64とで構成されている。スイッチ63は、例えばMOSFETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子またはメカニカルリレーなどのメカニカルスイッチ素子を用いて構成される。スイッチ63は不図示の外部のコントローラからON/OFF制御され、OFFの場合に並列セルグループの電圧が検出される。
【0013】
今、バスバー21、31、22、32のいずれかの接続が外れる異常が生じたケースを想定する。この場合、少なくとも電圧検出部51には電池BC3が接続され、常に正常な電圧が印加されているため、スイッチ63をON、OFFしても電圧検出器64には正常時と同様な電圧挙動が観測され、バスバー21、31、22、32のいずれかの接続異常を検出することができない。また、単電池BC1やBC2の異常を検出することは当然ながら不可能である。
【0014】
<第1の実施形態>
図3は本発明の第1の実施の形態を説明する概略図である。3つの単電池BC1、BC2、BC3にはそれぞれスイッチSW1、SW2、SW3が直列に接続されている。各々の単電池とスイッチは更に、バスバー21、31、22、32によって並列に接続されている。
【0015】
セルモニター50は、これら並列に接続された単電池BC1〜BC3の接続が異常かどうかを監視する電池監視装置であり、電圧検出部51と、スイッチSW1〜3を制御するスイッチ制御部52とを備える。バスバー31は正極側電圧検出線SLPを介して電圧検出部51に接続され、バスバー32は負極側電圧検出線SLNを介して電圧検出部51に接続されている。
【0016】
スイッチSW1、SW2、SW3には、MOSFETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子またはメカニカルリレーなどのメカニカルスイッチ素子が用いられる。単電池BC1、BC2、BC3として充放電可能な二次電池セルを用いる場合は、充放電によりスイッチSW1、SW2、SW3には双方向の電流が流れるため、これらのスイッチには上記のスイッチ素子を用いて、双方向電流に対応可能に構成されている。なお、Cvはノイズ対策用のコンデンサである。
【0017】
セルモニター50はスイッチ制御部52と電圧検出部51とを有する。また、図3には示していないが、セルモニター50は上位の制御装置から指示を受け、スイッチ制御部52および電圧検出部51を制御している。
【0018】
図4に本発明による電圧検出部51の回路の概略を示す。本発明による電圧検出部は図2に示す比較例の電圧検出部と比べ、2つの抵抗61A、61Bが追加され、更に電圧検出器64が、抵抗62とスイッチ63が直列に接続された回路に並列に接続されている。なお、図4は、図3で示すように、スイッチSW3をONし、スイッチSW1、SW2をOFFした場合に相当しており、これらのスイッチを省略したものである。
スイッチ63はMOSFETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子やメカニカルリレーなどのメカニカルスイッチ素子からなる。
【0019】
<経路異常検出の原理>
ここで図4に示す本発明の電圧検出部51を用いて、二次電池セルの配線経路の異常を検出する原理を説明する。
【0020】
図4においてスイッチ63をOFFにすると、電圧検出器64によって測定される電圧Vは単電池BC3の端子電圧VBC3そのものとなる。
スイッチ63をONにすると、電圧検出線SLP、抵抗61A、62、スイッチ63および抵抗61B、電圧検出線SLNを介して単電池BC3とで閉ループを形成する。このとき、電圧検出部51では、電圧検出線SLP、抵抗61Aおよび抵抗61B、電圧検出線SLNでの電圧ドロップを電池BC3の電圧から引いた電圧が検出される。
すなわち、単電池BC3の内部抵抗値をrBC3とし、接続点CBPでの接続抵抗と接続点CMPでの接続抵抗とを含む電圧検出線SLPの抵抗をrSLP、接続点CBNでの接続抵抗と接続点CMNでの接続抵抗とを含む電圧検出線SLNの抵抗値をrSLNとし、抵抗61A、61B、62の抵抗値をそれぞれ、これらの接続点までの配線抵抗を含めてr61A、r61B、r62とし、スイッチ63の抵抗値をこの接続点までの配線抵抗を含めてr63とすると、上記の閉ループを構成する素子がしっかり接続されていれば、電圧検出器64では以下の式(1)で示される電圧Vが検出される。
V=VBC3×(r62+r63)/(rBC3+rSLP+rSLN+r61A+r61B+r62+r63)
... (1)
なお、抵抗61A、61B、62、とスイッチ63の経路状の接続点CVP、CSR、CVNでの接続抵抗は電圧検出器51内部の配線での抵抗であり、それぞれ抵抗値r61A、r61B、r62およびr63に適宜繰り込んでおくことでよく、これらの抵抗値はここでの説明に本質的な影響を与えない。
【0021】
ここで、バスバー31、32、電圧検出線SLP、抵抗61Aおよび抵抗61B、電圧検出線SLNのどれかで接続が不十分である場合は、そこでの抵抗(または接触抵抗)が大きくなるために、スイッチ63をONにすると、上記の式(1)の右側の割り算分母が大きくなるため、電圧検出器64では上記の電圧Vよりも小さい値が検出される。更に上記の閉ループのどこかで、接続が外れている場合、もしくは断線が起こっている場合は単電池BC3の端子電圧VBC3が印加されないため、電圧検出器64で検出される電圧は0Vとなる。このように、スイッチ63をON、OFFしたときの電圧検出器64による電圧検出値により、上記の閉ループ回路の接続異常を診断することができる。
【0022】
<並列セルグループの経路異常の検出>
ここで上記で説明した、配線経路の異常を検出する原理を用いて、並列セルグループの経路異常の診断方法について説明する。
【0023】
図3ではスイッチSW3がON、それ以外はOFFとなっている。このため、バスバー21、31、22、32および電圧検出線SLP、SLNのいずれかが外れると、単電池BC1からの電圧印加が途絶えるため、電圧検出部51ではその異常を正しく検出することが可能となる。
【0024】
図5は診断フローの例を示す図である。この診断フローはセルモニター50の図示しない上位CPUに実装したプログラムに従って実行される。先ず、ステップS001にてスイッチSW3をON、SW1、SW2をOFFし、単電池BC3、電圧検出線SLP、SLN、電圧検出部51の経路を構成する。次に、ステップS002で電圧検出部51にて単電池BC3の電圧VBC3のみが印加された時の電圧V3を測定する。
【0025】
ステップS003ではV3の値が単電池BC3の正常電圧範囲かを判定する。V3が正常範囲ではない場合は、ステップS013に移行し、そこで電圧検出線114Aまたは114Bの接続異常と判定し、フローを終了する。V3が正常範囲内の場合はステップS004へ移行し、電圧検出線SLPまたはSLNは正常と判断する。
【0026】
ステップS005ではスイッチSW2をON、SW3、SW1をOFFし、単電池BC2、バスバー31、32、電圧検出線SLP、SLN、電圧検出部51の経路を構成する。そして、ステップS006で電圧検出部にて単電池BC2の電圧VBC2のみが印加されたときの電圧V2を測定する。
【0027】
ステップS007ではV2の値が電池111Bの正常電圧範囲かを判定する。V2が正常範囲ではない場合は、ステップS014に移行し、そこでバスバー31または32の接続異常と判定し、フローを終了する。V2が正常範囲内の場合はステップS008にてバスバー31または32は正常と判断する。
【0028】
ステップS009ではスイッチSW1をON、SW2、SW3をOFFし、単電池BC1、バスバー21、22、31、32、電圧検出線SLP、SLN、電圧検出部51経路を構成する。そして、ステップS010で電圧検出部51にて単電池BC1電圧VBC1のみを印加した時の電圧V1を測定する。
