説明

電池劣化判定装置、電池劣化判定方法、及びプログラム

【課題】二次電池の劣化状態を判定するための特別な装置を設けることなく、ランニング運転のまま短時間で二次電池の劣化状態を判定することができるようにする。
【解決手段】発熱量演算部2が、二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から電池セルの実測温度上昇値を演算し、SOC演算部3が、電池セルに流れる電流の電流積算値と電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算する。一方、テーブル4は、二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均ごとの電池セルの初期特性の温度上昇値をSOCごとに格納している。これによって、劣化判定部5は、テーブル4に格納されている初期特性の温度上昇値と、先に発熱量演算部2が演算した実測温度上昇値とを比較して二次電池の劣化状態を判定する。これによって、ランニング運転中において二次電池の劣化判定を短時間かつ容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の劣化状態を判定する技術に係り、特に、移動体用のリチウム電池などの二次電池の劣化状態を判定するための電池劣化判定装置、電池劣化判定方法、及びその方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池などの二次電池の劣化状態を推定(判定)して、電池の管理条件への反映や状態表示を行うことは、二次電池を安全に使用したり電池交換時期を事前に知る上でユーザメリットにつながる。そこで、このような観点から、二次電池の劣化状態を推定する技術が種々報告されている。例えば、二次電池の充放電回数をカウントしたり使用時間を計測することで二次電池の劣化状態を推定する技術や、二次電池の充放電容量を直接計測したり、内部抵抗を計算したりして二次電池の劣化状態を推定する技術や、二次電池の電圧変化幅と充放電容量から全体容量を判断して、二次電池の劣化状態を推定する技術などが知られている。
【0003】
また、二次電池の機能が低下した電池パックを事前に判定して適切な処理を行う技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、二次電池が経年変化によって寿命に達し、機能が著しく低下して機能喪失の状態に陥ったと判定された場合には、その判定内容に応じて充放電の制御や強制放電の制御を適切に行うことにより、その二次電池の使用を制限しながら適切な処理を行う(例えば、再生できる場合は再生充電処理を行い、機能が不能な場合は強制放電処理を行う)ことができる。このとき、経年変化の判定には、例えば、平均周囲温度が10℃上昇するごとに経年時間を2倍にするなど、周囲温度を考慮した劣化判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3638102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術のうち、二次電池の充放電回数をカウントしたり使用時間を計測して劣化状態を推定する技術は、二次電池のセルごとの充電バラツキを捉えることができなかったり、充放電レートや充放電の深度によって劣化の異なる状態を把握することができないなどの問題がある。また、二次電池の充放電容量を直接計測して劣化状態を推定する技術は、日々のランニング運転による充放電の中では二次電池の容量変化を捉え難いので、0〜100%の充放電が繰り返されるアプリケーションでしか適用することができないと共に、劣化状態の推定にかなりの時間がかかるなどの問題がある。
【0006】
また、二次電池の内部抵抗を計算して劣化状態を推定する技術は、極めて小さな内部抵抗(例えば、リチウム電池の内部抵抗は数mΩ)を計測する必要があるので、高精度な電圧・電流計測が必要となるなど計測装置が高価になってしまうなどの問題がある。また、二次電池の電圧変化幅と充放電容量から全体容量を判断して二次電池の劣化状態を推定する技術は、狭い電圧変化幅から劣化状態を推定することになるので、高精度な電圧・電流計測が必要となり、前述と同様に計測装置が高価になってしまうなどの問題がある。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術によれば、周囲温度などを考慮した経年変化に基づいて、比較的高精度に二次電池の劣化状態の判定を行うことができるが、二次電池のライフサイクルをインターバルとした劣化状態の判定方法であるので、短時間に劣化状態を判定することができない。すなわち、日々のランニング運転の状態にある二次電池の劣化状態を短時間で判定することはできない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、二次電池の劣化状態を判定するための特別な装置を設けることなく、ランニング運転のまま短時間で二次電池の劣化状態を判定することができる電池劣化判定装置、電池劣化判定方法、及びその方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置であって、前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算する発熱量演算部と、前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算するSOC演算部と、前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均ごとの前記電池セルの理論発熱量を前記SOCごとに格納するデータテーブルと、前記データテーブルに格納された理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定する劣化判定部とを備えることを特徴とする電池劣化判定装置である。
