説明

電磁アクチュエータ

【課題】自己保持をするときのロータの吸引力を均一にして動作電圧等を安定させること及びアクチュエータの構造の簡素化を図ることを課題とする。
【解決手段】ロータ12がコイル14への入力で所定回転角内の双方向に回転する電磁アクチュエータ10であって、ヨーク15に、ロータ12とヨーク15と間に吸引力の差を発生させるために、コイル14のループの中心線CLがヨーク15に交差する点を中心として対向して設けられた窓状の孔63,64を備え、吸引力の差を用いて所定回転角内で双方向に保持可能とするとともに、所定回転角内の双方向で保持するときに、ロータ12の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を、窓状の孔63,64の端部の近傍に臨ませた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラのシャッターやレンズカバーなどの駆動源として用いられる電磁アクチュエータであり、コイルに通電することでロータを所定回転角内で回転させる電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁アクチュエータの中には、2極着磁された永久磁石からなり、回転可能に配されたロータと、このロータの外周を囲むように配置され、磁性部材で形成したリング状のヨークと、このヨークの内側でロータを挟んで互いに対向する位置に配置されたコイルとを有するものが知られている。
【0003】
この種の電磁アクチュエータは、ヨークとロータと間に働く吸引力を用いて保持力を発生させて双方向に保持するものであり、動作に関しては、一方側に保持された状態のロータをコイルに通電することで他方側に回転させる。この状態から電気極性を反対方向にした電気をコイルに通電することで、磁界の方向を換え、元の位置に復帰させるものである。
このような電磁アクチュエータとして、自己保持させるために磁性体のピンをヨークに付帯するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−116478号公報(第11頁、図1)
【0004】
特許文献1の技術の概要を、図12に基づいて説明する。
図12は従来の電磁アクチュエータの説明図であり、電磁アクチュエータ200は、2極着磁された永久磁石からなる回転可能に配されたロータ201と、このロータ201の外周を囲むように配置され、磁性部材で形成したリング状のヨーク202と、このヨーク202の内側でロータ201を間にして互いに対向する位置に配置され、ロータ201を駆動するコイル203と、ヨーク202の内側でコイル203の対向方向に直交させて配置され、ロータ201の位置決めのための磁性ピン204,204とからなる。
【0005】
このように、従来の電磁アクチュエータ200は、ロータ201を所定回転角θ1内で回転させ、所定回転角θ1の両端で自己保持できる双安定型のアクチュエータであり、磁性ピン204,204を用いることで、ロータ201の所定回転角内の両端で非通電時にロータ201とヨーク202との磁気作用により自己保持するものであった。
【0006】
しかし、このような電磁アクチュエータ200では、磁性ピン204,204の配置される位置および磁性ピン204,204自体のばらつき等により、磁気吸引力(若しくは磁気反発力)のばらつきが生じる。これに伴いコイル203による動作電圧が大きく左右されるため、アクチュエータの電気特性的にばらつきが大きく発生していた。従って、実用には動作電圧等に大きなマージンを必要としていた。
【0007】
その上、この磁気吸引力(若しくは磁気反発力)を得るための磁性ピン204は必須のものとして、少なくとも一本は配置するものであり、磁性ピン204を保持するための構造が複雑なものとなった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、自己保持をするときのロータの吸引力を均一にして動作電圧等を安定させることができるとともに、アクチュエータの構造の簡素化を図ることができる双安定型の電磁アクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、円筒状の磁性体に径方向に2極に着磁したロータと、このロータを所定回転角内に回転可能に支持する支持体と、ロータの両端面の直径外方を通るように支持体の廻りにループ状に巻回され、ロータを駆動するコイルと、これらのロータ、支持体及びコイルの一部を一括して覆いつつ、ロータの円筒面の廻りに配置する略円筒状のヨークとからなり、ロータがコイルへの入力で所定回転角内の双方向に回転する電磁アクチュエータであって、ヨークに、ロータとヨークと間に吸引力の差を発生させるために、コイルのループの中心線がヨークに交差する点を中心として対向して設けられた窓状の孔を備え、吸引力の差を用いて所定回転角内で双方向に保持可能とするとともに、所定回転角内の双方向で保持するときに、ロータの円筒面に現れるN極とS極との境界面を、窓状の孔の端部の近傍に臨ませることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、ロータに、支持体に回転可能に嵌合する軸と、所定回転角内で支持体に当接するストッパ片と、被動作体を動作させる作動片とを備え、これらの軸、ストッパ片及び作動片を一体的に形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、ロータの円筒面に磁性片を装着する装着部が形成され、この装着部に磁性片を装着することでロータとヨークとの距離を局部的に近づけたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、保持力の増強のためにロータの円筒面の一部を突出させて、ロータとヨークとの距離を局部的に近づけたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ヨークに、ロータとヨークと間に吸引力の差を発生させるために、コイルのループの中心線がヨークに交差する点を中心として対向して設けられた窓状の孔を備えたので、吸引力の差を用いて所定回転角内で双方向に保持可能となる。
このように、吸引力の差を作り出すのはヨークに設けられた窓状の孔なので、例えば、磁性ピンなどの磁性部材をヨーク内側に配置する場合に比べて設定位置のばらつきが少ない。この結果、ロータの吸引力を均一にすることができ、コイルに加える動作電圧等を安定させることができる。
加えて、吸引力の差を作り出すのはヨークに設けられた窓状の孔なので、アクチュエータの構造を簡素にすることができる。これにより、アクチュエータの部品点数の低減を図ることができ、アクチュエータの生産性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ロータに、支持体に回転可能に嵌合する軸と、所定回転角内で支持体に当接するストッパ片と、被動作体を動作させる作動片とを一体的に形成することで、ロータに軸、ストッパ片及び作動片などの付帯部品を同時に設けることができる。これにより、ロータの生産性の向上を図ることができる。この結果、アクチュエータのコストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、ロータの円筒面に磁性片を装着する装着部が形成され、この装着部に磁性片を装着することでロータとヨークとの距離を局部的に近づけた。ロータとヨークとの距離を局部的に近づけることで、保持力の向上を図ることができる。例えば、装着部はロータの作動片などの付帯部品とともに一体的に形成をすることができる。これにより、磁性片の装着性の向上を図ることができるとともに、ロータに磁性片を取付けるためのコストを最小限に抑えることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、保持力の増強のためにロータの円筒面の一部を突出させて、ロータとヨークとの距離を局部的に近づけた。このように、ロータの保持力を任意に増強することができる。これにより、アクチュエータに強い保持力を必要とする機器に用いることができる。この結果、アクチュエータの用途の拡大を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る電磁アクチュエータの斜視図であり、図2は図1に示された電磁アクチュエータの分解斜視図であり、図3は図1に示された電磁アクチュエータの平面図であり、図4は図1の4−4線断面図であり、図5は図1の5−5線断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、電磁アクチュエータ10は、円筒状の磁性体を主要構成とするロータ12と、このロータ12を回転可能に支持する支持体13と、この支持体13に巻回したコイル14と、これらのロータ12、支持体13及びコイル14の一部を一括して覆いつつ、ロータ12の円筒面の廻りに配置するヨーク15とからなり、ロータ12が所定回転角内で回転し、所定回転角の両端でロータが自己保持する双安定型のアクチュエータである。
【0019】
ロータ12は、円筒状の磁性体の矢印A1で示す径方向にS極とN極の2極に着磁された永久磁石(磁性体)21と、この永久磁石21の両端面21a,21aの中心に設けられた軸22と、この軸22の下部に形成された円形フランジ23と、この軸22の上部から径外方に扇状に延出された扇状フランジ24と、この扇状フランジ24の上面から上方且つ径外方に延出された作動片25と、扇状フランジ24の外周から下方に垂下して永久磁石21の円筒面21bに沿わせて延ばされたストッパ片26とからなる。
【0020】
なお、永久磁石21の両端面21a,21aはロータ12の両端面でもある。また、永久磁石21の円筒面21bはロータ12の円筒面でもある。
【0021】
軸22は、円筒状の永久磁石(磁性体)21の中心に設けられた貫通孔28に形成され、永久磁石21に固着される。また、支持体13に嵌合して回転可能に支持される。
円形フランジ23及び扇状フランジ24は、軸22の抜け防止機能を有する。
