説明

電磁誘導加熱調理器

【課題】加熱コイルの発熱による赤外線センサへの影響を低減できる電磁誘導加熱調理器を得ること。
【解決手段】本体ケースと、被加熱物が載置可能な天板と、同心円状の多重コイルから成る加熱コイルとそれを保持する加熱コイル保持部材を有する加熱コイルユニットと、加熱コイル保持部材に加熱コイルの多重コイル間に同心円状に配置され、被加熱物の温度を検知する複数の温度検知手段とを備え、温度検知手段の少なくとも1つは赤外線を検出する非接触式の赤外線センサとし、それ以外の温度検知手段を接触式温度センサとして、天板は遮光性の塗装または印刷が施され、一部に赤外線が透過可能な非隠蔽部を設け、加熱コイルの一部を覆う様に黒色の遮蔽体を取り付け、遮蔽体は接触式温度センサで保持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱源により調理を行う加熱調理装置に関するものである。なお、本発明が対象とする誘導加熱式の加熱調理装置は、台所の流し台等の厨房家具(図示せず)の上に設置される据置形と称されるもの、及び厨房家具に形成された設置空間に組み込まれて使用される組込式又はビルトイン式と称されるものの両方のタイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁誘導加熱調理器においては、「加熱コイル5は、耐熱樹脂等で形成されたコイル支持板6に載置され、・・・、コイル支持板6の下方には、加熱コイル5の中心から手前側(調理人側から見て、以下同様)に位置する調理容器P底部の温度を検知するセンサユニット7が設けられている。」という構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−59592号公報(第5頁、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、調理容器の底部の温度を検知するための赤外線を検知するセンサユニットは、加熱コイルユニットの近傍、あるいは加熱コイルユニットに直接配設されている。
【0005】
ところが、電磁誘導加熱調理器は、加熱時においては加熱コイル自身が高温となり、赤外線センサユニットは、加熱コイルユニットの近傍、あるいは加熱コイルユニットに直接配設されているため、この加熱コイルの熱の影響を受けてセンサユニット内が高温になる可能性があった。このため、赤外線センサの動作が不安定となって温度検知性能が低下するおそれがあった。
【0006】
それから、赤外線センサにより調理容器底部の温度を検知する場合、調理容器を載置する天板に赤外線を透過させなければならず、そのため赤外線センサの配置された上方の天板には塗装または印刷の無い窓状の非隠蔽部を設ける必要がある。すると、加熱コイルユニットの近傍に非隠蔽部が設けられることになり、非隠蔽部から加熱コイルを構成する集合線などが視認できてしまう場合があり、使用者に不安感や不快感を与える可能性があった。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は、加熱コイルの発熱による赤外線センサへの影響を低減できる電磁誘導加熱調理器を得るものである。
【0008】
また、第2の目的は、天板の非隠蔽部から加熱コイルを使用者に視認させず、赤外線センサの検知性能を確保することのできる電磁誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器は、上部が開口した箱状の本体ケースと、本体ケースの上面開口を覆い被加熱物が載置可能な天板と、本体ケース内で前記天板の下方に配置され、同心円状の多重コイルから成る加熱コイル、及び加熱コイルを保持する加熱コイル保持部材を有する加熱コイルユニットと、加熱コイル保持部材に加熱コイルの多重コイル間に略同心円状に配置され、天板上に載置された被加熱物の温度を検知する複数の温度検知手段とを備え、複数の温度検知手段の内、少なくとも1つは被加熱物から放射される赤外線を検出する非接触式の赤外線センサとし、それ以外の温度検知手段を天板に接触して温度を検知する接触式温度センサとして、天板は、被加熱物載置面の裏側に遮光性の塗装または印刷が施され、一部に赤外線が透過可能な非隠蔽部を設け、赤外線センサは天板の非隠蔽部の下方に配置されていて、非隠蔽部近傍で赤外線センサより外側に位置する加熱コイルの一部を覆う様に柔軟性を有する黒色の遮蔽体を取り付け、遮蔽体は接触式温度センサで保持するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、赤外線センサより外側に位置する加熱コイルの一部を覆う様に遮蔽体を取り付けたので、加熱コイル発熱による放熱を抑制でき、赤外線センサが受ける加熱コイルの放熱の影響を低減することができる。
