説明

電源回路

【課題】簡素な回路構成で確実に電圧の異常を検知できる電源回路を提供する。
【解決手段】スイッチング素子に制御信号を与えるための制御電源電圧を供給する電源回路において、スイッチング素子に対して所要数の出力回路1b,1cで制御電源電圧を供給する機能及び、出力回路1aにおける出力電圧を一定に保つフィードバック制御の機能を有するスイッチング電源1と、フィードバック制御に使用されている出力回路1aの出力電圧に基づいて制御電源電圧を監視し、異常な場合には、スイッチング素子71,72の制御装置であるCPU8に対して、制御信号の出力を停止させる信号を出力する監視回路3とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源を用いた電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ回路のような、スイッチング素子を有する電力変換装置では、スイッチング素子の制御端子に駆動信号(直流電圧)を与えるための電源回路が必要である。また、スイッチング素子を安定して動作させるためには、電源回路から安定した電圧を与えることが必要である。もしこの電圧が、落雷等による短時間の電源遮断等により異常に低下すると、スイッチング素子の安定動作は保証されない。代表的なスイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)は、制御端子(ゲート)に例えば6V程度の、素子がオン状態となるゲート電圧閾値(Vth)を持つが、ゲート電圧が低い場合には、コレクタ・エミッタ間の飽和電圧が高く、電流を十分に流せずに損失が大きな状態となるため、通常は10V程度を超えるゲート電圧を与えてオン動作させ、オフにしたいときはゲート電圧をほぼ0Vとする、という駆動電圧制御を行う。
【0003】
言い換えれば、ゲート電圧が約6〜10Vまでの範囲は不安定な動作領域である。従って、スイッチング素子の動作中にIGBTを駆動するためのゲート電圧が低下すると、IGBTの異常発熱や、誤動作が生じる。インバータ回路の場合には、IGBTが想定通りに動作しないと、電源間の短絡検出ができなかったり、発熱が過大になる等の不具合を招く場合もある。
一方、電源回路の故障等によって、ゲート電圧が過大となる場合もあり得る。もし、IGBTのゲート耐圧を超えるゲート電圧が付与されると、IGBTが故障する恐れがある。
【0004】
そこで、ゲート電圧の異常を判定する手段を設け、異常な場合にはIGBTをオフにすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、これとは異なるが、同様な目的で本出願人が実施している、ゲート電圧用の電源電圧の異常を判定する回路例を図4に示す。図4において、CPU(図示せず。)から与えられるゲート信号(例えばオン指令が5V、オフ指令が0Vとなる信号)に応じて、ゲートドライブ用のフォトカプラ(以下、ドライブ用カプラと略す。)51は、ゲート電圧(例えばオン指令が15V)をIGBT52に付与する。ドライブ用カプラ51には、ゲート電圧の基になる制御電源電圧が、2つの電路53,54間に供給されている。
【0005】
また、2つの電路53,54間には、ツエナーダイオード55とフォトカプラ56の入力側の発光ダイオード56dとの直列体が、接続されている。フォトカプラ56の出力側のフォトトランジスタ56tは、エミッタ接地され、コレクタに接続された電路58は、抵抗57を介してプルアップされている。
【0006】
電路53,54間の電圧が正常なときは、ツエナーダイオード55が導通して発光ダイオード56dが点灯し、フォトカプラ56がオンになるので、電路58は電位がLレベルとなる。2つの電路53,54間の電圧が低下すると、ツエナーダイオード55が非導通となって発光ダイオード56dが消灯し、フォトカプラ56がオフになるので、電路58は電位がHレベルとなり、これが異常信号として出力される。異常信号に基づいてCPUからのゲート信号出力を停止させる(0Vを出力する。)ことによって、IGBT52をオフさせ、制御電圧低下の状態でのIGBT52の使用を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−125588号公報(図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般にインバータ回路においては複数のスイッチング素子が使用される。