説明

電磁波による脈拍検出を伴う除細動のための装置及び方法

本発明の脈拍検出器は、除細動及び/又はCPRの投与と同時に患者の脈拍を検出するために電磁波を使用する。電磁波は患者の血管に加えられ、反射された電磁波はドップラーシフトに関して解析される。ドップラーシフトは脈拍を示す。幾つかの用途で、脈拍検出器は、CPRの投与と共に単独型の装置として使用され得る。他の用途で、脈拍検出器は除細動器に付属し、蘇生治療又はその後の除細動を決定する際にECG情報に加えて解析される脈拍情報を与え、その成功を確かめる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
緊急事態で且つ手術中に、患者の血流の状態の評価は、問題の判断及びその問題に対する適切な治療に不可欠である。患者の心拍の存在は、通常、患者の首を触診して、患者の頸動脈の体積の変化に起因する触診可能な圧力変化を感知することによって検出される。心室が心臓の鼓動の間に収縮する場合に、圧力波は患者の末梢循環系全体に送られる。頸動脈波の波形は、収縮時に血液の心室駆動と共に上昇し、心臓からの圧力波が最大に達する場合に最大となる。頸動脈波は、圧力がその脈動の終わりに向かって治まると、再び低下する。
【0002】
患者に検出可能な頸動脈波がない場合、心停止の可能性が濃厚である。心停止は、命を脅かす病状である。このような病状で、患者の心臓は、生命を支えるべく血流を与えることができない。心停止の間、心臓の電気的活動は、乱され(心室細動、VF)、過剰に速くなり(心室頻拍、VT)、存在せず(収縮不全)、あるいは、血流を生成せずに正常の又はゆっくりとした心拍数を有する(興奮収縮解離、PEA)。
【0003】
検出可能な脈拍がない患者へ提供されるべき治療の形態は、患者の心臓の状態の評価に部分的に依存する。例えば、介護者は、動きがばらばらな又は速い電気的活動を止めて、かん流リズムが戻ることを可能にするよう、VF又はVTの患者へ除細動ショックを適用することができる。特に、外部除細動は、患者の胸の上に置かれた電極を介して患者の心臓へ強い電気的なショックを加えることによって与えられる。患者が検出可能な脈拍を有さず、収縮不全又はPEAと認められる場合、除細動は適用され得ず、介護者は、心肺停止の蘇生救急(CPR)を行うことができる。CPRは、いくらかの血液を患者の循環系を介して押し流す。
【0004】
例えば除細動又はCPRのような治療を患者に与える前に、介護者は、最初に、患者が心停止状態にあることを確認しなければならない。一般に、外部除細動は、意識を失い、無呼吸であり、脈もなく、VF又はVTと認められる患者にのみ適する。医療ガイドラインは、患者の心拍の存在又は不在が10秒以内に判断されるべきと示す。例えば、CPRに関する米国心臓協会議定書は、医療専門家が5から10秒以内に患者の脈拍を評価するよう要求する。脈拍がないことは、外部からの胸部圧迫の開始を示す。脈拍を評価することは、意識のある成人においては一見すると簡単であるが、基本的な生命維持評価手順の中で最もよく失敗する要素である。これは、例えば、経験不足、不十分な目印、又は、脈拍を見つける際の誤り若しくは脈拍を見つけられないといった、様々な理由に起因する。脈拍の存在若しくは不在を正確に検出できないことは、患者にCPR若しくは除細動治療を与える場合又は与えない場合のいずれにおいても患者に不適切な治療を与えることとなりうる。
【0005】
心電図(ECG)信号は、通常、除細動ショックが適用されるべきか否かを決定するために使用される。しかし、例えば脈拍のない電気的活動のように、救助者が遭遇しうるあるリズムは、単にECG信号によって決定され得ない。かかるリズムの診断は、ECG信号によって示される心筋の電気的活動に関わらず、かん流の欠如の兆候をサポートすることを要する。このように、救助者が患者に治療を与えるべきか否かを即座に判断するために、患者の脈拍及びECG信号が、適切な蘇生治療を正確に決定するために解析されることが望ましい。
【0006】