【0029】
ステップS011ではV1の値が単電池BC1の正常電圧範囲かを判定する。V1が正常範囲ではない場合は、ステップS015に移行し、そこでバスバー21または22の接続異常と判定し、フローを終了する。V1が正常範囲内の場合はステップS012にてバスバー21または22は正常と判断されフローを終了する。
【0030】
このようにして、本発明の実施形態によれば、スイッチSW1、SW2、SW3を用いて、診断対象としている単電池、バスバー及び電圧検出線のどこで異常が起こっているかが特定され、これらの異常を確実に検出することが可能となる。
【0031】
検出された異常は上位の制御装置に信号伝達され、適切な安全対策が行われるとともに、上記のようなセルグループを搭載した電気自動車等の運転者に対しても適宜必要な情報を提示することで、この電気自動車の安全と信頼性を確保することが可能となる。
【0032】
電気自動車等で用いられる蓄電装置では、図3のような並列セルグループや、あるいは後述のように直列セルグループが複数個直並列に接続されている。これらの二次電池セル(単電池)またはセルグループの異常を検出した場合、セルモニター50は異常な単電池に接続されたスイッチを制御して、縮退運転を行うことが可能となる。異常な単電池または、この異常な単電池を含む並列セルグループあるいは直列セルグループを切り離し、残りの健全な単電池または、並列セルグループあるいは直列セルグループにより電池機能の提供を継続する。これにより、電池システムの機能を停止することなく、縮退しながらも電気自動車の動作を続けることが可能となる。
【0033】
なお、上記の本発明による診断は蓄電システムの始動(車両のキーオン)時、または終了(車両のキーオフ)後に行うと良い。また、スイッチSW1、SW2、SW3をOFFすることは当該単電池の電力の授受を遮断することになるが、電気自動車で必要とする電力が満足できる範囲であれば稼動時も診断を行うことが出来る。
【0034】
<第2の実施形態>
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態を説明する図である。図3に比べ、単電池BC1〜3がそれぞれ、スイッチSW1〜3と直列に接続され、更に直列に接続された単電池とスイッチの各々の組が並列に、スイッチ診断部65にスイッチ選択部60を介して接続されている。
【0035】
スイッチ選択部60は、マルチプレクサなどからなり、単電池BC1、BC2、BC3と、スイッチSW1、SW2、SW3とのそれぞれの接続点を一つ選択し、スイッチ診断部65とを接続する。
なお、図6(a)では、スイッチ選択部60から各単電池のスイッチの下側(単電池側)に接続されており、これらのスイッチの上側(バスバー側)に共通の接続線がスイッチ診断部65から接続されているが、これらのスイッチの上下の接続線を入れ替えてもよい。
【0036】
スイッチ診断部65は、前述の電圧検出部51と同様の回路を有し、スイッチSW1、SW2、SW3からスイッチ選択部60で選択されたスイッチの端子間電圧を測定し、それらの導通状態を診断する。
スイッチSW1、SW2、SW3の導通状態を診断することにより、スイッチSW1、SW2、SW3により、診断対象の単電池、バスバー及び電圧検出線が確実に選択されていることが確認される。このため、これらの異常を確実に検出することが可能で安全性や信頼性を確保することが可能となる。
【0037】
すなわち、上記のように、選択された単電池の接続経路全体の異常を検出する電圧検出部51と、これに加えて、選択された単電池のスイッチの導通状態を検出する、電圧検出部51と同等の機能を持つスイッチ診断部65を備えることによって、診断対象の単電池が確実に選択されていることを確認することができ、この単電池の接続経路の異常を確実に検出することができる。
【0038】
なお、本発明の第1の実施形態で説明したように、スイッチ以外のバスバーや電圧検出線SLPの接続も同時に確認する場合は、図6(b)のように接続しても良い。
【0039】
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施の形態を説明する図である。図6に比べ、4個の単電池BC11〜14とスイッチSW1が直列に接続され、4個の単電池BC21〜24とスイッチSW2が直列に接続され、4個の単電池BC31〜34とスイッチSW3が直列に接続され、それぞれ直列セルグループ20A1、20A2、20A3を構成している。これら3つの直列セルグループは並列に接続され、電池モジュールブロック20Aを構成している。3つの直列セルグループ20A1、20A2、20A3は、それぞれ、これらのセルグループに含まれる単電池の状態を監視し、必要に応じて充放電等を行う、セルコントローラIC1、IC2、IC3によって制御されている。この構成は、各電池の状態を個別に監視する必要のある、リチウムイオン電池など有機溶媒系電解液を有した二次電池に好適である。
なお、図7では図4、図6に記載したノイズ対策用のコンデンサは省略してある。
【0040】
実際の電気自動車用蓄電装置では、このような直並列に接続された複数の単電池からなる電池モジュールブロックを、更に複数直並列に接続して使用している。図7に示すセルモニター50Aは、上記の本発明の第1の実施形態で説明した、セルモニター50と同様の構成と機能を持ち、図7に示す第3の実施形態では電池モジュールブロック20Aの接続異常の検出を行う。
なお、これ以降、特に誤解のない限り、直列セルグループにスイッチを直列接続したものも、直列セルグループと呼ぶ。
【0041】
各セルグループを制御するセルコントローラIC1〜3は、各々通信系602と1ビット通信系604とを備えている。後述するようにこれら通信系を介して、セルコントローラIC1〜3は上位制御装置(マイコン30と呼ぶ)と通信を行い、電池モジュールブロックの各二次電池セルの充電状態の制御と診断を行う。1ビット通信系604は、図7に示さないが、電池モジュールブロック20Aに直列接続された、もう1つの電池モジュールブロックに更に接続されている。
【0042】
ここで図8を参照して、セルコントローラICの構成ならびに、各単電池の充電状態の制御の方法について説明する。
【0043】
<セルコントローラICの構成>
図8は電池制御用ICである、セルコントローラICの内部ブロックの概略を示す図であり、セルグループ20A1の4つの電池セルBC11〜BC14が接続されるセルコントローラIC1を例に示した。なお、説明は省略するが、他のICに関しても同様の構成となっている。また上述したように、各セルグループに含まれる電池セルは4個に限定されず、6個あるいはこれ以上であってもよい。セルコントローラICはセルグループに含まれる電池セルの個数に対応できるように設計されている。例えば、セルコントローラICでは6個の電池セルに対応できるように既に6個のバランシングスイッチを備えているが、セルグループに含まれる電池セルの個数が4個の場合は、6個のバランシングスイッチの内4個のみ使用する。
【0044】
セルコントローラIC1には、電池状態検出回路としてのマルチプレクサ120やアナログデジタル変換器122A、IC制御回路123、診断回路130、伝送入力回路138、142、伝送出力回路140、143、起動回路254、タイマ回路150、制御信号検出回路160、差動増幅器262およびOR回路288が設けられている。
【0045】