【0011】
また、本発明は、赤外線センサより外側に位置する加熱コイルの一部を覆う様に遮蔽体を取り付けたので、天板の非隠蔽部から加熱コイルを視認させることがなく、使用者に不安感や不快感を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る天板を取り外した状態の電磁誘導加熱調理器の斜視図である。
【図3】本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器の平面図である。
【図4】本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器の本体内部の主要な構成部品を取り外した状態の斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る風路ユニット、赤外線センサユニット、加熱コイル保持部材、加熱コイル、及び遮蔽体を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態に係る赤外線センサユニットを分解した状態の斜視図である。
【図7】(a)本実施の形態に係る赤外線センサユニットを加熱コイルユニットに取り付けた状態の斜視図である。(b)図7(a)のZ−Z線部分断面図である。
【図8】本実施の形態に係る天板から加熱コイルユニットまでの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態
図1〜図3は、本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器1を示す図で、図1は、本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器の斜視図、図2は本実施の形態に係る天板を取り外した状態の電磁誘導加熱調理器の斜視図、図3は本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器の平面図である。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付している。
本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器1は、図1に示すように、略矩形の本体ケース2に各種構成部品を収容した本体部Aの上に、天板部Bが設けられて構成されている。
【0014】
図1において、天板部Bは、上枠20と、上枠20の開口部に取り付けられる天板21を備える。
上枠20は、全体が非磁性ステンレス板又はアルミ板の金属製板から額縁状に形成され、本体ケース2の上面開口部を塞ぐような大きさを有している。上枠20は、ネジ等の固定具で本体ケース2に固定されている。ここで、上枠20は額縁状ではない、両側枠がない前後に枠を設けた構成でもよく上枠20の構成は適宜選択可能である。
【0015】
天板21は、上枠20の中央に設けられた大きな開口部を覆うように重ね合わせて設置されている。この天板21は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラスなどの赤外線を透過させる半透明な材料で構成され非隠蔽部(窓部)3LW、3RWの一部を除き裏面から遮光性の塗装または印刷が施され内部構造が視認できないように隠蔽されていて、形状は上枠20の開口部の形状に合わせて長方形等に形成されている。なお、非隠蔽部(窓部)3LW、3RWの形状は、図1では長方形で表されているが長方形に特定されるものではなく、正方形や丸形等適宜選択可能である。
【0016】
また、上枠20には、上枠20の形成時にプレス機械で同時に打ち抜き加工された右通風口20R、中央通風口20C、左通風口20Lを備える。詳細は後述するが、この右通風口20R、中央通風口20C、左通風口20Lは、本体部Aの吸気口あるいは排気口となる。
