説明

電界発光材料および素子

二酸化イオウ単位によって架橋された、ビフェニル系をベースとした一般構造を有する、共役オリゴマーおよび共役高分子に使用されるモノマー(単量体)。このビフェニルは、付加的に、任意に、オリゴマーまたは高分子の主鎖に沿って、共役を減少するように置換され、そして、便利な溶解処理技術によって、光電子素子の分野での使用に適した、濃い青色放射する高三重項材料の製造を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光(エレクトロルミネセント)材料および素子(デバイス)に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光は、材料が、自身に流れた電流に応答して光を放射する現象である。この現象は、特に、有機光放射(有機発光)ダイオード(organic light emitting diodes:OLEDs)の製造と操作において利用される。OLEDsは、代表的には、有機小分子および/または高分子(例えば、オリゴマー)を有する、有機半導体材料を含有する。
【0003】
単純なOLED構成において、有機光放射材料を有する薄膜は、アノード(陽極)とカソード(陰極)の間に挟まれる。バイアス電圧が、素子(デバイス)を横断して加えられたとき、正孔(ホール)は発光材料の最高被占分子軌道(HOMO)に注入され、電子は、最低空分子軌道(LUMO)に注入される。電子とホールが再結合するとき、励起子が放射的に崩壊できるように形成され、その結果、光の放射(発光)が起きる。生成される光の色は、材料のHOMO−LUMOバンドギャップに依存する。
【0004】
しかしながら、安定性を上げ、素子の効率(注入電荷当たりの放射光の光子)を増加させるため、多層素子が通常使用される。そのような素子は、発光を増加させる結果に結びつく、発光材料への電荷の注入に影響を与える、電子輸送(伝達)材料および/または正孔輸送材料のような電荷輸送材料の層を含んでいる。多くの材料が、電子および正孔輸送材料として使用されることが述べられている(Kulkarniら Chem.Mater.2004, 16: 4556 - 4573; Yanら Appl Phys.Lett.2004, 84: 3873 - 3875)。
【0005】
白色有機光放射(有機発光)素子(white organic light emitting devices:WOLEDs)は、液晶ディスプレイ(表示装置)のバックライト、および固体照明(solid-state lighting:SSL)デバイスにおいて、カラーフィルターの助けを得てのフルカラーディスプレイへの、その潜在的用途が明らかになったため、近年、関心が高まってきている。それゆえに、白色光放射(発光)できる効果的な単一成分OLEDは非常に望ましい。
【0006】
それぞれ異なる色で光放射する2つまたはそれ以上の活性層から、同時に白色光放射を得るための多層素子構造の使用(Burrowsら Appl.Phys.Lett.1998, 73: 435 - 437;D'Andradeら Adv.Mater.2002, 14: 147 - 151;Leeら Mater.Sci.Eng. , B, 2002, 95:24 - 28; Huangら Appl.Phys.Lett.2002, 80: 2782 - 2784)、異なる蛍光またはリン光ドーパントがホスト高分子に分散された単一層を有する素子(ここで、ドーパントは、半導体材料の光学的/電気的性質を変化させるために低濃度で添加される不純物元素である)の使用(Kidoら Appl.Phys.Lett.1995, 67; 2281 - 2283;Mazzeoら、Synth Met.2003, 139:675 - 677)、または、赤、緑および青の3つの活性層が、正確なシャドーマスクを使用してマトリックス配列(アレー)としてパターン化された画素化構造の使用(Kidoら Appl.Phys.Lett.1995, 67; 2281 - 2283)、このような、WOLEDsからの白色光放射の達成のために多くのアプローチ法が述べられている。しかしながら、青色光放射に必要な高いバンドギャップは、効率的で、長続きする青色放射体の生産は挑戦的なことであると証明したことを確かなものとした。
【0007】
単一層構造のWOLEDは、より容易な大規模な生産および低コストの製造に役立つので、望ましい。しかしながら、上記した単一層の蛍光またはリン光ドープWOLEDsは、加えられたバイアス電圧に依存する放射(発光)色(colour emission)のCIE(Commission Internationale de l'Eclairage)コーディネイトでの変化も含めて、多くの不利益に遭遇しており、それにより、LCDバックライトおよび他の照明用途にあまり好ましくないものとなっている。
【0008】
過去10年間で、ポリフルオレン(PF)は、半導体有機共役高分子類の中で、効果的な電界発光材料として出現してきた。電界発光応用に適するようにするPFsの性質は、明るい青色放射、高正孔移動度、化学変性および共重合を通しての優れた熱的および化学的/電気化学的安定性、ならびに容易な調節性を含んでいる。しかしながら、これらの材料において、電子の移動度および注入は、正孔の移動度および注入より非常に低く、その結果、正負キャリヤの輸送の大きな不均衡をもたらす。電界発光材料中のこの乏しい荷電平衡は、結果としてPFsに基づくOLED素子の全体的な低効率につながる。PF材料に固有のさらなる問題は、しばしばこれらの材料で直面する、熱劣化、光劣化、または電気的劣化の結果としての、フルオレン欠陥の形成であり、結果的に低発光帯をもたらす。
【0009】
多くの異なるアプローチ法が、これらの問題を軽減するために用いられた;それらの中に、電子供与体または電子受容体部分をホモポリマー(単独重合体)中に導入するものがある(主鎖中に、側鎖または末端基として)。OLEDsにおいて、そのような電子供与体または電子受容体部分の導入は、高分子のHOMO−LUMOレベルを変化させる効果的な方法を意味し、それは電界発光層への電荷注入の障壁を減少させて、材料の電子/正孔移動度の増加を許し、そして発光色を調節する。すなわち、電極と高分子の境界において、LUMOエネルギーを減少させることによって、素子中の電荷を均衡させて効率を上げるために電子注入を増加させることを可能にする。
【0010】
PFsおよび他の共役高分子系は多くの方法により合成され得るが、しかし、一般には、鈴木重合法または山本重合法の一つによって合成される。これらの方法の各々は、モノマー単位での共役系の結合を確実にする。
【0011】
鈴木重合法は、共役系を形成するための、アリール−ボロン酸もしくはビニル−ボロン酸、またはそのエステルと、ハロゲン化アリールもしくはハロゲン化ビニルとの結合を生じさせる。その反応は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のようなパラジウム(0)錯体が触媒として使用され、いくつかの総説に記載されている(例えば、鈴木、A. J. Organometallic Chem.1999, 576, 147-168)。有機半導体の重合でのそれの使用は、「坂本J.ら、Macrol.Rapid Commun., 2009, 30, 653-687」に記載されている。
【0012】
山本重合法は、共役系を形成するための、アリール−ハロゲン化マグネシウムもしくはビニル−ハロゲン化マグネシウムと、ハロゲン化アリールもしくはハロゲン化ビニルとの結合を生じさせる。その反応は、ニッケル錯体が触媒として使用され、「山本ら in Bull Chem.Soc.Jpn., 1978, 51, 2091」によって、最初に説明された。有機半導体の重合でのそれの使用は、「山本T. Prog.Polym.Sci., 1993, 17, 1153-1205」に記載されている。
【0013】
電子不足のチオフェン−S,S−ジオキサイド(二酸化物)部分を組み込んだフルオレンベースの共重合体が試験され、従来のPFホモポリマーを超える改善されたLED性能を実証せず、10−3から0.14%である小〜中程度の外部EL効率を示した(Charasら Chem.Commun.2001,1216:Charasら、J. Mater.Chem.2002,12:3523;Pasiniら、J. Mater.Chem.2003,13:807;Destriら、Synth.Metals、2003,138,289)。それゆえ、通常は、チオフェン−S,S−ジオキサイド部分のフルオレンベースの共重合体への組み込みが有益であろうとは期待できない。事実、発光の消光(quenching)が発生し、これらの材料を組み込んだOLED素子の全体的に乏しい効率をもたらすことが予想され、そして報告されている。
【0014】
ジベンゾチオフェン−2,8−ジイルを含有する、規則的な、およびランダムなフルオレン共重合体(Yangら J.Mater.Chem.2003, 13:1351 - 1356;根本ら J.Polym.Sex.A:Polym.Chem.2003, 41:1521 - 1526)、ならびに、主鎖中に、ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド−2,8−ジイル部分を含有する、PPV共重合体(Wangら Thin Solid Films 2003, 424:186 - 190;Wangら .Synth.Metals 2003, 132:191 - 195)が報告され、それらは、再び、OLEDにおいて、中程度から非常に低い程度の効率を示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Kulkarniら Chem.Mater.2004, 16: 4556 - 4573
【非特許文献2】Yanら Appl Phys.Lett.2004, 84: 3873 - 3875
【非特許文献3】Burrowsら Appl.Phys.Lett.1998, 73: 435 - 437
【非特許文献4】D'Andradeら Adv.Mater.2002, 14: 147 - 151
【非特許文献5】Leeら Mater.Sci.Eng. , B, 2002, 95:24 - 28
【非特許文献6】Huangら Appl.Phys.Lett.2002, 80: 2782 - 2784
【非特許文献7】Kidoら Appl.Phys.Lett.1995, 67; 2281 - 2283
【非特許文献8】Mazzeoら、Synth Met.2003, 139:675 - 677
【非特許文献9】鈴木、A. J. Organometallic Chem.1999, 576, 147-168
【非特許文献10】坂本J.ら、Macrol.Rapid Commun., 2009, 30, 653-687
【非特許文献11】山本ら in Bull Chem.Soc.Jpn., 1978, 51, 2091
【非特許文献12】山本T. Prog.Polym.Sci., 1993, 17, 1153-1205
【非特許文献13】Charasら Chem.Commun.2001,1216
【非特許文献14】Charasら、J. Mater.Chem.2002,12:3523
【非特許文献15】Pasiniら、J. Mater.Chem.2003,13:807
【非特許文献16】Destriら、Synth.Metals、2003,138,289
【非特許文献17】Yangら J.Mater.Chem.2003, 13:1351 - 1356
【非特許文献18】根本ら J.Polym.Sex.A:Polym.Chem.2003, 41:1521 - 1526
【非特許文献19】Wangら Thin Solid Films 2003, 424:186 - 190
【非特許文献20】Wangら .Synth.Metals 2003, 132:191 - 195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
再度、これらの結果は、共役高分子としてチオフェン−S,S−ジオキサイド単位を組み込んだフルオレンベースの共重合体は、OLEDにおいて、乏しい効率をもたらすであろうということを示唆し得る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の観点において、本発明は、次の構造を有する第1の繰り返し単位を含有する電界発光高分子(重合体)を提供する:
【0018】
【化1】

