説明

電源回路

【課題】上位からの信号指示により出力電圧値の変更があった場合、これに応じて過電流検出値を変更することができ、出力電力を一定以下に抑えることができるようにする。
【解決手段】演算増幅器13、抵抗6、7、9〜11、14、基準電圧源15により、出力電圧に応じて過電流検出値を変化させるための回路を構成する。過電流制御用の検出端子SENSE+及びSENSE−には、抵抗4の両端からの検出値と、演算増幅器13からのアナログ値の出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lの差分値とに基づく値を供給する。これにより、上位装置より出力電圧の変更指示があった時、過電流検出値を出力電圧に応じて変更することができ、出力電圧が上昇した時に電力制限値が大きくなることなく、一定の電力制限をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流検出回路が設けられた電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタからなるスイッチング素子にスイッチングパルスを供給して所望の出力電圧を得るようにしたDC−DCコンバータにおいては、出力電流の過電流を検出すると、装置に対する電源を停止する動作を行う過電流保護回路が設けられている(例えば特許文献1)。
【0003】
図3は、このような過電流保護回路が設けられたDC−DCコンバータの一例である。図3において、MOSトランジスタ201のドレインは電源入力端子221に接続され、そのソースはチョークコイル203の一端に接続される。MOSトランジスタ202のドレインはチョークコイル203の一端に接続され、そのソースは接地ライン220に接続される。MOSトランジスタ201及びMOSトランジスタ202のゲートは、制御IC208の端子G1及びG2にそれぞれ接続される。電源入力端子222は接地ライン220に接続される。
【0004】
チョークコイル203の他端は抵抗204の一端に接続されると共に、制御IC208の検出端子SENSE+に接続される。抵抗204の他端は電源出力端子223に接続されると共に、制御IC208の検出端子SENSE−に接続される。また、抵抗204の他端と接地ライン220との間に、コンデンサ205が接続される。電源出力端子224は接地ライン220に接続される。
【0005】
図3に示すDC−DCコンバータでは、電源入力端子221及び222に直流電源が入力される。MOSトランジスタ201及びMOSトランジスタ202のゲートには、制御IC208の端子G1及びG2からスイッチングパルスが供給され、MOSトランジスタ201及びMOSトランジスタ202が交互にオン/オフされる。これにより、電源出力端子223及び224から所望の出力電圧の直流電源が出力される。また、制御IC208には、上位装置からの出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lが供給されると、この出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lに従って、スイッチングパルスのパルス幅が制御され、出力電圧が変化される。
【0006】
また、抵抗204の両端電圧から出力電流が検出される。この抵抗204の両端電圧は、制御IC208の過電流制御用の検出端子SENSE+及びSENSE−に供給される。出力電圧が過電流になり、抵抗204の両端電圧から検出端子SENSE+及びSENSE−に印加される電圧が一定値以上になると、MOSトランジスタ1及び2のスイッチングパルスが停止され、装置に対する電源が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−57778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3に示したDC−DCコンバータでは、抵抗204の両端電圧から出力電流を検出し、この検出値が所定値を越えると、スイッチングパルスを停止させ、過電流を防止している。ところが、このような回路では、出力電圧の変更指示を上位装置から受けて出力電圧を上昇させた時にも、過電流検出値が常に一定であるため、電力容量が基準値を超えてしまうことがある。
【0009】
例えば、図4に示すように、上述のように構成されるDC−DCコンバータ250により、負荷251に電源を供給しているとする。ここで、図4(A)に示すように、DC−DCコンバータ250の出力電圧はVoであり、過電流の検出値はIoであるとする。この場合、負荷251に最大限供給される電力Poは、
Po=Io×Vo
である。
【0010】
ここで、図4(B)に示すように、上位機器からの出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lにより、出力電圧がΔvだけ上がり、DC−DCコンバータ250の出力電圧が(Vo+Δv)になったとする。図3に示したDC−DCコンバータ250では、出力電圧が上昇しても、過電流の検出値は一定である。よって、この場合、負荷251に最大限供給される電力Poは、
Po=Io×(Vo+Δv)
に上昇する。
【0011】
このように、図3に示したDC−DCコンバータでは、過電流検出値が常に一定であるため、出力電圧の変更指示を上位装置から受けて電圧を出力電圧を上昇させると、電力容量が基準値を超えてしまうことがあり得る。このため、装置に供給している分電盤電源設備が電力容量に余裕がない場合、電力容量を超え、分電盤電源設備が破損してしまう可能性がある。
【0012】
