説明

電池

【課題】リチウムの消費による電池素子の寸法の変化に起因する正負極間のコンタクトの低下を防止して、薄型でありながら放電末期においても高い放電容量を維持して、負荷特性を有すると共に、生産性に優れた電池を提供する。
【解決手段】正極集電体1bの片面のみに正極活物質層1aを設け、正極活物質層が対向するように屏風状に屈曲し、対向した正極活物質層間にセパレータを介して負極を配置する。次いで、正極と負極に電極端子を接続し、電池素子をラミネートフィルムで外装した後、減圧下で封止する。さらに、正極集電体屈曲部には活物質層を塗布せず、所定の未塗布幅を設けることで活物質の剥離、脱落を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池特性および生産性に優れた扁平型の一次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コイン型リチウム電池はパーソナルコンピュータ、コピー機、ビデオカメラ、ゲーム機など、エレクトロニクス製品のクロック用電源やメモリーバックアップ用電源として用いられるばかりでなく、ベンディングマシンやガスメーター、スマートキーシステム、タイヤプレッシャーモニタリングシステム、車載用ナビゲーションシステム、電子棚札など高温から低温までの幅広い使用温度範囲における駆動用電源としての用途が期待されている。
【0003】
ところが、近年コイン型電池を用いる機器側が必要とする負荷特性や放電容量、および電池に要求される形状(薄型であること)を満足するために、複数のコイン型電池を並列に接続して用いるアプリケーションが非常に多く見受けられる。このような使用方法は、電極の反応面積が非常に小さいコイン型電池の負荷特性や放電容量がアプリケーションのニーズにマッチしなくなっていることの表れである。
【0004】
通常、機器に電池を配置するためには溶接等が必要となり、非常に複雑な製造工程となる他、機器設計にも非常に大きな制約を課すことになる。それに加えて、並列に接続される電池が3個以上に増えてくると電池間の容量のばらつきに起因する問題が発生する。例えば、他よりも放電容量が小さい電池が、通常であれば放電が終了する状態になっても放電を続け、過放電を起こしてしまう、もしくは他の電池から充電され、ガス発生や内部短絡を起こすおそれがあり、非常に危険である。
【0005】
このような問題を解決するため、電池内部の空間を有効に利用して電池容量の向上を図った角形電池が用いられる。
【0006】
そこで、以下の特許文献1に示すように、電極を屏風状に折りたたんで電池を作製することにより、反応面積を増大させ、大電流を流すことができ、薄型にも対応した電池を得ることが可能となった。
【特許文献1】特開平6−187998号広報
【0007】
図1は特許文献1における一実施形態の電池の構成を示す模式図である。特許文献1の発明では、絶縁性を有する基体3上、もしくは絶縁性を有する基体3に設けた正極集電体1b上に、正極活物質1aを塗布することにより作製した正極と、絶縁性を有する基体3上もしくは絶縁性を有する基体3に設けた負極集電体2b上に、負極活物質2aを塗布することにより作製した負極とのそれぞれに保護シート4を設け、図1のような状態で折りたたむことにより電池素子を作製し、電池素子を金属材料からなる外装缶または樹脂材料からなる電池ケースに収納することで電池としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
負極に金属リチウムもしくは金属リチウム合金を用いた電池においては、放電が進むにしたがってリチウムが消費されてしまい、負極が痩せてきてしまう。ところが、コイン型リチウム電池や上述の特許文献1のように金属ケースを外装に用いた電池の場合、金属ケースはリチウムの消費による電池素子の寸法の変化に追随することができず、正負極間もしくは正極および正極ケースのコンタクトが悪くなる。このため、特に放電末期において電池内部のインピーダンスが上昇し、負荷特性が極端に低下してしまうという問題が生じる。
【0009】
そこで、この発明は上記問題点を解消し、薄型でありながら放電末期においても負荷特性を有するとともに、生産性に優れた電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の第1の態様は、帯状の金属箔からなる集電体上に活物質を含有する活物質層が設けられた正極と、金属リチウムまたは金属リチウム合金からなる負極と、セパレータとを有する電池において、正極は集電体片面のみに活物質層を形成し、活物質層が互いに対向するように屈曲されていることを特徴とする電池である。
【0011】
