説明

電球型LED照明器具

【課題】複数のチップLEDを用いて所望の輝度を確保する。
【解決手段】電極口金2を備えた電球型LED照明器具1は、電源回路を内蔵した伝熱性ケース3と、複数の低輝度チップLED10を搭載した複数の基板6,7によって構成された多面体構造の基板構造体5を包囲する透光カバー4とを有する。透光カバー4は外側カバー4aと内側カバー4bの内外二重構造とされ、外側カバー4aと内側カバー4bの間に密封空間4cを備え、密封空間4cには適当なガスが封入される。また、外側カバー4aと内側カバー4bには典型的には蛍光塗料22,24が塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のチップLEDを光源とする電球型LED照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)は既に様々な分野で活用されているが、白色LEDが実用化された今日、白熱灯や蛍光灯に代わる照明器具として検討されている。LEDは白熱灯や蛍光灯に比べて長寿命であり且つ消費エネルギーも少ないため、地球温暖化が叫ばれている今日、LEDを採用した照明器具が普及する傾向にある。
【0003】
特許文献1は、複数のLEDを配置した照明基板を同一平面上に複数配置した照明器具を提案している。また、特許文献2は、汎用ソケットに螺合可能な口金を備え、半球状の保持ユニットに複数のLED素子を装着した電球型LED照明器具を提案している。より具体的には、特許文献2は、LED素子は、プラス及びマイナスの脚端子が同軸上に上下に設けられ、他方、半球状の保持ユニットには、絶縁層を介して極性の異なる2つ送電皮膜が設けられ、各LED素子の脚端子を保持ユニットに挿入することで各LED素子に電源が供給されるようになっている。
【0004】
ところで、現在入手可能なLEDは、超輝度タイプ、高輝度タイプ、低消費電力の低輝度タイプなどに分類して製造販売され、また、形状として、砲弾型LED、表面実装型LED(チップLED)などに分類して製造販売されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−122936号公報
【特許文献2】特開2003−281925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LED照明の場合、大電流を使用する超高輝度LEDや高輝度LEDを利用すれば、所望の輝度の電球型LED照明器具を作るのにLEDの使用数は少なくてすむが、発熱対策と価格に難点がある。また、砲弾型LEDを採用すると電球型LED照明器具の小型化に難点がある。
【0007】
本発明の目的は、複数のチップLEDを用いて所望の輝度を確保することのできる電球型LED照明器具を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、複数のチップLEDの存在を外部から分からなくしつつ所望の輝度を確保することのできる電球型LED照明器具を提供することにある。
【0009】
本発明の更なる目的は、複数のチップLEDを用いつつ従来の蛍光灯に類した照明を行うことのできる電球型LED照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
ソケットに螺合可能な電極口金と、
該電極口金に隣接して配置され且つ電源回路を内蔵した熱伝導性材料からなる伝熱性ケースと、
該伝熱性ケースに隣接して配置され且つ複数の低輝度チップLEDを搭載した複数の基板によって構成された多面体構造の基板構造体を包囲する透光カバーとを有し、
該透光カバーが外側カバーと内側カバーの内外二重構造とされ、これら外側カバーと内側カバーによって形成される密封空間を備えていることを特徴とする電球型LED照明器具を提供することにより達成される。
【0011】
すなわち、本発明の電球型LED照明器具によれば、多面体構造の基板構造体に複数の低輝度チップLEDを配置することで数多くのLEDを使って照明することでき、また、この低輝度チップLEDの数によって所望の輝度に設定することができる。また、この照明器具が発する熱は伝熱性ケースを通じて外部に放出することができ、この放熱効率を高めるために伝熱性ケースの外周面に放熱フィンを設けるのがよい。
【0012】
