説明

電池劣化診断装置

【課題】わざわざ各回路を駆動する電源を別に用意することなく、電池の劣化状態を簡単に精度よく診断する。
【解決手段】単位電池U1の直流電流を交流電流に変換して当該単位電池U1に供給する計測電流発生回路23と、交流電流を単位電池U1に流すことにより当該単位電池U1に発生した交流電圧を計測する差動増幅回路22と、単位電池U1に供給された交流電流の電流値と単位電池U1に発生した交流電圧の電圧値とに基づいて単位電池U1の内部抵抗を算出し劣化診断するマイクロコンピュータ24と、単位電池U1からの電力を駆動電力として計測電流発生回路23および差動増幅回路22に供給する電源回路21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の劣化状態を、電池の内部抵抗を計測することにより診断する電池劣化診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電池の残存容量や劣化状態などを判断するのに、電池の内部抵抗や電圧を計測して判断する装置(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
この種の装置では、電池自体の内部抵抗が小さく、なおかつ電位を有していることにより、電池の内部抵抗計測装置の多くは、その計測方法として交流四端子法を採用している。この交流四端子法を用いた電池内部抵抗計測装置では、電池に交流電流(I)を流し、それにより電池に発生する起電力(V)を交流電圧計で計測して、内部抵抗Rint=V/Iより求めている。これらの電池内部抵抗計測装置を構成する場合、交流電流を電池に流す回路と、流した交流電流で電池に変動が生じた電圧(交流電圧)を計測する回路とが必要となる。
【0003】
さらに測定対象の電池が、複数個直列に接続されて組電池を構成している場合等には、一組の交流電流を電池に流す回路と、流した交流電流で電池に変動が生じた電圧(交流電圧)を計測する回路と、を複数の電池に割り当て、当該複数の電池への電気的接続を機械的な動作により電気的接続を切り替えるリレーを設け、このリレーを切り替えて電池内部抵抗を計測する構成として、実効的な電池内部抵抗計測装置の設置コストを抑制することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の電池内部抵抗計測装置を構成する回路では、測定対象が電池あるいは組電池を構成する複数の電池のいずれであっても、各回路を駆動する駆動用電源が、計測する電池以外の電池、あるいは電源から供給される構成となっており、わざわざ別に電源を用意しなければならず、取り扱いが困難となっていた。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、わざわざ各回路を駆動する電源を別に用意することなく、電池の劣化状態を簡単に精度よく診断できる電池劣化診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の電池劣化診断装置は、電池の直流電流を交流電流に変換して当該電池に供給する計測電流発生回路と、前記交流電流を前記電池に流すことにより当該電池に発生した交流電圧を計測する差動増幅回路と、前記電池に供給された交流電流の電流値と前記電池に発生した交流電圧の電圧値とに基づいて前記電池の内部抵抗を算出し劣化診断する制御部と、前記電池からの電力を駆動電力として前記計測電流発生回路および前記差動増幅回路に供給する電源回路とを備えたことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、電源回路は、電池からの電力を駆動電力として計測電流発生回路および差動増幅回路に供給する。
これにより、計測電流発生回路は、電池の直流電流を交流電流に変換して当該電池に供給し、差動増幅回路は、前記交流電流を前記電池に流すことにより当該電池に発生した交流電圧を計測する。
これらの結果、制御部は、前記電池に供給された交流電流の電流値と前記電池に発生した交流電圧の電圧値とに基づいて電池の内部抵抗を算出し劣化診断する。
【0008】
この場合において、前記差動増幅回路が、その入力段に、前記電池の直流電力で駆動されて、前記電池に発生した交流電圧を増幅する電圧増幅回路を備えるようにするのが好ましい。
上記構成によれば、電源回路の基準電位の変動の影響を受けずに、交流電圧の計測することができ、より高精度に劣化診断を行える。