ここでは、スイッチング素子としてIGBTを例にとって説明すると、IGBTは、アームや基準電位の違いから、各IGBTのゲート駆動に共通の電源回路を用いることはできず、複数の互いに絶縁された電源回路が必要である。そのため、それら複数のIGBTをそれぞれの制御電圧低下時にオフするためには、特許文献1の電源回路では、IGBTごとに異常判定の回路を設けることが必要である。また、図4の電源回路においても、少なくとも電源回路(電路53,54)ごとに異常判定の回路を設けることが必要である。このように、従来の電源回路では、電源回路ごと、あるいはIGBTごとに異常判定の回路を設ける必要があるので、必要な実装部品数が増大する。その結果として回路構成は複雑になり、基板の大型化やコストアップを招いていた。
なお、上記のような制御電圧低下とは逆に、制御電圧上昇もあり得るが、この場合にも同様な問題点が生じる。
【0009】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、簡素な回路構成で確実に電圧の異常を検知できる電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、スイッチング素子に制御信号を与えるための制御電源電圧を供給する電源回路であって、前記スイッチング素子に対して所要数の出力回路で前記制御電源電圧を供給する機能及び、いずれかの出力回路における出力電圧を一定に保つフィードバック制御の機能を有するスイッチング電源と、前記フィードバック制御に使用されている出力回路の出力電圧に基づいて前記制御電源電圧を監視し、当該制御電源電圧が異常なときは前記制御信号の出力を停止させる信号を出力する監視回路と、を備えたものである。
【0011】
上記のように構成された電源回路では、フィードバック制御によって安定しているはずの出力電圧が異常な値になれば、他の出力回路の出力電圧も異常な値になっている。従って、出力回路ごとに電圧を監視せずとも、フィードバック制御に使用されている出力回路の出力電圧により、スイッチング電源全体の電圧監視ができる。従って、この出力電圧に基づいて、スイッチング電源そのもの若しくはスイッチング電源への入力が何らかの異常であると判断してスイッチング素子への制御信号の出力を停止させることにより、スイッチング素子を保護することができる。
【0012】
(2)また、上記(1)の電源回路において、監視回路は、制御電源電圧が異常に低下したとき制御信号の出力を停止させる信号を出力するものであってもよい。
すなわち、フィードバック制御によって安定しているはずの出力電圧が異常低下すれば、他の出力回路の出力電圧も低下している。従って、この出力電圧に基づいて、スイッチング素子を保護することができる。
【0013】
(3)また、上記(2)の電源回路は、スイッチング電源の出力する電圧を所定の定電圧に低下させて出力するレギュレータ回路を備え、監視回路は、出力回路の出力電圧に基づく対象電圧が、当該定電圧に基づく基準電圧より低いときに、スイッチング素子の制御装置に対して、制御信号の出力を停止させる信号を出力するものであってもよい。
この場合、レギュレータ回路への入力電圧が下がっても、レギュレータ回路は元々、入力電圧を低下させた定電圧を出力するため、入力電圧が定電圧を下回るまでは、定電圧を出力し続け、基準電圧は変わらない。従って、対象電圧が基準電圧より低いときは、スイッチング電源そのものもしくはスイッチング電源への入力が何らかの異常状態であると判断してスイッチング素子への制御信号の出力を停止させることにより、スイッチング素子を保護することができる。
【0014】
(4)また、上記(3)の電源回路において、レギュレータ回路は、複数段のレギュレータによって構成され、後段ほど、出力する定電圧が低くなるものであってもよい。
この場合、後段のレギュレータほど、その入力電圧が低くても出力電圧を保持できるため、最終段のレギュレータの出力が定電圧を下回るまでの時間を確保し易くなる。すなわち、最終段のレギュレータは、スイッチング電源の出力電圧が異常低下しても、その時から比較的長い時間、定電圧の出力を維持することができる。
【0015】
(5)また、上記(3)又は(4)の電源回路において、スイッチング素子の制御電源電圧が、当該スイッチング素子を正常に動作させることが可能な所定電圧より低下する前に、対象電圧が基準電圧より低下することが好ましい。
このようにすることで、監視回路がスイッチング素子を保護するより先にスイッチング素子が異常動作を行なうことを、回避することができる。
【0016】
(6)また、上記(1)の電源回路において、監視回路は、制御電源電圧が異常に上昇したとき制御信号の出力を停止させる信号を出力するものであってもよい。