上述の課題を鑑み、本発明は、上位からの信号指示により出力電圧値の変更があった場合、これに応じて過電流検出値を変更することができ、出力電力を一定以下に抑えることができるようにした電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するために、本発明は、スイッチング素子にスイッチングパルスを供給して所望の出力電圧を得るようにした電源回路において、出力電流を検出する手段と、出力電流の検出値と出力電圧とに基づいて変化する過電流検出値を形成する手段と、過電流検出値が所定値以上になったらスイッチングパルスを停止させる手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上位装置より出力電圧の変更指示があった時、過電流検出値を出力電圧に応じて変更することができる。これにより、出力電圧が上昇した時に電力制限値が大きくなることなく、一定の電力制限をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態によるDC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施形態によるDC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図3】過電流検出回路が設けられたDC−DCコンバータの一例の回路図である。
【図4】過電流検出回路が設けられたDC−DCコンバータにおける問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるDC−DCコンバータの一例を示すものである。
本発明の第1の実施形態によるDC−DCコンバータは、スイッチング素子としてのMOSトランジスタ1及び2と、電磁エネルギーを蓄積するチョークコイル3と、電流検出用の抵抗4と、平滑用のコンデンサ5と、MOSトランジスタ1及び2のゲートにスイッチングパルスを供給する制御IC8とを含んでいる。制御IC8には、上位装置からの出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lが供給され、この出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lに従い、出力電圧を変化させることができる。
【0017】
また、制御IC8には、過電流制御用の検出端子SENSE+及びSENSE−が設けられている。この検出端子SENSE+及びSENSE−に一定値以上の検出値が供給されると、MOSトランジスタ1及び2のスイッチングパルスが停止される。
【0018】
本発明の第1の実施形態では、出力電圧に応じて過電流検出値を変化させることで、出力電力が一定になるような制御を行っている。演算増幅器13、抵抗6、7、9〜11、14、基準電圧源15は、出力電圧に応じて過電流検出値を変化させるための回路を構成している。かかる構成を有する本発明の第1の実施形態について、以下に説明する。
【0019】
図1において、MOSトランジスタ1のドレインは電源入力端子21に接続され、そのソースはチョークコイル3の一端に接続される。MOSトランジスタ2のドレインはチョークコイル3の一端に接続され、そのソースは接地ライン20に接続される。MOSトランジスタ1及びMOSトランジスタ2のゲートは、制御IC8の端子G1及びG2にそれぞれ接続される。電源入力端子22は接地ライン20に接続される。
【0020】
チョークコイル3の他端は抵抗4の一端に接続されると共に、抵抗6の一端に接続される。抵抗4の他端は電源出力端子23に接続されると共に、抵抗7の一端及び制御IC8の検出端子SENSE−に接続される。また、抵抗4の他端と接地ライン20との間に、コンデンサ5が接続される。電源出力端子24は接地ライン20に接続される。
【0021】
抵抗6の他端及び抵抗7の他端は、制御IC8の検出端子SENSE+に接続されると共に、抵抗14の一端に接続される。抵抗14の他端は、演算増幅器13の出力端子に接続される。
【0022】
演算増幅器13の反転入力端子は、抵抗9を介して、入力端子25に接続される。また、演算増幅器13の反転入力端子とその出力端子との間に、抵抗11が接続される。
【0023】
演算増幅器13の非反転入力端子は、抵抗10を介して、入力端子26に接続される。また、演算増幅器13の非反転入力端子と接地間に、抵抗12及び基準電圧源15が接続される。入力端子25及び26には、上位装置から出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lが与えられる。なお、出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lはアナログ電圧値である。
【0024】
図1に示すDC−DCコンバータでは、電源入力端子21及び22に直流電源が入力される。MOSトランジスタ1及びMOSトランジスタ2のゲートには、制御IC8の端子G1及びG2からスイッチングパルスが供給され、MOSトランジスタ1及びMOSトランジスタ2が交互にオン/オフされる。これにより、電源出力端子23及び24から所望の出力電圧の直流電源が出力される。また、制御IC8には、上位装置からの出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lが供給されると、この出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lに従ってスイッチングパルスのパルス幅が制御され、出力電圧が変化される。
【0025】
また、前述したように、本発明の第1の実施形態では、演算増幅器13、抵抗6、7、9〜11、14、基準電圧源15により、出力電圧に応じて過電流検出値を変化させるための回路が構成される。このことについて以下に説明する。
【0026】
図1において、電流検出用の抵抗4の抵抗値をR4とし、抵抗4を流れる出力電流をIoutとすると、抵抗4の両端電圧は、
R4×Iout
となる。
【0027】
抵抗4の両端電圧は、抵抗6と抵抗7とにより分圧されて、制御IC8の検出端子SENSE+及びSENSE−に印加される。すなわち、抵抗6及び抵抗7の抵抗値をR6及びR7とすると、抵抗4の両端電圧により制御IC8の検出端子SENSE+及びSENSE−に印加される電圧は、
R4×Iout×R7/(R6+R7)
となる。
【0028】
また、この制御IC8の検出端子SENSE+及びSENSE−に印加される電圧には、演算増幅器13の出力電圧が抵抗14と抵抗7とにより分圧された値が加算される。すなわち、この演算増幅器13の出力電圧をVm、抵抗14の抵抗値をR14、抵抗7の抵抗値をR7とすると、演算増幅器13により制御IC8の検出端子SENSE+及びSENSE−に加算される電圧値は、
