説明

電熱還元炉用の黒鉛電極とその製造方法

電熱還元炉用の黒鉛電極は、陽極用コークスから形成され、かつ2700℃未満の黒鉛化温度で黒鉛化される。結果として生じる電極は、アルミナの炭素還元に特に適する。それは、約0.05重量%の鉄含有量と、5μΩ・mを超える比電気抵抗率と、150W/m・K未満の熱伝導率を示す。黒鉛電極は、第1にか焼陽極コークスをコールタールピッチ結合剤と混合することで製造され、かつグリーン電極が、ピッチ結合剤の軟化点に近い温度で混合物から形成される。グリーン電極は、次にピッチ結合剤を固体コークスに炭化すべく焼成される。この結果生じた炭化電極は、次に更なる任意の処理後、炭化電極中の炭素原子を、黒鉛の結晶構造に組織化させるために十分な時間、2700℃未満の温度で黒鉛化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にアルミニウム、チタン、ケイ素、合金鉄およびリンの生産に用いる電熱還元炉用の黒鉛電極に関する。本発明は、かかる黒鉛電極を生産する方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
一世紀の間、アルミニウム産業は、アルミニウム製錬のためのホール・エルー法に依存してきた。鋼及びプラスチックのような、競合する材料を生産するために使用される方法と比べて、その方法は、エネルギー消費型であり、かつコストがかかる。それ故、代替のアルミニウム生産方法が探求されてきた。
【0003】
そのような代替案の一つは、アルミナの直接炭素還元と呼ばれる方法である。米国特許第2974032号明細書(Grunert等)に記載されたように、全体的な反応
Al23+3C=2Al+3CO (1)
によって要約できる方法が、2つの工程、即ち
2Al23+9C=Al43+6CO (2)
Al43+Al23=6Al+3CO (3)
で行われる。反応(2)は、1900〜2000℃の間の温度で生じる。現在のアルミニウム生産反応(3)は、2200℃以上の温度で行われ、反応速度は温度の上昇に伴い増加する。反応(2)と(3)に示す種に加えて、Al2Oを含む揮発性Al種が、反応(2)及び(3)で生じ、かつオフガスにより取り除かれる。回収されない限り、これら揮発性種は、アルミニウム収率の損失になる。反応(2)及び(3)共、吸熱性である。
【0004】
アルミナの直接炭素還元の効率的な生産技術を開発するために、種々の試みがなされた(Marshall Bruno,Light Metals 2003,TMS(The Minerals,Metals & Materials Society)2003参照)。米国特許第3607221号明細書(Kibby)は、全ての生成物がほぼガス状アルミニウム及びCOのみに急速に蒸発し、液体アルミニウムの蒸気圧が、それと接触するアルミニウム蒸気の分圧未満であるように十分に低く、かつ一酸化炭素及びアルミニウムの反応を妨げるために十分に高い温度で、液体アルミニウム層と、蒸気性混合物を含み、かつ実質的に純粋なアルミニウムを回収する方法を記載している。
【0005】
アルミニウムを生産するための炭素還元に関する他の特許には、米国特許第4486229号明細書(Troup等)及び第4491472号明細書(Stevenson等)を含む。二重反応ゾーンが、米国特許第4099959号明細書(Dewing等)に記載されている。Alcoa及びElkemによる最近の努力によって、米国特許第6440193号明細書(Johansen等)に記載されたような、新規の2区画反応器設計が導かれた。
【0006】
2区画反応器において、反応(2)は、実質的に低温区画に限定される。Al43及びAl23の融解浴は、アンダフロー隔壁の下を高温区画へ流れ、そこで反応(3)が行われる。このように生成されたアルミニウムは、融解スラグ層の頂部に層を形成し、かつ高温区画から取り出される。Al蒸気及び揮発性Al2Oを含み、低温区画及び高温区画からのオフガスは、別個の蒸気回収装置内で反応し、Al43を形成し、それが、低温区画に再注入される。低温区画内で温度を維持するために必要なエネルギーは、融解浴に沈められた黒鉛電極を使用する等の、高強度抵抗加熱により提供できる。同様に、高温区画内で温度を維持するために必要なエネルギーは、反応器のその区画の側壁に実質的に水平に配置される複数の電極対により提供できる。