すなわち、フィードバック制御によって安定しているはずの出力電圧が異常上昇すれば、他の出力回路の出力電圧も上昇している。従って、この出力電圧に基づいて、スイッチング素子を保護することができる。
【0017】
(7)また、上記(6)の電源回路は、スイッチング電源の出力する電圧を所定の定電圧に低下させて出力するレギュレータ回路を備え、監視回路は、出力回路の出力電圧に基づく対象電圧が、当該定電圧に基づく基準電圧より高いときに、スイッチング素子の制御装置に対して、制御信号の出力を停止させる信号を出力するものであってもよい。
この場合、レギュレータ回路への入力電圧が上がっても、レギュレータ回路は定電圧を出力し続け、基準電圧は変わらない。従って、対象電圧が基準電圧より高いときは、スイッチング電源そのものもしくはスイッチング電源への入力が何らかの異常状態であると判断してスイッチング素子への制御信号の出力を停止させることにより、スイッチング素子を保護することができる。
【0018】
(8)また、上記(3)、(4)、(5)又は(7)の電源回路において、対象電圧と基準電圧とは、スイッチング電源の出力側の共通のGND電位から見た電圧であることが好ましい。
この場合、共通のGND電位に対する2系統の電圧をそのまま監視回路への2入力とすることができ、相互に絶縁する必要が無いので、回路構成が簡素になる。
【0019】
(9)また、上記(8)の電源回路において、制御装置の電源電圧は、対象電圧及び基準電圧と同様に、GND電位から見た電圧であることが好ましい。
この場合、監視回路の出力をそのまま制御装置へ入力することができ、相互に絶縁する必要が無いので、回路構成が簡素になる。
【0020】
(10)また、上記(3)、(4)、(5)又は(7)の電源回路において、制御装置の電源電圧は、レギュレータ回路の出力電圧を用いているものであってもよい。
この場合、制御装置の電源電圧が安定する。
【0021】
(11)また、上記(1)〜(10)のいずれかの電源回路において、スイッチング素子は、複数個で電力変換回路を構成する電圧駆動型素子であってもよい。
この場合、スイッチング電源の出力電圧が異常低下することによって制御信号としてのゲート電圧が下がると、IGBTやMOSFET等の電圧駆動型素子の異常発熱やスイッチング不良を招く可能性があるが、ゲート電圧の供給を停止することによって、かかる事態を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電源回路によれば、簡素な回路構成で確実に電圧の異常を検知し、スイッチング素子を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る電源回路を中心とした回路図である。
【図2】レギュレータ回路の電圧変化等を示す図である。
【図3】図1の各部の電圧変化及び監視回路の出力の変化を示す図である。
【図4】ゲート電圧用の電源電圧の異常を判定するための、従来の回路例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る電源回路を中心とした回路図である。図において、電源回路は、スイッチング電源1、レギュレータ回路2、監視回路3、及び、制御装置8を主な構成要素として構成されている。スイッチング電源1は、スイッチングトランス10、整流回路11、スイッチング素子(例えばIGBT)12、コントローラ13、平滑コンデンサC0,C11,C12,C2,C3及び、ダイオードD11,D12,D2,D3を、図示のように接続して構成されている。
【0025】
商用交流電源4から供給される交流電圧は整流回路11で全波整流され、平滑コンデンサC0で平滑される。平滑された電圧により、スイッチング素子12を介して、スイッチングトランス10の入力側巻線100に電流が流れる。スイッチング素子12は、コントローラ13によってPWM制御され、高周波スイッチングを行う。このスイッチングによって出力側の複数の巻線101〜103にそれぞれ巻数比に応じた電圧が誘起される。誘起された電圧は、それぞれ、ダイオードD11,D12,D2,D3及び平滑コンデンサC11,C12,C2,C3を介して整流・平滑され、出力回路1a,1b,1cを構成する。巻線101は、センタータップ付き巻線であり、出力回路1aは、例えば15Vと、7Vとを出力する。
【0026】
