説明

電源モジュールおよびそれを利用した携帯電話端末装置

【課題】バッテリに対する充放電の制御等に利用されるバッテリ温度の検出の精度を向上させる。
【解決手段】バッテリの充放電を監視するために必要な電流監視用低抵抗と並列に、電界効果トランジスタを接続する。そして、二次電池の周辺温度が算出される期間に、温度可変抵抗体に対して定電流回路に定電流を供給させるとともに、電界効果トランジスタをオンにする。これにより、温度検出時は、電流監視用低抵抗の電圧降下の影響を最小にしたバッテリ電圧を監視することができ、より正確なバッテリの温度を検出できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の温度を測定する場合に使用して好適な電源モジュールおよびそれを利用した携帯電話端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末に設けられるバッテリバックに含まれる二次電池(リチウムイオン電池)は、温度に敏感である。この二次電池が高温(異常温度)であるときに当該二時電池を充電すると、二次電池の劣化、膨張あるいは電池特性の低下等の原因となる。
【0003】
このような二次電池の劣化、膨張あるいは電池特性の低下等を防止するために、携帯電話端末装置では、二次電池の温度を常にモニタしており、異常な温度の検出をトリガーに、当該二次電池に対する充電を絞ったり、充電を停止させたりといった制御が行われている。
【0004】
現在、携帯電話端末装置に含まれる電源モジュール501では、図5に示すように、バッテリ502の−端子とパワーマネージメントIC(Integrated Circuit)503の間に電流監視用低抵抗504が必ず設けられている。この電流監視用低抵抗504での電圧降下を検出することにより、電流監視回路505は二次電池506に流入する電流(以下、「電池流入電流」という)を監視している。そして、この電池流入電流に基づいて、二次電池506の残容量が算出される。
【0005】
この電流監視回路505が電池流入電流を監視していない時には、定電流回路507からTH端子を介してサーミスタRth508および抵抗R509の並列回路に定電流が流され、TH端子と−端子との間に第一電圧V1の電圧がかかる。なお、第一電圧V1は、バッテリ502の温度(二次電池506の周辺温度)によって変化するサーミスタRth508の抵抗値に応じて変動する。
【0006】
このとき、A/Dコンバータ510では、第一電圧V1に対して、電流監視用低抵抗504での電圧降下分だけ増減した第二電圧V2が算出される。そして、電流監視回路505で算出された第二電圧V2が、電池電圧−温度変換テーブル(図6にて後述)によってバッテリ502の温度に換算される。特許文献1には、この種のバッテリの温度を算出する技術についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−333794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電池電圧−温度変換テーブルには、図6に示すように、サーミスタRth508および抵抗R509の合成抵抗の両端電圧、すなわち第一電圧V1の電圧と、バッテリ502の温度との関係が予め調査されて書き込まれている。
【0009】
この電池電圧−温度変換テーブルを用いて、電流監視回路505で算出した第二電圧V2をバッテリ502の温度に換算する具体例を以下に示す。なお、第二電圧V2をバッテリ502の温度に換算する際の前提条件が以下の通りであるものとする。
(1)充電時(充電電流は、+端子T1、二次電池506、−端子T3の方向に流れる)
(2)充電電流、すなわち電流監視用低抵抗504に流れる電流が1A
(3)電流監視用低抵抗504の抵抗値が25mΩ
(4)第一電圧V1が173mV
【0010】
このような(1)〜(4)の条件下において、電流監視用低抵抗504に充電電流が流れると、電流監視用低抵抗504での電圧降下は、1A(充電電流の電流値)×25mΩ(電流監視用低抵抗504の抵抗値)=25mVとなる。すなわち、第二電圧V2は、173mV(第一電圧V1)から25mVを足した198mVとなる。
【0011】
この198mV(第二電圧V2)を、図6に示す電池電圧−温度変換テーブル602に基づいてバッテリ502の温度に換算すると、バッテリ502の温度は60℃となる(レコード604を参照)。しかしながら、実際のバッテリ502の温度は、電池電圧−温度変換テーブルにおいて、第一電圧V1、すなわち173mVに対応する温度70℃である(レコード603を参照)。
【0012】