ここで、RからRは、同じかまたは異なっており、Hまたは任意に置換されたCからC26の直鎖もしくは分岐のアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、アルコキシ基を有し;RとRのすくなくとも1つ、およびRとRの少なくとも1つはHではなく、XはS、SO、SO、O、NR、またはPの1つを有し、Yは存在しないか、またはS、SO、SO、O、NR、P、またはCR10の1つを有し、RからR10は、同じかまたは異なっており、Hまたは任意に置換されたCからC20の分岐もしくは環状の、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、またはアリール基を有する。
【0019】
どのような特別な理論によっても束縛されようとすること無しに、発明者らは、RまたはRで少なくとも1つの置換基、およびRまたはRで少なくとも1つの置換基を有することが、第1の繰り返し単位を、高分子主鎖の残りの部分に対してねじるための十分な立体効果を提供することを見出した。このねじれは、共役中での降下を引き起こし、材料のバンドギャップを増加させ得ることにより、その結果、濃い青色放射(発光)スペクトルを提供することが提案される。
【0020】
さらに、発明者らは、驚くべきことに、RまたはRで少なくとも1つの置換基、およびRまたはRで少なくとも1つの置換基を有することによって、発光効率の増加が観察されることを見出した。
【0021】
パラ結合(カップリング)およびメタ結合(カップリング)に関して、環構造は、炭素1が最大の分子量の原子または原子団の隣の炭素であるように、番号付けられる。位置2は「オルト」、位置3は「メタ」、そして位置4は「パラ」である。
【0022】
好ましくは、XはSOもしくはSOを有し、および/またはYは存在しない。
【0023】
好ましくは、Rおよび/またはRはHである。
【0024】
好ましくは、RからRの少なくとも3つ(例えば全て)はHではない。
【0025】
からRがHではない場合は、好ましくは、CからC10の直鎖もしくは分岐のアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である。
【0026】
好ましくは、第1の繰り返し単位は次の構造を有する:
【0027】
【化2】


