説明

電池

【課題】 短絡の発生を防止しつつ、容量を高くすることができる電池を提供する。
【解決手段】
正極23と負極24とが、電解質層25およびセパレータ26を介して積層されている。電解質層25は、電解液を高分子化合物に保持させたいわゆるゲル状となっている。正極23には正極リード21が取り付けられており、正極リード21の取り付け部分は絶縁被覆材27で覆われ、正極23から突出した領域は樹脂被覆材28で覆われている。これらの絶縁被覆材27と樹脂被覆材28とは一部において重なり合い、この重なり合う部分は絶縁被覆材27が延長されることにより正極23から突出した領域に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とを電解質を介して積層し巻回した電極巻回体をフィルム状の外装部材の内部に備えた電池に関し、特に電極に被覆材を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR、携帯電話、携帯用コンピューター等のポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池、なかでも非水電解質を用いた二次電池(例えばリチウムイオン電池)について、薄型化あるいは折り曲げ可能化などの設計自由度の向上を図る研究が活発に進められている。
【0003】
形状設計が自在な電池としては、例えば高分子化合物に電解質塩、例えばリチウム塩を溶かし込んだ完全固体電解質、あるいは高分子化合物に電解液を保持させた半固体電解質(ゲル状電解質)用いたものが提案され注目を浴びている。
【0004】
このような固体電解質あるいは半固体電解質を用いた電池では、電解液の液漏れの問題が無くなり、外装部材にハードセルを用いることが不要となるので、一層の小型軽量化、薄型化を実現することが可能になり、例えば外装部材にプラスチックフィルムあるいはプラスチックフィルムと金属とを張り合わせたいわゆるラミネートフィルムを用いることが種々検討されている。
【0005】
図7は従来のラミネートフィルムを外装部材として用いた二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、例えば正極リード121および負極リード122が取り付けられた電極巻回体120を外装部材110の内部に収納し、正極リード121および負極リード122を外装部材110の内部から外部に向かい導出したものである。この二次電池では、正極リード121および負極リード122が折り曲げなどによりラミネートフィルムの端面に露出した金属層と接触して短絡が生じ、外部ショートを引き起こす危険性があり、信頼性に欠けていた。
【0006】
そこで、例えば図8に示したように、正極リード121および負極リード122と外装部材110との間に樹脂被覆材128を介在させ、絶縁性を確保すると共に、正極リード121および負極リード122と外装部材110との密着性を向上させる方法がとられている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、この樹脂被覆材128は、外部圧力印加による正極リード121あるいは負極リード122と対極との接触による短絡を防止するために、例えば図9に示したように、正極123あるいは負極124に対する取り付け部分にも重なるように設けられていた。なお、図9は、図8に示した電極巻回体120のIV−IV線に沿った断面構造を表したものであり、電解質層は省略している。
【0007】
ところで、このような固体電解質あるいは半固体電解質を用いた電池では、電解液を用いる場合に比べて電極と電解質との接触性が悪いので、例えば電極巻回体120に圧力を加えてその接触性を向上させることもある。この場合、正極リード121の取り付け部分あるいは負極リード122の取り付け部分に段差が生じてしまうので、加圧時にこの段差によりセパレータ126が破損し、短絡が生じてしまうことがあるという問題があった。そこで、この段差部分に絶縁被覆材を設けることが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開昭56−71278号公報
【特許文献2】特開平3−62447号公報
【特許文献3】特開平9−288998号公報
【特許文献4】特開2000−133218号公報
【特許文献5】特開2001−266946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来は、樹脂被覆材128を正極リード121あるいは負極リード122の取り付け部分まで延長して設け、それに重ねるように絶縁被覆材を設けるようにしていたので、取り付け部分の厚みが厚くなり、電池の単位体積当たりの容量が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたもので、その目的は、短絡の発生を防止しつつ、容量を高くすることができる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電池は、正極と負極とを電解質を介して積層し巻回した電極巻回体をフィルム