説明

電池監視装置

【課題】部品点数を削減しつつ、コモンモードノイズによる誤動作を防止することができる電池監視装置を提供する。
【解決手段】電池監視ユニット30は、第1フォトMOS32と第2フォトMOS35とを備え、これらを接続する第1〜第3配線40a〜40cの3本の配線を第1フォトMOS32の出力経路39の一部として備えている。さらに、電池監視ユニット30は、第1〜第3配線40a〜40cにそれぞれ設けられたインダクタ41a〜41fと、第1配線40aと第2配線40bおよび第2配線と第3配線40cをそれぞれ接続するコンデンサ33a、33bと、で構成されたフィルタ34を備えている。これによると、第1フォトMOS32の入力側の経路よりも出力側の経路の数が少ないので、部品点数を削減できる。また、フィルタ34により、コモンモードノイズを低減および除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを直列接続して構成される組電池の各セルをそれぞれ監視する電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直列接続されて組電池を構成する複数の電池モジュールの電圧を検出するように構成された組電池電圧検出回路が、例えば特許文献1で提案されている。各電池モジュールの両極の電極端子にはスイッチがそれぞれ接続されており、いずれかの電池モジュールの両極の電極端子のスイッチが導通することで、当該電池モジュールの電圧が検出される構成になっている。
【0003】
また、組電池はインバータ等の負荷に対して共通の配線に接続されている。このため、共通の配線および組電池を介して組電池電圧検出回路にコモンモードノイズが進入してくる。例えば、インバータのスイッチング素子、システムメインリレー(SMR)、DCDCコンバータ、テスタの動作・検査時の入力電圧源等がコモンモードノイズの発生源となる。
【0004】
そこで、組電池電圧検出回路内にコモンモードノイズが進入することによって検出回路が誤動作しないように、各電池モジュールの両極の電極端子にそれぞれ抵抗等のノイズ防止フィルタを設けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−114243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、各電池モジュールの両極の電極端子にそれぞれノイズ防止フィルタを設けているため、組電池電圧検出回路を構成する部品点数が増加してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、部品点数を削減しつつ、コモンモードノイズによる誤動作を防止することができる電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数のセル(21)を直列接続して構成される組電池(20)の各セル(21)のセル電圧をそれぞれ監視する電池監視装置であって、複数のセル(21)のそれぞれに対応した複数の入力経路(38)と、複数の入力経路(38)よりも数が少ない出力経路(39)と、を有し、複数の入力経路(38)の中から入力先を切り替え、切り替えた入力先に対応するセル(21)のセル電圧を示すセル電圧情報を出力経路(39)を介して出力する第1切り替え手段(32)を備えている。また、出力経路(39)を介してセル電圧情報を入力し、当該セル電圧情報に基づいてセル電圧を取得する電圧検出手段(37、45)と、出力経路(39)に設けられたノイズ除去用のフィルタ(34)と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
これによると、複数のセル(21)のそれぞれに対応した複数の入力経路(38)の全てにフィルタ(34)を設ける必要がないので、電池監視装置を構成する部品点数を削減することができる。また、電圧検出手段(37、45)に繋がる出力経路(39)上にフィルタ(34)が設けられているので、負荷に接続される組電池(20)を介して電池監視装置に進入するコモンモードノイズを除去することができ、ひいてはコモンモードノイズによる誤動作を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明のように、フィルタ(34)は、インダクタ(41a〜41f)を含んだ構成になっていても良い。また、請求項3に記載の発明のように、フィルタ(34)は、コンデンサ(33a、33b)を含んだ構成になっていても良い。
【0011】
請求項4に記載の発明では、第1切り替え手段(32)と電圧検出手段(37、45)とを接続する出力経路(39)に第2切り替え手段(35)を備え、第1切り替え手段(32)と第2切り替え手段(35)との間の出力経路(39)は、第1切り替え手段(32)と第2切り替え手段(35)とを接続する第1配線(40a、40b)と第2配線(40b、40c)とを含んで構成されている。
【0012】
