説明

電池

【課題】 生産性が高く、出力特性の高い電池を提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、電極群と、複数の正極タブと、複数の負極タブとを備える電池が提供される。電極群は、正極と負極がセパレータを介して扁平の渦巻き状に捲回された構造を有する。複数の正極タブは、正極と電気的に接続されている。複数の負極タブは、負極と電気的に接続されている。正極タブ及び負極タブのうち少なくとも一方は、タブ間隔が等ピッチで変化し、かつ電極群の一方又は両方の端面から突出している。また、電極群は、下記(1)式を満たす。
bm2−2a<0 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野における急速な技術発展により、電子機器の小型・軽量化が進んでいる。その結果、電子機器のポータブル化、コードレス化が進行し、その駆動源となる二次電源にも小型、軽量、高パワー密度化が望まれている。このような要望に応えるべく、大出力密度なリチウム二次電池が開発されている。
【0003】
二次電池の集電性能を向上させるため、捲回型電極群の捲回軸方向の両端部のうち、一方の端部に正極の非塗工端部を突出させ、かつ他方の端部に負極の非塗工端部を突出させることが行われている。この非塗工端部を有する正負極は、例えば、帯状の集電体にその長辺に平行な端部を除き、活物質を含むスラリーを塗布し、乾燥し、プレスすることにより作製される。スラリーが未塗布の、長辺に平行な端部が、非塗工端部である。
【0004】
しかしながら、このような方法で正負極を作製すると、電極の導電性を向上する目的で行うプレス工程で発生する、塗工部と非塗工部に出来るプレス圧差のため、電極の幅方向(短辺方向)へ歪みが発生する。この歪みの発生した正負極を用いて作製した電極群では、正負極の極間距離のばらつきが大きいため、電池の内部抵抗が大きい。
【0005】
このようなことから、非塗工部の集電体から短冊状のタブを複数打ち抜き、このタブをリード等に溶接することで電極群と正負極端子との電気的接続を取ることが行われている。この場合、捲回型電極群の湾曲部にタブが位置すると、タブに立体的歪みが発生するため、溶接作業や電池使用時に当該タブに応力が集中してタブが切れやすくなる。また、リード等との溶接位置を合わせるため、タブの位置を揃えることが望ましい。そこで、捲回型電極群の湾曲部にかからない箇所にタブを配置し、かつその位置を揃えるため、タブ間の距離を変動するピッチで調整することが検討されている。
【0006】
しかしながら、ピッチの大きさがタブ間の距離毎に異なると、集電体からタブを打ち抜き加工で成形する際に回転刃を用いることが出来ず、電極の加工が非常に複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−93242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生産性が高く、出力特性の高い電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、電極群と、複数の正極タブと、複数の負極タブとを備える電池が提供される。電極群は、正極と負極がセパレータを介して扁平の渦巻き状に捲回された構造を有する。複数の正極タブは、正極と電気的に接続されている。複数の負極タブは、負極と電気的に接続されている。正極タブ及び負極タブのうち少なくとも一方は、タブ間隔が等ピッチで変化し、電極群の一方又は両方の端面から突出している。また、電極群は、下記(1)式を満たす。
【0010】
bm2−2a<0 (1)
但し、aは前記電極群の直線部の長さで、bは2π(T1+T2+2T3)、T1は前記正極の厚さ、T2は前記負極の厚さ、T3は前記セパレータの厚さ、πは円周率、mは電極群の捲回数である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の電池の電極群に含まれる正極、負極及びセパレータの展開図。
【図2】図1に示す正極の平面図。
【図3】図1に示す負極の平面図。
【図4】実施形態における電極群の直線部に複数のタブを位置を揃えて配置した状態を示す模式図。
【図5】捲回数と距離L1,L2,L3との関係を示すグラフ。
【図6】実施形態の電池に用いられる電極群を最外周側から見た平面図。
【図7】図6に示す電極群における捲回軸に直交する一方の端面の平面図。
【図8】図6に示す電極群における捲回軸に直交する他方の端面の平面図。
【図9】図6に示す電極群を備えた角形電池を示す斜視図。
【図10】図9の電池の部分分解斜視図。
【図11】実施形態の電池に用いられる電極群を最外周側から見た平面図。
【図12】図11に示す電極群の捲回軸に直交する一方の端面の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
実施形態によれば、電極群と、複数の正極タブと、複数の負極タブとを備える電池が提供される。電極群は、正極と負極がセパレータを介して扁平の渦巻き状に捲回されたものである。複数の正極タブは、正極と電気的に接続されている。複数の負極タブは、負極と電気的に接続されている。正極タブ及び負極タブのうち少なくとも一方は、タブ間隔が等ピッチで変化し、電極群の一方又は両方の端面から突出している。また、電極群は、下記(1)式を満たす。
【0014】
bm2−2a<0 (1)
但し、aは電極群の直線部の長さで、bは2π(T1+T2+2T3)、T1は正極の厚さ、T2は負極の厚さ、T3はセパレータの厚さ、πは円周率、mは電極群の捲回数である。
