説明

電磁クラッチ

【課題】軸力によって破断するリミッタを電磁クラッチに適用するとともに従動側回転体の脱落を防止する。
【解決手段】駆動源から出力される回転駆動力によって回転する駆動側回転体21と、駆動側回転体21に連結されることによって駆動対象装置10の回転軸11とともに回転する従動側回転体30、33と、従動側回転体を駆動側回転体21に連結させる電磁力を発生する電磁石22と、従動側回転体と回転軸11とを連結する部材であって、駆動側回転体から従動側回転体に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断して従動側回転体を回転軸11から切り離すリミッタ37と、回転軸11から径方向外側に突出して形成され、リミッタ37の破断によって回転軸11から切り離された従動側回転体と回転軸11の軸方向に当接するストッパ39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動力の伝達および遮断を行う電磁クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置の圧縮機は、走行用エンジンからベルト(Vベルト)を介して駆動力を得ており、その作動制御は電磁クラッチのオン、オフにより行うのが一般的である。
【0003】
電磁クラッチは、走行用エンジンから出力される回転駆動力によって回転するプーリ(駆動側回転体)と、プーリと連結されることによって回転するアーマチュアと、通電されることによってプーリとアーマチュアとを連結させる電磁力を発生させる電磁石とを有している。
【0004】
アーマチュアはハブを介して圧縮機の回転軸に連結されており、アーマチュアが電磁石の電磁力によって吸引されてプーリと連結することによって圧縮機の回転軸が回転して圧縮機が作動する。
【0005】
このような構成において、何らかの原因により圧縮機が焼き付き、圧縮機がロック(圧縮機内の可動部が焼き付いて固着)した場合には、ベルトを保護するために、電磁クラッチをオフにして駆動力の伝達を遮断する必要がある。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の従来技術では、温度ヒューズを電磁クラッチ内の電気回路に直列に接続している。これによると、圧縮機がロックした際に、アーマチュアとロータハウジングの摩擦面との間に発生する摩擦熱によって温度ヒューズが溶断されるので、電磁クラッチへの電流の印可が遮断されて電磁クラッチがOFFにされる。
【0007】
一方、特許文献2には、電磁クラッチを持たない圧縮機において、圧縮機がロックした場合に駆動力の伝達を遮断するリミッタ機構が記載されている。この従来技術では、プーリに常時連結されたハブがリミッタを介して圧縮機の回転軸に連結されている。そして、圧縮機がロックして過大負荷が加わると、リミッタが軸力によって破断する。これにより、ハブが回転軸から切り離され、駆動力の伝達が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−27895号公報
【特許文献2】特開2004−340158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、摩擦面の伝達トルクのバラツキが大きいため、ベルト滑りトルクが伝達トルクより低い場合にはベルトが滑って切れてしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明者は、電磁クラッチに対して特許文献2のリミッタ機構を適用することを検討した。しかしながら、電磁クラッチは、クラッチオフによりアーマチュアがプーリから離れる構造になっている。換言すれば、特許文献2の電磁クラッチを持たない圧縮機ではハブがプーリに常時連結されているのに対し、電磁クラッチではアーマチュアおよびハブがプーリに常時連結されていない。
【0011】
このため、電磁クラッチに特許文献2のリミッタ機構を適用した場合には、リミッタが破断すると、回転軸から切り離されたハブおよびアーマチュア(従動側回転体)が脱落してしまうという問題がある。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、軸力によって破断するリミッタを電磁クラッチに適用するとともに従動側回転体の脱落を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、駆動源から出力される回転駆動力によって回転する駆動側回転体(21)と、
駆動側回転体(21)に連結されることによって駆動対象装置(10)の回転軸(11)とともに回転する従動側回転体(30、33)と、
従動側回転体(30、33)を駆動側回転体(21)に連結させる電磁力を発生する電磁石(22)と、
従動側回転体(30、33)と回転軸(11)とを連結する部材であって、駆動側回転体(21)から従動側回転体(30、33)に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断して従動側回転体(30、33)を回転軸(11)から切り離すリミッタ(37)と、
回転軸(11)から径方向外側に突出して形成され、リミッタ(37)の破断によって回転軸(11)から切り離された従動側回転体(30、33)と回転軸(11)の軸方向に当接するストッパ(39)とを備えることを特徴とする。
【0014】
これによると、駆動側回転体(21)から従動側回転体(30、33)に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときにリミッタ(37)が軸力によって破断して従動側回転体(30、33)が回転軸(11)から切り離されるので、駆動力の伝達を遮断することができる。
【0015】