以上説明したように、バッテリの温度を算出する際に使用されなければならない電圧は第一電圧V1であるが、実際は電流監視用低抵抗504での電圧降下の影響を受けた第二電圧V2でバッテリの温度が算出されてしまう。このため、バッテリ502の温度検出の精度が大きく低下してしまい、例えば、本来充電を停止しなければならない温度においても、充電が発生しまう等の充放電制御に関する問題があった。
【0013】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、バッテリに対する充放電の制御等に利用されるバッテリ温度の検出の精度を向上させる電源モジュールおよびそれを利用した携帯電話端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の電源モジュールは、二次電池と、二次電池のマイナス側に接続される電流監視用低抵抗と、電流監視用低抵抗の両端にソースとドレインがそれぞれ接続される電界効果トランジスタと、二次電池の周辺温度に応じて抵抗値が変化する温度可変抵抗体と、温度可変抵抗体に所定の定電流を供給して、温度可変抵抗体に第一電圧を印加する定電流回路と、第一電圧と二次電池の周辺温度との関係が書き込まれている電池電圧−温度変換テーブルが、予め記憶されているメモリと、第一電圧に対して、電流監視用低抵抗での電圧降下分だけ増減した第二電圧を検出するアナログ/デジタルコンバータと、アナログ/デジタルコンバータで算出された第二電圧を第一電圧の代替として用いることにより、電池電圧−温度変換テーブルに基づいて第二電圧から二次電池の周辺温度を算出するバッテリ温度算出部と、バッテリ温度算出部で二次電池の周辺温度を算出する期間だけ、温度可変抵抗体に対して定電流回路に定電流を供給させるとともに、電界効果トランジスタをオンにする制御信号生成部とを備えるものである。
【0015】
上記構成によれば、二次電池の周辺温度が算出される期間に、定電流回路に温度可変抵抗体に対して電流を供給するとともに、これと同期して電界効果トランジスタをオンにする。そのため、この電界効果トランジスタと並列に接続された電流監視用低抵抗に流れる電流が小さくなり、電流監視用低抵抗での電圧降下が少なくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電源モジュールと携帯電話端末装置によれば、実際にバッテリ温度の計算に使用せざるを得ない第二電圧を、二次電池の周辺温度検出時のみ、本来のバッテリ温度の計算に使われなければならない第一電圧とほぼ等しくすることができる。これにより、より正確なバッテリ温度を算出することができるので、この正確なバッテリ温度を利用してバッテリに対する充放電等の制御を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯電話端末の概略的な内部構成を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電源モジュールの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態例に用いられる電池電圧−温度変換テーブルの一例を示す説明図である。
【図4】第一制御信号と第二制御信号との関係性の一例を示す波形図である。
【図5】従来の携帯電話端末装置に含まれる電源モジュールを示す図である。
【図6】従来の電池電圧−温度変換テーブルを用いてバッテリの温度の検出手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施の形態例(以下、「本例」ということもある。)について説明を行う。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0019】
<本発明の一実施形態例の説明>
(1)携帯電話端末装置の内部構成
(2)電源モジュールの構成
(3)電源モジュール(充電時)の動作
【0020】
<本発明の一実施形態例の説明>
(1)携帯電話端末装置の内部構成
以下、本発明の一実施形態例に係る携帯電話端末装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る携帯電話端末装置の概略的な内部構成を示すブロック図である。
【0021】
図1において、アンテナ102は、例えば内蔵アンテナであり、通話やパケット通信のための信号電波の送受信を行う。また、通信回路103は、送受信信号の周波数変換、変調と復調等を行う。
この通信回路103にて受信された例えば通話音声のデータは、データラインを介して制御部101へ送られる。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)からなり、通話音声データを復号化し、その復号化後の音声データを、データラインを介してスピーカ109へ送る。また、この制御部101は携帯電話端末装置100を構成する各ブロックの制御を行う。