【0015】
等ピッチには、ピッチのずれ幅が0である場合のほか、ピッチのずれ幅が(bm2−2a)以下である場合を含む。ピッチのずれ幅は−1mm以上1mm以下の範囲であることが望ましい。
【0016】
図1は、電極群に含まれる正極、負極及びセパレータの展開図である。図2は正極の平面図で、図3は負極の平面図である。図1に示すように、電極群1は、例えば、正極2と負極3の間にセパレータ4を介在させ、これらを巻芯5を用いて扁平形状に捲回した後、必要に応じてプレスを施すことにより作製される。正極2は、帯状の正極集電体2aと、正極集電体2aの両面に形成された活物質含有層2bとを有する。図1では図示を省略しているが、正極2は、図2に示すように、複数の正極タブ2cを有する。正極タブ2cは、それぞれ、帯状をなし、正極集電体2aの長辺から延出されている。正極タブ2cの間隔D1,D2は、内周から外周に向かって等ピッチで増加している。正極タブ2cは、例えば、正極集電体2aから打ち抜き加工によって形成される。一方、負極3は、帯状の負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に形成された活物質含有層3bとを有する。図1では図示を省略しているが、負極3は、図3に示すように、複数の負極タブ3cを有する。負極タブ3cは、それぞれ、帯状をなし、負極集電体3aの長辺から延出されている。負極タブ3cの間隔d1,d2は、内周から外周に向かって等ピッチで増加している。負極タブ3cは、例えば、負極集電体3aから打ち抜き加工によって形成される。
【0017】
2枚のセパレータ4のうち、一方のセパレータ4を正極2の活物質含有層2bと負極3の活物質含有層3bとの間に配置し、他方のセパレータ4を負極3のもう片方の活物質含有層3b上に配置する。これらを扁平形状をした二本の巻芯5を用いて扁平形状に捲回する。ここで、正極2の一対の短辺のうち、巻芯5に近い側、すなわち最内周側が巻き始めの短辺2dであり、反対側が巻き終わりの短辺2eである。また、負極3の一対の短辺のうち、巻芯5に近い側、すなわち最内周側が巻き始めの短辺3dであり、反対側が巻き終わりの短辺3eである。なお、図1では、正極2を負極3よりも先に捲回したが、負極3を正極2よりも先に捲回することもできる。
【0018】
図4は、電極群の直線部に複数のタブを位置を揃えて配置した状態を示す模式図である。図4は、電極群1の捲回軸に直交する端面を模式的に示しており、また、説明の便宜のため、電極群1のうち、正極2のみを表示している。以下の説明は、正極を例にしているが、負極にも適用される。電極群1の捲回軸方向から端面を見た際、端面の両端部に位置し、正負極2,3が湾曲している部分が湾曲部Xである。湾曲部X間に位置する部分が直線部である。ここで、直線部の長さをaとする。湾曲部Xの長さは湾曲部Xの半径と等しいため、両方の湾曲部Xの長さを合計した値は、湾曲部Xの直径、つまり電極群の厚さに等しくなる。よって、直線部の長さaには、電極群1の幅(電極群1の捲回軸に直交する方向の幅)から電極群の厚さを引いた値を使用することができる。
【0019】
(1)電極群1の直線部の位置を電極群1の捲回数(周回数)を用いて表すため、正極タブ2cの位置が、正極2の直線部の開始端に揃えられていると仮定する。この位置は、正極タブ2cが電極群1の湾曲部Xにかからないギリギリの位置である。正極タブ2cが1周おきに直線部の開始端に配置されている場合、正極2の巻き始めの短辺2dからの正極タブ2cの距離は、下記表1に示す通りである。ここで、bは2π(T1+T2+2T3)である。T1は正極の厚さ、T2は負極の厚さ、T3はセパレータの厚さ、πは円周率である。正極の厚さT1、負極の厚さT2及びセパレータの厚さT3の測定方法は、以下の通りである。正極、負極、セパレータをそれぞれ10枚重ねて、500g/25cm2の荷重をかけた際の厚さを測定し、これの10分の1の厚さを正負極並びにセパレータそれぞれの厚さとする。
【表1】

【0020】
正極タブ2cが正極2の巻き始めの短辺2dに位置する場合、捲回数は0、距離は0である。正極タブ2cが1周目の直線部Y1の開始端に位置する場合、捲回数は1、距離は2a+3bである。正極タブ2cが2周目の直線部Y2の開始端に位置する場合、捲回数は2、距離は4a+10bである。さらに、正極タブ2cが3周目の直線部の開始端に位置する場合、捲回数は3、距離は6a+21bである。タブ間の距離は、捲回数が1周増加するごとに、2a+3b、2a+7b、2a+11bというように4bの等ピッチで増加している。よって、タブ間の距離には、等差数列の関係が成立している。このため、n周目の直線部の開始端に位置する正極タブ2cの、巻き始めの短辺2dからの距離L1は、タブ間の距離についての等差数列の和と等しくなり、以下の(A)式で表される。
【0021】
1=2an+bn+2nb (A)
また、n周目の直線部の終端に位置する正極タブ2cの、正極2の巻き始めの短辺2dからの距離L2は、距離L1と直線部の長さaとの和になるため、以下の式(B)で表される。
【0022】
2=2an+bn+2nb+a=(2n+1)a+bn+2nb (B)
(2)正極タブ2c間の距離を等ピッチで内周から外周へと増加させる場合、正極2の巻き始めの短辺2dからn周目に位置する正極タブ2cまでの距離L3は、下記(C)式に示すように一次関数で表される。
【0023】
3=kn+p (C)
ここで、k、pは任意の整数である。
【0024】
