説明

電源装置

【課題】端子数増加や外付け部品点数の増加を抑止しつつ、起動時や交流電源瞬時停止からの復帰時の過電流制御による音鳴りを防止することが可能な電源装置を提供する。
【解決手段】
第1の交流(AC)ラインとLAC1、第2のACラインLAC2と、AC電源からのAC電圧を整流する整流回路121を含み、整流した電圧を、上記第1および第2のACラインに出力する電力入力部120と、スイッチング素子SW131を含むAC電圧を第1のDC電圧に変換する第1のコンバータ130と、第1のコンバータの第1のDC電圧を第2のDC電圧に変換する第2のコンバータ140と、を有し、少なくとも第1のコンバータのスイッチング素子のオンオフ駆動制御を行う制御回路131と、を有し、制御回路131は、第1のコンバータ130の出力電圧および第2のコンバータの起動状態のうち、少なくとも第1のコンバータの出力電圧に応じて、スイッチング素子SW131のオン時間を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からの交流電圧を整流し、安定した直流電圧を生成する電源装置に関し、特にPFC制御回路を有する電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PFC(Power Factor Correction:力率改善)制御ICを用いたPFCコンバータを有する電源装置は、その力率を改善することにより、高調波の発生を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の電源装置では、電源起動時にPFCコンバータが動作し、出力電圧を所定の電圧まで上昇させる必要があるが、その際、大容量の出力キャパシタを充電するために大電流が経路に発生し、過電流保護回路が働きながらの昇圧動作となる。
【0004】
過電流保護動作回路が働くとPFCコンバータのスイッチング素子は規定のオン時間未満でのスイッチング動作となる。
その結果、スイッチング周波数が高くなり、高い周波数でのスイッチングかつ大電流がチョークコイルに流れることで、チョークコイルからいわゆる音鳴りが発生する。
また、起動時だけでなく、交流電源瞬時停止などの異常時に、低下したPFC出力電圧を再度上昇させる際にも同様の音鳴りが発生する。
【0005】
この音鳴りを防止するための対策として、制御用ICにソフトスタート端子を設け、起動時の電力を制限する、もしくは交流電源入力ラインに電流制限用の抵抗を挿入し、起動後リレー回路等で切り離すといった対策の電源装置が知られている。
【0006】
しかしながら、この電源装置では、制御ICの端子数増加や外付け部品点数の増加といった問題がある。また、上記は起動時のみの対策であり、交流電源瞬時停止時の際の音鳴り防止には寄与しない。
【0007】
本発明は、端子数増加や外付け部品点数の増加を抑止しつつ、起動時や交流電源瞬時停止からの復帰時の過電流制御による音鳴りを防止することが可能な電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の電源装置は、第1の交流(AC)ラインと、第2のACラインと、AC電源からのAC電圧を整流する整流回路を含み、整流した電圧を、上記第1および第2のACラインに出力する電力入力部と、スイッチング素子を含む上記AC電圧を第1のDC電圧に変換する第1のコンバータと、上記第1のコンバータの第1のDC電圧を第2のDC電圧に変換する第2のコンバータと、少なくとも上記第1のコンバータのスイッチング素子のオンオフ駆動制御を行う制御回路と、を有し、上記第1のコンバータは、出力ノードと、上記整流回路の出力端子に一端が接続された上記第1のACラインに配置されたチョークコイルと、上記チョークコイルの他端側から上記出力ノードに向かって順方向となるように上記チョークコイルの他端および上記出力ノード間に接続されたダイオードと、上記チョークコイルの他端側の上記第1のACラインと上記第2のACライン間に接続された上記スイッチング素子と、上記出力ノードと上記第2のACライン間に接続された出力キャパシタと、を含み、上記制御回路は、上記第1のコンバータの出力電圧および上記第2のコンバータの起動状態のうち、少なくとも上記第1のコンバータの出力電圧に応じて、上記スイッチング素子のオン時間を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端子数増加や外付け部品点数の増加を抑止しつつ、起動時や交流電源瞬時停止からの復帰時の過電流制御による音鳴りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るACラインから電力供給される電子機器の電源装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態における制御回路のスイッチング素子の制御系の構成例を示すブロック図である。