また、この発明の第2の態様は、帯状の金属箔からなる集電体上に活物質を含有する活物質層が設けられた正極と、金属リチウムまたは金属リチウム合金からなる負極と、セパレータとを有する電池において、正極は集電体片面のみに活物質層を形成し、活物質層が互いに対向するように屈曲され、正極が屈曲された屈曲部には、活物質層未塗布部を設けていることを特徴とする電池である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、電極を効果的に配置することで電極面積を大きく取ることができ、電池の内部抵抗を低減させて高い電池特性を有する電池を作製することができる。また、活物質を金属箔片面に塗布するだけであるので、生産性に優れ、設備投資にかかるコストの削減も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図2に、この発明を適用した電池の構成を示す。この電池は外装がラミネートフィルムからなり、正極、負極それぞれに接続した正極端子12aおよび負極端子12bがラミネートフィルムの貼り合せ部から導出されて作製されている。
【0015】
以下に、この発明を適用した電池の作製方法について説明する。
【0016】
[正極電極]
正極は、正極活物質を含有する正極活物質層が、正極集電体の片面上に形成されてなる。正極集電体としては、例えばアルミニウム(Al)箔,ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔により構成されている。
【0017】
正極活物質層は、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。これらを均一に混合して正極合剤とし、この正極合剤を溶剤中に分散させてスラリー状にする。このとき、増粘剤を用いて所定の粘度を有するように調整する。ついで、このスラリーを正極集電体上に均一に塗布し、正極合剤中の水分を除去するために真空乾燥機で乾燥させることにより正極が作製される。ここで、正極活物質、導電剤、結着剤および溶剤は、均一に分散していればよく、その混合比は問わない。
【0018】
正極活物質としては、3V系の電池であれば二酸化マンガンもしくはフッ化黒鉛、1.5V系であれば硫化鉄を選択することが可能である。なお、各々の質量エネルギー密度は二酸化マンガンで308mAh/g、フッ化黒鉛で860mAh/g、第二硫化鉄で890mAh/gであり、対極として用いるリチウム金属は3860mAh/gである。
【0019】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、あるいはアセチレンブラックなどの炭素材料等が用いられる。また、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリビニリデンフルオライド等が用いられる。また、溶剤としては、例えばエタノール等が用いられる。
【0020】
正極電極はダイコーティング法、転写印刷法、スクリーン印刷法等を用い塗布することができる。生産性や設備コストの点から考えると、金属箔の片面にのみ活物質を塗布することが望ましい。つまり、両面に活物質を塗布した場合、一つの機械で実施するためには片面に印刷した電極を乾燥させた後巻取り、裏面に再度活物質を塗布し乾燥し巻取りという工程が必要になる。もしくは片面に活物質を塗布し、乾燥した直後に裏面に活物質を塗布し、乾燥、巻取りというように表裏連続した工程で塗布を行う場合、活物質を塗布する設備が表用と裏用の2つ必要となり非常にコストが高騰してしまう。このため、片面印刷で電極を構成することで生産性の向上や設備投資に必要なコストを大幅に削減することができる。
【0021】
正極集電体上に正極活物質層を形成して作製した正極は、端部にスポット溶接または超音波溶接等で正極端子を接続する。この正極端子は金属箔が望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極端子の材料としては、例えばアルミニウム等が挙げられる。
【0022】
[負極電極]
負極としては、金属リチウムまたは金属リチウム合金を用いる。負極も正極と同様に、端部にスポット溶接または超音波溶接等で負極端子を接続する。この負極端子は金属箔が望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。負極端子の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル、ステンレス、ニッケルで被覆したステンレスもしくは鉄(Fe)等が挙げられる。
【0023】
[セパレータ]
セパレータは、その素材がガラス繊維、セラミック繊維、ポリフェニレンサルフィド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる樹脂材料のいずれか1種もしくは複数種類から選択されるマイクロポーラスフィルムや不織布から選択される。中でも、低温特性を改善するという観点に着目した場合、正負極電極間の幅を狭めることができるマイクロポーラスフィルムが望ましい。
【0024】
[電解液]
電解液の有機溶媒は、ポリカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン、3メチルスルホラン、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1,3ジオキソランから任意の1種類もしくは複数種類の中から選択することができる。
【0025】
電解液塩としては過塩素酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、三フッ化メタンスルホン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、ヨウ化リチウム等から任意の1種類もしくは複数種類の中から選択することができる。
