電界放出型発光装置およびその製造方法
【課題】発光が均一化された電界放出型発光装置を提供する。
【解決手段】カソード基板3の、アノード基板4と対向する面側に、カソード電極1Aおよび電子放出材料層1Bが配置され、カソード電極1A周縁の少なくとも一部が、電子放出材料層1Bにより被覆され、アノード基板4の、カソード基板3と対向する面側に、アノード電極2Aおよび蛍光体層2Bが配置され、蛍光体層2Bは、アノード電極2Aのカソード電極1A側表面におけるアノード基板面に垂直な方向から見てアノード電極2A周縁の内側、および、アノード電極2Aとアノード基板4との間の少なくとも一方に配置され、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、電子放出材料層1Bおよびそれにより被覆されたカソード電極1A周縁が、蛍光体層2Bの内側に配置され、カソード基板3およびアノード基板4上に、ゲート電極を有しない電界放出型発光装置。
【解決手段】カソード基板3の、アノード基板4と対向する面側に、カソード電極1Aおよび電子放出材料層1Bが配置され、カソード電極1A周縁の少なくとも一部が、電子放出材料層1Bにより被覆され、アノード基板4の、カソード基板3と対向する面側に、アノード電極2Aおよび蛍光体層2Bが配置され、蛍光体層2Bは、アノード電極2Aのカソード電極1A側表面におけるアノード基板面に垂直な方向から見てアノード電極2A周縁の内側、および、アノード電極2Aとアノード基板4との間の少なくとも一方に配置され、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、電子放出材料層1Bおよびそれにより被覆されたカソード電極1A周縁が、蛍光体層2Bの内側に配置され、カソード基板3およびアノード基板4上に、ゲート電極を有しない電界放出型発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出型発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出素子を利用した、フィールドエミッションランプは、次世代光源として期待されている。その理由として、省電力であること、高輝度な面光源を形成可能であること、水銀レスであることなどが挙げられる。
【0003】
電界放出素子においては、カソード電極とアノード電極を有し、カソード電極とアノード電極との間に電界を印加することで、カソード電極に配置した電子放出材料から電子を放出させる。電子放出材料は、一般に高いアスペクト比を有し、その先端に電界が集中することで電子を放出する。例えば、電界放出素子のアノード電極上に電子線励起発光の蛍光体を配置することで、発光装置を作製することができる。さらに、平面状のカソードとアノードとを対向させることで、面で発光する発光装置を作製することもできる。
【0004】
前記電子放出材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤー、スピント型エミッター等の、アスペクト比が高い導電性構造体が用いられる。例えば、特許文献1では、カーボンナノチューブ含有層に積層構造を設けてその界面で剥離を起こし、カーボンナノチューブを平坦な面上に起毛させることで、発光点を増加させることが記載されている。
【0005】
特許文献1等に記載されている電界放出型発光装置の例について、図面を用いて説明する。図19は、前記電界放出型発光装置の断面図である。図示のとおり、この装置は、カソード基板3とアノード基板4が略平行に対向して配置され、カソード基板3上にカソード1が、アノード基板4上にアノード2が形成されている。
【0006】
カソード1は、カソード電極1Aと電子放出材料層1Bから構成されている。電子放出材料層1Bは、カソード電極1Aのアノード電極2A側の表面に形成されている。またカソード基板面内方向において、カソード電極1Aは、電子放出材料層1Bよりも大きい面積を有する。
【0007】
一方、アノード2は、アノード電極2Aと蛍光体層2Bから構成されている。蛍光体層2Bは、アノード電極2Aのカソード電極1A側の表面に形成されている。また、アノード基板面内方向において、アノード電極2Aは、蛍光体層2Bと略同じ形状および面積を有するか、または、蛍光体層2Bよりも大きい面積を有する。
【0008】
図19の装置においては、装置内部を真空封止するための手段(図示せず)により、カソード基板およびアノード基板の両基板間が真空に保たれる。さらに、電圧源5によって、カソード電極1Aとアノード電極2Aとの間に電圧が印加されることで、電子放出材料層1Bの中にある電子放出材料に電界が印加され、電子6が放出される。電子6は、カソード・アノード電極面に略垂直な方向に印加された電界によって加速され、蛍光体層2B中の蛍光体を励起する。そして、励起された前記蛍光体から光7が放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−287473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような電界放出型発光装置においては、電子線の軌道を決める電界が、カソード電極面およびアノード電極面に略垂直な方向に向いているために、電極面に平行な方向への電子線の広がりが小さい。そのために、発光パターンが、点状の狭い領域に限られ、発光が不均一となってしまうおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、発光が均一化された電界放出型発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の電界放出型発光装置は、
カソード基板とアノード基板とが対向して略平行に配置され、
前記カソード基板の、前記アノード基板と対向する面側に、カソード電極および電子放出材料層が配置され、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆され、
前記アノード基板の、前記カソード基板と対向する面側に、アノード電極および蛍光体層が配置され、
前記蛍光体層は、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に配置され、
前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置され、
前記カソード基板および前記アノード基板上に、ゲート電極を有しないことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による、前記本発明の電界放出型発光装置の製造方法は、
カソード基板およびアノード基板を準備する基板準備工程と、
前記カソード基板の片面側に、カソード電極を形成するカソード電極形成工程と、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が前記電子放出材料層により被覆されるように、前記電子放出材料層を形成する電子放出材料層形成工程と、
前記アノード基板の片面側に、アノード電極を形成するアノード電極形成工程と、
前記蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記カソード基板および前記アノード基板を、前記カソード電極形成面と前記アノード電極形成面とが対向するように略平行に配置する基板配置工程とを含み、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層を、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に形成し、
前記カソード電極形成工程、前記電子放出材料層形成工程および前記蛍光体層形成工程において、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置されるように、前記カソード電極、前記電子放出材料層および前記蛍光体層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光が均一化された電界放出型発光装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態における電界放出型発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の電界放出型発光装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の電界放出型発光装置におけるカソード電極周縁の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の電界放出型発光装置におけるカソード電極周縁の構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【図5A−C】図5(A)〜(C)は、それぞれ、本発明の電界放出型発光装置における、電子放出材料層に覆われたカソード電極周縁の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図5D−F】図5(D)〜(F)は、それぞれ、本発明の電界放出型発光装置における、電子放出材料層に覆われたカソード電極周縁の構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【図6】図6(A)〜(D)は、それぞれ、本発明の電界放出型発光装置における、電子放出材料層に覆われたカソード電極周縁の構造のさらに別の例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における電界放出型発光装置の構造の別の例を模式的に示す平面図である。
【図8】図8(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態の電界放出型発光装置における電位分布の計算結果の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態における電界放出型発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図10】図9の電界放出型発光装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における電界放出型発光装置の構造の別の例を模式的に示す平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における電界放出型発光装置の構造のさらに別の例を模式的に示す平面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の電界放出型発光装置における電位分布の計算結果の一例を示すグラフである。
【図14】図13の電位分布に基づき、カソード基板表面近傍における面内方向の電界強度を計算した結果を示すグラフである。
【図15】本発明の第1の実施形態の電界放出型発光装置において、帯電防止膜を備えた構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の電界放出型発光装置において、帯電防止膜を備えた構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図17】比較例の電界放出型発光装置の発光写真である。
【図18】実施例の電界放出型発光装置の発光写真である。
【図19】本発明と関連する電界放出型発光装置の構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0017】
[実施形態1]
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1の断面図に、本実施形態の電界放出型発光装置の構造の一例を模式的に示す。図2は、図1の電界放出型発光装置のアノード基板4の面に垂直な方向から見た平面図である。カソード電極1Aは、図2では長方形の形状としているが、これに限定されず、円形または三角形など、任意の形状とすることができる。装置を構成する要素は、図19の電界放出型発光装置と同様である。図19と同一の符号は、同様の構成要素を示す。
【0018】
図1に示す通り、この電界放出型発光装置において、カソード基板3とアノード基板4とは、略平行に対向するように配置されている。カソード基板3上にはカソード1が、アノード基板4上にはアノード2が、それぞれ形成されている。
【0019】
カソード1はカソード電極1Aと電子放出材料層1Bから構成されている。カソード電極1Aと電子放出材料層1Bとの位置関係については後述する。
【0020】
一方、アノード2はアノード電極2Aと蛍光体層2Bから構成されている。蛍光体層2Bはアノード電極2Aのカソード電極1A側の表面に形成されている。蛍光体層2Bは、アノード基板面に垂直な方向から見て、アノード電極2A周縁の内側に配置されている。すなわち、アノード電極2Aは、アノード基板面に平行な方向において、蛍光体層2Bと略同じ形状および大きさであるか、または、蛍光体層2Bよりも大きい。カソード電極1Aと蛍光体層2Bとの位置関係についても後述する。
【0021】