出力回路1b〜1cは、2回路のみを図示しているが、実際には、負荷となるスイッチング素子に対しての所要数だけ設けられる。出力回路1b,1cは、ドライブ用カプラ(ゲートドライブ用のフォトカプラ)5,6に対して、IGBTであるスイッチング素子71,72に制御信号(ゲート電圧)を与えるための制御電源電圧を供給する。ゲート電圧の論理上の基になるゲート信号は、制御装置としてのCPU8からドライブ用カプラ5,6に対して与えられる。
【0027】
スイッチング素子71,72は、インバータやコンバータ等の電力変換回路7を構成するものであり、実際には適用される回路に応じた数のスイッチング素子が設けられ、それぞれに対して、あるいは動作が同じ素子に対して共通に、ドライブ用カプラが設けられる。但し、スイッチング素子の用途は電力変換回路に限られず、他の種々のスイッチとして用いられるものであってもよい。また、出力回路は、共通の基準電位や必要電圧等の条件を満たす場合には、複数のドライブ用カプラに対して出力する構成とする場合もある。なお、CPU8は、例えば、レギュレータ回路2の出力から3.3Vの電源供給を受ける。
【0028】
一方、出力回路1aの定格15Vの出力電圧は、フィードバック制御に使用されている。すなわち、15Vであるべき電圧が15Vより高くなると、コントローラ13はPWM制御のデューティを下げてスイッチングトランス10の出力電圧を下げるように動作する。逆に、15Vであるべき電圧が15Vより低くなると、コントローラ13はPWM制御のデューティを上げてスイッチングトランス10の出力電圧を上げるように動作する。このようなフィードバック制御により、スイッチング電源1の各出力回路の出力する電圧は、所定の値から大きく外れることなく維持されている。特に、フィードバック制御に使用されている出力回路1aの電圧は、極めて小さい変動範囲内(例えば15V出力は、±0.25Vの精度である14.75〜15.25Vの範囲内)に維持されている。
【0029】
逆に、出力回路1aの電圧がこの変動範囲内にあれば、他の出力回路1b,1cの電圧も、正常な許容範囲内に電圧が維持されるようになっている。また、フィードバック制御によって安定しているはずの出力回路1aの電圧が交流電圧低下等により異常低下すれば、他の出力回路1b,1cの出力電圧も低下する。従って、出力回路ごとに電圧を監視せずとも、フィードバック制御に使用されている出力回路1aの出力電圧に基づいて、スイッチング電源1の出力全体の電圧監視ができる。
【0030】
そこで、出力回路1aの電圧に基づいて、スイッチング電源1全体としての出力電圧の異常低下を監視する。監視回路3は、そのための回路であり、フィードバック電圧(コントローラ13に入力される電圧)を例えば抵抗R1,R2で分圧して、コンパレータ31の一方の入力端子に付与する。この電圧を、後述の基準電圧Vrと比較されるべき対象電圧Vinとする。
【0031】
一方、出力回路1aのうち、7Vの回路には、レギュレータ回路2が接続されている。レギュレータ回路2は、レギュレータ(3端子レギュレータ)と電解コンデンサとを1組にして、これを2組、すなわち2段に接続したものである。すなわち、前段のレギュレータ21は、入力電圧(7V)を定電圧5Vに低下させて出力する。その出力は、電解コンデンサC5を介して後段のレギュレータ22の入力となる。後段のレギュレータ22は、入力電圧(5V)を定電圧3.3Vに低下させて出力する。その出力は、電解コンデンサC6を介して、監視回路3に与えられる。監視回路3では、3.3Vの電圧を、例えば抵抗R3,R4で分圧して、コンパレータ31の他方の入力端子に付与する。この電圧を、基準電圧Vrとする。
【0032】
なお、出力回路1aにおける7V,15Vに共通の電路はGND電位にあり、対象電圧Vin及び基準電圧Vrも、共通のGND電位に対する電圧である。従って、共通のGND電位に対する2系統の電圧をそのまま監視回路3への2入力とすることができ、相互に絶縁する必要が無いので、回路構成が簡素になる。また、CPU8も共通GND電位であるため、さらに回路構成は簡素化される。
【0033】
スイッチング電源1の出力電圧が正常なときは、対象電圧Vinは基準電圧Vrより若干高くなるように抵抗R1,R2及びR3,R4による分圧比が設定されている。このときのコンパレータ31の出力は例えばHレベル(正常)である。CPU8は、この出力を、スイッチング電源1の出力電圧の正常状態を示すものとして扱う。
【0034】
次に、スイッチング電源1の出力電圧が短時間の電源遮断やコントローラ13の異常により異常低下したときの動作について説明する。