このような必要性は、特に、救助者が、米国特許番号6,575,914(ロック等)(特許文献1)に記載されるシステムが設計されるところの救助者による場合と同様に、訓練されておらず且つ/あるいは経験のないヒトである状況又はシステムにおいて大きい。特許文献1は、本発明と同じ委任代理人を任命しており、その全文を参照することによって援用されている。特許文献1は、自動外部除細動器(AED)(以降、AED及び半自動外部除細動器は両方ともまとめてAEDと呼ばれる。)を開示する。かかるAEDは、意識のない患者に除細動を適用すべきか否かを決定するための医療訓練をほとんど又は全く受けてない最初に対応する介護者によって使用され得る。
【0007】
特許文献1に開示されるAEDは、除細動器と、ドップラー超音波信号を送信及び受信するためのセンサパッドと、ECG信号を得るための2つのセンサパッドと、除細動が患者にとって適切であるかどうか(即ち、電気的な心臓活動の状態及び脈拍が存在するか否か)、又は、例えばCPRのような他の形式の治療が適切であるかどうかを決定するために、ドップラー信号及びECG信号を受信して評価する処理装置とを有する。ドップラーパッドは、十分な脈打つ血流の重要なインジケータである頸動脈波を検知するよう、頸動脈の上の患者の皮膚に固定される。特に、特許文献1に開示されるAEDの処理装置は、検出可能な脈拍が存在するかどうかを決定するようドップラー信号を解析し、除細動可能なリズムが存在するかどうかを決定するようECG信号を解析する。これら2つの別個の解析の結果に基づいて、処理装置は、除細動を勧めるべきか否かを決定する。
【0008】
組み込まれているドップラー超音波脈拍検出器に加えて、臨床医学者は、現在、患者の脈拍を検出し、更に、血流を測定するために、独立型のドップラー超音波脈拍検出器を使用する。情報がドップラーシステムによって集められ、処理されると、次いで、救助者は、ECG信号を収集し、患者に除細動を与えるべきかの決定をする必要がある。
【特許文献1】米国特許番号6,575,914(ロック等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ドップラー超音波脈拍検出器は、例えば超音波ジェルのような音響結合媒体が、患者への十分な音響結合を確立するために必要とされる、という欠点を有する。従って、超音波脈拍検出器に関して、超音波結合ジェルは、脈拍検出器と共に利用され、あるいは付随する必要がある。超音波結合ジェルを脈拍検出器に付随させることは、通常、検出器を1度きりの使用に制限する。これは、一般に、費用の面で好ましくない。超音波結合ジェルが別々に超音波脈拍検出器へ塗布されるべき場合、超音波結合ジェルの塗布は時間を要し、緊急事態の状況で素人の救助者にとって既に厄介である処理へ加えられる更なる他のステップを加える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原理に従って、脈拍検出器は、例えば除細動又はCPRの投与のような心停止に対する治療と同時に患者の脈拍を検出するために提供される。当該脈拍検出器は、電磁波を発生及び放射するよう動作する送信器回路を有し、更に、反射された電磁波を検出及び受信するよう動作する受信器回路を有する。前記受信器回路は、更に、放射された電磁波と、反射された電磁波との間の周波数シフトを決定するよう動作する。出力回路は、前記受信器回路へ結合され、前記放射された電磁波と、前記反射された電磁波との間の前記周波数シフトに基づいて、患者の脈拍のインジケータを提供するよう動作する。
【0011】
以下で示される本発明の例で、除細動システムは、除細動器、電極、及び脈拍検出器を有するよう設けられる。前記除細動器は、除細動エネルギを供給するよう動作し、前記電極は、当該電極を介して前記除細動エネルギを供給するよう前記除細動器へ結合される。前記電極は、更に、前記除細動器へ心電図(ECG)信号を与えるよう構成される。脈拍検出器は、前記除細動器へ結合され、電磁波を放射し、且つ、前記除細動器へ与えられるパルス信号を発生させるよう構成される。前記脈拍検出器からのパルス信号は、反射された電磁波のドップラーシフトに基づく。
【0012】
本発明の他の例で、CPRの投与と同時に患者の脈拍を検出する方法が提供される。当該方法は、患者の血管に電磁波を加えるステップと、患者の血管から反射される前記電磁波のドップラーシフトに基づいて、患者の脈拍の存在を決定するステップとを含む。