図1の電界放出型発光装置の発光時において、カソード基板3とアノード基板4との間は、例えば、真空に保たれる。なお、図1においては、装置内部を真空封止するための構造は図示を省略してあり、以下、他の図についても同様である。電圧源(図示せず)によって、カソード電極1Aとアノード電極2Aとの間に電圧が印加されることで、電子放出材料層1Bの中にある電子放出材料に電界が印加され、電子6が放出される。なお、図1の電界放出型発光素子において、電圧源は、図示していないが、例えば図19と同様に、カソード電極1Aとアノード電極2Aとに接続すれば良い。以下、他の電界放出型発光装置を示す図においても、同様である。電圧源からカソード電極1Aまでの配線は、カソード基板3の表面上に配置しても良いし、カソード基板3内を通しても良い。電圧源からアノード電極2Aまでの配線も同様である。電子6は、アノード電極2Aとカソード電極1Aとの間に印加された電界によって加速され、蛍光体層2B中の蛍光体を励起する。励起された蛍光体から光7が放出される。
【0022】
ここで、カソード電極1Aと電子放出材料層1Bとの位置関係について説明する。本発明の第1の実施形態では、電子放出材料層1Bはカソード電極1Aの「周縁」の少なくとも一部を覆う。カソード電極1Aの「周縁」が指す領域を、図3および4を用いて例示する。まず、図3において、カソード電極最端最下点(カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点)9を起点に考えると、カソード電極1Aの「周縁」とは、上記カソード電極最端最下点(最端接点)9近傍の、カソード電極端上面10、カソード電極端側面11およびカソード電極端下面10aの少なくとも一つを指す。ただし、これは上記カソード電極端上面10とカソード電極端側面11を区別し得る明瞭な角部分12が存在する場合である。図4のように、カソード電極最端最下点(カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点)9近傍にカソード電極端上面10とカソード電極端側面11を分ける境界が明瞭に存在しない場合、カソード電極1Aの「周縁」とは、カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点9近傍のカソード電極表面13およびカソード電極端下面13aの少なくとも一方である。このカソード電極最端最下点(最端接点)9近傍のカソード電極表面13は、カソード基板3に略平行な面を含んでも良いし、含まなくとも良い。なお、図3、図4ではカソード電極1Aの端部のうち、図の中心付近のものについて説明したが、図3、図4の左側にある端部など、他の端部が存在する場合についても同様である。カソード電極1Aの「周縁」とは、例えば、以上に説明した領域を指す。
【0023】
また、電子放出材料層1Bがカソード電極1Aの「周縁を覆う(被覆する)」とは、例えば、以下のような状態を指す。まず、カソード電極端上面10とカソード電極端側面11を明確に区別し得る場合、図5(A)のように、その両面に電子放出材料層1Bが接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。さらに、図5(B)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端上面10とのみ接する状態、あるいは図5(C)のように、カソード電極端側面11とのみ接する状態も、上記「周縁を覆う」状態である。なお、図5(A)〜(C)では、カソード電極端下面10aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが存在せず、カソード電極最端最下点9で、カソード電極1Aとカソード基板3とが接している。すなわち、カソード電極最端最下点9は、カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点である。ただし、本発明は、これに限定されない。例えば、図5(D)のように、カソード電極端下面10aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが配置され、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面10aおよびカソード電極最端最下点9と接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。また、図5(E)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面10aおよびカソード電極端側面11と接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。さらに、図5(F)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面10a、カソード電極端側面11およびカソード電極端上面10と接する状態も、上記「周縁を覆う」状態である。一方、カソード電極端上面10とカソード電極端側面11が明瞭に区別できない場合は、図6を用いて説明する。図6(A)、図6(B)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極1Aとカソード基板3の最端接点9近傍のカソード電極表面13に接している状態は、上記「周縁を覆う(被覆する)」状態である。ここで、電子放出材料層1Bは、図6(A)のように、カソード電極1Aが接していないカソード基板4の表面を覆っていても良いし、図6(B)のように、同表面を覆わなくとも良い。なお、図6(A)および(B)では、カソード電極端下面13aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが存在せず、カソード電極最端最下点(カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点)9で、カソード電極1Aとカソード基板3とが接している。ただし、前述のとおり、本発明は、これに限定されない。例えば、図6(C)のように、カソード電極端下面13aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが配置され、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面13aおよびカソード電極最端最下点9と接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。また、図6(D)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面13aおよびカソード電極端表面13と接する状態も、上記「周縁を覆う」状態である。
【0024】
なお、本発明の製造方法において、前記各工程を行う順序は特に限定されず、前記カソード電極形成工程と前記電子放出材料層形成工程との順序も特に限定されない。例えば、前記カソード電極形成工程後に前記電子放出材料層形成工程を行っても良いし、前記電子放出材料層形成工程後に前記カソード電極形成工程を行っても良いし、前記両工程を同時にまたは並行して行っても良い。前記両工程を行う順序は、例えば、カソード電極と電子放出材料層との位置関係(例えば、図5(A)〜(F)および図6(A)〜(D)のいずれか)に応じて適宜選択することができる。
【0025】
続いて、カソード電極1Aと蛍光体層2Bとの位置関係について説明する。本発明の第1の実施形態では、アノード基板4の面に垂直な方向から見た場合に、アノード電極2Aおよび蛍光体層2Bが、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1A周縁の外側の領域を含むように形成される。ここでカソード電極1A周縁の「外側」とは、アノード基板4の面に垂直な方向から見た場合に、カソード電極1Aの端部を起点に、カソード電極1Aを離れる側を指す。これは、図2においては、カソード電極1Aの右長辺のうち、電子放出材料層1Bで覆われた部分の右側である。カソード電極1A周縁の「外側」とは、以上に説明した領域を指す。
【0026】
図1、図2に示した、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1A周縁から外側に蛍光体層2Bが形成される距離(幅)8は、任意であるが、アノード電極とカソード電極との間の距離(以下、「アノード・カソード電極間距離」ということがある)をdとしたときに、カソード電極1A周縁の法線方向に1.5d以上の距離(幅)とすることが好ましい。さらに、5d以上の距離とすると、後述するように、明るく均一な発光を広範囲に得ることができるために、より好ましい。本発明において、カソード電極周縁から外側に蛍光体層が形成される距離(幅)の上限は、特に限定されないが、例えば、100d(アノード・カソード電極間距離の100倍)以下である。なお、本発明において、カソード電極周縁の法線方向とは、アノード基板面に垂直な方向から見たカソード電極の輪郭線の法線方向をいう。
【0027】
本発明の電界放出型発光装置において、電子放出材料層は、カソード電極の周縁すべてを覆っていてもよいが、一部のみを覆っていてもよい。例えば、図1および2では、カソード電極1A周縁のうち、右長辺の一部のみを電子放出材料層1Bが覆っている。図1および2において、装置端部に近いカソード電極1A周縁は電子線を広げる余地がないため、電子放出材料層1Bが覆わないほうが好ましい。一方で、図7のように、カソード電極1A周縁の外側全方向に蛍光体層1Bを設けた場合は、カソード電極1Aの周縁すべてを電子放出材料1Bが覆っていることが好ましい。なお、図7では、電子放出材料層1Bはカソード電極1Aの周縁のみを覆っているが、カソード電極1Aの全表面を覆ってもよい。また、本発明の電界放出型発光装置は、カソード基板に垂直な方向から見て、カソード電極の外側に電子放出材料層が存在することが好ましい。具体的には、例えば、図5(A)、(C)、(E)もしくは(F)、または図6(A)もしくは(D)のとおりである。
【0028】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、カソード電極1A周縁の少なくとも一部を覆うように電子放出材料層1Bが配置されている。さらに、アノード基板面に垂直な方向から見て、アノード電極2Aおよび蛍光体層2Bが、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1A周縁の外側の領域を含むように形成されている。このため、カソード電極1A周縁の近傍では、アノード電極面およびカソード電極面に平行な方向(以下、「面内方向」と呼ぶ)の電界成分が生じる。図8に示した発光装置断面における電位分布の計算例から、この電界を説明する。図8の点線が等電位線であり、付随する数値は電位(単位は任意)である。ここで、アノード電極は電位1(上記と同じ単位)、カソード電極は電位ゼロとした。図8(A)は、上側が全面アノード電極、下側にアノード・カソード電極間距離と同じ幅のカソード電極を配置した場合であり、本発明の電位分布をシミュレートしたものである。図8(B)は、上側が全面アノード電極、下側が全面カソード電極とした場合であり、比較として従来技術の電位分布をシミュレートしたものである。図8(A)から分かる通り、カソード電極周縁近傍では、等電位線がカソード電極面に略垂直な方向に近い。すなわち、カソード電極周縁近傍では、カソード電極面に平行な電界成分が生じていることがわかる。一方、図8(B)では、等電位線が電極面に平行であり、電界は電極面に垂直な方向にのみ生じている。
【0029】
カソード周縁1A近傍に存在する電子放出材料から放出された電子は、面内方向の電界成分によって加速される。すると電子線が面内方向に広がるため、アノード2に到達した際に、電子線の面内方向の分布が従来技術に比べて均一である。従って、従来技術に比べて均一な発光が実現する。
【0030】
このように、本発明の電界放出型発光素子では、電子放出材料層が、カソード電極周縁の少なくとも一部を覆うように配置される。さらに、電極面に垂直な方向から見た場合に、アノード電極および蛍光体層が、カソード電極の外側の領域を含むように形成される。本発明によれば、アノード電極とカソード電極との間に発生する、電極面に平行な方向の電界によって、電子線を同方向に広げることができ、均一な発光を実現できる。なお、電界放出型発光素子においては、例えば、カソード電極と略面内方向に並んだゲート電極により電子を引き出す(電子線を電極面方向に広げる)ことが行われている(特開2010−010120号公報および特開2002−150925号公報)。これに対し、本発明の電界放出型発光素子は、ゲート電極を設けずに、前記のとおり電子線を電極面方向に広げることが可能である。このため、本発明の電界放出型発光素子は、ゲート電極を設ける場合と比較して、構造および製造プロセスが格段に簡単である。さらに、本発明の電界放出型発光装置によれば、例えば、後述の実施例のように、顕著に大きな電子線の広がりを得ることもできる。このように、ゲート電極を用いない簡単な構造(または製造プロセス)により、顕著に大きな電子線の広がりを得ることができるという効果は、従来技術からは予測困難な有利な効果である。
【0031】
なお、カソード電極1Aには、Al、Cuなどの金属、ITO、ZnO、TiO2などの金属酸化物、およびその他任意の導電性物質を用いることができる。カソード電極1Aは、例えば、蒸着、スパッタ、めっき等により形成することができる。この際、パターニングには、例えば、フォトリソグラフィやメタルマスクを用いることができる。または、カソード電極1Aは、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷方法によっても形成することができるが、これらに限られない。