右通風口20R、中央通風口20C、左通風口20Lの上には、上方全体を覆うように全体に亘り無数の小さな連通口が形成された金属製平板状のカバー27が着脱自在に載せられている。カバー27は金属板に連通口用の小孔をプレス加工で形成したもの(パンチングメタルとも言う)の他に、金網や細かい格子状のものでも良い。何れにしても上方から使用者の指や異物等が右通風口20R、中央通風口20C、左通風口20Lに入らないようなものであればよい。
【0017】
天板21の上面には、左加熱口、右加熱口、中央加熱口の大まかな位置を示す円形の案内マーク3LM、3RM、5Mが、それぞれ塗装または印刷の方法で表示されている。
【0018】
また、天板21における左右方向の中央部で、前後方向の前側には統合液晶表示部16が設けられ、その左右に液晶表示画面15L、15Rが設けられている。統合液晶表示部16は、左右の加熱口、中央加熱口、及び後述するグリル加熱室7のヒータ等の通電状態(火力や時間等)を入力したり、確認することができる。液晶表示画面15L、15Rは、左右の加熱口をタイマー調理する際の、タイマーカウントをスタートした時点からの経過時間が計測されて数字で表示される。なお、液晶表示画面15L、15Rを構成する各種電気・電子部品や発光素子(LED)は、前部部品ケース(図示せず)に収納されている。
【0019】
本体ケース2の前面には、引出し可能なドア9と、ドア9の左右両側に設けられた前面操作部12を備える。
ドア9の中央開口部9Aには耐熱ガラス製の窓板が設置され、後述するグリル加熱室7の内部を視認できるようになっている。ドア9の開閉操作は、前方に突出した取っ手9Bを引き出し或いは押し込むことにより行う。
前面操作部12は、各加熱口及びグリル加熱室7を加熱する加熱源のすべての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ13と、左加熱口の通電とその通電量(火力)を設定する左操作ダイアル14Lと、右加熱口の通電とその通電量(火力)を設定する右操作ダイアル14Rとを備える。
【0020】
図2において、本体ケース2の内部は、大きく分けて前後方向に長く延びる左側冷却室6L、右側冷却室6Rと、箱形のグリル加熱室7と、上部部品室8と、後部中央の後部排気室10が区画形成されている。これら各部屋は互いに完全に隔絶している訳ではなく、例えば左側冷却室6L、右側冷却室6Rと、上部部品室8及び後部排気室10が連通している。
【0021】
グリル加熱室7の前面開口はドア9によって開閉自在に覆われ、ドア9は前後方向に移動自在となるようにグリル加熱室7の支持機構によって保持されている。
また、左右の後部排気室10の間には、排気ダクト11が設けられている。排気ダクト11は、グリル加熱室7の後方に設けられた排気口(図示せず)と接続されており、グリル加熱室7内部の熱気や臭気を伴う空気を外部へ排出する。
【0022】
上下仕切板22Lは、略垂直に設置されている左側の仕切板であり、左側冷却室6Lとグリル加熱室7とを隔絶している仕切壁の役目を果たしている。上下仕切板22Rは、同じく右側の上下仕切板であり、右側冷却室6Rとグリル加熱室7とを隔絶する仕切壁の役目を果たしている。なお、上下仕切板22L、22Rは、グリル加熱室7の外側壁面と数mmの間隔を保って設置されている。
また、上下仕切板22L、22Rには、それぞれ切欠部23が形成されており、後述する風路ユニット300を水平に設置する際にそれと衝突しないように設けられたものである。
【0023】
また、左右の上下仕切板22L、22Rの間を上下2つの空間に区画する水平仕切板24が設けられている。この水平仕切板24の上方が上部部品室8である。水平仕切板24は、グリル加熱室7の天井面から数mmから1cm程度の所定の空隙を設けて設置されている。
なお、本実施の形態において、水平仕切板24は、本体ケース2の内部に水平に取り付けられているが、本体ケース2内をグリル加熱室7の上面位置で上下に区画するものであれば、水平仕切板24の一部又は全部が本体ケース2に対して、傾斜して設けられていてもよい。
【0024】