また、リミッタ(37)の破断によって回転軸(11)から切り離された従動側回転体(30、33)は、回転軸(11)から径方向外側に突出して形成されたストッパ(39)と回転軸(11)の軸方向に当接するので、従動側回転体(30、33)の脱落を防止することができる。
【0016】
したがって、軸力によって破断するリミッタを電磁クラッチに適用するとともに従動側回転体の脱落を防止することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の動力伝達装置において、リミッタ(37)の破断によって回転軸(11)から切り離された従動側回転体(30、33)を駆動側回転体(21)から引き離す引き離し手段(34)を備えることを特徴とする。
【0018】
これによると、リミッタ(37)の破断前の状態に比べて従動側回転体(30、33)と駆動側回転体(21)との間隔(エアギャップ)が大きくなるので、電磁石(22)が通電状態になっていても従動側回転体(30、33)が駆動側回転体(21)に再連結されることを抑制することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の動力伝達装置において、従動側回転体(30、33)は、電磁力によって駆動側回転体(21)側に吸引されるアーマチュア(30)と、アーマチュア(30)から回転軸(11)にトルクを伝達するインナーハブ(33)とを有し、
インナーハブ(33)は、アーマチュア(30)に連結された第1インナーハブ(331)と、第1インナーハブ(331)からのトルクが摩擦力によって伝達される第2インナーハブ(332)とに分割して形成され、
引き離し手段(34)は、第1インナーハブ(331)と第2インナーハブ(332)との間に配置されたバネであることを特徴とする。
【0020】
これによると、リミッタ(37)が破断すると、第1インナーハブ(331)およびアーマチュア(30)がバネ(34)によって駆動側回転体(21)から引き離されるので、アーマチュア(30)の再吸引を抑制できる。このため、従動側回転体(30、33)が駆動側回転体(21)に再連結されることを確実に抑制することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の動力伝達装置において、第2インナーハブ(332)は、回転軸(11)が挿入されているとともに第1インナーハブ(331)と回転軸(11)の軸方向に当接している円筒部(332b)を有し、
バネ(34)は、円筒部(332b)と第1インナーハブ(331)との間に配置されていることを特徴とする。これにより、簡素な構造にてバネ(34)を配置することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明では、請求項2に記載の動力伝達装置において、従動側回転体(30、33)は、電磁力によって駆動側回転体(21)側に吸引されるアーマチュア(30)と、アーマチュア(30)から回転軸(11)にトルクを伝達するインナーハブ(33)とを有し、
インナーハブ(33)は、回転軸(11)が挿入された円筒部(33a)と、円筒部(33a)から径方向外側に広がって円筒部(33a)とアーマチュア(30)とを連結する連結部(33b)とを有し、
バネ(34)は、円筒部(33b)の外側に配置されていることを特徴とする。
【0023】
これによると、リミッタ(37)が破断すると、インナーハブ(33)およびアーマチュア(30)がバネ(34)によって駆動側回転体(21)から引き離されるので、アーマチュア(30)の再吸引を抑制できる。
【0024】
また、インナーハブ(33)を一体に形成できるので、簡素な構造にてバネ(34)を配置することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明では、請求項1に記載の動力伝達装置において、従動側回転体をストッパ(39)と反対側に付勢するバネ(40)を備え、
リミッタ(37)は、
従動側回転体(30、33)に連結されたハブ連結部(37a)と、
回転軸(11)に連結された回転軸連結部(37b)と、
ハブ連結部(37a)と回転軸連結部(37b)とを回転軸(11)の軸方向に連結するとともに、駆動側回転体から従動側回転体に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断してハブ連結部(37a)を回転軸連結部(37b)から切り離す破断部(37c)とを有し、
バネ(40)は、従動側回転体(30、33)とハブ連結部(37a)との間に配置され、
ストッパ(39)は、破断部(37c)の破断によって回転軸連結部(37b)から切り離されたハブ連結部(37a)と回転軸(11)の軸方向に当接するように形成されていることを特徴とする。
【0026】
これによると、リミッタ(37)の破断部(37c)が破断すると、従動側回転体(30、33)がバネ(40)によってストッパ(39)と反対側に押し付けられるので、従動側回転体(30、33)の姿勢を安定させることができる。このため、従動側回転体(30、33)が局部的に駆動側回転体(21)に衝突して異音が発生したり駆動側回転体(21)に凝着してしまうことを防止できる。
【0027】
請求項7に記載の発明では、請求項3に記載の動力伝達装置において、第1インナーハブ(331)と第2インナーハブ(332)との間に配置され、第1インナーハブ(331)の軸方向へのスライド移動をガイドするスライド機構(41)を備えることを特徴とする。
【0028】
これによると、リミッタ(37)の破断後には、回転軸(11)から切り離された第1インナーハブ(331)およびアーマチュア(30)の姿勢をスライド機構(41)によって安定化することができるので、アーマチュア(30)が局部的に駆動側回転体(21)に衝突して異音が発生したり駆動側回転体(21)に凝着してしまうことをより確実に防止できる。
【0029】