【0009】
また、前記電圧増幅回路は、前記交流電流の供給経路とは別個に設けられた前記交流電圧を計測するための計測線を介して前記電池から駆動電力が供給されているのが好ましい。
上記構成によれば、電圧増幅回路は、前記交流電流の供給経路上の抵抗成分により発生する同相成分電圧の影響を受けることなく、駆動され、計測が正確に行え、より正確な計測を行うことができる。
【0010】
さらに、前記電圧増幅回路は、前記交流電流が前記電池に供給されている場合に前記交流電圧成分を通過させるとともに、前記交流電流が前記電池に供給されていない場合に前記電池の直流電圧を分圧するハイパス・分圧回路と、前記ハイパス・分圧回路を通過した信号を所定の増幅率で増幅して前記交流電圧信号あるいは直流電圧信号として出力する演算増幅器と、を備えるのが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、電圧増幅回路のハイパス・分圧回路は、交流電流が電池に供給されている場合に交流電圧成分を通過させるとともに、交流電流が電池に供給されていない場合に電池の直流電圧を分圧する。
演算増幅器は、ハイパス・分圧回路を通過した信号を所定の増幅率で増幅して交流電圧信号あるいは直流電圧信号として出力する。
したがって、差動増幅回路は、計測電流発生回路により交流電流が電池に供給されていない場合に、当該電池の直流電圧を計測する直流電圧計測回路として機能することとなり、切替回路等を用いること無く、差動増幅回路を交流電圧計測および直流電圧計測で共用することができ、簡易な構成で、電池劣化診断装置に交流電圧計測及び直流電圧計測を行わせることができる。
【0012】
さらにまた、前記電池が複数個直列に接続されて組電池を構成し、前記計測電流発生回路、前記差動増幅回路、前記制御部および前記電源回路が一体化されて診断ユニットを構成し、前記診断ユニットが前記組電池を構成する電池毎に接続されているのが好ましい。
上記構成によれば、各電池の劣化状態の診断は、各電池に接続された診断ユニットが個々に行うので、診断ユニットを複数の電池で共用する場合と比較して、機械的リレーなどの電気的な接続を切り替える手段を設ける必要が無く、長期にわたって、信頼性高く、電池劣化状態を診断することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源を別に用意することなく、電池の劣化状態を簡単に精度よく診断できる。
また、一般的に用いられるオペアンプで構成した内部差動増幅回路を用いることで、低コストで回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る電池劣化診断装置が用いられる蓄電ユニットシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】電池劣化状態診断装置の概要構成ブロック図である。
【図3】電圧増幅回路の回路構成例の説明図である。
【図4】実施形態の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電池劣化診断装置が用いられる蓄電ユニットシステムの概略構成を示すブロック図である。
蓄電ユニットシステム10は、複数の単位電池U1、U2、U3、…、Unが直列に接続された蓄電ユニット11と、商用交流電源12から電力供給を受け、交流直流変換を行って蓄電ユニット11に充電電力を供給する整流器(充電器)13と、整流器13または蓄電ユニット11から電力が供給される負荷14と、蓄電ユニット11を構成する全ての単位電池U1、U2、U3、…、Unのそれぞれに接続されて、当該電池の電池状態を判別するための端子電圧および内部抵抗を測定する複数の電池劣化状態診断ユニット15−1〜15−nと、を備えている。
ここで、各単位電池U1、U2、U3、…、Unは、鉛蓄電池として構成されている。また、整流器13は、定電圧定電流形の整流器となっている。さらに、個々の単位電池U1、U2、U3、…に対しては、各電池劣化状態診断ユニット15−1〜15−nが電池劣化状態診断装置として機能するとともに、蓄電ユニットシステム10に対しては、すべての電池劣化状態診断ユニット15−1〜15−nが一つの電池劣化状態診断装置として機能している。
【0016】
図2は、電池劣化状態診断装置の概要構成ブロック図である。