また、上部部品室8と後部排気室10を仕切るようにして、後部仕切板25が設けられている。後部仕切板25の下端部は水平仕切板24に、上端部は上枠20にそれぞれ接するような高さ寸法で構成されている。後部仕切板25には、排気穴26が2箇所形成されており、この排気穴26は上部部品室8に入った冷却風を後部排気室10へ排気するためのものである。
【0025】
本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器は、加熱源として、左加熱源3L、右加熱源3R、及び輻射式中央電気加熱源5(以下、加熱源5と称する)を上部部品室8に備えている。また、グリル加熱室7用の上下一対の輻射式電気加熱源(図示せず)を備えている。
左加熱源3Lは本体部Aの左側に、右加熱源3Rは本体部Aの右側に、加熱源5は本体部Aの左右中心線上で後部寄りに設けられている。
【0026】
図1で説明した外観に表れる構成部材と、図2で説明した本体ケース2の内部の構成部材とは、図3の平面図に示すように対応している。すなわち、案内マーク3LM、3RM、5Mの下方の本体ケース2内部には、左加熱源3L、右加熱源3R、加熱源5がそれぞれ配置されている。また、非隠蔽部(窓部)3LW、3RWの直下には後述する赤外線センサ231のレンズが赤外線の検知が可能な位置に配置されている。さらに、中央通風口20Cの下方には後部排気室10と排気ダクト11が配置されており、左通風口20L、右通風口20Rの下方にはそれぞれ後述する吸込口32Bが配置されている。
【0027】
図4は、本実施の形態に係る電磁誘導加熱調理器の本体内部の主要な構成部品を取り外した状態の斜視図で、図2で示した本体ケース2の内部から主要な構成部品を取り外した状態を示している。図4に示すように、左側冷却室6Lと右側冷却室6Rには、それぞれファンケース32と部品ケース33とが設置されている。また、左加熱源3L、右加熱源3Rは、それぞれ、加熱コイル110とこの加熱コイル110を保持する加熱コイル保持部材120及び加熱コイル110上に取り付けられる遮蔽体130を有する加熱コイルユニット100を備えている。加熱コイルユニット100の下方には、赤外線センサユニット200と風路ユニット300とが設けられている。
【0028】
ファンケース32は、その内部に送風機30を備えている。送風機30は、遠心型多翼式送風機(代表的なものとしてシロッコファンがある)を使用しており、駆動モータの回転軸の先端に翼部31を固定したものを用いている。
ファンケース32は、送風機30の翼部31を囲むようにして送風室32Aが形成され、送風室32Aの上端部には吸込口32Bが形成され、下端部には排気口32Cが形成されている。また、ファンケース32は、例えば2つのプラスチック製ケース32D、32Eを組み合わせてネジ等の固定具で結合されることで一体構造物として形成されている。
【0029】
部品ケース33は、加熱コイル110に所定の高周波電力を供給するインバータ回路が実装された回路基板41を内蔵している。なお、この回路基板41には、インバータ回路の部分と離して送風機30の駆動用モータの駆動電源・駆動回路を一緒に実装している。
【0030】
部品ケース33は全体が横長の長方形形状をしており、ファンケース32の排気口32Cから排出される冷却風を部品ケース33内に導入するための導入口36が設けられている。部品ケース33は、ファンケース32の排気口32Cと部品ケース33の導入口36とが密着状態となるように、左側冷却室6L、右側冷却室6Rに設置されている。
部品ケース33の上面図には、ファンケース32から排出される冷却風の流れる方向に沿って、回路基板41の上流側に第1排気口34が、下流側に第2排気口35が互いに離れた位置に形成されている。
第2排気口35は、部品ケース33内において冷却風の流れの最も下流側にあり、また、第1排気口34よりも大きな開口面積を有している。
【0031】
このように構成されたファンケース32と部品ケース33は、密着した状態で右側冷却室6R、左側冷却室6Lに上方から挿入されて固定される。そして、ファンケース32が駆動して翼部31が回転することにより、ファンケース32の吸込口32Bから空気が吸い込まれ、冷却風として排気口32Cから排出される。ファンケース32から排出された冷却風は、部品ケース33の導入口36から部品ケース33の内部に入り、回路基板41を冷却して第2排気口35から排出されるとともに、第1排気口34からも排出される。
