説明

電源装置

【課題】水没時にも電池セルが完全に使用不能となる事態を回避する。
【解決手段】信号機に供給される電源電圧が低下したことを検出して、電源供給を行うための電源装置であって、複数の電池セル26を直列及び/又は並列に接続した電池ブロック5と、電池ブロック5と電気的に接続され、出力電圧を変換するインバータ3と、電池ブロック5及びインバータ3を収納する収納ケース6とを備え、電池セル26は、一方向に延長した外装缶を有しており、収納ケース6は、垂直方向に延長された外形を有しており、電池ブロック5は、電池セル26を長手方向が水平姿勢となるように並べて、かつ垂直方向に積層して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを内蔵する電源装置であって、特に信号機用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子に発光ダイオードを使用した信号機が利用されている(特許文献1)。このような信号機を含めた既存の信号機は、商用電源から電力を受けて発光素子を点灯させている。このため自然災害等に起因した停電時には、そのままでは点灯できない。信号機が作動しないと、特に交通量の多い交差点では渋滞が生じるおそれがある。そこで、停電時にも信号機を点灯可能とするため、バックアップ用の電源装置が開発されている。この電源装置は、ディーゼルエンジンで駆動するため、停電時に手動でエンジンを駆動させる必要があり、停電からバックアップ電源に切り換えて実際に使用させるまでには数十分を要するものであった。また、このような手動による起動作業を不要にした自動起動式発動発電機も開発されている。しかし、この発電機でも停電発生後に起動してから動作を安定させ、給電を始めるまでに30秒程度を要するため、この間は信号機を点灯できない期間が発生してしまう。
【0003】
また、ディーゼルエンジン式の発電機は導入及び維持コストが高いという問題もある。現在、日本全国で約20万台の信号機が稼働している内で、このような発電機が設置されているのは5000台程度に過ぎず、95%の信号機には設置されていない。さらにディーゼルエンジンの定期点検や燃料補給等のメンテナンスが必要となり、毎年二、三百台程度を交換する必要がある。加えて、自動起動式発動発電機は歩道上に設置スペースが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−172185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バックアップ用の電源装置においては、複数の電池セルを直列に接続して所望の高電圧を得ている。このため多数の電池セルを使用する必要があり、これら多くの電池セルを直列及び並列に接続して構成された電池ブロックを、収納ケースに収納している。収納ケース内に多数の電池セルを収納して外部から遮断することで、風雪等から電池セルを保護して、長期に渡って安定した使用が可能となる。
【0006】
しかしながら、停電が発生する原因となる自然災害としては、台風や高潮、洪水等の原因が考えられるところ、洪水の程度によっては収納ケースが水没することも考えられる。この際、図11に示すように、収納ケース91内に上方にインバータ93等を配置し、下方に電池セル96を縦置きにして配置した構成では、各列の電池セル96の端面が浸漬されて、短絡するおそれがあった。特に各電池セル96の端面に電極が形成されることから、下面に位置する電池セル96の端面がすべて浸漬されて、電池ブロックの全体が使用できなくなる。また使用できなくなった電池ブロックは、すべての電池セルを交換する必要があり、交換時のコストも高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものであり、その主な目的は、水没時にも電池セルが完全に使用不能となる事態を回避できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の電源装置によれば、信号機に供給される電源電圧が低下したことを検出して、電源供給を行うための電源装置であって、複数の電池セル26を直列及び/又は並列に接続した電池ブロック5と、前記電池ブロック5を収納する収納ケース6と、を備え、前記電池セル26は、一方向に延長した外装缶を有しており、前記収納ケース6は、垂直方向に延長された外形を有しており、前記電池ブロック5は、前記電池セル26を長手方向が水平姿勢となるように並べて、かつ垂直方向に積層して構成することができる。これにより、電池セルが水平姿勢に配置されることから、仮に収納ケース内部に浸水しても、下段の電池セルの端面のみが浸水するため、いいかえると上段の電池セルの端面は冠水しないため、冠水しない電池セルを保護できる利点が得られる。
