説明

電池監視装置

【課題】監視回路側から制御手段側へ送信するデジタルデータにミラーデータを付加することなく、監視回路側から制御手段側へのデータ送信の際の消費電流のバラツキを抑制可能な電池監視装置を提供する。
【解決手段】監視回路21側からマイコン22側へのデータ送信を行うとき、デジタルデータの「0」をマイコン22側へ伝達する際に、デジタルデータの「1」をマイコン22側へ伝達する際の絶縁素子23にて消費される電流と同等の電流が、絶縁素子23を迂回して流れるように構成されたバイパス回路25を設ける。これにより、デジタルデータの内容によらず、データ送信する際の消費電流を一定とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルから構成される組電池の電池状態を監視する電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車では、走行用モータの電力供給源として、複数の電池セルを直列接続した組電池が採用されている。この組電池は、各電池セルの電圧変動等の電池状態が電池監視装置によって監視される。
【0003】
電池監視装置は、組電池を所定数の電池セル毎にグループ化した電池ブロックに対応して設けられ、対応する電池ブロックの電池状態を監視する複数の監視回路、各監視回路の作動を制御する制御手段を構成するマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する。)を備えている。
【0004】
電池監視装置における監視回路は、監視対象となる電池ブロックから電力供給されることで駆動するように構成されており、マイコンは、組電池と異なる補機電池等から電力供給されることで駆動するように構成されている。つまり、監視回路は、高電圧で駆動する高圧系を構成するのに対して、マイコンは低電圧で駆動する低圧系を構成する。
【0005】
このような電池監視装置では、低圧系であるマイコンを保護するために、監視回路とマイコンとの間を電気的に絶縁した状態で監視回路側からマイコン側へ監視結果等を示す電池データ(デジタルデータ)を送信可能とする絶縁通信回路が設けられている。
【0006】
ここで、絶縁通信回路にて「0」(Loレベル)および「1」(Hiレベル)の組み合わせからなるデジタルデータを監視回路側からマイコン側へ送信する場合、「1」をマイコン側へ伝達する際に電流が消費される一方、「0」をマイコン側へ伝達する際に殆ど電流が消費されない。このため、デジタルデータの内容によって、絶縁通信回路における消費電流が変化することとなる。
【0007】
絶縁通信回路は、一般に、監視回路の監視対象となる電池ブロックから電力供給されることで駆動するように構成されていることから、デジタルデータの内容によって消費電流が変化すると、各監視回路に対応する電池ブロック毎の残存容量にバラツキが生じるといった課題がある。
【0008】
このような課題に対して、例えば、特許文献1では、監視回路における監視結果等を示すデジタルデータに、当該デジタルデータの「0」と「1」とを反転させたミラーデータを付加したデジタルデータを生成し、生成したデジタルデータを電池データとしてマイコン側へ送信する構成としている。これにより、「0」と「1」とが等しいデジタルデータが電池信号として監視回路側からマイコン側へ送信されるので、各監視回路に対応する電池ブロック毎の残存容量のバラツキを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−235032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示す技術では、監視回路における監視結果等を示すデジタルデータにミラーデータを付加したデジタルデータをマイコン側へ送信する場合、送信するデジタルデータのデータサイズが大きくなることから、監視回路側からマイコン側へのデータ通信の時間が長くなってしまうといった問題がある。
【0011】
また、電池監視装置に監視回路における監視結果等を示すデジタルデータにミラーデータを付加するための構成(データを加工する手段)を追加する必要があり、電池監視装置の構成が複雑化する虞がある。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、監視回路側から制御手段側へ送信するデジタルデータにミラーデータを付加することなく、監視回路側から制御手段側へのデータ送信の際の消費電流のバラツキを抑制可能な電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、複数の電池セル(10)を直列に接続して構成される組電池(1)の電池状態を監視する電池監視装置であって、組電池(1)を所定数の電池セル(10)毎にグループ化した電池ブロック(B)に対応して設けられ、対応する電池ブロック(B)の電池状態を監視する複数の監視回路(21)と、複数の監視回路(21)の作動を制御する制御手段(22