なお、本実施の形態において、本発明の「冷却手段」は、ファンケース32とファンケース32からの冷却風を排出する部品ケース33に相当する。
【0032】
部品ケース33の上方には、第1排気口34と第2排気口35と重複するようにして風路ユニットが配置される。そして、風路ユニット300の上方には、赤外線センサユニット200が取り付けられた加熱コイルユニット100が配置される。
【0033】
図5は、本実施の形態に係る風路ユニット、赤外線センサユニット、加熱コイル保持部材、加熱コイル、及び遮蔽体を示す斜視図で、加熱コイルユニット100、赤外線センサユニット200、風路ユニット300の構成を示す図である。
【0034】
(加熱コイルユニット100)
加熱コイルユニット100は、加熱コイル110と、加熱コイル保持部材120及び遮蔽体130を備える。
加熱コイル110は、渦巻き状に0.1mm程度の金属、例えば銅の細い線を30本程度束にして、この束(以下、集合線という)を1本又は複数本撚りながら巻き、外形形状が円形になるようにして最終的に円盤形に成形されている。本実施の形態では、集合線を円盤形に成形した内加熱コイル110aと、この内加熱コイル110aの外側に間隔を置いて同心円状に設けた外加熱コイル110bを有する二重の加熱コイルを例に説明する。
【0035】
加熱コイル保持部材120は、加熱コイル110を保持する部材であり、加熱コイル110よりも若干大きな直径の略円形状である。加熱コイル保持部材120は、例えばPETなどの合成樹脂を主要構成部材として構成されている。加熱コイル保持部材120は、風路ユニット300に固定するための脚部121を有する。
【0036】
遮蔽体130は、赤外線センサユニット200に組み込まれている後述する赤外線センサ231より外側の加熱コイル110の上に配置され加熱コイルの放熱を抑制することと、加熱コイルの視認を遮蔽するためのもので、例えば耐炎性、耐熱性に優れた特殊アクリル繊維で形成される。フェルト状の柔軟性を有する繊維で加工性に優れ、後述する接触式温度センサ150に嵌合させて保持させる時に、後からでも容易に取り付けが可能である。
さらに、熱伝導性と通気性が低いので、コイルの発熱の影響を接触式温度センサ150へ伝え難く、後述する風路ユニット300に設けられた噴出口303、304からの冷却風の影響を接触式温度センサ150へ及ぼし難いという特徴を有する。よって、遮蔽体130を取り付けることにより、接触式温度センサ150の温度検知性能を安定化できるという効果も得られる。なお、赤外線センサへの外乱の影響を受け難くするということと、遮蔽体130自体の視認性を低減させるということから、遮蔽体130の色は黒色が望ましい。
【0037】
(風路ユニット300)
風路ユニット300は、全体がプラスチックで成型されてその上面に段差が設けられており、高い部分を高部位301、低い部分を低部位302と称する。本実施の形態では、高部位301と低部位302の高さの差は10mm程度である。
高部位301には、下方に配置された部品ケース33から排出される冷却風を噴出する複数個の噴出口303が形成されている。また、噴出口303には、その開口部分の約半分を覆うようにして風向板305が形成されている。この風向板305は、噴出口303から噴出される冷却風を後部排気室10の方へ導くべく、冷却風の噴き出し方向をコントロールするために設けられている。
低部位302には、下方に配置された部品ケース33から排出される冷却風を噴出する複数個の噴出口304が形成されている。高部位301の噴出口303と異なり、低部位302の噴出口304には風向板305が設けられていない。
【0038】
また、高部位301の端部には、四角形に開口した通風口306が形成されている。通風口306は、すべての部品を本体ケース2内に組み付けた状態において、天板部Bの液晶表示画面15L、15Rの下方に位置するように形成される。そして、この通風口306から噴き出す冷却風により、液晶表示画面15L、15Rを冷却する。
【0039】
風路ユニット300の内部には、一体成形で直線又は曲線状に形成したリブ(凸条)形状の仕切壁307、308が形成されている。仕切壁307、308により、風路ユニット300の内部は、通風空間311、312、313に区画形成される。