電池セルBC11〜BC14の端子電圧は、電圧検出線SL1〜SL5、電圧入力端子CV1〜CV4およびGND端子を介してマルチプレクサ120に入力される。マルチプレクサ120は電圧入力端子CV1〜CV4およびGND端子のいずれかを選択して、端子間電圧を差動増幅器262に入力する。差動増幅器262の出力は、アナログデジタル変換器122Aによりデジタル値に変換される。デジタル値に変換された端子間電圧はIC制御回路123に送られ、内部のデータ保持回路125に保持される。電圧入力端子CV1〜CV4,GND端子に入力される各電池セルBC1〜BC4の端子電圧は、セルコントローラIC1のGND電位に対して、直列接続された電池セルの端子電圧に基づく電位でバイアスされている。上記差動増幅器262により上記バイアス電位の影響が除去され、各電池セルBC1〜BC4の端子電圧に基づくアナログ値がアナログデジタル変換器122Aに入力される。
【0046】
IC制御回路123は、演算機能を有すると共に、データ保持回路125と、電圧測定や状態診断を周期的に行うタイミング制御回路126と、診断回路130からの診断フラグがセットされる診断フラグ保持回路128とを有している。IC制御回路123は、伝送入力回路138から入力された通信コマンドの内容を解読し、その内容に応じた処理を行う。コマンドとしては、例えば、各電池セルの端子間電圧の計測値を要求するコマンド、各電池セルの充電状態を調整するための放電動作を要求するコマンド、当該セルコンロトーラICの動作を開始するコマンド(Wake UP)、動作を停止するコマンド(スリープ)、アドレス設定を要求するコマンド、等を含んでいる。
【0047】
診断回路130は、IC制御回路123からの計測値に基づいて、各種診断、例えば過充電診断や過放電診断を行う。データ保持回路125は、例えばレジスタ回路で構成されており、検出した各電池セルBC11〜BC14の各端子間電圧を各電池セルBC11〜BC14に対応づけて記憶し、また、その他の検出値を、予め定められたアドレスに読出し可能に保持する。
【0048】
セルコントローラIC1の内部回路には、少なくとも2種類の電源電圧VCC,VDDが使用される。図8に示す例では、電圧VCCは並列接続された電池セルグループ20A1、20A2、20A3で構成される電池モジュールブロックの電圧であり、電圧VDDは定電圧電源134によって生成される。マルチプレクサ120および信号伝送のための伝送入力回路138,142は高電圧VCCで動作する。また、アナログデジタル変換器122A、IC制御回路123、診断回路130、信号伝送のための伝送出力回路140,143は低電圧VDDで動作する。
【0049】
セルコントローラIC1の受信端子LIN1で受信した信号は伝送入力回路138に入力され、受信端子FFIで受信した信号は伝送入力回路142に入力される。伝送入力回路142は、伝送入力回路138と同様の回路構成となっている。伝送入力回路138は、隣接する他のセルコントローラICからの信号を受信する回路231とフォトカプラPHからの信号を受信する回路234とを備えている。
【0050】
図8に示すように、最上位のセルコントローラIC1の場合には、フォトカプラPHからの信号が受信端子LIN1に入力され、セルコントローラIC2の場合には、隣接するIC1からの信号が受信端子LIN1に入力される。そのため、回路231および234のどちらを使用するかは、図8の制御端子CTに印加される制御信号に基づき、切換器233により選択される。制御端子CTに印加された制御信号は、制御信号検出回路160に入力され、切換器233は制御信号検出回路160からの指令により切り替え動作を行う。
【0051】
すなわち、セルコントローラICの中の伝送方向最上位のセルコントローラIC、すなわち、セルコントローラIC1の受信端子LIN1に上位コントローラ(マイコン30)からの信号が入力される場合には、切換器233は下側接点が閉じ、回路234の出力信号が伝送入力回路138から出力される。一方、伝送方向最上位ではない、下位のセルコントローラICの受信端子LIN1に隣接セルコントローラICからの信号が入力される場合には、切換器233は上側接点が閉じ、回路232の出力信号が伝送入力回路138から出力される。セルコントローラIC2の場合、伝送入力回路138には隣接IC1からの信号が入力されるので、切換器233は上側接点が閉じる。上位コントローラ(マイコン30)からの出力と隣接セルコントローラICの送信端子LIN2からの出力とでは出力波形の波高値が異なるため、判定する閾値が異なる。そのため、制御端子TCの制御信号に基づいて、回路138の切換器233を切り換えるようにしている。なお、通信系604についても同様の構成となっている。
【0052】
受信端子LIN1で受信された通信コマンドは、伝送入力回路138を通ってIC制御回路123に入力される。IC制御回路123は、受信した通信コマンドに応じたデータやコマンドを伝送出力回路140へ出力する。それらのデータやコマンドは、伝送出力回路140を介して送信端子LIN2から送信される。なお、伝送出力回路143も、伝送出力回路140と同様の構成である。
【0053】
端子FFIから受信した信号は、異常状態(過充電信号)を伝送するために使用される。端子FFIから異常を表す信号を受信すると、その信号は伝送入力回路142およびOR回路288を介して伝送出力回路143に入力され、伝送出力回路143から端子FFOを介して出力される。また診断回路130で異常を検知すると、端子FFIの受信内容に関係なく、診断フラグ保持回路128からOR回路288を介して伝送出力回路143に異常を表す信号が入力され、伝送出力回路143から端子FFOを介して出力される。
【0054】
隣接セルコントローラICまたはフォトカプラPHから伝送されてきた信号を起動回路147により受信すると、タイマ回路150が動作し、定電圧電源134に電圧VCCを供給する。この動作により定電圧電源134は動作状態となり、定電圧VDDを出力する。定電圧電源134から定電圧VDDが出力されるとセルコントローラIC2はスリープ状態から立ち上がり動作状態となる。
【0055】
セルコントローラIC1の電圧入力端子CV1〜CV4は電池セルのセル電圧を計測するための端子である。電圧入力端子CV1〜CV4には、それぞれ電圧検出線SL1〜SL4が接続されており、各々の電圧検出線には端子保護及び容量調整の放電電流制限のための抵抗RCVがそれぞれ設けられている。各電圧検出線SL1〜SL4は電圧入力端子CV1〜CV4と各電池セルBCの正極または負極を接続している。なお、電圧検出線SL5は電池セルBC4の負極からGND端子に接続されている。例えば、電池セルBC11のセル電圧を計測する場合には、電圧入力端子CV1−CV2間の電圧を計測する。また、電池セルBC14のセル電圧を計測する場合には、電圧入力端子CV4−GND端子間の電圧を計測する。電圧検出線間には、コンデンサCv、Cinが、ノイズ対策として設けられている。また後述するように、これらの電圧検出線の電池セル側の部分とセルコントローラIC側の部分は、電池モジュールと電池制御装置を接続するコネクタで接続されている。
【0056】
図7の電池モジュール20Aの性能を最大限に活用するためには、全部で12個の電池セルのセル電圧を均等化する必要がある。例えば、セル電圧のばらつきが大きい場合、回生充電時に最も高い電池セルが上限電圧に達した時点で回生動作を停止する必要がある。この場合、その他の電池セルのセル電圧は上限に達していないにもかかわらず、回生動作を停止して、ブレーキとしてエネルギーを消費することになる。このようなことを防止するために、各セルコントローラICは、マイコン30からのコマンドで電池セルの容量調整のための放電を行う。
【0057】
図8に示すように、各セルコントローラICは、CV1−BR1、BR2−CV3、CV3−BR3およびBR4−GNDの各端子間にセル容量調整用のバランシングスイッチBS1〜BS4を備えている。例えば、電池セルBC1の放電を行う場合には、バランシングスイッチBS1をオンする。そうすると、電池セルCV1の正極→抵抗RCV→CV1端子→バランシングスイッチBS1→BR1端子→抵抗RB→電池セルCV1の負極の経路でバランシング電流が流れる。なお、RBまたはRBBはこのバランシング用の抵抗であり、BR1〜BR4はこのバランシングを行うための端子である。