)と、監視回路(21)および制御手段(22)を絶縁した状態で、監視回路(21)側から制御手段(22)側へ「0」と「1」の組み合わせからなるデジタルデータを送信する絶縁通信手段(23)と、デジタルデータを送信する監視回路(21)に対応する電池ブロック(B)から供給される電力から絶縁通信手段(23)を駆動するための電力を生成する電源部(21b)と、制御手段(22)側へデジタルデータの0」を伝達する際に、制御手段(22)側へデジタルデータの「1」を伝達する際の絶縁通信手段(23)における消費電流と同等の電流を、絶縁通信手段(23)を迂回して流れるように構成されたバイパス回路(25)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
これによれば、デジタルデータの「0」を制御手段(22)側へ伝達する際にも、デジタルデータの「1」を制御手段(22)側へ伝達する際に絶縁通信手段(23)にて消費される電流と同等の電流がバイパス回路(25)を介して消費されるので、デジタルデータにミラーデータを付加するような加工を行うことなく、監視回路(21)側から制御手段(22)側へのデータ送信の際の消費電流のバラツキを抑制することが可能となる。この結果、各監視回路(21)に対応する電池ブロック(B)毎の残存容量のバラツキを抑制することが可能となる。なお、「消費電流と同等の電流」とは、絶縁通信手段(23)における消費電流とバイパス回路(25)を流れる電流とが完全に一致していることだけを意味するのではなく、監視回路(21)側から制御手段(22)側へのデータ送信時の消費電流のバラツキが抑制される程度に実質的に同等となっていることを含む意味である。
【0015】
具体的には、請求項2に記載の発明ように、請求項1に記載の電池監視装置において、絶縁通信手段(23)を、監視回路(21)側の一次側要素(23a)、および制御手段(22)側の二次側要素(23b)を有する絶縁素子で構成し、バイパス回路(25)を一次側要素(23a)と電源部(21b)との接続点から分岐して設けることで、データ送信の際の消費電流のバラツキを抑制可能な電池監視装置を実現することが可能となる。
【0016】
なお、請求項3に記載の発明ように、請求項2に記載の電池監視装置において、絶縁素子をフォトカプラで構成してもよい。
【0017】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項2または3に記載の電池監視装置において、バイパス回路(25)に、一次側要素(23a)に対して並列接続されたトランジスタ(25a)を設け、トランジスタ(25a)によって、一次側要素(23a)から二次側要素(23b)へデジタルデータの「1」を伝達する際に一次側要素(23a)側に電流を流すと共に、一次側要素(23a)から二次側要素(23b)にデジタルデータの「0」を伝達する際に一次側要素(23a)を迂回して電流を流すようにしてもよい。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る組電池制御システムの概略構成図である。
【図2】実施形態に係る電池監視装置の要部を示す構成図である。
【図3】データ通信の際の消費電流を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態では、車載高圧バッテリである組電池1の制御システムに本発明の電池監視装置2を適用している。図1に示すように、本実施形態の組電池制御システムは、主たる構成として組電池1および電池監視装置2を備える。
【0021】
本実施形態の組電池1は、車両走行用の電動機(図示略)等の各種電気機器に電力を供給するものである。具体的には、組電池1は、リチウムイオン電池等からなる電池セル10を複数直列に接続したもので、互いに隣接する所定数(本実施形態では6個)の電池セル毎にグループ化した複数の電池ブロックB〜Bの直列接続体として構成されている。なお、図1では、複数の電池ブロックB〜Bのうち、2つの電池ブロックB、Bi+1(i=1〜n−1)を示しているが、実際には電池ブロックBが多数設けられている。
【0022】
このように構成される組電池1には、検出ラインを介して電池監視装置2が接続されている。この電池監視装置2は、組電池1を構成する各電池セル10の過放電状態、過充電状態等の電池状態を監視する過充放電検出機能を有する装置である。なお、過放電状態は、各電池セル10の電圧が信頼性の低下を招く過度な低電圧となる異常状態を意味し、過充電状態は、各電池セル10の電圧が信頼性の低下を招く過度な高電圧となる異常状態を意味する。
【0023】
具体的には、電池監視装置2は、主たる構成要素として、各電池ブロックBに対応して設けられ、電池ブロックB毎の電池状態を監視する複数の監視回路21、各監視回路21等の作動を制御するマイコン22、および各監視回路21とマイコン22との間を電気的に絶縁した状態で通信を可能とする複数の絶縁素子23を備えている。なお、本実施形態では、マイコン22が特許請求の範囲に記載の制御手段を構成し、絶縁素子23が特許請求の範囲に記載の絶縁通信手段を構成する。