【0022】
作動片25は、扇状フランジ24の上面から上方且つ外方に延出されるステー部31と、このステー部31の先端部分に上方に延ばされた作動ポール32とからなり、作動ポール32は、デジタルカメラのシャッタやレンズカバーなどの被動作体(不図示)を動作させる部分である。さらに、作動片25は、永久磁石21の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を中心として径外方の一方に延出される。
【0023】
ストッパ片26は、支持体13内にてロータ12を所定回転角内で双方向に回転したときに、支持体13の所定の部位に当てる部分であり、永久磁石21の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33を中心として、垂下させたものである。
【0024】
これらの軸22、円形フランジ23、扇状フランジ24、作動片25及びストッパ片26は、永久磁石21にインサート成形などで一体的に形成される。これにより、ロータ12の生産性の向上を図ることができる。この結果、アクチュエータのコストの低減を図ることができる。
【0025】
支持体13は、好ましくは樹脂などの非磁性体にて形成される部材であり、ロータ12の軸22の上端を回転可能に支持する上部支持体34と、ロータ12の軸22の下端を回転可能に支持する下部支持体35とからなる。
【0026】
上部支持体34は、ロータ12の軸22の上端を支持する上支持部(上支持孔)36と、コイル14を巻回する上部溝37と、ロータ12のストッパ片26が当接する一方の位置決め部38及び他方の位置決め部39と、下部支持体35と所定位置にて合わせるために、孔41a,41aを有する嵌合面41,41と、ヨーク15に嵌合され、ヨーク15との位相を合致させる突起42と、ロータ12を受ける受け面43(図4参照)とを有する。
【0027】
上支持部(上支持孔)36は、図4に示すように、ロータ12を受ける受け面43を有することで、ロータ12の回転時の摩擦力を小さくすることができる。
上部溝37は、上部支持体34の上面に形成される天井溝44と、この天井溝44から垂下させ上部支持体34の側面に形成される側溝45,45とを有する。
位置決め部38,39は、ロータ12の回転角を規制する部分である。
【0028】
下部支持体35は、ロータ12の軸22の下端を支持する下支持部(下支持孔)46と、コイル14を巻回する下部溝47と、上部支持体34と所定位置にて合わせるために、嵌合面41,41の孔41a,41aに挿入するボス51,51と、ロータ12を受ける受け面53(図4参照)とを有する。
【0029】
下支持部(下支持孔)46は、図4に示すように、ロータ12を受ける受け面53を有する。これにより、ロータ12の回転時の摩擦力を小さくすることができる。
下部溝47は、下部支持体35の下面に形成される底溝54と、この底溝54から上方に形成されるとともに、下部支持体35の側面に形成される側溝55,55とを有する。
【0030】
上述のように、支持体13の凹部56は、上部溝37の天井溝44及び側溝45,45と、下部溝47の底溝54及び側溝55,55とで構成されたループ状の部分である。
【0031】
すなわち、支持体13は、ロータ12の軸22方向に2分割構成とすることで、上部支持体34と下部支持体35とから構成される。これにより、上部支持体34にロータ12の軸22の上端を挿入し、この状態で下部支持体35にロータ12の軸22の下端を挿入し、上部支持体34に下部支持体35を合わせることで、支持体13にロータ12を組立ることができる。この結果、支持体13にロータ12を容易に組立てることができる。
【0032】
加えて、上部支持体34に孔41a,41aを有する嵌合面41,41を設け、下部支持体35に上部支持体34と所定位置にて合わせるためボス51,51を設けたので、上部支持体34に下部支持体35を精度よく合わせることができる。
【0033】
支持部13は、図5に示すように、上部溝37及び下部溝47を組み合わせることで、コイル14を巻回する凹部56が形成され、この凹部56は巻回されたコイル14が支持体13外形内に収納される深さを有する。これにより、支持体13内にコイル14を形成することができ、支持体13側方の廻りに円筒状のヨーク15を被せることができる。
さらに、上部支持体34と下部支持体35は、コイル14を巻回することで一体的に固定される。
【0034】
コイル14は、図5に示すように、ロータ12の両端面21a,21aの直径外方を通るように支持体13の廻りにループ状に巻回されるものであり、通電することでロータ12を駆動するものである。
【0035】
ヨーク15は、略円筒状の磁性体で形成された部材であり、略円筒状の上端に形成され、支持体13の突起42に嵌合され、支持体13とヨーク15とを相互に位置合わせする位置合わせ部(切欠き)57と、略円筒状の側面に形成された窓状の孔63,64とを有する。
【0036】