【0009】
また、第2の電源装置によれば、さらに、前記電池ブロック5と電気的に接続され、出力電圧を変換するインバータ3を備えることができる。これにより、電池ブロックの出力電圧を変換して、交流駆動機器などでも駆動できる。
【0010】
さらに、第3の電源装置によれば、前記電池ブロック5が、前記インバータ3と接続するための接続端子12を、前記電池ブロック5の上方に配置することができる。これにより、電池ブロックとインバータとの接続端子を上方に配置することで、水没の可能性を低減できる。
【0011】
さらにまた、第4の電源装置によれば、前記収納ケース6が、防水構造を備えることができる。これにより、風雨や洪水に対して内部の電池ブロックをある程度保護することができる。
【0012】
さらにまた、第5の電源装置によれば、前記電源装置が信号機を駆動するための電源装置であり、該信号機が、発光素子に発光ダイオードを用いた信号機とすることができる。これにより、発光ダイオードを発光素子とする信号機は、既存の白熱電球を用いた信号機よりも低消費電力であるため、より小さい電流でより長く使用し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】信号機の信号柱に電源装置を設置した状態を示す斜視図である。
【図2】信号機の電力供給を商用電源と電源装置とで切り換える様子を示すシステム図である。
【図3】本実施の形態に係る電源装置の断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における縦断面図である。
【図5】図3の電池ボックスの斜視図である。
【図6】図5の電池ボックスの分解斜視図である。
【図7】図6の電池ボックスの更なる分解斜視図である。
【図8】図5の電池ボックスの平面図である。
【図9】図8の電池ボックスのIX−IX線における断面図である。
【図10】図7の電池ブロックをサブブロックに分割した状態を示す分解斜視図である。
【図11】本出願人が先に開発した電源装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0015】
図1〜図10に、本発明の一実施の形態に係る電源装置を示す。これらの図において、図1は信号機SGの信号柱SPに電源装置100を設置した状態を示す斜視図、図2は信号機SGの電力供給を商用電源ACと電源装置100とで切り換える様子を示すシステム図、図3は本実施の形態に係る電源装置100の断面図、図4は図3のIV−IV線における縦断面図、図5は図3の電池ボックス1の斜視図、図6は図5の電池ボックス1の分解斜視図、図7は図6の電池ボックス1の更なる分解斜視図、図8は図5の電池ボックス1の平面図、図9は図8の電池ボックス1のIX−IX線における断面図、図10は図7の電池ブロック5をサブブロック9に分割した状態を示す分解斜視図を、それぞれ示している。
【0016】
この電源装置100は、図1に示すように、信号機SGを固定する信号柱SPに固定された信号機用の電源装置である。信号柱SPは、信号機SGを固定するための柱であり、信号機SGの点灯を制御する信号制御ボックスSCを固定している。ここで電源装置100を、この信号制御ボックスSCと同程度の大きさ及び形状とすることで、信号柱SPを利用して、電源装置100も固定できる。このため、バックアップ用の電源装置100を設置するための新たな場所を確保する必要がない。特に本実施の形態に係る電源装置100は、必要な部材を収納ケース6に収納したコンパクトな箱形であるため、比較的小型で搬送や設置も容易となる。従来の自動起動式発動発電機のように、歩道上に専用の設置スペースを確保する必要もない。また必要に応じて電柱等に固定することも可能である。
【0017】
