説明

電磁弁

【課題】面倒な操作を伴うことなく、プランジャの先端に取り付けられるボール弁体の遊び量を常に一定にできるようにされた電磁弁を提供する。
【解決手段】プランジャ30の最下部中央にボール弁体15を保持する先細り形状の小径保持穴41が形成されるとともに、該保持穴41に連なって上方に貫通する大径中穴42が形成され、小径保持穴41と大径中穴42との段差部43に、均圧路となる切欠部45aが形成された底部プレート45が載せられ、該底部プレート45上にコア部材50が圧入固定され、底部プレート45が前記段差部43と前記コア部材50とで挟まれるようにして位置決め固定され、また、ボール弁体15は、大径中穴42を介して保持穴41に落とし込まれ、該保持穴41の所定位置にて抜け止め係止されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電励磁用のコイル、該コイルの内周側に配在された吸引子、及び前記吸引子に対向配置されたプランジャを備えた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁弁の従来例を図4に示す。図示の電磁弁1’は、弁座(弁口)14を有する弁室13が設けられた弁本体10と、この弁本体10の弁室13に接続された入口継手(流入口)11及び弁本体10における弁座14より下流に接続された出口継手(流出口)12と、前記弁本体10の上側に取り付けられた、前記弁座14にボール弁体15を接離(開閉)させるための電磁式アクチュエータ20とを備える。
【0003】
電磁式アクチュエータ20は、通電励磁用のコイル22、該コイル22の上部内周側に配在された有底円筒状の吸引子25、吸引子25の外周段差部と弁本体10の上部内周段差部にそれぞれ上下端部が溶接等の方法によって密封接合されたガイドパイプ32、このガイドパイプ32の内周側に上下方向に摺動自在に、かつ、吸引子25の下方に所定の間隙長(無通電時)をあけて対向配置されたプランジャ30、及び、前記コイル22の外周を覆うように配在されたハウジング21を備えている。
【0004】
プランジャ30の先端(下端)には、保持穴31が設けられ、この保持穴31にボール弁体15が、その下面の一部を露出させた状態で収納されてかしめ固定(かしめ部31a)されている。プランジャ30の上部には、コイルばねからなる閉弁ばね26が挿入係止される縦穴(ばね室)30aと横穴(均圧穴)30bが形成されている。
【0005】
このような構成とされた電磁弁1’においては、コイル22が通電されると、吸引子25にプランジャ30が引き寄せられて吸着し、これに伴い、ボール弁体15が弁座14から離間(リフト)せしめられて開弁する。また、コイル22への通電が停止されると、閉弁ばね26の付勢力によりプランジャ30及びボール弁体15が下方に押し戻されて閉弁
する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した如くの、ボール弁体15がプランジャ30の先端部(下端部)に取り付けられた電磁弁1’においては、図5に示される如くに、ボール弁体15に所定の遊び量βが必要である。遊び量βは、図5において実線で示される如くに、ボール弁体15が保持穴31の底部に接当係止される上がり位置と、図5において二点鎖線で示される如くに、かしめ部31aで抜け止め係止される下がり位置との離間量とされ、この遊び量は電磁弁性能に大きく影響する。
【0007】
従来においては、前記遊び量は、かしめ部31aに加えるかしめ荷重とかしめ位置とで調整するようになっているが、遊び量を一定にすることは極めて難しく、遊び量がばらついていた。遊び量のばらつきを抑えるには、かしめ作業に多くの時間と労力が費やされ、コストアップを招くことになる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、面倒な操作を伴うことなく、プランジャの先端に取り付けられるボール弁体の遊び量を常に一定にできるようにされた電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る電磁弁は、基本的には、通電励磁用のコイルと、該コイルの内周側に配在された吸引子と、該吸引子に対向配置されたプランジャと、弁座を有する弁室が設けられた弁本体と、前記プランジャに一体移動可能に取り付けられた弁体と、前記プランジャが摺動自在に嵌挿されるガイドパイプと、を備える。
【0010】
そして、前記プランジャの最下部中央に前記ボール弁体を保持する小径保持穴が形成されるとともに、該保持穴に連なって上方に貫通する大径中穴が形成され、前記小径保持穴と大径中穴との段差部に底部プレートが載せられるとともに、該底部プレート上にコア部材が圧入固定されることを特徴としている。
【0011】
前記ボール弁体は、好ましくは、前記大径中穴を介して前記保持穴に落とし込まれ、該保持穴の所定位置にて抜け止め係止される。
【0012】
好ましい態様では、前記底部プレートに均圧路となる切欠部もしくは溝が形成される。 他の好ましい態様では、前記コア部材の外周面に均圧路となる溝もしくは切欠部が形成される。
前記コア部材として、好ましくは、断面C形のスプリングピンが用いられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電磁弁では、ボール弁体の上がり位置が底部プレート(の固定位置)により定まり、下がり位置が保持穴(の寸法)により定まる。したがって、予め、ボール弁体に所定の遊び量が得られるように、保持穴の寸法形状や段差部の位置等を設定しておけば、ボール弁体の上がり位置と下がり位置とが一義的に定まることになる。そのため、かしめ加工等の面倒な作業操作を伴うことなく、ボール弁体の遊び量を常に一定にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の電磁弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る電磁弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