【0026】
このような材料を用いて電池素子を作製する。図3および図4に示すように、正極21は、正極集電体21bの片面に形成された正極活物質21a面同士が対向するように3回以上屈曲させ、その正極活物質21aが対向する面の間にセパレータ23を介して金属リチウムまたは金属リチウム合金箔からなる負極22を配置する。正極活物質21a面を内側に向けることで、リチウム負極22は端面以外外部に露出することは無い。リチウムは非常に活性が高く吸湿しやすいため、ドライルームなど露点が低い環境で取り扱われる。しかし、その環境においても作業者などから発生する水分を吸湿し水酸化リチウムなどの皮膜を形成して電池の特性を悪化させてしまうため、製造工程上速やかにセパレータを介した正極電極によって電極素子を組上げて、その表面を覆うことは負極電極の取り扱い上非常に重要である。
【0027】
[電池の作製]
上述のようにして作製した電池素子を、厚さ100μm程度のラミネートフィルムからなる外装材で被覆して電池を作製する。電池の作製に用いるラミネートフィルムの構成として、以下に示すような材料を使用することができる。
【0028】
図5に、ラミネートフィルム30の主な構成の一例を示す。参照符号31で示される金属箔は、樹脂フィルムからなる外装層32および樹脂フィルムからなる内装層33(以下、シーラント層と適宜称する)に挟まれた、防湿性、絶縁性を有する多層フィルムからなる。金属箔31は、外装材の強度向上の他、水分、酸素、光の進入を防ぎ内容物を守る最も重要な役割を担っており、ステンレスあるいはニッケルメッキを施した鉄等を材料として適宜用いることができるが、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウム(Al)が最も好適である。なお、必要であれば金属箔31と外装層32およびシーラント層33のそれぞれの間に接着層を設けてもよい。
【0029】
外装層32には外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからナイロン(Ny)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0030】
また、シーラント層33は、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)の他、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0031】
ラミネートフィルムの最も一般的な構成は、外装層/金属箔/シーラント層=PET/Al/PEである。また、この組み合わせばかりでなく、以下に示すような他の一般的なラミネートフィルムの構成を採用することができる。すなわち、外装層/金属膜/シーラント層=Ny/Al/CPP、PET/Al/CPP、PET/Al/PET/CPP、PET/Ny/Al/CPP、PET/Ny/Al/Ny/CPP、PET/Ny/Al/Ny/PE、Ny/PE/Al/LLDPE、PET/PE/Al/PET/LDPE、またはPET/Ny/Al/LDPE/CPPとすることができる。なおここで上述のごとく、金属箔としてはAl以外の金属を採用することができることはもちろんである。
【0032】
図6に示すように、上述のようなラミネートフィルム30に電池素子41を挟み、電解液を注液するための一辺を残して熱溶着する。電池内部に電解液を注液し、電池内部の空気を可能な限り除去するために減圧下で残りの辺を熱溶着し、図2に示すような電池を作製した。
【0033】
電池素子41は薄く、熱溶着は減圧下で行われるため、ラミネートフィルム30をそのまま用いても問題ないが、電池の内部容積を有効に利用するために予め凹部をもつように成型し、電極素子41がこの凹部に納まるようにしておくことも可能である。
【0034】
このように電極を折りたたむ構成を用いることにより高い生産性を維持することが可能である。また放電が進んでリチウムの消費が進み、負極が痩せてきた場合であっても、内部、外部の圧力差によりラミネート外装が変形し、正負極間のコンタクトの低下を防ぐことができる。これにより、電池特性の低下を解消し、放電終期まで大電流を流すことができる。
【0035】
また、以下の方法を用いることにより、さらに生産性に優れ、高い電池特性を有する電池を得ることができる。
【0036】
例えば、正極活物質を従来よりも厚く形成し、電池を作製することで、電池容量を向上させることができる。しかしながら、このような場合、電極を屈曲する際に活物質の剥離や脱落が生じてしまう。そこで、例えば厚さ100μm以上の厚い電極を用いる場合には短冊状の電極を積層して構成させなければならない。
【0037】
ところが、短冊状の電極を積層する場合、電極のハンドリングや電極同士の位置精度をコントロールするために複雑な工程が必要となり、生産性に劣ってしまう。
【0038】