【0007】
アルミニウム生産を除き、チタン、ケイ素、合金鉄並びにリンのような、種々の金属及び非金属の電熱還元は、十分に確立した工業プロセスである。6〜10A/cm2の範囲の比較的低い電流密度のため、これらプロセスの多くで、自焼成炭素電極(Soederberg電極とも呼ばれる)が、使用されている。
【0008】
自焼成炭素電極の使用は、長い間公知であった(Soederbergの米国特許第1440724及び同1441037号明細書参照)。自焼成炭素電極は、基本的に集電シュー及び懸架/滑動装置によって電気アーク炉内の位置に保持される金属ケーシングに充填される、無煙炭、コークス、タール及びピッチ等の炭素含有材料のペースト状混合物からなる。炉の操作中の電極により加えられる高電流に加えアークの熱の適用は、ケーシングに充填される材料を融解し、かつペーストを形成し、次にこのように形成されたペーストをコークス化し、かつ最後に電極を梱包するために十分な熱を生み出す。その消費速度に従い、電極は、段階的に低下し、新規なケーシングシートが、上部に接合され、ケーシングが、混合物で充填され、かつ中間部分が、焼成される。応用例において、電極は、約600〜700℃の低温で部分的に焼成できる。Soederberg電極の状況において、鋼ケーシングの下部は、融解金属浴中で溶解し、それ故に鉄を浴に注入する。この鉄による汚染を回避するために、幾つもの解決策が提案されたが、それらは全て、電極を、鋼ケーシングなしで滑動させ得るように、電極及び鋼ケーシングを機械的に取り外すことからなる。
【0009】
米国特許第6635198号明細書(Vatland等)は、分割された金属ケーシングを用いた自焼成複合電極の連続生産方法を記載している。ケーシングの各新規部分は、部分を互いに堅固に貼付する溶接又は他の手段を適用することなく、下部のケーシングの部分に取り付けられる。ケーシングの部分が、溶接等で互いに堅固に貼付されないので、電極の焼成後にケーシングを容易に除去できる。
【0010】
もう1つの解決策は、焼成ペーストで取り囲まれる予備焼成炭素又は黒鉛電極から形成したカラムにより電極の重量を支持することを含み、カラム及びペースト共、同時に消費される、米国特許第4575856号明細書(Persson)に記載されたような取り付け形状である。
【0011】
鋼生産用の現代の電気アーク炉は、25A/cm2を超える電流密度で操作され、それ故に高伝導性黒鉛電極を必要とする。10μΩ・m未満の電気抵抗率を達成すべく、かかる黒鉛電極は、整列したニードルコークスを使用して生産され、かつ3000℃を超える温度で黒鉛化される。高価なニードルコークスの使用及び黒鉛化のための高い電気コストは、かかる電極が、非鋼材料を生産するための低電力電気炉内で使用することを妨げる。更に、酸化鉄が、コークス粒子内部の炭素との結合からの硫黄の放出によって引き起こされるパフ形成を阻害すべく、電極原料混合物に添加される。従って、増加する鉄分により融解物が汚染され、かつアルミナの炭素還元の場合のように、COに富む融解炉内雰囲気中で高度の電極侵食を引き起こすことがある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、従来一般的な公知の装置及び方法の上記不利点を克服し、かつ融解物を鉄で汚染しない黒鉛電極を提供し、COに富む融解炉内雰囲気中で使用でき、かつ生産するために経済的な、特にアルミニウム、チタン、ケイ素、合金鉄、及びリン生産用の電熱還元炉用の黒鉛電極、電極及び電極カラムの生産方法を提供することが本発明の目的である。
【0013】