【図3】臨界モードPFCコンバータにおける動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】臨界モードPFCコンバータにおける電流波形例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電源装置における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.電源装置の全体構成の概要
2.電源装置の動作
3.変形例
【0012】
<1.電源装置の全体構成の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る交流電源から電力供給される電子機器の電源装置の構成例を示す図である。
【0013】
本実施形態の電源装置100は、家庭用コンセント(商用電源)などの交流(AC)電源から電力供給される電子機器200に使用される。
電子機器200としては、たとえばゲーム機やテレビジョン受像機が該当する。
【0014】
電源装置100は、交流電源110、電力入力部120、第1のコンバータとしてのACDCコンバータ130、第2のコンバータとしてのDCDCコンバータ140、およびフォトカプラ150を有する。
【0015】
電力入力部120は、整流回路121、および入力キャパシタC121を有する。
入力キャパシタC121は、整流回路121の出力側において第1のACラインLAC1および第2のACラインLAC2間に接続されている。
電力入力部120は、AC電源110によるAC電圧を整流回路121で整流し、第1のACラインLAC1および第2のACラインLAC2に出力する。
【0016】
ACDCコンバータ130は、一般にPFCコンバータが適用される。
ACDCコンバータ130は、チョークコイルL131、スイッチング素子SW131、電流検出抵抗R131、ダイオードD131、および出力キャパシタC131を有する。
ACDCコンバータ130は、出力電圧検出部としての出力電圧検出抵抗R132,R133、および制御回路(半導体集積回路:制御IC)131を有する。
また、ACDCコンバータ130は、制御IC131の端子VAOに接続された外付けの位相補償用の抵抗R134、およびキャパシタC132,C133を有する。
ACDCコンバータ130は、ノードND131〜ND134を有する。
ノードND131は、ACDCコンバータ130の変換電圧V130の出力ノードを形成している。
【0017】
チョークコイルL131は、整流回路121の出力端子に接続されたACラインLAC1、LAC2に接続されている。チョークコイルL131の一端は制御IC131の端子ZCDに接続されている。
スイッチング素子SW131は、nチャネルの絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(FET、NMOSトランジスタ)により形成される。
【0018】
ダイオードD131は、アノードが第1のADラインLAC1のチョークコイルL131の一端に接続され、その接続点によりノードND132が形成されている。
ダイオードD131のカソードはノードND131に接続されている。
【0019】
スイッチング素子SW131のドレインが第1のACラインLAC1に接続され、ソースが電流検出抵抗R131の一端に接続され、その接続点によりノードND133が形成されている。
スイッチング素子SW131の制御端子であるゲートは制御IC131の端子PFC OUTに接続されている。
電流検出抵抗R131の他端は第2のACラインLAC2に接続され、第2のACラインLAC2はグランドGNDに接続されている。
また、ノードND133は、制御IC131の端子CSに接続されている。
スイッチング素子SW131は、制御IC131によりオン、オフ制御される。
電流検出抵抗R131は、スイッチング素子SW131に流れる電流を検出する。
【0020】
出力キャパシタC131は、一端がダイオードD131のカソード側(ノードND131)に接続され、他端が第2のACラインLAC2に接続されている。
【0021】
出力電圧検出抵抗R132およびR133は、第1のACラインLAC1におけるノードND131と第2のACラインLAC2との間に直列に接続されている。
出力電圧検出抵抗R132およびR133の接続点によりノードND134が形成されている。
ノードND134は、制御IC131の端子FBに接続されている。