【0010】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記データテーブルは前記電池セルの周囲温度ごとに複数の種類が用意され、前記劣化判定部は、周囲温度に対応したデータテーブルを参照した前記初期特性の温度上昇値と前記実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記電池セルの周囲温度の範囲に応じて前記二次電池の劣化判定の実行可否を判断することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記データテーブルは前記電池セルの劣化度ごとに複数の種類が用意され、前記劣化判定部は、劣化度ごとのデータテーブルを参照して前記二次電池の劣化度を判定することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記データテーブルは、前記電池セルの熱容量に起因する温度タイムラグを考慮した初期特性の温度上昇値のデータを格納し、前記劣化判定部は、前記温度タイムラグが考慮された初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記データテーブルは、初回の計測期間における実測値と理論値との差をオフセット誤差として格納し、前記劣化判定部は、前記データテーブルに格納されたオフセット誤差を考慮して劣化判定を行うことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置であって、前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算する発熱量演算部と、前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算するSOC演算部と、前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均と前記SOCとに基づいて前記電池セルの理論発熱量を関数を用いて演算し、該演算した前記理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定する劣化判定部とを備えることを特徴とする電池劣化判定装置である。
【0017】
また本発明は、上述の電池劣化判定装置において、前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置の電池劣化判定方法であって、前記電池劣化判定装置の発熱量演算部が、前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算し、前記電池劣化判定装置のSOC演算部が、前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算し、前記電池劣化判定装置のデータテーブルが、前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均ごとの前記電池セルの理論発熱量を前記SOCごとに格納し、前記電池劣化判定装置の劣化判定部が、前記データテーブルに格納された理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定することを特徴とする電池劣化判定方法である。
【0019】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記データテーブルは前記電池セルの周囲温度ごとに複数の種類が用意され、前記劣化判定部は、周囲温度に対応したデータテーブルを参照した前記初期特性の温度上昇値と前記実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0021】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記電池セルの周囲温度の範囲に応じて前記二次電池の劣化判定の実行可否を判断することを特徴とする。
【0022】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記データテーブルは前記電池セルの劣化度ごとに複数の種類が用意され、前記劣化判定部は、劣化度ごとのデータテーブルを参照して前記二次電池の劣化度を判定することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記データテーブルは、前記電池セルの熱容量に起因する温度タイムラグを考慮した初期特性の温度上昇値のデータを格納し、前記劣化判定部は、前記温度タイムラグが考慮された初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0024】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記データテーブルは、初回の計測期間における実測値と理論値との差をオフセット誤差として格納し、前記劣化判定部は、前記データテーブルに格納されたオフセット誤差を考慮して劣化判定を行うことを特徴とする。
【0025】
また本発明は、二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置の電池劣化判定方法であって、前記電池劣化判定装置の発熱量演算部が、前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算し、前記電池劣化判定装置のSOC演算部が、前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算し、前記電池劣化判定装置の劣化判定部が、前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均と前記SOCとに基づいて前記電池セルの理論発熱量を関数により演算し、該演算した前記理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定することを特徴とする電池劣化判定方法である。