【0022】
スピーカ109は、受話用のスピーカやリンガ用のスピーカに相当し、図示されないディジタル/アナログ変換器と増幅器を含み、通話音声やリンガ音のデータをディジタル/アナログ変換および増幅した後、出力する。これにより、通話音声やリンガ音が得られることになる。
【0023】
マイクロホン110は、送話用のマイクロホンであり、同様に図示されていないアナログ/ディジタル変換器と幅器を含む。このマイクロホン110を介して入力された通話音声信号は、増幅器により所定のレベルに増幅された後、アナログ/ディジタル変換器によりディジタル音声データに変換される。そして、データラインを介して制御部101へ送られて符号化された後、通信回路103へ送られる。
【0024】
表示制御部106は、本実施形態の携帯電話端末装置100に備えられているメイン液晶ディスプレイであるメイン表示部105とサブ液晶ディスプレイであるサブ表示部107の表示を制御する。
また、操作部108は、携帯電話端末装置100の図示しない筐体上に設けられているテンキーやジョグダイアルと、それらの操作に応じた操作信号を発生する操作信号発生部等を有している。
【0025】
メモリ104は、図示されないROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、制御部101が各部を制御するための制御プログラムや各種の初期設定値、フォントデータ、辞書データ、電子メールの作成や編集等を行うためのアプリケーション用のプログラムコード、画像に対して様々な処理を行うためのアプリケーション用プログラムコード、その他、携帯電話端末装置100に搭載される各種のアプリケーション用のプログラムコード、当該携帯電話端末装置100の識別情報(ID)などを記憶している。
【0026】
このROMは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)のような書き換え可能なROMを含み、電子メールデータ、ユーザにより設定される電話帳や電子メールアドレス、ダウンロードされた写真データや着信音データ、文字データや予測変換の候補単語の登録データや予測変換の学習データ、その他、各種のユーザ設定値等を保存することができる。また、RAMは、制御部101が各種のデータ処理を行う際の作業領域として、各種データの書き込みと読み出しが随時行われるメモリである。
【0027】
LED(Light Emitting Diode)駆動部111は、本発明の実施形態のLED制御ICを含み、操作部108上のキーを照明するLEDや、メイン液晶ディスプレイやサブ液晶ディスプレイのバックライト用のLED、着信LED等の複数のLED112を駆動制御する。
【0028】
制御部101は、上述した通話音声データの符号化や復号化の他、制御ラインを介して当該携帯電話端末装置100の各構成要素の制御等、各種の演算処理を行う。なお、本実施形態の内容に関する制御部101の機能については、図2にて後述する。
【0029】
カメラ部113は、光学レンズや撮像素子等からなり、制御部101による制御の元で静止画や動画の撮影を行う。
バッテリ115は、例えば着脱可能な二次電池を含み、パワーマネージメントIC114は、バッテリ115からの電力を各部へ供給する。なお、バッテリ115およびパワーマネージメントIC114のより詳細な構成については図2にて後述する。
【0030】
その他、図1には図示を省略しているが、本実施形態の携帯電話端末装置100は、音楽や画像の記録再生を行うための記録再生部、ブラウザ機能、外部ケーブル用コネクタ、外部リモートコントローラの接続コネクタ、携帯電話端末装置100の現在位置を検出するための測位デバイスであるGPS(Global Positioning System)通信部とそのアンテナ102なども備えている。
【0031】
(2)電源モジュールの構成
次に、図2を参照して本実施形態の電源モジュールの構成とその動作について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る電源モジュールの構成を示すブロック図である。なお、電源モジュールにおいて、本実施形態の内容に特に関わらない端子や構成等の部分についてはそれらの説明を省略する。
【0032】
電源モジュール200は、携帯電話端末装置100に含まれる一部分であり、バッテリ115と、パワーマネージメントIC114と、制御部101と、メモリ104部分とを含む。さらに、バッテリ115およびパワーマネージメントIC114の間に設けられた電流監視用低抵抗202と、この電流監視用低抵抗202に並列に接続されたFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)203とを備えている。