(3)正極タブ2c間の距離を内周から外周へと等ピッチで増加させつつ、これらタブを電極群の直線部に配置するための条件を説明する。図5は、捲回数と距離L1,L2,L3との関係を示すグラフである。図5に示すように、距離L3を規定した直線(以下、距離L3の直線と称す)が、距離L2を規定した二次関数曲線(以下、距離L2の二次関数曲線と称す)と、距離L1を規定した二次関数曲線(以下、距離L1の二次関数曲線と称す)とで規定される領域内に存在するとき、正極タブ2cが電極群の直線部に位置し、かつタブ間の距離が内周から外周へと等ピッチで増加する。当該領域内に距離L3の直線が存在する為の条件は下記の通りである。
【0025】
(D)距離L3の直線は、捲回数が0及びm(最終周)において、距離L1の二次関数曲線と交点α,βを有する。つまり、当該直線は、捲回数が1以上(m−1)以下の範囲では該二次関数曲線と交点を持たない。
【0026】
(E)距離L3の直線は、距離L2の二次関数曲線と交点を持たない。
【0027】
(E)の条件を満たすには、L3の直線の傾きがプラス(自明)で、かつy切片(p)がマイナス方向であれば、確実性がます。また、(D)の条件を満たすには、逆にy切片(p)が大きいほうが有利である。まず、(D)の条件を満たす一次関数について説明する。
【0028】
その一次関数は、Lの第一点目と、捲回の最後m回目に通る点とを通過する。座標で示すと、α(0,0)とβ(m,2am+bm+2mb)を通る直線となる。
【0029】
3=kn+p=(2a+b+2mb)nとなる。(pは0)
次いで、(E)の条件について説明する。2次関数(L)と一次関数(L)が交点を持つかどうかは、交点を出すために立てた2次方程式(F)が、解の判別式でマイナスとなる必要がある。
【0030】
=L=(2n+1)a+bn+2nb=(2a+b+2mb)n (F)
この式を整理すると、2nb−2mnb+a=0となる。解の判別式は、(G)式の通りである。
【0031】
(−2mb)−4(2ba)<0 (G)
(G)式を整理すると、4b(bm−2a)<0となる。b>0は自明であるので、
bm−2a<0となる。
【0032】
よって、bm−2a<0であれば、L3の直線が条件(D),(E)を同時に満たせるため、タブ間の距離が内周から外周へと等ピッチで増加し、かつこれらタブを電極群の直線部に1周おきに配置することができる。タブ間距離が等ピッチで増加することによって、回転刃など高速な電極タブ成形装置を使用することが可能になる。また、タブが電極群の湾曲部に位置していないため、タブに立体的歪みが生じるのが回避され、溶接作業や電池使用時にタブが切れるのを防止することができ、高出力密度を得ることができる。また、捲回1周当りタブを少なくとも1枚配置できるため、内部抵抗を低くすることができ、高出力な電池を安価に提供できる。
【0033】
正極タブ及び負極タブが(1)式を満たす電極群の構造の一形態を図6〜図7に示す。図6は電極群を最外周側から見た平面図である。電極群の捲回軸に直交する両端面のうち、一方の端面の平面図を図7に、他方の端面の平面図を図8に示す。図9は、図6に示す電極群を備えた角形電池を示す斜視図で、図10は図9の電池の部分分解斜視図である。
【0034】
図6に示すように、電極群1の捲回軸に直交する一方の端面から正極タブ2cが突出し、かつ他方の端面から負極タブ3cが突出している。図7に示すように、正極タブ2cは、捲回周1周当り1枚の割合で配置され、電極群1の最内周に位置する空間6よりも上部に二次関数曲線(放物線)を描くように配列されている。また、図8に示すように、負極タブ3cは、捲回周1周当り1枚の割合で配置され、電極群1の最内周に位置する空間6よりも下部に二次関数曲線(放物線)を描くように配列されている。
【0035】
図6に示す電極群1を備えた電池を図9及び図10に示す。電池11は、角型非水電解質二次電池である。電池11は、外装缶12と、外装缶12内に収容される電極群1と、外装缶12内に位置する正負極リード13,14と、外装缶12の開口部に取り付けられた蓋15と、蓋15に設けられた正負極端子16,17とを有する。正負極端子16,17は、蓋15に絶縁部材18を介してかしめ固定されている。
【0036】
外装缶12は、有底角筒形状をなし、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。電解液(図示しない)は、外装缶12内に収容され、電極群1に含浸されている。蓋15は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。蓋15と外装缶1は、同じ種類の金属から形成されることが望ましい。
【0037】
図10に示すように、正極リード13の一端は、電極群1の正極集電タブ2cに電気的に接続されている。なお、正極リード13の他端(図示しない)は、正極端子16と電気的に接続されている。一方、負極リード14の一端は、電極群1の負極集電タブ3cに電気的に接続されている。なお、負極リード4の他端(図示しない)は、負極端子17と電気的に接続されている。
【0038】
負極活物質に炭素系材料を使用するリチウムイオン二次電池の場合、正極端子は一般的に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が使用され、負極端子は、銅、ニッケル、ニッケルメッキされた鉄などの金属が使用される。また、負極活物質にチタン酸リチウムを使用する場合は、上記に加え、負極端子にアルミニウムあるいはアルミニウム合金を使用してもかまわない。正負極端子にアルミニウムあるいはアルミニウム合金を使用する場合、正負極集電タブ及び正負極リードは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金から形成することが望ましい。
