説明

電線の止水構造および該止水構造の形成方法

【課題】二輪車や四輪車等の車両に配線される電線内部に侵入した水が端末のコネクタ接続部を経て電子制御ユニット内等へ浸水するのを防止する。
【解決手段】車両に配線される電線の止水構造であって、前記電線の端末の端子接続部に近接した位置で、絶縁被覆層が除去されて芯線が露出した中間露出部15を備え、該中間露出部に熱収縮チューブ21が被覆され、かつ、該熱収縮チューブ21で被覆されている中間露出部15の芯線を構成する複数の素線が半田20で固着されている止水部8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車や四輪車等の車両に配線する電線の止水構造および該止水構造の形成方法に関し、特に、電子制御ユニットのコネクタと接続する電線において、電線側からコネクタ接続部を経て電子制御ユニット内への浸水発生を防止するものである。
【背景技術】
【0002】
オートバイや自動車からなる車両に配索するワイヤハーネスが被水領域に沿って配索される場合、車両に搭載される電子制御ユニットとワイヤハーネスとのコネクタ接続部を介してワイヤハーネスの電線側から電子制御ユニットへの浸水防止を図る必要がある。
【0003】
そのため、従来は、電子制御ユニットとワイヤハーネスとのコネクタ接続部では、ワイヤハーネスの各電線に防水ゴム環を取り付けた防水コネクタを用い、外部より水がかかっても防水コネクタの水密構造により電子制御ユニットへの浸水発生を防止している場合が多い。
しかしながら、電線の芯線を囲む絶縁被覆層が損傷し、絶縁被覆層に亀裂が生じたり、絶縁被覆層の一部が剥ぎ取られ、かつ、この損傷部が被水領域に位置する場合には、損傷部から芯線へと浸水が発生し、芯線を構成する多数の素線間の隙間に水が侵入する恐れがある。芯線に侵入した水は毛細管現象により素線間を通って電線端末の端子圧着部を経由して電子制御ユニット内に浸水が生じる可能性がある。
【0004】
さらに、電子制御ユニットと接続するコネクタを防水コネクタとしても、該防水コネクタと接続したワイヤハーネスの電線が他端側で他の電線と非防水コネクタを介して接続される場合がある。この場合、非防水コネクタによる接続部で被水すると、該非防水コネクタで露出している電線の芯線に水が浸水し、前記と同様に、芯線の素線の隙間を毛細管現象で水が伝わり、電子制御ユニットとの接続部まで達する可能性がある。よって、電子制御ユニットと接続する電線は、他端側まで防水コネクタを用いて他の電線とコネクタ接続する必要がある。
しかしながら、防水コネクタは非防水コネクタと比較して大型であるため、設置スペースを確保しなければならず、ワイヤハーネスの経路確保が困難となる場合が多い。かつ、防水コネクタは非防水コネクタと比較してコスト高になる。
【0005】
前記防水ゴム環を用いることなく防水を図るコネクタとして、本出願人は、特開2000−144099号公報で、図8に示すように、シリコーンゲルを主成分として成形した防水材100を設け、該防水材100をコネクタ101の端子挿入側面に取り付け、さらに、該防水材100の外面にスペーサ102を配置し、ホルダー103でコネクタ101に係止した防水型のコネクタを提供している。
この防水型のコネクタでは、防水材100に電線端末に圧着した端子104を貫通する端子孔を設けている。
【0006】
前記防水型のコネクタにおいても、防水材、スペーサ、ホルダーを必要とし、部品点数が増加し、コネクタが大型化すると共にコスト高になる。かつ、防水材の端子孔を貫通させる端子に、前記のように電線の導体を通して水が毛細管現象により達している場合には、確実に電子制御ユニットへの浸水防止を図ることができない恐れがあり、これらの点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−144099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスとコネクタ接続される機器へワイヤハーネスを構成する電線からの浸水が生じるのを確実に防止できる電線の止水構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、車両に配線される電線の止水構造であって、