ここで、電池劣化状態診断ユニット15−1〜15−nは、同一構成であるので、電池劣化状態診断ユニット15−1を例として説明する。
電池劣化状態診断ユニット15−1は、測定対象の単位電池U1からの電力供給を受けて電源安定化を行って電力供給を行う電源回路21と、単位電池U1に発生した起電力(交流電圧)あるいは単位電池U1の直流電圧を測定する差動増幅回路22と、電源回路21からの電力供給を受けて動作し、単位電池U1の内部抵抗を測定するための計測電流を発生する計測電流発生回路23と、電源回路21からの電力供給を受けて動作し、差動増幅回路22の出力信号に基づいて、単位電池U1の内部抵抗及び直流電圧を検出するとともに、計測電流発生回路23を制御するマイクロコンピュータ24と、を備えている。
【0017】
上記構成において、差動増幅回路22は、単位電池U1の正極端子および負極端子に接続され、単位電池U1から直接的に電力の供給を受けて、当該単位電池U1の端子間電圧を測定し、増幅して電圧増幅信号を出力する電圧増幅回路25と、電源回路21からの電力供給を受けて、入力された電圧増幅信号の電圧と、基準電圧との差電圧を検出して単位電池U1に発生した起電力(交流電圧)あるいは単位電池U1の直流電圧を測定する内部差動増幅回路26と、を備えている。
ここで、差動増幅回路22として、電圧増幅回路25及び内部差動増幅回路26の2段増幅回路構成を採っている理由について説明する。
単位電池U1として大型の鉛蓄電池を用いた場合、内部抵抗が0.2mΩ以下となる場合がある。その場合、例えば、1Aの電流を流しても発生する起電力が0.2mVと小さいため、電池劣化状態診断装置には、高い増幅率と安定した性能の交流差動増幅器が必要となる。
【0018】
また、単位電池U1へ端子T1を介した接続線L1あるいは端子T4を介した接続線L2は、抵抗値を有している。なお、端子T2および端子T3を介した接続線も抵抗値を有しているが、これらの接続線にはほとんど電流が流れないため、問題とはならない。
具体的には、単位電池U1へ端子T1を介した接続線L1あるいは端子T4を介した接続線L2として、0.3cm2の電線で20cm長のものを用いた場合、その抵抗値は、20mΩ程度あり、更に単位電池Uに接続線L1、L2を接続するための接触抵抗を考慮すると、実質的な抵抗値RX1、RX2は、30mΩになる場合がある。
このため、1Aの交流電流IACを計測電流として接続線L1、L2を介して流したとすると、低電位側(−)側の電池接続線には30mΩ×1A=30mVの電圧降下が発生し、電源回路21の低電位側(−)側と電圧変動が生じることとなる。
【0019】
このように、発生起電力が0.2mVに対し電源電圧変動が30mVあるため、差動増幅回路22としては、高い同相入力除去比(CMRR)の性能が求められる。
例えば、電源電圧変動の影響を1%以内に抑えたい場合、0.2mV×0.01=0.002mVとなり、30/0.002=15000(83.5dB)の同相入力除去比(CMRR)が必要となる。この仕様を満足するには、CMRRの高い高性能の差動増幅回路22が必要となり、コストアップとなってしまう。
【0020】
ところで、CMRRの性能の優れた差動増幅回路は一般に高価であることが多いが、CMRR性能が50dB程度であれば一般的に用いられるオペアンプにて差動増幅回路が構成でき、安価になる。
そこで、本実施形態においては、差動増幅回路22を内部差動増幅回路26の前段に上述の例の場合、33.5dBの増幅率を有する電圧増幅回路25を設けた構成とし、電圧増幅回路25の電源を検出線L3、L4を介して単位電池U1から供給することで、電圧増幅回路25の出力が、接続線L1、L2の配線抵抗による同相入力電圧の影響を受けない回路構成を採っている。
【0021】
このような構成によれば、組電池を構成する単位電池の劣化を監視するにあたり、CMRRの低い(本例では、CMRR=50dB)内部差動増幅回路26を用いたとしても、所望の増幅率を有する差動増幅回路22を構成でき、簡易かつ安価な構成にもかかわらず、差動増幅回路22全体では、高精度で内部抵抗値および直流電圧を測定することができるのである。
また、計測電流発生回路23は、マイクロコンピュータ24の制御下で交流電流である計測電流の発生を制御する計測電流発生制御回路27と、電流制御用のトランジスタQと、流れた交流電流量を検出するための電流検出抵抗Rと、を備えている。
【0022】