【0026】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法において、前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値であることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、上述の電池劣化判定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、二次電池のセルごとの劣化状態を判定することができるので、二次電池全体が劣化する前に必要な対応を採ることができる。また、0〜100%のサイクルで二次電池の充放電を行わなくても、ランニング運転中において二次電池の劣化状態を判定することができる。従って、二次電池の使用中において電池劣化によって機器が停止するなどのトラブルを回避することができる。
【0029】
また、ランニング運転中において短時間で二次電池の劣化判定を行うことができるので、ハイブリッド自動車などのように頻繁に二次電池の充放電が繰り返えされるアプリケーションであっても、容易に二次電池の劣化判定を行うことができる。さらに、初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値は相対的に比較されるので、温度センサの絶対精度を無視することができるので、二次電池の劣化判定を行う場合に高精度は計測器を用いる必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】二次電池の平均電流の二乗(I平均)とセル温度Tとの関係を示す特性図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電池劣化判定装置に適用される、SOCとI平均と電池セルの初期特性の温度上昇値との関係を示すテーブルである。
【図3】本発明の実施例1に係る電池劣化判定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1に係る電池劣化判定装置に適用されるSOC演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例2に係る電池劣化判定装置に適用される、SOCとI平均と電池セルの初期特性の温度上昇値との関係を示すテーブルである。
【図6】本発明の実施例4に係る電池劣化判定装置に適用される、SOCとI平均と電池セルの劣化率ごとの温度上昇値との関係を示すテーブルである。
【図7】本発明の実施例6に係る電池劣化判定装置に適用される、電池セルの温度上昇値が飽和する前に劣化判定を行う状態を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態に係る電池劣化判定装置は、二次電池の温度上昇に基づいてその二次電池の劣化状態の判定(推定)を行うことを特徴としている。以下、図面を参照しながら、本発明に係る電池劣化判定装置について幾つかの実施例を詳細に説明する。
【0032】
《実施例1》
〔二次電池の劣化判定方法〕
一般的に、二次電池が劣化すると内部抵抗Rが高くなり、電流Iと内部抵抗Rによる発熱ロス(IRロス)によって、ランニング運転中の二次電池の温度上昇値が増加することに着目し、実施例1では、二次電池の温度上昇に基づいてその二次電池の劣化判定を行う方法について説明する。
【0033】
図1は、二次電池の平均電流の二乗(I平均)とセル温度Tとの関係を示す特性図であり、横軸に時間、縦軸にI平均の大きさ、及びセル温度Tの高さを示している。電池セルのセル温度Tは、電池セルの内部抵抗Rと電流の二乗(I)との積(IR)によって決まるので、図1に示すように、I平均の増加/減少に伴ってセル温度Tは徐々に上昇/下降し、I平均が一定になればセル温度Tは徐々に飽和してゆく。このとき、セル温度TはIRに比例するので、二次電池の劣化の程度によって内部抵抗Rが増加すればセル温度Tも上昇する。
【0034】
従って、二次電池の劣化判定を行う場合は、先ず、二次電池をランニング運転している充放電中において、その二次電池の電流Iと電池セルのセル温度Tと周囲温度Tfとを計測する。次に、二次電池の電流値積算と電池セルの電圧からSOC(State Of Charge:充電率、充電状態、残存容量)を演算する。尚、SOCの算出方法は後述する。
【0035】
さらに、演算によって求めたSOCとI平均と電池セルの初期特性の温度上昇値との関係を示す図2のようなテーブルを用意する。すなわち、図2は、本発明の実施例1に係る電池劣化判定装置に適用される、SOCとI平均と電池セルの初期特性の温度上昇値との関係を示すテーブルであり、縦の項目にSOC、横の項目にI平均を示している。図2において、例えば、SOCが20%でI平均が2500(電流Iが50A)のときは、電池セルの初期特性の温度上昇値はbc(例えば、50℃)である。
【0036】
尚、SOCの刻み間の温度上昇値、及びI平均の刻み間の温度上昇値は、それぞれ直線補完されている。例えば、SOCが20%のとき、I平均が2500のときの温度上昇値bc(例えば、50℃)と、I平均が10000のときの温度上昇値cc(例えば、60℃)との間の温度上昇は直線的に変化している(つまり、直線補完されている)。また、I平均が2500のとき、SOCが20%のときの温度上昇値bc(例えば、50℃)と、SOCが30%のときの温度上昇値bd(例えば、45℃)との間の温度上昇値は直線的に変化している(つまり、直線補完されている)。
【0037】