【0024】
各監視回路21は、監視対象である高電圧の電池ブロックBを電源とし、マイコン22は、図示しない低電圧の補助バッテリ(例えば12Vバッテリ)を電源としている。つまり、本実施形態の監視回路21は、高電圧で駆動する高圧系を構成するのに対して、制御手段であるマイコン22は低電圧で駆動する低圧系を構成する。
【0025】
監視回路21は、監視する電池ブロックBの各電池セル10の両極端子に検出ラインを介して接続され、各電池セル10の電圧を検出して、その結果をマイコン22側へ出力するように構成されている。なお、本実施形態の監視回路21は、電池ブロックB毎に設けられている。
【0026】
監視回路21には、監視する電池ブロックBの各電池セル10の両端電圧を検出する電圧検出部21a、監視する電池ブロックBからの電力を用いて電圧検出部21aや絶縁素子23等を駆動するための電力を生成する電源部21b等が設けられている。
【0027】
本実施形態の電圧検出部21aは、監視する電池ブロックBの各電池セル10に接続された複数の選択スイッチを有し、任意の選択スイッチをオンオフ可能に構成されたマルチプレクサ(図示略)、マルチプレクサを介して取得したアナログ信号(電圧値)をデジタルデータに変換すると共に、変換したデジタルデータを絶縁素子23を介してマイコン22側へ伝達するAD変換器(図示略)等で構成されている。なお、監視回路21からマイコン22側へ出力されるデジタルデータは、「0」および「1」の組み合わせからなるバイナリコードで構成されている。
【0028】
本実施形態の電源部21bは、監視する電池ブロックBにおける最も高電圧となる電池セル10の正極端子と、最も低電圧となる電池セル10の負極端子とに接続されて、電池ブロックBの電圧を所望の電圧(電圧検出部21aや絶縁素子23の駆動電圧)に変換するものである。
【0029】
マイコン22は、図示しないMPU、ROM、EEPROM、RAM、入出力部等からなるマイクロコンピュータであって、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムに従って各種処理等を実行するものである。
【0030】
本実施形態のマイコン22は、各監視回路21へ各電池ブロックBの監視を指示する指令信号を出力すると共に、各監視回路21から出力される監視結果等の出力信号(デジタルデータ)を取得し、取得した出力信号に応じて組電池1の電池状態を診断するように構成されている。
【0031】
絶縁素子23は、監視回路21とマイコン22とを電気的に絶縁した状態で、マイコン22と監視回路21との間を通信可能とする絶縁通信手段を構成する。本実施形態の絶縁素子23は、監視回路21側からマイコン22側(制御手段側)へ監視結果等の出力信号(デジタルデータ)を送信するように構成されている。なお、図示しないが、電池監視装置2には、マイコン側から監視回路側への信号を伝達するための絶縁素子も設けられている。
【0032】
ここで、本実施形態の絶縁素子23およびその周辺回路について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る電池監視装置2の要部を示す構成図である。なお、図2では、マイコン22の図示を省略している。
【0033】
本実施形態の絶縁素子23は、監視回路21側に設けられた発光素子23a、マイコン22側に設けられた受光素子23bを有する光結合方式の絶縁素子で構成されている。具体的には、本実施形態の絶縁素子23は、フォトカプラで構成されており、発光素子23aが一次側要素を構成し、受光素子23bが二次側要素を構成している。
【0034】
発光素子23aは、電源部21bから流れる電流が所定閾値を上回った際に光を発して受光素子23bをオンするもので、監視回路21の電源部21bに電流制限用抵抗24を介して接続されている。なお、電流制限用抵抗24は、発光素子23aに流れる電流を制限するための素子である。
【0035】
発光素子23aと電源部21b(電流制限用抵抗24)との間には、バイパス回路25が設けられている。より詳しくは、バイパス回路25は、発光素子23aと電源部21b(電流制限用抵抗24)との間の接続点から分岐して設けられている。
【0036】
バイパス回路25は、監視回路21側からマイコン22側へのデータ通信する場合において、マイコン22側へデジタルデータの「0」を伝達する際に、マイコン22側へデジタルデータの「1」を伝達する際の絶縁素子23における消費電流と同等の電流が、絶縁素子23を経由せず、当該絶縁素子23を迂回して流れるように構成されている。
【0037】
このバイパス回路25には、絶縁素子23の発光素子23aに対して並列となるように接続(並列接続)されたトランジスタ25aが設けられている。このトランジスタ25aは、監視回路21の電圧検出部21aから出力されるデジタルデータに応じて、絶縁素子23の発光素子23aに流れる電流をオンオフするためのスイッチング素子である。