状の外装部材の内部に備えたものであって、正極には正極リードが取り付けられると共に、負極には負極リードが取り付けられ、正極リードおよび負極リードは、それぞれ、各電極に対する取り付け領域と、各電極から突出した突出領域とを有し、この2つの突出領域はそれぞれ外装部材の外部に引き出され、それぞれ外装部材と接触する部分は樹脂被覆材で覆われており、2つの取り付け領域のうち、取り付けられた電極の対極と対向する領域は、絶縁被覆材で覆われており、この絶縁被覆材と樹脂被覆材とは一部において重なり合い、この重なり合う部分は絶縁被覆材が延長されることにより突出領域に設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池によれば、絶縁被覆材と樹脂被覆材との重なり合う部分を、絶縁被覆材を延長することにより突出領域に設けるようにしたので、外部から圧力が加わっても、正極リードまたは負極リードが負極または正極と接触して短絡することを防止することができる。また、取り付け領域における絶縁被覆材と樹脂被覆材との重なりをなくすことができ、電池の単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0012】
特に、樹脂被覆材と絶縁被覆材との重なり量を、0.2mm以上とすればより高い効果を得ることができる。
【0013】
更に、正極活物質層の巻回方向における端部と、負極活物質層の巻回方向における端部に対向する正極の端部対向領域とを、絶縁被覆材で覆うようにすれば、これらの端部とこれらの端部に対向する領域との接触を防止することができ、短絡を防止することができる。
【0014】
加えて、正極あるいは負極の巻回方向において対極と対向する端部と、この端部に対向する対極の領域とのうちの少なくとも一方を絶縁被覆材で覆うようにすれば、これらの領域の接触を防止することができ、短絡を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、例えば、フィルム状の外装部材10の内部に、電極巻回体20が収納された構成を有している。外装部材10は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材10は、例えば、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0017】
電極巻回体20には、正極リード21および負極リード22が取り付けられている。正極リード21および負極リード22は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材10の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード21は、例えばアルミニウム(Al),チタンあるいはこれらの合金などの金属材料により構成されており、負極リード22は、例えば銅,ニッケル(Ni)あるいはこれらの合金などの金属材料により構成されている。
【0018】
図2は、図1に示した電極巻回体20のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電極巻回体20は、正極23と負極24とを電解質層25およびセパレータ26を介して積層し巻回したものであり、最外周部は図示しない保護テープにより保護されている。
【0019】
正極23は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体23Aと、この正極集電体23Aの両面あるいは片面に設けられた正極活物質層23Bとを有している。正極集電体23Aには、例えば巻回中心側および巻回外周側に正極活物質層23Bが設けられず露出している露出領域が形成されている。正極集電体23Aにおける巻回中心側の端部23Cは、例えばセパレータ26を介して対極と対向しており、一方、巻回外周側の端部23Dは、例えば同一極と対向している。
【0020】
正極集電体23Aは、例えば、導電性がよく、軽量かつ安価で、加工性のよいアルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層23Bは、例えば、正極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料という。)のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料としては、例えば、リチウムと遷移金属とを含むリチウム複合酸化物あるいはリチウムリン酸化合物が好ましい。これらは高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、高容量化を図ることができるからである。
【0021】
負極24は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体24Aと、この負極集電体24Aの両面あるいは片面に設けられた負極活物質層24Bとを有している。負極集電体24Aには、正極23と同様に、例えば巻回中心側および巻回外周側に負極活物質層24Bが設けられず露出している露出領域が形成されている。負極集電体24Aにおける巻回中心側の端部24Cは、例えばセパレータ26を介して同一極と対向しており、一方、巻回外周側の端部24Dは、セパレータ26を介して対極と対向している。