上述の及び他の目的を考慮すると、本発明により、陽極用コークスから形成され、2700℃未満の黒鉛化温度で黒鉛化され、かつ0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%の鉄含有量を有し、成形黒鉛電極体を含む、電熱還元炉用の黒鉛電極が提供される。
【0014】
本発明の追加の特徴によれば、電極は、5μΩ・mを超える比電気抵抗率と、150W/m・K未満の熱伝導率を有する。
【0015】
黒鉛電極は、アルミニウム、チタン、ケイ素、合金鉄又はリン生産用の電熱還元炉用に特に適する。アルミナの直接炭素還元が、特に重要である。
【0016】
本発明の追加の特徴によれば、炭素ナノ繊維及び/又は炭素繊維の量は、機械的強度を増加し、かつその熱膨張係数を調整するために電極体に組み込まれる。
【0017】
本発明のもう一つの特徴によれば、陽極用コークスは5〜10mm、好ましくは5〜7mmの平均粒径を有する。
【0018】
黒鉛電極生産における中間生成物は、5〜10mmの平均粒径と、0.5%未満の灰分を有し、コールタールピッチ結合剤と混合され、かつ黒鉛電極を形成するために焼成及び黒鉛化されるグリーン電極に形成される陽極用コークス粒子を含む。
【0019】
上述の及び他の目的を考慮して、本発明は、陽極用コークスから形成され、2700℃未満の黒鉛化温度で黒鉛化され、0.1重量%未満の鉄含有量を有する黒鉛ピンも提供する。黒鉛ピンは、電極カラムを形成するための黒鉛電極体と組み合わせて形成できる。
【0020】
本発明の更なる特徴によれば、上記の黒鉛電極は、電熱還元炉中の自焼成複合電極の中央カラムを形成するために配置される。
【0021】
上述の及び他の目的に基づき、本発明は、黒鉛電極を生産する方法も提供する。この方法は、次の工程を含む。
か焼陽極コークスを5〜10mmの平均粒径とし、かつ混合物を形成すべくコールタールピッチ結合剤と陽極コークスを混合する工程、
ピッチ結合剤の軟化点近くの温度で、グリーン電極を形成すべく混合物から電極体を形成する工程、
炭化電極を形成すべく、ピッチ結合剤を固体コークスに炭化するため700〜1100℃の温度でグリーン電極を焼成する工程、および
炭化電極中の炭素原子を、黒鉛の結晶構造に組織化させるために十分な時間、2100〜2700℃の最終温度で熱処理によって炭化電極を黒鉛化する工程。
【0022】
黒鉛化温度は、好ましくは2200〜2500℃である。グリーン電極は、800〜1000℃の温度で焼成する。最終温度迄1時間当たり1〜5Kの昇温速度で、空気の不存在下にグリーン電極を焼成すると更に好ましい。
【0023】
本発明の更に追加の特徴によれば、電極を、焼成後、コールタール又は石油ピッチによって少なくとも1回含浸できる。この結果電極の開放気孔中に追加のピッチコークスが堆積する。各含浸工程の後に、追加の焼成工程が続く。
【0024】
グリーン電極は、押し出し法で成形できる。この際、押し出し処理量を増大すべく、油又は他の潤滑剤を混合物に添加するとよい。グリーン電極を、従来の成形型での成形や、撹拌型での振動成形により形成してもよい。
【0025】
本発明の更に追加の特徴によれば、黒鉛化工程で形成した黒鉛化電極を、黒鉛電極の最終形状を提供すべく加工する。
【0026】
本発明の付随的な特徴によれば、複数の黒鉛電極を形成し、1つ以上のニップルを、実質的に同じプロセスシーケンスで、かつニップル及び電極がかみ合うことができ、かつ電極及びニップルが、黒鉛電極カラムを形成するために接続されるように形成できる。
【0027】
本発明は、特にアルミニウム、チタン、ケイ素、合金鉄及びリン生産用の電熱還元炉用の黒鉛電極を提供する。電極は、陽極用コークス及び2700℃未満の黒鉛化温度を使用して生産される。
【0028】
本発明は、電極カラムを形成するための上記の黒鉛電極体と組み合わされる黒鉛ピンの利用法も提供する。ピンは、本発明の電極と同じように生産できる。この結果、ピン(ニップルとも呼ばれる)は、電極と、及び機械的性質に関し電極と同じ特性を示す。
【0029】
新規な電極は、電熱還元炉用の自焼成複合電極の中央カラムとして非常に好適である。
【0030】
本発明の特性と考えられる他の特徴を、添付の請求項に示す。