【0032】
電子放出材料層1Bには、電子放出材料を含有させる。前記電子放出材料は特に限定されないが、アスペクト比が高いために電界集中が起こりやすく、かつ導電性を有するものを用いることが好ましい。前記電子放出材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体、カーボンファイバー、カーボンスティックなどの炭素材料、またはこれらの混合物を用いることが可能である。このうち、カーボンナノチューブは特にアスペクト比が高く、耐電流密度性が高いために好ましい。カーボンナノチューブは、例えば0.4ナノメートルから数十ナノメートル程度の直径を持つ炭素の筒状構造体であり、高いアスペクト比および高い耐電流密度といった利点を有する。カーボンナノチューブは、例えば、粘着テープによる剥離等の方法によって起毛させることで電界放出しやすくなる。カーボンナノチューブとしては、単層・2層・多層のいずれのカーボンナノチューブを用いることもできる。特に低電圧で電子を放出させる場合は単層が好ましく、また特に耐久性をより上げたい場合は多層とすることが好ましく、低電圧で電子を放出させ、かつ耐久性も上げたい場合は2層をとすることができる。さらに電子放出材料としては、金属ナノワイヤーを用いることもできる。同ワイヤーの金属の材料としては、Ni、Co、Fe、Auを用いることができるが、これらに限定されない。さらに電子放出材料としては、金属ナノチューブを用いることもできる。同チューブの金属の材料としては、Au、Ag、Pt、Rh、Irを用いることができるが、これらに限定されない。
【0033】
電子放出材料としてカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、またはこれらの複合体、混合体等を用いる場合、電子放出材料をペーストやインクに含有させ、印刷により形成することができる。このように、ペースト化および印刷によって電子放出材料層を形成すれば、低コスト化および大面積化が容易である。ペーストを印刷する場合、ペースト中にはエチルセルロースなどの有機バインダーや、テルピネオールなどの溶媒を混合することも可能である。さらに、固着を補助するためにガラスフリットや金属、金属酸化物なども含有させることができる。印刷後には、焼成処理によって固着を促進することも可能である。焼成環境は、例えば、大気などの酸素含有雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空とすることができる。カソード電極周縁を覆うように電子放出材料含有ペーストやインクを印刷することで、本発明の構造を作製できる。
【0034】
また電子放出材料をカソード電極周縁において直接合成することで、電子放出材料層を形成することもできる。例えば、カーボンナノチューブの場合、化学気相成長法によって直接合成することができる。この場合、例えば、まず、Fe、Ni、Co、Moなどのカーボンナノチューブ成長触媒をカソード電極周縁に配置する。その後、例えば、エチレン・アセチレンなどのガスやエタノール、メタノール、ベンゼン、トルエンなどの蒸気を炭素源として流し、高温にさらすことでカーボンナノチューブを成長させることができる。この際、希釈ガスとして、例えば、アルゴン、窒素、水素などを用いることができる。
【0035】
アノード電極2Aには、例えば、ITO、ZnO、TiO2などの金属酸化物、あるいはカーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素電極、といった透明電極を用いることができる。蛍光体層2Bには、例えば、電子線励起発光の蛍光体を用いることができる。なお、図1〜6では、蛍光体層が、アノード電極のカソード電極側表面に配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の電界放出型発光素子において、蛍光体層は、アノード電極のアノード基板側表面(すなわち、アノード電極とアノード基板との間)に配置されていても良い。言い換えると、例えば、電子線が通過できる程度の厚みを持つ電極を蛍光体層のカソード電極側表面に形成し(メタルバックということがある)、これをアノード電極として利用する場合は、必ずしも、蛍光体層のアノード基板側にアノード電極は必要でない。なお、前記蛍光体層は、前記アノード電極のカソード電極側表面およびアノード基板側表面の両面に配置しても良い。
【0036】
カソード基板3には、例えば、ガラス基板や石英基板、非ドープのシリコン基板など、電気的に絶縁性を有するものを用いることができる。アノード基板4には、例えば、ガラス基板や石英基板などの透明な基板が用いられるが、これらに限定されない。
【0037】
アノード・カソード電極間距離dは、特に限定されないが、0.1mmから300mmであることが好ましく、より好ましくは1mmから10mmである。また、本発明の電界放出型発光装置において、カソード基板3とアノード基板4の間は、1.0×10−3Pa以下の真空度とすることが好ましく、1.0×10−4Pa以下の真空度とすることがより好ましい。前記真空度の下限値は、特に限定されないが、例えば、0Pa以上または0Paを超える値である。
【0038】
[実施形態2]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図9は、本実施形態の電界放出型発光装置の一例の構造を模式的に示す断面図であり、図10は、平面図である。この装置を構成する要素は図1および2と同様であり、同一の符号は、同様の構成要素を示す。第2の実施形態では、複数の帯状のカソード電極1Aが略平行に配置され、電子放出材料層1Bがカソード電極1A周縁の少なくとも一部を覆っており、各カソード電極の隣接する周縁間の距離がアノード・カソード電極間距離の1.5倍以上となっている。また、アノード基板4に垂直な方向から見て、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1Aの隣接する周縁間を含むように蛍光体層2Bが形成されている。
【0039】
カソード電極の隣接する周縁から放出される電子線は、面内方向にそれぞれ異なる広がり方をする。これらの電子線が重なるために、第1の実施形態よりもさらに電子線のムラが減少し、均一な発光が実現する。さらに、複数の電極があることで、第1の実施形態よりも発光装置を高輝度化することも大面積化することもできる。
【0040】
また、第1の実施形態と同様に、装置端部に近いカソード電極1A周縁は電子線を広げる余地がないため、電子放出材料層1Bで覆わないほうが好ましい。図9、図10では、カソード電極1A周縁のうち、装置端部から遠い部分のみ電子放出材料層1Bで覆われている。一方で、第1の実施形態と同様に、カソード電極1A周縁の外側全方向に電子放出材料層1Bを設け、カソード電極1Aの周縁すべてを電子放出材料層1Bが覆っても良い。
【0041】
さらに、図9、図10ではカソード電極を2つしか描いていないが、図11のように3つ以上のカソード電極が存在してもよい。こうすることで、大面積の発光装置を作製できる。さらに、例えば、図12の平面図に示すように、複数のカソード電極1Aを電気的に連結しても良い。なお、図12では、複数のカソード電極1Aが櫛の歯状に配置され、それらが連結された櫛状のカソード電極を形成しているが、カソード電極の形状は、これに限定されず、任意である。
【0042】
カソード電極の隣接する周縁間の間隔については特に限定されないが、カソード電極周縁への電界集中が弱くなり、電子線が面内方向に広がりにくくなることを防止するために、前記間隔を小さくし過ぎないことが好ましい。図13は、カソード電極の長手方向に沿って見た電界放出装置の断面について、電界分布を計算した結果を示すグラフである。カソード電極の短手方向の幅はアノード・カソード電極間距離dと同じとし、アノード電極はアノード基板全面に形成されているとした。同図において、カソード電極の隣接する周縁間の間隔を0.5d,d,1.5d,2d,3dと変えた場合の計算結果を示す。図示のとおり、前記間隔が3dの場合、カソード電極周縁に面内方向の強い電界が生じているが、前記間隔が0.5dの場合、面内方向の電界が比較的弱いことがわかる。このように、同図においては、カソード電極の隣接する周縁間の間隔を大きくするほど、面内方向の電界が強くなる傾向が伺える。ただし、図13は例示であって、本発明を限定するものではない。
【0043】
図14は、図13の電位分布に基づき、カソード基板表面近傍における面内方向の電界強度を計算した結果を示すグラフである。図14の横軸は図13と同様であり、縦軸は図13における面内方向の電界強度を表している。図14から、カソード電極の隣接する周縁間の間隔が1.5d以上の場合、面内方向の電界が特に大きい。従って、カソード電極の隣接する周縁間の間隔は1.5d以上確保することが好ましい。さらに、同間隔は、5d以上とすることがより好ましい。これは、同間隔が広いほど、より電子線が面内方向に広がり発光が均一化しやすいため、また後述するように、カソード電極周縁から5dまでの範囲は十分な明るさを保って均一な発光が得られるためである。本発明において、カソード電極の隣接する周縁間の距離の上限は、特に限定されないが、例えば、100d(アノード・カソード電極間距離の100倍)以下である。
【0044】
第2の実施形態では、さらに、カソード電極1Aの短手方向の幅がアノード・カソード電極間距離d以下であることが好ましい。カソード電極内部はカソード電極周縁近傍に比べて電界が弱く、電子を比較的放出しにくいため、上記の幅が大きいと、カソード電極内部の直上の蛍光体に電子が到達しない。電子線の広がりを考慮すると、電子の到達しない蛍光体が生じないためには、上記の幅がd以下であることが好ましい。本発明において、カソード電極の短手方向の幅の下限は、特に限定されないが、例えば、0.001d(アノード・カソード電極間距離の0.001倍)以上である。
【0045】
また、図15および16にそれぞれ示すように、第1の実施形態、第2の実施形態ともに、カソード基板3のうち、カソード電極1Aに接していない表面に、帯電防止膜14を有することが好ましい。電子線が面内方向に広がると、カソード基板3に電子が衝突し、カソード基板3が帯電する可能性がある。帯電は異常放電を引き起こしてしまうので、前記のように、カソード基板3に帯電防止膜を形成することが好ましい。前記帯電防止膜は、特に限定されないが、カソード電極1A周縁への電界集中を弱めないよう、シート抵抗1MΩ以上の高抵抗な膜であることが好ましい。また、同膜の端部は電子放出材料層1Bと接していても良いし、カソード電極1Aと接していても良い。前記帯電防止膜の抵抗値の上限は、特に限定されないが、例えば、シート抵抗1GΩ以下である。
【実施例】
【0046】
続いて、具体的な実施例を用いて、本発明の電界放出型発光装置を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されない。
【0047】
まず、電子放出材料として多層カーボンナノチューブを用い、カーボンナノチューブ含有ペーストを作製した。前記ペーストの組成は、カーボンナノチューブ60mg、セルロース系有機バインダー120mg、ガラスフリット420mg、およびαテルピネオール6mlとした。これらを混合後、7時間機械的混練した。カソード基板にはガラス板を用い、カソード電極にはフォトリソグラフィによりパターニングしたITOを用いた。さらに、カソード電極周縁を覆うように、上記ペーストをスクリーン印刷した。なお、比較例として、カソード電極周縁を覆わないようにスクリーン印刷したカソードも別途用意した。その後、有機バインダーとαテルピネオールを除去するために、窒素中500℃で1時間焼成した。次に、カソードに粘着テープを貼り付け、剥離することでカーボンナノチューブの起毛を行った。これによりカーボンナノチューブ1本1本への電界集中を起こりやすくした。
【0048】
アノード基板にはガラス板を用い、アノード電極にはフォトリソグラフィによりパターニングしたITOを用いた。同ITOの上に、スクリーン印刷により蛍光体層を形成した。そして、前記カソード基板および前記アノード基板の両基板を、カソード電極形成面とアノード電極形成面とが対向するように、1mmの間隙を設けて略平行に設置した。以上のようにして、本実施例の電界放出型発光装置を製造した。なお、本実施例の電界放出型発光装置においては、蛍光体層をカソード電極直上およびカソード電極周縁から外側に8mmの範囲まで設けた。また、アノード電極は、カソード電極直上およびカソード電極周縁から外側に12mmの範囲まで設けた。比較例の電界放出型発光装置においては、カソード電極直上に蛍光体を設けた。またアノード電極は蛍光体の外側4mmの範囲まで設けた。
【0049】
さらに、前記のとおりアノード基板およびカソード基板を対向させて配置した実施例および比較例の電界放出型発光装置を、10−5Pa台の真空中に置いた。この条件下で、アノード電極およびカソード電極の両電極間に1kV程度の電圧を印加し、発光パターンを評価した。
【0050】
図17に、カソード電極周縁を覆わない比較例の電界放出型発光装置の発光写真を示す。図示のとおり、白色が発光を表している。1つ1つの発光は点状であり、狭い範囲にとどまっていた。
【0051】