次に、先に計測した電池セルのセル温度Tと周囲温度Tfから、電池セルの温度変化、すなわち実測温度上昇値(T−Tf)を求める。そして、実測温度上昇値(T−Tf)が図2に示すテーブルから求めた初期特性の温度上昇値に対して規定値以上高い場合は、二次電池の電池セルが劣化していると判断する。ここで、規定値とは、二次電池における電池セルの使用温度範囲の最大値と使用可能温度上限値との差である。実際には、規定値は、図2のテーブルから求められたSOCごとの初期特性の温度上昇値と、寿命到達時における電池セルのSOCごとの実測温度との差などから求められる値である。
【0038】
以下、電池セルの温度上昇値に基づいて電池セルの劣化判定を行う具体的な例について数値を用いて説明する。例えば、二次電池における電池セルの使用温度範囲が0〜50℃であって、その電池セルの使用可能温度上限値が60℃であれば、使用温度範囲の最大値と使用可能温度上限値との差である規定値は10℃である。従って、二次電池の電池セルの実測温度が61℃であり、図2のテーブルを参照して、SOCが20%でI平均が2500のときの初期特性の温度上昇値bcが50℃であれば、電池セルの実測値61℃と図2に示すテーブルから求めた初期特性の温度上昇値50℃との差は11℃であるので、規定値の10℃を超えているために、その電池セルは劣化していると判定する。
【0039】
このようにして、電池セルの温度上昇に基づいて二次電池の劣化状態を判定することにより、二次電池の電池セルごとの劣化判定を行うことができる。従って、二次電池全体を劣化させることなく事前に適切な対応を採ることが可能となる。また、0〜100%のサイクル充放電をしなくても、実使用状態で二次電池の劣化判定を行うことができるので、ランニング運転中に二次電池の劣化によって負荷側の機器が停止することを防止できる。さらに、大電流が流れるアプリケーション(例えば、ハイブリッド自動車など)に適用すれば、温度の上昇速度が速くなるので、二次電池の劣化判定を短時間で行うことができる。さらに、電池セルの測定温度とテーブルの温度とは相対的に比較されるので、温度センサの絶対精度を無視することができるため、二次電池の劣化判定を行う場合に高精度は計測器を用いる必要はがない。
【0040】
図3は、本発明の実施例1に係る電池劣化判定装置の構成を示すブロック図である。すなわち、実施例1の電池劣化判定装置1は、上述の内容に基づいて、図3に示すような構成によって実現することができる。
【0041】
すなわち、電池劣化判定装置1は、二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から電池セルの実発熱量(実測温度上昇値)を演算する発熱量演算部2と、電池セルに流れる電流の電流積算値と電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算するSOC演算部3と、二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均ごとの電池セルの理論発熱量(初期特性の温度上昇値)をSOCごとに格納するテーブル4と、テーブル4に格納された理論発熱量(初期特性の温度上昇値)と実発熱量(実測温度上昇値)とを比較して、二次電池の劣化状態を判定する劣化判定部5と、二次電池に流れる電流Iの二乗の平均値(I平均)を求めてテーブル4に格納するI平均演算部6とを備える構成にすることができる。
【0042】
このような構成の電池劣化判定装置1によれば、発熱量演算部2が、二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から電池セルの実測温度上昇値を演算し、SOC演算部3が、電池セルに流れる電流の電流積算値と電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算する。一方、テーブル4は、二次電池に流れる電流をIとしたとき、I平均演算部6がI平均を求め、一定時間におけるI平均ごとの電池セルの初期特性の温度上昇値をSOCごとに格納している。これによって、劣化判定部5は、テーブル4に格納されている初期特性の温度上昇値と、先に発熱量演算部2が演算した実測温度上昇値とを比較して二次電池の劣化状態を判定する。これによって、ランニング運転中において二次電池の劣化判定を短時間かつ容易に行うことができる。
【0043】
〔SOCの算出方法〕
次に、二次電池の充放電電流の電流値積算と電池セルの電圧から求めるSOCの算出方法について一実施例を説明する。一般的に、二次電池のSOCは二次電池の充放電電流の積分値に基づいて算出されるが、充放電電流の積分値だけで算出すると、充放電電流の積分値に電流検出誤差分が蓄積されてSOCの値が実態と異なってしまう。従って、その現象を回避するために、二次電池の推定インピーダンスが小さいときに、充放電電流の積分値に基づいて算出されたSOCをSOCV(SOC電圧)によって修正する。これによって、電流検出誤差のない状態で高精度にSOCを算出することができる。
【0044】
以下、図面を用いてSOCの算出方法の一例について具体的に説明する。図4は、本発明の実施例1に係る電池劣化判定装置に適用されるSOC演算部の構成を示すブロック図である。
【0045】
先ず、図4に示すSOC演算部4の構成について説明する。SOC演算部4は、推定開放電圧演算部10、推定開放電圧によるSOCV演算部11、推定インピーダンステーブル12aと推定インピーダンス電圧演算部12bからなる電池インピーダンスモデル部12、推定インピーダンス電圧静定判定部13、実測電流積分によるSOCI演算部14、SOC偏差判定部15、SOC切替判定部16、及びSOC切替部17を備えて構成されている。尚、SOC偏差判定部15とSOC切替判定部16とSOC切替部17とによってSOC決定部20が構成されている。
【0046】
推定開放電圧演算部10は、二次電池の実測電圧VAから推定インピーダンス電圧VZを減算して二次電池の推定開放電圧V0を演算し、この推定開放電圧V0を推定開放電圧によるSOCV演算部11へ出力する。
