説明

電源装置、電源装置の制御方法および制御プログラム

【課題】多出力の電源装置であって、異常を検出してプロテクト機能が働いた後に、容易に異常箇所を特定する。
【解決手段】複数種類の電力変換回路を有し、複数の電源出力を行うとともに、電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置10のマイクロコンピューター19は、複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出し、異常が検出された電源出力の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される電力変換回路を特定し、特定された電力変換回路をLEDディスプレイ20に表示して告知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、電源装置の制御方法および制御プログラムに係り、特に出力電圧、極性、電流容量うち少なくともいずれかが異なる複数の電源を供給可能な多電源出力の電源装置、電源装置の制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、据置型コンピューターなどの各種電子機器においては、出力電圧の異なる複数の電源あるいは出力電圧が同一で電流容量の異なる複数の電源を供給可能なマルチ出力の電源装置を内蔵しているものが知られている。
このような電源装置においては、機器の保護などのため、種々のプロテクト機能(検出回路)を有しているものがある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、温度上昇プロテクト(OTP)、過電流プロテクト(OCP)、過電圧プロテクト(OVP)、低電圧プロテクト(UVP)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記プロテクト機能を有している電源装置においては、いずれかのプロテクト機能が働いた場合には、安全確保および被電源供給機器の保護を図るため電源出力を停止することとなっていた。
したがって、電源出力停止後に検査あるいは修理を行おうとした場合には、電源装置を構成する電源回路のうち、いずれが故障したのかを特定できるわけではなく、故障箇所を特定するために工数がかかるという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、多電源出力の電源装置において、異常を検出してプロテクト機能が働いた後に、容易に異常箇所を特定することが可能な電源装置、電源装置の制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、複数種類の電力変換回路を有し、前記電力変換回路の一または複数からなる組み合わせに基づき複数の電源出力を行うとともに、前記電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置であって、前記複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出する電源監視部と、異常が検出された電源出力の一または複数の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定する異常回路特定部と、前記特定された電力変換回路を告知する告知部と、を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、電源装置は、複数種類の電力変換回路を有し、前記電力変換回路組み合わせに基づき複数の電源出力を行うものであり、電源監視部は、複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出する。
異常回路特定部は、異常が検出された電源出力の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される電力変換回路を特定できる。
これらにより、告知部は、特定された電力変換回路を告知する。
したがって、告知された電力変換回路に基づいて、ユーザーは、容易に異常箇所を特定することが可能となる。
【0006】
この場合において、前記電源装置の異常を検出する複数の検出回路を備え、前記電源監視部は、一または複数の検出回路の異常状態を判別し、前記告知部は、前記判別した異常状態を前記特定された電力変換回路に対応づけて告知するようにしてもよい。
上記構成によれば、ユーザーは、異常箇所および異常状態を容易に把握することができ、対処が容易となる。
【0007】
また、異常が発生していると想定される前記電力変換回路に関する情報と、異常が検出された前記電源出力の情報または前記検出した異常状態に関する情報と、を対応づけて不揮発的に記憶する異常状態記憶部を備え、前記異常回路特定部は前記異常状態記憶部の各情報に基づき異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定するようにしてもよい。