前記電線の端末の端子接続部に近接した位置で、絶縁被覆層が除去されて芯線が露出した中間露出部を備え、
前記中間露出部に熱収縮チューブが被覆され、かつ、該熱収縮チューブで被覆されている前記中間露出部の芯線を構成する複数の素線が半田で固着されている止水部を備えていることを特徴とする電線の止水構造を提供している。
【0010】
前記電線の止水構造の形成方法として、
前記電線の端末に接続する端子と近接する位置で、前記絶縁被覆層を中間剥離して芯線を中間露出させ、
前記芯線の中間露出部および該中間露出部を挟む両側の絶縁被覆層にかけた長さを有し、その内周面の中間部分に半田が固着されていると共に両側部に接着剤が塗布されている熱収縮チューブを用い、該熱収縮チューブの半田固着部分を前記芯線の中間露出部の外周に位置させると共に両側の接着剤塗布部分を前記両側の絶縁被覆層の外周に位置させ、
前記熱収縮チューブを加熱して収縮させると共に、前記半田および接着剤を溶融し、前記半田を前記芯線の中間露出部の素線間に浸透させて半田一体部からなる止水部を設け、かつ、前記接着剤で前記熱収縮チューブの両端縁と前記絶縁被覆層の外周面との間の隙間を遮断している電線の止水構造の形成方法を提供している。
【0011】
前記のように、本発明では、二輪車や四輪車等の車両に配線する電線内部に浸水する止水を、従来汎用されているシリコーンやホットメルトを用いる代わりに、半田を用い、該半田を熱収縮チューブの内周面に固着しておき、熱収縮チューブを電線の中間露出部に被せ、加熱して収縮させる時に同時に半田を溶融して露出した芯線の素線間の隙間に浸透させて止水剤として用いることを特徴としている。
【0012】
前記熱収縮チューブの内周面には、リング状の固化した半田が軸線方向に間隔をあけて予め固着されており、かつ、該半田が固着されていない内周面には接着剤が塗布されている。よって、熱収縮チューブを中間露出部に被せ、該熱収縮チューブの長さ方向の両端を、中間露出部を挟む両側の絶縁被覆層の外周面に接着剤で固着して位置決め保持して取り付けることができる。
かつ、加熱で溶融した半田は、芯線を構成する素線の外周全面に塗布され、かつ、半田をリング状としているため外周面の全面に確実に塗布されることになる。さらに、全外周から素線間の隙間へも浸透していく。このように、芯線の外周が半田で密閉された状態となると共に、素線間の隙間にも浸透し、侵入した水の通路を確実に遮断して止水している。
また、溶融した半田はホットメルトやシリコーン等の溶融した止水剤と比較して流動性は低いため過度に流動せず、芯線の中間露出部から両側外方へ流出していくのを防止でき、取り扱いやすい利点がある。
【0013】
本発明の電線の止水構造では、半田により芯線の素線を一体的に固着して止水部を形成しているため、該止水部は比較的硬いものとなる。よって、自動車走行時に発生する振動に対する振動吸収性が低く、共振が発生しがちとなる。
そのため、前記芯線の中間露出部の外周面に密着させた前記熱収縮チューブの外周面に、発泡シート、ゴムシートまたはウレタンシートからなる振動吸収性を有する弾性シートを巻き付けることが好ましい。
前記した弾性シートを巻き付けることにより、該弾性シートで振動を吸収して、半田で一体化した止水部の振動を緩和し、止水部にヒビ等が入らないようにして止水信頼性を高めることが好ましい。
【0014】
さらに、前記弾性シートの外周面に振動吸収フィンを設け、より振動吸収性を高めてもよい。該振動吸収フィンを設ける場合、半田と芯線とを一体的に固着する部分は比較的固くなるため、前記フィンを大きくして振動吸収効果を高めることが好ましい。
【0015】
また、本発明の止水構造を有する電線は、特に、電子制御ユニットに接続される端末側に前記止水部を有することが好ましい。
