説明

電磁弁における電源ユニット

【課題】商用電源を用いて、電磁コイルに印可する電圧を、弁の作動時には高電圧とする一方、弁の保持時には低電圧とすることにより、省電力化を図り、開弁時における電磁コイルの発熱を防止し、コアのうなりがなく、動作が確実で安全な電磁弁の電源ユニットを提供する。
【解決手段】電磁コイル11にそれぞれ直列にダイオードD1、D2を接続した高電圧電源回路HVCと低電圧電源回路LVCとが商用電源に接続した電源スイッチSW1を共用して並列に接続され、低電圧電源回路LVCには商用の交流電源を直流に整流し所定の電圧に変圧する電源装置と、直流電源回路VCに並列に接続された電圧検出回路VDCと、パルス発信回路PCとを有し、高電圧電源回路HVCには低電圧電源回路LVCに接続されるパルス発信回路PCによってON動作する高電圧選択スイッチSW2と商用の交流電源を直流に整流する整流回路CCを直列に接続させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に周囲に電磁コイルが配置された中空筒状体と、前記中空筒状体に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに、前記電磁コイルにより生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁を有するプランジャと、前記プランジャを前記反対方向へ付勢する付勢手段とを有する電磁弁に関し、特に、省エネルギー型の電磁弁における電源ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水やガスなどのような流体を管路により搬送する際に、流体の流れを制御する目的で商用電源により作動する電磁弁が用いられている。
【0003】
ところで、従来から知られている電磁弁は,交流の商用電源を低電圧に変圧して電磁コイルを励磁するものであり、常に一定の電圧を印加するという省エネルギーの面での欠点を防ぐための電磁弁が例えば特開昭61−278672号公報、特開昭61−278673号公報に開示されている。
【0004】
ところが、これらの電磁弁においては並列に接続された2つの電磁コイルを用いるものであり、構造が複雑であり、全体として小型化することができず、また、弁の作動時には電磁コイルに流れる電流を増大させるとともに、保持電流を減少させるものであり、弁の作動時に大きな電流が必要であるという問題点があった。
【0005】
そこで、電磁弁の電磁コイルへの励磁に際し、その電磁コイルに印可する電圧を、弁の作動時には高電圧とする一方、弁の保持時には低電圧とする電磁弁が特開平9−239029号公報、特開2003−269646号公報に提示されている。
【0006】
しかしながら、前記特開平9−239029号公報に提示されている電磁弁は、従来の一律の電圧を供給する回路に従来周知の簡易なスイッチング回路を組み込んだものであり、信頼性が劣るとともに使用できる電圧の組み合わせにも制限があるという問題点がある。また、前記特開2003−269646号公報に至っては効果が示されているだけであって具体的な駆動回路の構成は示されていない。
【特許文献1】特開昭61−278672号公報
【特許文献2】特開昭61−278673号公報
【特許文献3】特開平9−239029号公報
【特許文献4】特開2003−269646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、商用電源を用いて電磁弁の電磁コイルへの励磁に際し、その電磁コイルに印可する電圧を、弁の作動時には高電圧とする一方、弁の保持時には低電圧とすることにより、省電力化を図るとともに開弁時における電磁コイルの発熱を防止し、交流電磁弁特有のコアのうなりがないことはいうまでもなく、動作が確実で安全な電磁弁の電源ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明は、周囲に電磁コイルが配置された中空筒状体と、前記中空筒状体に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに、前記電磁コイルにより生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁を有するプランジャと、前記プランジャを前記反対方向へ付勢する付勢手段とを有する電磁弁における電源ユニットであって、