なお電源装置100の設置高さは、図1に示すように、地上付近とすることで、クレーン等の高所作業車を利用することなく、地上から点検やメンテナンス作業が行える。ただし、設置高さがあまりに低いと、洪水時に水没し易くなるおそれもあるため、ある程度の高さで固定することが好ましい。また、洪水の可能性の高い場所に設置する場合は、より高い位置に固定することも可能であることはいうまでもない。また図1の例では、右側に電源装置100を、左側に信号制御ボックスSCを固定しており、このような同程度のボックスを左右に分けて固定することで、バランスよく安定的に固定できる利点が得られる。ただ、この構成例も一例であって、状況に応じて同じ側に電源装置と信号制御ボックスを固定したり、固定高さを変化させることも適宜可能であることはいうまでもない。
【0018】
電源装置100は、図2のシステム図に示すように、信号機SG及び信号制御ボックスSCに対して商用電源ACと並列に接続されており、切替スイッチSWでもって切り換えられる。この電源装置100は、図2及び図3に示すように、直流電源回路2と、電池ボックス1と、インバータ3とを備え、これらの収納ケース6に収納している。直流電源回路2は、商用電源ACと接続されて、商用電源ACの交流を直流に変換するコンバータである。電池ボックス1はさらに、充電回路4と、電池ブロック5とを備える。充電回路4は、直流電源回路2で変換された直流電力でもって、電池ブロック5を充電する。また、商用電源ACの電圧を監視し、電圧低下時に切替スイッチSWを商用電源AC側から電源装置100に切り換える制御も行う。このため、電池ボックス1は信号機SGに供給される商用電源ACの電圧が低下したことを検出する電圧センサ(図示せず)を備える。
【0019】
さらにインバータ3は、切替スイッチSWが電源装置100に切り換えられた際、電池ブロック5の直流電力を交流電力に変換して、信号機SG側に交流電力を供給する。さらに電池ボックス1は、必要に応じて整流素子を備える。図2の回路例では、整流素子として電池ブロック5から充電回路4への通電を阻止する第一ダイオード7と、インバータ3から電池ブロック5側への通電を阻止する第二ダイオード8を備えている。
【0020】
なお、図の構成例は一例であって、これに限定されるものでなく、種々の変更が可能である。例えば、切替スイッチを個別の部材とする他、電源装置に内蔵したり、あるいは信号制御ボックスに内蔵することもできる。
【0021】
さらに、この例では電源装置100を、商用電源ACで信号機SGを駆動する態様において商用電源ACが停電等した際に、商用電源ACが復旧するまでの間、信号機SGに電力を供給して駆動するバックアップ用として用いる例を説明している。ただ、本発明はこの用途や態様に限られるものでなく、種々の態様で利用できる。一例として、信号機のメインの駆動用の電源供給に利用できる。例えば、太陽電池で電池セルを充電可能な充電器を用いて、日中の太陽光発電によって得られる電力で信号機を駆動すると共に、余剰電力で電池セルに蓄電し、夜間の信号機の駆動は電池セルに貯えられた電力で行う態様や、電気料金の安い深夜電力を利用して夜間に電池セルを充電しておき、電池セルに蓄電された電力でもって昼間は信号機を駆動する態様等にも利用できる。
(電源装置100)
【0022】
次に電源装置100の内部構造を、図3及び図4に基づいて説明する。電源装置100は収納ケース6を縦長の箱形形状とし、内部の下方に電池ボックス1を、上方にインバータ3と直流電源回路2を配置している。インバータ3及び直流電源回路2は図4に示すように薄型として、重ねて配置している。このようにインバータ3及び直流電源回路2を縦方向に平積み状とせず、薄型にして縦置き姿勢で平行に並べ、さらに両者を離間して配置することで、縦方向に隙間を形成でき、この隙間を空気層として断熱及び絶縁を図ると共に、縦長に形成された隙間を空気が自然対流しやすくし、加熱された空気を上方に移動させて、可能に配置された電池ボックス1への熱伝導を抑制できる。なおインバータ3及び直流電源回路2の外形が薄型であるとは、幅よりも厚さを薄くした意味であり、この例では外形を構成するケースを角形の板状に形成している。
(収納ケース6)
【0023】
収納ケース6は、重量のある電池ボックス1やインバータ3、直流電源回路2等を収納し、信号柱SPで固定できるよう、十分な強度が求められる。このため、収納ケース6は、強度と放熱性に優れた、例えばアルミニウム等の金属製とする。また、好ましくは長期に渡って風雨雪等に晒されても、内部の収納部品を保護できるよう、防水性を備えることが好ましい。例えば収納ケース6の閉塞部分にパッキン等の弾性部材を配置して、防水性を確保する。また好ましくは、点検作業等のメンテナンスに便利なよう、開閉自在な扉を設ける。