上記構成によれば、各情報の組み合わせより異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定することができ、また電源出力が停止した後、修理等のため電源装置のスイッチが切られたり電源コネクタが抜かれてしまった後であっても、異常箇所あるいは異常状態を容易に把握することができ、対処が容易となる。
【0008】
また、前記複数種類の電力変換回路は、自己の電源出力を後段の一または複数の電力変換回路に出力するように接続された電力変換回路を含むようにしてもよい。
上記構成によれば、異常が検出された電源出力の組み合わせに基づいてより容易に異常箇所を特定することができる。
【0009】
また、複数種類の電力変換回路を有し、前記電力変換回路の一または複数からなる組み合わせに基づき複数の電源出力を行うとともに、前記電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置の制御方法であって、前記複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出する電源監視過程と、異常が検出された電源出力の一または複数の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定する異常回路特定過程と、前記特定された電力変換回路を告知する告知過程と、を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、告知された電力変換回路に基づいて、ユーザーは、容易に異常箇所を特定することが可能となる。
【0010】
また、複数種類の電力変換回路を有し、複数の電源出力を行うとともに、前記電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置を制御部により制御するための制御プログラムであって、前記制御部は前記複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出させる電源監視手段、異常が検出された電源出力の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定する異常回路特定手段、前記特定された電力変換回路を告知させる告知手段、として機能させることを特徴とする。
上記構成によれば、告知された電力変換回路に基づいて、ユーザーは、容易に異常箇所を特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多出力の電源装置において、異常を検出してプロテクト機能が働いた後に、容易に異常箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の電源装置の概要構成ブロック図である。
【図2】過電流検出回路の具体例の説明図である。
【図3】LEDディスプレイの具体例の平面図である。
【図4】実施形態の処理フローチャートである。
【図5】マイクロコンピューターにおける異常箇所を特定するためのテーブルの説明図である。
【図6】実施形態の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態の電源装置の概要構成ブロック図である。
なお、以下の説明において、各電力変換回路の電源出力の電圧(電源出力電圧)、極性および電流容量は一例であり、これに限定されるものではない。
電源装置10は、コンピューター、電子機器などの多電源を必要とする機器に、直流電源を供給する電源装置であり、交流入力端子ACI(Alternating Current Inlet)を介して商用電源から供給される交流電力の電源ノイズを除去し、整流を行うフィルター・整流回路11と、力率を向上させるPFC(Power Factor Correction)回路12と、スイッチング損失及びノイズを低減するためにスイッチング素子に共振用リアクトル及び共振用コンデンサーを有する共振回路を付加し、PFC回路12の電源出力(約380V)を+24V/2Aの電源出力に変換して電源出力コネクターTJを介して出力する第1の電力変換回路C1としての電流共振コンバーター13と、図示しないフライバックトランスを有し、PFC回路12の電源出力を+5V/1Aのスタンバイ(SB)電源出力に変換して出力する第2の電力変換回路C2としてのフライバックコンバーター14と、PFC回路12の電源出力を+5V/13Aおよび+12V/5Aの電源出力に変換して出力する第3の電力変換回路C3としての新部分共振コンバーター15と、を備えている。
【0014】
さらに電源装置10は、新部分共振コンバーター15の+5V/13A電源出力が入力され、同期整流を行って+3.3V/5.5Aの電源出力に変換して出力する第4の電力変換回路C4としての同期整流コンバーター16と、新部分共振コンバーター15の+5V/13A電源出力が入力され、PWM変換を行って−12V/0.3Aの電源出力に変換して出力する第5の電力変換回路C5としてのPWMコンバーター17と、冷却ファン18にファンコントロール信号を出力するとともに、各電力変換回路の電源出力を監視し、異常検出時に電源出力の停止および異常箇所の特定を行い、告知制御を行うとともに、電源装置10全体を中枢的に制御するマイクロコンピューター19(制御部)と、マイクロコンピューター19の告知制御下で異常告知を行うLEDディスプレイ20(告知部)と、新部分共振コンバーター15による+12V/5Aの電源出力の上限電流を制限(例えば、ピーク時電流10A)するためのアッパーカット回路22と、過熱状態を検出するための温度センサー23と、を備えている。