また、フィルタ(34)は、第1配線(40a、40b)および第2配線(40b、40c)にそれぞれ設けられたインダクタ(41a、41c、41e)と、第1配線(40a、40b)と第2配線(40b、40c)とを接続するコンデンサ(33a、33b)と、を備えて構成されている。そして、電圧検出手段(37、45)は、第1切り替え手段(32)および第2切り替え手段(35)の切り替えに基づいて、コンデンサ(33a、33b)に印加されるセル電圧情報に対応した蓄電電圧を検出するフライングキャパシタ方式によってセル電圧を取得することを特徴とする。
【0013】
これによると、フライングキャパシタ方式でセル電圧情報を電圧検出手段(37、45)に伝達する構成において、第1切り替え手段(32)を経由して第1配線(40a、40b)および第2配線(40b、40c)に出力されるコモンモードノイズを、インダクタ(41a、41c、41e)およびコンデンサ(33a、33b)によって構成されたフィルタ(34)によって除去することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、インダクタ(41a、41c、41e)は、コンデンサ(33a、33b)よりも第1切り替え手段(32)側に設けられていることを特徴とする。これによると、第1切り替え手段(32)からインダクタ(41a、41c、41e)およびコンデンサ(33a、33b)を介する経路によって、電池監視装置内に発生するノーマルノイズを除去することができる。
【0015】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電池監視ユニットを含んだ電池監視システムの全体構成図である。
【図2】図1に示される電池監視ユニットの具体的な構成を示した図である。
【図3】ノイズ発生源からマイコン出力に至る経路を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係るフィルタが電池監視ユニットに設けられていない場合の電池監視システムにおけるコモンモードノイズの経路を示した図である。
【図5】第1実施形態に係る電池監視ユニットにおけるコモンモードノイズおよびノーマルノイズの経路を示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電池監視ユニットを含んだ電池監視システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。本発明に係る電池監視装置は、例えばハイブリッド車等の電気自動車に搭載される電池監視システムの一部である電池監視ユニットとして適用されるものである。以下、電池監視装置を電池監視ユニットとして説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電池監視ユニットを含んだ電池監視システムの全体構成図である。この図に示されるように、電池監視システムは、負荷10と、組電池20(図1のLi−batt)と、電池監視ユニット30と、補機バッテリ40と、を備えて構成されている。
【0020】
負荷10は、組電池20の電圧を用いて動作するインバータ、DCDCコンバータ等である。インバータは例えば図1のモータ(MG1、MG2)を駆動するために動作する。このような負荷10は、組電池20の正極側および負極側にそれぞれ接続されたシステムメインリレー60(図1のSMR)を介して組電池20に電気的に接続されている。そして、システムメインリレー60が導通状態になることにより負荷10は組電池20から電力供給を受ける。
【0021】
組電池20は、最小単位であるセル21が直列に複数接続されて構成された電池群である。セル21として充電可能なリチウムイオン二次電池が用いられる。上述のように、組電池20はインバータやモータ等の負荷10や図示しない他の負荷を駆動するための電源や他の電子機器の電源として用いられる。
【0022】
電池監視ユニット30は、組電池20の各セル21のセル電圧をそれぞれ監視するように構成されている。なお、図1では電池監視ユニット30の構成を簡略して描いてある。具体的な構成については後述する。
【0023】
補機バッテリ40は、接続端子(図1のAM IGCTおよびGND)を介して電池監視ユニット30に対して電源を供給するものであり、組電池20とは異なる電源である。このような補機バッテリ40は、例えば14Vの車載バッテリである。以上が、電池監視システムの全体構成である。
【0024】
続いて、電池監視ユニット30の具体的な構成について、図2を参照して説明する。図2に示されるように、電池監視ユニット30は、複数の監視IC31と、第1フォトMOS32と、2個のコンデンサ33a、33bと、フィルタ34と、第2フォトMOS35と、2個のオペアンプ36a、36bと、マイクロコンピュータ37(以下、マイコン37という)と、を備えて構成されている。
【0025】
複数の監視IC31は、各監視IC31に対応する所定数の各セル21の電池状態をそれぞれ検出し、検出した電池状態の情報を出力するように構成されている。ここで、「電池状態」とは、セル21のセル電圧やセル21に流れる電流等である。各監視IC31は監視対象の各セル21から電源供給を受けて動作するようになっている。
【0026】