【0033】
電源モジュール200のバッテリ115は、二次電池204と、サーミスタRth205と、抵抗R206とを含み、さらに、バッテリ115は、外部装置と接続するための、+端子T1と、−端子T3と、TH端子T2を備えている。
【0034】
ここで、二次電池204は、例えばリチウムイオン電池であり、1または複数のセルが直列または並列に接続されている。この二次電池204の+側および−側は、それぞれ+端子T1および−端子T3と接続されている。また、二次電池204の−端子T3は、サーミスタRth205の一端とも接続されている。
【0035】
サーミスタRth205はバッテリ115、特に二次電池204の温度変化に応じて抵抗値が変化する抵抗体であり、当該サーミスタRth205の他端はTH端子T2と接続されている。そして、サーミスタRth205と並列になるように抵抗R206が接続されている。この抵抗R206は、サーミスタRth205にかかる電圧の変動を小さくするための抵抗体である。
【0036】
また、電源モジュール200のパワーマネージメントIC114は、バッテリ115の+端子T1、−端子T3およびTH端子T2を介して、当該バッテリ115と接続されている。パワーマネージメントIC114は、定電流回路207と、A/Dコンバータ208と、電流監視回路209とよりなる。
【0037】
電流監視回路209は、−端子T3とA/Dコンバータ208間に直列に接続された電流監視用低抵抗202での電圧降下を検出する回路であり、この電流監視回路209により、バッテリ115へ流入する電流(以下、「電池流入電流」という)が監視(モニタ)される。そのため、電流監視回路209は、電流監視用低抵抗202の両端とそれぞれ接続されている。この電流監視回路209は、制御部101とも接続されており、メモリ104に記憶されている所定のプログラムに基づいて、後述するFETオフ期間にだけ電流監視用低抵抗202での電圧降下の検出が行われるように制御部101によって制御される。
【0038】
本実施形態の内容と直接的には関係ないが、この電流監視回路209でモニタした電池流入電流を使用して、パワーマネージメントIC114は二次電池204のキャパシティの変動量を算出している。このキャパシティの変動量は、二次電池204の残容量を算出するのに用いられる。
【0039】
定電流回路207は、一定の電流を出力する回路である。この定電流回路は、サーミスタRth205および抵抗R206よりなる並列回路に所定の定電流を流すために、+端子T1およびTH端子T2と接続されている。また、定電流回路207は、制御部101とも接続されており、メモリ104に記憶されている所定のプログラムに基づいて所定の期間(以下、「温度検出期間」という)にだけ、サーミスタRth205および抵抗R206の並列回路に一定の電流を流すようにしている。
【0040】
A/Dコンバータ208は、TH端子T2と、−端子T3側のアースに接続されており、第二電圧V2を検出する。A/Dコンバータで検出される第二電圧V2は、TH端子T2と−端子T3との間の電位差に相当する第一電圧V1に対して、電流監視用低抵抗202での電圧降下分だけ増減した電圧に相当する。そして、A/Dコンバータ208で検出された第二電圧V2は、制御部101に出力される。なお、第一電圧V1は、定電流回路207からサーミスタ205と抵抗R206との並列回路に流れる電流の大きさおよびサーミスタ205の抵抗値によって決定される電圧である。
【0041】
制御部101は、バッテリ温度算出部210と、第一制御信号生成部211と、第二制御信号生成部212とを含む。
バッテリ温度算出部210は、予めメモリ104に記憶してある、図3に示す電池電圧−温度変換テーブル302を参照して、A/Dコンバータ208で検出された第二電圧V2からバッテリ115の温度を算出する。この電池電圧−温度変換テーブル302は、図6の電池電圧−温度変換テーブル602と同じものであり、サーミスタRth205と抵抗R206との合成抵抗にかかる電圧と、バッテリ115の温度との関係が予め書き込まれている。
【0042】
図6で説明したのと同じことになるが、サーミスタRth205と抵抗R206との合成抵抗に実際にかかる電圧は第一電圧V1に相当するので、正確なバッテリ115の温度を算出するためには第二電圧V2が第一電圧V1とほぼ等しくなる必要がある。すなわち、電流監視用低抵抗202での電圧降下の影響を少なくすることが必要となる。
【0043】