図18に、カソード電極周縁を覆った本発明の電界放出型発光装置の発光写真を示す。図示のとおり、同図の中心を上下にカソード電極周縁が走っており、左側にカソード電極内部が存在している。カソード周縁から外側は、広く発光している。同図に示す通り、カソード電極周縁から外側に少なくとも5mmの範囲、すなわちアノード・カソード電極間距離の5倍の範囲は均一に、かつ明るく発光した。さらに、カソード電極周縁から外側に8mmの範囲、すなわちアノード・カソード電極間距離の8倍の範囲まで、発光が確認できた。このように、本実施例では、比較例の電界放出型発光装置(従来技術)に比べて顕著に発光が均一化しており、当業者の技術常識に基づく予想をはるかに超える有利な効果を示した。
【0052】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0053】
(付記1)
カソード基板とアノード基板とが対向して略平行に配置され、
前記カソード基板の、前記アノード基板と対向する面側に、カソード電極および電子放出材料層が配置され、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆され、
前記アノード基板の、前記カソード基板と対向する面側に、アノード電極および蛍光体層が配置され、
前記蛍光体層は、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に配置され、
前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置され、
前記カソード基板および前記アノード基板上に、ゲート電極を有しないことを特徴とする、電界放出型発光装置。
【0054】
(付記2)
前記蛍光体層が、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層で被覆された前記カソード電極周縁の外側に突出しており、前記突出した部分の幅が、前記カソード電極周縁の法線方向に、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上の幅であることを特徴とする付記1記載の電界放出型発光装置。
【0055】
(付記3)
前記カソード電極が、帯状かつ複数であり、
前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向して配置され、
隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上であり、
前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されていることを特徴とする付記1または2記載の電界放出型発光装置。
【0056】
(付記4)
前記カソード電極の短手方向の幅が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離以下であることを特徴とする付記3記載の電界放出型発光装置。
【0057】
(付記5)
前記カソード基板の、前記アノード電極と対向する面側における前記カソード電極の外側に、帯電防止膜を有することを特徴とする、付記1から4のいずれかに記載の電界放出型発光装置。
【0058】
(付記6)
前記帯電防止膜の抵抗値が、シート抵抗1MΩ以上であることを特徴とする付記5記載の電界放出型発光装置。
【0059】
(付記7)
前記電子放出材料層が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、付記1から6のいずれかに記載の電界放出型発光装置。
【0060】
(付記8)
カソード基板およびアノード基板を準備する基板準備工程と、
前記カソード基板の片面側に、カソード電極を形成するカソード電極形成工程と、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が前記電子放出材料層により被覆されるように、前記電子放出材料層を形成する電子放出材料層形成工程と、
前記アノード基板の片面側に、アノード電極を形成するアノード電極形成工程と、
前記蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記カソード基板および前記アノード基板を、前記カソード電極形成面と前記アノード電極形成面とが対向するように略平行に配置する基板配置工程とを含み、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層を、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に形成し、
前記カソード電極形成工程、前記電子放出材料層形成工程および前記蛍光体層形成工程において、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置されるように、前記カソード電極、前記電子放出材料層および前記蛍光体層を形成することを特徴とする付記1記載の電界放出型発光装置の製造方法。
【0061】
(付記9)
前記電界放出型発光装置が、付記2記載の電界放出型発光装置であり、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層が、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層で被覆された前記カソード電極周縁の外側に突出し、前記突出した部分の幅が、前記カソード電極周縁の法線方向に、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上の幅となるように前記蛍光体層を形成することを特徴とする付記8記載の製造方法。
【0062】
(付記10)
前記電界放出型発光装置が、付記3記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード電極形成工程において、前記カソード電極を、帯状にかつ複数形成するとともに、前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向し、かつ、隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上となるように配置し、
前記電子放出材料層形成工程において、前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されるように前記電子放出材料層を形成することを特徴とする付記8または9記載の製造方法。
【0063】
(付記11)
前記電界放出型発光装置が、付記4記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード電極形成工程において、前記カソード電極の短手方向の幅が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離以下となるように前記カソード電極を形成することを特徴とする付記10記載の製造方法。
【0064】
(付記12)
前記電界放出型発光装置が、付記5記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード基板の、前記アノード電極と対向する面側における前記カソード電極の外側に、帯電防止膜を形成する帯電防止膜形成工程をさらに含むことを特徴とする、付記8から11のいずれかに記載の製造方法。
【0065】
(付記13)
前記電界放出型発光装置が、付記6記載の電界放出型発光装置であり、
前記帯電防止膜形成工程において、前記帯電防止膜の抵抗値が、シート抵抗1MΩ以上となるように形成することを特徴とする付記12記載の製造方法。
【0066】
(付記14)
前記電界放出型発光装置が、付記7記載の電界放出型発光装置であり、
前記電子放出材料層形成工程が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むペーストを、前記カソード電極周縁の少なくとも一部を被覆するように印刷する印刷工程を含むことを特徴とする、付記8から13のいずれかに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0067】
1 カソード
1A カソード電極
1B 電子放出材料層
2 アノード
2A アノード電極
2B 蛍光体層
3 カソード基板
4 アノード基板
5 電圧源
6 電子
7 光
8 カソード電極周縁から外側に蛍光体層が形成される距離
9 カソード電極最端最下点(カソード電極とカソード基板の最端接点)
10 カソード電極端上面
10a カソード電極端下面
11 カソード電極端側面
12 カソード電極端角部分
13 カソード電極端表面
13a カソード電極端下面
14 帯電防止膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出型発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出素子を利用した、フィールドエミッションランプは、次世代光源として期待されている。その理由として、省電力であること、高輝度な面光源を形成可能であること、水銀レスであることなどが挙げられる。
【0003】
電界放出素子においては、カソード電極とアノード電極を有し、カソード電極とアノード電極との間に電界を印加することで、カソード電極に配置した電子放出材料から電子を放出させる。電子放出材料は、一般に高いアスペクト比を有し、その先端に電界が集中することで電子を放出する。例えば、電界放出素子のアノード電極上に電子線励起発光の蛍光体を配置することで、発光装置を作製することができる。さらに、平面状のカソードとアノードとを対向させることで、面で発光する発光装置を作製することもできる。
【0004】
前記電子放出材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤー、スピント型エミッター等の、アスペクト比が高い導電性構造体が用いられる。例えば、特許文献1では、カーボンナノチューブ含有層に積層構造を設けてその界面で剥離を起こし、カーボンナノチューブを平坦な面上に起毛させることで、発光点を増加させることが記載されている。
【0005】
特許文献1等に記載されている電界放出型発光装置の例について、図面を用いて説明する。図19は、前記電界放出型発光装置の断面図である。図示のとおり、この装置は、カソード基板3とアノード基板4が略平行に対向して配置され、カソード基板3上にカソード1が、アノード基板4上にアノード2が形成されている。
【0006】
カソード1は、カソード電極1Aと電子放出材料層1Bから構成されている。電子放出材料層1Bは、カソード電極1Aのアノード電極2A側の表面に形成されている。またカソード基板面内方向において、カソード電極1Aは、電子放出材料層1Bよりも大きい面積を有する。
【0007】
一方、アノード2は、アノード電極2Aと蛍光体層2Bから構成されている。蛍光体層2Bは、アノード電極2Aのカソード電極1A側の表面に形成されている。また、アノード基板面内方向において、アノード電極2Aは、蛍光体層2Bと略同じ形状および面積を有するか、または、蛍光体層2Bよりも大きい面積を有する。
【0008】
図19の装置においては、装置内部を真空封止するための手段(図示せず)により、カソード基板およびアノード基板の両基板間が真空に保たれる。さらに、電圧源5によって、カソード電極1Aとアノード電極2Aとの間に電圧が印加されることで、電子放出材料層1Bの中にある電子放出材料に電界が印加され、電子6が放出される。電子6は、カソード・アノード電極面に略垂直な方向に印加された電界によって加速され、蛍光体層2B中の蛍光体を励起する。そして、励起された前記蛍光体から光7が放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−287473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような電界放出型発光装置においては、電子線の軌道を決める電界が、カソード電極面およびアノード電極面に略垂直な方向に向いているために、電極面に平行な方向への電子線の広がりが小さい。そのために、発光パターンが、点状の狭い領域に限られ、発光が不均一となってしまうおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、発光が均一化された電界放出型発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の電界放出型発光装置は、
カソード基板とアノード基板とが対向して略平行に配置され、
前記カソード基板の、前記アノード基板と対向する面側に、カソード電極および電子放出材料層が配置され、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆され、
前記アノード基板の、前記カソード基板と対向する面側に、アノード電極および蛍光体層が配置され、
前記蛍光体層は、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に配置され、
前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置され、
前記カソード基板および前記アノード基板上に、ゲート電極を有しないことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による、前記本発明の電界放出型発光装置の製造方法は、