また、監視IC31は、各セル21のセル電圧を検出した場合、各セル21のセル電圧の値を示すセル電圧情報を出力する。各監視IC31から出力されたセル電圧情報は第1フォトMOS32にそれぞれ入力される。
【0027】
第1フォトMOS32および第2フォトMOS35は、内蔵する半導体スイッチをマイコン37の指令に従って切り替えることにより、複数の入力の中から入力先を切り替えて出力する切り替え手段である。
【0028】
具体的に、第1フォトMOS32は、複数のセル21のそれぞれに対応した複数の入力経路38と、複数の入力経路38よりも数が少ない出力経路39と、を有している。本実施形態では、第1フォトMOS32は複数の監視IC31に接続されているので、「複数のセル21のそれぞれに対応する」とは、各監視IC31に対応していることを意味している。
【0029】
出力経路39は、第1フォトMOS32からマイコン37に至るまでの経路である。本実施形態では、第1フォトMOS32と第2フォトMOS35との間の出力経路39は、第1フォトMOS32と第2フォトMOS35とを接続する第1配線40aと第2配線40bと第3配線40cとの3本の配線で構成されている。
【0030】
第1フォトMOS32と第2フォトMOS35との間は、フライングキャパシタ方式でセル電圧情報が伝達されるように構成されている。すなわち、第1配線40aと第2配線40bとを接続するコンデンサ33aと、第2配線40bと第3配線40cとを接続するコンデンサ33bと、が設けられている。これにより、セル電圧情報は第1フォトMOS32と第2フォトMOS35との切り替えによって各コンデンサ33a、33bに印加される蓄電電圧として伝達される。本実施形態では2個のコンデンサ33a、33bを用いているので、セル電圧情報の伝達はダブルフライングキャパシタ方式で行われる。
【0031】
そして、電池監視ユニット30は、第1フォトMOS32と第2フォトMOS35との間の出力経路39すなわち3本の配線40a〜40cにノイズ除去用のフィルタ34を備えている。フィルタ34は、各配線40a〜40cにそれぞれ設けられたインダクタ41a〜41fと、上述のコンデンサ33a、33bと、を備えて構成されている。
【0032】
インダクタ41a、41bは第1配線40aに設けられ、インダクタ41c、41dは第2配線40bに設けられ、インダクタ41e、41fは第3配線40cに設けられている。2個のインダクタはそれぞれ各配線40a〜40cに対する各コンデンサ33a、33bの接続点を基準として第1フォトMOS32側と第2フォトMOS35側とに設けられている。また、コンデンサ33a、33bは、本実施形態ではセル電圧情報を伝達するだけでなく、フィルタ34の一部としても機能する。
【0033】
各オペアンプ36a、36bは、第2フォトMOS35とマイコン37とを接続しており、第2フォトMOS35の出力を増幅してマイコン37に入力するように構成されている。オペアンプ36aはコンデンサ33aに印加された蓄電電圧を増幅して出力する差動増幅回路として構成され、オペアンプ36bはコンデンサ33bに印加された蓄電電圧を増幅して出力する差動増幅回路として構成されている。
【0034】
なお、第2フォトMOS35の出力端子は3個である。3個の出力端子のうちの1個がオペアンプ36aに接続され、3個の出力端子のうちの1個がオペアンプ36bに接続され、3個の出力端子のうちの1個が各オペアンプ36a、36bにそれぞれ接続されている。
【0035】
マイコン37は、図示しないCPU、ROM、EEPROM、RAM等を備え、ROM等に記憶されたプログラムに従って各セル21のセル電圧を取得する制御回路である。具体的に、マイコン37は、複数の入力経路38の中から入力先を切り替え、切り替えた入力先に対応するセル21のセル電圧を示すセル電圧情報を出力経路39を介して入力し、入力したセル電圧情報に基づいてセル電圧を取得する。
【0036】
このため、マイコン37は、第1フォトMOS32を切り替えることにより入力先を各監視IC31のいずれかに切り替え、第2フォトMOS35を切り替えることによりオペアンプ36a、36bを介して当該監視IC31のセル電圧情報を取得する。すなわち、マイコン37は、第1フォトMOS32および第2フォトMOS35の切り替えに基づいて、各コンデンサ33a、33bに印加されるセル電圧情報に対応した蓄電電圧を検出するダブルフライングキャパシタ方式によってセル電圧を取得する。
【0037】
なお、第2フォトMOS35と各オペアンプ36a、36bとの間の出力経路39に抵抗42a、42bが接続されている。各抵抗42a、42bはそれぞれ低圧グランド43に接続されている。同様に、マイコン37は低圧グランド43に接続されている。さらに、各抵抗42a、42bと低圧グランド43との接続点と車両のボデーグランド70との間に低圧用のコモンコンデンサ44が接続され、マイコン37と低圧グランド43とボデーグランド70との間にもコモンコンデンサ44が接続されている。コモンコンデンサ44は高周波ノイズをボデーグランド70に逃がすノイズ対策用として設けられている。電池監視システムでは、ボデーグランド70は組電池20の低電圧側に接続される。
【0038】