【0039】
タブの幅は、太い方が抵抗を低減することができる。また、タブの長さは短ければ短いほど抵抗は低いが、タブは少なくともセパレータよりも電極群の外側に突出させることが望ましい。タブの長さの範囲は2mm〜25mmが好ましい。2mm以上にすることによって、タブを電極群の外側に突出させることができる。また、25mm以下にすることによって、タブの抵抗を小さくすることができる。
【0040】
電極群におけるタブの配置は、図6〜図8に示すものに限定されず、例えば、図11〜図12に示す形態にすることができる。図11は、正極タブ及び負極タブが(1)式を満たす電極群の構造の別形態を示す平面図で、図12は電極群の捲回軸に直交する一方の端面の平面図である。
【0041】
図11は、電極群1の捲回軸に直交する一方の面から正負極タブ2c,3cが突出している例である。図11は、負極タブ3c側から見た平面図である。図12に示すように、電極群1の最内周に位置する空間を境にして上部側に、正極タブ2cが二次関数曲線(放物線)を描くように配列されている。また、下部側に、負極タブ3cが二次関数曲線(放物線)を描くように配列されている。正極タブ2c、負極タブ3cは、それぞれ、捲回周1周当り1枚の割合で配置されている。タブは正負極ともに同方向に延出されているため、内部抵抗を低くでき、さらに電池容量も大きくできることから高出力密度な電池を安価に提供できる。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、回転刃など高速な電極タブ成形装置を使用することが可能になる。また、タブが電極群の湾曲部に位置していないため、タブに立体的歪みが生じるのが回避され、溶接作業や電池使用時にタブが切れるのを防止することができる。また、捲回1周ごとにタブを少なくとも一枚配置できるため、内部抵抗を低くすることができ、高出力な電池を安価に提供できる。
【0043】
以下、実施形態で使用可能な正極、負極、セパレータ、非水電解液、外装容器について説明する。
【0044】
(正極)
この正極は、正極集電体と、正極集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質及び導電材、結着剤を含む正極活物質含有層とを有する。
【0045】
前記正極活物質は、種々の酸化物、硫化物などが挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1-y2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4など)、硫酸鉄(Fe2(SO43)、バナジウム酸化物(例えばV25)などが挙げられる。 また、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンなどの有機材料および無機材料も挙げられる。より好ましい二次電池用の正極は、電池電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn24)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoy2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-y2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)などが挙げられる。なお、x,yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0046】
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。また、活物質そのものの導電性が高い場合、導電材が不要な場合がある。
【0047】
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0048】
前記正極集電体は、たとえば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を挙げることができる。
【0049】
前記正極活物質と導電剤と結着剤の配合比は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜18重量%、結着剤2〜17重量%の範囲にすることが好ましい。
【0050】
(負極)
この負極は、負極集電体と、負極集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質及び導電材、結着剤を含む負極活物質含有層とを有する。
【0051】
負極活物質としては、たとえば、硫化鉄、酸化鉄、酸化チタン、チタン酸リチウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化タングステン、酸化モリブデン、硫化チタン、炭素質物などを用いることができる。特に、チタン酸リチウムはサイクル特性に優れ、なかでも化学式Li4+xTi512(xは充放電反応により0≦x≦3の範囲で変動し得る)で表され、スピネル型構造を有するチタン酸リチウムが好ましい。
【0052】
チタン酸リチウムは、表面積が1〜10m2/gであることが好ましい。1m2/g以上にすることによって、電極反応に寄与する有効面積を十分に確保して優れた大電流放電特性を得ることができる。10m2/g以下にすることによって、負極と電解液との反応量を少なくすることができ、高い充放電効率が得られ、貯蔵時のガス発生を抑制することができる。