推定開放電圧によるSOCV演算部11は、二次電池の推定開放電圧V0と実測温度Tとを入力して、自己が保有しているテーブルからSOCV(SOC電圧)を決定し、このSOCVをSOC切替部17へ出力する。
【0047】
電池インピーダンスモデル部12は、推定インピーダンステーブル12aと推定インピーダンス電圧演算部12bとからなり、推定インピーダンステーブル12aがSOCと実測温度Tとを入力してテーブルから二次電池の推定インピーダンスZを抽出し、推定インピーダンス電圧演算部12bが、実測電流Iと推定インピーダンスZから演算によって推定インピーダンス電圧VZを求めて推定インピーダンス電圧静定判定部13へ出力する。
【0048】
推定インピーダンス電圧静定判定部13は、推定インピーダンス電圧VZの変動率の絶対値が、所定の時間以上に亘って閾値以内(又は閾値未満)のレベルを継続したときに、推定インピーダンス電圧静定信号をSOC切替判定部16へ出力する。
実測電流積分によるSOCI演算部14は、充放電による実測電流Iの積分値からSOCI(SOC電流)を演算してSOC切替部17へ出力する。尚、SOC切替部17がSOCVに切替わった時は初期値をSOCVとする。
【0049】
SOC偏差判定部15は、|SOCV−SOCI|が閾値ΔSOC以上であるときに、偏差大信号をSOC切替判定部16へ出力する。尚、通常は、閾値ΔSOC=0である。
SOC切替判定部16は、推定インピーダンス電圧静定信号のAND/OR出力(トータル静定信号)と、SOC偏差大信号のAND出力とによって、SOC切替部17へSOC切替信号を出力する。
SOC切替部17は、SOC切替判定部16から入力されたSOC切替信号出力に基づいて、SOCVとSOCIとを適宜に切り替えてSOCを出力する。
【0050】
次に、図4に示すSOC演算部4の動作について説明する。先ず、推定インピーダンステーブル12aと推定インピーダンス電圧演算部12bからなる電池インピーダンスモデル部12によって推定インピーダンス電圧VZを求める。この推定インピーダンス電圧VZの値は推定値であるために誤差を有するが、特に、この推定インピーダンス電圧VZの値が大きいときは充電率(SOC)の修正量も大きく、充電率(SOC)に誤差が生じやすい。
【0051】
そこで、推定インピーダンス電圧VZが静定(例えば、推定インピーダンス電圧VZの絶対値|VZ|が閾値以下(あるいは未満)を所定の時間継続)したら、推定インピーダンス電圧静定判定部13からSOC切替判定部16へ推定インピーダンス電圧静定信号を出力し、SOC切替判定部16から出力されたSOC切替信号によってSOC切替部17のスイッチを切り替え、推定開放電圧によるSOCV演算部11からのSOCVを採用してSOC切替部17からSOCを出力する。
【0052】
このとき、推定開放電圧によるSOCV演算部11は、実測温度Tと推定開放電圧V0のテーブル(事前に取得済のテーブル)からSOCVを求めてSOC切替部17へ出力する。従って、SOC決定部20は、推定インピーダンス電圧静定信号を受け取ったら、充電率(SOC)を推定開放電圧V0から求めたSOCVに変えてもよく、更に、充放電電流の積分値から求めたSOCIとの差分|SOCV−SOCI|が閾値ΔSOC以上(超でもよい)でSOCVに変えてもよい。尚、SOC切替部17がSOCVに切替えたら、充放電電流の積分値の初期値はその値に変更する。
【0053】
すなわち、充放電電流の反転直後は電池のインピーダンス電圧が十分に小さくなっていないために演算したSOCの値に誤差が出やすいが、上記のようにしてSOCを算出することにより、推定インピーダンスZが小さいときに充放電電流の積分値のSOCをSOCVで修正することにより、SOCを誤差の少ない値にすることができる。つまり、充放電電流の積分値によるSOCの修正タイミングが多く発生するために、充放電電流の積分値に誤差が蓄積されにくくなる。
【0054】
尚、上記の実施例では、推定開放電圧演算部10が、実測電圧VAから推定インピーダンス電圧VZを減算して推定開放電圧V0を求めているが、推定インピーダンス電圧VZが小さく充放電電流の誤差が小さいと予想されるときは、実測電圧VAを補正せずに、実測電圧VAそのものを推定開放電圧V0と見なして、推定開放電圧V0をSOCV演算部11に入力してSOCVを算出し、充電率算出(SOC算出)を行ってもよい。すなわち、SOC算出の別の実施例として、推定インピーダンス電圧VZを二次電池の開放電圧として用いなくてもよい。これによって、図4に示すSOC演算部4の構成において推定開放電圧演算部10を省略することができるので、SOC演算部4の構成がさらにシンプルになる。
【0055】
《実施例2》
次に、本発明の実施例2に係る二次電池の劣化判定方法について説明する。前述の実施例1では、周囲温度とは無関係に、SOCとI平均とに応じて電池セルの初期特性の温度上昇値を求める1種類のテーブルを用いた。ところが、実施例2では、SOCとI平均とに応じて電池セルの初期特性の温度上昇値を求めるテーブルを周囲温度ごとに数種類用意し、テーブルから求める初期特性の温度上昇値に対して周囲温度による補正値を加えている。
【0056】
図5は、本発明の実施例2に係る電池劣化判定装置に適用される、SOCとI平均と電池セルの初期特性の温度上昇値との関係を示すテーブルである。つまり、図5は、周囲温度ごとに3種類に分類した初期特性の温度上昇値のテーブルを表わしていて、各テーブルの左肩に周囲温度が示されている。従って、周囲温度に応じてテーブルを使い分けて、SOCとI平均とに応じて電池セルの初期特性の温度上昇値を求めることができる。
【0057】
このようにして、周囲温度に応じたテーブルから初期特性の温度上昇値を求め、その初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値と比較して電池セルの劣化判定を行うことにより、電池セルの内部インピーダンス(内部抵抗)の周囲温度による変化分を補正して劣化判定を行うことができるので、より高精度に二次電池の劣化判定を行うことが可能となる。