【0013】
本発明の他の例で、患者へ除細動エネルギを供給する方法が提供される。当該方法は、患者の心電図(ECG)を監視するステップと、電磁波を患者の血管に加えるステップと、前記患者の血管から反射された電磁波及び前記ECG信号を解析して、前記患者へ除細動エネルギを供給すべきかどうかを決定するステップとを含む。除細動の前及び/又は後に、患者の脈拍は、頸動脈から反射された電磁波のドップラーシフトに基づいて解析される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の十分な理解を提供するよう、特定の詳細が以下に記載される。しかし、当業者には明らかなように、本発明は、これらの具体的な詳細に限定されずに実施され得る。更に、ここで記載される本発明の具体的な実施例は、一例として与えられており、これらの具体的な実施例に本発明の適用範囲を限定するために用いられるべきではない。他の例で、よく知られている回路、制御信号、タイミングプロトコル、及びソフトウェア演算は、不必要に本発明を不明瞭にすることを避けるために、詳細には示されていない。
【0015】
図1は、本発明の実施例に従う脈拍検出器20と、心停止している患者14を蘇生させるために適用されるAED10とに関する図である。AED10へ結合されている一対の電極16は、患者の心臓からECG信号を得るために、救助者12によって患者14の胸をはさんで適用される。脈拍検出器20は、頸動脈波を検知するよう、患者の頸動脈の近くの患者の首に位置付けられる。以下でより詳細に記載されるように、脈拍検出器20は、患者の脈拍を検出するために電磁波を使用する。幾つかの従来の脈拍検出器とは対照的に、この脈拍検出器20は、例えば結合ジェルのような結合媒体を用いずとも、患者14へ適用され得る。脈拍検出器20が取り付けられる首襟又はベルクロ・ストラップ(登録商標)又は接着基板が、患者14の上に脈拍検出器を配置するために使用され得る。
【0016】
先に述べられたように、患者の脈拍及びECG状態の組合せは、救助者12によって与えられるべき治療を決定するために使用され得る。例えば、突然の心停止において、患者14は、通常は、触診可能な脈拍に伴うVF又はVT(即ち、除細動できるVT。)の形で、正常心拍の命に関わる停止に襲われる。除細動器10は、不整脈の兆候に関してECG信号を解析する。治療可能な不整脈が検出される場合には、除細動器10は、ショックが薦められる旨を救助者12に知らせ、救助者12は、患者を蘇生させるよう除細動パルスを与えるべく、除細動器10にあるショックボタンを押すよう促される。しかし、AED10による脈拍信号及びECG信号の解析によって決定されるように、脈拍が検出される場合、あるいは、脈拍が検出されず、除細動できるリズムが存在しない場合には、除細動は適用されるべきではなく、救助者12は、代わりに、患者14にCPRを実行すべきである。脈拍検出器20は、CPRの投与の間に頭部への血液の拍動流を監視し、CPRが終わった後の除細動の適否を見極めるようその場に留まる。
【0017】
図2Aは、本発明の実施例に従う脈拍検出器20、及び患者14との生理学的相互作用を表す。脈拍検出器20のブロック図は、簡単化されており、以下でより詳細に記載される構成要素を表している。しかし、当業者には理解されるように、他のよく知られている構成要素が、同様に脈拍検出器20に含まれている。
【0018】
検出器20によって生成される電磁波は、喉を貫通して、異なる導電率の領域の間の境界層で反射される。人体の中で、血管は、血管の周りの部位における導電率よりも十分に高い導電率を有する領域を表す。結果として、人体の中を伝播する電磁波は、主として、例えば頸動脈のような大きな血管によって反射される。頸動脈は、頭部に血液を供給する血管であって、皮膚表面の近くに位置している。
【0019】