【0022】
制御IC131は、ACDCコンバータ130の出力電圧V130やDCDCコンバータ140の起動状態に応じて、スイッチング素子SW131のオン時間を制御(制限)することが可能に構成されている。
【0023】
制御IC131は、スイッチング素子SW131を周期的にオンオフすることができるスイッチ信号SSWをスイッチング素子SW131の制御端子であるゲートに出力する出力端子PFC_OUTを有している。
制御IC131は、ACDCコンバータ130の出力端子であるノードND131の出力電圧V130を検出することができるノードND134に接続された出力電圧の入力端子FBを有している。
制御IC131は、入力端子FBの電圧に応じた電圧を出力することが可能な出力端子VAOを有している。
制御IC131は、出力端子VAOの電圧に応じて出力端子PFC_OUTから出力するスイッチ信号SSWのオン時間を決定する機能を有する。
【0024】
制御IC131は、スイッチング素子SW131に流れる電流を検出する電流検出抵抗R131に接続されたノードND133の電圧を入力する入力端子CSを有している。
制御IC131は、入力端子CSの電圧が所定の電圧に達したことを検出して即座にスイッチング素子SW131をオフすることができる機能を有する。
【0025】
制御ICは、DCDCコンバータ140の出力電圧の帰還信号をフォトカプラ150を介して入力する端子FDを有する。
制御IC131は、出力端子VAOの電圧にACDCコンバータ130の出力電圧V130やDCDCコンバータ140の起動状態に応じて制限を掛ける機能を有している。
制御IC131は、出力端子VAOの電圧をたとえばダイオードクランプ方式にて制御する。
制御IC131は、そのクランプ電圧を2つ以上有している。
【0026】
制御IC131は、ACDCコンバータ130のスイッチング素子SW131の制御のみならず、DCDCコンバータ140のドライブ制御を行う機能を有する。
すなわち、本実施形態の電源装置100は、ACDCコンバータ130の制御とDCDCコンバータ140の制御を同一制御IC131で行うことを特徴としている。
【0027】
図2は、本発明の実施形態における制御IC(制御回路)のスイッチング素子の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0028】
図2の制御IC131のスイッチング素子SW131の制御系300は、ゼロ電流検出回路301、電圧入力部としての電圧アンプ302、オン時間制御部303、制御ロジック304、およびドライバ305を有する。
制御系300は、出力電圧モニタ回路306、電圧(VAO)クランプコントロール回路307、DCDCコンバータイネーブル(EN)信号生成部308、クランプ電圧供給部309、およびIC内部基準電圧(VREF)供給部310を有する。
制御系300は、ダイオードD301および外付けのキャパシタC301を有する。
【0029】
ゼロ電流検出回路301は、端子ZCDを通して、チョークコイルL131に電流が流れなくなったことを検出し、検出結果をゼロ検出信号S301として制御ロジック304に供給する。
【0030】
電圧アンプ302は、端子FBから入力したACDCコンバータ130の出力電圧V130を増幅してオン時間制御部303に供給する。
【0031】
オン時間制御部303は、電圧アンプ302の出力信号S302に応じてスイッチング素子SW131のオン時間を決定し、その結果を信号S303として制御ロジック304に出力する。
【0032】
制御ロジック304は、ゼロ検出信号S301を受けてスイッチング素子SW131を、信号S303で指定された時間オンさせる信号S304を生成し、ドライバ305に出力する。
【0033】
ドライバ305は、信号S304をスイッチ信号SSWとして出力端子PFC_OUTからスイッチング素子SW131の制御端子であるゲートに出力する。
【0034】
出力電圧モニタ回路306は、端子FBから入力したACDCコンバータ130の出力電圧V130に応じて電源装置100の動作状態を2段階以上でモニタし、モニタ結果をVAOクランプコントロール回路307に出力する。
出力電圧モニタ回路306は、たとえば3つの閾値電圧Vth1、Vth2,Vth3(Vth2>Vth1>Vth3)を用いて動作状態をモニタする。
【0035】
VAOクランプコントロール回路307は、出力電圧モニタ回路306のモニタ結果、およびDCDCコンバータイネーブル信号生成部308によるイネーブル信号ENを受けて、電圧アンプ302の出力電圧を2段階以上で任意にクランプ電圧を制御する。
【0036】
