説明

電池接続具

【課題】二次電池を接続して大電流の充放電が可能な二次電池ユニットを構成するのに用いる電池接続具において、熱容量を増大すると同時に放熱時定数を小さくする。
【解決手段】電池接続具Jは、電池セルCの電極端子tを電気的に接続する本体部1と、本体部1の両側縁部1a,1aに上方へ立ち上がるよう設けた起立面部2,2と、起立面部2,2の外側表面に設けた放熱部3とで構成され、各放熱部3は、所定間隔を置いて配置した上下方向に対し実質的に平行な複数枚の放熱板4より成る。電池接続具Jに通電すると、放熱部3から放散される熱で、各放熱板4間の空気が暖められ、上昇気流を生成する。その結果、放熱部3に新鮮空気が供給されることになるので、電池接続具Jの放熱が促進される。高い放熱効率が得られるから。熱容量を大きくしても熱が残留することがなくなり、通電時の温度上昇幅を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池を接続して、大電流の充放電が可能な二次電池ユニットを構成するのに用いる電池接続具に関し、詳しくは、電池接続具の熱容量を増大すると同時に放熱時定数を小さくすることにより、通電時における電池接続具の温度上昇幅を抑えると共に、放熱効率を向上させることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
充電・放電が可能な二次電池は様々な分野で利用されている。また、単体電池では所要の容量が得られない場合、多数の二次電池を接続して大容量化した二次電池ユニットの形態で用いることも行なわれる。特にエネルギー密度の高いリチウム電池やリチウムイオン電池から成る二次電池ユニットは、比較的小型・軽量でありながら高入出力が可能であるので、電気自動車の駆動用電源として利用されている。さらに高電圧・大電流での用途として、直流電気鉄道における電力補完システムへの適用が検討されている。
【0003】
電力補完システムは、変電所間における電圧低下を補償するためのものであって、図6に示すように、主として、二次電池ユニットから成る蓄電装置と、蓄電装置の充放電を制御する制御装置とから構成される。また図7に示す如く、蓄電装置を構成する二次電池ユニット20は、整列配置した多数の二次電池セルCの各端子t,tを順に、銅などの金属製接続具10で直列に接続したものである。かかる電力補完システムは、変電所間の電圧降下が起こりやすい位置において、電力供給用の架線及びレール(図示せず)に対し充電・放電が可能なように接続される。電車が駅プラットホームに停車する際などに回生ブレーキで発生させた電力を二次電池ユニットに充電して貯えることで、回生失効を回避すると同時に、架線電圧の上昇を抑制する。また、電車が力行する際に架線電圧が設定値以下に降下したときは、二次電池ユニットに貯えておいた電力を架線へ供給する。このような機構により、回生電力を無駄なく有効に利用することができ、その結果、新たに電力を購入しなくても、変電所間における電圧低下を補償することが可能となっている。
【0004】
ところで、二次電池ユニット20に大電流を流すと、内部抵抗で電池セルCが発熱し、過熱による電池性能の低下を招いたり装置の損傷をもたらしたりするおそれがある。このような電池セルの過熱を防止するための技術が特許文献1に記載されている。それは、電池セルどうしを接続する接続具(バスバー)に冷却フィンを設けて冷却部材の機能を持たせることにより、電池セルの発熱を効率よく放散させるというものである。また、冷却ファンを設けて冷却フィンへ風を送ることも、特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−71674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池ユニットを前述の電力補完システムに適用した場合、電気自動車に搭載した場合と比べてはるかに大きい電流が流れることにより、電池接続具自体がその電気抵抗で発熱するという予想外の問題が発生した。現在の電気自動車に搭載される二次電池ユニットでは、充放電時の最大電流値が100〜150Aであるのに対し、電力補完システムに適用される二次電池ユニットの最大電流値は500Aを超える(例えば570A)。そのため、電池セルCどうしを繋ぐ電池接続具10は電気抵抗の小さい銅などで製作されるにもかかわらず発熱が生じる。このような現象による電池接続具10の発熱で、電池セルCを加熱するおそれがあった。また、電力補完システムの制御装置は、二次電池ユニットの温度を監視しているが、電池セルCがそれほど昇温していないにもかかわらず、電池接続具10の発熱を検知して、異常過熱の警報を発令するという不具合を生じさせる。
【0007】
そこで、図7に示す二次電池ユニット20において電池接続具10の厚みを大きくし、電気抵抗を低くすると同時に熱容量を増大させることも考えられる。しかし、単に厚みを増やしただけでは、大電流が流れたときの電池接続具10の昇温をそれほど抑えることはできない。また、熱容量が増大することにより冷めにくくなるから、短い時間間隔で大電流の入出力が繰り返された場合、つまり、直前の通電時に上昇した温度が元の温度まで低下する前に次の通電が行なわれることが反復された場合、電池接続具10に熱が蓄積し、最終的に許容温度を超えるおそれがある。