本発明の電球型LED照明器具によれば、内外二重構造の透光カバーを採用してあるため、この透光カバー内の密封空間に適当なガスを封入することができ、このガスを選択することで電球型LED照明器具が発する色合いを調整することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、前記透光カバーの外側カバーの内面及び/又は内側カバーの外面に透光性塗料が塗布される。このように透光カバーの外側カバー及び/又は内側カバーに透光性塗料を塗布することで、透光カバーで囲まれたチップLEDの存在を外部から見えなくすることができる。この点について説明すると、例えば透光カバーを透明ガラスで作った場合、一つの電球の中に複数の光源が点在して見えるため、これまで見慣れているフィラメントで光を発する白色電球から違った印象を与えてしまうことになる。これに対して、透光カバーの外側カバー及び/又は内側カバーに透光性塗料を塗布することで、透光カバーで包囲された複数のLEDは外部から見えないため、また、各チップLEDが発する光の指向性を緩和することができるため、各チップ従来の白色電球に類した照明器具であるとして見る者の違和感を低減することができる。
【0014】
また、透光カバーの外側カバー及び/又は内側カバーに塗布する透光性塗料として発光塗料、典型的には蛍光塗料を採用することで、従来の蛍光灯に類した照明器具として見る者に印象付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は実施例の電球型LED照明器具を示す。図1を参照して、電球型LED照明器具1は、電極口金2を有し、この電極口金2を汎用のソケットに螺合することにより商用電源を使って照明することができる。
【0016】
電球型LED照明器具1の概要を説明すると、電球型LED照明器具1は電極口金2の近傍に配設された伝熱性金属材料からなるケース3を有し、この伝熱性ケース3内に電源回路(図示せず)が収容されている。伝熱性ケース3の上方に透光カバー4が設けられ、この透光カバー4内に、多面体構造の基板構造体5が収容されている。透光カバー4は典型的にはガラス材料から作られる。
【0017】
図2は、電球型LED照明器具1から透光カバー4を取り除いて基板構造体5を露出させた図である。図2を参照して、基板構造体5は、六枚の側面基板6と、一枚の天井基板7とで構成された六角柱の形状を有しており、各基板6、7には複数のチップLED10が配列されている。ここに、チップLED10は比較的低輝度の低消費電力タイプのLEDが採用される。
【0018】
側面基板6は、長方形の形状を有し、その長手方向に四個のチップLED10が直列に且つ互いに間隔を隔てて実装されている。また、天井基板7は平面視六角形の形状を有し、この天井基板7に三個のチップLED10が直列に且つ互いに間隔を隔てて実装されている。なお、六角柱は例示に過ぎず、四角形、五角形、八角形などの多角柱の形状を任意に採用することができる。勿論、多角形の天井面を備えた切頭多角錐の形状を採用してもよい。
【0019】
上述した複数の側面基板6が一枚の基板11に面付けされ、そして、側面基板6が分離される前の状態を図3に示す。なお、同じ一枚の基板11に天井基板7を含めて面付けしてもよいし、この天板基板7については別の基板に面付けしてもよい。側面基板6及び天井基板7は伝熱性に優れた材料で作られるのがよい。
【0020】
図3を参照して、基板11には、縦線12と横線13によって複数の側面基板6が区分され、縦線12及び横線13に沿って切断することにより各側面基板6を形成することができる。ここに、縦線12と横線13は断面V字状のVカット加工が施されている。縦線12、横線13には、長孔形状の透孔14を有する。図3の参照符号15は回路パターンを示す。この回路パターン15は、隣接するチップLED10、10を電気的に接続するものであり、図3から理解できるように、各側面基板6の隣接するチップLED10、10の間のほぼ全領域を使って回路パターン15が形成されている。そして、このチップLED10及び回路パターン15が設けられている側面基端6の表面には、ニッケルなどの光反射メッキが施されている。また、基板11の表面を保護するレジスト塗料として透明な材料が採用され、これにより回路パターン15は反射鏡の機能が付与されている。天井基板7についても、側面基板6と実質的に同じ構成が採用されている。
【0021】
上記の長孔形状の透孔14のうち、適宜の透孔14には、図4に示すように、透孔14の周縁部にも配線導体16が塗布され、配線導体16によって隣接する側面基板6及び天井基板7が互いに電気的に接続される。
【0022】
側面基板6及び天井基板7の裏面には、上述した回路パターン15及び配線導体16と同じ導電性材料を塗布してもよい(図示せず)。そして、側面基板6及び天井基板7の表と裏の回路パターン15及び配線導体16は透孔14の部位で互いに半田付けにより接続されている。これにより、チップLED10が発する熱は、基板6、7の両面においてチップLED10、10間のほぼ全領域に塗布された導電性材料からなる回路パターン15を使って効率的に放熱することができる。
【0023】
図5は基板11から切り離した各面の基板6、7の組立を示し、各面の基板6、7の回路パターン15は、透孔14の周縁部の配線導体16を半田付けすることにより電気的に接続される。半田付けする部位を参照符号20で示してある。