次に、上記の構成の電池監視システムに発生するノイズの除去について、図3および図4を参照して説明する。
【0039】
図3に示されるように、インバータ等の負荷10やシステムメインリレー60、テスタ等がノイズ発生源となり、電池監視システムにコモンモードノイズが発生する。そして、コモンモードノイズは組電池20を介して電池監視ユニット30に進入する。すなわち、コモンモードノイズは、第1フォトMOS32、フライングキャパシタ(コンデンサ33a、33b)、第2フォトMOS35を介してマイコン37に入力される。マイコン37は低圧グランド43を基準としたセル電圧の検出および出力を行うが、コモンモードノイズの影響によってセル電圧の検出の精度が低下してしまう。以上のコモンモードノイズの経路を図4に示す。
【0040】
図4に示されるように、電池監視システムでは、各構成要素は共通のボデーグランド70に接続されているので、ボデーグランド70を介してコモンモードノイズが伝達する。したがって、コモンモードノイズは負荷10や組電池20を介して電池監視ユニット30に進入し、マイコン37のセル電圧の検出に影響を及ぼす。コモンモードノイズはボデーグランド70に戻り、電池監視システムを周回する。なお、図4に示される破線の経路は、電池監視ユニット30内に発生するノーマルノイズの一例である。
【0041】
このように電池監視システムを周回するコモンモードノイズに対し、上述のように電池監視ユニット30にフィルタ34が設けられている。具体的には、電池監視ユニット30においてマイコン37に到達する最終経路である出力経路39にフィルタ34が設けられている。このため、図5の矢印で示されるように、コモンモードノイズは組電池20側の多数の経路から電池監視ユニット30内に進入したとしても、第1フォトMOS32以降の出力経路39に設けられたフィルタ34によってコモンモードノイズが低減される。
【0042】
ここで、本実施形態ではダブルフライングキャパシタ方式でセル電圧情報を伝達する構成となっている。したがって、インダクタ41a、コンデンサ33a、インダクタ41cを経由する経路によって電池監視ユニット30内で発生するノーマルノイズを低減することができる。同様に、インダクタ41c、コンデンサ33b、インダクタ41eを経由する経路によってもノーマルノイズを低減することができる。このように、インダクタ41a、41c、41eがコンデンサ33a、33bよりも第1フォトMOS32側に位置していることでコンデンサ33a、33bを用いたノーマルノイズの除去が可能になっている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では電池監視ユニット30において信号の最終経路である出力経路39にフィルタ34を設けたことが特徴となっている。すなわち、複数のセル21のそれぞれに対応した複数の入力経路38の全てにフィルタ34を設けず、入力経路38よりも数が少ない出力経路39にフィルタ34を設けている。したがって、複数のセル21のそれぞれに対応した複数の入力経路38の全てにフィルタ34を設ける必要がないので、電池監視ユニット30を構成する部品点数を削減することができる。
【0044】
また、最終経路である出力経路39にフィルタ34が存在しているので、コモンモードノイズが電池監視ユニット30内をどのように伝達しても、最終的にコモンモードノイズをフィルタ34で低減および除去することができる。以上により、電池監視ユニット30の部品点数を削減しつつ、コモンモードノイズによる電池監視ユニット30の誤動作を防止することができる。
【0045】
これによると、フライングキャパシタ方式でセル電圧情報をマイコン37に伝達する構成において、第1フォトMOS32を経由して第1配線40aおよび第2配線40bに出力されるコモンモードノイズを、インダクタ41aおよびコンデンサ33aによって構成されたフィルタ34によって除去することができる。
【0046】
さらに、本実施形態ではインダクタ41a、41c、41eがコンデンサ33a、33bよりも第1フォトMOS32側すなわちノイズの進入側に設けられている。したがって、コンデンサ33a、33bを介する経路によって、電池監視ユニット30内に発生するノーマルノイズを除去することができる。
【0047】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、第1フォトMOS32が特許請求の範囲の「第1切り替え手段」に対応し、第2フォトMOS35が特許請求の範囲の「第2切り替え手段」に対応する。また、マイコン37が特許請求の範囲の「電圧検出手段」に対応する。オペアンプ36a、36bについても特許請求の範囲の「電圧検出手段」に対応する。
【0048】
本実施形態では、ダブルフライングキャパシタ方式を採用しているため、第1配線40aまたは第2配線40bが特許請求の範囲の「第1配線」に対応し、第2配線40bまたは第3配線40cが特許請求の範囲の「第2配線」に対応する。
【0049】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。上述の第1実施形態では、所定数のセル21毎に監視IC31を設けて各セル21を監視する構成であったが、本実施形態では監視IC31を設けずに各セル21のセル電圧を取得する構成になっている。