また、第1インナーハブ(331)から第2インナーハブ(332)へのトルクの伝達をスライド機構(41)によって行うことができるので、トルクの伝達効率を向上することができる。
【0030】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の動力伝達装置において、ストッパ(39)とリミッタ(37)とによってラビリンス機構(42)が形成されていることを特徴とする。
【0031】
これによると、リミッタ(37)と回転軸(11)との連結部に異物や水が進入することを、ストッパ(39)とリミッタ(37)とによって形成されるラビリンス機構(42)によって防止することができる。このため、異物や水の進入を防止するための専用部品(例えばゴムキャップ)が不要であるので、部品点数を削減することができる。
【0032】
請求項9に記載の発明では、請求項1に記載の動力伝達装置において、従動側回転体(30、33)は、電磁力によって駆動側回転体(21)側に吸引されるアーマチュア(30)と、アーマチュア(30)から回転軸(11)にトルクを伝達するインナーハブ(33)と、インナーハブ(33)と回転軸(11)との間に介在するスペーサ(35)とを有し、
インナーハブ(33)とスペーサ(35)とが一体に形成されていることを特徴とする。
【0033】
これによると、インナーハブ(33)とスペーサ(35)とが一体に形成されているので、部品点数を削減することができる。
【0034】
請求項10に記載の発明では、請求項1に記載の動力伝達装置において、従動側回転体(30、33)をストッパ(39)と反対側に付勢するバネ(43)を備え、
リミッタ(37)は、
従動側回転体(30、33)に連結されたハブ連結部(37a)と、
回転軸(11)に連結された回転軸連結部(37b)と、
ハブ連結部(37a)と回転軸連結部(37b)とを回転軸(11)の軸方向に連結するとともに、駆動側回転体(21)から従動側回転体(30、33)に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断してハブ連結部(37a)を回転軸連結部(37b)から切り離す破断部(37c)とを有し、
バネ(43)は、回転軸連結部(37b)とストッパ(39)との間に配置されていることを特徴とする。
【0035】
これによると、リミッタ(37)の破断部(37c)が破断すると、従動側回転体(30、33)がバネ(43)によってストッパ(39)と反対側に押し付けられるので、従動側回転体(30、33)の姿勢を安定させることができる。このため、従動側回転体(30、33)が局部的に駆動側回転体(21)に衝突して異音が発生したり駆動側回転体(21)に凝着してしまうことを防止できる。
【0036】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態における動力伝達装置の正面図である。
【図2】図1のA−A拡大断面図である。
【図3】図2において、リミッタの破断部が破断した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態における動力伝達装置の断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態における動力伝達装置の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態における動力伝達装置の断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態における動力伝達装置の正面図および断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態における動力伝達装置の断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態における動力伝達装置の断面図である。
【図10】本発明の第8実施形態における動力伝達装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本実施形態における動力伝達装置20の正面図であり、図2は図1のA−A拡大断面図(軸方向断面図)である。
【0039】
動力伝達装置20は、車両走行用のエンジン(駆動源)から出力される回転駆動力を駆動対象装置である圧縮機10へ断続的に伝達するために適用されている。圧縮機10は、車両用空調装置の冷凍サイクル装置を構成するものである。
【0040】
圧縮機10としては、例えば斜板式可変容量型圧縮機を採用することができる。その他の形式の可変容量型圧縮機や、スクロール型、ベーン型等の固定容量型圧縮機のように、回転駆動力を伝達されることによって冷凍サイクル装置の冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであれば、圧縮機10としていずれの形式のものを採用してもよい。
【0041】
動力伝達装置20は、プーリ21、電磁石22およびアーマチュア30等を有している。プーリ21は、エンジンからの回転駆動力によって回転する駆動側回転体を構成している。アーマチュア30は、プーリ21と連結されることによって回転する従動側回転体を構成している。電磁石22は、通電されることによってプーリ21とアーマチュア30とを連結させる電磁力を発生させる。
【0042】
電磁石22は、ステータ22aおよびコイル22b等を有している。ステータ22aは、磁性材(具体的には、鉄)にて環状に形成されており、圧縮機10の回転軸11と同軸状に配置されている。
【0043】
ステータ22aの内部に収容されたコイル22bは、絶縁性の樹脂材(具体的には、エポキシ)でモールディングされた状態でステータ22aに固定されており、ステータ22aに対して電気的に絶縁されている。
【0044】
電磁石22への通電、非通電の切り換え制御は、図示しない空調制御装置から出力される制御電圧によって行われる。
