説明

電池及び電池の超音波接合方法

【課題】超音波接合を用いて、リードの低電気抵抗化と超音波接合強度の確保とを両立することができる電池及び電池の超音波接合方法。
【解決手段】容器12と、容器内に収納され、正極及び負極を含む電極群1と、電極群の正極または負極から複数延出されて金属箔が重ね合わされた集電タブ2a,2bと、集電タブの少なくとも一方に超音波接合によって接合されるリード5a〜5c,6a〜6cと、容器の開口部を塞ぐ蓋11と、蓋に設けられ、リードを介して集電タブと接続される外部端子9,10とを備え、リードは、集電タブとの超音波接合部から外部端子へ向かう途中において断面積が増加し、リードの集電タブと向き合っている面側は平面からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池等の電池及び電池の超音波接合方法に関し、特に、非水電解質二次電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載する車載用二次電池、電力平準化に使用される電力貯蔵用二次電池として好適な、急速充電および高出力放電が可能でかつサイクル性能に優れた非水電解質二次電池が開発されている。
【0003】
このような二次電池は、例えば特許文献1に示すように、帯状の正極と負極とを、セパレータを介して捲回し扁平状にした電極群と、電極群を浸潤する電解液とが電池容器に収容された構造となっている。
【0004】
また、この電極群の前後の両端部には、正極の集電体となる金属箔と負極の集電体となる金属箔が捲回によって重なり合って突出し、図7に示すように集電タブ2a,2bを形成している。集電タブ2a,2bには、電流を取り出す外部端子へと電気的に連通するリード5が接続される。
【0005】
リード5は、発電要素の前後の端部に突出する集電タブ2a,2bの金属箔に重ね合わせて超音波接合により接続される。ただし、リード5と集電タブ2a,2bの金属箔とを直接、超音波接合したのでは、薄い金属箔が破断したり、リード5の位置がずれて接続されたりするおそれがある。
【0006】
そこで、これらの集電タブ2a,2bの金属箔をクリップ状の板4a,4bで挟んで、リード5と重ね合わせ、その上下から超音波接合を行っていた。この場合、リード5としては、集電タブ2a,2bとの接続部から外部端子もしくは外部端子へと連通する部品までの間の断面積が均一な板材が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−26490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、リード5には、超音波接合を容易にするために、矩形断面の板材が用いられる。電池の急速充電性能や高出力放電性能を向上するためには、電極群から外部端子の間の電気抵抗を低下させる必要がある。このためには、リード5の断面積を増加させる必要がある。
【0009】
製品の制約上、リード5の断面積を電極群の捲回軸方向、すなわち幅方向へ拡大することが困難な場合、電極群の捲回軸方向と直交する方向、すなわち厚さ方向に拡大させることになる。
【0010】
しかしながら、リード5が厚くなると、集電タブ2a,2bとの接続時に印加する超音波振動に対する剛性が増加し、接合に必要な超音波振動が伝達しにくくなる。その結果、集電タブ2a,2bの金属箔とリード5が十分に接合されず、必要な接合強度の確保が困難になる。
【0011】
また、集電タブ2a,2bの金属箔とリード5とを接合する方法として、前述した超音波接合以外に、レーザ溶接が知られている。このレーザ溶接によれば、レーザを用いて集電タブ2a,2bの金属箔とリード5とを接合するが、レーザ接合部においては、レーザの熱によりセパレータがダメージを受ける懸念からレーザの出力を大きくできず、接合強度を確保できなくなるおそれがあった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、超音波接合を用いて、リードの低電気抵抗化と超音波接合強度の確保とを両立することができる電池及び電池の超音波接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、実施形態に係る電池によれば、容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、前記電極群の前記正極または前記負極から複数延出されて金属箔が重ね合わされた集電タブと、前記集電タブの少なくとも一方に超音波接合によって接合されるリードと、前記容器の開口部を塞ぐ蓋と、前記蓋に設けられ、前記リードを介して前記集電タブと接続される外部端子とを備え、前記リードは、前記集電タブとの超音波接合部から外部端子へ向かう途中において断面積が増加し、前記リードの前記集電タブと向き合っている面側は平面からなることを特徴とする。
【0014】
また、実施形態に係る電池の超音波接合方法によれば、正極と負極とを含む電極群の前記正極または前記負極から複数延出されて金属箔が重ね合わされた集電タブを形成する集電タブ工程と、前記集電タブの一方の面側に、前記集電タブと外部端子とを接続するリードを配置し、前記リードが前記集電タブの金属箔との超音波接合部から外部端子へ向かう途中において断面積が増加し、前記リードの前記集電タブと向き合っている面側は平面からなるリード工程と、前記集電タブの他方の面側にステージを配置するステージ工程と、超音波振動部により前記リードと前記集電タブの金属箔と前記ステージとに荷重をかけて超音波振動させることにより前記リードと前記集電タブの金属箔とを超音波接合する超音波接合工程とを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る電池の構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る電池の正極リードと正極集電タブとの接続部付近の斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る電池のリード先端部と蓋と外部端子との間の断面図である。