【0058】
《実施例3》
前述の実施例2では、全ての周囲温度の範囲において、周囲温度の変化によって生じる内部インピーダンス(内部抵抗)の変化分を補正して劣化判定を行ったが、実施例3では、実際の使用状態に即して、周囲温度が規定の範囲(例えば10〜30℃)のみで二次電池の劣化判定を行うようにする。このように、実際の使用状態に即して初期特性の温度上昇値をテーブルから求め、その初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値とを比較して電池セルの劣化判定を行うことにより、内部インピーダンスの温度による変化が少ない周囲温度の範囲で劣化判定を行うことができるので、二次電池の劣化判定の精度が向上する。また、実施例2に比べてテーブルの容量が小さくなるので、電池劣化判定装置のメモリ容量を小さくすることができる。
【0059】
《実施例4》
前述の実施例1〜3においては、SOCとI平均とに応じた電池セルの温度上昇値の初期特性のみを用意したが、実施例4では、初期特性と劣化後の特性(例えば、容量が30%劣化後の特性)、及びその間の数点の劣化後の特性(例えば、容量劣化が10%刻みの特性)の温度上昇値のテーブルを用意する。
【0060】
図6は、本発明の実施例4に係る電池劣化判定装置に適用される、SOCとI平均と電池セルの劣化率ごとの温度上昇値との関係を示すテーブルであり、各テーブルの左肩に劣化率が示されている。図6のテーブルでは、容量の劣化率が0%(つまり、初期特性)、15%、及び30%のときの、SOCとI平均とに応じた電池セルの温度上昇値が示されている。
【0061】
すなわち、実施例4に係る電池劣化判定装置によれば、図6に示すようなテーブルを用いることにより、それぞれのテーブルから求められる温度上昇値と電池セルの実測温度上昇値を照合することによって、ランニング運転中の任意の時点での電池セルの劣化率を求めることができる。言い換えると、二次電池の劣化判定のみではなく、運転途中における二次電池の劣化率を数値化することが可能となる。これによって、二次電池のSOC演算や残量演算の精度を一段と向上させることができる。
【0062】
《実施例5》
前述の実施例1〜4においては、SOCと一定時間のI平均から電池セルの温度上昇値を求めるテーブルを用いて二次電池の劣化判定を行ったが、実施例5では、このようなテーブルを用いる代わりに、SOCと一定時間のI平均から電池セルの温度上昇値を求める関数、又はSOCと一定時間のI平均と温度(電池温度または周囲温度)の少なくとも1つの計測値から電池セルの温度上昇値を求める関数を用意する。
【0063】
以下、電池セルの温度上昇値を求めるための具体的な関数について説明する。
電池セルの発熱量Qは次の式(1)で表わされる。
Q=R×I(W) (1)
ここで、Rは電池セルの内部抵抗(Ω)であって、固定値、又はSOCと温度(電池セルの温度または周囲温度)の少なくとも1つの計測値と内部抵抗のテーブル等から求められる変動値である。また、Iは電池セルを流れる電流(A)である。
【0064】
また、電池セルからの放熱量Wは次の式(2)で求められる。
W=K×A×ΔT(W) (2)
ここで、Kは熱伝達率(W/℃・m)であり、例えば、自然対流の場合はK≒10に設定する。Aは伝熱面積(m)、ΔTは電池セルの温度と周囲温度との差(つまり、電池セルの温度上昇値)(℃)である。
【0065】
次に、式(1)で求めたQと、式(2)で求めたWとにより、時刻tにおける電池セルの温度変化(温度上昇値)Tを次の式(3)によって求める。
T={∫(Q−W)dt}/(c×m)(℃) (3)
ここで、cは電池比熱(J/(kg・℃))であり、MHI電池の場合はc=1000ぐらいである。また、mは電池重量(kg)である。
【0066】
すなわち、実施例1〜4で用いたテーブルの代わりに、式(3)の関数を用いて電池セルの初期特性の温度上昇値を求め、実測温度上昇値と比較して二次電池の劣化判定を行うことができる。このようにして、テーブルの代わりに関数を用いて初期特性の温度上昇値を求めることにより、電池劣化判定装置のメモリ容量を小さくすることができる。また、このような手法によれば、二次電池の劣化判定を行うための演算時間がより速くなる。但し、実施例1〜4のようにテーブルを用いて二次電池の劣化判定を行う場合に比べて測定精度はいくらか悪くなる。尚、関数を用いて電池セルの初期特性の温度上昇値を求める場合は、図3に示す電池劣化判定装置1の構成においてテーブル4を関数4と読み替えればよい。
【0067】
《実施例6》
前述の実施例1〜4のようにテーブルを用いて二次電池の劣化判定を行う場合は、電池セルの電流Iが一定の値になってから(つまり、I平均が一定値になってから)、セル温度Tの上昇値が飽和する時間まで待った後に、電池セルのセル温度Tを計測しなければならないため、二次電池の劣化判定を行うのにかなりの時間がかかってしまう。そこで、実施例6では、テーブルで求めた温度変化(温度上昇値)に一次遅れを持たせて、電池セルのセル温度Tの計測時間を早めることによって、二次電池の劣化判定を早期に行う手法を提案する。
【0068】
すなわち、電池セルの温度変化(温度上昇値)の一次遅れの時定数は、その電池セルの熱容量などによって一義的に決まるので実験によって求めることができる。従って、実験によって求めた一次遅れの時定数に基づいて応答遅れの加味された電池セルの初期特性の温度上昇値を求め、この初期特性の温度上昇値と、飽和する前に計測した実測温度上昇値とを比較すれば、二次電池の劣化判定を早期に行うことができるので、劣化判定の計測速度を速くすることができる。
【0069】