【0045】
プーリ21は、外側円筒部21a、内側円筒部21bおよび端面部21cを有しており、回転軸11の軸方向(以下、回転軸方向と言う。)における断面形状がコの字状になっており、プーリ21の内部空間に電磁石22が収容されている。
【0046】
円筒状の外側円筒部21aは、圧縮機10の回転軸11に対して同軸上に配置されている。円筒状の内側円筒部21bは、外側円筒部21aの内周側に配置されるとともに、回転軸11に対して同軸上に配置されている。
【0047】
端面部21cは、外側円筒部21aおよび内側円筒部21bの回転軸方向(図2の左右方向)の一端側部位同士を結ぶように回転軸方向と直交する方向(図2の上下方向)に広がった形状を有している。端面部21cの中央部には、その表裏を貫通する円形状の貫通孔が形成されている。
【0048】
外側円筒部21a、内側円筒部21bおよび端面部21cは、磁性材(具体的には鉄)にて一体的に形成され、電磁石22が発生させる電磁力の磁気回路を構成する。外側円筒部21aの外周側には、Vベルト(図示せず)が掛けられるV溝(具体的には、ポリV溝)が形成されている。Vベルトは、エンジンから出力される回転駆動力をプーリ21に伝達する。
【0049】
内側円筒部21bの内周側には、ボールベアリング24の外周側が固定され、ボールベアリング24の内周側には、圧縮機10の外殻を形成するハウジングから動力伝達装置20側へ突出した円筒状のボス部12が固定されている。これにより、プーリ21は、圧縮機10のハウジングに対して回転自在に固定されている。
【0050】
端面部21cの外側面は、プーリ21とアーマチュア30とが連結された際にアーマチュア30と接触する摩擦面を形成している。端面部21cの表面の一部には、端面部21cの摩擦係数を増加させるための摩擦部材(図示せず)が配置されている。摩擦部材は、非磁性材で形成されている。具体的には、摩擦部材として、アルミナを樹脂で固めたものや、金属粉末(具体的には、アルミニウム粉末)の焼結材を採用することができる。
【0051】
アーマチュア30は、回転軸方向と直交する方向に広がる環状板部材であり、その中心部に貫通孔を形成している。アーマチュア30は、磁性材(具体的には、鉄)にて形成されており、プーリ21とともに、電磁石22が発生させる電磁力の磁気回路を構成する。
【0052】
アーマチュア30のうち回転軸方向の一端側(図2の右端側)には、プーリ21の端面部21cに対向する平面部が形成されている。この平面部は、プーリ21とアーマチュア30とが連結された際にプーリ21と接触する摩擦面を構成している。
【0053】
アーマチュア30のうち回転軸方向の他端側(図2の左端側)にも平面部が形成されており、この平面部にはアウターハブ31がリベット等によって固定されている。アウターハブ31は、回転軸方向に延びる円筒部と、円筒部のうちアーマチュア30側の端部(図2の右端部)から径方向(回転軸方向と直交する方向)の外側に延びてアーマチュア30に固定される環状板部とを有している。
【0054】
アウターハブ31の円筒部の内周面には、環状に形成された弾性部材32が嵌め込まれて接着されている。弾性部材32の内周面にはインナーハブ33が嵌め込まれて接着されている。
【0055】
弾性部材32は、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)で形成され、アウターハブ31およびインナーハブ33に対して加硫接着されている。弾性部材32は、アウターハブ31に対してプーリ21から離れる方向に弾性力を作用させる。
【0056】
電磁石22が非通電状態になっていて電磁力を発生させていないときには、弾性部材32の弾性力によって、アーマチュア30の一端側の平面部とプーリ21の端面部21cの外側面との間に隙間を生じさせることができる。
【0057】
インナーハブ33は、弾性部材32側の第1インナーハブ331と、回転軸11側の第2インナーハブ332とに分割して形成されている。第1インナーハブ331は、回転軸方向に延びて弾性部材32に接着される円筒部331aと、円筒部331aのうちアーマチュア30側の端部(図2の右端部)から径方向の内側に延びる環状板部331bとを有している。
【0058】
第2インナーハブ332は、第1インナーハブ331の環状板部331bと対向する環状板部332aと、環状板部332aの内周縁部から圧縮機10側(図2の右方側)に向かって延びるとともに回転軸11が挿入される円筒部332bとを有している。
【0059】
第2インナーハブ332は、第1インナーハブ331に対して圧縮機10側(図2の右方側)に配置されている。第1インナーハブ331および第2インナーハブ332は、環状板部331b、332a同士で互いに接触しているだけで、固定されていない。換言すれば、両環状板部331b、332aは互いに接触する摩擦面を構成している。したがって、第2インナーハブ332には、第1インナーハブ331からのトルクが摩擦力によって伝達される。
【0060】
第2インナーハブ332の環状板部332aには、バネ34を配置するための溝部332cが形成されている。バネ34は、第1、第2インナーハブ331、332同士を引き離す方向の付勢力を発生する。図2の例では、バネ34は板状に形成されている。
【0061】
第2インナーハブ332の円筒部332bのうち圧縮機10側の端部(図2の右端部)には、円筒状のスペーサ35が固定されている。スペーサ35は、第2インナーハブ332の円筒部332bに対して圧入およびカシメ接合によって固定されている。
【0062】
スペーサ35は、鉄系金属材で形成されており、スペーサ35の内周側は、圧縮機10の回転軸11に接触しているだけで、固定されていない。スペーサ35のうち圧縮機10側の端面は、回転軸11に形成された段差部11aに、環板状のシム36を介して当接している。