まず、レギュレータ回路2の動作について説明する。図2は、レギュレータ回路2の電圧変化を示す図である。なお、各レギュレータは通常、所要の定出力電圧を出力可能な入力電圧範囲が定められているが、ここでは説明を簡単にするため、入力電圧が定出力電圧以上であれば電圧出力可能と仮定する。
【0035】
出力回路1aの7V電圧は、時刻t1に異常が発生すると徐々に下がり、最終的には0Vになる。前段のレギュレータ21の出力は、時刻t1以後もしばらくは5Vを維持するが、出力回路1aの電圧が5Vより低くなる時刻t2以後は、徐々に下がり、最終的には0になる。後段のレギュレータ22の出力は、時刻t2以後もしばらくは3.3Vを維持するが、レギュレータ21の出力電圧が3.3Vより低くなる時刻t3以後は、徐々に下がり、最終的には0になる。
上記のように、後段のレギュレータ22の出力は、異常が発生した時刻t1以後、時刻t3まで、定電圧の出力電圧3.3Vを維持することができる。
【0036】
図3は、各部の電圧変化及び監視回路3の出力の変化を示す図である。スイッチング素子71,72用の制御電源電圧すなわち、出力回路1b又は1cの出力電圧は、時刻txに異常が発生すると徐々に下がり、時刻tzにはスイッチング素子の不安定動作領域に入り、最終的には0Vになる。
【0037】
フィードバック電圧に基づく対象電圧Vinは、時刻tx以後、徐々に下がり、最終的には0Vになる。一方、基準電圧Vrは、レギュレータ回路2の前述の作用により、異常発生後もしばらく電圧を維持する。従って、異常発生後の例えば時刻tyには、基準電圧Vrよりも対象電圧Vinの方が低くなり、監視回路3におけるコンパレータ31の出力がHレベルからLレベルへ変化する。この変化により、CPU8は、スイッチング素子71,72のそれぞれのドライブ用カプラ5,6に対してゲート信号を送ることを停止する。従って、ドライブ用カプラ5,6からスイッチング素子71,72へのゲート電圧が失われ、スイッチング素子71,72はオフとなる。
【0038】
なお、上記の時刻tyにおいてスイッチング素子71,72用の制御電源電圧は多少下がっているが、この時点ではまだ、スイッチング素子71,72に異常発熱や誤動作は発生しない。逆に言えば、スイッチング素子71,72に異常発熱や誤動作が発生する可能性が生じる前に、監視回路3の出力が反転して異常を検出できるように、基準電圧Vr及び抵抗R1,R2の分圧比を設定しておくことになる。
【0039】
以上のように、レギュレータ回路2への入力電圧が下がっても、レギュレータ回路2は元々、入力電圧を低下させた定電圧を出力するため、入力電圧が定電圧を下回るまでは、定電圧を出力し続け、基準電圧は変わらない。従って、対象電圧Vinが基準電圧Vrより低いときは、スイッチング素子71,72への制御信号の出力を停止させることにより、スイッチング素子71,72を保護することができる。ここで、CPU8の電源電圧をレギュレータ回路2の出力電圧としておくことで、CPU8をより長い間動作させ続けることができ、保護動作をより確実に行なうことができる。また、前述のように、出力回路ごとに電圧を監視せずとも、フィードバック制御に使用されている出力回路1aの出力電圧に基づいて、スイッチング電源1全体の電圧監視ができる。
【0040】
また、上記実施形態では、電圧の異常低下を例にとって説明したが、電圧が異常上昇する場合においても、その監視回路(3)を、対象電圧が基準電圧よりも高い場合に異常検出を行なう構成とするだけで、同様の効果を得ることができる。
具体的には、図1に示した監視回路3をもう1つ並列に設け、例えば、正常時は対象電圧Vinが基準電圧Vrよりも低くなるようにしておく。そして、電圧の異常上昇によって対象電圧Vinが基準電圧Vrよりも高くなると、コンパレータ31の出力が反転することによって異常状態を検出し、ドライブ用カプラ5,6に対してゲート信号を送ることを停止すればよい。このときの基準電圧Vrは、例えば対象電圧VinがIGBTのゲート耐圧値を超えないような値に設定すればよい。
【0041】
すなわち、このような電源回路によれば、簡素な回路構成で確実に電圧の異常(低下又は上昇)を検知し、スイッチング素子を保護することができる。スイッチング素子が、インバータ回路又はコンバータ回路等の電力変換回路を構成するIGBTである場合、スイッチング電源の出力電圧が異常低下することによって制御信号としてのゲート電圧が下がると、IGBTの異常発熱やスイッチング不良を招く可能性があるが、ゲート電圧の供給を停止することによって、かかる事態を未然に防止することができる。また、スイッチング電源の出力電圧が異常上昇することによって制御信号としてのゲート電圧が高くなると、IGBTの故障を招く可能性があるが、ゲート電圧の供給を停止することによって、かかる事態を未然に防止することができる。