【0058】
このように、セルコントローラIC内には、電池セルBC11〜BC14の充電量を調整するためのバランシングスイッチBS1〜BS4が設けられている。実際のセルコントローラICでは、バランシングスイッチBS1,BS3にはPMOSスイッチが用いられ、バランシングスイッチBS2,BS4にはNMOSスイッチが用いられている。
【0059】
これらのバランシングスイッチBS1〜BS4の開閉は、放電制御回路132によって制御される。マイコン30からの指令に基づいて、放電させるべき電池セルに対応したバランシングスイッチを導通させるための指令信号が、IC制御回路123から放電制御回路132に送られる。IC制御回路123は、マイコン30から各電池セルBC1〜BC4に対応した放電時間の指令を通信により受け、上記放電の動作を実行する。
【0060】
セルコントローラIC1とセルコントローラIC2の間には、上述したように通信系602,604が設けられている。マイコン30からの通信コマンドは、フォトカプラPHを介して通信系602に入力され、通信系602を介してセルコントローラIC1の受信端子LIN1で受信される。セルコントローラIC1の送信端子LIN2からは、通信コマンドに応じたデータやコマンドが送信される。このようにセルコントローラIC間で順に受信および送信を行い、伝送信号は、セルコントローラIC2の送信端子LIN2から送信され、フォトカプラPHを介してマイコン30の受信端子で受信される。セルコントローラIC1とIC2は、受信した通信コマンドに応じて、セル電圧等の測定データのマイコン30への送信や、バランシング動作を行う。さらに、各セルコントローラIC1とIC2は、測定したセル電圧に基づいてセル過充電を検知する。その検知結果(異常信号)は、信号系604を介してマイコン30へ送信される。
【0061】
この第3の実施形態では、上記のように各単電池はそれぞれ対応するセルコントローラIC1、IC2、IC3によって常に監視されており、各単電池の充電状態が均等化されている。また各単電池の充電状態の情報をセルコントローラが上位制御装置(マイコン30)に送信することにより、必要に応じて、第1の実施形態および第2の実施形態で説明した接続経路の診断が行われる。直列セルグループ、バスバー及び電圧検出線が確実に選択されていることが確認され、またこれらの診断を確実に行うことができるため、蓄電装置の安全性や信頼性を確保することが可能となる。
【0062】
<第4の実施形態>
図9は、本発明の電池制御装置および蓄電装置の第4の実施の形態を説明するとともに、この第4の実施形態を用いた電気自動車およびハイブリッド自動車に適用可能なモータの駆動装置全体の概略図である。図7に示した電池モジュールブロックが2つ(20Aおよび20B)直列に接続されている。
【0063】
図9に示す駆動装置は、電池モジュール20、電池モジュール20を監視する電池制御装置100、この電池制御装置100と電池モジュール20を含む蓄電装置11、電池モジュール20からの直流電力を3相交流電力に変換するインバータ装置9、車両駆動用の電動発電機7を備えている。モータ230は、インバータ装置9からの3相交流電力により駆動される。インバータ装置9と電池制御装置100とはCAN通信で結ばれており、インバータ装置9は電池制御装置100に対して上位コントローラとして機能する。また、インバータ装置9は、さらに上位の制御装置10(後述)からの指令情報に基づいて動作する。
【0064】
インバータ装置9は、パワーモジュール226と、インバータ装置を制御するMCU222と、パワーモジュール226を駆動するためのドライバ回路224とを有している。パワーモジュール226は、電池モジュール20から供給される直流電力を、電動発電機7をモータとして駆動するための3相交流電力に変換する。なお、図示していないが、パワーモジュール226に接続される強電ラインHV+,HV−間には、約700μF〜約2000μF程度の大容量の平滑キャパシタが設けられている。この平滑キャパシタは、電池制御装置100に設けられた集積回路に加わる電圧ノイズを低減する働きをする。
【0065】
インバータ装置9の動作開始状態では平滑キャパシタの電荷は略ゼロであり、リレーRLを閉じると大きな初期電流が平滑キャパシタへ流れ込む。そして、この大電流のためにリレーRLが融着して破損するおそれがある。この問題を解決するために、MCU222は、さらに上位の制御装置10からの命令に従い、電動発電機7の駆動開始時に、プリチャージリレーRLPを開状態から閉状態にして平滑キャパシタを充電し、その後にリレーRLを開状態から閉状態として、電池モジュール20からインバータ装置9への電力の供給を開始する。平滑キャパシタを充電する際には、抵抗RPを介して最大電流を制限しながら充電を行う。このような動作を行うことで、リレー回路を保護すると共に、電池セルやインバータ装置9を流れる最大電流を所定値以下に低減でき、高い安全性を維持できる。
【0066】
なお、インバータ装置9は、電動発電機7の回転子に対するパワーモジュール226により発生する交流電力の位相を制御して、車両制動時には電動発電機7を発電機として動作させる。すなわち回生制動制御を行い、発電機運転により発電された電力を電池モジュール20に回生して電池モジュール20を充電する。電池モジュール20の充電状態が基準状態より低下した場合には、インバータ装置9は電動発電機7を発電機として運転する。電動発電機7で発電された3相交流電力は、パワーモジュール226により直流電力に変換されて電池モジュール20に供給される。その結果、電池モジュール部20は充電される。
【0067】
一方、電動発電機7をモータとして力行運転する場合、MCU222は制御装置10の命令に従い、電動発電機7の回転子の回転に対して進み方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は、電池モジュール20から直流電力がパワーモジュール226に供給される。また、回生制動制御により電池モジュール20を充電する場合には、MCU222は、電動発電機7の回転子の回転に対して遅れ方向の回転磁界を発生するようにドライバ回路224を制御し、パワーモジュール226のスイッチング動作を制御する。この場合は電動発電機7から電力がパワーモジュール226に供給され、パワーモジュール226の直流電力が電池モジュール20へ供給される。結果的に電動発電機7は発電機として作用することとなる。
【0068】
インバータ装置9のパワーモジュール226は、導通および遮断動作を高速で行い直流電力と交流電力間の電力変換を行う。このとき、大電流を高速で遮断するので、直流回路の有するインダクタンスにより大きな電圧変動が発生する。この電圧変動を抑制するため、上述した大容量の平滑キャパシタが設けられている。
【0069】
電池モジュール20は、例えばここでは直列接続された2つの電池モジュールブロック20A、20Bで構成されている。各電池モジュールブロック20A、20Bは、各々複数の電池セルを直列接続したセルグループを複数直列に接続されたものを備えている。電池モジュールブロック20Aと電池モジュールブロック20Bとは、スイッチとヒューズとが直列接続された保守・点検用のサービスディスコネクトSD−SWを介して直列接続される。このサービスディスコネクトSD−SWが開くことで電気回路の直接回路が遮断され、仮に電池モジュールブロック20A、20Bのどこかで車両との間に1箇所接続回路ができたとしても電流が流れることはない。このような構成により高い安全性を維持できる。又、点検時に作業者がHV+とHV−の間を触っても、高電圧は人体に印加されないので安全である。
【0070】