知られているように、頸動脈のような血管は、血液が頭部に送り込まれる場合に、拍動波に応答して拡張する。反射される電磁波は、血管内の血流が血管の周期的な拡張を引き起こすので、患者の脈拍を検出するために使用され得る。結果として、脈拍が存在する場合、血管によって反射される電磁波にはドップラーシフトが存在する。ドップラーシフトは、検出されて、患者が脈拍を有しているかどうかを判断するために使用される。即ち、頸動脈の動き(周期的な拡張)は脈拍を示し、一方、そのような動きがないことは、脈拍がないことを示す。頸動脈の動きは、反射された電磁波におけるドップラーシフトの存在によって決定される。
【0020】
電磁波は、図2Aが示すような信号線に沿って伝播されるのではなく、代わりに、アンテナの前の領域を覆うローブパターンによって表され得る。ローブの幅に起因して、脈拍検出器は、概して頸動脈の近くに置かれ、依然として頸動脈の動きを検出することができる。放射波の周波数に対する反射電磁波の周波数を詳しく調べることによって、放射される電磁波のメインローブへの頸動脈壁の動きに関する情報を得ることができる。このような測定から得られた情報は、頸動脈壁の機構動作に関連する。
【0021】
図2Aを参照して、検出器20は、アンテナ205を介して患者の首230に電磁波220を放射する送信回路204を有する。受信器回路208は、患者の頸動脈240及び周囲の領域によって反射された電磁波226をアンテナ207を介して受信する。以下に表される例で、送信アンテナ205及び受信アンテナ207は、送信及び受信の両方の機能を果たす単一のアンテナとして実現される。混合回路212及び低域通過フィルタ216は、反射された電磁波226を復調及び検出し、ドップラー周波数fDopplerを示す出力信号を供給するために使用される。出力回路218は、出力信号を受信して、脈拍が検出されたかどうかを救助者12に知らせるために使用される脈拍インジケータを生成する。通常の脈拍インジケータ信号260は図2Bに示されている。電源(図示せず。)は、動作のために検出器20の回路へ電力を供給する。本発明の幾つかの実施形態で、送信器回路204、受信器回路208、アンテナ205、207、混合器212、及び低域通過フィルタ216は、例えば動作検出のために当該技術で知られるもののような、マイクロ波センサパッケージに組み込まれている。この例は、以下で述べられている。このような動作センサは、例えば、1.2GHz、2.45GHzから12GHz及び22GHzの範囲にあるギガヘルツの周波数を有する電磁波を使用する。
【0022】
放射される電磁波220のメインローブは、患者の頸動脈240に向けられている。放射される電磁波220の周波数は、通常fである。頸動脈240からの反射に際して、脈波250が頸動脈240を拡張又は収縮させる場合、周波数シフトが導入される。結果として、反射される電磁波226は、放射される電磁波220のfに対してシフトされた周波数(f+fDoppler)を有する。周波数シフトfDopplerは、以下の式によって、頸動脈240の速度に関連付けられる。
【0023】
Doppler=±f・(2・ν)/c
ここで、cは光速に等しく、νは、送信器204/受信器208に対して前進又は後退する頸動脈240の速度である。送信器回路204/受信器回路208に向かって広がる拡張する頸動脈240は正の周波数シフト(即ち、+fDoppler)をもたらし、送信器回路204/受信器回路208から遠ざかる収縮する頸動脈240は負の周波数シフト(即ち、−fDoppler)をもたらす。血液が患者の頸動脈240を通って送り出されない場合(即ち、脈拍がない場合)、頸動脈240は、送信器204/受信器208に対して相対的に静止している。即ち、周波数のシフトは、反射される電磁波220に導入されない。
【0024】
低域通過フィルタ216からの出力信号に基づいて、出力回路218は、脈拍の存在又は不在を示すよう、救助者12が解釈することができる脈拍インジケータ信号を生成する。例えば、出力回路が可聴式スピーカを有する場合、模擬心音のような可聴な出力情報が、脈拍を示すよう出力回路218によって生成され得る。更に、あるいは、代替的に、視覚的な出力情報は、出力回路218がディスプレイを有する場合に供給され得る。出力回路218は、患者の脈拍に対応するパルス状の照明を表示することができる。あるいは、患者の脈拍数に対応する数値が表示され得る。
【0025】