図7は、本発明の実施例6に係る電池劣化判定装置に適用される、電池セルの温度上昇値が飽和する前に劣化判定を行う状態を示す特性図である。図7において、横軸は時間、縦軸はセル温度及びI平均のレベルを表わしている。
【0070】
図7に示すように、I平均が一定値に落ち着いた後も、セル温度Tは上昇傾向を辿ってやがて飽和して行く。しかし、セル温度Tが飽和するまで待たなくて、セル温度Tが飽和する以前の時間t1の間でセル温度Tを計測しても、テーブルから求めた初期特性の温度上昇値には一次遅れが持たせてあるので、実質的にはセル温度Tが飽和した時刻で初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値とを比較して、二次電池の劣化判定を行ったことになる。このようにして、電池セルのセル温度の応答遅れを加味して劣化判定や劣化率推定を行うことにより、高い測定精度を維持しながら、二次電池の劣化判定時間を速めることができる。
【0071】
《まとめ》
以上、実施例1乃至実施例6で述べたように、本発明による電池劣化判定装置によれば、二次電池のセルごとの劣化状態を判定(推定)することができる。また、0〜100%のサイクルで二次電池の充放電を行わなくても、実使用状態のランニング運転中において二次電池の劣化状態を判定することができる。従って、二次電池の使用中において電池劣化によって機器が停止するなどのトラブルを回避することができる。
【0072】
また、大電流が流れる二次電池においては、短かい時間で温度上昇するので、二次電池の劣化判定にかかる時間を短縮することができる。従って、ハイブリッド自動車などのように頻繁に二次電池の充放電が繰り返えされるアプリケーションにおいては、短時間で二次電池の劣化判定を行うことができる。さらには、初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値は相対的に比較されるので、温度センサの絶対精度を無視することができるので、二次電池の劣化判定を行う場合に高精度は計測器を用いる必要がなくなる。
【0073】
また、上記の各実施例では述べなかったが、初回の計測期間の実測値と理論値の差をオフセット誤差としてテーブルのメモリに記憶しておき、劣化判定部5が、このオフセット誤差を考慮して劣化判定を行うようにしてもよい。例えば,オフセット誤差が実測値で+5℃であった場合は、劣化判定部5は、劣化判定時において、『実測値−5℃』の情報に基づいて劣化判定を行ってもよい。
【0074】
なお、上述の電池劣化判定装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0075】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る電池劣化判定装置は、ランニング運転中において短時間で二次電池の劣化判定を行うことができるので、ハイブリッド自動車や放送局の無停電電源装置などに用いられる二次電池に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 電池劣化判定装置
2 発熱量演算部
3 SOC演算部
4 テーブル
5 劣化判定部
6 I平均演算部
10 推定開放電圧演算部
11 推定開放電圧によるSOCV演算部
12 電池インピーダンスモデル部
12a 推定インピーダンステーブル
12b 推定インピーダンス電圧演算部
13 推定インピーダンス電圧静定判定部
14 実測電流積分によるSOCI演算部
15 SOC偏差判定部
16 SOC切替判定部
17 SOC切替部
20 SOC決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置であって、
前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算する発熱量演算部と、
前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算するSOC演算部と、
前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均ごとの前記電池セルの理論発熱量を前記SOCごとに格納するデータテーブルと、
前記データテーブルに格納された理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定する劣化判定部と
を備えることを特徴とする電池劣化判定装置。
【請求項2】
前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、
前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池劣化判定装置。
【請求項3】
前記データテーブルは前記電池セルの周囲温度ごとに複数の種類が用意され、
前記劣化判定部は、周囲温度に対応したデータテーブルを参照した前記初期特性の温度上昇値と前記実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の電池劣化判定装置。
【請求項4】
前記電池セルの周囲温度の範囲に応じて前記二次電池の劣化判定の実行可否を判断することを特徴とする請求項3に記載の電池劣化判定装置。
【請求項5】
前記データテーブルは前記電池セルの劣化度ごとに複数の種類が用意され、
前記劣化判定部は、劣化度ごとのデータテーブルを参照して前記二次電池の劣化度を判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池劣化判定装置。
【請求項6】
前記データテーブルは、前記電池セルの熱容量に起因する温度タイムラグを考慮した初期特性の温度上昇値のデータを格納し、
前記劣化判定部は、前記温度タイムラグが考慮された初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の電池劣化判定装置。
【請求項7】