このため、図2に示す本発明の実施形態では、バッテリ115の温度を計測するタイミングと同期して、第二電圧V2が第一電圧V1とほぼ等しくなるように、電界効果トランジスタ(FET)203のオン・オフ制御が行われる。この点については後で詳しく説明する。
【0044】
また、第一制御信号生成部211は、定電流回路207の動作を制御するための第一制御信号(図4の402参照)を生成し、生成した第一制御信号402を定電流回路207に出力する。第一制御信号402は、図4に示すように、温度検出期間では‘H(ハイ)’をとり、この温度検出期間以外の期間(以下、「非温度検出期間」という)では‘L(ロー)’をとる論理信号である。
第一制御信号402の温度検出期間は、メモリ104に記憶された所定のプログラムに基づいて決定される。本例では、第一制御信号生成部211は、第一制御信号が‘H’の期間で定電流回路207を動作させ、‘L’の期間で定電流回路207を停止させる。
【0045】
また、第二制御信号生成部212は、電流監視回路209およびFET203の動作を制御するための第二制御信号(図4の403)を生成する。第二制御信号403は、FET203のゲート電極と電流監視回路209に加えられる。この第二制御信号403は、例えば後述するFETオフ期間では‘H’をとり、このFETオフ期間以外の期間(後述するFETオン期間)では‘L’をとる論理信号とされる。
【0046】
この第二制御信号403によるFETのオン/オフ期間もメモリ104に記憶された所定のプログラムに基づいて決定される。本例では、第二制御信号生成部212は、第二制御信号403が‘H’の期間で電流監視回路209を動作させ、‘L’の期間で電流監視回路209を停止させる。つまり、第二制御信号403がLの期間は、図2の電流監視用低抵抗202の両端に電圧降下が発生しないように制御される。
【0047】
すなわち、FET203は、ゲートに第二制御信号生成部212が接続されており、第二制御信号生成部212からゲートに入力される第二制御信号に応じて、ドレインとソースの間に流れる電流が制御される。
本例では、FET203はNチャンネルのFETであり、ゲート電極に入力される第二制御信号403が‘L’の場合にはドレインとソースの間に電流が流れ、ゲートに入力される第二制御信号403が‘H’の場合には、ドレインとソースの間に電流が流れない。本例では、第二制御信号生成部212からの第二制御信号403が‘L’になる期間および‘H’になる期間をそれぞれFETオン期間およびFETオフ期間と定義する。しかしながら、FET203は、Nチャンネルのものに限られない。例えば、PチャンネルのFETの場合は、FET203のオンとオフ期間をその逆にしてもよい。
【0048】
ところで、定電流回路207の動作時には、電流監視用低抵抗202と、FET203のドレインおよびソース間に流れる電流との合計は常に一定となる。一方、上述したように、温度検出時には、第二電圧V2を第一電圧V1に極力近づけるために、電流監視用低抵抗202での電圧降下を少なくしなければならないという要求もある。そこで、FET203のドレインおよびソース間の電圧降下が極力少ないFETとして、例えばパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor FET)が用いられる。
【0049】
なお、本実施形態の内容と直接的には関係ないが、温度算出部で算出されたバッテリ115の温度は、バッテリ115に対する充放電の制御、例えば異常なバッテリの温度が算出された際の充放電の停止等を行う際にも利用することができる。
【0050】
(3)電源モジュール200(充電時)の動作説明
次に、充電時の電源モジュール200のバッテリ温度検出に関する動作について、図4に基づいてさらに詳細に説明する。なお、FETオフ期間においては、A/Dコンバータ208は第二電圧V2を検出しておらず、バッテリ温度算出部210もバッテリ115の温度を算出しないので、FETオフ期間における電源モジュール200の動作の詳細な説明は省略する。
【0051】
図4は、第一制御信号402と第二制御信号403との関係を示す波形図である。
縦軸は、第一制御信号402および第二制御信号403の電圧の大きさを表している。横軸は共通の時間軸である。
【0052】
充電時には、図2に示す電源モジュール200において、バッテリ115の−端子T3からパワーマネージメントIC114のA/Dコンバータ208の方向に電流が流れる。本例では、この電流、すなわち電流監視用低抵抗202およびFET203に流れる電流の合計が1Aであるものとする。
【0053】