図示実施形態の電磁弁1において、前述した図4に示される従来例の電磁弁1’の各部と同一構成ないし同一機能を有する部分には、共通の符号を付して、重複説明を省略し、以下においては相違点を重点的に説明する。
【0015】
本実施形態の電磁弁1も、例えばエアコン等の冷凍サイクルに使用されるもので、前述した従来例とは、プランジャ30の構成が異なる。
【0016】
すなわち、本実施形態のプランジャ30は、図2に拡大図示されているように、その最下部中央に、上から落とし込まれるボール弁体15を係止保持する、先細り形状(漏斗状)の小径保持穴41が形成されるとともに、該保持穴41に連なって上方に貫通する大径中穴42が形成され、小径保持穴41と大径中穴42との段差部43に、図3に示される如くに、均圧路となる切欠部(Dカット形状)45aが形成された底部プレート45が載せられ、この底部プレート45上に、断面C形状のスプリングピンからなるコア部材50が圧入固定され、底部プレート45が前記段差部43と前記コア部材50とで挟まれるようにして位置決め固定されている。
【0017】
前記ボール弁体15は、大径中穴42を介して前記保持穴41に落とし込まれ、該保持穴41の所定位置(下面の一部を保持穴41から露出した状態)にて抜け止め係止されるようになっている。
【0018】
このような構成とされた本実施形態の電磁弁1では、図2において実線で示される如くに、ボール弁体15の上がり位置が、底部プレート45(の固定位置)により定まり、図2において二点鎖線で示される如くに、下がり位置が保持穴41(の寸法)により定まる。したがって、予め、ボール弁体15に所定の遊び量βが得られるように、保持穴41の寸法形状や段差部43の位置等を設定しておけば、ボール弁体15の上がり位置と下がり位置とが一義的に定まることになる。そのため、かしめ加工等の面倒な作業操作を伴うことなく、ボール弁体の遊び量を常に一定にできる。
【0019】
なお、上記構成において、コイル22が通電されて、吸引子25にプランジャ30が吸引されると、吸引子25とプランジャ30との間に形成される間隙空間Sに滞留する流体・油はプランジャ30により圧縮されるので、圧縮流体・油は、プランジャ30内に圧入固定されたコア部材(スプリングピン)50(の切欠部50a)→底部プレート45の切欠部45a→保持穴41とボール弁体15との間に形成される隙間(遊び)を通って弁室13・出口側に導出され、これにより、流体・油が均圧・排出される。
【0020】
この場合、ガイドパイプ32の内周面とプランジャ30の外周面との摺動面間に詰まりやすい摩耗微粒子等の異物も、流体・油と一緒に前記スプリングピン50や底部プレート45の切欠部50a、45a等を通って排出されるので、摺動面間に異物が詰まり難くなり、その結果、プランジャ30の摺動抵抗を大幅に低減できるとともに、吸引子25とプランジャ30との間に形成される間隙空間Sに滞留する流体・油の均圧・排出を円滑に行うことができてプランジャ30の応答性を格段に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電磁弁の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1に示される電磁弁のプランジャを示す拡大断面図。
【図3】図2に示される底部プレートの平面図。
【図4】電磁弁の従来例を示す縦断面図。
【図5】ボール弁体の遊び量の説明に供される拡大断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 電磁弁
10 弁本体
11 入口継手(流入口)
12 出口継手(流出口)
13 弁室
14 弁座
15 ボール弁体
20 電磁式アクチュエータ
25 吸引子
26 閉弁ばね
30 プランジャ
32 ガイドパイプ
41 保持穴
42 大径中穴
43 段差部
45 底部プレート
45a 切欠部
50 コア部材(スプリングピン)
β 遊び量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電励磁用のコイルと、該コイルの内周側に配在された吸引子と、該吸引子に対向配置されたプランジャと、弁座を有する弁室が設けられた弁本体と、前記プランジャに一体移動可能に取り付けられたボール弁体と、前記プランジャが摺動自在に嵌挿されるガイドパイプと、を備えた電磁弁であって、
前記プランジャの最下部中央に前記ボール弁体を保持する先細り形状の小径保持穴が形成されるとともに、該保持穴に連なって上方に貫通する大径中穴が形成され、前記小径保持穴と大径中穴との段差部に底部プレートが載せられるとともに、該底部プレート上にコア部材が圧入固定され、前記底部プレートが前記段差部と前記コア部材とで挟まれるようにして位置決め固定されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ボール弁体は、前記大径中穴を介して前記保持穴に落とし込まれ、該保持穴の所定位置にて抜け止め係止されるようになっていること特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記底部プレートに均圧路となる切欠部もしくは溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記コア部材の外周面に均圧路となる溝もしくは切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項5】
前記コア部材として、断面C形のスプリングピンが用いられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−92858(P2007−92858A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282176(P2005−282176)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】