【0038】
本実施形態のバイパス回路25は、トランジスタ25aがオフすることで発光素子23a側(一次側要素側)に電流を流すと共に、トランジスタ25aがオンすることで発光素子23aを迂回して電流を流すように構成されている。なお、トランジスタ25aは、絶縁素子23の発光素子23aから受光素子23bへデジタルデータの「1」を伝達する際にオフされ、発光素子23aから受光素子23bへデジタルデータの「0」を伝達する際にオンされる。
【0039】
具体的には、本実施形態のトランジスタ25aは、ベースが監視回路21の電圧検出部21aの出力端子に接続されると共に、コレクタが電流制限用抵抗24と発光素子23aとの間の接続点に接続され、さらに、エミッタが接地されている。
【0040】
なお、本実施形態のトランジスタ25aのベースと監視回路21の電圧検出部21aとの間には、電圧検出部21aが出力するデジタルデータをビット反転させる論理回路(NOT回路)25bが設けられている。
【0041】
このため、実際には、トランジスタ25aのベースには、電圧検出部21aが出力するデジタルデータをビット反転させたミラーデータ(反転データ)が入力されることとなる。例えば、マイコン22側へデジタルデータの「1」を伝達する際には、トランジスタ25aのベースに「0」に対応する電圧が印加され、マイコン22側へデジタルデータの「0」を伝達する際には、トランジスタ25aのベースに「1」に対応する電圧が印加される。
【0042】
次に、本実施形態に係る電池監視装置2の作動の概略について説明する。まず、電池監視装置2による組電池1の監視について説明する。この電池監視装置2による組電池1の監視は、組電池1の各電池ブロックBから監視回路21に電力が供給されて、監視回路21の電源部21bから絶縁素子23へ電力供給可能な状況において、例えば、外部から指令や、周期的に実行される。
【0043】
マイコン22は、各監視回路21側に、絶縁素子23を介して、各電池セル10の電池状態(電圧状態)の監視を指示する指令信号を出力(送信)する。マイコン22からの指令信号を受信した監視回路21では、電圧検出部21aにて監視対象である電池ブロックBの電圧等の電池状態を検出する。その後、監視回路21は、電圧検出部21aで検出した各電池セル10の電池状態等の出力信号(デジタルデータ)をマイコン22側へ送信し、マイコン22にて、各電池セル10の電池状態(例えば、過放電状態や過充電状態)が診断される。
【0044】
次に、監視回路21側からマイコン22側へのデータ送信する際の絶縁素子23およびバイパス回路25等の具体的作動について説明する。まず、監視回路21の電圧検出部21aから出力されたデジタルデータは、図2の破線矢印に示すように、論理回路25bに入力され、論理回路25bにてビット反転されたミラーデータがバイパス回路25のトランジスタ25aのベースに入力される。
【0045】
トランジスタ25aのベースに、監視回路21の電圧検出部21aから出力されたデジタルデータの「1」、つまり、ミラーデータにおける「0」に対応する電圧が印加されると、トランジスタ25aがオフする。この場合、図2の黒線矢印で示すように、電源部21bからの電流が絶縁素子23の発光素子23aに流れ、発光素子23aから受光素子23bへHiレベルを示す信号が伝達される。
【0046】
一方、トランジスタ25aのベースに、デジタルデータの「0」、つまり、ミラーデータにおける「1」に対応する電圧が印加されると、トランジスタ25aがオンする。この場合、図2の白抜矢印で示すように、電源部21bからの電流が絶縁素子23の発光素子23aを迂回して、バイパス回路25のトランジスタ25aに流れる。
【0047】
ここで、データ通信の際の消費電流について図3を用いて具体的に説明する。なお、図3は、データ通信の際の消費電流を説明するための説明図であり、図3(a)がデジタルデータの波形の一例を示し、図3(b)が図3(a)に示すデジタルデータをマイコン22側へ送信する際の消費電流を示している。
【0048】
例えば、監視回路21側からマイコン22側へ図3(a)に示すデジタルデータ「1001111」を送信する場合、デジタルデータの「1」がマイコン22側へ伝達される際に、絶縁素子23の発光素子23aにて電流が消費される。
【0049】
一方、監視回路21側からマイコン22側へデジタルデータの「0」を伝達する際には、絶縁素子23の発光素子23aにて消費される電流と同等の電流がバイパス回路25に流れて消費される。
【0050】
このため、図3(b)に示すように、監視回路21側からマイコン22側へのデータ送信する際には、デジタルデータの内容によらず、データ送信する際の消費電流が一定となる。
【0051】