カソード基板およびアノード基板を準備する基板準備工程と、
前記カソード基板の片面側に、カソード電極を形成するカソード電極形成工程と、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が前記電子放出材料層により被覆されるように、前記電子放出材料層を形成する電子放出材料層形成工程と、
前記アノード基板の片面側に、アノード電極を形成するアノード電極形成工程と、
前記蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記カソード基板および前記アノード基板を、前記カソード電極形成面と前記アノード電極形成面とが対向するように略平行に配置する基板配置工程とを含み、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層を、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に形成し、
前記カソード電極形成工程、前記電子放出材料層形成工程および前記蛍光体層形成工程において、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置されるように、前記カソード電極、前記電子放出材料層および前記蛍光体層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光が均一化された電界放出型発光装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態における電界放出型発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の電界放出型発光装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の電界放出型発光装置におけるカソード電極周縁の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の電界放出型発光装置におけるカソード電極周縁の構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【図5A−C】図5(A)〜(C)は、それぞれ、本発明の電界放出型発光装置における、電子放出材料層に覆われたカソード電極周縁の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図5D−F】図5(D)〜(F)は、それぞれ、本発明の電界放出型発光装置における、電子放出材料層に覆われたカソード電極周縁の構造の別の例を模式的に示す断面図である。
【図6】図6(A)〜(D)は、それぞれ、本発明の電界放出型発光装置における、電子放出材料層に覆われたカソード電極周縁の構造のさらに別の例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における電界放出型発光装置の構造の別の例を模式的に示す平面図である。
【図8】図8(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態の電界放出型発光装置における電位分布の計算結果の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態における電界放出型発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図10】図9の電界放出型発光装置の構造を模式的に示す平面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態における電界放出型発光装置の構造の別の例を模式的に示す平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における電界放出型発光装置の構造のさらに別の例を模式的に示す平面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の電界放出型発光装置における電位分布の計算結果の一例を示すグラフである。
【図14】図13の電位分布に基づき、カソード基板表面近傍における面内方向の電界強度を計算した結果を示すグラフである。
【図15】本発明の第1の実施形態の電界放出型発光装置において、帯電防止膜を備えた構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の電界放出型発光装置において、帯電防止膜を備えた構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図17】比較例の電界放出型発光装置の発光写真である。
【図18】実施例の電界放出型発光装置の発光写真である。
【図19】本発明と関連する電界放出型発光装置の構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0017】
[実施形態1]
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1の断面図に、本実施形態の電界放出型発光装置の構造の一例を模式的に示す。図2は、図1の電界放出型発光装置のアノード基板4の面に垂直な方向から見た平面図である。カソード電極1Aは、図2では長方形の形状としているが、これに限定されず、円形または三角形など、任意の形状とすることができる。装置を構成する要素は、図19の電界放出型発光装置と同様である。図19と同一の符号は、同様の構成要素を示す。
【0018】
図1に示す通り、この電界放出型発光装置において、カソード基板3とアノード基板4とは、略平行に対向するように配置されている。カソード基板3上にはカソード1が、アノード基板4上にはアノード2が、それぞれ形成されている。
【0019】
カソード1はカソード電極1Aと電子放出材料層1Bから構成されている。カソード電極1Aと電子放出材料層1Bとの位置関係については後述する。
【0020】
一方、アノード2はアノード電極2Aと蛍光体層2Bから構成されている。蛍光体層2Bはアノード電極2Aのカソード電極1A側の表面に形成されている。蛍光体層2Bは、アノード基板面に垂直な方向から見て、アノード電極2A周縁の内側に配置されている。すなわち、アノード電極2Aは、アノード基板面に平行な方向において、蛍光体層2Bと略同じ形状および大きさであるか、または、蛍光体層2Bよりも大きい。カソード電極1Aと蛍光体層2Bとの位置関係についても後述する。
【0021】
図1の電界放出型発光装置の発光時において、カソード基板3とアノード基板4との間は、例えば、真空に保たれる。なお、図1においては、装置内部を真空封止するための構造は図示を省略してあり、以下、他の図についても同様である。電圧源(図示せず)によって、カソード電極1Aとアノード電極2Aとの間に電圧が印加されることで、電子放出材料層1Bの中にある電子放出材料に電界が印加され、電子6が放出される。なお、図1の電界放出型発光素子において、電圧源は、図示していないが、例えば図19と同様に、カソード電極1Aとアノード電極2Aとに接続すれば良い。以下、他の電界放出型発光装置を示す図においても、同様である。電圧源からカソード電極1Aまでの配線は、カソード基板3の表面上に配置しても良いし、カソード基板3内を通しても良い。電圧源からアノード電極2Aまでの配線も同様である。電子6は、アノード電極2Aとカソード電極1Aとの間に印加された電界によって加速され、蛍光体層2B中の蛍光体を励起する。励起された蛍光体から光7が放出される。
【0022】
ここで、カソード電極1Aと電子放出材料層1Bとの位置関係について説明する。本発明の第1の実施形態では、電子放出材料層1Bはカソード電極1Aの「周縁」の少なくとも一部を覆う。カソード電極1Aの「周縁」が指す領域を、図3および4を用いて例示する。まず、図3において、カソード電極最端最下点(カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点)9を起点に考えると、カソード電極1Aの「周縁」とは、上記カソード電極最端最下点(最端接点)9近傍の、カソード電極端上面10、カソード電極端側面11およびカソード電極端下面10aの少なくとも一つを指す。ただし、これは上記カソード電極端上面10とカソード電極端側面11を区別し得る明瞭な角部分12が存在する場合である。図4のように、カソード電極最端最下点(カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点)9近傍にカソード電極端上面10とカソード電極端側面11を分ける境界が明瞭に存在しない場合、カソード電極1Aの「周縁」とは、カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点9近傍のカソード電極表面13およびカソード電極端下面13aの少なくとも一方である。このカソード電極最端最下点(最端接点)9近傍のカソード電極表面13は、カソード基板3に略平行な面を含んでも良いし、含まなくとも良い。なお、図3、図4ではカソード電極1Aの端部のうち、図の中心付近のものについて説明したが、図3、図4の左側にある端部など、他の端部が存在する場合についても同様である。カソード電極1Aの「周縁」とは、例えば、以上に説明した領域を指す。
【0023】
また、電子放出材料層1Bがカソード電極1Aの「周縁を覆う(被覆する)」とは、例えば、以下のような状態を指す。まず、カソード電極端上面10とカソード電極端側面11を明確に区別し得る場合、図5(A)のように、その両面に電子放出材料層1Bが接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。さらに、図5(B)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端上面10とのみ接する状態、あるいは図5(C)のように、カソード電極端側面11とのみ接する状態も、上記「周縁を覆う」状態である。なお、図5(A)〜(C)では、カソード電極端下面10aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが存在せず、カソード電極最端最下点9で、カソード電極1Aとカソード基板3とが接している。すなわち、カソード電極最端最下点9は、カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点である。ただし、本発明は、これに限定されない。例えば、図5(D)のように、カソード電極端下面10aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが配置され、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面10aおよびカソード電極最端最下点9と接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。また、図5(E)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面10aおよびカソード電極端側面11と接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。さらに、図5(F)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面10a、カソード電極端側面11およびカソード電極端上面10と接する状態も、上記「周縁を覆う」状態である。一方、カソード電極端上面10とカソード電極端側面11が明瞭に区別できない場合は、図6を用いて説明する。図6(A)、図6(B)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極1Aとカソード基板3の最端接点9近傍のカソード電極表面13に接している状態は、上記「周縁を覆う(被覆する)」状態である。ここで、電子放出材料層1Bは、図6(A)のように、カソード電極1Aが接していないカソード基板4の表面を覆っていても良いし、図6(B)のように、同表面を覆わなくとも良い。なお、図6(A)および(B)では、カソード電極端下面13aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが存在せず、カソード電極最端最下点(カソード電極1Aとカソード基板3の最端接点)9で、カソード電極1Aとカソード基板3とが接している。ただし、前述のとおり、本発明は、これに限定されない。例えば、図6(C)のように、カソード電極端下面13aとカソード基板3との間に電子放出材料層1Bが配置され、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面13aおよびカソード電極最端最下点9と接する状態は、上記「周縁を覆う」状態である。また、図6(D)のように、電子放出材料層1Bがカソード電極端下面13aおよびカソード電極端表面13と接する状態も、上記「周縁を覆う」状態である。
【0024】
なお、本発明の製造方法において、前記各工程を行う順序は特に限定されず、前記カソード電極形成工程と前記電子放出材料層形成工程との順序も特に限定されない。例えば、前記カソード電極形成工程後に前記電子放出材料層形成工程を行っても良いし、前記電子放出材料層形成工程後に前記カソード電極形成工程を行っても良いし、前記両工程を同時にまたは並行して行っても良い。前記両工程を行う順序は、例えば、カソード電極と電子放出材料層との位置関係(例えば、図5(A)〜(F)および図6(A)〜(D)のいずれか)に応じて適宜選択することができる。