通風空間311は、部品ケース33の第1排気口34と重複するように形成されている。したがって、第1排気口34から噴き出された冷却風は、通風空間311を経由して噴出口304から噴出されることとなる。
【0040】
通風空間312と通風空間313は仕切壁308により区画されているが、仕切壁308の一部には連通口308Aが形成されているために、互いに空気が流通可能となっている。通風空間313は、部品ケース33の第2排気口35の上方に位置するように配置されている。したがって、第2排気口35から噴き出された冷却風は、通風空間313を経由して通風口306から噴き出される一方で、連通口308Aを経由して通風空間312に展開されて噴出口303から噴出される。
【0041】
また、風路ユニット300の外周部には、突起状の脚部保持部309が3箇所に設けられている。脚部保持部309は、加熱コイル保持部材120の脚部121を固定することにより、風路ユニット300と加熱コイルユニット100とを結合させる。
【0042】
(赤外線センサユニット200)
図6は、本実施の形態に係る赤外線センサユニットを分解した状態の斜視図である。
赤外線センサユニット200は、板金210と、上ケース220と下ケース240で構成されるケース250と、ケース250に収納された赤外線センサ装置230とを備える。
【0043】
板金210は、アルミなどの放熱性の高い部材で構成された板状部材であり、赤外線センサユニット200の最上部に、上ケース220に密着するようにして設けられる。この板金210は、耐ノイズ及び遮熱効果を得るための部材である。板金210には、赤外線センサ装置230が赤外線を取り入れるためのセンサ穴211が設けられている。また、赤外線センサユニット200を加熱コイルユニット100にネジ止めするための挿通孔212、213が形成されている。
【0044】
赤外線センサ装置230は、赤外線センサ231と、赤外線センサ231が実装された基板232を備える。
赤外線センサ231はサーモパイルとレンズを備えており、被加熱物から放射される赤外線検出信号を電圧として出力する。基板232は、増幅器や赤外線センサ231を制御する各種電子部品を備えており、赤外線センサ231から出力された電圧を増幅器により増幅し、被加熱物の温度情報を得る。被加熱物の温度情報は、回路基板41に備えられた制御回路に出力されて、加熱制御などに用いられる。
【0045】
ケース250は、赤外線センサ装置230を収納するケースであり、上ケース220と下ケース240により構成される。下ケース240の内部に赤外線センサ装置230を収納し、上ケース220を被せることで、赤外線センサ装置230を収納する。
【0046】
上ケース220は、四方を側壁221に囲まれていて底部が開口しており、その上面にはセンサ穴222が設けられている。赤外線センサ装置230がケース250に収納された状態では、赤外線センサ231は、センサ穴222を介して赤外線を検出することとなる。
下ケース240は、四方を側壁241に囲まれていて上部が開口しており、その内部に赤外線センサ装置230を載置可能となっている。
【0047】
上ケース220の側壁221の下端部の左右両側には、係合突起223が設けられている。そして、下ケース240の外周部であって上ケース220を被せたときに係合突起223と対応する位置に、係合部242が設けられている。上ケース220を下ケース240に被せたときに、この係合突起223に係合部242を係合させることで、上ケース220と下ケース240とを結合させることができる。
【0048】
上ケース220、下ケース240には、加熱コイルユニット100に赤外線センサユニット200をネジ止めするためのネジ(図示せず)を挿通させる挿通孔224、225、243、244がそれぞれ形成されている。
上ケース220の挿通孔224、225の周囲には、上方に突出した略円形状の挿通孔リブ226、227がそれぞれ設けられている。挿通孔リブ226、227は、赤外線センサユニット200をネジ止めするネジ(図示せず)を挿通させたとき、該ネジとの間に所定の隙間が生じるよう、挿通孔224、225よりも大きい内径で構成されている。
【0049】