電池モジュール20とインバータ装置9との間の強電ラインHV+には、リレーRL,抵抗RPおよびプリチャージリレーRLPを備えた電池ディスコネクトユニットBDUが設けられている。抵抗RPとプリチャージリレーRLPとの直列回路は、リレーRLと並列に接続されている。
【0071】
電池制御装置100は、主に各セル電圧の測定、総電圧の測定、電流の測定、セル温度およびセルの容量調整等を行う。そのために、セルコントローラとして、複数の電池制御用IC(集積回路)が設けられている。各電池モジュールブロック20A、20B内に設けられた複数の電池セルは、複数のセルグループ(組電池)に分けられ、各セルグループ毎に、各セルグループに含まれる電池セルを制御するセルコントローラが1つずつ設けられている。
簡単のため、以下の説明では各セルグループは4個の電池セルで構成されているとする。また各電池モジュールブロック20A、20B、は各々2つのセルグループ(20A1、20A2、20A3と20B1、20B2、20B3)で構成されるとする。
【0072】
図8も参照して説明すると、各セルグループを制御するセルコントローラIC1〜IC6は、各々通信系602と1ビット通信系604とを備えている。セル電圧値読み取りや各種コマンド送信のための通信系602においては、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)PHを介してデイジーチェーン方式で電池モジュール20を制御するマイコン30とシリアル通信を行う。1ビット通信系604は、セル過充電が検知されたときの異常信号を送信する。図9に示す例では、通信系602は、電池モジュールブロック20AのセルコントローラIC1、IC2、IC3に対する上位の通信経路と、電池モジュールブロック20BのセルコントローラIC4、IC5、IC6に対する下位の通信経路とに分けられている。
【0073】
各セルコントローラICは異常診断を行い、自分自身が異常と判断した場合、あるいは上位のセルコントローラICから異常信号を受信端子FFIで受信した場合に、送信端子FFOから異常信号を送信する。一方、既に受信端子FFIで受信していた異常信号が消えたり、あるいは自分自身の異常判断が正常判断となったりした場合には、送信端子FFOから伝送される異常信号は消える。この異常信号は本実施形態では1ビット信号である。
【0074】
マイコン30は異常信号をセルコントローラICに送信しないが、異常信号の伝送路である1ビット通信系604が正しく動作することを診断するために、擬似異常信号であるテスト信号を1ビット通信系604に送出する。このテスト信号を受信したセルコントローラIC1は異常信号を通信系604へ送出し、その異常信号がセルコントローラIC2によって受信される。異常信号はセルコントローラIC2からセルコントローラIC3、IC4、IC5、IC6の順に送信され、最終的にはセルコントローラIC6からマイコン30へと返信される。通信系604が正常に動作していれば、マイコン30から送信された擬似異常信号は通信系604を介してマイコン30に戻ってくる。このように擬似異常信号をマイコン30が送受することで通信系604の診断ができ、システムの信頼性が向上する。
【0075】
電池ディスコネクトユニットBDU内にはホール素子等の電流センサSiが設置されており、電流センサSiの出力はマイコン30に入力される。電池モジュール20の総電圧および温度に関する信号もマイコン30に入力され、それぞれマイコン30のAD変換器(ADC)によって測定される。温度センサは電池モジュールブロック20A、20B内の複数箇所に設けられている。
【0076】
この様に、本発明によれば、複数のセルコントローラICを直列または並列または直並列に接続し、これらの複数のセルコントローラICと上位制御装置とを通信で接続することが可能である。これにより、さらに大規模で高い安全性を有し、かつ高信頼性を有する蓄電装置を容易に構築することが可能となる。また、電池または電池の直列セルグループの異常を検出した場合、セルモニター50は異常電池または異常な直列セルグループと接続されたスイッチを制御し、異常電池または異常な直列セルグループを切り離し、残りの健全な各電池または各直列セルグループ電池機能を提供することが可能である。これにより、充放電といった電池システムの機能を停止することなく縮退しながらもその機能を提供し続けることが可能となる。
【0077】
<第5の実施形態>
図10は、本発明の第5の実施の形態を説明する図である。本発明の蓄電装置をハイブリッド自動車に適用した例である。なお、この第5の実施形態を含め、本発明の実施形態の構成は、ハイブリッド電車などの鉄道車両などにも適用できる。また本発明による電池制御装置および蓄電装置は電気自動車にも適用可能である。
【0078】
<ハイブリッド自動車用駆動システムの概略構成>
図10に示すハイブリッド自動車1の駆動システムは、駆動輪2に機械的に接続された車軸3がデファレンシャルギア4と接続され、デファレンシャルギア4の入力軸が変速機5と接続されている。そして、駆動源として、内燃機関であるエンジン6と電動発電機7の駆動力を切替える駆動力切替装置8を介して変速機5の入力となっている。
【0079】
図10では駆動輪2の駆動源として、エンジン6と電動発電機7とが並列に配置された、いわゆるパラレルハイブリッド方式である。また、ハイブリッド自動車用駆動システムには、駆動輪2の駆動源として電動発電機7のエネルギーを用い、エンジン6のエネルギーは電動発電機7の駆動源、すなわち蓄電器を充電するようにした、いわゆるシリアルハイブリッド方式があり、本発明はこれらの方式、又は組合せた方式共に採用することができる。
【0080】
電動発電機7にはインバータ装置9を介して、電源装置である蓄電装置11が電気的に接続されている。インバータ装置9は制御装置10によって制御される。
【0081】
電動発電機7を電動機として作動させる時には、インバータ装置9は、蓄電装置11から出力された直流電力を三相交流電力に変換する直流−交流変換回路として機能する。また、回生制動の際に電動発電機7を発電機として作動させる時には、インバータ装置9は、電動発電機7から出力された三相交流電力を直流電力に変換する交流−直流変換回路として機能する。インバータ装置9の直流側には、蓄電装置11の電池モジュールの正負極端子が電気的に接続される。インバータ装置9の交流側には2つのスイッチング半導体素子による3直列回路があり、直列回路の2つのスイッチング半導体素子の中間には、電動発電機4の電機子巻線の3つの相の巻線が電気的に接続されるようになっている。
【0082】
電動発電機7は、駆動輪5を駆動するための原動機として機能し、電機子(固定子)と、電機子に対向配置され、回転可能に保持された界磁(回転子)とを備え、永久磁石の磁束を界磁に用いた永久磁石界磁式三相交流同期回転電機である。電動発電機7は、電機子巻線に供給された三相交流電力により形成されて同期速度で回転する回転磁界と、永久磁石の磁束との磁気的な作用に基づいて、駆動輪5の駆動に必要な回転動力を発生する
【0083】
電動発電機7を電動機として駆動する時には、電機子は、インバータ装置9によって制御された三相交流電力の供給を受けて回転磁界を発生させる。一方、電動発電機9を発電機として駆動する時には、電機子は、磁束の鎖交により三相交流電力を発生させる部位となり、磁性体である電機子鉄心(固定子鉄心)と、電機子鉄心に装着された三相の電機子巻線(固定子巻線)とを備えている。界磁は、電動発電機7を電動機或いは発電機として駆動する時、界磁磁束を発生させる部位であり、磁性体である界磁鉄心(回転子鉄心)と、界磁鉄心に装着された永久磁石とを備えている。
【0084】