【0025】
続いて、カソード電極1Aと蛍光体層2Bとの位置関係について説明する。本発明の第1の実施形態では、アノード基板4の面に垂直な方向から見た場合に、アノード電極2Aおよび蛍光体層2Bが、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1A周縁の外側の領域を含むように形成される。ここでカソード電極1A周縁の「外側」とは、アノード基板4の面に垂直な方向から見た場合に、カソード電極1Aの端部を起点に、カソード電極1Aを離れる側を指す。これは、図2においては、カソード電極1Aの右長辺のうち、電子放出材料層1Bで覆われた部分の右側である。カソード電極1A周縁の「外側」とは、以上に説明した領域を指す。
【0026】
図1、図2に示した、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1A周縁から外側に蛍光体層2Bが形成される距離(幅)8は、任意であるが、アノード電極とカソード電極との間の距離(以下、「アノード・カソード電極間距離」ということがある)をdとしたときに、カソード電極1A周縁の法線方向に1.5d以上の距離(幅)とすることが好ましい。さらに、5d以上の距離とすると、後述するように、明るく均一な発光を広範囲に得ることができるために、より好ましい。本発明において、カソード電極周縁から外側に蛍光体層が形成される距離(幅)の上限は、特に限定されないが、例えば、100d(アノード・カソード電極間距離の100倍)以下である。なお、本発明において、カソード電極周縁の法線方向とは、アノード基板面に垂直な方向から見たカソード電極の輪郭線の法線方向をいう。
【0027】
本発明の電界放出型発光装置において、電子放出材料層は、カソード電極の周縁すべてを覆っていてもよいが、一部のみを覆っていてもよい。例えば、図1および2では、カソード電極1A周縁のうち、右長辺の一部のみを電子放出材料層1Bが覆っている。図1および2において、装置端部に近いカソード電極1A周縁は電子線を広げる余地がないため、電子放出材料層1Bが覆わないほうが好ましい。一方で、図7のように、カソード電極1A周縁の外側全方向に蛍光体層1Bを設けた場合は、カソード電極1Aの周縁すべてを電子放出材料1Bが覆っていることが好ましい。なお、図7では、電子放出材料層1Bはカソード電極1Aの周縁のみを覆っているが、カソード電極1Aの全表面を覆ってもよい。また、本発明の電界放出型発光装置は、カソード基板に垂直な方向から見て、カソード電極の外側に電子放出材料層が存在することが好ましい。具体的には、例えば、図5(A)、(C)、(E)もしくは(F)、または図6(A)もしくは(D)のとおりである。
【0028】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、カソード電極1A周縁の少なくとも一部を覆うように電子放出材料層1Bが配置されている。さらに、アノード基板面に垂直な方向から見て、アノード電極2Aおよび蛍光体層2Bが、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1A周縁の外側の領域を含むように形成されている。このため、カソード電極1A周縁の近傍では、アノード電極面およびカソード電極面に平行な方向(以下、「面内方向」と呼ぶ)の電界成分が生じる。図8に示した発光装置断面における電位分布の計算例から、この電界を説明する。図8の点線が等電位線であり、付随する数値は電位(単位は任意)である。ここで、アノード電極は電位1(上記と同じ単位)、カソード電極は電位ゼロとした。図8(A)は、上側が全面アノード電極、下側にアノード・カソード電極間距離と同じ幅のカソード電極を配置した場合であり、本発明の電位分布をシミュレートしたものである。図8(B)は、上側が全面アノード電極、下側が全面カソード電極とした場合であり、比較として従来技術の電位分布をシミュレートしたものである。図8(A)から分かる通り、カソード電極周縁近傍では、等電位線がカソード電極面に略垂直な方向に近い。すなわち、カソード電極周縁近傍では、カソード電極面に平行な電界成分が生じていることがわかる。一方、図8(B)では、等電位線が電極面に平行であり、電界は電極面に垂直な方向にのみ生じている。
【0029】
カソード周縁1A近傍に存在する電子放出材料から放出された電子は、面内方向の電界成分によって加速される。すると電子線が面内方向に広がるため、アノード2に到達した際に、電子線の面内方向の分布が従来技術に比べて均一である。従って、従来技術に比べて均一な発光が実現する。
【0030】
このように、本発明の電界放出型発光素子では、電子放出材料層が、カソード電極周縁の少なくとも一部を覆うように配置される。さらに、電極面に垂直な方向から見た場合に、アノード電極および蛍光体層が、カソード電極の外側の領域を含むように形成される。本発明によれば、アノード電極とカソード電極との間に発生する、電極面に平行な方向の電界によって、電子線を同方向に広げることができ、均一な発光を実現できる。なお、電界放出型発光素子においては、例えば、カソード電極と略面内方向に並んだゲート電極により電子を引き出す(電子線を電極面方向に広げる)ことが行われている(特開2010−010120号公報および特開2002−150925号公報)。これに対し、本発明の電界放出型発光素子は、ゲート電極を設けずに、前記のとおり電子線を電極面方向に広げることが可能である。このため、本発明の電界放出型発光素子は、ゲート電極を設ける場合と比較して、構造および製造プロセスが格段に簡単である。さらに、本発明の電界放出型発光装置によれば、例えば、後述の実施例のように、顕著に大きな電子線の広がりを得ることもできる。このように、ゲート電極を用いない簡単な構造(または製造プロセス)により、顕著に大きな電子線の広がりを得ることができるという効果は、従来技術からは予測困難な有利な効果である。
【0031】
なお、カソード電極1Aには、Al、Cuなどの金属、ITO、ZnO、TiO2などの金属酸化物、およびその他任意の導電性物質を用いることができる。カソード電極1Aは、例えば、蒸着、スパッタ、めっき等により形成することができる。この際、パターニングには、例えば、フォトリソグラフィやメタルマスクを用いることができる。または、カソード電極1Aは、スクリーン印刷、インクジェットなどの印刷方法によっても形成することができるが、これらに限られない。
【0032】
電子放出材料層1Bには、電子放出材料を含有させる。前記電子放出材料は特に限定されないが、アスペクト比が高いために電界集中が起こりやすく、かつ導電性を有するものを用いることが好ましい。前記電子放出材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体、カーボンファイバー、カーボンスティックなどの炭素材料、またはこれらの混合物を用いることが可能である。このうち、カーボンナノチューブは特にアスペクト比が高く、耐電流密度性が高いために好ましい。カーボンナノチューブは、例えば0.4ナノメートルから数十ナノメートル程度の直径を持つ炭素の筒状構造体であり、高いアスペクト比および高い耐電流密度といった利点を有する。カーボンナノチューブは、例えば、粘着テープによる剥離等の方法によって起毛させることで電界放出しやすくなる。カーボンナノチューブとしては、単層・2層・多層のいずれのカーボンナノチューブを用いることもできる。特に低電圧で電子を放出させる場合は単層が好ましく、また特に耐久性をより上げたい場合は多層とすることが好ましく、低電圧で電子を放出させ、かつ耐久性も上げたい場合は2層をとすることができる。さらに電子放出材料としては、金属ナノワイヤーを用いることもできる。同ワイヤーの金属の材料としては、Ni、Co、Fe、Auを用いることができるが、これらに限定されない。さらに電子放出材料としては、金属ナノチューブを用いることもできる。同チューブの金属の材料としては、Au、Ag、Pt、Rh、Irを用いることができるが、これらに限定されない。
【0033】
電子放出材料としてカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、またはこれらの複合体、混合体等を用いる場合、電子放出材料をペーストやインクに含有させ、印刷により形成することができる。このように、ペースト化および印刷によって電子放出材料層を形成すれば、低コスト化および大面積化が容易である。ペーストを印刷する場合、ペースト中にはエチルセルロースなどの有機バインダーや、テルピネオールなどの溶媒を混合することも可能である。さらに、固着を補助するためにガラスフリットや金属、金属酸化物なども含有させることができる。印刷後には、焼成処理によって固着を促進することも可能である。焼成環境は、例えば、大気などの酸素含有雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空とすることができる。カソード電極周縁を覆うように電子放出材料含有ペーストやインクを印刷することで、本発明の構造を作製できる。
【0034】
また電子放出材料をカソード電極周縁において直接合成することで、電子放出材料層を形成することもできる。例えば、カーボンナノチューブの場合、化学気相成長法によって直接合成することができる。この場合、例えば、まず、Fe、Ni、Co、Moなどのカーボンナノチューブ成長触媒をカソード電極周縁に配置する。その後、例えば、エチレン・アセチレンなどのガスやエタノール、メタノール、ベンゼン、トルエンなどの蒸気を炭素源として流し、高温にさらすことでカーボンナノチューブを成長させることができる。この際、希釈ガスとして、例えば、アルゴン、窒素、水素などを用いることができる。
【0035】
アノード電極2Aには、例えば、ITO、ZnO、TiO2などの金属酸化物、あるいはカーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素電極、といった透明電極を用いることができる。蛍光体層2Bには、例えば、電子線励起発光の蛍光体を用いることができる。なお、図1〜6では、蛍光体層が、アノード電極のカソード電極側表面に配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の電界放出型発光素子において、蛍光体層は、アノード電極のアノード基板側表面(すなわち、アノード電極とアノード基板との間)に配置されていても良い。言い換えると、例えば、電子線が通過できる程度の厚みを持つ電極を蛍光体層のカソード電極側表面に形成し(メタルバックということがある)、これをアノード電極として利用する場合は、必ずしも、蛍光体層のアノード基板側にアノード電極は必要でない。なお、前記蛍光体層は、前記アノード電極のカソード電極側表面およびアノード基板側表面の両面に配置しても良い。
【0036】
カソード基板3には、例えば、ガラス基板や石英基板、非ドープのシリコン基板など、電気的に絶縁性を有するものを用いることができる。アノード基板4には、例えば、ガラス基板や石英基板などの透明な基板が用いられるが、これらに限定されない。
【0037】
アノード・カソード電極間距離dは、特に限定されないが、0.1mmから300mmであることが好ましく、より好ましくは1mmから10mmである。また、本発明の電界放出型発光装置において、カソード基板3とアノード基板4の間は、1.0×10−3Pa以下の真空度とすることが好ましく、1.0×10−4Pa以下の真空度とすることがより好ましい。前記真空度の下限値は、特に限定されないが、例えば、0Pa以上または0Paを超える値である。
【0038】
[実施形態2]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図9は、本実施形態の電界放出型発光装置の一例の構造を模式的に示す断面図であり、図10は、平面図である。この装置を構成する要素は図1および2と同様であり、同一の符号は、同様の構成要素を示す。第2の実施形態では、複数の帯状のカソード電極1Aが略平行に配置され、電子放出材料層1Bがカソード電極1A周縁の少なくとも一部を覆っており、各カソード電極の隣接する周縁間の距離がアノード・カソード電極間距離の1.5倍以上となっている。また、アノード基板4に垂直な方向から見て、電子放出材料層1Bに覆われたカソード電極1Aの隣接する周縁間を含むように蛍光体層2Bが形成されている。
【0039】
カソード電極の隣接する周縁から放出される電子線は、面内方向にそれぞれ異なる広がり方をする。これらの電子線が重なるために、第1の実施形態よりもさらに電子線のムラが減少し、均一な発光が実現する。さらに、複数の電極があることで、第1の実施形態よりも発光装置を高輝度化することも大面積化することもできる。
【0040】
また、第1の実施形態と同様に、装置端部に近いカソード電極1A周縁は電子線を広げる余地がないため、電子放出材料層1Bで覆わないほうが好ましい。図9、図10では、カソード電極1A周縁のうち、装置端部から遠い部分のみ電子放出材料層1Bで覆われている。一方で、第1の実施形態と同様に、カソード電極1A周縁の外側全方向に電子放出材料層1Bを設け、カソード電極1Aの周縁すべてを電子放出材料層1Bが覆っても良い。
【0041】