支持体13にヨーク15との位相を合致させる突起42を設け、ヨーク15に支持体13とヨーク15とを相互に位置合わせする位置合わせ部57を設けたので、支持体13とヨーク15との位相を容易に合わせることができる。
【0037】
図1及び図4に示すように、窓状の孔63,64は、ロータ12とヨーク15と間に吸引力の差を発生させるために、コイル14のループの中心線CLがヨーク15に交差する点を中心として対向して設けられたものである。
コイル14のループの中心線CLは、図4に示すように、コイル14のループ面B1,B2に直交する線である。
【0038】
電磁アクチュエータ10では、ヨーク15に、ロータ12とヨーク15と間に吸引力の差を発生させるために、コイル14のループの中心線CLがヨーク15に交差する点を中心として対向して設けられた窓状の孔63,64を備えたので、吸引力の差を用いて所定回転角内で双方向に保持可能となる。
【0039】
このように、吸引力の差を作り出すのはヨーク15に設けられた窓状の孔63,64なので、例えば、磁性ピンなどの磁性部材をヨーク15内側に配置する場合に比べて設定位置のばらつきが少ない。この結果、ロータ12の吸引力を均一にすることができ、コイル14に加える動作電圧等を安定させることができる。
【0040】
さらに、吸引力の差を作り出すのはヨーク15に設けられた窓状の孔63,64なので、アクチュエータの構造を簡素にすることができる。これにより、アクチュエータの部品点数の低減を図ることができ、アクチュエータの生産性の向上を図ることができる。
【0041】
図6(a)〜(c)は本発明に係る電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。また、図3に示したように、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0042】
(a)において、支持体13(図3参照)の一方側にロータ12を保持させた状態を示し、この状態では、ロータ12の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33が、窓状の孔63,64の一方側の端部63a,64aの近傍に臨んでいる。また、この状態ではコイル14は非通電状態にある。
【0043】
(b)において、コイル14に通電することで、ロータ12は支持体13(図3参照)の一方側から他方側へ矢印a1の如く回転する。すなわち、ロータ12を所定回転角α1回転する。
【0044】
詳細には、図面左側ではループ状のコイル14に、電流方向C1で示すように紙面手前から奥に向けて電流を流し、図面右側ではループ状のコイル14に、電流方向C2で示すように紙面奥から手前に向けて電流を流す。永久磁石21により矢印a2,a2の如く図面右側から左側に向けて磁界が発生しているので、フレミングの左手の法則により、矢印a3,a3の如くコイル14を回転させる力が発生する。しかし、コイル14はヨーク15側に固定されているので、その反力としてロータ12に矢印a4,a4の如く回転する力が加わる。これにより、ロータ12は所定回転角α1の範囲で回転する。
【0045】
(c)において、(b)に示す所定回転角α1回転して支持体13の他方側にロータ12が保持される。この状態では、ロータ12の円筒面21bに現れるN極とS極との境界面33が、窓状の孔63,64の他方側の端部63b,64bの近傍に臨んでいる。また、この状態ではコイル14は非通電状態にある。
また、(a)に示したように、支持体13の一方側にロータ12を復帰させるためには、(b)に示した状態とは逆方向の電流(電力)をコイル14に加え、逆方向の磁界を発生させる。
【0046】
図7は本発明に係る別実施例の電磁アクチュエータのロータの斜視図であり、ロータ72は、円筒状の磁性体の径方向にS極とN極の2極に着磁された永久磁石81と、この永久磁石81の両端面81a,81aの中心に設けられた軸82と、この軸82の下部に形成された円形フランジ83と、この軸82の上部から径外方に扇状に延出された扇状フランジ84と、この扇状フランジ84の上面から上方且つ外方に延出された作動片85と、扇状フランジ84外周から下方に垂下して永久磁石81の円筒面81bに沿わせて延ばされたストッパ片86と、扇状フランジ84外周から下方に垂下して永久磁石81の円筒面81bに沿わせて延ばされた垂下片87と、ストッパ片86に装着する磁性片(磁性ピン)88と、垂下片87に装着する磁性片(磁性ピン)89と、からなる。なお、永久磁石81の円筒面81bは、ロータ72の円筒面でもある。
【0047】
ストッパ片86と垂下片87との関係は、永久磁石81を挟んで形成される。ストッパ片86は、磁性片88を装着する装着部86aを有し、垂下片87は磁性片89を装着する装着部87aを有する。これにより、ヨーク15の内側に永久磁石81を間接的に且つ局部的に接近させるようにした。
【0048】