【0008】
前記特許文献1の技術は、電気自動車に適用される組電池(二次電池ユニット)を適用対象としたものであり、電池セルの過熱防止を目的としており、接続具(バスバー)自体が発熱する場合を想定していない。従って、特許文献1に記載の接続具の構造では、大電流による接続具自体の発熱に有効に対処できない。もし仮に、電力補完システムの蓄電装置に適用するならば、強制的に冷却するための冷却ファンが必要になり、二次電池ユニットのコスト増をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が上記課題を解決するために採用した電池接続具の特徴は、請求項1に記載する如く、電池の電極端子を電気的に接続する本体部の側縁部に、電極端子に固定した状態における本体部の上方へ立ち上がる起立面部を設け、該起立面部の外側表面に所定間隔を置いて配置した上下方向に対し実質的に平行な放熱板の複数枚から成る放熱部を設けたところにある。また請求項2に記載する如く、前記放熱部を設けた起立面部を、本体部の対向する側縁部それぞれに設ける構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電池接続具は、放熱部を設けることにより、熱容量を増大させて温度変化を抑えると同時に、表面積を拡大して放熱時定数を小さくすることができる。従って、通電時に発生する熱を放熱部から効率よく発散させて、接続具自体の昇温を抑制できる。また、電池内部に生じた熱を電極端子から吸収して放熱部から発散させ、電池の昇温を抑えることができる。
【0011】
ところで本発明では、本体部に設けた起立面部に放熱部を設け、放熱板を上下方向に対し平行に配置する構成を採用したので、各放熱板の間には、上下方向に連通する空間が形成される。従って、放熱部から熱を放散する際、放熱板間の空気が暖められて上昇気流を形成し、自然に空気の流動を生じさせるから、冷却ファンなどを設けなくても、高い放熱効率が得られる。その結果、熱容量を大きくしても、熱が残留することがなくなり、通電時の温度上昇幅を抑えることができる。このような作用を営む結果、本発明は、通電時の昇温が電池セルよりも低く、且つ、電池セルより放熱時定数の小さい電池接続具を提供することが可能である。
【0012】
なお、請求項2に記載の如く、本体部の対向する側縁部それぞれに放熱部を設ける構成とした場合は、一方の側縁部だけに放熱部を設ける場合と比べて、同じ表面積を得るのに必要な起立面部の高さを低くできるから、電池接続具が嵩高くなるのを避けられるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1に本発明に係る電池接続具Jの使用状況を示し、図2に同接続具Jの平面図・正面図・側面図を示す。適用対象とする二次電池は、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池・リチウム電池などのほか、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池などを使用する場合もある。図1に示すように、各電池セルCは上面に電極端子tを有し、電池接続具Jは、多数の電池セルCの電極端子tどうしを電気的に接続して、大電流の入出力が可能な二次電池ユニットUを構築するのに使用されている。本例における電池接続具Jは、電池セルCの電極端子tに固定され、端子tどうしを電気的に接続する板状の本体部1と、本体部1の長手方向に沿った対向する側縁部1a,1aそれぞれのほぼ中央領域に、本体部1に対し上方へほぼ直角に立ち上がるよう設けた起立面部2と、各起立面部2,2の外側表面に設けた放熱部3とで構成される。本体部1には、電池セルCの電極端子tを挿通させるための貫通孔5が形成され、貫通孔5から突出させた電極端子tの螺子部にナットN(図1参照)等を螺合させ締め付けることで固定している。放熱部3は、所定間隔を置いて配置した上下方向に対し実質的に平行な複数枚の放熱板4より成っている。
【0014】
電池接続具Jは、電気抵抗が小さく、熱伝導性が良く、且つ、融点が比較的高い素材で製作することが望ましく、本例では銅製としたが、銅合金・アルミニウム・ステンレス等も使用可能である。本体部1、起立面部2及び放熱部3は、一体成形することが望ましいが、形状が比較的複雑な放熱部3のみ別体に製作し、あとから起立面部2に密着固定することも可能である。本体部1は、少なくとも、隣接する電池セルCの端子tどうしを接続できる長さを有し、断面積は、二次電池ユニットUの入出力時における最大電流値と材質の電気抵抗値とに基づいて設定される。本例では、本体部1を長さ160mm幅20mm厚さ6mmの銅板で製作し、従って長手方向に垂直な断面積は120mmである。なお本発明の電池接続具Jは放熱部3を有しているため、熱容量が大きくても蓄熱が生じにくくなっているが、より断面積を大きくして、電気抵抗を減少させることも妨げない。但し本体部1の断面積を極端に大きくすると、通電時の昇温は抑えられる反面、熱容量の増大により冷めにくくなり、蓄熱する可能性が生じる。従って、本体部1の断面積は、二次電池ユニットUの入出力が行なわれる時間間隔を考慮して、熱が残留することがないように設定する。
【0015】