【0063】
シム36は、スペーサ35の回転軸方向位置、ひいてはアーマチュア30の回転軸方向位置を調整する役割を果たしている。より具体的には、電磁石22を非通電状態とした場合にはアーマチュア30とプーリ21の端面部21cとの間に適切な隙間が形成され、電磁石22を通電状態にした場合には電磁石22が発生する電磁力が弾性部材32の弾性力を上回ってプーリ21とアーマチュア30とが連結されるように、シム36の厚みが設定されている。
【0064】
すなわち、電磁石22を通電状態にした場合に電磁石22が発生する電磁力が弾性部材32の弾性力を上回ってプーリ21とアーマチュア30とが連結されるような適切なエアギャップ(磁気抵抗)を形成できるように、シム36の厚みが設定されている。
【0065】
さらに、シム36は、SK5等の合金鋼を焼き入れ焼き戻し等によって硬化させたものが採用されている。そして、その硬度が回転軸11の硬度よりも高いものが採用されている。また、スペーサ35については、その硬度がリミッタ37の硬度よりも高くしておくことが望ましい。
【0066】
リミッタ37は、第1インナーハブ331と回転軸11とを連結する部材であり、鉄で形成されている。また、リミッタ37は、回転軸方向に延びる円筒状に形成されており、第1、第2インナーハブ331、332の中心孔に挿入されている。
【0067】
円筒状のリミッタ37のうち圧縮機10と反対側の部位(図2の左方部)は、第1インナーハブ331の内周部に固定されたハブ連結部37aを構成している。ハブ連結部37aの一部は、第1インナーハブ331の内周部と軸方向に対向している。ハブ連結部37aと第1インナーハブ331との固定はカシメ接合によって行われている。
【0068】
リミッタ37のうち圧縮機10側の部位(図2の右方部)は、圧縮機10の回転軸11に連結された回転軸連結部37bを構成している。本例では、回転軸連結部37bに雌ネジ部が形成されているとともに圧縮機10の回転軸11に雄ネジ部が形成されており、回転軸連結部37bが回転軸11に螺合されている。
【0069】
回転軸連結部37bの雌ネジ部にはグリースが塗布されている。グリースは、回転軸連結部37bの雌ネジ部と回転軸11の雄ネジ部との摩擦係数の変動を小さくする役割を果たす。グリースへの異物や水の侵入は、ハブ連結部37aの中心孔に嵌め込まれたゴムキャップ38によって防止されるようになっている。
【0070】
回転軸連結部37bは、第2インナーハブ332の円筒部332bの中心孔に挿入されている。回転軸連結部37bの外周面と第2インナーハブ332の円筒部332bの内周面との間には所定の間隔が設けられており、回転軸連結部37bの外周面は第2インナーハブ332の円筒部332bの内周面に接触していない。
【0071】
破断部37cは、ハブ連結部37aと回転軸連結部37bとを回転軸方向に連結しており、伝達トルクが所定トルク以上になったときに破断してトルクの伝達を遮断する役割を果たす。具体的には、破断部37cは、リミッタ37における薄肉部を形成している。すなわち、破断部37cの外径は、ハブ連結部37aの外径および回転軸連結部37bの外径よりも小さくなっている。
【0072】
以上の説明からわかるように、リミッタ37のハブ連結部37aと回転軸11の段差部11aとの間には、インナーハブ33(第1、第2インナーハブ331、332)、スペーサ35およびシム36が挟み込まれている。これにより、ハブ連結部37aの回転軸方向における位置が規定される。
【0073】
プーリ21とアーマチュア30とが連結されると、アーマチュア30、アウターハブ31、弾性部材32、インナーハブ33、スペーサ35およびシム36からなる従動側回転体とリミッタ37とがプーリ21とともに回転する。
【0074】
回転軸11のうち圧縮機10と反対側の端部(図2の左端部)には、ストッパ39が固定されている。ストッパ39は、C字状の平面形状(図1参照)を有する金属板であり、その弾性変形を利用して回転軸11に形成された溝部(図2参照)に嵌め込まれている。
【0075】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。空調制御装置が制御電圧を出力しておらず電磁石22を非通電状態になっている場合には、電磁石22が電磁力を発生しないので、プーリ21とアーマチュア30とが弾性部材32の弾性力によって切り離される。従って、エンジンの回転駆動力が圧縮機10へ伝達されない。その結果、冷凍サイクル装置は作動しない。
【0076】
空調制御装置が制御電圧を出力して電磁石22を通電状態にした場合には、電磁石22が発生する電磁力が弾性部材32の弾性力を上回り、プーリ21とアーマチュア30とが連結される。これにより、駆動側回転体をなすプーリ21からアーマチュア30へ回転駆動力が伝達され、アーマチュア30、アウターハブ31、弾性部材32、インナーハブ33、スペーサ35、およびシム36からなる従動側回転体とリミッタ37とが回転する。
【0077】
この際、圧縮機10にロックが生じていなければ、従動側回転体のシム36と圧縮機10の回転軸11の段差部11aとの間に生じる摩擦力によって圧縮機10の回転軸11が回転する。つまり、エンジンから出力された回転駆動力が圧縮機10に伝達されるので、冷凍サイクル装置が作動する。
【0078】
これに対し、圧縮機10にロックが生じて回転軸11が回転できない場合には、リミッタ37が回転することによって、リミッタ37の回転軸連結部37bの雌ネジ部が回転軸11の雄ネジ部に締め付けられて軸力が発生する。
【0079】
このとき、リミッタ37のハブ連結部37aの回転軸方向における位置は、インナーハブ33、スペーサ35、シム36および回転軸11の段差部11aによって規制されている。このため、ハブ連結部37aと回転軸連結部37bとを連結する破断部37cに引っ張り応力がかかる。そして、破断部37cにかかる引っ張り応力が所定以上になると、図3に示すように破断部37cが破断してハブ連結部37aが回転軸連結部37bから切り離される。