ここで、特に、RおよびRはHであり、RおよびRはC13である。
【0028】
好ましくは、高分子は、有機半導体部分を有する第2の繰り返し単位を含有する。
【0029】
好ましくは、第2の繰り返し単位は次の構造を有する:
【0030】
【化3】


11およびR12は、同じかまたは異なっており、Hまたは任意に置換されたCからC20の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖、アリール基、アルコキシ基、アミノ、アミド、またはヒドロキシル(水酸)基を有し得る。
【0031】
好ましくは、R11およびR12は、両方ともC17である。
【0032】
第1の繰り返し単位の存在が、スピンコート(回転塗布)のような、より良い溶解処理を促進させる、電界発光高分子の溶解度を大幅に増加させ、そしてこのように重要な利点を示すこともまた見出された。さらに、第1の繰り返し単位を高含量で有する電界発光高分子の形成もまた、可能である。
【0033】
したがって、第1の繰り返し単位の数yに対する第2の繰り返し単位の数xの比率は、少なくとも15:85が好ましく、より好ましくは30:70であり、特に50:50が好ましい。
【0034】
好ましくは、RおよびRは、CからC10の非置換直鎖アルキル鎖を有する。
【0035】
好ましくは、第2の繰り返し単位は、高分子の主鎖中にパラ結合またはメタ結合によって組み込まれている。
【0036】
本発明のさらなる観点によれば、次の構造を有する1つまたはそれ以上の第1の繰り返し単位を含有する、フルオレンベース共重合体(共重合高分子)またはオリゴマーが提供される:
【0037】
【化4】

【0038】
任意に、第1のまたは第2の観点に係る共重合体(共重合高分子)またはオリゴマーは、さらに、少なくとも1つのアルキン基を有する。この少なくとも1つのアルキン基は、第1の繰り返し単位と第2の繰り返し単位の間、または2つの第2の繰り返し単位の間に位置させることができる。
【0039】
ある実施の態様において、高分子は、電子輸送部分を有する第3の繰り返し単位を含有し得る。電子輸送部分は、次の基から選択される構造を有することが好ましい:
【0040】
【化5】


ここで、R15からR20は、同じかまたは異なっていてもよく、Hまたは任意に置換されたCからC10(例えば、CまたはC)の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基、ニトロ、アミノ、アミド、ハロ(ハロゲン基)、アルコキシ、ヒドロキシル(水酸)、チオール、またはチオアルキルを有し得;QからQは、同じかまたは異なっていてもよく、NまたはCHを有し得、ZはO、NRまたはSを有し得る。
【0041】
好ましくは、高分子は、正孔輸送部分を有する第4の異なる繰り返し単位を含有する。
【0042】
好ましくは、正孔輸送部分は、次の基から選択される構造を有することが好ましい。
【0043】
【化6】


ここで、R13およびR14は、同じかまたは異なっていてもよく、Hまたは任意に置換されたCからC10(例えば、CまたはC)の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基、ニトロ、アミノ、アミド、ハロ(ハロゲン基)、アルコキシ、ヒドロキシル(水酸)、チオール、またはチオアルキルを有し得、ArからAr10は、任意に、置換アリール基を有する。
【0044】
好ましくは、高分子は、第1の繰り返し単位、ならびに第2、第3および第4の繰り返し単位のうちの1つ、いくつか、または全てを含んでいる、ブロック共重合体、規則的(regular)もしくは交互共重合体、またはランダム共重合体を有する。
【0045】
好ましくは、共重合体はランダム共重合体である。「ランダム共重合体」という用語は、与えられたモノマー(単量体)単位が鎖中の任意の与えられた場所に見出される可能性が、それに隣接する単位の性質と無関係である高分子、からなる共重合体を意味する。
【0046】
「規則的共重合体(regular copolymer)」という用語は、規則的な交互の繰り返し単位の連続を有する共重合体を意味する。
【0047】
「ブロック共重合体」という用語は、各々の繰り返し単位が、少なくとも1つの同一の繰り返し単位に隣接するように配置された共重合体を意味する。
【0048】
いくつかの実施形態において、高分子は、さらに、1つまたはそれ以上の赤色および/または緑色の発光(emitting)繰り返し単位を有する。赤色および/または緑色の発光繰り返し単位は、好ましくは、LおよびXが次のようである、IrLまたはIrLX形態の複合体(complexes)、または下記の[化8]の形態の複合体から選択されるリン光放射体(phosphorescent emitters)を含有する。
【0049】
【化7】