【0031】
本明細書では、本発明を電熱還元用の黒鉛電極及び生産方法で具体的に例証し、かつ記載しているが、本発明の精神から逸脱することなく、かつ請求項と均等の範囲内で、種々の修正や構造的な変更が可能故、本発明は、示した詳細に限定することを意図しない。
【0032】
しかし本発明の構造は、追加の目的及び利点と共に、本発明の特殊な例及び実施態様の以下の記載から最も良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
黒鉛電極生産の第1工程は、か焼コークスとピッチを組み合わせることを含む。上述の如く、鋼生産用の黒鉛電極は、0.3〜1.0×10-6-1の熱膨張係数、1.8の熱膨張の異方性を特徴とする整列したニードルコークスを使用して生産され、かつ粗い繊維性微細構造を持つ。本発明によれば、電熱還元炉用の黒鉛電極は、陽極用コークスを用いて生産される。陽極コークスは、1.2×10-6-1以上の熱膨張係数、1.5の熱膨張の異方性及びモザイク微細構造を持つ。このコークスは非常に純粋であり、0.3%未満の灰分を含み、ニードルコークスよりも著しく低いコストで容易に利用でき、かつホール・エルーアルミニウム製錬法のための炭素陽極の生産に大量に使用されている。
【0034】
破砕され、サイジングされ、かつ圧延されたか焼陽極コークスは、コールタールピッチと混合される。か焼コークスの粒径は、電極の最終用途に従って選択される。一般的に、鋼処理用の黒鉛電極は、平均直径が約25ミリメートル(mm)迄の粒子が、配合用に使用される。本発明の黒鉛電極に関し、5〜10mm、更に好ましくは5〜7mmの平均粒径が適切である。配合に低いレベルで添加し得る他の成分として、追加の機械的強度を提供するか、又は最終電極の熱膨張係数を調整するための炭素ナノ繊維又は炭素繊維と、配合物の押し出しを容易にするための油又は他の潤滑剤を含む。
【0035】
か焼コークス及びピッチ結合剤を混合した後、いわゆるグリーン電極を形成すべく、電極体を、ダイを通る押し出しにより形成(又は成形)するか、又は従来の成形型で成形すか、もしくは撹拌した型で振動成形する。形成工程は、通常約100℃以上の、ピッチ軟化点近くの温度で行う。ダイ又は型は、電極を実質的に最終の形状及び寸法で形成できるが、電極カラムを形成すべく、ピン及びニップルと組み合わさるために必要な、ねじ筋又は他の凹部を最低限でも提供するため、仕上り電極の加工が、通常必要である。本発明の黒鉛電極の周縁部は、長方形又は円形である。
【0036】
グリーン電極は、ピッチ結合剤を固体コークスに炭化し、形成する永続性、高い機械的強度、良好な熱伝導率及び比較的低い電気抵抗率を電極に与え、次に約700〜約1100℃、更に好ましくは約800〜約1000℃の温度で焼成する。焼成工程は、最終温度迄1時間当たり約1〜約5Kの昇温速度で、空気の不在下に実行される。焼成後、電極の開放気孔中に追加のピッチコークスを堆積させるべく、コールタール、石油ピッチ又は当該分野において公知の他の種類のピッチで電極を1回以上含浸しても良い。各含浸工程後に、追加の焼成工程が続く。電極は、かかるピッチによって1回のみ含浸するとよい。
【0037】
焼成後、電極(この段階で、炭化電極と呼ばれる)を次に、か焼コークス及びピッチコークス結合剤中の炭素原子を、殆ど整列していない状態から黒鉛の結晶構造に変形させるのに十分な時間にわたり、2100〜2700℃、好ましくは2200〜2500℃の最終温度での熱処理により黒鉛化する。陽極コークスが高純度なので、必要な最終電極灰分に達するために比較的低い黒鉛化温度で十分である。鋼生産用の黒鉛電極の場合、黒鉛化は、約2700〜約3200℃の温度で実行する。これらの高温で、炭素以外の全ての要素は揮発しかつ蒸発する。黒鉛化温度での維持に必要な時間は、約12時間以下、好ましくは約30分〜約3時間である。黒鉛化は、アチソン炉や長手方向黒鉛化(LWG)炉内で実行でき、後者は連続モードも可能である。黒鉛化の完了後、仕上り電極を適切な大きさに切断し、かつ次に加工するか、別の方法でその最終形状に成形する。