放熱部3は、複数枚の放熱板4を所定間隔を置いて配置することにより、電池接続具Jの熱容量を増大させると共に、放熱時定数を小さくする機能を有するものである。放熱部3の大きさ及び放熱板4の配置枚数は、最大電流が流れたときに想定される温度上昇を勘案して、必要な表面積が得られるように決定する。本例では、最大電流が570Aの場合を想定し、放熱部3の見かけの高さH×幅W×奥行きD=20×40×20mmとした。放熱板4,4間の奥行き寸法E=16mm、放熱板4,4の配置間隔G=5mm、放熱板4の配置枚数は一方の放熱部3につき6枚である。従って、放熱部3,3全体の表面積は約11200mmとなる。
【0016】
本発明に係る電池接続具Jは、図1に示すように、本体部1を電池セルCの電極端子tに固定して、電池セルCどうしを電気的に接続し、二次電池ユニットUを構成する。このようにして構成された二次電池ユニットUは、例えば図3に示すような収納庫Fに複数段を積み重ねて収納される。かかる状態において、二次電池ユニットUが電力の入出力を行ない、各電池接続具Jの通電がなされたとする。これにより各電池接続具Jは、その電気抵抗に基づき発熱する。また電池セルCも、内部抵抗により発熱する。放熱部3は、電池接続具J自体の発熱及び電極端子tを通じて吸収した電池セルCの熱を、空気中へ放散して、電池接続具J及び電池セルCの昇温を抑える。ところで、放熱板4は上下方向に沿って平行に配置されているから、各放熱板4間の空間S(図2参照)は上下方向に空気の流通が可能な空間である。そのため、放熱板4から放散される熱によって暖められた放熱板4間の空気は上昇気流を生成する。そして、この上昇気流は、複数段に積み重ねられた二次電池ユニットUの各段で生成するから、収納庫F内において、最下段から最上段へ至る連続した空気流Kが自然に形成され、その結果、放熱部3に新鮮空気が供給されることになるので、電池接続具Jの放熱が促進される。
【0017】
なお、図1に例示する如く、電池接続具Jを電極端子tに固定して電池セルCどうしを電気的に接続した状態において、放熱部3が、隣接する電池セルC,Cの境界上方に位置するよう設定した場合は、放熱部3に生じる上昇気流が、電池セルC,C間の隙間を流通するようになるから、電池セルCに対する冷却効果が向上する。
【0018】
[第2の実施形態]
図4に示す電池接続具Jは、本体部1と起立面部2,2との成す立ち上がり角度θを鋭角に形成したものである。かかる構成により、前記実施形態(図2参照)の電池接続具Jと比べて、見かけの外形寸法は同一でありながら、放熱部3の奥行き寸法Dを拡大して、表面積の増大を図ることができる。従って、放熱時定数をより小さくできる効果が得られる、
【0019】
[第3の実施形態]
図5に示すように、放熱部3を、本体部1における長手方向に沿った一方の側縁部1aだけに設けることも可能である。本例では、所要の表面積を得るため、起立面部2及び放熱部3の高さ寸法Hを比較的大きくしている。また、本体部1の中央領域の幅寸法を大きくして、熱容量の増大を図っている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電池接続具の使用状況を示すものであって、電池セルの電極端子どうしを接続した状態の斜視図である。
【図2】本発明に係る電池接続具の第1の実施形態を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図、図(C)は側面図である。
【図3】本発明に係る電池接続具を用いて構築した二次電池ユニットの一例を示す正面図である。
【図4】本発明に係る電池接続具の第2の実施形態を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図、図(C)は側面図である。
【図5】本発明に係る電池接続具の第3の実施形態を示すものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図、図(C)は側面図である。
【図6】二次電池ユニットを用いた電力補完システムの構成例を示す概略図である。
【図7】従来の二次電池ユニットの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
J…電池接続具 1…本体部 1a…側縁部 2…起立面部 3…放熱部 4…放熱板 5…貫通孔 C…電池セル U…二次電池ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電極端子を電気的に接続する本体部の側縁部に、電極端子に固定した状態における本体部の上方へ立ち上がる起立面部が設けられ、該起立面部の外側表面に所定間隔を置いて配置した上下方向に対し実質的に平行な放熱板の複数枚から成る放熱部が設けられていることを特徴とする電池接続具。
【請求項2】
前記放熱部を設けた起立面部を、本体部の対向する側縁部それぞれに設けた請求項1に記載する電池接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−245730(P2009−245730A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90554(P2008−90554)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【Fターム(参考)】