ここで、R31からR34は、同じかまたは異なっていてもよく、Hまたは任意に置換されたCからC10(例えば、CまたはC)の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基、ニトロ、アミノ、アミド、ハロ(ハロゲン基)、アルコキシ、ヒドロキシル(水酸)、チオール、またはチオアルキルを有し得る。
【0050】
【化8】

【0051】
その代替として、または追加的に、高分子は、次の基から選択されるような色ドーパント(colour dopants)を含有し得る:
【0052】
【化9】


ここで、R21およびR30は、同じかまたは異なっていてもよく、Hまたは任意に置換されたCからC10(例えば、CまたはC)の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル基、ニトロ、アミノ、アミド、ハロ(ハロゲン基)、アルコキシ、ヒドロキシル(水酸)、チオール、またはチオアルキルを有し得、XおよびXはSまたはCを有し得る。
【0053】
任意に、第1のまたは第2の観点に係る共重合体またはオリゴマーは、さらに、少なくとも1つのアルキン基を有する。この少なくとも1つのアルキン基は、第1の繰り返し単位と第2の繰り返し単位の間、または2つの第2の繰り返し単位の間に位置させることができる。
【0054】
好ましくは、選択的な第1の繰り返し単位は、高分子の約2−50モル%からなる。
【0055】
より好ましくは、第1の繰り返し単位は、高分子の約10−35モル%からなる。
【0056】
より好ましくは、第1の繰り返し単位は、高分子の約20−30モル%からなる。
【0057】
好ましくは、少なくとも第1の繰り返し単位の一部は、青色放射(blue emitting)部分として機能する。
【0058】
好ましくは、少なくとも第1の繰り返し単位の一部は、電子輸送部分として機能する。
【0059】
好ましくは、少なくとも第1の繰り返し単位の一部は、1つまたはそれ以上のリン光放射体の存在下で、高エネルギー三重項ホスト(a high energy triplet host)として機能する(例えば、高分子が、1つまたはそれ以上のリン光放射体を有するか、またはそれと共に堆積させられるかすれば)。
【0060】
第1の繰り返し単位および第2の繰り返し単位は、好ましくは、それらが、励起状態でそれらの間に電荷移動を許可するように選択される。
【0061】
好ましくは、高分子は、CIE(x、y=0.33、0.33)で測定されて白色点(white point)に近い放射光(emitting light)にできる。
【0062】
第2の繰り返し単位は、任意の適切な位置で、本発明に係る機能的に等価な分子をもたらす、任意の適切な官能基で置換され得る。
【0063】
好ましくは、第2の繰り返し単位が置換されるとき、それらは、任意の適切な位置でアルキル基で置換され得る。
【0064】
任意に、第2の繰り返し単位が置換されるとき、それらは、任意の適切な位置で懸垂部分(pendent moieties)によって置換され得る。
【0065】
任意に、第2の繰り返し単位が置換されるとき、それらは、任意の適切な位置でスピロ単位(spiro units)によって置換され得る。
【0066】
本発明の第3の観点によれば、上記の高分子を有する光学素子(an optical device)が提供される。
【0067】
本発明者らによって見出された別の重要な結果は、発明に係る電界発光高分子の三重項エネルギーが、第1の繰り返し単位の割合の増加に応じて増加することである。特に、ホスト、例えば、緑色のリン光イリジウムゲスト放射体(a green phosphorescent iridium guest emitter)に対して十分に高い三重項エネルギーを持つ高分子からの可能性が高い。
【0068】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、光学素子は、付加的に、赤色および/または緑色のリン光放射体を有する。
【0069】
好ましくは、光学素子は、高分子が放射(放出)層(an emissive layer)の少なくとも一部を構成している有機光放射素子である。
【0070】
好ましくは、有機光放射素子は第1および第2電極を有し、放射層は第1および第2電極の間に形成されている。
【0071】
任意に、有機光放射素子は、さらに少なくとも1つの層、例えば、正孔注入層または電子注入層を有する。
【0072】
好ましくは、本発明の共重合体は鈴木重合法によって調製される。
【0073】
任意に、本発明の共重合体は、山本重合法のような任意の適切な重合方法によって調製することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明者らは、置換ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイドを含むフルオレンベース共重合体を組み込んだ単純なOLED素子が、従来報告されているPF単独重合体素子を超える、改良された電子輸送および発光を実証し、その結果、改良された外部量子効率をもたらすことを、有利に確立した。置換ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド部分はまた、電子輸送部分として働き、さらに、フルオレン共重合体と結合し発光部分として機能する。
【0075】
チオフェンジオキサイド(二酸化物)は電子輸送材料として知られている一方で、ヘテロ原子は励起状態の消滅(クエンチング)により高発光ではないことが知られているので、このことは驚くべきことである。それゆえに、置換ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイドのフルオレンベース共重合体への組み込みは高発光であろうということは、期待され得ないことである。
【0076】
したがって、本発明によって、上記の第1または第2の観点に記載されているように、ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド単位を組み込んだフルオレンベース共重合体を組み込んでいる発光表面を有する素子によって、実質的に、白色光源の代替の市場は、少なくとも部分的に満足させられる。
【0077】
すでに上記したように、本発明のさらなる利点は、1つまたはそれ以上の置換によってもたらされた、第1の繰り返し基(グループ)の改良された溶解度から生じる。これは、高分子のスピンコート(回転塗布)のような、より良好な溶解処理を促進し、このことは、OLED素子の費用効率の高い生産をできるようにする。