【0042】
なお、レギュレータ回路2のレギュレータは、1段でもよいし、入力電圧や必要とする負荷電圧によっては3段以上でもよい。複数段の場合には、後段ほど、出力する定電圧が低くなるようにすることにより、最終段のレギュレータの出力が定電圧を下回るまでの時間を確保し易くなる。すなわち、最終段のレギュレータは、スイッチング電源の出力電圧が異常低下しても、その時から比較的長い時間、定電圧の出力を維持することができる。
【0043】
なお、上記実施形態におけるスイッチング素子71,72はIGBTであるとしたが、MOSFET等の駆動電圧に依存してスイッチング状態が変わるその他のスイッチング素子であっても同様の効果を期待できる。
【符号の説明】
【0044】
1:スイッチング電源
1a:出力回路
2:レギュレータ回路
3:監視回路
8:CPU(制御装置)
71,72:スイッチング素子(IGBT)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子(71,72)に制御信号を与えるための制御電源電圧を供給する電源回路であって、
前記スイッチング素子(71,72)に対して所要数の出力回路で前記制御電源電圧を供給する機能及び、いずれかの出力回路における出力電圧を一定に保つフィードバック制御の機能を有するスイッチング電源(1)と、
前記フィードバック制御に使用されている出力回路(1a)の出力電圧に基づいて前記制御電源電圧を監視し、当該制御電源電圧が異常なときは前記制御信号の出力を停止させる信号を出力する監視回路(3)と
を備えていることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記監視回路(3)は、前記制御電源電圧が異常に低下したとき前記制御信号の出力を停止させる信号を出力する請求項1記載の電源回路。
【請求項3】
前記スイッチング電源(1)の出力する電圧を所定の定電圧に低下させて出力するレギュレータ回路(2)を備え、
前記監視回路(3)は、前記出力回路(1a)の出力電圧に基づく対象電圧が、前記定電圧に基づく基準電圧より低いときに、前記スイッチング素子(71,72)の制御装置(8)に対して、制御信号の出力を停止させる信号を出力する請求項2記載の電源回路。
【請求項4】
前記レギュレータ回路(2)は、複数段のレギュレータによって構成され、後段ほど、出力する定電圧が低くなる請求項3記載の電源回路。
【請求項5】
前記スイッチング素子(71,72)の制御電源電圧が、当該スイッチング素子を正常に動作させることが可能な所定電圧より低下する前に、前記対象電圧が前記基準電圧より低下する、請求項3又は4に記載の電源回路。
【請求項6】
前記監視回路(3)は、前記制御電源電圧が異常に上昇したとき前記制御信号の出力を停止させる信号を出力する請求項1記載の電源回路。
【請求項7】
前記スイッチング電源(1)の出力する電圧を所定の定電圧に低下させて出力するレギュレータ回路(2)を備え、
前記監視回路(3)は、前記出力回路(1a)の出力電圧に基づく対象電圧が、前記定電圧に基づく基準電圧より高いときに、前記スイッチング素子(71,72)の制御装置(8)に対して、制御信号の出力を停止させる信号を出力する請求項6記載の電源回路。
【請求項8】
前記対象電圧と前記基準電圧とは、前記スイッチング電源(1)の出力側の共通のGND電位から見た電圧である請求項3,4,5又は7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記制御装置(8)の電源電圧は、前記対象電圧及び前記基準電圧と同様に、前記GND電位から見た電圧である、請求項8記載の電源回路。
【請求項10】
前記制御装置(8)の電源電圧は、前記レギュレータ回路(2)の出力電圧を用いている請求項3,4,5又は7に記載の電源回路。
【請求項11】
前記スイッチング素子(71,72)は、複数個で電力変換回路を構成する電圧駆動型素子である請求項1〜10のいずれか1項に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200081(P2012−200081A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62654(P2011−62654)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】