【0080】
ここで、従動側回転体およびリミッタ37は、回転軸11との連結部位がリミッタ37の回転軸連結部37bのみである。このため、破断部37cが破断することによって、シム36と圧縮機10の回転軸11の段差部11aとの間に生じる摩擦力が減少し、エンジンから圧縮機10への回転駆動力の伝達が遮断される。
【0081】
また、破断部37cが破断すると、第1インナーハブ331がバネ34の付勢力によって第2インナーハブ332から引き離され、第1インナーハブ331に固定されたハブ連結部37aがストッパ39に押し付けられて当接する。
【0082】
このため、破断部37cの破断によって回転軸11から切り離されたハブ連結部37aと従動側回転体(具体的には、第1インナーハブ331、弾性部材32、アウターハブ31およびアーマチュア30)とが脱落することを防止できる。その結果、回転軸11から切り離された従動側回転体が脱落して、動力伝達装置20の周辺に配置された他の機器類を破損してしまうこと等を防止できる。
【0083】
また、第1インナーハブ331がバネ34の付勢力によって第2インナーハブ332から引き離されるので、破断前の状態に比べてアーマチュア30とプーリ21との間隔(エアギャップ)が大きくなるので、電磁石22が通電状態になっていてもアーマチュア30の再吸引が防止される。
【0084】
また、ハブ連結部37aがバネ34の付勢力によってストッパ39に押し付けられるので、回転軸11から切り離された従動側回転体の姿勢を安定させることができる。このため、アーマチュア30とプーリ21との間隔(エアギャップ)が大きくなった状態で安定させることができるので、アーマチュア30が局部的にプーリ21に衝突して異音が発生したりプーリ21に凝着してしまうことを防止できる。
【0085】
(第2実施形態)
本第2実施形態は、図4に示すように、上記第1実施形態に対してバネ34の位置を変更したものである。具体的には、バネ34を第1インナーハブ331および第2インナーハブ332の径方向の最内側部位に配置している。なお、図4の例では、バネ34をコイル状に形成している。
【0086】
本実施形態によると、第2インナーハブ332を円筒状に形成すればよく、上記第1実施形態における環状板部332aを形成する必要がないので、インナーハブ33の構造を簡素化できる。
【0087】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、インナーハブ33が第1インナーハブ331と第2インナーハブ332とに分割して形成されており、バネ34が第1インナーハブ331と第2インナーハブ332との間に配置されているが、本第3実施形態では、図5に示すように、インナーハブ33が一体に形成されており、バネ34がインナーハブ33とスペーサ35との間に配置されている。
【0088】
具体的には、インナーハブ33は、回転軸11が挿入された円筒部33aと、内側円筒部33aから径方向外側に広がって円筒部33bとアーマチュア30とを連結する連結部33bとを有している。円筒部33aはスペーサ35に固定されている。連結部33bは、外周縁部が円筒状になっており、その外周縁部にて弾性部材32と接着されている。
【0089】
そして、バネ34は、コイル状に形成されており、インナーハブ33の円筒部33aの外周側に配置されている。
【0090】
本実施形態によると、インナーハブ33を一体に形成することでインナーハブ33の構造を簡素化できる。
【0091】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、インナーハブ33が第1インナーハブ331と第2インナーハブ332とに分割して形成されており、バネ34が第1インナーハブ331と第2インナーハブ332との間に配置されているが、本第3実施形態では、図6に示すように、インナーハブ33が一体に形成されており、バネ40がインナーハブ33とリミッタ37との間に配置されている。
【0092】
より具体的には、インナーハブ33は、弾性部材32に接着される外側円筒部と、スペーサ35に固定される内側円筒部と、これら両円筒部同士を連結する環状板部とを有している。そして、バネ40は、コイル状に形成されており、インナーハブ33の内側円筒部とリミッタ37のハブ連結部37aとの間に配置されている。
【0093】
インナーハブ33は、リミッタ37のハブ連結部37aと固定されておらず、バネ40を介してハブ連結部37aと連結されている。
【0094】
したがって、リミッタ作動前(破断部37cが破断する前)の状態では、インナーハブ33は、バネ40の付勢力によってスペーサ35側に押し付けられる。これにより、シム36と圧縮機10の回転軸11の段差部11aとの間に摩擦力が生じて圧縮機10の回転軸11が回転する。
【0095】
リミッタの作動後(破断部37cの破断後)には、リミッタ37のハブ連結部37aがバネ40の付勢力によってインナーハブ33から引き離されてストッパ39に当接する。これにより、インナーハブ33をスペーサ35側に押し付ける付勢力が減少し、シム36と圧縮機10の回転軸11の段差部11aとの間に生じる摩擦力が減少するので、エンジンから圧縮機10への回転駆動力の伝達が遮断される。
【0096】
このとき、インナーハブ33をスペーサ35側に押し付ける付勢力(バネ40の付勢力)は減少するものの、インナーハブ33はバネ40によってある程度はスペーサ35側に押し付けられるので、インナーハブ33の姿勢を安定させることができる。このため、アーマチュア30が局部的にプーリ21に衝突して異音が発生したりプーリ21に凝着してしまうことを防止できる。
【0097】
また、本実施形態によると、インナーハブ33を一体に形成することでインナーハブ33の構造を簡素化できる。
【0098】