図2Cは、本発明に従って構成される他の脈拍検出器のブロック図である。送信器204は、送受切替器212に、アンテナ206によって放射される周波数fの電磁気信号を送信するよう指示する。周波数fへとドップラーシフトされた反射された電磁気信号は、アンテナ206によって受信され、送受切替器212へ返され、受信処理器208へ結合される。受信処理器208は、信号を受信し、当該技術で知られるように、|f−f|の混合処理によって、放射された電磁気信号と受信された電磁気信号との間の周波数のシフトfを計算する。ここでは単一のアンテナ206が示されているが、別々のアンテナが、電磁気信号を送信及び受信するために使用されても良い。周波数のシフトfは、出力回路218へ送られる。出力回路218は、受け取ったドップラー情報の同期及び解析を行う。
【0026】
図2Dは、本発明に従って構成される他の脈拍検出器のブロック図である。この例は、ドイツのベルクにあるマイクロシステムエンジニアリング有限責任会社によって製造されている市販のマイクロ波センサKMY24モジュールを利用する。この装置は、同じ筐体の中に2.45GHz発振器と、受信器とを含み、連続波モードで動作する。ビームの大きさは、とりわけ、アンテナの大きさに依存し、この例で、モジュールは、最小限にされた寸法及び3.5cmの幅を有する最適化されたパッチアンテナを有する。これは、喉の様々な組織構造からの反射によって容易に劣化する広帯域ビームを発生させうる極めて小さいアンテナと、頸動脈を捕らえることが困難である狭帯域ビームを発生させうる極めて大きいアンテナとの間で実際的な妥協を提供する。
【0027】
このモジュールは、以下のようにして利用される。図2Dは、装置のブロック図を示す。ドップラーモジュール201は、電圧源202によって電源供給を受ける。ドップラーモジュール201の出力は、高域通過フィルタ203と、前置増幅器210と、低域通過フィルタ215とにより処理される。例となる実施形態で、高域通過フィルタ203は、100nFのキャパシタンス及び1MΩの抵抗を採用した。その場合に、高域通過フィルタ203は、ドップラーモジュールからの信号の直流部分を除去しながら、信号のより速い減衰を可能にした。0.1の時定数τは、1.59GHzのカットオフ周波数を発生させる。検出される信号は、意識のあるヒトで約1Hz程度の周波数で脈動する頸動脈から反射されるが、この1次高域通過フィルタの減衰は、過度に信号を減衰させないほど十分に低い。前置増幅器210の利得は、1から1000の範囲で設定され得るが、特に有利な利得は500であることが知られる。サンプリングを有効にするよう、8次低域通過フィルタ215は、演算増幅器を用いて、100Hzのカットオフ周波数を有して実現された。
【0028】
図2Dは、また、ドップラーモジュールからの2つの出力信号DR1及びDR2を示す。当該技術で知られるように、幾つかの市販の変換器(transducer)は、反射体の動きの方向、即ち、モジュールに向かう又はモジュールから離れるといった動きに関する付加的な情報を提供するよう2つの混合器ダイオードを有する。しかし、2つの信号は、本発明の特定の実施では必要とされない。このようなモジュールが本発明の装置を構成するために使用される場合、いずれか一方の混合器ダイオードからの反射信号は、拍動性の受信信号特性の変化の比率の計算のために使用され得る。
【0029】
図3は、本発明の実施例に従う心臓蘇生パッドの組400を表す。パッドの組400は、心臓蘇生システムを形成するよう除細動器500(図5)へ接続されている。パッドの組400は、脈拍検出パッド404と、除細動監視パッド410、420とを有する。脈拍検出パッド404は、本発明の実施例に従う脈拍検出器を有する。一実施形態で、脈拍検出パッド404は、図1及び2を参照して先に説明された脈拍検出器20を有する。
【0030】
脈拍検出パッド404及び除細動監視パッド410、420からの導線408、430、440は、ケーブル450によって除細動器500へ接続されている。救助者12が脈拍検出パッド404及び除細動監視パッド410、420を適切に位置付けることを助けるよう、絵による指示が各パッドには含まれ得る。例えば、図3に示されているように、除細動監視パッド410、420の夫々は、除細動監視パッド410、420が胴体において位置付けられるべき場所を示すヒトの胴体の絵を有する。同様に、脈拍検出パッド404は、患者の首と、脈拍検出パッド404が適用されるべき場所とを表す図を有する。上述されたように、脈拍検出パッド404は、望ましくは、患者の頸動脈の近くに適用されるべきである。