【図4】リードと集電タブとの超音波接合を行うための断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る電池の断面積を漸増させた正極リードと正極集電タブとの接続部付近の斜視図である。
【図6】第3の実施形態に係る電池の断面積の変化部に曲面を設けた正極リードと正極集電タブとの接続部付近の斜視図である。
【図7】従来の電池の構成を示す正極集電タブ付近の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の電池及び電池の超音波接合方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施の形態に係わる電池の構成を示す斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る電池の正極リードと正極集電タブとの接続部付近の斜視図である。図1に示す電池は、非水電解質からなる電池であって、容器12と、容器12内に収納され、正極及び負極を含む電極群1の正極または負極から複数延出されて重ね合わされた集電タブ2a,2b(3a,3b)と、集電タブ2a,2b(3a,3b)の少なくとも一方に超音波接合によって接合されるリード5a〜5c(6a〜6c)と、容器12の開口部を塞ぐ蓋11と、蓋11に設けられ、リード5a〜5c(6a〜6c)を介して集電タブ2a,2b(3a,3b)と接続される外部端子9(10)とを備えている。
【0018】
リード5a〜5c(6a〜6c)は、集電タブ2a,2b(3a,3b)との超音波接合部から外部端子9,10へ向かう途中において断面積が増加する。
【0019】
容器12は、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金などの金属板を成形してなる。電極群1は、例えば、シート状の正極と、シート状の負極とを、図示しないセパレータを間にして渦巻状に捲回したのち、容器12へ収納できる扁平状に成形して作製される。
【0020】
正極は、正極活物質をアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔からなる集電体に塗着することにより作製される。図示しない非水電解液は容器12内に収容されており、電極に含浸されている。正極集電タブ2a,2bは、正極の集電体を部分的に延出させたものとなっている。
【0021】
また、負極集電タブ3a,3bは、負極の集電体を部分的に延出させたものとなっている。正極リード5a〜5c及び負極リード6a〜6cは、それぞれの極の集電タブの金属箔に重ね合わせて、正極接続部7及び負極接続部8において、超音波接合により接続される。
【0022】
接続時に集電タブ2a,2b(3a,3b)の薄い金属箔が破断したり、重なり合った集電タブ2a,2b(3a,3b)の位置がずれたりすることを防ぐため、集電タブ2a,2b(3a,3b)の金属箔をクリップ状の板4a,4bで挟んでリード5a〜5c(6a〜6c)と重ね合わせ、その上下から超音波溶接を行う。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係る電池のリード先端部50と蓋11と外部端子9との間の断面図である。リード5aのリード先端部50は、外部端子9に電気的に接続されている。リード先端部50と蓋11との間にはプラスチック13が配置され、外部端子9と蓋11との間にはプラスチック14が配置され、外部端子9と蓋11とが電気的に絶縁されている。なお、リード先端部50と蓋11と外部端子10との間も同様である。
【0024】
リード5a〜5cは、正極集電タブ2a,2bと正極外部端子9とを電気的に接続する。リード6a〜6cは、負極集電タブ3a,3bと負極外部端子10とを電気的に接続する。リードは、厚さの厚いリード5a(6a)とリードの断面積が階段状に変化する階段部5b(6b)と厚さの薄いリード5c(6c)とからなる。厚さの薄いリード5c(6c)には、集電タブ2a,2bとの超音波接合部(正極接続部7及び負極接続部8)が形成されている。
【0025】
即ち、超音波接合部が形成されたリード5c(6c)の厚さを薄くすることで、リード5c(6c)と集電タブ2a,2b(3a,3b)との接合に必要な超音波振動を伝達しやすくなる。
【0026】
また、超音波接合部の付近のリード5c(6c)を薄くし、超音波接合部から外部端子9(10)へと向かう途中で厚さを増したリード5a(6a)と変えることで、集電タブ2a,2b(3a,3b)から外部端子9(10)へと電流を伝達する経路の、断面積の減少による電気抵抗の上昇を最小限に抑えることができる。この際、断面積が増加する箇所が、超音波接合部に近いほど、電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0027】
図4は、リード5と集電タブ6との超音波接合を行うための断面図である。図4を用いて電池の超音波接合方法を説明する。ここでは、集電タブ2aとリード5cとの超音波接合について説明する。
【0028】
なお、集電タブ2bとリード5cとの超音波接合については、超音波振動部15を集電タブ2b側に移動させて配置し、集電タブ2aとリード5cとの超音波接合と同様な超音波接合を行えばよい。
【0029】
まず、正極と負極とを含む電極群の正極または負極から複数延出されて金属箔が重ね合わされた集電タブ2aを形成する。そして、集電タブ2aの金属箔をクリップ板4aで挟む。
【0030】
次に、集電タブ2aの一方の面側に、集電タブ2aと外部端子9とを接続する厚さの薄いリード5cを配置する。さらに、集電タブ2aの他方の面側にステージ16を配置する。次に、超音波振動部15によりリード5cと集電タブ2aの金属箔とクリップ板4aとステージ16とに荷重をかけて超音波振動させることによりリード5cとクリップ板4aと集電タブ2aの金属箔とを超音波接合する。
【0031】
このように超音波溶接によれば、薄い厚さの集電タブ2aの金属箔を積層して一括して溶接することができる。また、大きな荷重をかける必要があるが、この大きな荷重をステージ16で受けることができる。また、超音波溶接を用いているので、レーザ溶接のような熱によるダメージがなくなる。