【0050】
図6は、本実施形態に係る電池監視ユニット30を含んだ電池監視システムの全体構成図である。この図に示されるように、電池監視ユニット30は、2個のコンデンサ33a、33bを使用したダブルフライングキャパシタ方式でセル電圧を検出するように構成されている。
【0051】
このため、電池監視ユニット30の構成は、上述の第1フォトMOS32、第2フォトMOS35、コンデンサ33a、33b、第1〜第3配線40a〜40c、2個のオペアンプ36a、36bの他に、A/D変換器45を備えた構成となっている。
【0052】
第1フォトMOS32は、各セル21の各端子に対応して設けられた複数のスイッチ32aを備えている。ここで、各セル21のうちの直列接続された隣同士のセル21では、高電圧側のセル21の負極端子と低電圧側のセル21の正極端子とが共通化されている。したがって、各スイッチ32aの一端は、最も高電圧側のセル21の正極端子と、最も低電圧側のセル21の負極端子と、これらの端子を除く各共通端子と、の各端子に対してそれぞれ接続されている。
【0053】
また、本実施形態では監視IC31が設けられていないので、各スイッチ32aと各セル21の端子とをそれぞれ接続する各経路が第1フォトMOS32の複数の入力経路38に該当する。一方、第1実施形態と同様に、第1フォトMOS32よりもA/D変換器45側が出力経路39となる。
【0054】
さらに、図6に示されるように、例えば9個のセル21によって組電池20が構成されており、3個のセル21毎に各配線40a〜40cが設けられている。このような場合、最も高電圧側のセル21を基準として低電圧側に1個目、5個目、9個目(4m+1、m=0,1,2,・・・)の各セル21の高電圧側に対応する端子に接続された各スイッチ32aに第1配線40aが接続されている。同様に、最も高電圧側のセル21を基準として低電圧側に2個目、4個目、6個目、8個目(2m、m=1,2,・・・)の各セル21の高電圧側に対応した端子に接続された各スイッチ32aに第2配線40bが接続されている。同様に、最も高電圧側のセル21を基準として低電圧側に3個目、7個目(4m+3、m=0,1,2,・・・)の各セル21の高電圧側に対応する端子に接続された各スイッチ32aに第3配線40cが接続されている。
【0055】
第2フォトMOS35は、第1フォトMOS32と同様に複数のスイッチ35aを備えて構成されている。各スイッチ35aは各配線40a〜40cにそれぞれ設けられている。なお、図6において、各スイッチ32a、35aに並列接続されたコンデンサは寄生容量を示している。
【0056】
A/D変換器45は各オペアンプ36a、36bで増幅されたセル21のセル電圧を測定する回路である。本実施形態では、コンデンサ33a、33bの蓄電電圧そのものがセル電圧情報に対応する。すなわち、蓄電電圧がセル電圧に対応する。そして、A/D変換器45は、測定したセル電圧をデジタル信号に変換してAD出力として図示しないマイコン等に出力する。
【0057】
なお、組電池20の正極と負極にはそれぞれノイズ除去用のコンデンサ80が接続されている。各コンデンサ80はボデーグランド70に接続されている。
【0058】
上記の構成において、第1フォトMOS32と第2フォトMOS35との間にフィルタ34が設けられている。すなわち、第1実施形態と同様に、各配線40a〜40cにインダクタ41a〜41fが2個ずつ設けられており、フライングキャパシタ方式によってセル電圧情報を伝達させるための各コンデンサ33a、33bもフィルタ34の一部として機能する。
【0059】
これにより、組電池20を介して複数の入力経路38から第1フォトMOS32に進入したコモンモードノイズをフィルタ34によって低減および除去することができる。また、コンデンサ33a、33bよりも第1フォトMOS32側のインダクタ41a、41c、41eおよびコンデンサ33a、33bによって電池監視ユニット30内で発生したノーマルノイズを低減および除去することができる。
【0060】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、A/D変換器45が特許請求の範囲の「電圧検出手段」に対応する。
【0061】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された電池監視ユニット30の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明のフィルタ34を用いた他の構成とすることもできる。例えば、切り替え手段である第1フォトMOS32や第2フォトMOS35は半導体スイッチであるが、切り替え手段として機械式スイッチが用いられても良い。
【0062】
また、第1フォトMOS32の複数の入力経路38に接続されているものは、上述の監視IC31や組電池20そのものの他にマルチプレクサ等でも良い。同様に、マイコン37等の電圧検出手段に至る出力経路39にIC(マルチプレクサ)等が設けられていても良い。
【0063】