【0031】
図4は、患者14における除細動監視パッド410、420及び脈拍検出パッド404を含む心臓蘇生パッドの組400の配置を表す。脈拍検出パッド404は、頸動脈拍を検知するよう患者の組に適用され、除細動監視パッド410、420は、示されるように患者の胴体に適用される。表される例では、従来の医療用粘着剤を用いて、脈拍検出パッド404は患者の首に接着され、除細動監視パッド410、420は胴体に接着される。導電性のジェルは、患者の皮膚をパッド410、420へ電気的に結合するよう除細動監視パッド410、420に付属している。
【0032】
心臓蘇生パッド400は、救助者12によって適用されるべき適切な治療を決定する際に、患者のECG及び脈拍の両方を解析する除細動器と共に使用される。除細動監視パッド410、420は、ECG信号を除細動器へ結合するために使用される。ECG信号は、患者の心臓が除細動できるリズムを有しているかどうかを判断するために解析される。除細動治療は、また、必要ならば、除細動監視パッド410、420を用いて与えられる。脈拍検出パッド404は、患者14に血流を示す脈があるかどうかを判断するよう、除細動器500へ脈拍検出信号を供給するために使用される。
【0033】
図5は、脈拍検出信号及びECG信号の両方を解析し、脈拍が検出されるかどうか、及び、除細動可能なリズムが存在するかどうかを判断する除細動器500を表す。除細動監視パッド210、220は、患者14から除細動器500へのECG信号を検出し、供給する。信号調整ユニット510は、ECG信号にフィルタをかけることによって、ECG信号を調える。アナログ−デジタル(A/D)変換器520は、調整されたECG信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を解析のために中央演算処理ユニット(CPU)530に供給する。CPU530は、例えば、磁気ディスク及び光学ディスク、RAM、ROMなどのような常在する又は取り外し可能な記憶装置を有する。記憶装置には、処理及びデータ構造が記憶され、分布している。CPU530は、更に、除細動監視パッド210、220を介して極めて高い周波数信号を送信することによって、インピーダンス測定刺激(stimulus)550を実行することができる。インピーダンス測定刺激は、信号調整ユニット510で記録されて、除細動監視パッド210、220が患者に適切に接しているかどうかを判断する能力を救助者に与える。
【0034】
CPU530は、また、デジタル信号を出力し、そのデジタル信号をデジタル−アナログ(D/A)変換器560を介して脈拍検出パッド404へ送信する。D/A変換器560からのアナログ信号は、脈拍検出パッド404の送信器回路に、電磁波を患者に放射させる。幾つかの実施において、D/A変換器は必要とされず、デジタル信号が脈拍検出器の送信器回路をトリガするために使用される。反射された電磁波は、脈拍検出パッド404の受信器回路によって受信され、A/D変換器570は、脈拍検出器の出力回路によって生成された脈拍インジケータ信号をデジタル信号に変換する。デジタル脈拍インジケータ信号は、脈拍が存在するかどうかを判断するよう、更なる処理のためにCPUへ供給される。AED構成部580は、除細動システム一式のための必要なハードウェア、即ち、例えば、メモリと、プログラム記憶装置と、結果記憶装置と、例えばボタン、音声システム及びスピーカのようなユーザインターフェース要素と、電源とを有する。
【0035】