前記電磁コイルにそれぞれ直列にダイオードを接続した高電圧電源回路と低電圧電源回路とが商用電源に接続した1つの電源スイッチを共用して並列に接続されているとともに、前記低電圧電源回路には商用の交流電源を直流に整流するとともに所定の電圧に変圧する電源装置と、前記電源装置から出力される直流電源回路に並列に接続された電圧検出回路と、前記電圧検出回路と前記電源回路とに接続されたパルス発信回路とを有し、前記高電圧電源回路には前記低電圧電源回路に接続されるパルス発信回路からのパルスによってON動作する高電圧選択スイッチと商用の交流電源を直流に整流する整流回路が直列に接続されていることを特徴とする。
【0009】
前記電源スイッチをON操作することにより前記低電圧電源回路にスイッチング電源を介して所定の直流電源が出力され、この直流電源を電圧検出回路により検出して、前記パルス発信回路から前記電磁コイルに高電圧ONパルスを出力して高電圧回路に接続されている高電圧選択スイッチがONになる。このとき、高電圧回路に直列に接続されたダイオードはアノード側に高電圧がかかっていることからON状態となり、低電圧回路に直列に接続されたダイオードはカソード側に高電圧がかかっていることからOFF状態となっているので電磁コイルには高電圧電源回路から起動のための高電圧が印加されて電磁弁が開状態になる。
【0010】
そして、前記高電圧ONパルスが終了すると、高電圧選択スイッチがOFF状態となって、高電圧電源回路に直列に接続されたダイオードはアノード側の電圧が0となってOFF状態となり、低電圧電源回路に直列に接続されたダイオードはアノード側に低電圧がかかっていることからON状態となっているので電磁コイルには低電圧電源回路から開状態を保持するための低電圧が印加されて電磁弁が開状態に保持され、電源スイッチがOFFに切り換えられると低電圧電源回路がOFF状態となり保持電圧が0となって電磁弁が元の閉状態に復帰する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の課題は、電磁コイルに印可する電圧を、弁の作動時には高電圧とする一方、弁の保持時には低電圧とすることにより、省電力化を図るとともに開弁時における電磁コイルの発熱を防止し、交流電磁弁特有のコアのうなりがないことはいうまでもなく、動作が確実できわめて安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の電源ユニットを使用するための電磁弁1の一例を示すものであり、従来の電磁弁と同様に、周囲に電磁コイル11が配置された中空筒状体12と、前記中空筒状体12に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに前記電磁コイル11により生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁13を有するプランジャ14と、前記プランジャ14を前記反対方向へ付勢するコイルばねを利用した付勢手段15とを有する。
【0014】
図2は前記図1に示した電磁弁1を操作するために用いられる本発明である電源ユニットの好ましい実施の形態におけるブロック回路図であり、例えば100又は200VのAC(交流電源)である電源スイッチSW1を共有してそれぞれ直列にダイオードD1およびダイオードD2を接続した高電圧電源回路HVCと低電圧電源回路LVCとが電磁弁1(図1参照)の電磁コイル11に並列に接続されている。
【0015】
そして、前記高電圧電源回路HVCには例えばトライアック等からなる高電圧選択スイッチSW2と整流回路CCが直列に接続されている。
【0016】
また、前記低電圧電源回路LVCには従来周知の安定した直流電圧を出力するスイッチング電源SWRから出力される前記低電圧電源回路LVCの一部を形成する直流電源回路VCに例えばコンデンサなどを用いた充電回路のような電圧検出回路VDCが並列に接続されている。この電圧検出回路VDCは例えば所定のICチップにより構成され、前記直流電源回路VCの+電圧を検出するとパルス電流を出力する。更に、前記電圧検出回路VDCの下流には、前記電圧検出回路VDCからのパルスを受けて高電圧ONパルスを発生するパルス発生回路PCが並列に接続されており、このパルス発生回路PCの出力側が前記高電圧電源回路HVCに接続されている高電圧選択スイッチSW2のゲート端子に接続されている。
【0017】
このように構成される本実施の形態を使用するには、先ず、AC電源の入力部2を所定の商用電源に接続し、電源スイッチSW1をON操作すると、低電圧電源回路LVCに電流が流れ(図3に示す(1)AC入力電源の経時チャート参照)、スイッチング回路SWRにより所定電圧、所定電流の直流電気が流れる(図3に示す(2)AC入力の経時チャート参照)。
【0018】
一方、同じくAC電源の入力部2を共有する高電圧電源回路HVCは高電圧選択スイッチSW2がOFF状態にあり、電流は流れない。