【0015】
上記構成において、PFC回路12、電流共振コンバーター13および新部分共振コンバーター15は、それぞれ自己を制御するためのコントローラー12a、13a、15aを備えている。
また、電流共振コンバーター13の出力側には、過電流検出信号I1を出力する過電流検出回路DT1が設けられ、フライバックコンバーター14の出力側には、過電流検出信号I2を出力する過電流検出回路DT2が設けられ、同期整流コンバーター16の入力側には、過電流検出信号I3を出力する過電流検出回路DT3が設けられ、PWMコンバーター17の入力側には、過電流検出信号I4を出力する過電流検出回路DT4が設けられ、同期整流コンバーター16の出力側には、過電流検出信号I5を出力する過電流検出回路DT5が設けられ、PWMコンバーター17の出力側には、過電流検出信号I6を出力する過電流検出回路DT6が設けられている。
【0016】
ここで、過電流検出回路DT1〜DT6について説明する。
図2は、過電流検出回路の具体例の説明図である。
過電流検出回路DT1〜DT6は、ほぼ同様の構成となっているため、図2には、過電流検出回路DT1を例として記載している。
過電流検出回路DT1は、図2に示すように、電流共振コンバーター13と電源出力コネクターTJとの間に直列に挿入された電流検出抵抗RX(過電流検出回路DT1においては、抵抗値=0.01Ω)と、オペアンプで構成されたコンパレーターCMPと、コンパレーターCMPの入力抵抗として機能する抵抗R1と、電流検出抵抗RXの両端電圧を過電流検出用電圧として安定的に保持するための電解コンデンサーCP1と、ロウパスフィルターとして機能する抵抗R2、コンデンサーCP2と、を備えている。
【0017】
このとき、抵抗R1は、コンパレーターCMPに流れ込む電流の値を抑制し、電解コンデンサーCP1は、電流検出抵抗RXの両端電圧に対応する電圧を蓄電する。そして、抵抗R2、コンデンサーCP2は、ロウパスフィルターとして機能し、ノイズなどを抑制し、電解コンデンサーCP1の両端電圧を安定的にコンパレーターCMPに入力する。
コンパレーターCMPは、電解コンデンサーCP1の両端電圧と、過電流検出しきい値電圧(例えば、定格電流の120%に対応する電流が電流検出抵抗RXを流れた場合に相当する電圧)と、を比較し、過電流検出信号I1のレベルを過電流検出の有無に対応するレベルに設定する。
【0018】
上記構成の結果、電流検出抵抗RXの両端電圧が過電流検出しきい値電圧を超えた場合には、コンパレーターCMPは、例えば、“H”レベルの過電流検出信号I1をマイクロコンピューター19に出力する。
また、マイクロコンピューター19は、図示しないMPU、ROM、RAMおよび不揮発性RAM19a(不揮発性メモリ)を備え、この不揮発性RAM19aには、異常検出時に異常箇所の特定情報(異常箇所特定データ)および異常状態を示す異常状態情報(異常状態データ)を不揮発的に記憶している。また、マイクロコンピューター19は、外部の被電源供給機器などにより電源供給要求信号PS_ON#信号が“L”レベルとされると、電源供給を開始するように動作し、電源供給を正常に行っている状態では、電源供給可否信号PWR_OK信号を“H”レベルとする。
さらにマイクロコンピューター19は、電源監視部として機能するために、電流共振コンバーター13の電源出力電圧V1、フライバックコンバーター14の電源出力電圧V2、新部分共振コンバーター15の2系統の電源出力電圧V3、V4、同期整流コンバーター16の電源出力電圧V5、PWMコンバーター17の電源出力電圧V6、および過電流検出信号I1〜I6を常時監視している。
【0019】
図3は、LEDディスプレイの具体例の平面図である。
LEDディスプレイ20は、6個のLED21−1からLED21−6を有している。LED21−1は表示モードを表すLEDであり、消灯時には、LED21−2からLED21−5は、異常が発生している電源出力を特定する情報を表示し、LED21−6は、異常状態を特定する情報を表示する。また、LED21−1の点灯時には、LED21−2からLED21−6は、異常が発生していると想定される電力変換回路を特定する情報を表示する。
【0020】
次に実施形態の動作を説明する。
図4は、実施形態の処理フローチャートである。
これらの処理は、マイクロコンピューター19に予め格納された制御プログラムにより実現される。
マイクロコンピューター19は、外部より電源供給要求信号PS_ON#信号が“L”レベルとされると、電源供給を開始するとともに、電源監視部として機能し、随時、電流共振コンバーター13、フライバックコンバーター14、新部分共振コンバーター15、同期整流コンバーター16及びPWMコンバーター17の電源出力の電圧検出を行い、温度センサー23による温度検出を行っている(ステップS11)。