下ケース240には、その外周に沿って、側壁241の高さ方向に突出する外周リブ245が設けられている。外周リブ245は、下ケース240と上ケース220を結合させたときに、両者の接合部に当接してその接合部を包囲する。このため、下ケース240と上ケース220を結合させたときには、両者の接合部は外部からは見えない状態となる。
【0050】
図7(a)は本実施の形態に係る赤外線センサユニットを加熱コイルユニットに取り付けた状態の斜視図、(b)は図7(a)のZ−Z線部分断面図である。
図7(a)、(b)に示すように、赤外線センサユニット200は、加熱コイル保持部材120の裏側(加熱コイル110側の反対側)に、ネジ(図示せず)を用いて、赤外線センサ231が内加熱コイル110aと外加熱コイル110bの間で外加熱コイル110b寄りに取り付けられる。
【0051】
遮蔽体130は、接触式温度センサ150に嵌合、保持させて赤外線センサ231の近傍、外加熱コイル110bの一部を覆う様に取り付けられている。
【0052】
リブ140は、加熱コイル保持部材120の赤外線センサ231と外加熱コイル110bとの間の位置に、天板方向へ向って延設されていれて、リブ140の上端と遮蔽体130の端部が接触するよう配置されている。
【0053】
図8は、本実施の形態に係る天板から加熱コイルユニットまでの部分断面図である。
図8に示すように、天板21の赤外線センサ231の直上にくる位置に非隠蔽部(窓部)3RW(3LW)が設けられている。
【0054】
次に、上記の構成を有する電磁誘導加熱調理器1の動作を説明する。
ユーザが主電源スイッチ13により電源を投入し、左操作ダイアル14L等により火力レベルや加熱時間などの加熱条件が設定されると、これらの情報が回路基板41の通電制御回路に入力され、加熱コイル110を駆動する駆動回路に駆動電圧が印加される。これにより、加熱コイル110に高周波電流が流れ、加熱コイル110からの高周波磁束により天板21に載置された鍋などの被加熱物が加熱される。
【0055】
加熱コイル110に高周波電流が流れると、加熱コイル110が発熱する。加熱コイル110が加熱するとその熱が周囲に放熱されるようになるが、赤外線センサ231が配置されている近傍の外加熱コイル110b上には遮蔽体130が加熱コイル発熱による放熱を抑制するので、赤外線センサが受ける加熱コイルの放熱の影響を低減することができる。さらに加熱コイル保持部材120の赤外線センサ231と外加熱コイル110bとの間の位置に、天板方向へ向ってリブ140が延設されていて、リブ140の上端と遮蔽体130の端部が接触しているので、赤外線センサ231方向への放熱の抑制がより確実になる。
【0056】
また、図8に示したように、天板21の赤外線センサ231の直上にくる位置に非隠蔽部(窓部)3RW(3LW)が設けられ、赤外線センサ231が外加熱コイル110b寄りに取り付けられているので、非隠蔽部(窓部)3RW(3LW)を通して加熱コイルユニット100が使用者に視認される場合があるが、遮蔽体130とリブ140により加熱コイル110は遮蔽され、金属の集合線からなる加熱コイル110が使用者の視線に晒されることがない。
【0057】
上記のような本実施の形態によれば、加熱コイル110が加熱しても、赤外線センサ231が配置されている近傍の外加熱コイル110b上に配置された遮蔽体130と加熱コイル保持部材120の赤外線センサ231と外加熱コイル110bとの間の位置に天板方向へ向って設けられたリブ140により、加熱コイル発熱による放熱を抑制するので、赤外線センサが受ける加熱コイルの放熱の影響を低減することができ、赤外線センサの検知性能を安定させることが可能となる。
【0058】
また、赤外線センサ231が配置されている近傍の外加熱コイル110bが遮蔽体130と加熱コイル保持部材120の赤外線センサ231と外加熱コイル110bとの間の位置に天板方向へ向って設けられたリブ140により、天板21の非隠蔽部(窓部)3LW、3RWから見えないように遮蔽するので、使用者に加熱コイルの存在を視認させることがなく、金属の集合線である加熱コイルを視認してしまうことからくる使用に対する安全面での不安感や不快感を与えることがない。
【符号の説明】
【0059】