除細動監視パッド210、220及び脈拍検出パッド404を夫々介して得られたECG情報及び脈拍情報に基づいて、CPU530は、患者14に対する適切な治療を決定する。例えば、CPU530が、除細動治療が患者14に適用されるべきと決定する場合に、CPU530は、除細動監視パッド210、220を介して患者14へ電気的な治療出力パルス540を適用するようエネルギ蓄積コンデンサ(図示せず。)を充電する。代替的に、患者14の脈拍及びECGに基づく情報がCPRの投与を示す場合、可聴式の命令が、救助者にCPRを患者14に与えるよう指示するために、AED構成部580に含まれる可聴式スピーカを介して与えられる。
【0036】
上記から明らかなように、本発明の特定の実施形態が説明の目的のためにここに記載されているが、様々な変形例が、本発明の精神及び適用範囲を逸脱しない範囲で行われ得る。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲の記載を除いて限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に従う脈拍検出器と、心停止している患者へ適用される除細動器とを表す。
【図2A】図1の脈拍検出器の簡単なブロック図である。
【図2B】図2Aの脈拍検出器によって生成される脈拍インジケータ信号を表す。
【図2C】本発明に従って構成される他の脈拍検出器のブロック図である。
【図2D】本発明に従って構成される他の脈拍検出器のブロック図である。
【図3】本発明の実施例に従う心臓蘇生パッドの組の図である。
【図4】患者における心臓蘇生パッドの組の配置の図である。
【図5】心臓生成パッドの組と共に使用される除細動器の簡単なブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPRの投与の間の患者の脈拍を検出する脈拍検出器であって:
電磁波を発生及び放射するよう動作する送信器回路;
反射された電磁波を検出及び受信するよう動作し、更に、前記放射した電磁波と、前記反射された電磁波との間の周波数シフトを決定するよう動作する受信器回路;及び
前記受信器回路へ結合され、前記放射された電磁波と、前記反射された電磁波との間の周波数シフトに基づいて、CPRの間の前記患者の脈拍のインジケータを提供するよう動作する出力回路;
を有する脈拍検出器。
【請求項2】
前記患者の頸動脈に近接して当該脈拍検出器を位置付けるよう構成される取付装置を更に有する、請求項1記載の脈拍検出器。
【請求項3】
CPRの投与の間に前記患者に付けられるよう構成される接着パッドに含まれる、請求項1記載の脈拍検出器。
【請求項4】
前記送信器回路は、少なくとも1.0ギガヘルツの周波数を有する電磁波を発生及び放射するよう動作する送信器回路を有する、請求項1記載の脈拍検出器。
【請求項5】
前記受信器回路は、受信器と、混合器回路と、低域通過フィルタ回路とを有する、請求項1記載の脈拍検出器。
【請求項6】
前記出力回路は、前記周波数シフトに基づいて、CPRの間の前記患者の脈拍の可聴式のインジケータを提供するよう構成される出力回路を有する、請求項1記載の脈拍検出器。
【請求項7】
前記出力回路は、前記周波数シフトに基づいて、CPRの間の前記患者の脈拍の視覚的なインジケータを提供するよう構成される出力回路を有する、請求項1記載の脈拍検出器。
【請求項8】
除細動エネルギを加えるよう動作する除細動器;
前記除細動器へ結合された電極であって、当該電極を介して前記除細動エネルギを加えるよう構成され、更に、前記除細動器へ心電図(ECG)信号を供給するよう構成される電極;及び
前記除細動器へ結合され、電磁波を放射及び受信し且つ前記除細動器へ供給されるパルス信号を生成するよう構成される脈拍検出器;
を有し、
前記パルス信号は、反射される電磁波のドップラーシフトに基づく除細動器システム。
【請求項9】
前記電極及び前記脈拍検出器は、共通のケーブルにより前記除細動器へ結合される、請求項8記載の除細動器システム。
【請求項10】
前記脈拍検出器は:
電磁波を発生及び放射するよう動作する送信器回路;及び
反射された電磁波を検出及び受信するよう動作し、更に、前記放射した電磁波と、前記反射された電磁波との間の周波数シフトを決定するよう動作する受信器回路;
を有する、請求項8記載の除細動器システム。
【請求項11】
前記脈拍検出器は、前記受信器回路へ結合される出力回路であって、前記放射された電磁波と、前記反射された電磁波との間の周波数シフトに基づいて、CPRの間の前記患者の脈拍のインジケータを提供するよう動作する出力回路を更に有する、請求項10記載の除細動器システム。