電動発電機7としては、電機子巻線に供給された三相交流電力により形成されて同期速度で回転する回転磁界と、巻線の励磁による磁束との磁気的な作用に基づいて、回転動力を発生する巻線界磁式三相交流同期回転電機、或いは三相交流誘導回転電機などを採用してもよい。巻線界磁式三相交流同期回転電機の場合、電機子の構成は永久磁石界磁式三相交流同期回転電機と基本的に同じである。一方、界磁の構成は異なっており、磁性体である界磁鉄心に界磁巻線(回転子巻線)を巻く構成になっている。尚、巻線界磁式三相交流同期回転電機では、界磁巻線が巻かれた界磁鉄心に永久磁石を装着し、巻線による磁束の漏れを抑える場合もある。界磁巻線は外部電源から界磁電流の供給を受けて励磁されることにより磁束を発生する。
【0085】
電動発電機7には駆動力切替装置8、変速機5、デファレンシャルギア4を介して駆動輪2の車軸3が機械的に接続されている。変速機5は、電動発電機7から出力された回転動力を変速してデファレンシャルギア4に伝達する。デファレンシャルギア4は、変速機5から出力された回転動力を左右の車軸3に伝達する。駆動力切替装置8は、エンジン制御や走行制御などの上位制御装置(不図示)によって切替えられ、エンジン制御での加速走行、アイドルストップからの電動発電機7によるエンジン始動、ブレーキ制御における回生ブレーキ協調などで切替えて電動機又は発電機として動作させる。
【0086】
蓄電装置11は、電動発電機7が回生時に発生した電力を自身の駆動用電力として充電し、電動発電機7を発電機として駆動する際に、この駆動に必要な電力を放電する駆動用車載電源である。例えば、100V以上の定格電圧を有するように、数十本のリチウムイオン電池により構成されたバッテリシステムである。尚、蓄電装置11の詳細な構成については後述する。
【0087】
蓄電装置11には、電動発電機7の他に、車載補機(たとえばパワーステアリング装置,エアーブレーキ)に動力を供給する電動アクチュエータ、蓄電装置11よりも定格電圧が低く、車内電装品(たとえばライト,オーディオ、車載電子制御装置)に駆動電力を供給する電装用電源である低圧バッテリなどがDC/DCコンバータを介して電気的に接続されている。DC/DCコンバータは、蓄電装置11の出力電圧を降圧して電動アクチュエータや低圧バッテリなどに供給したり、低圧バッテリの出力電圧を昇圧して蓄電装置11などに供給したりする昇降圧装置である。低圧バッテリには定格電圧12Vの鉛バッテリを用いている。低圧バッテリとしては、同じ定格電圧を有するリチウムイオンバッテリ或いはニッケル水素バッテリを用いてもよい。
【0088】
ハイブリッド自動車1の力行時(発進、加速、通常走行など)、制御装置10に正のトルク指令が与えられてインバータ装置9の作動が制御されると、蓄電装置11に蓄電された直流電力はインバータ装置9により三相交流電力に変換されて電動発電機7に供給される。これにより、電動発電機7が駆動されて回転動力が発生する。発生した回転動力は、駆動力切替装置8、変速機5及びデファレンシャルギア4を介して車軸3に伝達され、駆動輪2を駆動する。
【0089】
ハイブリッド自動車1の回生時(減速、制動など)、制御装置10に負のトルク指令が与えられてインバータ装置9の作動が制御されると、駆動輪2の回転動力により駆動される電動発電機7から発生した三相交流電力は直流電力に変換されて蓄電装置11に供給される。これにより、変換された直流電力は蓄電装置11に充電される。
【0090】
制御装置10は、上位制御装置(不図示)から出力されたトルク指令値から電流指令値を演算すると共に、電流指令値と、インバータ装置9の間を流れる実電流との差分に基づいて電圧指令値を演算し、この演算された電圧指令値に基づいてPWM(パルス幅変調)信号を発生させ、そのPWM信号をインバータ装置9に出力する。
【0091】
<第1の実施形態の変形実施例>
図3を用いて説明した、本発明によるセルモニター50では、上記の診断以外にもスイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して並列接続された単電池BC1、BC2、BC3の充放電制御を個別に行い、充電状態や劣化状態などの電池状態の均等化や、逆に電池状態の不均衡化を行うことが可能である。
【0092】
ここで図11を参照してスイッチ素子の制御によって充電状態を均等化する方法を説明する。ここでは、前提条件として図3の単電池BC3の電圧VBC3が、単電池BC1、BC2の電圧VBC1、VBC2に比べ低下しているとする。また第1の実施形態で説明したように、セルモニターで測定している単電池の電圧は単電池の端子電圧ではないが、配線経路に異常がなければ、単電池の端子電圧に簡単に換算できるので、以下の説明ではセルモニターで単電池の端子電圧を測定しているとして説明する。
【0093】
まず、ステップS101にて動作モードを検出し、ステップS102にて充電中か判定する。充電中の場合は、ステップS103にて、図3のようにスイッチSW3をON、SW1、SW2をOFFし、単電池BC3を選択する。これにより、単電池BC3のみが充電され、単電池BC3 の電圧VBC3は上昇する。このVBC3はステップS104でモニタされる。
【0094】
一方、ステップS102が充電中ではない場合、ステップS106にて放電中か判定される。放電中の場合は、ステップS107にてスイッチSW3をOFF、SW1、SW2をONし、単電池BC1、BC2を選択する。これにより、単電池BC1、BC2のみが放電され、単電池BC1、BC2の電圧VBC1、VBC2は減少する。このVBC1(=VBC2)はステップS108でモニタされる。なお、ステップS106で放電中ではない場合は、休止中であり、ステップS101に戻る。
【0095】
そして、ステップS105でVBC3=VBC1=VBC2が成立すればフローを終了する。また、成立しない場合はステップS101に戻り、上述のステップが繰り返される。
【0096】
ここでは、前提条件として単電池BC3の電圧VBC3が、単電池BC1、BC2の電圧VBC1、VBC2に比べ低下しているケースで説明したが、単電池BC1やBC2の電圧が他に比べ低い場合でも同様にスイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して単電池BC1、BC2、BC3の電圧を均等化することが可能である。
【0097】
このように本発明によれば、診断以外にもスイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して単電池BC1、BC2、BC3の充放電制御を個別に行い、各電池の充電状態を均等化することが可能である。
【0098】
また、これとは逆に、スイッチSW1、SW2、SW3をON、OFF制御して単電池BC1、BC2、BC3の充放電制御を個別に行い、各電池の充電状態の不均衡化をすることも可能である。各電池の充電状態を不均衡化することにより各電池に印加される充放電ストレスにも不均衡を生じさせ、劣化状態を制御することも可能である。
例えば、劣化の程度の小さい電池電圧を高めに制御し、優先して充放電することにより劣化が加速され、結果として劣化状態を均等化することも可能である。
【0099】
なお、上記のようにセルグループを選択して充電する方法は、本発明の第3の実施形態(図7)で説明したような、複数の単電池を直列に接続したセルグループが複数並列に接続されている場合においても、上記のスイッチを制御して、セルグループを選択し、このセルグループの充電状態を検出し、必要に応じてこのセルグループの充電を行うことにより、セルグループの充電状態を均等化することができる。
またこの直列セルグループに含まれる、各単電池の充電状態は本発明の第3の実施形態で図8を用いて説明したように、各単電池毎に必要に応じて放電を行うことによって、各単電池の充電状態を均等化することができる。
このようにセルグループを選択して、各セルグループ毎に充放電を行うことにより各セルグループおよびこれに含まれる各単電池の充電状態を均等化することができる。
【0100】
<本発明の第2の実施形態の変形実施例>
本発明はリチウム電池以外の二次電池にも適用できる。