そこで、図7に示すように、屈曲部に活物質を塗布しない未塗布部55,56等を設けて電極を屈曲させ電池を作製することで、電極の位置ずれによる集電体端面での活物質の脱落やセパレータの位置ずれによる短絡などの不良の発生を少なくすることができる。なお、未塗布部55は、活物質層を外側にして屈曲させた山折の未塗布部であり、未塗布部56は、活物質層を内側にして屈曲させた谷折の未塗布部である。
【0039】
電極の集電体として用いる金属箔は印刷時に張力を保ちながら印刷する方が連続生産には都合が良いため、ほとんど伸びが無い硬質の金属箔を用いている。このため、電極を屈曲させる場合においても金属箔が伸びることはほとんど無い。
【0040】
図8に示すように、集電体60上に活物質層61を形成した電極が山折になる場合、金属箔の折曲げに対して活物質の外側に当たる部分の伸びが追随できず、電極の割れが発生する(図8C)。その割れを基点に活物質がスプリングバックすることで金属箔の剥離、脱落が発生してしまう。たとえ未塗布部があった場合でも十分な未塗布幅を設けられていない場合には同様な原因で剥離が発生する。
【0041】
また、電極が谷折になる場合、活物質が縮み方向に圧縮されるため、脱落や剥離の発生の可能性は少ない。しかしながら、生産性を考慮するとこの部分にも未塗布部を設けておくことで電極の折曲げ位置を明確化することができる。これにより、屈曲させる際にも位置がずれることが無いために、未塗布部を設けることが望ましい。その際に未塗布部の幅は活物質の厚さTとしたときに2T以上の幅を持たせることが必要であり、この幅以下で電極を塗布した場合、山折の場合と反対に金属箔が伸びに追随できず、金属箔が切断されてしまう。
【0042】
図9のように、電極を屈曲した場合必ず金属箔の内側にも最小折曲げ半径rができる。金属箔の板厚をt、外側半径をRとした場合、R=t+rで示される。また、屈曲させた金属箔の円弧ABと金属箔の直線部を結ぶ円弧BCは、少なくとも半径rで結ばれる。またこの円弧ABの角度θは円弧BCの角度と同じであり、円弧BCの中心と屈曲部の中心を結ぶ長さはt+2rである。このとき、屈曲部の外側半径Rとの関係は(t+2r)cosθ=t+rとなる。また、円弧ABの長さと円弧BCの長さはそれぞれA=(t+r)θ,B=rθとなる。
【0043】
次に、図10のLに相当する部分の長さはL2=(t+2r)2−(t+r)2=2tr+3r2であり、円弧ABと円弧BCの端部を直線で結んだ場合の長さMはM2=L2+r2であるから、M2=2tr+4r2と示すことができる。
【0044】
θが十分に小さい時はM≒A+Bと近似できるので、M2=(A+B)2となる。よって、θ2=2r2/(t+2r)とみなすことができる。したがって、長さA+B={2(t+2r)r}1/2となるため、山折部に必要な未塗布部の幅は、π(t+2r)+2×{2(t+2r)r}1/2となる。
【0045】
図11に、適切な未塗布部を設けた屈曲部の様子を示す。このように、上記の幅以上の未塗布部を設けることにより、正極活物質が山折部となる屈曲部に活物質が掛からず、活物質の剥離や脱落の心配が無い。
【0046】
また、未塗布部は少なくとも山折部に設けていれば良く、山折部と谷折部の両方に未塗布部を設ける場合であっても同じ幅にする必要はない。
【0047】
さらに、図12に示すように、電池素子の最外面に位置する正極の幅を内面に位置する正極の幅よりも大きくすることで反応面積を大きくすることができるため、最外面の正極を内面の正極よりも大きく取ることが望ましい。
【実施例】
【0048】
以下、この発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
(1)電池特性の測定
[電池の作製]
正極活物質としてフッ化黒鉛80.8質量%、導電剤としてアセチレンブラック15.1質量%を均一に混合し、エタノールに分散させてスラリーとした後、結着剤としてアセチレンブラックを4.1質量%の割合で混合する。このとき、増粘剤として水に溶解させたカルボキシメチルセルロースを混合し、所定の粘度(200Pas)に調整して正極合剤とした。
【0050】
正極集電体51bとして厚さ20μmのアルミニウム箔を用い、この上に正極合剤をスクリーン印刷することにより正極活物質層51aを形成した。このようにして作製した正極51を真空雰囲気下で乾燥させた後、図12に示すようにW字状に屈曲し、セパレータ53としてマイクロポーラスフィルムを配置した後、金属リチウム52を図12のように配置して電池素子を作製した。このとき、正極端子54aおよび負極端子54bはお互い隣り合う面に配置する。
【0051】
上述のようにして作製した電池素子は、外装層をPET、金属層をAl、シーラント層をPEとしたアルミラミネートフィルムに挟み込み、一辺を残して熱溶着した。
【0052】
次いで、ラミネートフィルム開口部から電解液を注液する。電解液は、γ−ブチロラクトンにリチウムテトラフルオロボレートを1mol/l溶解して作製する。電解液を注液した後、真空脱気した雰囲気下で開口部を封止することにより、電池を作製した。作製した電池は以下のとおりとする。
【0053】
<実施例1>
幅28mm、長さ49mm、厚さ1.8mmとし、容量600mAhの電池を作製した。
【0054】
<実施例2>
幅15mm、長さ60mm、厚さ2.1mmとし、容量400mAhの電池を作製した。
【0055】