図8(a)〜(c)は図7に示されるロータを採用した第2実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。なお、図2に示した電磁アクチュエータ10に使用した部品と共通部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。また、図3に示したように、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0049】
(a)において、電磁アクチュエータ70は、図7に示したロータ72と、このロータ72を回転可能に支持する図3に示した支持体13と、この支持体13に巻回したコイル14と、これらのロータ72、支持体13及びコイル14の一部を一括して覆いつつ、ロータ72の円筒面81bの廻りに配置するヨーク15とからなる。
【0050】
(a)に示す電磁アクチュエータ70は、支持体13(図3参照)の一方側にロータ72を保持させた状態にあり、この状態では、永久磁石81の円筒面81bに現れるN極とS極との境界面73を、窓状の孔63,64の一方側の端部63a,64aの近傍に臨ませるとともに、垂下片87の磁性片89を、ヨーク15の窓状の孔63,64のない部分に食い込ませ、支持体13の一方側において保持力の向上を図るようにした。なお、この状態ではコイル14は非通電状態にある。
【0051】
すなわち、ロータ72の円筒面81bに磁性片88,89を装着する装着部86a,87aが形成され、これらの装着部86a,87aに磁性片88,89を装着することで、ヨーク15の内側に永久磁石81を間接的に且つ局部的に接近させることができる。これにより、ロータ72の保持力の向上を図ることができる。
【0052】
加えて、装着部86a,87aは、ロータ72の作動片85などの付帯部品とともに一体的に形成をすることができるので好都合である。これにより、磁性片88,89の装着性の向上を図ることができ、ロータ72に磁性片88,89を取付けるためのコストを最小限に抑えることができる。
【0053】
(b)において、コイル14に通電することで、ロータ72は支持体13(図3参照)の一方側から他方側へ矢印b1の如く回転する。すなわち、ロータ72を所定回転角α1回転する。
【0054】
(c)において、支持体13(図3参照)の他方側にロータ72が保持された状態では、ロータ72の円筒面81bに現れるN極とS極との境界面73を、窓状の孔63,64の他方側の端部63b,64bの近傍に臨ませるとともに、ストッパ片86側の磁性片88を、ヨーク15の窓状の孔63,64のない部分に食い込ませ、支持体13の他方側においても保持力の向上を図るようにした。なお、この状態ではコイル14は非通電状態にある。
【0055】
図9(a)〜(c)は本発明に係る第3実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。なお、図2に示した電磁アクチュエータ10に使用した部品と共通部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。また、図3に示したように、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0056】
(a)において、電磁アクチュエータ90は、ロータ92と、このロータ92を回転可能に支持する図3に示した支持体13と、この支持体13に巻回したコイル14と、これらのロータ92、支持体13及びコイル14の一部を一括して覆いつつ、ロータ92の永久磁石91の円筒面91bの廻りに配置するヨーク15とからなる。なお、永久磁石91の円筒面91bは、ロータ92の円筒面でもある。
【0057】
ロータ92は、円筒面91bにストッパ片95が形成され、このストッパ片95にN極とS極の境界面93を挟んで一対の装着部96,97が形成され、N極側の装着部96に磁性片98が装着され、S極側の装着部97に磁性片99が装着されたものである。これにより、ヨーク15の内側に永久磁石91を間接的に且つ局部的に接近させるようにした。
【0058】
支持体13(図3参照)の一方側にロータ92を保持した状態では、S極側の磁性片99をヨーク15の窓状の孔63のない部分に食い込ませたので、ロータ92の保持力の向上を図ることができる。
【0059】
(b)において、コイル14に通電することで、ロータ92は支持体13(図3参照)の一方側から他方側へ矢印c1の如く回転する。すなわち、ロータ92を所定回転角α1回転する。
【0060】
(c)において、支持体13(図3参照)の他方側にロータ92を保持した状態では、N極側の磁性片98をヨーク15の窓状の孔63のない部分に食い込ませたので、ロータ92の保持力の向上を図ることができる。
【0061】
上述したように、装着部96,97はロータ92のストッパ片95などの付帯部品とともに一体的に形成をすることができる。これにより、磁性片98,99の装着性の向上を図ることができ、磁性片98,99をロータ92に精度良く取り付けることができる。
【0062】