以上説明した本実施形態の電池監視装置2では、デジタルデータの「0」をマイコン22側へ伝達する際にも、デジタルデータの「1」をマイコン22側へ伝達する際に絶縁素子23にて消費される電流と同等の電流がバイパス回路25を介して消費されるので、デジタルデータにミラーデータを付加するような加工を行うことなく、監視回路21側からマイコン22側へのデータ送信の際の消費電流のバラツキを抑制することができる。この結果、各監視回路21に対応する電池ブロックB毎の残存容量のバラツキを抑制することができる。
【0052】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0053】
(1)上述の実施形態では、絶縁素子23として光結合方式の絶縁素子(フォトカプラ)で構成する例を説明したが、これに限定されない。絶縁素子23としては、例えば、磁気結合方式の絶縁素子(トランスカップリング)や容量結合方式の絶縁素子(コンデンサカップリング)を採用してもよい。
【0054】
(2)上述の実施形態では、監視回路21の電圧検出部21aから出力されるデジタルデータに応じて、絶縁素子23の発光素子23aに流れる電流をオンオフするためのスイッチング素子として、バイパス回路25にトランジスタ25aを用いているが、スイッチング素子としては、トランジスタ25a以外の素子を用いてもよい。
【0055】
(3)上述の実施形態では、監視回路21の内部に電池ブロックBからの電力を用いて電圧検出部21aや絶縁素子23等を駆動するための電力を生成する電源部21bを設ける構成としているが、これに限らず、監視回路21の外部に電源部21bを設ける構成としてもよい。
【0056】
(4)上述の実施形態では、上述の各実施形態では、電池監視装置2を車載高圧バッテリに適用する例を説明したが、車載高圧バッテリに限らず、他のバッテリに用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 組電池
10 電池セル
2 電池監視装置
21 監視回路
21b 電源部
22 マイコン(制御手段)
23 絶縁素子(絶縁通信手段)
23a 発光素子(一次側要素)
23b 受光素子(二次側要素)
25 バイパス回路
25a トランジスタ
B 電池ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セル(10)を直列に接続して構成される組電池(1)の電池状態を監視する電池監視装置であって、
前記組電池(1)を所定数の電池セル(10)毎にグループ化した電池ブロック(B)に対応して設けられ、対応する前記電池ブロック(B)の電池状態を監視する複数の監視回路(21)と、
前記監視回路(21)の作動を制御する制御手段(22)と、
前記監視回路(21)および前記制御手段(22)を絶縁した状態で、前記監視回路(21)側から前記制御手段(22)側へ「0」と「1」の組み合わせからなるデジタルデータを送信する絶縁通信手段(23)と、
前記デジタルデータを送信する前記監視回路(21)に対応する前記電池ブロック(B)から供給される電力から前記絶縁通信手段(23)を駆動するための電力を生成する電源部(21b)と、
前記制御手段(22)側へ前記デジタルデータの「0」を伝達する際に、前記制御手段(22)側へ前記デジタルデータの「1」を伝達する際の前記絶縁通信手段(23)における消費電流と同等の電流が、前記絶縁通信手段(23)を迂回して流れるように構成されたバイパス回路(25)と、
を備えることを特徴とする電池監視装置。
【請求項2】
前記絶縁通信手段(23)は、前記監視回路(21)側の一次側要素(23a)、および前記制御手段(22)側の二次側要素(23b)を有する絶縁素子で構成され、
前記バイパス回路(25)は、前記一次側要素(23a)と前記電源部(21b)との接続点から分岐して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記絶縁素子は、フォトカプラであることを特徴とする請求項2に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記バイパス回路(25)には、前記一次側要素(23a)に対して並列接続されたトランジスタ(25a)が設けられ、
前記トランジスタ(25a)は、前記一次側要素(23a)から前記二次側要素(23b)へ前記デジタルデータの「1」を伝達する際に前記一次側要素(23a)側に電流を流すと共に、前記一次側要素(23a)から前記二次側要素(23b)へ前記デジタルデータの「0」を伝達する際に前記一次側要素(23a)を迂回して電流を流すように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の電池監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−88233(P2013−88233A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227855(P2011−227855)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】