特に、電子制御ユニットのコネクタと接続する電線側において、該コネクタと可能な限り近接した直近位置に、電線の芯線を止水した止水部を設けることが好ましい。該止水部は芯線の中間露出部の素線に半田を付着して浸水が発生する隙間を無くしていることにより、絶縁被覆層の損傷により芯線位置まで水が侵入しても、素線間の水を遮断できる。よって、電子制御ユニットと接続するコネクタを非防水コネクタとしても、電子制御ユニットへの電線側からの浸水発生を防止することができる。
【0016】
コネクタに接続する複数の電線を集束したワイヤハーネスは、コネクタ接続側で電線端末の端子をコネクタの各端子収容室内に挿入係止するため分散させる必要がある。この電線の分散位置に前記止水部を設けると、電線径が大となり、コネクタの端子収容室の間隔より電線間の間隔が大となり、端子を端子収容室内に挿入しにくくなる。
よって、分散位置から電線群を集束した位置、即ち、集束部分の先端側に各電線の前記止水部を設けることが最適となる。
【0017】
前記最適な止水部の位置は、コネクタの端子挿入面から10〜100mmの範囲の位置となる。
例えば、電線が2本の場合では、端子挿入面からの電線集束位置は10mm程度となり、30極以上の多極コネクタの場合には、電線集束位置は100mm程度となる。
【0018】
このように、電線の集束位置の先端側に止水部を設けると、各電線端末の端子をコネクタの端子収容室内に無理なくスムーズに挿入係止できる。かつ、コネクタ直近の10mm〜100mm程度には外部干渉材は存在しないため、電線の絶縁被覆が損傷を受けることはなく、当該位置で止水処理を図ることにより芯線に侵入している水を確実に遮断して、電子制御ユニットへの浸水防止を図ることができる。
【0019】
前記止水部を備えた電線の集束体からなるワイヤハーネスとコネクタ接続される電子制御ユニットは、例えば、エンジン制御ユニット、エンジン燃料制御ユニット、ABS制御ユニット、エアバック制御ユニット、走行安全制御ユニット、車両レーダー制御ユニット、暗視カメラ制御ユニット等からなる。
また、前記電子制御ユニットと前記ワイヤハーネスを介して接続する機器は、
電子制御ユニットで制御されるライト、ウオッシャ、ドアロック、防盗用ホーン、スターターから選択される1種以上の被制御機器、
前記電子制御ユニットに情報を送信するOセンサ、スピードセンサ、ノックセンサ、衝突センサ等からなるセンサおよび/または他の電子制御ユニットからなる情報送信機器、
さらに、電気接続箱のヒューズ、リレー、コネクタ、接地部材から選択される1種以上の電気部品である。
【0020】
前記した電気制御ユニットは自動車の走行安全系にかかわるものであるため、ワイヤハーネスとのコネクタ接続部からの浸水が発生し、電子制御ユニットの制御に誤作動を発生するのを防止する必要がある。よって、コネクタ接続部の直前で電線側に止水部を設け、確実に電子制御ユニットへの浸水発生を防止していることにより、走行安全性への信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明の電線の止水構造では、コネクタと接続される電線端末に近接した位置に、電線の芯線に半田を付着した止水部を設けているため、該止水部より離れた位置で、電線の絶縁被覆の損傷により素線間に水が侵入している場合に、コネクタ接続部の直前で水を遮断できる。よって、コネクタを介して電子制御ユニット等と接続する場合、コネクタを非防水コネクタとしても、電子制御ユニットへの電線側からの浸水発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態を示す全体構成図である。
【図2】ワイヤハーネスのコネクタ接続側の一部断面拡大平面図である。
【図3】ワイヤハーネスを構成する電線の止水部を示す図面である。
【図4】(A)は図3のA−A線断面図、(B)は図3のB−B線断面図、(C)は軸線方向の断面図である。
【図5】止水部の形成方法を説明するための図面である。
【図6】第2実施形態を示す図面である。
【図7】(A)(B)は第2実施形態の変形例を示す図面である。