Vm×R7/(R14+R7)
となる。
【0029】
よって、制御IC8の検出端子SENSE+及びSENSE−の両端に印加される電圧Vocは、
Voc≒R4×Iout×R7/(R6+R7)+Vm×R7/(R14+R7) …(1)
となる。
【0030】
また、演算増幅器13からは、出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lの電圧差分値が増幅されて出力される。前述したように、出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lはアナログ電圧値であり、このアナログ電圧値をそれぞれVmgnh、Vmgnlで表すとする。また、抵抗9及び抵抗10の抵抗値は等しい値R9であるとし、抵抗11及び抵抗12の抵抗値は等しい値R11であるとする。この場合、演算増幅器13の出力電圧Vmは
Vm=(R11/R9)×(Vmgnh−Vmgnl)+Vref …(2)
となる。
【0031】
(1)式及び(2)式より、制御IC8の検出端子SENSE+及びSENSE−の印加電圧Vocは、
Voc≒R4×Iout×R7/(R6+R7)+Vm×R7/(R14+R7)
=A×Iout+B×(Vmgnh−Vmgnl)+C …(3)
と表すことができる。
【0032】
ここで、A,B,Cは正の定数であり、抵抗6〜7、抵抗9〜12、抵抗14の値により調整できる。よって、過電流検出点の印加電圧Vocは、抵抗4を流れる出力電流Ioutと、出力電圧の変更指示信号MGN_Hの印加電圧(Vmgnh)と出力電圧の変更指示信号MGN_L印加電圧(Vmgnl)との差分値とに基づいた値となる。
【0033】
一方、電源出力端子23及び24からの出力電圧Voutは、出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_Lの印加電圧の差分により、下記計算式で示される電圧になる。ここでD,Eは正の定数である。
Vout=D*(Vmgnh−Vmgnl)+E …(4)
【0034】
以上より、上位装置からの出力電圧の変更指示信号MGN_H及びMGN_L信号に従い、出力電圧が上昇させると、これに応じて過電流検出点への印加電圧値も比例して増加することになる。これにより、出力電力は一定に抑えられる。
【0035】
本発明の第1の実施形態によれば、上位装置より出力電圧の変更指示があった時、過電流検出値を出力電圧に応じて変更することができる。これにより、出力電圧が上昇した時に、電力制限値が大きくなることなく、一定の電力制限をすることができる。
【0036】
また、本発明の第1の実施形態によれば、出力電圧の変更指示信号MGN_H信号とMGN_L信号にアナログ電圧を印加することにより、このアナログ電圧に比例して線形に過電流検出を変化させることができる。
【0037】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態を示すものである。図2において、MOSトランジスタ101及び102、チョークコイル103、コンデンサ105、抵抗106〜107、109〜112、114、制御IC108、演算増幅器113、基準電源115、電源入力端子121及び122、電源出力端子123及び124、出力電圧の変更指示信号の入力端子125及び126は、図1に示した第1の実施形態におけるMOSトランジスタ1及び2、チョークコイル3、コンデンサ5、抵抗6〜7、9,9〜12、14、制御IC8、演算増幅器13、基準電圧源15、電源入力端子21及び22、電源出力端子23及び24、出力電圧の変更指示信号の入力端子25及び26と同様であり、その説明を省略する。
【0038】
前述の第1の実施形態では、電流検出用の抵抗4の両端電圧から出力電流値を検出していたのに対して、この実施形態では、カレントトランス116により、出力電流値を検出している。電流検出用の抵抗4をカレントトランス116に変更することで、電流検出用の抵抗4で発生する電力損失を低減することが可能である。更に、チョークコイル203のインダクタンス値をカレントトランス116で持たせる場合は、チョークコイル203は削除可能である。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1,2:MOSトランジスタ
3:チョークコイル
4:電流検出用の抵抗
5:コンデンサ
13:演算増幅器
21,22:電源入力端子
23,24:電源出力端子
25,26:出力電圧の変更指示信号の入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子にスイッチングパルスを供給して所望の出力電圧を得るようにした電源回路において、
出力電流を検出する手段と、
前記出力電流の検出値と出力電圧とに基づいて変化する過電流検出値を形成する手段と、
前記過電流検出値が所定値以上になったら前記スイッチングパルスを停止させる手段と
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記過電流検出値を形成する手段は、前記出力電流の検出値と、アナログ値の出力電圧の変更指示信号とから形成することを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記出力電流を検出する手段は、電流検出用の抵抗であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源回路。
【請求項4】
出力電流を検出する手段は、カレントトランスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−45222(P2011−45222A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193535(P2009−193535)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】