【0024】
図6は透光カバー4の縦断面図である。透光カバー4は、従来の白熱電球と同様の一重構造であってもよいが、外側カバー4aと内側カバー4bとの内外二重の構造を有しているのがよい。図6から理解できるように、外側カバー4aと内側カバー4bとは透光カバー4の下端で封止されて、外側カバー4aと内側カバー4bとで密封空間4cが形成されている。この密封空間4aは、電球型LED照明器具1が点灯して熱を発したときに大気圧状態となるように若干減圧されている。外側カバー4aの内面つまり内側カバー4bと対面する面及び/又は内側カバー4bの外面つまり外側カバー4aと対面する面には、好ましくは任意の透光性着色塗料が塗布されるのがよく、透光性着色塗料は、白色、カラーのいずれでもよい。
【0025】
透光性塗料として、チップLED10の発する光によって発光する発光塗料であるのが好ましく、発光塗料の典型例として蛍光塗料22、24を挙げることができる。外側カバー4aに塗布する蛍光塗料22と内側カバー4bに塗布する蛍光塗料24は同じ蛍光塗料であってもよいし、異なる種類の蛍光塗料であってもよい。また、透光カバー4の密封空間4aには窒素ガスやアルゴンガスなどのガスを封入してもよい。
【0026】
外側カバー4a及び/又は内側カバー4bに透光性着色塗料(蛍光塗料22及び/又は24)を塗布することで、チップLED10を外部から隠すことができ、また、各チップLED10の光の指向性を緩和することができるので、見栄えの点からも好ましい。勿論、透光性着色塗料の種類や封入ガスを選択することで、電球型LED照明器具1が発する光の色合いを変えることができる。また、チップLED10の発する光は青色、白色、紫外線などから任意に選択可能であることは言うまでもない。
【0027】
基板11(6、7)に対するチップLED10の設置に関し、図7に示すように、チップLED10を設置する箇所に凹所11aを設け、この凹所11aにチップLED10を埋め込むようにして設置してもよい。
【0028】
基板11(6、7)を伝熱性に優れた基板材料から作る、及び/又は、前述したように基板6、7の両面においてチップLED10、10間のほぼ全領域に導電性材料を塗布することでチップLED10の熱を効率的に伝熱することができるが、この熱を外部に排出するのを促進するために、各側面基板6の基端が固設される伝熱性ケース3の外周面に複数の放熱フィン3a(図1)を設けるのがよい。
【0029】
側面基板6及び天井基板7の形状は前述したように任意であり、また、各基板6、7に設置するチップLED10の配置も任意であるが、好ましい複数の具体例を図8〜図13に例示する。なお、図8〜図13は説明のための展開図である。
【0030】
図8は、天井基板7を正六角形にし、6枚の側面基板6を正五角形にすると共に、各基板6、7には夫々3個のLED10が平面視で正三角形の3つの頂点に設置されている。図9は、天井基板7を正五角形にし、そして5枚の正五角形の側面基板6を配置した例を示す。図10は、図8の例の変形例であり、6枚の側面基板6のうち、一つ置きの3つの側面基板6が正五角形であり、隣接する正五角形の側面基板6、6の間に正六角形の側面基板6を配置する構成が採用されている。図11は、図8の例の他の変形例であり、また、図12は、図9の例の変形例であり、図13は、図11の例の変形例であるが、これら図11〜図13の例では、各側面基板6及び天井基板7に対して、4個のチップLED10が平面視で正方形の4つの頂点に配置されている。
【0031】
実施例の電球型LED照明器具1によれば、複数のチップLED10を実装した側面基板6及び天井基板7を透孔14の周縁部の配線基板16を半田付けすることにより、各基板6、7のLED10を電気的に接続し且つ電源回路にも接続されるだけでなく、天井基板7及び複数の側面基板6同士が互いに固定されて構造的に一体化された六角柱の発光源となる。したがって、多数のチップLED10を組み込んだ基板構造体5の組立作業を効率化することができる。
【0032】
また、実施例の電球型LED照明器具1によれば、側面基板6及び天井基板7の表面において互いに隣接するチップLED10、10間のほぼ全領域を使って回路パターン15が形成されており、また、裏面においても回路パターン15と同様に導電性材料が塗布されており、導電性材料は一般的に熱伝導性が優れているため、LEDが発生した熱を基板構造体5の側面基板6及び天井基板7の表面及び裏面のほぼ全領域を使って効率的に放熱することができる。
【0033】
また、多角柱の基板構造体6各側面及び天井に数多くのチップLED10を配設することができるだけでなく、チップLED10が発する光は、反射鏡として機能する回路パターン15によって反射され、チップLED10が発する光を効率的に照明に寄与させることができる。
【0034】
