説明

電流電圧変換回路

【課題】非常に低い電流値に対してもリニアリティーを持つ対数圧縮式の電流電圧変換回路を提供すること。
【解決手段】電流入力端子1と、基準電圧入力端子2と、電圧出力端子3と、P型半導体基板上に形成された演算増幅器4およびNPN型トランジスタ5とを備える。演算増幅器4の反転入力端子は電流入力端子1に、非反転入力端子は基準電圧入力端子2に、出力端子は電圧出力端子3にそれぞれ接続される。NPN型トランジスタ5のコレクタは電流入力端子1に、ベースは基準電圧入力端子2に、エミッタは電圧出力端子3にそれぞれ接続される。NPN型トランジスタ5は、エミッタに相当するN型エピタキシャル層と、N型エピタキシャル層上に選択的に形成され、ベースに相当するP型拡散層と、P型拡散層上に選択的に形成され、コレクタに相当するN型拡散層とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電流電圧変換回路に関し、特に入力電流を対数圧縮した電圧を発生する電流電圧変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコンのフォトダイオードの光電流を対数的に圧縮する対数圧縮式の電流電圧変換回路が、カメラなどの測光回路に広く使われている。その代表的な構成を図4に示す。
【0003】
図4において、フォトダイオード6のアノードは電流入力端子1に接続され、そのカソードは基準電圧源7の基準電圧Vrefが印加される基準電圧入力端子2に接続されている。演算増幅器4の反転入力端子は電流入力端子1に接続され、その非反転入力端子は基準電圧入力端子2に接続され、その出力端子は電圧出力端子3に接続されている。また、NPN型トランジスタ8のコレクタが電源入力端子1に接続され、そのエミッタが電圧出力端子3に接続され、そのベースが基準電圧入力端子2に接続されている。
【0004】
フォトダイオード6で光電変換電流Iが発生すると、その光電変換電流IはNPN型トランジスタ8のコレクタに流れ込み、そのベースとエミッタとの間には光電変換電流Iを対数圧縮した電圧VBEが生じる。
BE=VT log(I/Is) …(1)
但し、VT=kT/q(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、q:単位電荷)、IsはNPN型トランジスタの飽和電流である。
【0005】
そのため、電圧出力端子3には次式(2)に示されるように、基準電圧VrefからVBEを差し引いた電圧Voutが出力される。
out=Vref−VBE=Vref−VT log(I/Is) …(2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電流電圧変換回路はその他の種類の回路と一緒に同一の半導体基板上に形成されることが多い。このとき、同じ半導体基板上に安定化電源回路などの比較的大電流が流れる回路が形成されていると、その影響を受けて誤差が生じるという課題がある。この課題について、以下詳細に説明する。
【0007】
図5および図6はNPN型トランジスタ8の断面図および平面図である。P型サブストレート11の上にコレクタとなるN型エピタキシャル層12が形成されている。また、N型エピタキシャル層12の上に選択的にP型拡散層13が形成され、このP型拡散層13がベースとなる。さらに、P型拡散層13の上に選択的に不純物濃度の高いN型拡散層14が形成され、エミッタとして使われる。なお、15はN+埋め込み層、16は素子分離用のP+埋め込み層、17はコンタクト用のN+層、18はSi2層、19はAl配線層である。
【0008】
集積回路において比較的大きな電流が流れると、微小な光(主に赤外線)が発生することは良く知られた現象である。この発生した微小な光が、対数圧縮を行っているNPN型トランジスタ8のN型エピタキシャル層12とP型サブストレート11との間のPN接合、N型エピタキシャル層12とP型拡散層13との間のPN接合、P型拡散層13とN+拡散層14との間のPN接合に到達すると、そこに図示の矢印a、b、cに示す向きの電流が発生する。この発生した電流を以下、誤差電流と呼ぶ。
【0009】