【0019】
そして、前記直流電源回路VCに電流が流れると(図3に示す(2)直流電源回路(+V1)の経時チャート参照)、電圧検出回路VDCに所定容量の電気が充電され、充電が完了すると電圧検出回路VDCからパルス波(パルス1)がパルス発生回路PCに出力される(図3に示す(3)電圧検出回路の経時チャート参照)。尚、この充電状態は開状態に保持されている間中、持続されるが、通常、一旦充電状態になると電気の供給は維持電流だけであり、殆ど電気を必要としないのできわめて経済的である。
【0020】
そして、前記電圧検出回路VDCから出力されたパルス波(パルス1)がパルス発生回路PCに出力されると、パルス発生回路PCが高電圧ONパルスを発生させ(図3に示す(4)高電圧ONパルスの経時チャート参照)、この発生している間にわたって高電圧選択スイッチSW2がON状態となり高圧電圧電源回路HVCに前記AC電源の入力部2から入力される高電圧の電流が整流回路CC2より整流されて電磁コイル11に流れ(図3に示す(5)電磁弁印加電圧の経時チャート高電圧部分参照)、電磁弁が開状態になる。
【0021】
このとき、高電圧電源回路HVCに直列に接続されたダイオードD2はアノード側に高電圧がかかっていることからON状態となり、低電圧電源回路LVCに直列に接続されたダイオードD1はカソード側に高電圧がかかっていてOFF状態となっているので電磁コイル11には高電圧電源回路HVCから起動のための高電圧が印加されて電磁弁1(図1参照)が開状態になる。
【0022】
そして、前記パルス発生回路PCからの高電圧ONパルスが終了すると、高電圧選択スイッチがOFF状態となって、高電圧電源回路HVCに直列に接続されたダイオードD2はアノード側の電圧が0となってOFF状態となり、低電圧電源回路LVCに直列に接続されたダイオードD1はアノード側に低電圧がかかっていることからON状態となっているので電磁コイル11には低電圧電源回路LVCから開状態を保持するための低電圧が印加されて電磁弁が開状態に保持される(図3に示す(5)電磁弁印加電圧の経時チャート低電圧部分参照)。
【0023】
その後、電源スイッチSW1をOFFに切り換えると低電圧電源回路LVCがOFF状態となり保持電圧が0となって電磁弁1が元の閉状態に復帰する。
【0024】
このように本実施の形態によれば、少ない電力で安全に作動するとともに弁開時における電磁コイルの発熱を防止し、交流電磁弁特有のコアのうなりも生じない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が用いられる電磁弁の一例を示す縦断面図。
【図2】本発明の好ましい実施の形態におけるブロック回路図。
【図3】図2に示した実施の形態における各回路や装置における電圧の変化を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0026】
1 電磁弁、2 入力部、11 電磁コイル、12 中空筒状体、13 開閉弁、14 プランジャ、15 付勢手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に電磁コイルが配置された中空筒状体と、前記中空筒状体に軸方向に移動可能に挿入配置されるとともに、前記電磁コイルにより生じる磁界により所定方向へ移動するとともに所定方向の端部に開閉弁を有するプランジャと、前記プランジャを前記反対方向へ付勢する付勢手段とを有する電磁弁における電源ユニットであって、
前記電磁コイルにそれぞれ直列にダイオードを接続した高電圧電源回路と低電圧電源回路とが商用電源に接続した1つの電源スイッチを共用して並列に接続されているとともに、前記低電圧電源回路には商用の交流電源を直流に整流するとともに所定の電圧に変圧する電源装置と、前記電源装置から出力される直流電圧電源回路に並列に接続された電圧検出回路と、前記電圧検出回路と前記電源回路とに接続されたパルス発信回路とを有し、前記高電圧電圧電源回路には前記低電圧電源回路に接続されるパルス発信回路からのパルスによってON動作する高電圧選択スイッチと商用の交流電源を直流に整流する整流回路が直列に接続されていることを特徴とする電磁弁における電源ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−197832(P2009−197832A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37614(P2008−37614)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000137018)株式会社ベン (21)
【Fターム(参考)】