DCDCコンバータイネーブル(EN)信号生成部308は、DCDCコンバータ140の起動状態を検知するとイネーブル信号ENを生成し、VAOクランプコントロール回路307に供給する。
DCDCコンバータ140の起動状態を検知する信号は、一体型ICであれば内部信号で生成されるが、PFCコンバータ制御ICとDCDCコンバータ制御信号が別々の場合は、外部から入力される信号によって生成される。
【0037】
クランプ電圧供給部310は、IC内部基準電圧供給部310の基準電圧VREFによりクランプ電圧を生成し、クランプ電圧をVAOクランプコントロール回路307に供給する。
これにより、任意の電圧設定が可能である。
【0038】
電圧クランプ方式は、ダイオードを用いたクランプ方式が一般的であるが、その方式は問わない。使用する電源機器や負荷状況の切り替えに応じて設定される電圧は、その数に制限を設けない。
【0039】
電源装置100においては、AC電源110から供給されるAC電圧はACDCコンバータ130によって、約400の第1のDC電圧であるACDCコンバータ140の出力電圧V130に変換される。
出力電圧V130は、さらに絶縁型のDCDCコンバータ140によって電子機器200に必要とされる第2のDC電圧V140、たとえば12Vに変換され、分配される。
【0040】
DCDCコンバータ140は、1次側に主トランスM141、スイッチング素子SW141,SW142、キャパシタC141、およびドライブトランスDT141を有する。
DCDCコンバータ140は、2次側にダイオードD141、D142、チョークコイルL141、キャパシタC142、および帰還回路(IC)141を有する。
DCDCコンバータ140は、2次側に出力ノードND141、出力端子TO1およびTO2を有する。
【0041】
スイッチング素子W141,SW142は、nチャネルの絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(FET、NMOSトランジスタ)により形成される。
スイッチング素子SW141のドレインがACDCコンバータ130の出力ノードND131(第1のACラインLAC1)に接続され、ソースがスイッチング素子SW142のドレインに接続され、その接続点によりノードND142が形成されている。
スイッチング素子SW142のソースが第2のACラインLAC2に接続されている。
スイッチング素子SW141,SW142の制御端子であるゲートは、ドライブトランスDT141のドライブラインに接続されている。
【0042】
主トランスMT141は、1次側に、1次コイルL1を有する。1次コイルL1の一端(ドット端子)がキャパシタC141を介してノードND142に接続され、他端(非ドット端子)が第2のACラインLAC2に接続されている。
主トランスMT141は、1次コイルL1と相互に電磁結合されタップTPを通して順極性となるように接続された第1の2次コイルL2および第2の2次コイルL3を有する。
なお、図において、標準的な表記法に従い、各コイルL1〜L3についてその相対極性をドットで示している。
そして、ここでいう順極性とは、第1の2次コイルL2はドットのない非ドット端子が、第2の2次コイルL3はドットのあるドット端子が、タップTPに対して接続されていることをいう。
【0043】
ダイオードD141のカソードが第1の2次コイルの他端(ドット端子)に接続され、アノードがダイオードD142のアノードおよび出力端子TO2に接続されている。
ダイオードD142のカソードが第2の2次コイルL3の他端(非ドット端子)に接続されている。
チョークコイルL141の一端がタップTPに接続され、他端が出力ノードND141が接続された出力端子TO1に接続されている。
そして、キャパシタC142が出力端子TO1とTO2間に接続されている。
【0044】
帰還回路141は、出力ノードND141の出力電圧を、たとえば分圧した電圧を帰還信号としてフォトカプラ150に出力する。
フォトカプラ150は、帰還信号を光信号に変換し、それを電気信号に変換して制御IC131の端子FDに供給する。
【0045】
なお、DCDCコンバータ140の構成は、上記した構成に限定されるものではなく、種々の形態が適用可能である。
【0046】
<2.電源装置の動作>
次に、上記構成による電源装置100の動作を説明する。
以下では、全体システムの概要、音鳴りの発生要因、音鳴り防止の制御動作について、図3〜図5に関連付けて、順を追って説明する。
以下の説明では、ACDCコンバータ130をPFCコンバータとして説明する。
【0047】
図3は、臨界モードPFCコンバータにおける動作例を説明するためのタイミングチャートである。