【0038】
仕上り電極は、一体成形電極として、電極束として電熱還元炉内に取り付け、又は黒鉛ピンによって接合された電極カラムとして連続的に供給できる。
【0039】
後者の場合、電極カラムを形成すべく、ピンの対応するねじ筋との組み合わせを可能にするため、電極は、縁部から長手方向に中間部分に軸方向に先細の内側部分を有し、かつ次にねじ筋は、電極の先細部分に加工される。その性質を考えると、黒鉛は、高度の許容差で加工することを可能にし、それ故にピン及び電極の間の強い接続を可能にする。
【0040】
電極カラムを接合するために用いる黒鉛ピンは、鋼生産用の電極カラムに使用されるものと実質的に同じピンであっても良い。しかし更に好ましくは、本発明の黒鉛電極と同じように生産する。後者の場合、ピンは、電極及びピンの不均一な熱膨張により、電極カラムのクラッキングを妨げるのに好適な電極と類似した性質を有する。しかしピンは、電極より重い機械荷重に耐えねばならない。必要な機械的性質を達成し、更に電極と合致する熱膨張挙動を得るべく、ピンの原料混合物を幾分変更する。これに対して処理シーケンスは、電極に関して説明したものと同じでよい。
【0041】
更に、電極及びピンは、結合ピッチ又は他の手段を含む穴又は凹部のような、操作中に電極カラムの弛緩を妨げる手段を備え得る。
【0042】
本発明の追加の実施態様は、上記のような黒鉛電極の、電熱還元炉用の自焼成複合電極用の中央カラムとしての利用である。米国特許第4575856号明細書(Persson)に記載されたように、鉄汚染を回避すべく、Soederberg型電極をSoederbergペーストに埋め込んだ炭素又は黒鉛電極コアカラムからなる複合電極として生産できる。しかし鋼の製造に従来の黒鉛電極を使用すると、コスト並びに鉄汚染が増加する。更に、黒鉛と黒鉛に焼成されるペーストの間の結合の性質が、その接触面でのペーストの相互浸透からなることが決定された。鋼製造用の従来の黒鉛電極は、約15%以下の概して低い開放気孔率を有する。従って、Soederbergペーストとの表面接触は、限定される。
【0043】
対照的に、上記のように生産した黒鉛電極は、低い鉄含有量を有し、かつ黒鉛コアカラム及びSoederbergペーストの間に緊密な表面接触を有する電熱還元炉用のかかる自焼成複合電極を製造するための経済的な方法を提供する。
【0044】
本発明の更なる目的は、2700℃未満の温度での黒鉛化が後に続く、自焼成複合電極製造シーケンスを使用する電熱還元炉用の陽極用コークスベース電極の製造方法を提供することである。
【0045】
上記の如く、従来の自焼成電極は、電熱還元炉の屋根の開口部を経て下方に伸長し、垂直に配置された円筒形金属ケーシングを含む。ケーシングの上端部は、最初に融解し、かつ次にケーシングの下端の下に伸長する電極の硬化部分から上向きに導かれる熱の結果ケーシングを経て下向きに通過する際、固体状態に硬化する炭質ペースト状材料の挿入を可能にすべく開放している。かかるペーストは、例えば次にピッチやタールのような結合材料と混合される無煙炭又は石油又はアスファルトコークスにより製造できる。
【0046】
本発明のこの実施態様では、第1工程において、自焼成黒鉛電極は、か焼陽極用コークス及びピッチからなるペーストを用いて、同じように生産される。電熱還元炉に直接電極を供給する代わりに、必要なら、金属ケーシングから取り外し、かつ2100〜2700℃、更に好ましくは2200〜2500℃の最終温度で黒鉛化する。黒鉛化工程は、アチソン炉やLWG炉等の別個の黒鉛化炉、又は理想的には自焼成装置及び電熱還元炉の間に配置した連続モード黒鉛化炉で行える。
【0047】
本発明に従い製造した電極は、先行技術を越える多数の利点を持つ。電熱還元炉に関して、それらは、鋼生産のための高温黒鉛電極の経済的な代替案であり、かつ同時にSoederberg電極の高純度な代替案を提供する。更に、それらは、本質的に既存の製造装置に基づく幾つかの経路を使用して製造できる。
【0048】