上記構成において、通常動作時においては、蓄電ユニット11は、商用交流電源12からの電力を整流器13により変換して充電されるとともに、負荷14も整流器13から電力が供給される。
ここで、電池劣化状態診断ユニット15−1〜15−nのそれぞれのマイクロコンピュータ24は、対応する各単位電池U1、U2、U3、…、Unの端子電圧(直流電圧)を所定の直流電圧測定時間(例えば、10分)ごとに測定し、所定の内部抵抗測定時間毎(例えば、1時間)に計測電流発生回路23を制御して計測電流を発生させ各単位電池U1、U2、U3、…の内部抵抗を測定する。
一方、停電時には、商用交流電源12からの電力の供給がなされないので、蓄電ユニット11に蓄えた電力が負荷14に供給される。
【0023】
図3は、電圧増幅回路の回路構成例の説明図である。
電圧増幅回路25は、バイアス抵抗及び分圧抵抗の機能を兼ねる抵抗R1と、交流成分を通過させるためのハイパスフィルタを構成するコンデンサC1と、コンデンサC1に直列に接続され、分圧抵抗およびハイパスフィルタの機能を兼ねる抵抗R2と、オペアンプOPと、オペアンプOPの入力抵抗を構成する抵抗R3と、オペアンプOPのフィードバック抵抗を構成する抵抗R4と、を備えている。
この場合に、オペアンプOPの駆動電源は、測定対象の単位電池U1から供給されており、オペアンプOPは電源回路21からの電力供給を受けていないため、電圧増幅回路25の出力は、交流電流供給経路における配線抵抗RX1、RX2に起因して発生する同相入力電圧の影響を受けないこととなる。
【0024】
次に実施形態の動作を説明する。
図4は、実施形態の動作説明図である。
まず、電池劣化状態診断ユニット15−1の電源回路21は、測定対象の単位電池U1からの電力供給を受けて電源安定化を行って差動増幅回路22の内部差動増幅回路26、マイクロコンピュータ24及び計測電流発生回路23の計測電流発生制御回路27に電力供給を行う。
これにより、マイクロコンピュータ24は、図4に時刻t1〜時刻t2の期間として示す直流電圧測定期間においては、直流電圧測定制御を行う。
【0025】
すなわち、マイクロコンピュータ24は、計測電流発生回路23の計測電流発生制御回路27を介して、交流電流IACを流さないようにする。
具体的には、マイクロコンピュータ24は、計測電流発生回路23の計測電流発生制御回路27によりトランジスタQをオフ状態とする。
これにより、計測端子T1及び計測端子T4を介して単位電池U1に、交流電流が流れることはない。
このように、単位電池U1に交流電流を流さない場合には、定常状態で電圧増幅回路25を構成するコンデンサC1を流れる電流はないため、電圧増幅回路25はコンデンサC1が設けられていない場合と等価となる。
【0026】
このため、電圧増幅回路25を構成する抵抗R1および抵抗R2は、単純に直列接続されて、単位電池U1に並列に接続された状態となり、単位電池U1の直流電圧を分圧する分圧抵抗として機能することとなる。
この結果、オペアンプの非反転入力端子には、単位電池U1の直流電圧が所定の分圧比[=R1/(R1+R2)]で分圧された電圧が入力され、オペアンプOPの出力電圧VoutDCは、次式の通りとなる。
VoutDC=(R1/(R1+R2))×R4/R3
【0027】
これにより、内部差動増幅回路26の一方の入力端子には、VoutDCが入力され、単位電池U1の基準電位(基準電圧)との差電圧がマイクロコンピュータ24の図示しないA/Dコンバータに入力される。
これにより、マイクロコンピュータ24は、単位電池U1の直流電圧を測定して、単位電池U1が劣化しているか否かを診断して、単位電池U1の直流電圧が基準最低電圧より低かったり、基準最高電圧より高かった場合には、電池が異常あるいは劣化していると判別して、その旨を図示しないインジケータで表示したり、図示しない通信線を介して図示しない集中制御装置に通知したりすることとなる。
【0028】
より具体的には、R1=1MΩ、R2=30kΩ、R3=1kΩ、R4=20kΩ、C1=1μFとした場合について考察すると、直流的には、単位電池U1の電圧が2Vの場合は、2V×(30k/(1M+30k))×20=1.165Vとなる。この値1.165Vと、実際に入力された出力電圧VoutDCを比較することで、直流電圧の計測値がマイクロコンピュータ24により求められることとなる。
【0029】
これに対し、マイクロコンピュータ24は、図4に時刻t2〜時刻t3の期間として示す内部抵抗測定期間においては、内部抵抗測定制御を行う。