電圧検出および温度検出が完了すると、マイクロコンピューター19は、異常回路特定部として機能し、異常があったか否かを判別する(ステップS12)。
【0021】
具体的には、電流共振コンバーター13、フライバックコンバーター14、新部分共振コンバーター15、同期整流コンバーター16及びPWMコンバーター17の電源出力の基準電圧に対し、±10%以上の電圧が検出された場合には、異常と判断し、温度センサー23については、周囲温度が所定の過熱基準温度(例えば、90℃〜110℃)を超えた場合に異常と判断する。
【0022】
図5は、マイクロコンピューター19における異常箇所を特定するためのテーブルの説明図である。電源出力電圧V1からV6または各検出信号I1からI6と、それらと相関関係にある電力変換回路C1からC5の組み合わせである。電源出力電圧V1からV6または各検出信号I1からI6に異常があった場合、それらの組み合わせと、関連する電力変換回路C1からC5の組み合わせから、電力変換回路が特定できるようになっている。これらは、マイクロコンピューター19のROMなどのメモリに記憶されている。
図5に示すように、マイクロコンピューター19は、電源出力電圧V1(24V/2A)あるいは過電流検出信号I1が単独で(=他の電源回路の異常が検出されない状態でという意味。以下、同様。)異常であると検出した場合には、第1の電力変換回路C1である電流共振コンバーター13が異常状態にあると想定する。
同様にマイクロコンピューター19は、電源出力電圧V2(+5V/1Aスタンバイ)あるいは過電流検出信号I2が単独で異常であると検出した場合には、第2の電力変換回路C2であるフライバックコンバーター14が異常状態にあると想定する。
【0023】
また、マイクロコンピューター19は、電源出力電圧V3あるいは過電流検出信号I3が異常であると検出した場合には、第3の電力変換回路C3である新部分共振コンバーター15が異常状態にあると想定する。この場合に、電源出力電圧V5が正常である場合には、マイクロコンピューター19は、第4の電力変換回路C4である同期整流コンバーター16は正常であるので、新部分共振コンバーター15が単独で異常状態にあると想定する。また、電源出力電圧V5が異常である場合には、マイクロコンピューター19は、新部分共振コンバーター15及び第4の電力変換回路C4である同期整流コンバーター16も異常状態にあると想定することとなる。
【0024】
また、マイクロコンピューター19は、電源出力電圧V4あるいは過電流検出信号I4が異常であると検出した場合には、第3の電力変換回路C3である新部分共振コンバーター15が異常状態にあると想定する。この場合に、電源出力電圧V6および過電流検出信号I6が正常である場合には、マイクロコンピューター19は、第5の電力変換回路C5であるPWMコンバーター17は正常であるので、新部分共振コンバーター15が単独で異常状態にあると想定する。また、電源出力電圧V5あるいは過電流検出信号I5が異常である場合には、マイクロコンピューター19は、新部分共振コンバーター15及び第5の電力変換回路C5であるPWMコンバーター17も異常状態にあると想定することとなる。
また、マイクロコンピューター19は、電源出力電圧V5(+3.3V/5.5A)あるいは過電流検出信号I5が単独で異常であると検出した場合には、第4の電力変換回路C4である同期整流コンバーター16が異常状態にあると想定する。
【0025】
また、マイクロコンピューター19は、電源出力電圧V6(−12V/0.3A)あるいは過電流検出信号I6が単独で異常であると検出した場合には、第5の電力変換回路C5であるPWMコンバーター17が異常状態にあると想定する。
ステップS12の判別において、異常が検出された場合には(ステップS12;Yes)、マイクロコンピューター19は、異常箇所および異常状態(OTP、OCP、UVPあるいはOVP)を異常状態記憶部としての不揮発性RAM19aに記録する(ステップS13)。
続いて、マイクロコンピューター19は、LEDディスプレイ20と共働して、告知部として機能し、異常状態をLEDディスプレイ20に表示する(ステップS14)。
【0026】
ここで、具体的な表示例について説明する。
具体的には、LED21−1の消灯時、かつ、LED21−2の点灯時は、+3.3V/5.5Aの電源出力が異常である旨を表している。
また、LED21−1の消灯時、かつ、LED21−3の点滅時は、+5Vの電源出力が異常である旨を表している。この場合において、例えば、所定期間ごとに1回点滅を繰り返す場合には、+5V/13Aの電源出力が異常であることを表し、所定期間ごとに2回点滅を繰り返す場合には、+5V/1Aのスタンバイ(SB)電源出力が異常であることを表している。
また、LED21−1の消灯時、かつ、LED21−4の点滅時は、±12Vの電源出力が異常である旨を表している。この場合において、例えば、所定期間ごとに1回点滅を繰り返す場合には、+12V/5Aの電源出力が異常であることを表し、所定期間ごとに2回点滅を繰り返す場合には、−12V/0.3Aの電源出力が異常であることを表している。
【0027】