【0032】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る電池の断面積を漸増させた正極リード5a,5c,5dと正極集電タブ2a,2bとの接続部付近の斜視図である。図5に示す第2の実施形態では、リードは、厚さが厚いリード5aと、厚さの薄いリード5cと、リード5cからリード5aへ断面積が徐々に増加するテーパ部5dとからなる。
【0033】
このような第2の実施形態に係る電池にあっても、テーパ部5dによりリード5cからリード5aへ断面積が徐々に増加するので、第1の実施形態に係る電池の効果と同様な効果が得られる。
【0034】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る電池の断面積の変化部に曲面を設けた正極リードと正極集電タブとの接続部付近の斜視図である。図6に示す第3の実施形態では、リードは、厚さが厚いリード5aと、厚さの薄いリード5cと、リード5cからリード5aへ断面積が増加する曲面部5eとからなる。
【0035】
このような第3の実施形態に係る電池にあっても、曲面部5eによりリード5cからリード5aへ断面積が増加するので、第1の実施形態に係る電池の効果と同様な効果が得られる。
【0036】
このように第1乃至第3の実施形態に係る電池によれば、集電タブとリードとの超音波接合は、リードの断面積の小さい箇所で行うことができ、超音波接合部へ必要な超音波振動を伝達しやすくなる。また、超音波接合部から外部端子の間ではリードの断面積を増大することにより、電気抵抗の増加を抑えることができる。
【0037】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1…電極群 2a,2b…正極集電タブ 3a,3b…負極集電タブ 4…クリップ板 5a〜5e…正極リード 6a〜6e…負極リード 7…正極接続部 8…負極接続部 9…正極外部端子 10…負極外部端子 11…蓋 12…容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、
前記電極群の前記正極または前記負極から複数延出されて金属箔が重ね合わされた集電タブと、前記集電タブの少なくとも一方に超音波接合によって接合されるリードと、
前記容器の開口部を塞ぐ蓋と、
前記蓋に設けられ、前記リードを介して前記集電タブと接続される外部端子とを備え、
前記リードは、前記集電タブとの超音波接合部から外部端子へ向かう途中において断面積が増加し、
前記リードの前記集電タブと向き合っている面側は平面からなることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記リードは、前記超音波接合部から前記外部端子へ向かう途中において断面積が階段状に増加する階段部を有することを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記リードは、前記超音波接合部から前記外部端子へ向かう途中において断面積が徐々に増加するテーパ部を有することを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記リードは、前記超音波接合部から前記外部端子へ向かう途中において断面積が徐々に増加する曲面部を有することを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項5】
前記リードには前記集電タブの前記金属箔を挟むように設けられたクリップ板が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電池。
【請求項6】
正極と負極とを含む電極群の前記正極または前記負極から複数延出されて金属箔が重ね合わされた集電タブを形成する集電タブ工程と、
前記集電タブの一方の面側に、前記集電タブと外部端子とを接続するリードを配置し、前記リードが前記集電タブの金属箔との超音波接合部から外部端子へ向かう途中において断面積が増加し、前記リードの前記集電タブと向き合っている面側は平面からなるリード工程と、
前記集電タブの他方の面側にステージを配置するステージ工程と、
超音波振動部により前記リードと前記集電タブの金属箔と前記ステージとに荷重をかけて超音波振動させることにより前記リードと前記集電タブの金属箔とを超音波接合する超音波接合工程と、
を含むことを特徴とする電池の超音波接合方法。
【請求項7】
前記リードは、前記超音波接合部から前記外部端子へ向かう途中において断面積が階段状に増加する階段部を有することを特徴とする請求項6記載の電池の超音波接合方法。
【請求項8】
前記リードは、前記超音波接合部から前記外部端子へ向かう途中において断面積が徐々に増加するテーパ部を有することを特徴とする請求項6記載の電池の超音波接合方法。
【請求項9】
前記リードは、前記超音波接合部から前記外部端子へ向かう途中において断面積が徐々に増加する曲面部を有することを特徴とする請求項6記載の電池の超音波接合方法。
【請求項10】
前記集電タブの金属箔をクリップ板で挟むクリップ板工程を含み、
前記超音波接合工程は、超音波振動部により前記リードと前記集電タブの金属箔と前記ステージと前記クリップ板とに荷重をかけて超音波振動させることにより前記リードと前期クリップ板と前記集電タブの金属箔とを超音波接合することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の電池の超音波接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101977(P2013−101977A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−35991(P2013−35991)
【出願日】平成25年2月26日(2013.2.26)
【分割の表示】特願2010−210760(P2010−210760)の分割
【原出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】