これらの誤差電流a,b,cのうち、誤差電流a,bは、NPNトランジスタ8のコレクタに流入するフォトダイオード6からの光電変換電流I(その流れは矢印20で示す)から引き算する方向で発生する。誤差電流a、bは、通常0.01pA程度以下の非常に微小な電流ではある。しかし、近年例えば一眼レフカメラの測光では被写体情報を多分割して測光するために、1つ当たりのフォトダイオードのサイズが非常に微小なものとなっている。このため、0.01pA程度の誤差電流であっても、コレクタ電流が微小な領域では与える影響が大きくなり、低照度における測光精度の低下を招くことになる。シリコンのフォトダイオードの光電変換特性は、本来非常に高いリニアリティー(直線性)を有している。従って、誤差電流による影響を軽減することができれば、非常に低い電流値に対してもリニアリティーを持つ対数圧縮式の電流電圧変換回路が実現可能と考えられる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、非常に低い電流値に対してもリニアリティーを持つ対数圧縮式の電流電圧変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電流電圧変換回路は、入力電流が印加される電流入力端子と、基準電圧が印加される基準電圧入力端子と、電圧出力端子と、反転入力端子が前記電流入力端子に、非反転入力端子が前記基準電圧入力端子に、出力端子が前記電圧出力端子にそれぞれ接続され、P型半導体基板上に形成された演算増幅器と、コレクタが前記電流入力端子に、ベースが前記基準電圧入力端子に、エミッタが前記電圧出力端子にそれぞれ接続され、前記P型半導体基板上に形成されたNPN型トランジスタとを備え、前記NPN型トランジスタは、前記P型半導体基板上に形成され、前記エミッタに相当するN型エピタキシャル層と、前記N型エピタキシャル層上に選択的に形成され、前記ベースに相当するP型拡散層と、前記P型拡散層上に選択的に形成され、前記コレクタに相当するN型拡散層とから構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非常に低い電流値に対してもリニアリティーを持つ対数圧縮式の電流電圧変換回路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電流電圧変換回路の実施の形態の電気回路図である。
【図2】本発明の電流電圧変換回路で使用するNPN型トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図3】本発明の電流電圧変換回路で使用するNPN型トランジスタの構造例を示す平面図である。
【図4】従来の電流電圧変換回路の電気回路図である。
【図5】従来の電流電圧変換回路で使用するNPN型トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図6】従来の電流電圧変換回路で使用するNPN型トランジスタの構造例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、本発明の実施の形態に係る電流電圧変換回路は、図4に示した従来の電流電圧変換回路と比較して、対数圧縮に使用するNPN型トランジスタ8がNPN型トランジスタ5に置き換えられている点でのみ相違する。なお、NPN型トランジスタ5の表記におけるエミッタは実際の動作上ではコレクタとして動作しているエミッタ拡散による端子を、I2L(インテグレーテッドインジェクションロジック)などの例に倣い、通常であればエミッタを意味する矢印で表している。
【0015】
図2および図3はNPN型トランジスタ5の断面図および平面図である。P型サブストレート11の上にエミッタとなるN型エピタキシャル層12が形成されている。また、N型エピタキシャル層12の上に選択的にP型拡散層13が形成され、このP型拡散層13がベースとなる。さらに、P型拡散層13の上に選択的に不純物濃度の高いN型拡散層14が形成され、このN型拡散層14がコレクタとして使われる。すなわち、NPN型トランジスタ5は、NPN型トランジスタ8におけるコレクタ領域をエミッタ領域とし、エミッタ領域をコレクタ領域としている。換言すれば、NPN型トランジスタ5は、NPN型トランジスタ8を逆接続したものに相当する。
【0016】
なお、図2および図3において、15はN+埋め込み層、16は素子分離用のP+埋め込み層、17はコンタクト用のN+層、18はSi2層、19はAl配線層である。また、31は、ベースに相当するP型拡散層13の周囲を取り囲むように形成されたN+拡散層から成るウォールである。
【0017】
フォトダイオード6で光電変換電流Iが発生すると、その光電変換電流IはNPN型トランジスタ5のコレクタに流れ込み、そのベースとエミッタとの間には、光電変換電流Iを対数圧縮した式1で示す電圧VBEが生じる。そのため、電圧出力端子3には式(2)に示したように、基準電圧VrefからVBEを差し引いた電圧Voutが出力される。