また、LED21−1の消灯時、かつ、LED21−5は、+24V/2Aの電源出力が異常である旨を表している。
また、LED21−1の消灯時、かつ、LED21−6の点灯時は、例えば、温度上昇プロテクト(OTP)が機能した旨を表している。
また、LED21−1の消灯時、かつ、LED21−6の点滅時は、例えば、所定期間ごとに1回点滅を繰り返す場合には、過電流プロテクト(OCP)が機能した旨を表し、所定期間ごとに2回点滅を繰り返す場合には、低電圧プロテクト(UVP)が機能した旨を表し、所定期間ごとに3回点滅を繰り返す場合には、過電圧プロテクト(OVP)が機能した旨を表している。
【0028】
一方、LED21−1の点灯時、かつ、LED21−2の点灯時は、第1の電力変換回路C1、すなわち、本実施形態では、電流共振コンバーター13が異常状態にあると想定される旨を表している。
また、LED21−1の点灯時、かつ、LED21−3の点灯時は、第2の電力変換回路C2、すなわち、本実施形態では、フライバックコンバーター14が異常状態にあると想定される旨を表している。
【0029】
また、LED21−1の点灯時、かつ、LED21−4の点灯時は、第3の電力変換回路C3、すなわち、本実施形態では、新部分共振コンバーター15が異常状態にあると想定される旨を表している。
また、LED21−1の点灯時、かつ、LED21−5の点灯時は、第4の電力変換回路C4、すなわち、本実施形態では、新部分共振コンバーター15が異常状態にあると想定される旨を表している。
また、LED21−1の点灯時、かつ、LED21−6の点灯時は、第5の電力変換回路C5、すなわち、本実施形態では、新部分共振コンバーター15が異常状態にあると想定される旨を表している。
【0030】
したがって、ユーザーは、LEDディスプレイ20の表示状態を見るだけで、容易に異常箇所(故障箇所)および異常状態(故障状態)を特定することができる。
そして、マイクロコンピューター19は、安全確保および被電源供給機器の保護を図るため電源出力を停止する(ステップS15)。これに先だって、マイクロコンピューター19は、電源出力異常を被電源供給機器に通知するために電源供給可否信号PWR_OK信号を“L”レベルとして被電源供給機器側に通知することとなり、“L”レベルの電源供給可否信号PWR_OK信号を受けた被電源供給機器は、バックアップ電源に切り替えるなどの処理を行うことが可能となる。
【0031】
以上の説明のように、本実施形態によれば、電源監視部として機能するマイクロコンピューター19は、複数の電力変換回路の電源出力を監視し、異常の有無を検出し、異常回路特定部として機能して異常が検出された電源出力の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される電力変換回路を特定し、LEDディスプレイ20と共働して告知部として機能し、特定された電力変換回路および異常状態を告知するので、異常を検出してプロテクト機能が働いた後に、LEDディスプレイ20の表示をみるだけで、容易に異常箇所を特定し、異常状態を特定することができる。
【0032】
以上の説明においては、異常を検出し、電源出力停止を行った直後の動作について説明したが、電源出力停止後に、電源装置10の電源をオフした場合でも、再度、電源装置10の電源をオンした場合には、マイクロコンピューター19は、再度電源異常を検出することとなるので、LEDディスプレイ20には、再度故障箇所が表示されることとなる。このような場合を想定して、不揮発性RAM19aには、複数回の情報を記憶するように構成しておくのが望ましい。
以上の説明においては、第3の電力変換回路C3である新部分共振コンバーター15は、自己の電源出力を後段の二つの電力変換回路である同期整流コンバーター16およびPWMコンバーター17に出力するように接続されていたが、電力変換回路としては、後段の単独の電力変換回路に自己の電源出力を出力するように接続され、あるいは、後段の3つ以上の電力変換回路に自己の電源出力を出力するように接続されていても同様に適用が可能である。
【0033】
図6は、実施形態の変形例の説明図である。
図6は、電力変換回路として、電流共振コンバーター13の出力側に設けられる過電圧検出回路を例とした場合の説明図である。
以上の説明においては、各電源出力電圧V1〜V6は、直接マイクロコンピューター19の図示しないアナログ/ディジタルポートに電圧信号(アナログ電圧信号)として印加されていたが、過電圧などについてマイクロコンピューター19とは別個に検出回路を設け、過電圧などの検出の有無を表す検出信号をマイクロコンピューター19にデジタル信号として入力するように構成することも可能である。
【0034】
具体的には、一例として、図6に過電圧検出回路30を示すように、電力変換回路としての電流共振コンバーター13の出力側に、電流共振コンバーター13の出力とグランドとの間に直列にツェナーダイオードZD1と、分圧抵抗R3と、を設け、電流共振コンバーター13の電源出力電圧V1がツェナーダイオードZD1のツェナー電圧(図6では、28V)を超えた場合に、ツェナーダイオードZD1に電流が流れ、分圧抵抗R3により分圧されて、分圧電圧が抵抗R4を介してトランジスターTR1のベース端子に印加される。