図4は、臨界モードPFCコンバータにおける電流波形例を示す図である。
図5は、本発明の実施形態に係る電源装置における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0048】
[全体システムの概要]
交流電源110から供給される信号はACDCコンバータ130によって、約400VのDC電圧であるACDCコンバータ130の出力電圧V130に変換される。
そして、絶縁型のDCDCコンバータ140によって電子機器200に必要とされる電圧に変換され、分配される。
前述したように、ACDCコンバータ130は一般にPFCコンバータが用いられる。PFCコンバータは制御IC131によって制御される。
下記に臨界モードPFCコンバータの動作について図3に関連付けて説明する。
【0049】
[臨界モードPFCコンバータの動作]
制御IC131によりスイッチング素子SW131をオンさせると、電流はチョークコイルL131とスイッチング素子SW131を介し、グランドGNDへ電流が流れる。
制御IC131によって定められた時間が経過した後、スイッチング素子SW131はオフされる。スイッチング素子SW131がオフすると、チョークコイルL131に蓄えられたエネルギーはダイオードD131を介して出力ノードND131に供給される。
【0050】
チョークコイルL131に流れている電流がゼロになったことを制御IC131が検出し、再びスイッチング素子SW131をオンさせる。
スイッチング素子SW131のオン時間は出力電圧に応じて制御IC131によってコントロールされる。
出力電圧V130が所定の電圧よりも低い状態では、昇圧させるために、オン時間を長く、また所定の電圧よりも高い状態ではスイッチングオフ期間を継続することになる。
【0051】
以上の動作において、チョークコイルL131を流れる電流は整流回路121で全波整流された入力電圧の瞬時電圧に比例して流れることになり、力率を改善することができる(図4参照)。
チョークコイルL131に流れる電流はスイッチング素子SW131のオン/オフの場合に下記のような式で表される。
【0052】
[数1]
オン時 Icoil = Vac / L
オフ時 Icoil = (Vout - Vac) / L
【0053】
ここで、VacはAC入力電圧(瞬時電圧)を、VoutはPFCコンバータ出力電圧を、LはチョークコイルL131のインダクタンスをそれぞれ表している。
【0054】
[チョークコイルの音鳴り関しての説明]
次に、PFCコンバータ(ACDCコンバータ)のチョークコイル音鳴りに関して説明する。
【0055】
起動時、PFCコンバータの出力電圧が低い場合、出力電圧を上げるように端子VAOの電圧が上がり、スイッチング素子SW131のオン時間が長く設定される。
スイッチング素子SW131のオン時間が長くなるとチョークコイルL131を介してスイッチング素子SW131に流れる電流も比例して大きくなり、電流検出抵抗R131に生じる電圧が過電流検出閾値電圧に達するとスイッチング素子を即座にオフする。
その際、所定のオン時間よりも短い周期でスイッチング素子SW131のスイッチングが繰り返され、しかも経路に発生する大電流がチョークコイルL131を振動させ、その振動が可聴周期で発生した場合にチョークコイルL131から音として観測される。
この音鳴りは、交流電源瞬時停止時など、PFCコンバータの出力電圧が停止した後の復帰の際にも発生する。
この音鳴りは、ゲーム機やデジタル家電(TV)の電源に対して低減要求があり、これまで外付け部品での対策が主に講じられている。
【0056】
本実施形態に係る源装置100に採用した制御方式では、PFCコンバータの起動時や交流電源瞬時停止時に、スイッチング素子のオン時間を制限させることで、チョークコイルに流れる電流を制限し、事前に音鳴りを防止することが可能である。
【0057】
[本実施形態のPFCコンバータ制御]
電源装置100においては、図2に示すように、PFCコンバータのチョークコイルL131NO電流がなくなったことを検出する端子ZCDの入力信号によりスイッチング素子SW131がオンする。
そのオン時間は、PFCコンバータの出力電圧を入力とする端子FBから入力される出力電圧V130を受けて、電圧アンプ302の出力信号に応じて決定される。
電圧アンプ302の出力信号はVAOクランプコントロール回路307で電源の動作状態に応じて、任意の電圧にクランプされる。
クランプ電圧はPFCコンバータの出力電圧をモニタする端子FBの電圧や、DCDCコンバータ140の起動状態を検知する信号によって2段階以上の電圧でコントロールされる。