【0078】
本発明の実施の形態は、添付図を参照してより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明に係る高分子(重合体)を形成するモノマー(単量体)の合成を示す。
【図2】図2は、本発明に係る高分子の合成を示す。
【図3】図3は、高分子(重合体)1のフォトルミネセンスデータを示す。
【図4】図4は、高分子(重合体)2のフォトルミネセンスデータを示す。
【図5】図5は、実施例3に係る素子の電流密度に対する明度(brightness)の測定値を示す。
【図6】図6は、実施例3に係る素子の電界発光波長に対する電界発光力を示す。
【図7】図7は、実施例3に係る素子の電圧に対する電流密度を示す。
【図8】図8は、実施例4に係る素子の電流密度に対する明度(brightness)の測定値を示す。
【図9】図9は、実施例4に係る素子の電圧に対する電流密度を示す。
【図10】図10は、実施例4に係る素子および実施例5に係る素子の、電界発光波長に対する電界発光強度を示す。
【図11】図11は、実施例5に係る素子の電流密度に対する明度(brightness)の測定値を示す。
【図12】図12は、実施例5に係る素子の電圧に対する電流密度を示す。
【図13】図13は、発明に関する3つの異なる素子の電界発光(エレクトロルミネセンス)スペクトルを示す。
【図14】図14は、3つの素子の対応するフォトルミネセンス測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
ランダムフルオレン−ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド共重合体は、下記実施例に示すように、9,9−ジオクチルフルオレンコモノマーと置換ジブロモジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイドとの、パラジウム触媒による鈴木クロス−カップリング共重合によって合成される。
【0081】
モノマー1の調製(図1参照)
ステージ1
ジベンゾチオフェン(AldrichまたはAlfa Aesar)(195mmol)が、アルゴンによる保護雰囲気下で、クロロホルムと酢酸(両者ともFisher)の1:1混合物(合計400mL)中に溶解され、氷浴で冷却された。クロロホルム(25mL)に溶解した臭素(Aldrich)(468moL)が、滴下的に(dropwise)添加され、混合物が、ゆっくり室温まで昇温されて一晩撹拌された。混合物は、メタノール(Fisher)(500mL)中に注ぎ込まれ、ジブロモジベンゾチオフェン生成物を沈殿させた。そして、ろ過されメタノールで洗浄された。
【0082】
ステージ2
このジブロモジベンゾチオフェン(29.3mmoL)が、アルゴンによる保護雰囲気下で、テトラヒドロフラン(THF)(Fisher)(200mL)に溶解され、ドライアイス/アセトン浴で冷却された。n−ヘキシルリチウム(Aldrich)(64.4mmoL)がゆっくり添加され、溶液が3時間撹拌された。ブロモヘキサン(Aldrich)(71.2mmoL)が添加され、溶液が一晩、室温まで加温された。ジエチルエーテル(Fisher)で水層が抽出され、一体とした有機物(combined organics)が水で洗浄され、乾燥、ろ過され、さらに、酢酸(Fisher)(50mL)に溶解するオイル(oil)を得るように濃縮された。過酸化水素(Aldrich)(15mL)が注意深く添加され、さらに過酸化物を10mL添加する前に、溶液が140℃で2時間撹拌され、さらにその溶液が140℃で一晩撹拌された。冷水が添加され、水層がクロロホルムで抽出された。有機物が水で洗浄され、乾燥、ろ過され、さらに、エタノールに溶解するオイル(oil)を得るように濃縮された。フラスコが冷凍庫の中に一晩静置され、スルホン生成物が結晶化した。
【0083】
ステージ3
スルホン(13mmoL)が、光からの保護のもと、HSO(Fisher)(300mL)に溶解され、70℃に過熱された。N−ブロモコハク酸イミド(N−ブロモスクシンイミド)(NBS)(Aldrich)(29mmoL)が、一部として添加され、混合物が70℃で一晩撹拌された。分析により、モノブロモおよびジブロモ生成物の存在が示され、さらにNBSの一部(5.6mmoL)が添加されて一晩撹拌が続けられた。冷水が添加されて水層がクロロホルムで抽出され、有機物が水で洗浄され、乾燥、ろ過され、さらに、シリカでの、DCM(Fisher):石油エーテル40−60(Fisher)=1:1溶出によって精製されるオイル(oil)を得るように濃縮された。得られた固体が、エタノールによって結晶化された。
【実施例】
【0084】
実施例1
フルオレンが70%−モノマー1が30%の共重合体「高分子1」の合成(図2に図示される)
フラスコが、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジボロン酸ビス(1,3−プロパンジオール)エステル(400.0mg、99.50%、0.713mmoL)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(157.6mg、99.95%、0.287mmoL)、3,7−ジブロモ−2,8−ジヘキシルジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド(235.0mg、98.7%、0.428mmoL)およびトルエン(16m)で充填された。混合物が、ビス[(トリ−オルト−トリル)ホスフィン]パラジウムジクロライド(11mg、1モル%)が添加される前に、15分間脱気され、さらに、脱気された水酸化テトラエチルアンモニウム20wt%水溶液(水4mL)が添加される前に、脱気が15分間継続され、そして、混合物が、光から保護されて、115℃で18時間、激しく撹拌された。
【0085】
ブロモベンゼン(0.1mL)が添加され、ベンゼンボロン酸(100mg)が添加される前に、115℃で1時間、撹拌が継続され、さらに、115℃で1時間、撹拌が継続された。冷却後、灰色の混合物(grey mixture)が300mLのメタノールにゆっくり添加され、灰色の繊維状の粗重合体を沈殿させた。その繊維状物がろ過され、メタノール、水、およびさらなるメタノールで洗浄された。
【0086】