【0022】
負極集電体24Aは、例えば、導電性がよく、軽量かつ安価で、加工性のよい銅箔などの金属箔により構成されている。負極活物質層24Bは、例えば、負極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料(以下、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料という。)のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0023】
リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化炭素などの炭素材料が挙げられる。また、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体,合金または化合物も挙げられる。
【0024】
電解質層25は、正極活物質層23Bおよび負極活物質層24Bの表面に形成されており、電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒と、これら電解質塩および溶媒を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。
【0025】
電解質塩としては、例えば、LiClO4 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiN(SO2 CF3 2 ,LiN(SO2 2 5 2 ,あるいはLiAsF6 などのリチウム塩が挙げられる。溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの非水溶媒が挙げられる。高分子化合物は、溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデンあるいはビニリデンフルオロライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物が挙げられる。
【0026】
セパレータ26は、電気的に安定であると共に、正極活物質,負極活物質あるいは溶媒に対して化学的に安定であり、かつ電気伝導性を有していなければどのようなものを用いてもよく、例えば、微多孔性のポリプロピレンが挙げられる。
【0027】
図3は、図2に示した電極巻回体20における電解質層25が形成された正極23の巻回前の構成を表すものである。正極23は、例えば、正極活物質層23Bの巻回中心側における端部23E、および巻回外周側における端部23Fが、電解質層25から露出されており、セパレータ26を介して対極と対向している。これらの端部23E,23Fは、絶縁被覆材27で覆われていることが好ましい。セパレータ26が破損し、対極と短絡してしまうのを防止することができるからである。
【0028】
正極23は、また、例えば負極集電体24Aの外周側の端部24Dと対向する端部対向領域23G、負極活物質層24Bの巻回中心側の端部24Eと対向する端部対向領域23H、および負極活物質層24Bの巻回外周側の端部24Fと対向する端部対向領域23Iを有している(図2参照)。これら端部対向領域23G,23H,23Iも、絶縁被覆材27で覆われていることが好ましい。これらとの接触による短絡を防止することができるからである。なお、端部対向領域23G,23Iは、端部23Fと共に同一の絶縁被覆材27により連続して覆われており、端部対向領域23Hは、端部23Eと共に同一の絶縁被覆材27により連続して覆われている。
【0029】
正極23は、例えば正極集電体23Aの外周側の端部23Dと対向する領域を有しているが、この対向する領域は、絶縁被覆材27で覆われていてもよいし、覆われていなくてもよい。これらの接触により短絡が生じても、電池の起電容量には、ほとんど影響がないからである。
【0030】
絶縁被覆材27としては、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリイミドあるいはポリエチレンテレフタラートが挙げられる。また、絶縁被覆材27の厚みは、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましい。薄いと機械的強度が低下してしまい、厚いとエネルギー密度が低下してしまうからである。更に、絶縁被覆材27の突刺荷重は、例えば5.68N/cm2 以上であることが好ましい。低いと外部からの圧力が印加された際に破損してしまうからである。なお、突刺荷重は、例えばニードル貫通測定装置(KES-G5ハンディー圧縮試験機:カトーテック株式会社製)の測定端子を用い、絶縁被覆材27に一定速度で荷重を加えて破膜した際のピーク荷重により測定することができる。
【0031】