(電池ボックス1)
【0024】
電池ボックス1は、図3、図4に示すように収納ケース6の下方に配置される。この電池ボックス1はパック電池を構成し、図5〜図9に示すように上方を開口した箱形の下ケース10Aと、開口部を閉塞する上ケース10Bとで構成される。図7に示すように、下ケース10Aに電池ブロック5を配置すると共に、その上面に回路基板30を配置して、上面を上ケース10Bで閉塞する。図7の例では、回路基板30は、基板ホルダ31内に縦置き姿勢で固定されている。基板ホルダ31は、電池ブロック5の端部に固定されるよう固定構造を設けると共に、その上面に閉塞するための上ケース10Bを別途固定する固定構造を設けている。このように、回路基板30を電池ブロック5の一面に配し、図4に示すように電池ブロック5と収納ケース6内の隙間に配置することで、基板配置用の空間を別途設ける必要が無く、電源装置の小型化に寄与できる。また収納ケース6の内面と面するように配置することで、回路基板30に実装された電子部品の熱が、収納ケース6を介して外部に発散されやすくなり、放熱性の面でも有利となる。
(回路基板30)
【0025】
回路基板30は、電池セル26の充電を制御する充電回路4を実装している。また放電を制御する放電回路等の電子回路を実装することもできる。さらに回路基板30に、電池セル26のセル電圧や中間電圧、セル温度等を監視する等して、電池セル26の異常発生時に充放電を停止する保護回路を実装してもよい。この例では、一枚の回路基板30で3つのサブブロック9からなる電池ブロック5の充電を管理している。また回路基板30の裏面には、回路基板に実装されたパワーエレクトロニクス系の半導体素子等の放熱を確実に行うため、アルミ材料等からなるヒートシンク等の放熱部材32を設けている。また保護回路は、回路基板30と別に、各サブブロック9に設けたサブ基板13に実装されている。
(電池セル26)
【0026】
電池セル26は、一方向に延在された円柱状又は円筒状の電池セル26を使用している。この電池セル26は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池が好適に使用できる。特にリチウムイオン電池は長寿命であり、自己放電も少ないため、従来の自動起動式発電発動機では必要とされてきたディーゼルエンジンの燃料補給や定期点検等のメンテナンス作業が発生しないか、頻度を大幅に少なくでき、バックアップ用途に有利となる。
【0027】
特に、信号機SGが発光素子に発光ダイオードを用いたタイプであれば、既存の白熱電球を用いた信号機よりも低消費電力であるため、バックアップ用の電源に求められる電力も小さくて済み、より小さい電流でより長く使用し続けることができ、好ましい。
(電池ブロック5)
【0028】
電池ブロック5は、図9の断面図に示すように、電池セル26を長手方向が水平姿勢となるように並べて、かつ垂直方向に積層して構成している。これにより、仮に収納ケース6内部に浸水しても、すべての電池セルが使用不能となる事態を回避できる。
【0029】
上述の通り、収納ケースは水没される危険があるため、電池ブロックは収納ケースの上方に配置することが好ましい。しかしながら、収納ケース内には電池ブロックのみならず、電池ブロックの直流を交流に変換するためのインバータや、商用電源の交流を直流に変換する直流電源回路も収納する必要があるところ、これらインバータ等はトランジスタ等パワーエレクトロニクス系の半導体素子を使用するため、これらの素子が駆動時に発熱するという問題がある。このため、電池ブロックを上方に配置し、その結果としてインバータ等を下方に配置すると、インバータ等の発熱により温められた空気が自然対流によって上方に移動されて、電池ブロックを加熱するおそれがあった。特に、収納ケースを防水仕様とする場合は、収納ケースを完全に封止するため、内部の加熱された空気を外部に廃棄することができず、加熱された空気が上方に滞留して電池ブロックを加熱することとなる。電池ブロックは加熱されると劣化が進み、性能が低下し、寿命も短くする。このような事情から、電池ブロックを収納ケースの下方に配置し、インバータ等を上方に配置することが、加熱された空気の自然対流による加熱を回避する観点からは好ましい。
【0030】