図10(a)〜(c)は本発明に係る第4実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。なお、図2に示した電磁アクチュエータ10に使用した部品と共通部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。また、図3に示したように、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0063】
(a)〜(c)において、電磁アクチュエータ100は、ロータ102と、このロータ102を回転可能に支持する図3に示した支持体13と、この支持体13に巻回したコイル14と、これらのロータ102、支持体13及びコイル14の一部を一括して覆いつつ、ロータ102の永久磁石101の円筒面101bの廻りに配置するヨーク15とからなり、所定回転角α1内で双方向で保持するようにしたアクチュエータである。なお、永久磁石101の円筒面101bは、ロータ102の円筒面でもある。
【0064】
ロータ102の永久磁石101は、N極とS極との境界面103のN極側に入り込んだ円筒面101bに第1・第2の突出部108,109を設けることで、ヨーク15の内側にロータ102を間接的に且つ局部的に接近させるようにした。
【0065】
(a)に示した状態では、第1の突出部108を窓状の孔63内に位置させるとともに、第2の突出部109を窓状の孔63,64のない部分に食い込ませた。これにより、第1の突出部108とヨーク15との磁気作用を弱め、第2の突出部109とヨーク15との磁気作用を強めた。この結果、支持体13(図3参照)の一方側でのロータ102の保持力の増大を図ることができる。
【0066】
(b)において、コイル14に通電することで、ロータ102は支持体13(図3参照)の一方側から他方側へ矢印d1の如く回転する。すなわち、ロータ102を所定回転角α1回転する。
【0067】
(c)に示した状態では、第2の突出部109を窓状の孔64内に位置させるとともに、第1の突出部108をヨーク15の窓状の孔63,64のない部分に食い込ませた。これにより、第2の突出部109とヨーク15との磁気作用を弱め、第1の突出部108とヨーク15との磁気作用を強めることができる。この結果、支持体13(図3参照)の他方側でもロータ102の保持力の増大を図ることができる。
【0068】
このように、第1・第2の突出部108,109をロータ102の永久磁石101に形成することで、ロータ102の保持力を任意に増強することができる。これにより、アクチュエータに強い保持力を必要とする機器に適応させることができる。この結果、アクチュエータの用途の拡大を図ることができる。
【0069】
図11(a)〜(c)は本発明に係る第5実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。なお、図2に示した電磁アクチュエータ10に使用した部品と共通部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。図3に示したように、支持体13の一方側とは支持体13の一方の位置決め部38の側、支持体13の他方側とは支持体13の他方の位置決め部39の側を言う。
【0070】
(a)〜(c)において、電磁アクチュエータ110は、ロータ112と、このロータ112を回転可能に支持する図3に示した支持体13と、この支持体13に巻回したコイル14と、これらのロータ112、支持体13及びコイル14の一部を一括して覆いつつ、ロータ112の永久磁石111の円筒面111bの廻りに配置するヨーク15とからなり、所定回転角α1内で双方向で保持するようにしたアクチュエータである。なお、永久磁石111の円筒面111bはロータ112の円筒面でもある。
【0071】
ロータ112の永久磁石111は、N極とS極との境界面113を挟んで、作動片115側の円筒面111bを一体的に突出させて、N極側の突出部118が形成されるとともにS極側の突出部119が形成される。
【0072】
(a)に示した状態では、N極側の突出部118を窓状の孔63内に位置させ、S極側の突出部119を窓状の孔63の一方側の端部63aよりに位置させた。これにより、N極側の突出部118とヨーク15の磁気作用を弱め、S極側の突出部119とヨーク15との磁気作用を強めることができる。この結果、支持体13(図3参照)の一方側でのロータ112の保持力の増大を図ることができる。
【0073】
(b)において、コイル14に通電することで、ロータ112は支持体13(図3参照)の一方側から他方側へ矢印e1の如く回転する。すなわち、ロータ112を所定回転角α1回転する。
【0074】
(c)に示した状態では、S極側の突出部119を窓状の孔63内に位置させ、N極側の突出部118を窓状の孔63の他方側の端部63bよりに位置させた。これにより、S極側の突出部119とヨーク15の磁気作用を弱め、N極側の突出部118とヨーク15との磁気作用を強めることができる。この結果、支持体13(図3参照)の他方側でもロータ112の保持力の増大を図ることができる。
【0075】