正極集電体23Aの巻回中心側の露出領域には、正極リード21が取り付けられている。正極リード21は、正極23おける取り付け領域21Aと、正極23から突出した突出領域21Bとを有している。取り付け領域21Aは、例えばセパレータ26を介して負極24と対向しており、絶縁被覆材27で覆われている。取り付け領域21Aに形成された段差部分が、負極24と短絡してしまうことを防止するためである。なお、取り付け領域21Aは、端部23Eと共に同一の絶縁被覆材27により連続して覆われている。
【0032】
突出領域21Bには、その外装部材10と接触し、取り付け領域21Aと重なり合わない範囲において、樹脂被覆材28が設けられている。絶縁性を確保すると共に、正極リード21と外装部材10との密着性を向上させるためである。
【0033】
樹脂被覆材28としては、例えば、ラミネートフィルムの電極巻回体20と対向する側の層と同様のものを用いることができ、例えば、耐湿グレードのポリエチレン,ポリプロピレン、またはアクリル酸変性を施したポリエチレン,ポリプロピレン、またはマレイン酸変性を施したポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂被覆材28を接着する方法としては、例えば熱圧着,熱融着あるいはインサート成型が挙げられる。
【0034】
樹脂被覆材28の厚みは、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、特に5μm以上50μm以下であることが望ましい。薄いと機械的強度が低下してしまい、厚いと接着部分の透湿性が高くなるからである。
【0035】
図4は、図3に示した正極23のII−II線に沿った断面構造を表すものである。取り付け領域21Aを覆う絶縁被覆材27は、例えば取り付け領域21Aから突出領域21Bに向かって延長されており、突出領域21Bにおいて樹脂被覆材28と重なり合っている。図5に図1に示した電極巻回体20のIII−III線に沿った断面構造を示す。このように重なり部分を突出領域21Bに設けることにより、外部から正極リード21に圧力が加わっても、負極24との接触による短絡の発生を防止することができると共に、取り付け部分の厚みを薄くすることができるので電池の単位体積当たりの容量を高くすることができるからである。なお、図5において電解質層25は省略している。
【0036】
絶縁被覆材27と樹脂被覆材28との重なり量は、例えば0.2mm以上であることが好ましい。重なり量が少ないと、外部からの圧力により短絡が生じてしまう場合があるからである。
【0037】
図6は、図2に示した電極巻回体20における電解質層25が形成された負極24の巻回前の構成を表すものである。負極24は、例えば正極集電体23Aの内周側の端部23Cと対向する端部対向領域24Gを有している。この端部対向領域24Gは、絶縁被覆材27で覆われていることが好ましい。これらが接触して短絡が生じてしまうのを防止することができるからである。
【0038】
負極24は、また、負極集電体24Aの内周側の端部24Cと対向する領域を有しているが、この対向する領域は、絶縁被覆材27で覆われていてもよいが、覆われていなくてもよい。これらの接触により短絡が生じても、電池の起電容量には、ほとんど影響がないからである。
【0039】
負極集電体24Aの巻回中心側の露出領域には、負極リード22が取り付けられている。負極リード22は、負極24における取り付け領域22Aと、負極24から突出した突出領域22Bとを有しており、取り付け領域22Aは、例えばセパレータ26を介して負極24と対向している。取り付け領域22Aは、絶縁被覆材27で覆われていてもよいが、覆われていなくてもよい。取り付け領域22Aに形成された段差部分は、負極22と対向しており、これらが接触して短絡が生じても、電池の起電容量には、ほとんど影響がないからである。突出領域22Bには、正極リード21と同様に、その外装部材10と接触し、取り付け領域22Aと重なり合わない範囲において、樹脂被覆材28が設けられている。絶縁性を確保すると共に、負極リード22と外装部材10との密着性を向上させるためである。
【0040】
このような構成を有する二次電池は、例えば次のようにして製造することができる。
【0041】
まず、例えば、正極活物質と導電剤と結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。次いで、正極合剤スラリーを正極集電体23Aの両面あるいは片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層23Bを形成し、正極23を作製する。続いて、例えば、正極リード21の突出領域21Bに樹脂被覆材28を接着したのち、正極リード21の取り付け領域21Aを例えば超音波溶接あるいはスポット溶接により正極集電体23Aに接合する。そののち、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物とを溶剤を用いて混合し、この混合溶液を正極活物質層23Bの上、すなわち正極23の両面あるいは片面に塗布し、溶剤を揮発させて、電解質層25を形成する。
【0042】