さらに、図9、図10ではカソード電極を2つしか描いていないが、図11のように3つ以上のカソード電極が存在してもよい。こうすることで、大面積の発光装置を作製できる。さらに、例えば、図12の平面図に示すように、複数のカソード電極1Aを電気的に連結しても良い。なお、図12では、複数のカソード電極1Aが櫛の歯状に配置され、それらが連結された櫛状のカソード電極を形成しているが、カソード電極の形状は、これに限定されず、任意である。
【0042】
カソード電極の隣接する周縁間の間隔については特に限定されないが、カソード電極周縁への電界集中が弱くなり、電子線が面内方向に広がりにくくなることを防止するために、前記間隔を小さくし過ぎないことが好ましい。図13は、カソード電極の長手方向に沿って見た電界放出装置の断面について、電界分布を計算した結果を示すグラフである。カソード電極の短手方向の幅はアノード・カソード電極間距離dと同じとし、アノード電極はアノード基板全面に形成されているとした。同図において、カソード電極の隣接する周縁間の間隔を0.5d,d,1.5d,2d,3dと変えた場合の計算結果を示す。図示のとおり、前記間隔が3dの場合、カソード電極周縁に面内方向の強い電界が生じているが、前記間隔が0.5dの場合、面内方向の電界が比較的弱いことがわかる。このように、同図においては、カソード電極の隣接する周縁間の間隔を大きくするほど、面内方向の電界が強くなる傾向が伺える。ただし、図13は例示であって、本発明を限定するものではない。
【0043】
図14は、図13の電位分布に基づき、カソード基板表面近傍における面内方向の電界強度を計算した結果を示すグラフである。図14の横軸は図13と同様であり、縦軸は図13における面内方向の電界強度を表している。図14から、カソード電極の隣接する周縁間の間隔が1.5d以上の場合、面内方向の電界が特に大きい。従って、カソード電極の隣接する周縁間の間隔は1.5d以上確保することが好ましい。さらに、同間隔は、5d以上とすることがより好ましい。これは、同間隔が広いほど、より電子線が面内方向に広がり発光が均一化しやすいため、また後述するように、カソード電極周縁から5dまでの範囲は十分な明るさを保って均一な発光が得られるためである。本発明において、カソード電極の隣接する周縁間の距離の上限は、特に限定されないが、例えば、100d(アノード・カソード電極間距離の100倍)以下である。
【0044】
第2の実施形態では、さらに、カソード電極1Aの短手方向の幅がアノード・カソード電極間距離d以下であることが好ましい。カソード電極内部はカソード電極周縁近傍に比べて電界が弱く、電子を比較的放出しにくいため、上記の幅が大きいと、カソード電極内部の直上の蛍光体に電子が到達しない。電子線の広がりを考慮すると、電子の到達しない蛍光体が生じないためには、上記の幅がd以下であることが好ましい。本発明において、カソード電極の短手方向の幅の下限は、特に限定されないが、例えば、0.001d(アノード・カソード電極間距離の0.001倍)以上である。
【0045】
また、図15および16にそれぞれ示すように、第1の実施形態、第2の実施形態ともに、カソード基板3のうち、カソード電極1Aに接していない表面に、帯電防止膜14を有することが好ましい。電子線が面内方向に広がると、カソード基板3に電子が衝突し、カソード基板3が帯電する可能性がある。帯電は異常放電を引き起こしてしまうので、前記のように、カソード基板3に帯電防止膜を形成することが好ましい。前記帯電防止膜は、特に限定されないが、カソード電極1A周縁への電界集中を弱めないよう、シート抵抗1MΩ以上の高抵抗な膜であることが好ましい。また、同膜の端部は電子放出材料層1Bと接していても良いし、カソード電極1Aと接していても良い。前記帯電防止膜の抵抗値の上限は、特に限定されないが、例えば、シート抵抗1GΩ以下である。
【実施例】
【0046】
続いて、具体的な実施例を用いて、本発明の電界放出型発光装置を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されない。
【0047】
まず、電子放出材料として多層カーボンナノチューブを用い、カーボンナノチューブ含有ペーストを作製した。前記ペーストの組成は、カーボンナノチューブ60mg、セルロース系有機バインダー120mg、ガラスフリット420mg、およびαテルピネオール6mlとした。これらを混合後、7時間機械的混練した。カソード基板にはガラス板を用い、カソード電極にはフォトリソグラフィによりパターニングしたITOを用いた。さらに、カソード電極周縁を覆うように、上記ペーストをスクリーン印刷した。なお、比較例として、カソード電極周縁を覆わないようにスクリーン印刷したカソードも別途用意した。その後、有機バインダーとαテルピネオールを除去するために、窒素中500℃で1時間焼成した。次に、カソードに粘着テープを貼り付け、剥離することでカーボンナノチューブの起毛を行った。これによりカーボンナノチューブ1本1本への電界集中を起こりやすくした。
【0048】
アノード基板にはガラス板を用い、アノード電極にはフォトリソグラフィによりパターニングしたITOを用いた。同ITOの上に、スクリーン印刷により蛍光体層を形成した。そして、前記カソード基板および前記アノード基板の両基板を、カソード電極形成面とアノード電極形成面とが対向するように、1mmの間隙を設けて略平行に設置した。以上のようにして、本実施例の電界放出型発光装置を製造した。なお、本実施例の電界放出型発光装置においては、蛍光体層をカソード電極直上およびカソード電極周縁から外側に8mmの範囲まで設けた。また、アノード電極は、カソード電極直上およびカソード電極周縁から外側に12mmの範囲まで設けた。比較例の電界放出型発光装置においては、カソード電極直上に蛍光体を設けた。またアノード電極は蛍光体の外側4mmの範囲まで設けた。
【0049】
さらに、前記のとおりアノード基板およびカソード基板を対向させて配置した実施例および比較例の電界放出型発光装置を、10−5Pa台の真空中に置いた。この条件下で、アノード電極およびカソード電極の両電極間に1kV程度の電圧を印加し、発光パターンを評価した。
【0050】
図17に、カソード電極周縁を覆わない比較例の電界放出型発光装置の発光写真を示す。図示のとおり、白色が発光を表している。1つ1つの発光は点状であり、狭い範囲にとどまっていた。
【0051】
図18に、カソード電極周縁を覆った本発明の電界放出型発光装置の発光写真を示す。図示のとおり、同図の中心を上下にカソード電極周縁が走っており、左側にカソード電極内部が存在している。カソード周縁から外側は、広く発光している。同図に示す通り、カソード電極周縁から外側に少なくとも5mmの範囲、すなわちアノード・カソード電極間距離の5倍の範囲は均一に、かつ明るく発光した。さらに、カソード電極周縁から外側に8mmの範囲、すなわちアノード・カソード電極間距離の8倍の範囲まで、発光が確認できた。このように、本実施例では、比較例の電界放出型発光装置(従来技術)に比べて顕著に発光が均一化しており、当業者の技術常識に基づく予想をはるかに超える有利な効果を示した。
【0052】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0053】
(付記1)
カソード基板とアノード基板とが対向して略平行に配置され、
前記カソード基板の、前記アノード基板と対向する面側に、カソード電極および電子放出材料層が配置され、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆され、
前記アノード基板の、前記カソード基板と対向する面側に、アノード電極および蛍光体層が配置され、
前記蛍光体層は、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に配置され、
前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置され、
前記カソード基板および前記アノード基板上に、ゲート電極を有しないことを特徴とする、電界放出型発光装置。
【0054】
(付記2)
前記蛍光体層が、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層で被覆された前記カソード電極周縁の外側に突出しており、前記突出した部分の幅が、前記カソード電極周縁の法線方向に、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上の幅であることを特徴とする付記1記載の電界放出型発光装置。
【0055】
(付記3)
前記カソード電極が、帯状かつ複数であり、
前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向して配置され、
隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上であり、
前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されていることを特徴とする付記1または2記載の電界放出型発光装置。
【0056】
(付記4)
前記カソード電極の短手方向の幅が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離以下であることを特徴とする付記3記載の電界放出型発光装置。
【0057】
(付記5)
前記カソード基板の、前記アノード電極と対向する面側における前記カソード電極の外側に、帯電防止膜を有することを特徴とする、付記1から4のいずれかに記載の電界放出型発光装置。
【0058】
(付記6)
前記帯電防止膜の抵抗値が、シート抵抗1MΩ以上であることを特徴とする付記5記載の電界放出型発光装置。
【0059】
(付記7)
前記電子放出材料層が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、付記1から6のいずれかに記載の電界放出型発光装置。
【0060】
(付記8)
カソード基板およびアノード基板を準備する基板準備工程と、
前記カソード基板の片面側に、カソード電極を形成するカソード電極形成工程と、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が前記電子放出材料層により被覆されるように、前記電子放出材料層を形成する電子放出材料層形成工程と、
前記アノード基板の片面側に、アノード電極を形成するアノード電極形成工程と、
前記蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記カソード基板および前記アノード基板を、前記カソード電極形成面と前記アノード電極形成面とが対向するように略平行に配置する基板配置工程とを含み、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層を、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に形成し、
前記カソード電極形成工程、前記電子放出材料層形成工程および前記蛍光体層形成工程において、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置されるように、前記カソード電極、前記電子放出材料層および前記蛍光体層を形成することを特徴とする付記1記載の電界放出型発光装置の製造方法。
【0061】
(付記9)
前記電界放出型発光装置が、付記2記載の電界放出型発光装置であり、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層が、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層で被覆された前記カソード電極周縁の外側に突出し、前記突出した部分の幅が、前記カソード電極周縁の法線方向に、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上の幅となるように前記蛍光体層を形成することを特徴とする付記8記載の製造方法。
【0062】
(付記10)
前記電界放出型発光装置が、付記3記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード電極形成工程において、前記カソード電極を、帯状にかつ複数形成するとともに、前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向し、かつ、隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上となるように配置し、
前記電子放出材料層形成工程において、前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されるように前記電子放出材料層を形成することを特徴とする付記8または9記載の製造方法。
【0063】
(付記11)
前記電界放出型発光装置が、付記4記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード電極形成工程において、前記カソード電極の短手方向の幅が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離以下となるように前記カソード電極を形成することを特徴とする付記10記載の製造方法。
【0064】
(付記12)
前記電界放出型発光装置が、付記5記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード基板の、前記アノード電極と対向する面側における前記カソード電極の外側に、帯電防止膜を形成する帯電防止膜形成工程をさらに含むことを特徴とする、付記8から11のいずれかに記載の製造方法。