次の実施例は、本発明を更に例示し、かつ説明するために提示するが、いかなる点においても限定的であると見なされるべきでない。特段の指示がない限り、全ての部及び百分率は、重量によっており、かつ示した処理中の特定の段階での生成物の重量に基づく。
【実施例】
【0049】
実施例1
6mmの平均粒径を有する85%の陽極コークス及び15%のコールタールピッチを、150℃で強力なミキサ内で混合した。混合物を、次に冷却し、直径約600mm×長さ約2400mmのグリーン電極として押し出した。グリーン電極を、上記のように処理した。鋼生産用の黒鉛電極(GEsteel)並びにSoederberg電極と比較した、これらの電極(GEelectrothermic)の物理的性質を、表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
低い黒鉛化温度のため、本発明の黒鉛電極(GEelectrothermic)は、鋼生産用の黒鉛電極(GEsteel)と比べ、高い比電気抵抗率と低い熱伝導率を示す。この結果比較的低い電流密度を持つ電熱還元炉の要求に適合している。本発明の黒鉛電極は、著しいコスト上の利点に加え、特にその鉄含有量に応じ、純度が高い点で優れている。一般のSoederberg電極は、特に鉄による電熱融解物の汚染を引き起こし得る。更に、黒鉛電極と比べて低い導電率及び熱伝導率は、製錬操作中のエネルギー消費に悪影響を及ぼす。
【0052】
実施例2
6mmの平均粒径を持つ80%の陽極コークスと20%のコールタールピッチを、150℃において強力なミキサ内で混合し、冷却し、直径約330mm×長さ約2100mmのグリーン円筒体として押し出した。該円筒体を、上記の電極と同様に処理した。黒鉛化後、各円筒体から3つの黒鉛ピンを作成し、電極ねじ筋と組み合わさるように、ねじ付き表面を有するダブルコーン形状に加工した。ピンと対応する電極の両方の物理的性質は、ほぼ互いに合致する。組み立てた電極カラムは、熱応力下でクラックを生じなかった。
【0053】
上記記載は、当業者が、本発明を実施できるようにすることを意図している。記載を読めば当業者に明らかになる全ての可能な応用例及び修正を詳述することは、意図していない。しかし全てのかかる修正及び応用例を、請求項によって定義する本発明の範囲内に含むことを意図している。状況が反対のことを具体的に示さない限り、請求項は、本発明において意図する目的を満たすために効果的であるいかなる配置又は順序でも、示した要素及び工程をカバーすることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱還元炉において陽極用コークスから形成され、2700℃未満の黒鉛化温度で黒鉛化され、かつ0.1重量%未満の鉄を含有する成形黒鉛電極体を含む黒鉛電極。
【請求項2】
前記電極体が、5μΩ・mを超える比電気抵抗率と、150W/m・K未満の熱伝導率を有する請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項3】
前記電極体が、約0.05重量%の鉄含有量を有する請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項4】
アルミニウム、チタン、ケイ素、合金鉄、及びリンのいずれかを生産する電熱還元炉用に設定された請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項5】
機械的強度を増加し、かつその熱膨張係数を調整するために、前記電極体に組み込まれる炭素ナノ繊維の量を更に含む請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項6】
機械的強度を増加し、かつ熱膨張係数を調整すべく、前記電極体に組み込まれる炭素繊維を更に含む請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項7】
前記陽極用コークスが、5〜10mmの平均粒径を有する請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項8】