なお、比較例として従来のコイン型電池を用いた。比較例として用いる電池は以下のとおりとする。
【0056】
<比較例1>
正極に二酸化マンガン、負極にリチウムを用いた、容量600mAhのコイン型電池CR2450を用いた。
【0057】
<比較例2>
正極にフッ化黒鉛、負極にリチウムを用いた、容量550mAhのコイン型電池BR2450を用いた。
【0058】
<比較例3>
正極に二酸化マンガン、負極にリチウムを用いた、容量75mAhのコイン型電池CR1620を用いた。
【0059】
実施例1,2および比較例1,2,3の各電池の規格を以下の表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1からもわかるとおり、この発明により作製した電池はコイン型電池と比較して電池厚さが非常に薄く、また正極の反応面積も15倍以上の大面積化を図ることが可能である。また、内部抵抗が非常に小さいため、負荷特性の低下も防止することができる。
【0062】
上述の各電池を、−40℃の環境下で10mA放電中の閉回路電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)を測定する。測定は放電深度(DOD:Depth of Battery Discharge)別に行い、放電開始から0.1秒後に測定する。
【0063】
図13に、CCVの測定結果を示す。実線で示されるグラフ71は実施例1の特性であり、破線で示されるグラフ72は比較例1の特性であり、点線で示されるグラフ73は比較例2の特性である。この発明を適用して作製した電池は、−40℃という厳しい環境下においても深深度放電まで有効に利用できるだけでなく、DODが0%でのCCVが従来のコイン型電池に比べて200〜600mVも改善していることがわかる。
【0064】
(2)活物質の剥離・脱落の測定
[電池の作製]
この測定で用いる電池の材料および作製方法は上述の測定(1)と同様とする。ただし、活物質の剥離・脱落の測定では、スクリーン印刷により、正極に活物質の未塗布部を以下のように設けた。
【0065】
<実施例3>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は0.15mmとした。
【0066】
<実施例4>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は0.90mmとした。
【0067】
<実施例5>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は1.20mmとした。
【0068】
<実施例6>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.50mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は1.20mmとした。
【0069】
<比較例4>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は設けないものとした。
【0070】
<比較例5>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は0.10mmとした。
【0071】
<比較例6>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は0.40mmとした。
【0072】
<比較例7>
厚さ20μmのアルミニウム箔上に、厚さ0.30mmの正極活物質を形成した。未塗布部の幅は0.40mmとした。
【0073】
まず、実施例3〜6および比較例4,5を用いて、電極を山折(活物質の塗布面が外側になるよう屈曲する)にしたときの剥離・脱落の様子を測定した。以下の表2に、測定の結果を示す。なお、各実施例および比較例は、10個ずつ電池を作り、剥離・脱落が発生した個数を測定するものとする。
【0074】
【表2】

【0075】
上記結果より、山折部に所定幅の未塗布部を設けることによって、活物質の剥離、脱落を防ぐことができる。
【0076】
次いで、実施例4〜6および比較例4〜7を用いて、電極を谷折(活物質の塗布面が内側になるよう屈曲する)にしたときの剥離・脱落の様子を測定した。以下の表3に、測定の結果を示す。なお、各実施例および比較例は、10個ずつ電池を作り、剥離・脱落が発生した個数を測定するものとする。
【0077】
【表3】

【0078】
上記結果より、谷折部に塗布した活物質層の厚さの2倍よりも大きい幅で未塗布部を設けることにより、活物質の剥離、脱落を防ぐことができる。
【0079】
このように、電極を屈曲して積層した電池素子をラミネートフィルムで外装することにより、優れた特性を有する電池を作製することができる。また、集電体片面のみに活物質を塗布する構成としているため、生産性も向上する。また、あわせて正極活物質層を厚くし、適切な活物質未塗布部を設けることにより、生産性が高く、より優れた電池を得ることができる。
【0080】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0081】
例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0082】