【0065】
(付記13)
前記電界放出型発光装置が、付記6記載の電界放出型発光装置であり、
前記帯電防止膜形成工程において、前記帯電防止膜の抵抗値が、シート抵抗1MΩ以上となるように形成することを特徴とする付記12記載の製造方法。
【0066】
(付記14)
前記電界放出型発光装置が、付記7記載の電界放出型発光装置であり、
前記電子放出材料層形成工程が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むペーストを、前記カソード電極周縁の少なくとも一部を被覆するように印刷する印刷工程を含むことを特徴とする、付記8から13のいずれかに記載の製造方法。
【符号の説明】
【0067】
1 カソード
1A カソード電極
1B 電子放出材料層
2 アノード
2A アノード電極
2B 蛍光体層
3 カソード基板
4 アノード基板
5 電圧源
6 電子
7 光
8 カソード電極周縁から外側に蛍光体層が形成される距離
9 カソード電極最端最下点(カソード電極とカソード基板の最端接点)
10 カソード電極端上面
10a カソード電極端下面
11 カソード電極端側面
12 カソード電極端角部分
13 カソード電極端表面
13a カソード電極端下面
14 帯電防止膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード基板とアノード基板とが対向して略平行に配置され、
前記カソード基板の、前記アノード基板と対向する面側に、カソード電極および電子放出材料層が配置され、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆され、
前記アノード基板の、前記カソード基板と対向する面側に、アノード電極および蛍光体層が配置され、
前記蛍光体層は、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に配置され、
前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置され、
前記カソード基板および前記アノード基板上に、ゲート電極を有しないことを特徴とする、電界放出型発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体層が、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層で被覆された前記カソード電極周縁の外側に突出しており、前記突出した部分の幅が、前記カソード電極周縁の法線方向に、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上の幅であることを特徴とする請求項1記載の電界放出型発光装置。
【請求項3】
前記カソード電極が、帯状かつ複数であり、
前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向して配置され、
隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上であり、
前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されていることを特徴とする請求項1または2記載の電界放出型発光装置。
【請求項4】
前記カソード電極の短手方向の幅が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離以下であることを特徴とする請求項3記載の電界放出型発光装置。
【請求項5】
前記カソード基板の、前記アノード電極と対向する面側における前記カソード電極の外側に、帯電防止膜を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電界放出型発光装置。
【請求項6】
前記帯電防止膜の抵抗値が、シート抵抗1MΩ以上であることを特徴とする請求項5記載の電界放出型発光装置。
【請求項7】
前記電子放出材料層が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電界放出型発光装置。
【請求項8】
カソード基板およびアノード基板を準備する基板準備工程と、
前記カソード基板の片面側に、カソード電極を形成するカソード電極形成工程と、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が前記電子放出材料層により被覆されるように、前記電子放出材料層を形成する電子放出材料層形成工程と、
前記アノード基板の片面側に、アノード電極を形成するアノード電極形成工程と、
前記蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記カソード基板および前記アノード基板を、前記カソード電極形成面と前記アノード電極形成面とが対向するように略平行に配置する基板配置工程とを含み、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層を、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に形成し、
前記カソード電極形成工程、前記電子放出材料層形成工程および前記蛍光体層形成工程において、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置されるように、前記カソード電極、前記電子放出材料層および前記蛍光体層を形成することを特徴とする請求項1記載の電界放出型発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記電界放出型発光装置が、請求項3記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード電極形成工程において、前記カソード電極を、帯状にかつ複数形成するとともに、前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向し、かつ、隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上となるように配置し、
前記電子放出材料層形成工程において、前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されるように前記電子放出材料層を形成することを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記電界放出型発光装置が、請求項7記載の電界放出型発光装置であり、
前記電子放出材料層形成工程が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むペーストを、前記カソード電極周縁の少なくとも一部を被覆するように印刷する印刷工程を含むことを特徴とする、請求項8または9記載の製造方法。
【請求項1】
カソード基板とアノード基板とが対向して略平行に配置され、
前記カソード基板の、前記アノード基板と対向する面側に、カソード電極および電子放出材料層が配置され、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆され、
前記アノード基板の、前記カソード基板と対向する面側に、アノード電極および蛍光体層が配置され、
前記蛍光体層は、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に配置され、
前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置され、
前記カソード基板および前記アノード基板上に、ゲート電極を有しないことを特徴とする、電界放出型発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体層が、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層で被覆された前記カソード電極周縁の外側に突出しており、前記突出した部分の幅が、前記カソード電極周縁の法線方向に、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上の幅であることを特徴とする請求項1記載の電界放出型発光装置。
【請求項3】
前記カソード電極が、帯状かつ複数であり、
前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向して配置され、
隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上であり、
前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されていることを特徴とする請求項1または2記載の電界放出型発光装置。
【請求項4】
前記カソード電極の短手方向の幅が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離以下であることを特徴とする請求項3記載の電界放出型発光装置。
【請求項5】
前記カソード基板の、前記アノード電極と対向する面側における前記カソード電極の外側に、帯電防止膜を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電界放出型発光装置。
【請求項6】
前記帯電防止膜の抵抗値が、シート抵抗1MΩ以上であることを特徴とする請求項5記載の電界放出型発光装置。
【請求項7】
前記電子放出材料層が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電界放出型発光装置。
【請求項8】
カソード基板およびアノード基板を準備する基板準備工程と、
前記カソード基板の片面側に、カソード電極を形成するカソード電極形成工程と、
前記カソード電極周縁の少なくとも一部が前記電子放出材料層により被覆されるように、前記電子放出材料層を形成する電子放出材料層形成工程と、
前記アノード基板の片面側に、アノード電極を形成するアノード電極形成工程と、
前記蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、
前記カソード基板および前記アノード基板を、前記カソード電極形成面と前記アノード電極形成面とが対向するように略平行に配置する基板配置工程とを含み、
前記蛍光体層形成工程において、前記蛍光体層を、前記アノード電極の前記カソード電極側表面における前記アノード基板面に垂直な方向から見て前記アノード電極周縁の内側、および、前記アノード電極と前記アノード基板との間の少なくとも一方に形成し、
前記カソード電極形成工程、前記電子放出材料層形成工程および前記蛍光体層形成工程において、前記アノード基板面に垂直な方向から見て、前記電子放出材料層およびそれにより被覆された前記カソード電極周縁が、前記蛍光体層の内側に配置されるように、前記カソード電極、前記電子放出材料層および前記蛍光体層を形成することを特徴とする請求項1記載の電界放出型発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記電界放出型発光装置が、請求項3記載の電界放出型発光装置であり、
前記カソード電極形成工程において、前記カソード電極を、帯状にかつ複数形成するとともに、前記複数のカソード電極が、長手方向と垂直方向に間隔を開けて略平行に対向し、かつ、隣接する前記カソード電極の周縁間の距離が、前記アノード電極および前記カソード電極間距離の1.5倍以上となるように配置し、
前記電子放出材料層形成工程において、前記カソード電極周縁における他のカソード電極周縁と対向する部分の少なくとも一部が、前記電子放出材料層により被覆されるように前記電子放出材料層を形成することを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記電界放出型発光装置が、請求項7記載の電界放出型発光装置であり、
前記電子放出材料層形成工程が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、およびカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体からなる群から選択される少なくとも一つを含むペーストを、前記カソード電極周縁の少なくとも一部を被覆するように印刷する印刷工程を含むことを特徴とする、請求項8または9記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A−C】
【図5D−F】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A−C】
【図5D−F】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図19】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−185942(P2012−185942A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46928(P2011−46928)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]