(第5実施形態)
本第5実施形態は、図7に示すように、上記第1実施形態に対して、第1インナーハブ331の回転軸方向へのスライド移動をガイドするスライド機構41を追加したものである。
【0099】
スライド機構41は、第2インナーハブ332に固定されたスライドピン41aと、第1インナーハブ331に形成されたスライド孔41bとで構成されている。
【0100】
スライドピン41aは、第2インナーハブ332の環状板部332aから第1インナーハブ331の環状板部331bに向かって回転軸方向に突出しており、ネジ締結等の適宜手段により第2インナーハブ332の環状板部332aに固定されている。
【0101】
スライド孔41bは、第1インナーハブ331の環状板部331bを回転軸方向に貫通しており、スライドピン41aが挿入されている。スライドピン41aおよびスライド孔41bは、周方向に複数個ずつ(図7の例では4個ずつ)設けられている。
【0102】
本実施形態によると、リミッタ作動後(破断部37cの破断後)には、回転軸11から切り離された従動側回転体の姿勢をスライド機構41によっても安定化することができるので、アーマチュア30が局部的にプーリ21に衝突して異音が発生したりプーリ21に凝着してしまうことをより確実に防止できる。
【0103】
また、上記第1実施形態では、第1インナーハブ331と第2インナーハブ332との摩擦によってトルクを伝達するようになっているが、本実施形態によると摩擦のみならずスライド機構41によってもトルクを伝達することができる。このため、トルクの伝達効率を向上することができる。
【0104】
(第6実施形態)
上記第1実施形態では、リミッタ37の回転軸連結部37bの雌ネジ部に塗布されたグリースに対する異物や水の侵入をゴムキャップ38によって防止するが、本第6実施形態では、図8に示すように、グリースに対する異物や水の侵入をラビリンス機構42によって防止する
ラビリンス機構42は、具体的には、リミッタ37のハブ連結部37aに形成された溝42aと、ストッパ39に形成された突出片42bとで構成されている。溝42aは、ハブ連結部37aのうちストッパ39と対向する面に、ハブ連結部37aの全周に亘って形成されている。突出片42bは、ストッパ39の外周縁部から溝42aに向かって突出しており、ストッパ39の全周に亘って形成されている。
【0105】
本実施形態によると、ストッパ39が、異物や水の進入を防止する機能を兼ね備えることとなるので、異物や水の進入を防止するための専用部品としてのゴムキャップ38が不要となり、部品点数を削減することができ、ひいてはコストを低減できる。
【0106】
(第7実施形態)
本第7実施形態は、図9に示すように、上記第1実施形態に対して第2インナーハブ332とスペーサ35とを一体化したものである。これにより、部品点数を削減してコストを低減できる。
【0107】
(第8実施形態)
上記第1実施形態では、インナーハブ33が第1インナーハブ331と第2インナーハブ332とに分割して形成されており、バネ34が第1インナーハブ331と第2インナーハブ332との間に配置されているが、本第8実施形態では、図10に示すように、インナーハブ33が一体に形成されており、バネ43がリミッタ37とストッパ39との間に配置されている。バネ43は、リミッタ37をストッパ39から引き離す方向の付勢力を発生する。図10の例では、バネ43はコイル状に形成されている。
【0108】
本実施形態によると、リミッタ37の破断部37cが破断しても、リミッタ37のハブ連結部37aが回転軸連結部37bから引き離されることなく、バネ43の付勢力によって回転軸連結部37b側に押し付けられる。
【0109】
このため、破断部37cの破断によって回転軸11から切り離された従動側回転体(具体的には、ハブ連結部37a、第1インナーハブ331、弾性部材32、アウターハブ31、およびアーマチュア30)が脱落することを防止できる。
【0110】
また、ハブ連結部37aがバネ34の付勢力によって回転軸連結部37b側に押し付けられるので、回転軸11から切り離された従動側回転体の姿勢を安定させることができる。このため、アーマチュア30が局部的にプーリ21に衝突して異音が発生したりプーリ21に凝着してしまうことを防止できる。
【0111】
(他の実施形態)
なお、上述の各実施形態では、リミッタ37の回転軸連結部37bは圧縮機10の回転軸11に直接螺合しているが、リミッタ37の回転軸連結部37bは介在部材を介して間接的に圧縮機10の回転軸11に螺合していてもよい。
【0112】
また、上述の各実施形態では、動力伝達装置20をエンジンから圧縮機10への回転駆動力の断続に適用した例を説明したが、これに限定されることなく、エンジンあるいは電動モータ等の駆動源と回転駆動力によって作動する発電機との動力伝達の断続等に本発明を広く適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 圧縮機(駆動対象装置)
21 プーリ(駆動側回転体)
22 電磁石
30 アーマチュア(従動側回転体)
33 インナーハブ(従動側回転体)
34 バネ(引き離し手段)
37 リミッタ
39 ストッパ
331 第1インナーハブ
332 第2インナーハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から出力される回転駆動力によって回転する駆動側回転体(21)と、
前記駆動側回転体(21)に連結されることによって駆動対象装置(10)の回転軸(11)とともに回転する従動側回転体(30、33)と、
前記従動側回転体(30、33)を前記駆動側回転体(21)に連結させる電磁力を発生する電磁石(22)と、