また、例えば、負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次いで、負極合剤スラリーを負極集電体24Aの例えば両面あるいは片面に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層24Bを形成し、負極24を作製する。続いて、例えば、負極リード22の突出領域22Bに樹脂被覆材28を接着したのち取り付け領域22Aを例えば超音波溶接あるいはスポット溶接により負極集電体24Aに接合すると共に、負極活物質層24Bの上、すなわち負極24の両面あるいは片面に、正極23と同様にして電解質層25を形成する。
【0043】
続いて、正極活物質層23Bの端部23E、負極活物質層24Bの端部24Eに対向する端部対向領域23H、および正極リード21の取り付け領域21Aを覆うように絶縁被覆材27を接着する。その際、絶縁被覆材27の一部が正極リード21の突出領域21Bに接着した樹脂被覆材28の一部に重なるようにする。また、正極活物質層23Bの端部23F、負極24の端部24Dに対向する端部対向領域23G、および負極活物質層24Bの端部24Fに対向する端部対向領域23Iを覆うように絶縁被覆材27を接着する。更に、正極23の端部23Cに対向する端部対向領域24Gにそれぞれ絶縁被覆材27を接着する。
【0044】
そののち、例えば、電解質層25を形成した負極24、セパレータ26、電解質層25を形成した正極23、およびセパレータ26をこの順に積層し巻回して最外周部に図示しない保護テープを接着して電極巻回体20を形成する。このとき、押圧して偏平な形状に加工することが好ましい。電解質層25と正極23あるいは負極24との電気的な接触状態を確実にすることができるからである。
【0045】
電極巻回体20を形成したのち、外装部材10の間に電極巻回体20を挟み込み、外装部材10の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0046】
このように本実施の形態の二次電池によれば、絶縁被覆材27と樹脂被覆材28との重なり合う部分を、絶縁被覆材27を延長することにより突出領域21Bに設けるようにしたので、外部から圧力が加わっても、正極リード21が負極24と接触して短絡することを防止することができる。また、取り付け領域21Bにおける絶縁被覆材27と樹脂被覆材28との重なりをなくすことができ、電池の単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0047】
特に、樹脂被覆材27と絶縁被覆材28との重なり量を、0.2mm以上とすればより高い効果を得ることができる。
【0048】
更に、正極活物質層23Bの巻回方向における端部23E,23Fと、負極活物質層24Bの巻回方向における端部24E,24Fに対向する正極23の端部対向領域23H,23Iとを、絶縁被覆材27で覆うようにすれば、これらの端部23E,23F,24E,24Fとこれらの端部に対向する領域との接触を防止することができ、短絡を防止することができる。
【0049】
加えて、正極23および負極24の巻回方向における端部23C,24Dと対向する対極の端部対向領域24G,23Gを絶縁被覆材27で覆うようにすれば、これらの領域の接触を防止することができ、短絡を防止することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、端部対向領域24G,23Gを絶縁被覆材27で覆うようにしたが、端部対向領域24G,23Gに代えて正極23および負極24の巻回方向における端部23C,24D、すなわち対極と対向する端部を絶縁被覆材27で覆うようにしてもよく、それらを共に絶縁被覆材27で覆うようにしてもよい。
【実施例】
【0051】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0052】
(実施例1−1〜1−3)
実施の形態において説明した二次電池を作製した。その際、絶縁被覆材27は図2に示した箇所を覆うようにし、電池の高さを50mm、幅を34mm、厚みを3.8mmとした。
【0053】
また、樹脂被覆材28には厚み50μm、突刺荷重5.68N/cm2 のポリオレフィン樹脂を用い、正極リード21については、樹脂被覆材28と正極集電体23Aとの間が1.5mm離れるようにし、負極リード22については、樹脂被覆材28と負極集電体24Aとの間が0.5mm離れるようにした。絶縁被覆材27には厚み30μm、突刺荷重13.9N/cm2 のポリエチレンテレフタラートを用い、正極リード21の突出領域21Bにおける樹脂被覆材28と絶縁被覆材27との重なり量を、実施例1−1では1.5mm、実施例1−2では0.2mm、実施例1−3では0.1mmとした。
【0054】
実施例1−1〜1−3に対する比較例1−1として、正極リードにおける樹脂被覆材と正極集電体との間を1mm離し、樹脂被覆材と絶縁被覆材との重なり量を0mmとしたことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして二次電池を作製した。また、比較例1−2として、樹脂被覆材を正極リードの取り付け領域まで延長して設け、樹脂被覆材と絶縁被覆材が取り付け領域において10mm重なるようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして二次電池を作製した。