そして、監視IC31の構成はセル電圧を検出するだけでなく、内部抵抗やセル21に流れる電流等の電池状態を検出するように構成されていても良い。また、マイコン37は、組電池20に流れる電流等のデータを用いて組電池20の残存容量(State of Charge;SOC)を取得し、この残存容量に基づいて図示しない均等化放電回路等によりセル21の充電や放電を制御しても良い。このように、電池監視ユニット30は単にセル電圧を検出する構成ではなく、他の機能を備えていても良い。
【0064】
上記各実施形態ではフライングキャパシタ方式によりセル電圧情報を伝達する構成であったがセル電圧情報を伝達する方式はこれに限られない。もちろん、ダブルフライングキャパシタ方式ではなく、1個のコンデンサを用いるシングルフライングキャパシタ方式で構成されていても良い。この場合は第1フォトMOS32と第2フォトMOS35との間の出力経路は第1配線40aと第2配線40bの2本の配線で構成される。
【0065】
また、フィルタ34は上記各実施形態の構成に限られない。例えば、コンデンサ33a、33bを用いずにインダクタのみでフィルタ34を構成しても良いし、インダクタを用いずにコンデンサのみでフィルタ34を構成しても良い。
【0066】
上記各実施形態では、電池監視装置をハイブリッド車等の電気自動車に適用することについて説明したが、これは電池監視装置の適用の一例であり、車両に限らずセル21を監視する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
20 組電池
21 セル
32 第1フォトMOS(第1切り替え手段)
33a、33b コンデンサ
34 フィルタ
35 第2フォトMOS(第2切り替え手段)
37 マイコン(電圧検出手段)
38 入力経路
39 出力経路
40a〜40c 第1〜第3配線
41a〜41f インダクタ
45 A/D変換器(電圧検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセル(21)を直列接続して構成される組電池(20)の各セル(21)のセル電圧をそれぞれ監視する電池監視装置であって、
前記複数のセル(21)のそれぞれに対応した複数の入力経路(38)と、前記複数の入力経路(38)よりも数が少ない出力経路(39)と、を有し、前記複数の入力経路(38)の中から入力先を切り替え、切り替えた入力先に対応するセル(21)のセル電圧を示すセル電圧情報を前記出力経路(39)を介して出力する第1切り替え手段(32)と、
前記出力経路(39)を介して前記セル電圧情報を入力し、当該セル電圧情報に基づいてセル電圧を取得する電圧検出手段(37、45)と、
前記出力経路(39)に設けられたノイズ除去用のフィルタ(34)と、を備えていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項2】
前記フィルタ(34)は、インダクタ(41a〜41f)を含んだ構成になっていることを特徴とする請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記フィルタ(34)は、コンデンサ(33a、33b)を含んだ構成になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記第1切り替え手段(32)と前記電圧検出手段(37、45)とを接続する前記出力経路(39)に第2切り替え手段(35)を備え、
前記第1切り替え手段(32)と前記第2切り替え手段(35)との間の前記出力経路(39)は、前記第1切り替え手段(32)と前記第2切り替え手段(35)とを接続する第1配線(40a、40b)と第2配線(40b、40c)とを含んで構成され、
前記フィルタ(34)は、前記第1配線(40a、40b)および前記第2配線(40b、40c)にそれぞれ設けられたインダクタ(41a、41c、41e)と、前記第1配線(40a、40b)と前記第2配線(40b、40c)とを接続するコンデンサ(33a、33b)と、を備えて構成されており、
前記電圧検出手段(37、45)は、前記第1切り替え手段(32)および前記第2切り替え手段(35)の切り替えに基づいて、前記コンデンサ(33a、33b)に印加される前記セル電圧情報に対応した蓄電電圧を検出するフライングキャパシタ方式によって前記セル電圧を取得することを特徴とする請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項5】
前記インダクタ(41a、41c、41e)は、前記コンデンサ(33a、33b)よりも前記第1切り替え手段(32)側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電池監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108924(P2013−108924A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255982(P2011−255982)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】