しかしながらこのような配置では、電池ブロックが収納ケースの下方に位置される結果、収納ケースの一部が水没しても電池ブロックが浸漬されるおそれがある。特に図11に示すように、電池ブロックに含まれる電池セル96を収納ケース91内に縦置き姿勢で配置する態様では、電池ブロックの底面に各電池セル96の端面が面する結果、僅かでも浸漬されると、この電池セル96と直列接続されたすべての電池セル96が使用不能となり、結果として電池ブロック全体が使用不能となるおそれがあった。
【0031】
そこで本実施の形態では、電池セル26を水平姿勢で積層することにより、仮に電池ブロックが下方から浸漬されることがあっても、浸漬されるのは下方に位置する電池セルのみとし、上方の電池セルは浸漬を逃れ得るようにした。この結果、実際に浸漬された電池セルのみを交換すれば足りるようにし、交換の必要となる電池セル数を少なくすることができる。これにより、浸水にあっても、すべての電池セルを交換する必要をなくし、電池セル交換のコストを低減できるという利点が得られる。
【0032】
加えて、上述の通り熱源となるインバータ3等を電池ブロック5の上方に配置することにより、加熱された空気の自然対流で下方への熱伝導を抑制し、インバータ3等の発熱から電池ブロック5を保護できる利点も得られる。
(サブブロック9)
【0033】
この電池ブロック5は、図10に示すように複数のサブブロック9で構成される。すなわち、サブブロック9を直列又は並列に接続して、全体として電池ブロック5が構成される。各サブブロック9は、複数の電池セル26を直列及び/又は並列に接続している。この例では、3つのサブブロック9を並列に接続し、さらに各サブブロック9は電池セル26を13直列8並列としている。サブブロックの接続数を変更することで、電源装置の出力電力を変更できる。またサブブロック9は、図7の例では水平方向に積層するように配置している。このようにサブブロック9の横方向の積層数を変更して、所望の出力に調整できる。
【0034】
ただ、図示しないがサブブロックを垂直方向に積層する構成としてもよいことはいうまでもない。これにより、電池ブロック5をサブブロックにユニット化すると共に、ユニットを縦方向に積層して収納ケース内に配置することで、下段に位置するユニットが冠水しても、該ユニットのみを交換して、上段のユニットと組み合わせて使用可能とできる。
【0035】
一方で各サブブロック9は、他のサブブロックと隔離することが好ましい。図7の分解斜視図に示す例では、下ケース10Aの内部に、各サブブロック9を個別に収納できる隔壁11を設けて、下ケース10A内を区画している。このように構成することで、いずれかのサブブロック9が高温になっても、隔壁11によって区画することで他のサブブロック9を保護できる。また、隔壁11を介在させることによって、隣接するサブブロック9同士の間で、対向するリード板40同士の絶縁も図られる。このように、隔壁11でもって区画することでサブブロック9間の断熱と絶縁が図られる。このため隔壁11は断熱性及び絶縁性に優れた材質とする。隔壁11は下ケース10Aと異なる部材で構成することができ、図7の例では、下ケース10Aの内部に樹脂製の隔壁11を設けている。さらに隔壁11を防水構造とすれば、万一いずれかの区画内に浸水しても、隔壁11によって他のサブブロック9を保護できる。
【0036】
また電池ボックス1は、図5〜図8に示すように、電池ブロック5の上面に回路基板30を配置すると共に、上ケース10Bで閉塞している。上ケース10Bには、電池ブロック5をインバータ3や直流電源回路2、あるいは外部の信号制御ボックスSC等と接続するための出力端子である接続端子12を設けている。接続端子12は、好ましくは電池ボックス1を収納ケース6内に収納した状態で、収納ケース6内の上方に位置するよう配置する。これにより、水没時に接続端子12が冠水して他の部材に悪影響を与える事態を回避、あるいはその可能性を低減できる。さらに、接続端子12も防水仕様とすることが好ましい。また接続端子12は、図示しないがリード線等を利用して、回路基板30と内部接続されている。さらに上ケース10Bには、外部機器と通信を行うための通信コネクタ14を設けてもよい。通信コネクタ14は、メンテナンス時などに接続して、動作状況のモニタやソフトの書き換えなどに利用できる。
(電池ホルダ22)
【0037】