すなわち、マイクロコンピュータ24は、計測電流発生回路23の計測電流発生制御回路27を介して、交流電流IACを流すようにする。
具体的には、マイクロコンピュータ24は、計測電流発生回路23の計測電流発生制御回路27によりトランジスタQを所定の周期でオン/オフして、脈流である交流電流を流し、電流検出抵抗Rを介して、計測電流である交流電流の電流量を制御する。
この結果、計測端子T1および計測端子T4を介して、交流電流IACを単位電池U1に流すこととなる。
【0030】
このとき、電圧増幅回路25を構成しているコンデンサC1および抵抗R2は、RC構成のハイパスフィルタとして機能する。さらに抵抗R1は、バイアス抵抗として機能し、交流電流IACは、電圧VoutDCを零クロス電圧とする波形を描くこととなる。
すなわち、交流に対しては、入力側がR1とC1との合成インピーダンスZ1となるため、オペアンプOPの出力電圧VoutACは、次式の通りとなる。
VoutAC=(Z1÷(R1+R2))×R4/R3となる。
ここで、Z1=(R1/2πfC)÷(R1+1/2πfC)
これにより、内部差動増幅回路26の一方の入力端子には、オペアンプOPの出力電圧VoutACが入力され、単位電池U1の基準電位(基準電圧)との差電圧がマイクロコンピュータ24の図示しないA/Dコンバータに入力される。
【0031】
これにより、マイクロコンピュータ24は、単位電池U1の交流電圧を測定して、単位電池U1が劣化しているか否かを診断する。すなわち、求めた単位電池U1の内部抵抗値が所定の基準内部抵抗値より高い値を示している場合には、電池が異常あるいは劣化していると判別して、その旨を図示しないインジケータで表示したり、図示しない通信線を介して図示しない集中制御装置に通知したりすることとなる。
ここで、交流電流の周波数を50Hzとした場合、コンデンサC1のインピーダンスは、約3185Ωとなり、抵抗R1の抵抗値(=1MΩ)に対して無視できる十分小さなレベルとなる。
【0032】
内部抵抗計測時において、交流電流発生回路により交流電流が流された場合、直流電圧測定で得られる電圧レベル(上述の例の場合、VoutDC=1.165V)を中心に交流成分信号が重畳される。このときの電圧変動値VACを測定し、この電圧変動値VAC(あるいはその実効値VACreal)及び計測電流発生回路23により流した交流電流IACの電流量を用いて演算することで、マイクロコンピュータ24は、内部抵抗値Rintを次式に基づいて求めることができる。
Rint=VAC/IAC
または、
Rint=VACreal/IAC
【0033】
そして、マイクロコンピュータ24は、求めた単位電池U1の内部抵抗値Rintが所定の基準内部抵抗値より高い値を示している場合には、電池が異常あるいは劣化していると判別して、その旨を図示しないインジケータで表示したり、図示しない通信線を介して図示しない集中制御装置に通知したりすることとなる。
以上の図4の説明においては、説明の簡略化のため、単位電池U1の直流電圧測定と、内部抵抗測定と、を連続して行っていたが、実際には、直流電圧測定の周期(例えば、周期10分)と、内部抵抗測定の周期(例えば、周期24時間)とは、異なるため、それぞれ、独立して測定が行われる。
【0034】
以上の説明のように、本実施形態によれば、電源を計測する電池より供給する内部抵抗・電圧計測装置において、電池接続線の抵抗による同相電圧によって発生する誤差を抑制するために、高いCMRRを有する高性能な差動増幅器を用いることなく、通常のオペアンプで構成した内部差動増幅回路26を用いて低コストで回路を構成することができる。
さらに差動増幅回路22は、内部抵抗測定における交流電圧測定回路と、直流電圧測定における直流電圧測定回路との機能を兼用することができ、これらの回路の双方を別途有し、一つのA/Dコンバータによりアナログ/ディジタル変換を行う場合のように、回路切替器(入力切替回路)を設けることなく、回路を構成することができる。
【0035】
さらにまた、本実施形態によれば、内部差動増幅回路26として、高いCMRR性能を有する差動増幅回路を用いる必要が無いので、差動増幅回路22、ひいては、各診断ユニット15−1〜15−nを安価に構成できる。