【0053】
導電剤としては、炭素質物が用いられる。また、活物質そのものの導電性が高い場合、導電材が不要な場合がある。
【0054】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
【0055】
負極集電体は、たとえば、アルミニウム、銅、ニッケル、アルミニウム合金、銅合金、ニッケル合金を挙げることができる。
【0056】
負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質70〜96重量%、導電剤2〜28重量%、結着剤2〜28重量%の範囲にすることが好ましい。導電剤量を2重量%以上にすることによって、優れた集電性能と、高い大電流特性が得られる。しかしながら、負極活物質の導電性が非常に高い場合、導電材が不要な場合がある。その場合には配合比は結着剤2〜29重量%とするのが好ましい。結着剤量を2重量%以上にすることによって、合剤層と集電体の結着性が十分なものになり、優れたサイクル性能が得られる。一方、高容量化の観点から、導電剤および結着剤量は各々28重量%以下であることが好ましい。
【0057】
負極は、負極活物質に導電剤と結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
【0058】
(セパレータ)
セパレータには多孔質セパレータを用いる。多孔質セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、二次電池の安全性を向上できるため、好ましい。
【0059】
(非水電解液)
電解液は、例えば、非水電解液を挙げることができる。非水電解液は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される。また、非水電解液として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩も用いることができる。
【0060】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CF3SO22]などのリチウム塩が挙げられる。電解質は、有機溶媒に対して、0.5〜2mol/Lの範囲で溶解させることが好ましい。
【0061】
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)などの環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)などの鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン(BL);アセトニトリル(AN);スルホラン(SL)等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。
【0062】
常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
【0063】
常温溶融塩はリチウム塩と有機物カチオンの組み合わせからなる。
【0064】
リチウム塩としては、リチウム二次電池に一般的に利用されているような、広い電位窓を有するリチウム塩が用いられる。たとえば、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22,LiN(C25SO2),LiNCF3SC(C25SO23などを挙げられるが、これらの限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0065】
リチウム塩の含有量は、0.1〜3.0mol/Lであること、特に、1.0〜2.0mol/Lであることが好ましい。リチウム塩の含有量を0.1mol/L以上にすることによって、電解質の抵抗が小さくなり、大電流・低温放電性能が向上され、3.0mol/L以下にすることによって、電解質の融点が低下して常温で液状を保つことが可能となる。
【0066】
常温溶融塩は、たとえば、化1で示される骨格を有する4級アンモニウム有機物カチオンを有するもの、あるいは、化2で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンを有するものである。
【化1】

【0067】
【化2】

【0068】
但し、化2において、R1,R2:Cn2n+1(n=1〜6)、R3:HまたはCn2n+1(n=1〜6)
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上混合して用いても良い。
【0069】
化1で示される骨格を有する4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、化2で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0070】
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
また、アルキルピリジウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
化2で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンは、特に限定されない。ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられる。トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0073】