この結果、トランジスターTR1は、導通状態となり、そのオン抵抗と抵抗R5により分圧された高電位側電源Vcの電圧が分圧されて、“H”レベルの過電圧検出信号V11としてマイクロコンピューター19に出力されることとなる。
これにより、マイクロコンピューター19は、上述した過電圧検出時の処理を行うこととなる。
上述した図6の変形例は、各電力変換回路C1〜C5とは、別個に検出回路を設ける場合のものであったが、各電力変換回路C1〜C5に検出回路を内蔵させるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
10…電源装置、13…電流共振コンバーター(電力変換回路)、14…フライバックコンバーター(電力変換回路)、15…新部分共振コンバーター(電力変換回路)、16…同期整流コンバーター(電力変換回路)、17…PWMコンバーター(電力変換回路)、19…マイクロコンピューター(電源監視部、異常回路特定部、告知部、制御部)、19a…不揮発性RAM(異常状態記憶部)、20…LEDディスプレイ(告知部)、21−1〜21−6…LED(告知部)、30…過電圧検出回路、I1〜I5…過電流検出信号、V1〜V5…電源出力電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の電力変換回路を有し、前記電力変換回路の一または複数からなる組み合わせに基づき複数の電源出力を行うとともに、前記電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置であって、
前記複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出する電源監視部と、
異常が検出された電源出力の一または複数の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定する異常回路特定部と、
前記特定された電力変換回路を告知する告知部と、
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置であって、
前記電源装置の異常を検出する複数の検出回路を備え、
前記電源監視部は、一または複数の検出回路が検出した異常状態を判別し、
前記告知部は、前記判別した異常状態を前記特定された電力変換回路に対応づけて告知する、
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2記載の電源装置であって、
異常が発生していると想定される前記電力変換回路に関する情報と、異常が検出された前記電源出力の情報または前記検出した異常状態に関する情報の少なくともいずれかと、を対応づけて記憶する異常状態記憶部を備え、前記異常回路特定部は前記異常状態記憶部の各情報に基づき異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定することを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電源装置であって、
前記複数種類の電力変換回路は、自己の電源出力を後段の一または複数の電力変換回路に出力するように接続された電力変換回路を含むことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
複数種類の電力変換回路を有し、前記電力変換回路の一または複数からなる組み合わせに基づき複数の電源出力を行うとともに、前記電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置の制御方法であって、
前記複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出する電源監視過程と、
異常が検出された電源出力の一または複数の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定する異常回路特定過程と、
前記特定された電力変換回路を告知する告知過程と、
を備えたことを特徴とする電源装置の制御方法。
【請求項6】
複数種類の電力変換回路を有し、複数の電源出力を行うとともに、前記電源出力異常時に電源出力を停止する電源装置を制御部により制御するための制御プログラムであって、
前記制御部は前記複数の電源出力を監視し、異常の有無を検出させる電源監視手段、
異常が検出された電源出力の組み合わせに基づいて、異常が発生していると想定される前記電力変換回路を特定する異常回路特定手段、
前記特定された電力変換回路を告知させる告知手段、
として機能させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−10469(P2011−10469A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151826(P2009−151826)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】