前記従動側回転体(30、33)と前記回転軸(11)とを連結する部材であって、前記駆動側回転体(21)から前記従動側回転体(30、33)に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断して前記従動側回転体(30、33)を前記回転軸(11)から切り離すリミッタ(37)と、
前記回転軸(11)から径方向外側に突出して形成され、前記リミッタ(37)の破断によって前記回転軸(11)から切り離された前記従動側回転体(30、33)と前記回転軸(11)の軸方向に当接するストッパ(39)とを備えることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記リミッタ(37)の破断によって前記回転軸(11)から切り離された前記従動側回転体(30、33)を前記駆動側回転体(21)から引き離す引き離し手段(34)を備えることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記従動側回転体(30、33)は、前記電磁力によって前記駆動側回転体(21)側に吸引されるアーマチュア(30)と、前記アーマチュア(30)から前記回転軸(11)にトルクを伝達するインナーハブ(33)とを有し、
前記インナーハブ(33)は、前記アーマチュア(30)に連結された第1インナーハブ(331)と、前記第1インナーハブ(331)からのトルクが摩擦力によって伝達される第2インナーハブ(332)とに分割して形成され、
前記引き離し手段(34)は、前記第1インナーハブ(331)と前記第2インナーハブ(332)との間に配置されたバネであることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第2インナーハブ(332)は、前記回転軸(11)が挿入されているとともに前記第1インナーハブ(331)と軸方向に当接している円筒部(332b)を有し、
前記バネ(34)は、前記円筒部(332b)と前記第1インナーハブ(331)との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記従動側回転体(30、33)は、前記電磁力によって前記駆動側回転体(21)側に吸引されるアーマチュア(30)と、前記アーマチュア(30)から前記回転軸(11)にトルクを伝達するインナーハブ(33)とを有し、
前記インナーハブ(33)は、前記回転軸(11)が挿入された円筒部(33a)と、前記円筒部(33a)から径方向外側に広がって前記円筒部(33a)と前記アーマチュア(30)とを連結する連結部(33b)とを有し、
前記バネ(34)は、前記円筒部(33b)の外側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記従動側回転体(30、33)を前記ストッパ(39)と反対側に付勢するバネ(40)を備え、
前記リミッタ(37)は、
前記従動側回転体(30、33)に連結されたハブ連結部(37a)と、
前記回転軸(11)に連結された回転軸連結部(37b)と、
前記ハブ連結部(37a)と前記回転軸連結部(37b)とを前記軸方向に連結するとともに、前記駆動側回転体から前記従動側回転体(30、33)に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断して前記ハブ連結部(37a)を前記回転軸連結部(37b)から切り離す破断部(37c)とを有し、
前記バネ(40)は、前記従動側回転体(30、33)と前記ハブ連結部(37a)との間に配置され、
前記ストッパ(39)は、前記破断部(37c)の破断によって前記回転軸連結部(37b)から切り離された前記ハブ連結部(37a)と前記軸方向に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1インナーハブ(331)と前記第2インナーハブ(332)との間に配置され、前記第1インナーハブ(331)の前記軸方向へのスライド移動をガイドするスライド機構(41)を備えることを特徴とする請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記ストッパ(39)と前記リミッタ(37)とによってラビリンス機構(42)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記従動側回転体(30、33)は、前記電磁力によって前記駆動側回転体(21)側に吸引されるアーマチュア(30)と、前記アーマチュア(30)から前記回転軸(11)にトルクを伝達するインナーハブ(33)と、前記インナーハブ(33)と前記回転軸(11)との間に介在するスペーサ(35)とを有し、
前記インナーハブ(33)と前記スペーサ(35)とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記従動側回転体(30、33)を前記ストッパ(39)と反対側に付勢するバネ(43)を備え、
前記リミッタ(37)は、
前記従動側回転体(30、33)に連結されたハブ連結部(37a)と、
前記回転軸(11)に連結された回転軸連結部(37b)と、
前記ハブ連結部(37a)と前記回転軸連結部(37b)とを前記軸方向に連結するとともに、前記駆動側回転体から前記従動側回転体(30、33)に伝達されるトルクが所定トルク以上になったときに軸力によって破断して前記ハブ連結部(37a)を前記回転軸連結部(37b)から切り離す破断部(37c)とを有し、
前記バネ(43)は、前記回転軸連結部(37b)と前記ストッパ(39)との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−158003(P2011−158003A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18473(P2010−18473)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】