図12では図6に比べ、単電池が3個直列接続された直列セルグループに更にスイッチが直列に接続されている。または図8と比較し、3つの直列セルグループ20A1、20A2、20A3の各々を制御するセルコントローラが削除されている。本構成は、各単電池の状態を個別に監視する必要のない鉛電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など水系電解液を有した二次電池に好適である。この変形実施例は、更に直列セルグループを2つ以上直列接続した電池モジュールブロックにスイッチを直列接続したものを並列接続したものにも適用可能であり、更に多くの並列接続数とすることも可能である。
【0101】
<電圧検出部の変形実施例>
図13は、本発明による第1および第2の実施形態で用いられた電圧検出部51の変形実施例を示す。ここでは、図4に示した電圧検出部51の回路と比べ、スイッチ63を用いる代わりに、電圧検出部51の正極側と負極側の両端を微小電流でプルアップまたはプルダウンすることにより、同様な機能を達成することが可能である。すなわち、電圧検出線SLP、抵抗61A及び抵抗61B、電圧検出線SLNが正しく接続されていない場合は、電圧検出器64でプルアップ電圧またはプルダウン電圧が検出され、電圧検出経路の異常を診断することができる。
【0102】
図12ではスイッチ63と定電流源66が直列に接続され、スイッチ67と定電流源68が直列に接続されている。スイッチ63とスイッチ67は電圧検出器64の両端に接続されている。また、定電流源802と定電流源804の他端はグランドに接続される。この定電流源802、804の電流値は電池電圧が低下しないレベルの微小電流値に設定されている。
【0103】
診断時はスイッチ801とスイッチ803をONする。これにより、電圧検出器64の両端は定電流源66、68によりプルダウンされるが、その電流値は電池電圧が低下しないレベルの微小電流値に設定されているため、電圧検出器64では正常時は電池電圧とほぼ等しい電圧が検出される。一方、例えば、電圧検出線SLPまたはSLNが正しく接続されていない場合は、電池電圧が印加されないため、ゼロに近い電圧が検出される。
【0104】
ここでは、定電流源66と68をスイッチ63と67をそれぞれ介して電圧検出器64の両端に接続した。これは診断時のみにスイッチ63と67をONすることにより消費電流を削減し、また、電圧検出精度の低下を防止するためである。従って、消費電流や電圧検出精度の仕様によってはスイッチ63、67を削除することが可能である。また、ここでは微小電流によるプルダウンのケースを示したが、同様に微小電流により電圧検出器64の両端を電源電圧にプルアップする方法でも同様な機能を果たすことが出来る。このように、電圧検出器64の両端を微小電流でプルアップまたはプルダウンすることにより、電圧検出経路の異常を診断することができる。
【0105】
<その他の変形実施例>
上記の本発明の実施形態の説明では、単電池はリチウムイオン電池やニッケル水素電池、鉛電池、ニッケルカドミウム電池などの二次電池、およびウルトラキャパシタなどの蓄電素子であるとして説明したが、本発明の経路異常検出方法は、二次電池でない一般的な電池、例えば二酸化マンガン電池等の単電池に対しても、同様に適用することができる。
【0106】
なお、本発明の第1の実施形態では説明を簡単にするため、1個の単電池とスイッチが直列接続された構成としたが、複数の単電池とスイッチを直列に接続されたものが並列に接続されている場合にも、本発明は適用可能である。
【0107】
また、本発明の第1の実施形態では、図3において、単電池BC1〜3のそれぞれにスイッチSW1〜3が直列に接続されたものが並列接続された構成となっているとした。すなわち単電池が3個並列に接続された並列セルグループを構成しているが、本発明はこの並列セルグループを2つ以上、直列または並列または直並列に接続した電池モジュールブロック、およびこの電池モジュールブロックを並列または直列または直並列に接続した電池モジュールにおいても適用可能である。
【0108】
また、本発明の第1の実施形態では、図4において、2個の抵抗61A、62、61Bを設けたが、電圧検出線SLP、SLNの抵抗値の大きさによってこれらを削除することも、更に多数の抵抗を設けることも可能である。
【0109】
本発明の第4の実施形態では、各セルグループは4個の電池セルで構成され、各電池モジュールブロック20A、20B、は各々2つのセルグループ(20A1、20A2、20A3と20B1、20B2、20B3)で構成されるとした。
しかしながら、各セルグループに含まれる電池セルは4個に限定するものでなく、5個あるいはこれ以上であってよく、また例えば4個のセルグループと6個のセルグループが組み合わされていてもよい。各セルグループに対応して設けられるセルコントローラICは、これらのセルグループに含まれる電池セルの数が4個であっても、また5個以上であっても使用できるように設計したものを使用することができる。
また電気自動車やハイブリッド自動車で必要とされる電圧および電流を得るために、上記のように各電池モジュールブロックはセルグループを複数個直列または直並列に接続してもよく、更に複数の電池モジュールブロックを直列または直並列に接続してよい。
【0110】
上記で、本発明の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
<図1〜4、6〜7、11、12>
BC1〜BC3、BC11〜BC14、BC21〜BC24、BC31〜BC34:二次電池セル
VBC1、VBC2、VBC3:二次電池セルBC1〜BC3の端子電圧
rBC3:二次電池セルBC3の内部抵抗値
21、22、31、32:バスバー
SLP、SLN、SL1〜SL5:電圧検出線
SL11〜15、SL21〜25、SL31〜35:電圧検出線
rSLP、rSLN:SLP、SLNの抵抗値
CBP、CBN、CNP、CMN、CVP、CVN:接続点
Cv:コンデンサ
SW1〜3:スイッチ
IC1〜3:セルコントローラ
50:セルモニター
51:電圧検出部
52:スイッチ制御部
61A、61B、62:抵抗
r61A、r61B、r62:抵抗61A、61B、62の抵抗値
63:スイッチ
r63:スイッチ63の抵抗値
64:電圧検出器
65:スイッチ診断部
66:定電流源
67:スイッチ
68:定電流源
801、803:スイッチ
<図8>
120:マルチプレクサ
122A:アナログデジタル変換器
123:IC制御回路
130:診断回路
138および142:伝送入力回路
140および143:伝送出力回路
147:起動回路
150:タイマ回路
160:制御信号検出回路
262差動増幅器
288:OR回路
BC1〜BC4:電池セル
123:IC制御回路
125:データ保持回路
IC1:セルコントロールIC
126:タイミング制御回路
130:診断回路
128:診断フラグ保持回路
BR1〜BR4:バランシング用端子
CV1〜CV4:電圧入力端子
GND:GND端子
SL1〜SL5:電圧検出線
VCCおよびVDD:電源電圧
CvおよびCin:コンデンサ
RCVおよびRB:抵抗
PH:フォトカプラ
LIN1:通信系602の入力端子
LIN2:通信系602の入力端子
FFI:通信系604の入力端子
FFO:通信系604の出力端子
D1およびD2:ESD対策用ダイオード
<図9>
20:電池モジュール
20A、20B:電池モジュールブロック
30:マイコン
100:電池制御装置
9:インバータ装置
602,604:通信系
IC1〜IC4:セルコントローラIC
SD−SW:サービスディスコネクト(スイッチ)
RC−net:保護回路および放電回路を含む配線回路部
<図13>
1:ハイブリッド自動車
2:駆動輪
3:車軸
4:デファレンシャルギア
5:変速機
6:エンジン
7:電動発電機
8:駆動力切替装置
9:インバータ装置