【0018】
また、NPN型トランジスタ5が形成されているP型サブストレート11上には、図2および図3には図示していないが、フォトダイオード6に加えて、安定化電源回路などの比較的大電流が流れる回路が形成されている。このため、安定化電源回路などで発生した大電流によって生じた微小な光が、対数圧縮を行っているNPN型トランジスタ5のN型エピタキシャル層12とP型サブストレート11との間のPN接合、N型エピタキシャル層12とP型拡散層13との間のPN接合、P型拡散層13とN+拡散層14との間のPN接合に到達すると、そこに図示の矢印a、b、cに示す向きの誤差電流が発生する。
【0019】
しかし、NPN型トランジスタ5のコレクタに流入するフォトダイオード6からの光電変換電流Iの向きは、図5のNPN型トランジスタ8とは逆方向であるため(その流れは矢印40で示す)、これらの誤差電流a,b,cのうち、誤差電流a,bは、NPN型トランジスタ5のコレクタ電流に影響を及ぼさない。他方、図5のNPN型トランジスタ8ではコレクタ電流に影響を及ぼさなかった誤差電流cが、図2のNPN型トランジスタ5ではコレクタに流入するフォトダイオード6からの光電変換電流Iから引き算する方向で発生する。しかし、N型エピタキシャル層12とP型サブストレート11との間のPN接合、N型エピタキシャル層12とP型拡散層13との間のPN接合に比べて、P型拡散層13とN+拡散層14との間のPN接合の接合面積は格段に小さい。従って、誤差信号cは誤差信号a、bに比べて十分に小さいために、NPN型トランジスタ5のコレクタ電流に及ぼす影響は軽微である。この結果、図4の従来の電流電圧変換回路に比べて、一桁以上低照度までリニアリティーを持って測光できる対数圧縮式の電流電圧変換回路が実現できる。
【0020】
また、ウォール31を設けたことにより、エミッタの直列に入る寄生抵抗値が低減され、大電流側でのリニアリティーの悪化を防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
1…電流入力端子
2…基準電圧入力端子
3…電圧出力端子
4…演算増幅器
5、8…NPN型トランジスタ
6…フォトダイオード
7…基準電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電流が印加される電流入力端子と、基準電圧が印加される基準電圧入力端子と、電圧出力端子と、反転入力端子が前記電流入力端子に、非反転入力端子が前記基準電圧入力端子に、出力端子が前記電圧出力端子にそれぞれ接続され、P型半導体基板上に形成された演算増幅器と、コレクタが前記電流入力端子に、ベースが前記基準電圧入力端子に、エミッタが前記電圧出力端子にそれぞれ接続され、前記P型半導体基板上に形成されたNPN型トランジスタとを備え、
前記NPN型トランジスタは、前記P型半導体基板上に形成され、前記エミッタに相当するN型エピタキシャル層と、前記N型エピタキシャル層上に選択的に形成され、前記ベースに相当するP型拡散層と、前記P型拡散層上に選択的に形成され、前記コレクタに相当するN型拡散層とから構成される、
ことを特徴とする電流電圧変換回路。
【請求項2】
前記NPN型トランジスタは、前記ベースに相当するP型拡散層の周囲を取り囲むようにN型拡散層から成るウォールを備えることを特徴とする請求項1に記載の電流電圧変換回路。
【請求項3】
前記P型半導体基板上に形成され、前記電流入力端子に光電変換電流を印加するシリコンフォトダイオードを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電流電圧変換回路。
【請求項4】
前記P型半導体基板上に、安定化電源回路などの比較的大電流が流れる回路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電流電圧変換回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−263293(P2010−263293A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110735(P2009−110735)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(593046197)シリンクス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】