高分子(重合体)が、トルエン(20mL)に再溶解され、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩溶液(15mL)が添加され、その混合物が65℃で16時間攪拌された。層が分離され、水層がトルエンで抽出された。一体とした有機層が、透明な黄色溶液を得るように、セライト545栓(a celite 545 plug)を通過させる前、希塩酸(希HCl溶液)、酢酸ナトリウム溶液および2度の水で洗浄された。その溶液が粘稠になるまで濃縮され、次に、メタノール(350mL)へ滴下的に添加され、灰色がかった白色(オフホワイト)の繊維状の重合体を沈殿させ、それがろ過により分離され、メタノールとアセトンで洗浄された(420mg)。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、ポリスチレン換算で、Mnが11,191で、Mwが29,849であった。
【0087】
高分子1のフォトルミネセンスは、トルエンおよびクロロホルムの溶液中で、蛍光光度計で測定された(発光ピークはおよそ410nm)。結果は図3に図示される。
【0088】
次に示すように、モノマー(単量体)1のアルキル化によって増加した溶解度は、また、従来の共重合体の場合に比較して、ジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド−3,7−ジイル単位の、より高濃度での共重合体の合成を可能にする。
【0089】
実施例2
フルオレンが50%−モノマー2が50%の共重合体「高分子2」の合成(図2に図示される)
フラスコが、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジボロン酸ビス(1,3−プロパンジオール)エステル(400.0mg、99.50%、0.713mmoL)、および3,7−ジブロモ−2,8−ジヘキシルジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド(391.4mg、98.7%、0.713mmoL)およびトルエン(16m)で充填された。混合物が、ビス[(トリ−オルト−トリル)ホスフィン]パラジウムジクロライド(11mg、1モル%)が添加される前に、15分間脱気され、さらに、脱気された水酸化テトラエチルアンモニウム20wt%水溶液(水4mL)が添加される前に、脱気が15分間継続され、そして、混合物が、光から保護されて、115℃で18時間、激しく撹拌された。
【0090】
ブロモベンゼン(0.1mL)が添加され、ベンゼンボロン酸(100mg)が添加される前に、115℃で1時間、撹拌が継続され、さらに、115℃で1時間、撹拌が継続された。冷却後、灰色の混合物(grey mixture)が300mLのメタノールにゆっくり添加され、灰色の繊維状の粗重合体を沈殿させた。その繊維状物がろ過され、メタノール、水、およびさらなるメタノールで洗浄された。
【0091】
高分子が、トルエン(20mL)に再溶解され、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩溶液(15mL)が添加され、その混合物が65℃で16時間攪拌された。層が分離され、水層がトルエンで抽出された。一体とした有機層が、透明な黄色溶液を得るように、セライト545栓(a celite 545 plug)を通過させる前、希塩酸(希HCl溶液)、酢酸ナトリウム溶液および2度の水で洗浄された。その溶液が粘稠になるまで濃縮され、次に、メタノール(350mL)へ滴下的に添加され、灰色がかった白色(オフホワイト)の繊維状の重合体を沈殿させ、それがろ過により分離され、メタノールとアセトンで洗浄された(503mg)。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、ポリスチレン換算で、Mnが6,597で、Mwが14,791であった。
【0092】
このように、モノマー1の増加した溶解度が、各ジオクチルフルオレン単位が2つのジヘキシルジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド−3,7−ジイル単位に隣接している、交互共重合体を形成した。
【0093】
高分子2のフォトルミネセンスは、トルエンおよびクロロホルムの溶液中で、蛍光光度計で測定され(発光ピークは、各々およそ410nmおよび415nm)、水晶基板(a quartz substrate)上の薄膜として、320nmで励起された(およそ425nmで発光ピーク)。結果は図4a(溶液)および4b(膜)に図示される。
【0094】
モノマー1の増加した溶解度はまた、スピンコート(回転塗布)のような、より良い溶解処理を促進させる、全電界発光高分子の溶解度を増加させ、そしてこのように重要な利点を示す。それゆえ、OLED素子の形成が顕著に改良される。
【0095】
電子素子が高分子1および高分子2を使用して作製された。
【0096】
実施例3
電界発光素子が、15オーム/sq.のシート抵抗を与える、パターンのある(patterned)インジウムスズ酸化物が塗布された、1.1nm厚のガラス基板を使用して作製された。その基板が、超音波浴(超音波洗浄器)中で、洗浄剤、脱イオン水、アセトンおよびイソプロパノールで連続的に洗浄され、つづいて、10分間、UVオゾン処理がされた。
【0097】
約50nm厚のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルフォネート)(PEDOT)の層が、最初にスピンコートされ、その後、ホットプレート上で150℃で10分間乾燥された。高分子1がトルエンに溶解され、PEDOT層上にスピンコートされて約65nm厚の層を形成した。4nm厚のバリウムの層、そしてそれから少なくとも100nmのアルミニウムが、約1×10−6mBarの真空度で、その高分子層の上にマスクを通して蒸着させられた。
【0098】
4mm×5mmの4つの素子が単一基板上に得られた。それらの素子は、紫外線硬化エポキシ樹脂を使用して素子領域の上の1枚のガラスを固定するように密封された。
【0099】
実施例4
高分子1を高分子2に代えて、実施例3の方法が繰り返され、4mm×5mmの4つの素子を単一基板上に形成した。
【0100】
実施例5
実施例4の方法が繰り返されたが、高分子2は、下記のような緑色リン光イリジウム錯体の10w/w%と共析出され、4mm×5mmの4つの素子を単一基板上に形成した。
【0101】
【化10】