【0055】
実施例1−1〜1−3および比較例1−1,1−2についてそれぞれ100個の二次電池を作製し、短絡発生率を求めた。また、実施例1−1および比較例1−2の二次電池について初回容量を求めた。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
短絡発生率は、0.2Cの電流値で電池電圧を4.2Vに設定し、10時間定電流定電圧充電したのち、1.5mの高さから正極リード21および負極リード22の突出側を下にしてコンクリート床に15回落下させ、その前後の電池電圧変化を測定することにより求めた。
【0058】
また、初回容量は、0.2Cの電流値で電池電圧を4.2Vに設定し、10時間定電流定電圧充電したのち、0.5Cの電流値で電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、このときの放電容量から求めた。なお、0.2Cは理論容量を5時間で放電しきる電流値であり、0.5Cは理論容量を2時間で放電しきる電流値である。
【0059】
表1から分かるように、突出領域21Bで絶縁被覆材27と樹脂被覆材28とを重ねるようにした実施例1−1〜1−3によれば、これらが重ならない比較例1−1よりも短絡発生率が低かった。また、取り付け領域21Aで重なるようにした比較例1−2よりも初回容量が高かった。更に、重なり量を0.2mm以上とした実施例1−1,1−2によれば、0.2mm未満である実施例1−3よりも短絡発生率が低かった。
【0060】
すなわち、絶縁被覆材27と樹脂被覆材28とをその一部において重なり合うようにし、この重なり合う部分を絶縁被覆材27が延長されることにより突出領域21Bに設けるようにすれば、容量を高くしつつ、短絡の発生を防止することができることが分かった。また、その重なり量を0.2mm以上とすれば、より効果的であることも分かった。
【0061】
(実施例2−1)
絶縁被覆材27として厚み22μm、突刺荷重が8.33N/cm2 のポリエチレンテレフタラートを用いたことを除き、他は実施例1−1と同様にして二次電池を作製した。実施例2−1では、突出領域21Bと負極24との接触を防止するのは、絶縁被覆材27であり、その突刺荷重は8.33N/cm2 である。
【0062】
実施例2−1に対する比較例2−1として、絶縁被覆材に厚み30μm、突刺荷重13.9N/cm2 のポリエチレンテレフタラートを用い、樹脂被覆材に厚み70μm、突刺荷重7.94N/cm2 のポリオレフィン樹脂を用いたことを除き、他は比較例1−2と同様にして二次電池を作製した。比較例2−2として、絶縁被覆材に厚み30μm、突刺荷重13.9N/cm2 のポリエチレンテレフタラートを用い、樹脂被覆材に厚み30μm、突刺荷重3.33N/cm2 のポリオレフィン樹脂を用いたことを除き、他は比較例1−2と同様にして二次電池を作製した。
【0063】
すなわち、比較例2−1,2−2は、樹脂被覆材を正極リードの取り付け領域まで延長して設け、樹脂被覆材と絶縁被覆材が取り付け領域において10mm重なるようにしたものである。比較例2−1,2−2では、突出領域と負極との接触を防止するのは樹脂被覆材であり、その突出荷重は比較例2−1が7.94N/cm2 、比較例2−2が3.33N/cm2 である。
【0064】
実施例1−1,2−1および比較例1−2,2−1,2−2についてそれぞれ100個の二次電池を作製し、短絡発生率を求めた。また、比較例2−1,2−2の二次電池について実施例1−1および比較例1−2と同様にして初回容量を求めた。それらの結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
なお、短絡発生率は、表1に示した短絡発生率を調べた時と同様にして充電を行い、2mの高さから正極リード21および負極リード22の突出側を下にしてコンクリート床に30回落下させ、その前後の電池電圧変化を測定することにより求めた。
【0067】
表2から分かるように、突出領域21Bで絶縁被覆材27と樹脂被覆材28とを重ねるようにした実施例2−1によれば、実施例1−1よりも絶縁被覆材27の厚みを薄くしても短絡の発生がなかった。これに対して、取り付け領域で絶縁被覆材と樹脂被覆材とを重ねるようにした比較例2−1,2−2によれば、樹脂被覆材の厚みを薄くすると短絡が発生し、厚くすると容量が低下してしまった。
【0068】
すなわち、絶縁被覆材27と樹脂被覆材28との重なりを突出領域21Bに設けるようにすれば、短絡の発生を防止しつつ、より容量を向上させることができることがわかった。また、突出領域21Bと負極24との接触を防止する部分における絶縁被覆材27の突刺荷重は5.68N/cm2 以上とすることが好ましいことも分かった。