前述したように、DCDCコンバータ140の起動状態を検知する信号は、一体型ICであれば内部信号で生成されるが、PFCコンバータの制御ICとDCDCコンバータ制御信号が別々の場合は、外部から入力される信号によって生成される。
クランプ電圧はIC内部基準電圧(VREF)により生成することにより、任意の電圧設定が可能である。
電圧クランプ方式は、ダイオードを用いたクランプ方式が一般的であるが、その方式は問わない。使用する電源機器や負荷状況の切り替えに応じて設定される電圧は、その数に制限を設けない。
【0058】
[本実施形態に電源シーケンスの一例]
本実施形態に係る電源装置100の電源シーケンスの一例を図5に関連付けて説明する。図5ではクランプ電圧を3段階に設定した場合を示す。
【0059】
起動時、PFCコンバータの出力電圧が低い段階において、VAOクランプ電圧VCはロー(Low)クランプ電圧VCLに設定されている。
PFCコンバータの出力電圧が上昇し、端子FBから入力される出力電圧V130が閾値設定電圧Vth1を超えるとVAOクランプ電圧VCはミドル(Middle)クランプ電圧VCMに切り替わる。これにより、DCDCコンバータ140の起動による負荷の増大に伴う、出力電圧低下を抑制することができる。
その後、DCDCコンバータ140が起動したことを検知し、DCDCコンバータ140の最大負荷に耐えることができるように、VAOクランプ電圧VCをハイ(High)クランプ電圧VCHに切り替える。
【0060】
通常のPFCコンバータでは、起動時からDCDCコンバータ140の最大負荷でもPFCコンバータが動作できるようなオン時間設定になっているため、起動時に大電流がチョークコイルに発生し、音鳴りの原因となっている。
【0061】
また、図5では交流電源瞬時停止時のシーケンスを記載しているが、その説明を下記に示す。
交流電源が瞬時停止し、PFCコンバータの出力電圧V130が低下する交流電源瞬停期間T1と、端子FBから入力される出力電圧V130が設定電圧Vth2を下回ったことを検出してVAOクランプ電圧VCはミドルクランプ電圧VCMに切り替わる。
瞬時停止が解除されると、PFCコンバータは所定の電圧まで再度昇圧することになるが、ミドルクランプ電圧VCMに設定されていることで、昇圧時のオン時間をも制限し、チョークコイルに流れる電流抑制し、チョークコイルL31の音鳴りを防止することができる。
【0062】
交流電源の瞬時停止時間が長い交流電源瞬停期間T2において、PFCコンバータの出力電圧がDCDCコンバータ140の停止を規定する設定電圧Vth3よりも下がった場合は、PFCコンバータ起動時と同様のシーケンスとなる。
一般的にDCDCコンバータ140の起動する設定電圧Vth1と停止する設定電圧Vth3は起動電圧のほうが高く、ヒステリシスが設けられているため、DCDCコンバータ140の起動状況に応じてクランプ電圧VCを設定することができる。
【0063】
本実施形態では、ハイクランプ電圧VCHを3.2V、ミドルクランプ電圧VCMを1.6V、ロークランプ電圧VCLを1.3Vとする。
ただし、その電圧は電源機器の使用形態に応じて変更される。またVAOクランプ電圧VCの切り替わりタイミングは、内部タイマによって任意で制御される。
【0064】
<3.変形例>
以下に、本実施形態に係る電源装置の変形例について説明する。
【0065】
PFCコンバータとDCDCコンバータの制御回路が一体型、別制御回路であることを問わない。
電圧アンプクランプ電圧の設定数は、2つ以上であればその設定数を問わない。
VAOクランプ電圧を切り替えるための端子FBのモニタ電圧設定数は1つ以上であればその設定数を問わない。
VAOクランプ電圧を切り替えるタイミングは端FB子のモニタ電圧検出後やDCDCコンバータの起動を検出後であれば、その直後だけでなくIC内部でのタイマ設定に依存しない。
PFCコンバータは臨界モード制御だけではなく、電流連続モード、電流不連続モードなどその形態を問わない。
チョークコイルの音鳴りだけでなく、電源装置に搭載されるその他の受動素子の音鳴り防止のために本発明は適用される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、PFCコンバータ起動時や交流電源瞬時停止からの復帰時の過電流制御によるチョークコイルの音鳴りを防止することができる。
その結果、音鳴り問題に対する外付け部品の削減や電源品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