第二制御信号生成部212では、100msecのFETオン期間404と900msecのFETオフ期間405とを繰り返す周期信号である第二制御信号403が生成され、FET203のゲート電極および電流監視回路209に供給される。
電流監視回路209では、100msecのFETオン期間404に電池流入電流の監視が停止され、900msecのFETオフ期間405に電池流入電流の監視が行われる。そして、FET203のソースとドレインとの間には、100msecのFETオン期間404に電流が流れ、900msecのFETオフ期間405に電流が流れなくなる。
【0054】
このとき、第一制御信号生成部211では、FETオン期間404を中心とした10msecの温度検出期間406と990msecの非温度検出期間407を繰り返す周期信号である第一制御信号402が生成され、定電流回路207に出力される。定電流回路207では、10msecの温度検出期間406に所定の定電流がTH端子を介してサーミスタRth205および抵抗206に出力され、990mecの非温度検出期間407には所定の定電流の出力が停止される。
【0055】
ところで、FETオン期間404においてFET203のソースとドレインとの間に流れる電流の大きさが例えば900mAであるとすると、電流監視用低抵抗202には100mAの電流が流れる。例えば、電流監視用低抵抗202の抵抗値が25mΩであるとすると、電流監視用低抵抗202での電圧降下は、25mΩ(電流監視用低抵抗202の抵抗値)×100mA(電流監視用低抵抗202に流れる電流)であり、2.5mVとなる。すなわち、A/Dコンバータ208では、温度検出期間406において、第一電圧V1から2.5mVを足した値が第二電圧V2として検出される。
【0056】
FETオン期間404に含まれる温度検出期間406には、定電流回路207からサーミスタRth205および抵抗R206へ所定の定電流が供給されており、TH端子T2と−端子T3との間には、当該定電流およびサーミスタRth205と抵抗R206の合成抵抗の抵抗値に応じた第一電圧V1がかかっている。この第一電圧V1が例えば198mVである場合、A/Dコンバータ208では198mVから2.5mVを足した200.5mVが第二電圧V2として検出される。そして、この第二電圧V2である200.5mVがA/Dコンバータ208からバッテリ温度算出部210へ出力される。
【0057】
バッテリ温度算出部210では、メモリ104から電池電圧−温度変換テーブル302が読み出される。そして、読み出された電池電圧−温度変換テーブル302から、A/Dコンバータ208から入力された第二電圧V2、つまり200.5mVと「電池電圧」が一致するか最も近いレコードであるレコード303が検索される。そして、検索されたレコード303の「バッテリ温度」である60℃がバッテリ115の温度として算出される。
【0058】
このように、本例によれば、FETオン期間404にはFET203をオンにして当該FET203のソースとドレインとの間に電流が流れるようにした。これにより、このFET203と並列に接続された電流検出用低抵抗に流れる電流が小さくなり、電流検出用低抵抗での電圧降下が少なくなる。そのため、FETオン期間404に含まれる温度検出期間406において、実際バッテリ温度の計算に使用せざるを得ない第二電圧V2を、本来バッテリ温度の計算に使われなければならない第一電圧V1とほぼ等しくすることができる。これにより、正確なバッテリ温度を算出することができる。ここで算出されたバッテリ温度を利用してバッテリに対する充放電の制御等を正確に行うことができる。
【0059】
また、FETオフ期間405にはFET203をオフにして、当該FET203のソースとドレインとの間に電流が流れないようにした。これにより、FETオフ期間405には、電流監視回路209では電流検出用抵抗での電圧降下に基づいて正確にバッテリ流入電流が監視される。
【0060】
なお、上述した一実施形態では、充電時において、FETオン期間404の電流検出用抵抗での電圧降下を少なくする例を示した。しかし、放電時の電源モジュール200に流れる電流は充電時に流れる電流と逆方向であるので、放電時においても、FETオン期間404の電流検出用抵抗での電圧降下を少なくすることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0062】