また、図14に示すように、積層した電極の端部同士をテープ81にて貼り付けし、負極の飛びだしを防止する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】特許文献1の電池構成を説明する断面図である。
【図2】この発明を適用して作製した電池の外観を示す模式図である。
【図3】電極を屈曲させて電池素子を作製した場合の断面図である。
【図4】電極を屈曲させた時の様子を示す模式図である。
【図5】この発明を適用して電池を作製する際に外装として用いるラミネートフィルムの構成を示す断面図である。
【図6】電池素子をラミネートフィルムにて外装する際の様子を示す模式図である。
【図7】屈曲部に活物質未塗布部を設けて電池素子を作製した場合の断面図である。
【図8】集電体を山折に屈曲させた場合に活物質層に割れが発生する様子を示す模式図である。
【図9】集電体を山折に屈曲させた場合の屈曲部の様子を示す模式図である。
【図10】集電体を山折に屈曲させた場合の屈曲部の一部分を示す模式図である。
【図11】適切な未塗布部を設けた場合の山折屈曲部の様子を示す模式図である。
【図12】最外面の正極幅を内面の正極幅よりも広く取った時の様子を示す断面図である。
【図13】−40℃の環境下で10mA放電中の閉回路電圧を放電深度別に測定した結果を示す略線図である。
【図14】積層した電極の端部同士をテープにて貼り付けし、負極の飛びだしを防止する場合の電池構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1・・・正極
1a・・・正極活物質
1b・・・正極集電体
2・・・負極
2a・・・負極活物質
2b・・・負極集電体
3・・・絶縁性基体
4・・・保護シート
11・・・電池
12a・・・正極端子
12b・・・負極端子
21・・・正極
21a・・・正極活物質
21b・・・正極集電体
22・・・負極
23・・・セパレータ
24a・・・正極端子
24b・・・負極端子
30・・・ラミネートフィルム
31・・・金属箔
32・・・外装層
33・・・シーラント層
41・・・電池素子
51・・・正極
51a・・・正極活物質層
51b・・・正極集電体
52・・・負極
53・・・セパレータ
54a・・・正極端子
54b・・・負極端子
55・・・未塗布部
56・・・未塗布部
60・・・集電体
61・・・活物質層
81・・・テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔からなる集電体上に活物質を含有する活物質層が設けられた正極と、金属リチウムまたは金属リチウム合金からなる負極と、セパレータとを有する電池において、
上記正極は集電体片面のみに活物質層を形成し、上記活物質層が互いに対向するように屈曲されていることを特徴とする電池。
【請求項2】
金属層の外面および内面が樹脂層で挟まれてなるラミネートフィルムで外装し、上記正極および上記負極と電気的に接続された電極端子をラミネートフィルムの開口部から導出し、開口部を熱融着することにより封止したことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
上記活物質は、二酸化マンガン、フッ化黒鉛および硫化鉄よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
帯状の金属箔からなる集電体上に活物質を含有する活物質層が設けられた正極と、金属リチウムまたは金属リチウム合金からなる負極と、セパレータとを有する電池において、
上記正極は集電体片面のみに活物質層を形成し、上記活物質層が互いに対向するように屈曲され、上記正極が屈曲された屈曲部には、活物質層未塗布部を設けていることを特徴とする電池。
【請求項5】
上記正極の集電体上に形成された活物質層の厚さは、100μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項6】
上記活物質層未塗布部は、少なくとも山折部に設けていることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項7】
上記山折部に設けた未塗布部の幅は、金属箔の厚さをt、金属箔内側にできた折曲げ半径をrとすると、π(t+2r)+2×{2(t+2r)r}以上であることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項8】
上記山折部の未塗布幅と谷折部の未塗布幅は、異なることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項9】
最外面の正極電極は、内面に配置される正極電極よりも幅が広いことを特徴とする請求項4に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−147300(P2006−147300A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334794(P2004−334794)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】