【0102】
素子(デバイス)試験
実施例3、4および5の基板のそれぞれが、ピンがITO陽極およびバリウム/アルミニウム陰極への電気接点を形成する、サンプルホルダーに設置された。そのサンプルホルダーは、積分球に取り付けられた。各基板上の個々の素子は、そのサンプルホルダー上のスィッチを経て選択され得る。
【0103】
アジレント(Agilent)6632B電源(power supply)が、素子の運転に使用された。電界発光が、光ファイバーケーブルの付いた球(sphere)に接続した、オーシャン オプティクス(Ocean Optics)USB4000 CCDを使用して測定された。電源およびCCDは両方とも、パーソナルコンピュータによって制御された。
【0104】
素子に供給される電圧が一定の段階的に増加され、各段階で、電流および電界発光スペクトルが測定された。これらの値は、その後、電流密度、外部量子効率、光強度出力(optical power output)、壁プラグ効率(wall plug efficiency)、輝度(luminance)、発光効率、明度(brightness)、およびCIEコーディネイト(CIE co-ordinates)の計算に使用された。
【0105】
これらの試験の結果のいくつかが、図6から11に示される。
【0106】
図5から7に示されるように、実施例3の素子(高分子1含有)は、およそ425nmに強い電界発光放射(electroluminescent emission)ピークを示し(7V、48mA/cm、202cd/mで測定)、それによって、素子のオン電圧または明度に悪影響を与えることなく、非常に濃い青色放射を発した。
【0107】
図10は、実施例4(7V、6.4mA/cm、23cd/mで)において、425nm(およびCIEコーディネイト0.18、0.15で)で青色放射体として働き、そして、実施例5において高エネルギー三重項ホストとして働く、高分子2を持つ実施例4および5に係る素子の、オーバーレイ(overlaid)電界発光出力を示し、それは、およそ530nm(8V、6.7mA/cm、283cd/mおよびCIEコーディネイト0.35、0.62で)で発光する。イリジウム錯体のリン光を発する性質は、より高い量子効率を提供し、さらに加えて、発光を、人間の目がより敏感な、青色から緑色にシフトさせる。このようにして、極めて効率的な緑色光放射OLED素子が得られる。
【0108】
実施例4(高分子2含有)の素子のデータを表す図8および9は、素子が電圧の許容範囲内で良好に動作することを示す。
【0109】
実施例5(高分子2およびイリジウム錯体含有)の素子のデータを表す図11および12は、また、素子が電圧の許容範囲内で良好に動作することを示す。
【0110】
緑色リン光材料のホスティングのための本発明の共重合体の適切性は、ジヘキシルジベンゾチオフェン−S,S−ジオキサイド−3,7−ジイル単位の割合の増加につれて、これらの新しい共重合体の三重項エネルギーが増加する事実に起因する。このことが、次の構造を持つ3つの異なる素子A、BおよびCからの、電界発光スペクトルおよびフォトルミネセンス測定を示す、図13および14から認められる:ガラス/ITO(150nm)/PEDOT:PSS(50nm)/LEP/Ba(4nm)/Al(100nm)、ここで、素子Aの高分子において、モノマー1の割合は15%で、素子Bは実施例1(モノマー1の割合は30%)の高分子1を有し、素子Cは実施例2(モノマー1の割合は50%)の高分子2を有し、各高分子は3%の緑色のリン光を発するイリジウム錯体を混合される。
【0111】
緑色放射(発光)の青色放射に対する比率は、EL測定と比べてフォトルミネセンス測定において減少する。事実、EL測定において、素子Cの材料からの発光がない一方で、ホスト高分子(重合体)からの青色蛍光発光は、全ての材料から観察される。このことが、電動(electrical operation)下で、直接電荷トラップ(direct charge trapping)によって、励起子(エキシトン)が緑色のリン光を発するイリジウム錯体上に形成されることの証拠を提供する。三重項励起子のいわゆるデクスターエネルギー移動(Dexter energy transfer)は、除外されることができないけれども、このことは、ホスト高分子からの蛍光発光を減少させないであろう。
【0112】
もし緑色のリン光を発するイリジウム錯体(または、任意の他のリン光を発するゲスト材料)の三重項エネルギーが、ホスト高分子のそれより高い場合は、リン光を発するゲストからの緑色放射が減少するであろう。リン光を発する錯体へのデクスター移動(Dexter transfer)は起こりそうもなく、そして、直接電荷トラップによってリン光を発する錯体上に形成される任意の励起子が、ホスト高分子のより低いエネルギーの三重項に移動するかもしれない。素子A、BおよびCのこのシリーズにおいて、ホスト高分子中のモノマー1の量が増加するにつれて、リン光を発するゲストからの発光がより強くなる。より高い三重項エネルギーがホストへのエネルギー移動を阻止していることは明確である。このように、その結果は、これらのポリマーはリン光を発する材料に対してホストとして働くことができることを、納得のいくように示す。特に、高分子2の三重項エネルギーは、緑色のリン光を発する材料に対してホストとして働くのに十分なほど、十分に高い。
【0113】
他の多くの効果的な代替案が当業者に思い浮かぶであろうことは疑いがない。本発明は、記載された実施の形態に限定されず、そして、ここに添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある、それらの当業者に明らかな変更を包含していることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学式1の構造を有する第1の繰り返し単位を含有し、
【化1】