電池ブロック521は、図10の分解斜視図に示すように、3つのサブブロック9を水平方向に並べて構成される。なお図10の例では、説明のため下ケース10Aの隔壁を図示していない。各サブブロック9は、電池ホルダ22の収納空間28に電池セル26を挿入し、端面にリード板40を固定している。このため電池ホルダ22は、電池セル26を個別に収納する収納空間28を内部に区画している。収納空間28は、積層される電池セル26同士の中心位置が交互にずれるよう、偏心させたオフセット配置としている。またこの電池ホルダ22は、ほぼ中央で二分割されており、電池セル26を両側から挟み込むようにして保持する。分割されたホルダ同士は、ねじ等により固定される。また収納空間28の端面側は保持部材により、収納空間28に収納された電池セル26が抜け落ちないように保持されると共に、電池セル26を両側から挟み込むことで収納空間28に収納でき、電池セル26の収納空間28への挿入を可能としつつ、収納後の電池セル26の脱落を阻止できる。この電池ホルダ22は、好ましくは一体成型で構成される。例えば、絶縁性に優れたポリプロピレン等の樹脂製とする。さらに各サブブロック9は、このサブブロックに含まれる電池セル26のセル電圧及び代表的なセル温度を検出して、異常発生を監視すると共に、異常発生時に充放電を停止するための保護回路を実装したサブ基板13を下面に設けている。
【0038】
以上のように、収納ケース6内において電池ブロック5で電池セル26を水平姿勢に積層する構成により、安定的に電池セル26を保持できると共に、万一収納ケース6内に浸水しても、電池セルがすべて使用不能となるリスクを低減できる構造が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る電源装置は、交通信号機の他、種々の信号表示器や案内板等のバックアップ用電源として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
100…電源装置
1…電池ボックス(=パック電池)
2…直流電源回路
3…インバータ
4…充電回路
5…電池ブロック
6…収納ケース
7…第一ダイオード
8…第二ダイオード
9…サブブロック
10A…下ケース
10B…上ケース
11…隔壁
12…接続端子
13…サブ基板
14…通信コネクタ
22…電池ホルダ
26…電池セル
28…収納空間
30…回路基板
31…基板ホルダ
32…放熱部材
40…リード板
91…収納ケース
93…インバータ
96…電池セル
SG…信号機
SP…信号柱
SC…信号制御ボックス
AC…商用電源
SW…切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機に供給される電源電圧が低下したことを検出して、電源供給を行うための電源装置であって、
複数の電池セル(26)を直列及び/又は並列に接続した電池ブロック(5)と、
前記電池ブロック(5)を収納する収納ケース(6)と、
を備え、
前記電池セル(26)は、一方向に延長した外装缶を有しており、
前記収納ケース(6)は、垂直方向に延長された外形を有しており、
前記電池ブロック(5)は、前記電池セル(26)を長手方向が水平姿勢となるように並べて、かつ垂直方向に積層して構成してなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池ブロック(5)と電気的に接続され、出力電圧を変換するインバータ(3)を備えてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置であって、
前記電池ブロック(5)が、前記インバータ(3)と接続するための接続端子(12)を、前記電池ブロック(5)の上方に配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記収納ケース(6)が、防水構造を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記電源装置が信号機を駆動するための電源装置であり、
該信号機が、発光素子に発光ダイオードを用いた信号機であることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−239566(P2011−239566A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108818(P2010−108818)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】