前記データテーブルは、初回の計測期間における実測値と理論値との差をオフセット誤差として格納し、
前記劣化判定部は、前記データテーブルに格納されたオフセット誤差を考慮して劣化判定を行うことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電池劣化判定装置。
【請求項8】
二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置であって、
前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算する発熱量演算部と、
前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算するSOC演算部と、
前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均と前記SOCとに基づいて前記電池セルの理論発熱量を関数を用いて演算し、該演算した前記理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定する劣化判定部と
を備えることを特徴とする電池劣化判定装置。
【請求項9】
前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、
前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値である
ことを特徴とする請求項8に記載の電池劣化判定装置。
【請求項10】
二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置の電池劣化判定方法であって、
前記電池劣化判定装置の発熱量演算部が、前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算し、
前記電池劣化判定装置のSOC演算部が、前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算し、
前記電池劣化判定装置のデータテーブルが、前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均ごとの前記電池セルの理論発熱量を前記SOCごとに格納し、
前記電池劣化判定装置の劣化判定部が、前記データテーブルに格納された理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定する
ことを特徴とする電池劣化判定方法。
【請求項11】
前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、
前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値である
ことを特徴とする請求項10に記載の電池劣化判定方法。
【請求項12】
前記データテーブルは前記電池セルの周囲温度ごとに複数の種類が用意され、
前記劣化判定部は、周囲温度に対応したデータテーブルを参照した前記初期特性の温度上昇値と前記実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定する
ことを特徴とする請求項11に記載の電池劣化判定方法。
【請求項13】
前記電池セルの周囲温度の範囲に応じて前記二次電池の劣化判定の実行可否を判断することを特徴とする請求項12に記載の電池劣化判定方法。
【請求項14】
前記データテーブルは前記電池セルの劣化度ごとに複数の種類が用意され、
前記劣化判定部は、劣化度ごとのデータテーブルを参照して前記二次電池の劣化度を判定する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の電池劣化判定方法。
【請求項15】
前記データテーブルは、前記電池セルの熱容量に起因する温度タイムラグを考慮した初期特性の温度上昇値のデータを格納し、
前記劣化判定部は、前記温度タイムラグが考慮された初期特性の温度上昇値と実測温度上昇値とを比較して前記二次電池の劣化状態を判定する
ことを特徴とする請求項11に記載の電池劣化判定方法。
【請求項16】
前記データテーブルは、初回の計測期間における実測値と理論値との差をオフセット誤差として格納し、
前記劣化判定部は、前記データテーブルに格納されたオフセット誤差を考慮して劣化判定を行う
ことを特徴とする請求項10乃至15の何れか1項に記載の電池劣化判定方法。
【請求項17】
二次電池の劣化状態を判定する電池劣化判定装置の電池劣化判定方法であって、
前記電池劣化判定装置の発熱量演算部が、前記二次電池における電池セルのセル温度と周囲温度との測定値から該電池セルの実発熱量を演算し、
前記電池劣化判定装置のSOC演算部が、前記電池セルに流れる電流の電流積算値と該電池セルの電圧とに基づいてSOCを演算し、
前記電池劣化判定装置の劣化判定部が、前記二次電池に流れる電流をIとしたとき、一定時間におけるI平均と前記SOCとに基づいて前記電池セルの理論発熱量を関数により演算し、該演算した前記理論発熱量と前記実発熱量とを比較して、前記二次電池の劣化状態を判定する
ことを特徴とする電池劣化判定方法。
【請求項18】
前記理論発熱量は前記電池セルの初期特性の温度上昇値であり、
前記実発熱量は前記電池セルの実測温度上昇値である
ことを特徴とする請求項17に記載の電池劣化判定方法。
【請求項19】
請求項10乃至18の何れか1項に記載の電池劣化判定方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−271286(P2010−271286A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125664(P2009−125664)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】