ここで、RからRは、同じかまたは異なっており、Hまたは任意に置換されたCからC26の直鎖もしくは分岐のアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、アルコキシ基を有し;RとRのすくなくとも1つ、およびRとRの少なくとも1つはHではなく、
XはS、SO、SO、O、NR、またはPの1つを有し、
Yは存在しないか、またはS、SO、SO、O、NR、P、またはCR10の1つを有し、
からR10は、同じかまたは異なっており、Hまたは任意に置換されたCからC20の分岐もしくは環状の、アルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖、またはアリール基を有する、
電界発光高分子。
【請求項2】
XはSOもしくはSOを有し、および/またはYは存在しない、
請求項1に記載の電界発光高分子。
【請求項3】
および/またはRはHである、
請求項1または2に記載の電界発光高分子。
【請求項4】
からRの少なくとも3つはHではない、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項5】
からRがHではない場合は、CからC10の直鎖もしくは分岐のアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項6】
前記第1の繰り返し単位は、次の化学式2の構造を有し、
【化2】


ここで、好ましくはRおよびRはHであり、RおよびRはC13である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項7】
前記高分子は、有機半導体部分を有する第2の繰り返し単位を含有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項8】
前記第2の繰り返し単位は、次の化学式3の構造を有し、
【化3】


ここで、R11およびR12は、同じかまたは異なっており、Hまたは任意に置換されたCからC20の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、アルケニルまたはアルキニル鎖、アリール基、アルコキシ基、アミノ、アミド、またはヒドロキシル基を有し得る、
請求項7に記載の電界発光高分子。
【請求項9】
11およびR12はC17である、
請求項8に記載の電界発光高分子。
【請求項10】
前記第1の繰り返し単位の数(y)に対する前記第2の繰り返し単位の数(x)の比率は、少なくとも15:85であり、好ましくは30:70であり、特に好ましくは50:50である、
請求項7〜9のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項11】
およびRは、CからC10の非置換直鎖アルキル鎖を有する、
請求項7〜10のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項12】
前記第2の繰り返し単位は、高分子の主鎖中にパラ結合またはメタ結合によって組み込まれている、
請求項7〜11のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項13】
少なくとも1つのアルキン基をさらに有する、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項14】
少なくとも1つの前記アルキン基は、前記第1の繰り返し単位と前記第2の繰り返し単位の間、または2つの前記第2の繰り返し単位の間に位置させることができる、
請求項13に記載の電界発光高分子。
【請求項15】
前記高分子は、電子輸送部分を有する第3の繰り返し単位を含有する、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項16】
前記高分子は、正孔輸送部分を有する第4の異なる繰り返し単位を含有する、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項17】
前記高分子は、ブロック共重合体、規則的もしくは交互共重合体、またはランダム共重合体を有する、
請求項1〜16のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項18】
1つまたはそれ以上の赤色放射および/または緑色放射の繰り返し単位をさらに有する、
請求項1〜17のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項19】
前記赤色放射および/または緑色放射の繰り返し単位は、リン光放射体を有する、
請求項18に記載の電界発光高分子。
【請求項20】
前記第1の繰り返し単位は、前記高分子の約2−50モル%、例えば10−35モル%または20−30モル%からなる、
請求項1〜19のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項21】
少なくとも前記第1の繰り返し単位の一部は、青色放射部分として機能する、
請求項1〜20のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項22】
少なくとも前記第1の繰り返し単位の一部は、電子輸送部分として機能する、
請求項1〜21のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項23】
少なくとも前記第1の繰り返し単位の一部は、例えば、前記高分子が1つまたはそれ以上のリン光放射体を有するならば、1つまたはそれ以上のリン光放射体の存在下で、高エネルギー三重項ホストとして機能する、
請求項1〜22のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項24】
前記第1の繰り返し単位および前記第2の繰り返し単位は、それらが、励起状態でそれらの間に電荷移動を許可するように選択される、
請求項1〜23のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項25】
前記高分子は、白色点(x、y=0.33、0.33)に近い放射光にできる、
請求項1〜24のいずれか一項に記載の電界発光高分子。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の高分子を有する、
光学素子。
【請求項27】
赤色および/または緑色のリン光放射体をさらに有する、
請求項26に記載の光学素子。
【請求項28】
前記光学素子は、前記高分子が放射層の少なくとも一部を構成している有機光放射素子である、
請求項26または27に記載の光学素子。
【請求項29】
前記有機光放射素子は第1および第2電極を有し、前記放射層は前記第1および第2電極の間に形成されている、
請求項28に記載の光学素子。
【請求項30】
正孔注入層または電子注入層を含む、少なくとも1つの層をさらに有する、
請求項28または29に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−505567(P2013−505567A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529288(P2012−529288)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063721
【国際公開番号】WO2011/033078
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512069603)トルン ライティング リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】THORN LIGHTING LIMITED
【住所又は居所原語表記】Butchers Race, Green Lane Industrial Estate, Spennymoor, Durham DL16 6HL United Kingdom
【Fターム(参考)】