10:制御装置
11:蓄電装置
HV+およびHV−:強電ライン
RL:リレー
RP:抵抗
RLP:プリチャージリレー
BDU:電池ディスコネクトユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチと1個以上の単電池とが直列に接続されたセルグループを、複数個並列または直並列に接続した電池モジュールと、
前記電池モジュールを制御するとともに、前記電池モジュールの前記単電池および前記セルグループの接続経路の異常を検出する電池制御装置とを備え、
前記電池制御装置は、前記スイッチを切り替えてセルグループを選択するスイッチ制御部と、前記スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を検出する第1の電圧検出回路とを備え、
前記スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を前記第1の電圧検出部で検出することによって、前記電池モジュールの異常および前記電池モジュールの接続異常を診断する診断手段とを備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置において、
前記電池制御装置は、前記スイッチ選択部により選択されたセルグループのスイッチに印加されている電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに備え、
前記第2の電圧検出部が検出した電圧によって、前記セルグループのスイッチの異常を診断することを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電装置において、
前記第1の電圧検出部および前記第2の電圧検出部は、それぞれ、電圧検出器を備え、直列に接続された抵抗とスイッチが、前記電圧検出器に並列に接続されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記電池制御装置は更に、複数のセルコントローラを備え、各々のセルコントローラはそれぞれの対応するセルグループに含まれる各単電池の充電状態を検出して、前記各単電池の放電を行うことによって、前記各単電池の充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記電池制御装置は、前記スイッチ制御部によって前記スイッチを制御してセルグループを選択し、前記セルグループの充電状態を検出し、必要に応じて前記セルグループの充電を行うことによって、前記セルグループの充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記各単電池の充電状態および前記電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離すことを特徴とする蓄電装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、
前記スイッチを制御してセルグループを選択し、この選択されたセルグループの充電または放電を行い、このセルグループの充電状態の均等化を行うことを特徴とする蓄電装置の充放電方法。
【請求項8】
請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、
前記各単電池の充電状態および前記電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離し、残りの単電池によって電池機能の提供を継続することを特徴とする蓄電装置の運転方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電装置と、
前記蓄電装置で制御される電力で駆動される走行用電動機とを備えたことを特徴とする電動走行可能な車両。
【請求項1】
スイッチと1個以上の単電池とが直列に接続されたセルグループを、複数個並列または直並列に接続した電池モジュールと、
前記電池モジュールを制御するとともに、前記電池モジュールの前記単電池および前記セルグループの接続経路の異常を検出する電池制御装置とを備え、
前記電池制御装置は、前記スイッチを切り替えてセルグループを選択するスイッチ制御部と、前記スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を検出する第1の電圧検出回路とを備え、
前記スイッチ制御部により選択されたセルグループの電圧を前記第1の電圧検出部で検出することによって、前記電池モジュールの異常および前記電池モジュールの接続異常を診断する診断手段とを備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置において、
前記電池制御装置は、前記スイッチ選択部により選択されたセルグループのスイッチに印加されている電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに備え、
前記第2の電圧検出部が検出した電圧によって、前記セルグループのスイッチの異常を診断することを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電装置において、
前記第1の電圧検出部および前記第2の電圧検出部は、それぞれ、電圧検出器を備え、直列に接続された抵抗とスイッチが、前記電圧検出器に並列に接続されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記電池制御装置は更に、複数のセルコントローラを備え、各々のセルコントローラはそれぞれの対応するセルグループに含まれる各単電池の充電状態を検出して、前記各単電池の放電を行うことによって、前記各単電池の充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記電池制御装置は、前記スイッチ制御部によって前記スイッチを制御してセルグループを選択し、前記セルグループの充電状態を検出し、必要に応じて前記セルグループの充電を行うことによって、前記セルグループの充電状態を均等化することを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、
前記各単電池の充電状態および前記電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離すことを特徴とする蓄電装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、
前記スイッチを制御してセルグループを選択し、この選択されたセルグループの充電または放電を行い、このセルグループの充電状態の均等化を行うことを特徴とする蓄電装置の充放電方法。
【請求項8】
請求項4または5のいずれか1項に記載の蓄電装置を用いて、
前記各単電池の充電状態および前記電池モジュールの接続異常を検出し、異常なセルグループが検出された場合は、この異常なセルグループのスイッチを制御してこのセルグループを電池モジュールから切り離し、残りの単電池によって電池機能の提供を継続することを特徴とする蓄電装置の運転方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電装置と、
前記蓄電装置で制御される電力で駆動される走行用電動機とを備えたことを特徴とする電動走行可能な車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−34535(P2012−34535A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173683(P2010−173683)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]