前記平均粒径が、5〜7mmである請求項7記載の黒鉛電極。
【請求項9】
アルミナの直接炭素還元炉において使用される請求項1記載の炭素電極。
【請求項10】
5〜10mmの平均粒径と、0.5%未満の灰分を有し、ピッチ結合剤と混合され、かつ黒鉛電極を形成するために焼成及び黒鉛化されるグリーン電極に形成される陽極用コークス粒子を含む黒鉛電極生産における中間生成物。
【請求項11】
請求項1に記載の黒鉛電極との組み合わせで、陽極用コークスから形成され、2700℃未満の黒鉛化温度で黒鉛化され、0.1重量%未満の鉄含有量を有し、かつ電極カラムを形成するための前記黒鉛電極体と組み合わさるように形成される黒鉛ピン。
【請求項12】
電熱還元炉用の自焼成複合電極において、自焼成複合電極の中央カラムを形成すべく配置される請求項1記載の黒鉛電極。
【請求項13】
以下の工程を含むことを特徴とする黒鉛電極を生産する方法。
か焼陽極コークスに、5〜10mmの平均粒径を提供し、かつ混合物を形成すべくコールタールピッチ結合剤と陽極コークスを混合する工程、
ピッチ結合剤の軟化点近くの温度で、グリーン電極を形成すべく混合物から電極体を形成する工程、
炭化電極を形成するため、ピッチ結合剤を固体コークスに炭化すべく700〜1100℃の温度でグリーン電極を焼成する工程、および
炭化電極中の炭素原子を、黒鉛の結晶構造に組織化させるために十分な時間、2100〜2700℃の最終温度で熱処理によって炭化電極を黒鉛化する工程。
【請求項14】
2200〜2500℃の温度で黒鉛化する工程を更に含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
800℃〜1000℃の温度でグリーン電極を焼成する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項16】
最終温度迄、1時間当たり1K〜5Kの昇温速度で、空気の相対的不存在においてグリーン電極を焼成する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項17】
焼成後、電極の開放気孔中に追加のピッチコークスを堆積させるべく、コールタール又は石油ピッチによって少なくとも1回、電極を含浸させる工程と、各含浸工程の後に、追加の焼成を行う工程とを含む請求項13記載の方法。
【請求項18】
混合物に油又は他の潤滑剤を添加し、かつ押し出しによってグリーン電極を形成する請求項13記載の方法。
【請求項19】
成形型における成形によって、又は撹拌した型における振動成形によってグリーン電極を形成する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項20】
グリーン電極を形成する混合物に、比較的低い割合の炭素繊維又は炭素ナノ繊維を添加する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項21】
黒鉛電極の最終形状を提供すべく、黒鉛化工程で形成した黒鉛化電極を加工する工程を更に含む請求項13記載の方法。
【請求項22】
か焼陽極コークスを、5〜7mmの平均粒径とすることを含む請求項13記載の方法。
【請求項23】
請求項13に記載の方法により複数の黒鉛化電極を生産する工程と、黒鉛化電極とかみ合うように設定されたニップルを生産する工程と、黒鉛電極カラムを形成すべく、電極及びニップルと接続する工程を含む黒鉛電極カラムの生産方法。

【公表番号】特表2007−537565(P2007−537565A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512099(P2007−512099)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005166
【国際公開番号】WO2006/000276
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】