このように、突出部118,119をロータ112に形成することで、ロータ112の保持力を任意に増強することができる。これにより、アクチュエータに強い保持力を必要とする機器に用いることができ、アクチュエータの用途の拡大を図ることができる。
【0076】
尚、本発明に係る電磁アクチュエータは、窓状の孔63,64をパンチングメタルのような多数の孔や複数のスリットにて構成するものであってもよい。
また、窓状の孔63,64は、矩形の孔であったが、丸孔や矩形の孔にコーナを曲線にしたものであってもよい。
さらに、磁性片88,89,98,99はピン形状も含む。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る電磁アクチュエータは、デジタルカメラのシャッターやレンズカバーなどの小型電子機器に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る電磁アクチュエータの斜視図である。
【図2】図1に示された電磁アクチュエータの分解斜視図である。
【図3】図1に示された電磁アクチュエータの平面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。
【図7】本発明に係る別実施例の電磁アクチュエータのロータの斜視図である。
【図8】図7に示されるロータを採用した第2実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。
【図9】本発明に係る第3実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。
【図10】本発明に係る第4実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。
【図11】本発明に係る第5実施例の電磁アクチュエータの動きを示す作用説明図である。
【図12】従来の電磁アクチュエータの説明図である。
【符号の説明】
【0079】
10…電磁アクチュエータ、12…ロータ、13…支持体、14…コイル、15…ヨーク、21a,21a…両端面、21b…円筒面、22…軸、25…作動片、26…ストッパ片、33…N極とS極との境界面、63,64…窓状の孔、63a,63b,64a,64b…端部、CL…ループの中心線、70,90…電磁アクチュエータ、72,92…ロータ、81b,91b…円筒面、86a,87a,96,97…装着部、88,89,98,99…磁性片、100,110…電磁アクチュエータ、101b,111b…円筒面、102,112…ロータ、108,109,118,119……突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の磁性体に径方向に2極に着磁したロータと、このロータを所定回転角内に回転可能に支持する支持体と、前記ロータの両端面の直径外方を通るように前記支持体の廻りにループ状に巻回され、前記ロータを駆動するコイルと、これらのロータ、支持体及びコイルの一部を一括して覆いつつ、前記ロータの円筒面の廻りに配置する略円筒状のヨークとからなり、前記ロータが前記コイルへの入力で所定回転角内の双方向に回転する電磁アクチュエータであって、
前記ヨークは、前記ロータと前記ヨークと間に吸引力の差を発生させるために、前記コイルのループの中心線がヨークに交差する点を中心として対向して設けられた窓状の孔を備え、吸引力の差を用いて前記所定回転角内で双方向に保持可能とするとともに、
前記所定回転角内の双方向で保持するときに、前記ロータの円筒面に現れるN極とS極との境界面を、前記窓状の孔の端部の近傍に臨ませることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記ロータは、前記支持体に回転可能に嵌合する軸と、前記所定回転角内で前記支持体に当接するストッパ片と、被動作体を動作させる作動片とを備え、これらの軸、ストッパ片及び作動片を一体的に形成したことを特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記ロータは、前記円筒面に磁性片を装着する装着部が形成され、この装着部に前記磁性片を装着することで前記ヨークとの距離を局部的に近づけたものであること特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記ロータは、保持力の増強のためにロータの前記円筒面の一部を突出させて、前記ヨークとの距離を局部的に近づけたものであることを特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−160893(P2008−160893A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343043(P2006−343043)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000192947)神明電機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】