100・・・電源装置、110・・・交流(AC)電源、120・・・電力入力部、121・・・整流回路、122・・・入力キャパシタ、130・・・第1のコンバータとしてのACDCコンバータ(PFCコンバータ)、L131・・・チョークコイル、SW131・・・スイッチング素子、R131・・・電流検出抵抗、D131・・・ダイオード、C131・・・出力キャパシタ、R132,R133・・・出力電圧検出部としての出力電圧検出抵抗、131・・・制御回路(半導体集積回路:制御IC)、ND131〜ND134・・・ノード、140・・・第2のコンバータとしてのDCDCコンバータ、150・・・フォトカプラ、200・・・電子機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の交流(AC)ラインと、
第2のACラインと、
AC電源からのAC電圧を整流する整流回路を含み、整流した電圧を、上記第1および第2のACラインに出力する電力入力部と、
スイッチング素子を含む上記AC電圧を第1のDC電圧に変換する第1のコンバータと、
上記第1のコンバータの第1のDC電圧を第2のDC電圧に変換する第2のコンバータと、
少なくとも上記第1のコンバータのスイッチング素子のオンオフ駆動制御を行う制御回路と、を有し、
上記第1のコンバータは、
出力ノードと、
上記整流回路の出力端子に一端が接続された上記第1のACラインに配置されたチョークコイルと、
上記チョークコイルの他端側から上記出力ノードに向かって順方向となるように上記チョークコイルの他端および上記出力ノード間に接続されたダイオードと、
上記チョークコイルの他端側の上記第1のACラインと上記第2のACライン間に接続された上記スイッチング素子と、
上記出力ノードと上記第2のACライン間に接続された出力キャパシタと、を含み、
上記制御回路は、
上記第1のコンバータの出力電圧および上記第2のコンバータの起動状態のうち、少なくとも上記第1のコンバータの出力電圧に応じて、上記スイッチング素子のオン時間を制御する
電源装置。
【請求項2】
上記制御回路は、
上記チョークコイル電流がなくなったことを検出すると上記スイッチング素子をオンさせ、当該オン時間は上記第1のコンバータの出力電圧に応じて決定する
請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
上記制御回路は、
上記第1のコンバータの出力電圧を受ける出力入力部と、
上記電圧入力部の出力信号レベルに応じて上記スイッチング素子のオン時間を決定するオン時間制御部と、
上記出力電圧レベルを複数段階でのモニタするモニタ回路と、
上記モニタ回路のモニタ結果に応じて上記電圧入力部の出力信号をクランプするクランプコントール回路と、を含む
請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
上記クランプコントロール回路は、
上記出力電圧が低いほど上記電圧入力部の出力信号が低い電圧となるようクランプし、上記出力電圧が高いほど上記電圧入力部の出力信号が高い電圧となるようクランプする
請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
上記クランプコントロール回路は、
上記モニタ回路のモニタ結果および上記第2のコンバータの起動状態を検知する信号のうち、少なくとも上記モニタ回路のモニタ結果に応じて2段階以上の電圧にクランプする機能を有する
請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
上記制御回路は、
上記クランプ電圧を出力端子から出力可能である
請求項2から5のいずれか一に記載の電源装置。
【請求項7】
上記制御回路は、
上記クランプ電圧をダイオードクランプ方式にて制御する
請求項2から6のいずれか一に記載の電源装置。
【請求項8】
上記制御回路は、
上記スイッチング素子を周期的にオンオフする機能を有する
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置。
【請求項9】
制御回路は、
上記スイッチング素子に流れる電流の検出レベルが所定のレベルに達したことを検出して即座に上記スイッチング素子をオフする機能を有する
請求項1から8のいずれか一に記載の電源装置。
【請求項10】
上記制御回路は、
上記第1のコンバータの変換制御および上記第2のコンバータの変換制御が可能である
請求項1から9のいずれか一に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−279190(P2010−279190A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130003(P2009−130003)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】