(外装容器)
図9に示す外装缶の代わりに、ラミネートフィルムからなる外装容器を使用することが可能である。
【0074】
また、実施形態に係る電池の充放電システムへの適用としては、電気自動車の駆動モータをドライブする制御システムの電源としての使用を挙げることができる。
【0075】
以下、実施例を説明する。
【0076】
(実施例1)
まず、正極活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)粉末90重量%、アセチレンブラック3重量%、グラファイト3重量%及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%をN−メチルピロリドン(NMP)に加えて混合してスラリーとし、このスラリーを15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し後、乾燥し、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。正極の厚さT1は60μmであった。
【0077】
負極活物質としてLi4Ti512と、導電材として、平均粒径1.12μm、比表面積82m2/gのコークスと、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比90:5:5になるようにN−メチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合し、得られたスラリーを厚さが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより負極を作製した。負極の厚さT2は100μmであった。
【0078】
正極、厚さT320μmのポリエチレン製の多孔質フィルムからなるセパレータ、負極、セパレータの順番に積層した後、渦巻き状に捲回した。正極厚さ、負極厚さ、セパレータ2枚の厚さの合計(T1+T2+2T3)は200ミクロンであった。bの値を下記表2に示す。
【0079】
正極及び負極のタブは回転式の型によって成形した。正極及び負極それぞれのタブ幅及びタブ間距離の増加ピッチを下記表2に示す。正極タブ及び負極タブ、それぞれについて、タブを一つにまとめて超音波溶接でリードに接合した。これを90℃で加熱プレスすることにより、幅が53.1mmで、厚さが10mm、高さが80mmの偏平状電極群を作製した。電極群の直線部の長さa及び捲回数mを下記表2に示す。
【0080】
電極群を外装缶内に収納した後、非水電解液(PC:EC=1:1(体積比)、LiPF6の濃度1.0mol/l)を注液して、図9及び図10に示す構造の角形非水電解質二次電池を製造した。
【0081】
(実施例2〜8及び比較例)
a、b、m、正負極のタブ配置、タブ幅、タブ数、電極群の幅、正負極タブ間の距離のピッチのうちいずれかを変更すること以外は、実施例1と同様にして角形非水電解質二次電池を製造した。
【0082】
得られた電池のSOC50%状態での出力密度を測定し、その結果を下記表2に示す。
【表2】

【0083】
表2から明らかなように、実施例1〜8の電池は比較例の電池に比較して出力密度が大きかった。実施例1〜8は、(1)式を満たしていることから、タブの切れが減少したためと考えられる。これに対し、比較例では、正負極のタブが電極群の湾曲部に配置されたため、製造工程等でタブが切れ、これにより出力が低くなった。
【0084】
以上の実施形態及び実施例によれば、タブの切れが抑制された高出力密度の電池を提供することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…電極群、2…正極、2a…正極集電体、2b…正極活物質含有層、2c…正極タブ、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質含有層、3c…負極タブ、4…セパレータ、5…巻芯、11…電池、12…外装缶、13…正極リード、14…負極リード、15…蓋、16…正極端子、17…負極端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極がセパレータを介して扁平の渦巻き状に捲回された電極群と、
前記正極と電気的に接続された複数の正極タブと、
前記負極と電気的に接続された複数の負極タブと
を具備する電池であって、
前記正極タブ及び前記負極タブのうち少なくとも一方は、タブ間隔が等ピッチで変化し、かつ前記電極群の一方又は両方の端面から突出し、前記電極群は下記(1)式を満たすことを特徴とする電池。
bm2−2a<0 (1)
但し、aは前記電極群の直線部の長さで、bは2π(T1+T2+2T3)、T1は前記正極の厚さ、T2は前記負極の厚さ、T3は前記セパレータの厚さ、πは円周率、mは電極群の捲回数である。
【請求項2】
前記正極タブ及び前記負極タブのうち少なくとも一方は、前記電極群の捲回軸方向から見た配列が二次関数曲線を描いていることを特徴とする請求項1記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−174411(P2012−174411A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33438(P2011−33438)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】