また、基板6、7を伝熱性に優れた基板材料を採用することで基板6、7を通じた熱伝導を促進することができ、この熱は、伝熱性ケース3を通じて外部に排出することができる。また、電源回路を内蔵したこの伝熱性ケース3に放熱フィン3aを設けることにより電球型LED照明器具1の放熱効率を高めることができる。
【0035】
また、透光カバー4を内外二重構造として密封空間4aを形成してあるため、この密封空間4aにアルゴンガスなどの任意のガスを封入することで電球型LED照明器具1の光の色を調整することができる。また、透光カバー4の外側カバー4a、内側カバー4bの少なくとも一方に蛍光塗料22及び/又は24を塗布することで、各チップLED10の光の指向性を緩和して電球型LED照明器具1を従来の蛍光灯に類した照明器具にすることができると共に、この蛍光塗料によってチップLED10の存在を外部から実質的に隠すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例の電球型LED照明器具の斜視図である。
【図2】図1の電球型LED照明器具から透光カバーを取り除いて基板構造体を露出させた図である。
【図3】Vカット処理により面付けした基板の平面図である。
【図4】Vカットラインに設けた長孔状の透孔と、該透孔の周縁の配線導体を説明するための図である。
【図5】互いに隣接する側面基板と天井基板とが透孔を整合させて該透孔部分の配線導体を半田付けすることにより回路パターンの接続及び側面基板と天井基板とが固定されることを説明するための図である。
【図6】内外二重構造の透光カバーの断面図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】正六角形の天井基板及び6枚の側面基板で多面体構造の基板構造体を構成すると共に各天井基板及び側面基板に3つのチップLEDを配置した例を説明するための展開図である。
【図9】正五角形の天井基板及び5枚の側面基板で多面体構造の基板構造体を構成すると共に各天井基板及び側面基板に3つのチップLEDを配置した例を説明するための展開図である。
【図10】図8の例の変形例を示す図である。
【図11】正六角形の天井基板及び6枚の側面基板で多面体構造の基板構造体を構成すると共に各天井基板及び側面基板に4つのチップLEDを配置した例を説明するための展開図である。
【図12】正五角形の天井基板及び5枚の側面基板で多面体構造の基板構造体を構成すると共に各天井基板及び側面基板に4つのチップLEDを配置した例を説明するための展開図である。
【図13】図11の例の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電球型LED照明器具
2 電極口金
3 伝熱性ケース
3a 伝熱性ケースの放熱フィン
4 透光カバー
4a 外側カバー
4b 内側カバー
4c 透光カバーの密封空間
5 基板構造体
6 側面基板
7 天井基板
10 チップLED
22、24 蛍光塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットに螺合可能な電極口金と、
該電極口金に隣接して配置され且つ電源回路を内蔵した熱伝導性材料からなる伝熱性ケースと、
該伝熱性ケースに隣接して配置され且つ複数の低輝度チップLEDを搭載した複数の基板によって構成された多面体構造の基板構造体を包囲する透光カバーとを有し、
該透光カバーが外側カバーと内側カバーの内外二重構造とされ、これら外側カバーと内側カバーによって形成される密封空間を備えていることを特徴とする電球型LED照明器具。
【請求項2】
前記透光カバーの外側カバーの内面及び/又は内側カバーの外面に透光性塗料が塗布されている、請求項1に記載の電球型LED照明器具。
【請求項3】
前記透光性塗料が発光塗料である、請求項2に記載の電球型LED照明器具。
【請求項4】
前記発光塗料が蛍光塗料である、請求項3に記載の電球型LED照明器具。
【請求項5】
前記伝熱性ケースが、その外周面に放熱フィンを備えている、請求項3又は4に記載の電球型LED照明器具。
【請求項6】
前記基板に複数の凹所が形成され、各凹所に前記チップLEDが設置されている、請求項2〜5のいずれか一項に記載の電極型電球型LED照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−277586(P2009−277586A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129704(P2008−129704)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(504157862)サンコーポレーション株式会社 (6)
【出願人】(302036116)三洋設備産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】