【0069】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質として、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、ゲル状の電解質に代えて、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えばイオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0070】
なお、固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた有機固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
【0071】
また、上記実施の形態および実施例では、正極23における巻回中心側の端部23Cおよび負極24における巻回外周側の端部24Dが、対極と対向する場合について説明したが、これらのうちの一方のみが対極と対向していてもよいし、正極23における巻回外周側の端部23Dあるいは負極22における巻回中心側の端部24Cが対極と対向するようにしてもよい。
【0072】
更に、上記実施の形態および実施例では、正極23、負極24あるいは電解質層25などの各構成要素を構成する材料について一例を挙げて説明したが、他の材料を用いるようにしてもよい。加えて、本発明は二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池を分解して表す斜視図である。
【図2】図1に示した電極巻回体のI−I線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した正極の巻回前の斜視図である。
【図4】図3に示した正極のII−II線に沿った断面図である。
【図5】図1に示した電極巻回体のIII−III線に沿った断面図である。
【図6】図1に示した負極の巻回前の斜視図である。
【図7】従来の二次電池を分解して表す斜視図である。
【図8】従来の他の二次電池を分解して表す斜視図である。
【図9】図8に示した電極巻回体のIV−IV線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10…外装部材、20…電極巻回体、21…正極リード、21A…取り付け領域、21B…突出領域、22…負極リード、22A…取り付け領域、22B…突出領域、23…正極、23A…正極集電体、23B…正極活物質層、23C,23D,23E,23F…端部、23G,23H,23I…端部対向領域、24…負極,24A…負極集電体,24B…負極活物質層,24C,24D,24E,24F…端部、24G…端部対向領域、25…電解質層,26…セパレータ,27…絶縁被覆材,28…樹脂被覆材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを電解質を介して積層し巻回した電極巻回体をフィルム状の外装部材の内部に備えた電池であって、
前記正極には正極リードが取り付けられると共に、前記負極には負極リードが取り付けられ、
前記正極リードおよび前記負極リードは、それぞれ、各電極に対する取り付け領域と、各電極から突出した突出領域とを有し、
この2つの突出領域はそれぞれ前記外装部材の外部に引き出され、それぞれ前記外装部材と接触する部分は樹脂被覆材で覆われており、
前記2つの取り付け領域のうち、取り付けられた電極の対極と対向する領域は、絶縁被覆材で覆われており、
この絶縁被覆材と前記樹脂被覆材とは一部において重なり合い、この重なり合う部分は前記絶縁被覆材が延長されることにより前記突出領域に設けられた
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記樹脂被覆材と前記絶縁被覆材との重なり量は、0.2mm以上であることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記正極は、一対の対向面を有する正極集電体と、この正極集電体に設けられた正極活物質層とを有し、前記負極は、一対の対向面を有する負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを有しており、
前記正極活物質層の巻回方向における端部と、前記負極活物質層の巻回方向における端部に対向する正極の端部対向領域とは、絶縁被覆材で覆われていることを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記正極および前記負極の巻回方向において対極と対向する端部と、この端部に対向する対極の領域とのうちの少なくとも一方は、絶縁被覆材で覆われていることを特徴とする請求項1記載の電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−4777(P2006−4777A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180179(P2004−180179)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】