したがって、例えば、単位電池U1〜Ucが複数個直列に接続されて組電池を構成し、計測電流発生回路23、差動増幅回路22、マイクロコンピュータ24および電源回路21が一体化されて診断ユニット15−1〜15−nを構成し、これらの診断ユニット15−1〜15−nが組電池を構成する単位電池U1〜Un毎に接続することが可能となり、電池劣化状態診断ユニットを機械的なリレーなどにより切り替えて用いる必要が無く、長期にわたって、信頼性の高い電池劣化状態診断、ひいては、信頼性の高い蓄電ユニットシステムを提供することが可能となる。
以上の説明においては、複数の単位電池が直列に接続されて蓄電ユニットを構成していたが、複数の単位電池を直列に接続した組電池を複数組並列に接続して蓄電池ユニットを構成するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 蓄電ユニットシステム
11 蓄電ユニット
12 商用交流電源
13 整流器
14 負荷
15−1〜15−n 電池劣化状態診断ユニット(電池劣化状態診断装置)
21 電源回路(電池劣化状態診断ユニット)
22 差動増幅回路(電池劣化状態診断ユニット)
23 計測電流発生回路(電池劣化状態診断ユニット)
24 マイクロコンピュータ(制御部)
25 電圧増幅回路(差動増幅回路、電池劣化状態診断ユニット)
26 内部差動増幅回路(差動増幅回路、電池劣化状態診断ユニット)
27 計測電流発生制御回路(電池劣化状態診断ユニット)
OP オペアンプ(電圧増幅回路、電池劣化状態診断ユニット)
Q トランジスタ(計測電流発生回路、電池劣化状態診断ユニット)
C1 コンデンサ(ハイパス・分圧回路、電池劣化状態診断ユニット)
R1 抵抗(ハイパス・分圧回路、電池劣化状態診断ユニット)
R2 抵抗(ハイパス・分圧回路、電池劣化状態診断ユニット)
RX1 配線抵抗
U1〜Un 単位電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の直流電流を交流電流に変換して当該電池に供給する計測電流発生回路と、前記交流電流を前記電池に流すことにより当該電池に発生した交流電圧を計測する差動増幅回路と、前記電池に供給された交流電流の電流値と前記電池に発生した交流電圧の電圧値とに基づいて前記電池の内部抵抗を算出し劣化診断する制御部と、前記電池からの電力を駆動電力として前記計測電流発生回路および前記差動増幅回路に供給する電源回路とを備えたことを特徴とする電池劣化診断装置。
【請求項2】
前記差動増幅回路が、その入力段に、前記電池の直流電力で駆動されて、前記電池に発生した交流電圧を増幅する電圧増幅回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電池劣化診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の電池劣化診断装置において、
前記電圧増幅回路は、前記交流電流の供給経路とは別個に設けられた前記交流電圧を計測するための計測線を介して前記電池から駆動電力が供給されていることを特徴とする電池劣化診断装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の電池劣化診断装置において、
前記電圧増幅回路は、前記交流電流が前記電池に供給されている場合に前記交流電圧成分を通過させるとともに、前記交流電流が前記電池に供給されていない場合に前記電池の直流電圧を分圧するハイパス・分圧回路と、
前記ハイパス・分圧回路を通過した信号を所定の増幅率で増幅して前記交流電圧信号あるいは直流電圧信号として出力する演算増幅器と、
を備えたことを特徴とする電池劣化診断装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池劣化診断装置において、
前記電池が複数個直列に接続されて組電池を構成し、
前記計測電流発生回路、前記差動増幅回路、前記制御部および前記電源回路が一体化されて診断ユニットを構成し、
前記診断ユニットが前記組電池を構成する電池毎に接続されていることを特徴とする電池劣化診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−52831(P2012−52831A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193569(P2010−193569)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】