【請求項12】
前記除細動器は、患者のECGを監視して、前記患者へ除細動エネルギを加えるべきかどうかを決定するよう前記ECG及び脈拍信号を解析するよう構成される除細動器を有する、請求項8記載の除細動器システム。
【請求項13】
前記除細動器は、自動外部除細動器を有する、請求項8記載の除細動器システム。
【請求項14】
CPRの投与の間の患者の脈拍を監視する方法であって:
頸動脈の近くに電磁変換器を適用するステップ;
前記頸動脈へ電磁波を加えるステップ;
CPRを実行するステップ;及び
前記頸動脈から反射される前記電磁波のドップラーシフトに基づいて、患者の脈拍の存在を決定するステップ;
を有する方法。
【請求項15】
前記頸動脈へ電磁波を加えるステップは、少なくとも1.0ギガヘルツの周波数を有する電磁波を加えるステップを有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記決定に応答して、動脈拍動性の視覚的なインジケータを発生させるステップを更に有する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記決定に応答して、動脈拍動性の可聴式のインジケータを発生させるステップを更に有する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
患者へ除細動エネルギを加える方法であって:
前記患者の心電図(ECG)を監視するステップ;
頸動脈へ電磁波を加えるステップ;及び
前記患者へ除細動エネルギを加えるべきかどうかを決定するよう、前記頸動脈から反射された電磁波と、前記ECGとを解析するステップ;
を有する方法。
【請求項19】
前記頸動脈から反射された電磁波を解析するステップは、前記反射された電磁波におけるドップラーシフトを決定するステップを有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記頸動脈から反射された電磁波を解析するステップは、前記患者の脈拍の存在を前記反射された電磁波におけるドップラーシフトから決定するステップを有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ECGを解析するステップは、心室細動及び心室頻拍のうちの少なくとも1つの存在を前記ECGから決定するステップを有する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記頸動脈へ電磁波を加えるステップは、前記患者の血管へ少なくとも1.0ギガヘルツの周波数を有する電磁波を加えるステップを有する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
患者へ除細動エネルギを加える方法であって:
前記患者の心電図(ECG)を監視するステップ;
前記患者へ除細動エネルギを加えるべきかどうかを決定するよう前記ECGを解析するステップ;及び
除細動エネルギの放出後、除細動が成功したかどうかを決定するよう、前記患者の血管から受け取った電磁波のドップラーシフトを解析するステップ;
を有する方法。
【請求項24】
前記解析ステップは、前記患者へ除細動エネルギを加えるべきかどうかを決定するよう、前記患者の血管から受け取った電磁波のドップラーシフトの拍動性と、前記ECGとを解析するステップを更に有する、請求項23記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−501041(P2009−501041A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520998(P2008−520998)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052267
【国際公開番号】WO2007/010422
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】