100…携帯電話端末装置、101…制御部、102…アンテナ、103…通信回路、104…メモリ、105…メイン表示部、106…表示制御部、107…サブ表示部、108…操作部、109…スピーカ、110…マイクロホン、111…LED駆動部、112…LED、113…カメラ部、114,503…パワーマネージメントIC、115,502…バッテリ、200,501…電源モジュール、202,504…電流監視用低抵抗、203…FET、204,506…二次電池、205,508…サーミスタ、206,509…抵抗、207,507…定電流回路、208,510…A/Dコンバータ、209,505…電流監視回路、210…バッテリ温度算出部、211…第一制御信号生成部、212…第二制御信号生成部、302,602…電池電圧−温度変換テーブル、402…第一制御信号、403…第二制御信号、404…FETオン期間、405…FETオフ期間、406…温度検出期間、407…非温度検出期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池のマイナス側に接続される電流監視用低抵抗と、
前記電流監視用低抵抗の両端にソースとドレインがそれぞれ接続される電界効果トランジスタと、
前記二次電池の周辺温度に応じて抵抗値が変化する温度可変抵抗体と、
前記温度可変抵抗体に所定の定電流を供給して、前記温度可変抵抗体に第一電圧を印加する定電流回路と、
前記第一電圧と前記二次電池の周辺温度との関係が書き込まれている電池電圧−温度変換テーブルが、予め記憶されているメモリと、
前記第一電圧に対して、前記電流監視用低抵抗での電圧降下分だけ増減した第二電圧を検出するアナログ/デジタルコンバータと、
前記アナログ/デジタルコンバータで算出された前記第二電圧を前記第一電圧の代替として用いることにより、前記電池電圧−温度変換テーブルに基づいて前記第二電圧から前記二次電池の周辺温度を算出するバッテリ温度算出部と、
前記バッテリ温度算出部で前記二次電池の周辺温度を算出する期間だけ、前記温度可変抵抗体に対して前記定電流回路に定電流を供給させるとともに、前記電界効果トランジスタをオンにする制御信号生成部と
を備える電源モジュール。
【請求項2】
前記制御信号生成部は、
前記温度可変抵抗体に対して前記定電流回路に定電流を供給させる期間である温度検出期間を制御する第一制御信号生成部と、
前記温度検出期間を含み、前記温度検出期間よりも長い期間、前記電界効果トランジスタをオンにする第二制御信号を発生する第二制御信号生成部と
を備える請求項1に記載の電源モジュール。
【請求項3】
さらに、
前記電流監視用低抵抗での電圧降下を検出し、検出した電圧降下を利用して前記二次電池の充放電電流を監視する電流監視回路を備え、
前記第二制御信号生成部は、前記第二制御信号を前記電流監視回路に出力し、
前記電流監視回路は、前記電界効果トランジスタがオンのとき前記充放電電流を監視し、前記電界効果トランジスタがオフのとき前記充放電電流の監視を停止する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電源モジュール。
【請求項4】
前記温度可変抵抗体は、抵抗と、前記抵抗と並列に接続されたサーミスタとから形成される、
請求項1から3のいずれかに記載の電源モジュール。
【請求項5】
携帯電話としての機能を有する携帯機能部と、
バッテリを含み、前記バッテリから前記携帯電話機能部に対する電力の供給を制御する電力供給制御部とを備える携帯電話端末装置において、
前記電力供給制御部は、
二次電池と、
前記二次電池のマイナス側に接続される電流監視用低抵抗と、
ソースとドレインがそれぞれ前記電流監視用低抵抗の両端に接続される電界効果トランジスタと、
前記二次電池の周辺温度に応じて抵抗値が変化する温度可変抵抗体と、
前記温度可変抵抗体に所定の定電流を供給して、前記温度可変抵抗体に第一電圧を印加する定電流回路と、
前記第一電圧と前記二次電池の周辺温度との関係が書き込まれている電池電圧−温度変換テーブルが、予め記憶されているメモリと、
前記第一電圧に対して、前記電流監視用低抵抗での電圧降下分だけ増減した第二電圧を検出するアナログ/デジタルコンバータと、
前記アナログ/デジタルコンバータで算出された前記第二電圧を前記第一電圧の代替として用いることにより、前記電池電圧−温度変換テーブルに基づいて前記第二電圧から前記二次電池の周辺温度を算出するバッテリ温度算出部と、
前記バッテリ温度算出部で前記二次電池の周辺温度を算出する期間だけ、前記温度可変抵抗に対して前記定電流回路に定電流を供給させるとともに、前記電界効果トランジスタをオンにする制御信号生成部と
を備える携帯電話端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279236(P2010−279236A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132484(P2009−132484)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】