1 電磁誘導加熱調理器、2 本体ケース、3L 左加熱源、3LM 案内マーク、3LW 非隠蔽部(窓部)、3R 右加熱源、3RM 案内マーク、3RW 非隠蔽部(窓部)、5 輻射式中央電気加熱源(加熱源)、5M 案内マーク、6L 左側冷却室、6R 右側冷却室、7 グリル加熱室、8 上部部品室、9 ドア、9A 中央開口部、9B 取っ手、10 後部排気室、11 排気ダクト、12 前面操作部、13 主電源スイッチ、14L 左操作ダイアル、14R 右操作ダイアル、15L 液晶表示画面、15R 液晶表示画面、16 統合液晶表示部、20 上枠、20C 中央通風口、20L 左通風口、20R 右通風口、21 天板、22L 上下仕切板、22R 上下仕切板、23 切欠部、24 水平仕切板、25 後部仕切板、26 排気穴、27 カバー、30 送風機、31 翼部、32 ファンケース、32A 送風室、32B 吸込口、32C 排気口、32D、32E プラスチック製ケース、33 部品ケース、34 第1排気口、35 第2排気口、36 導入口、41 回路基板、42 前部部品ケース、43 電気部品、100 加熱コイルユニット、110 加熱コイル、110a 内加熱コイル、110b 外加熱コイル、120 加熱コイル保持部材、121 脚部、130 遮蔽体、140 リブ、150 接触式温度センサ、200 赤外線センサユニット、210 板金、211 センサ穴、212、213 挿通孔、220 上ケース、221 側壁、222 センサ穴、223 係合突起、224、225 挿通孔、226、227 挿通孔リブ、230 赤外線センサ装置、231 赤外線センサ、232 基板、240 下ケース、241 側壁、242 係合部、243、244 挿通孔、245 外周リブ、250 ケース、300 風路ユニット、301 高部位、302 低部位、303 噴出口、304 噴出口、305 風向板、306 通風口、307 仕切壁、308 仕切壁、308A 連通口、309 脚部保持部、311 通風空間、312 通風空間、313 通風空間、A 本体部、B 天板部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した箱状の本体ケースと、
前記本体ケースの上面開口を覆い被加熱物が載置可能な天板と、
前記本体ケース内で前記天板の下方に配置され、同心円状の多重コイルから成る加熱コイル、及び前記加熱コイルを保持する加熱コイル保持部材を有する加熱コイルユニットと、
前記加熱コイル保持部材に前記加熱コイルの多重コイル間に略同心円状に配置され、前記天板上に載置された被加熱物の温度を検知する複数の温度検知手段と、を備え、
複数の前記温度検知手段の内、少なくとも1つは被加熱物から放射される赤外線を検出する非接触式の赤外線センサとし、それ以外の前記温度検知手段を前記天板に接触して温度を検知する接触式温度センサとして、
前記天板は、被加熱物載置面の裏側に遮光性の塗装または印刷が施され、一部に赤外線が透過可能な非隠蔽部を設け、前記赤外線センサは前記天板の前記非隠蔽部の下方に配置されていて、前記非隠蔽部近傍で前記赤外線センサより外側に位置する前記加熱コイルの一部を覆う様に柔軟性を有する黒色の遮蔽体を取り付け、前記遮蔽体は前記接触式温度センサで保持するようにしたことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱コイル保持部材の前記赤外線センサと前記加熱コイルとの間の位置に、天板方向へ向ってリブを設け、前記遮蔽体の端部と前記リブの上端が接触するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記遮蔽体は耐炎耐熱性繊維から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2何れかに記載の電磁誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84634(P2013−84634A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−27232(P2013−27232)
【出願日】平成25年2月15日(2013.2.15)
【分割の表示】特願2009−203665(P2009−203665)の分割
【原出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】