【図8】従来例を示す図面である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳述する。
図1乃至図5に第1実施形態を示す。
図1に示すように、実施形態のワイヤハーネスW/Hの先端にコネクタ3を接続している。該コネクタ3は、自動車のエンジンルームに搭載される電子制御ユニット1(以下、ECUと称す)の基板に実装したコネクタ2と雌雄嵌合接続するものであり、コネクタ3はユニット結合コネクタからなる。
【0024】
前記電子制御ユニット1は水がかからない非被水領域に搭載しており、よって、該電子制御ユニット1のコネクタ2とワイヤハーネス端末のコネクタ3との接続部には水がかからない状態となっている。
本実施形態のECU1はエンジン燃料制御ユニットからなる。また、該ECU1とコネクタ接続するワイヤハーネスW/Hの電線は、Oセンサ、スピードセンサ、ノックセンサ、衝突センサからなるセンサS、他の電子制御ユニットE、電気接続箱Bのヒューズ、リレー、コネクタと接続している。
【0025】
前記ワイヤハーネスW/Hは複数本の電線WにテープTを巻き付けて結束し、先端のコネクタ3との接続部では、各電線Wの端末に接続したメス端子5をコネクタ3の各端子収容室3aに挿入係止するため、電線群をテープ巻きせずに扇状に広げて分散している。
前記電線Wは、図3および図4に示すように、多数本の素線10を撚った芯線11を絶縁被覆12で被覆した丸電線からなる。
【0026】
前記ワイヤハーネスW/Hを構成する各電線Wの端末には、コネクタ3に挿入係止するメス端子5を圧着接続し、コネクタ3の挿入側端面から寸法Lが10〜100mm離れた位置(端子圧着位置から20〜100mm離れた位置に)に、止水部8を設けている。なお、本実施形態では50mmとしている。
止水部8の位置は、電線群に巻き付けられたテープTの先端側で被覆される位置にあり、言い換えると、テープTの巻き付け先端から引き出されて扇状に広がる電線Wのコネクタ根元位置にある。
【0027】
各電線Wの止水部8は、絶縁被覆12の全周に沿ってスリットを入れ、該スリットを挟む一方の絶縁被覆を一方側へ引っ張って移動し(所謂、皮寄せして)、芯線11の中間露出部15を設けている。
前記中間露出部15に半田20を充填して、複数の素線10により形成される芯線11の外周面に半田20を付着させると共に、素線10の隙間に半田を浸透させ、中間露出部15に隙間がない状態としている。
【0028】
前記半田20を充填した中間露出部15の外周から該中間露出部15の両側の絶縁被覆12の外周にかけて熱収縮チューブ21で被覆している。
【0029】
前記ワイヤハーネスW/Hの先端に接続するコネクタ3、および該コネクタ3と雌雄嵌合接続するECU1のコネクタ2は、防水仕様としていない非防水型のコネクタとしている。
コネクタ3は、コネクタハウジング3b内に仕切壁3cを設けて区画して端子収容室3aを設けている。これら端子収容室3aにワイヤハーネスW/Hの各電線Wの端末に接続したメス端子5を挿入係止している。各端子収容室3aを囲む底壁には端子係止用のランス(図示せず)を設け、前記メス端子5の係止溝にランスを係止している。
【0030】
ECU1のコネクタ2は、ECUのハウジング1aに設けたコネクタ挿入開口1bに面して、ハウジング1a内に位置する。該ECU1に対して、そのコネクタ挿入開口1bよりワイヤハーネスW/Hのコネクタ3を差し込み、コネクタ3をコネクタ2と嵌合接続している。
【0031】
次ぎに、前記電線Wの止水部8の形成方法を図5に基づいて説明する。
まず、半田付き熱収縮チューブ30を用意する。該半田付き熱収縮チューブ30は熱収縮チューブ21の長さ方向の略中央部の内周面にリング状の硬化した半田20を固着しているとともに、その両側部に間隔をあけてリング状に硬化した接着剤25を固着している。該半田付き熱収縮チューブ30は芯線の中間露出部15の長さに両側の絶縁被覆12に被せる長さを加えた寸法に予め切断し、かつ、長さ方向の中間部分に前記リング状の半田20を位置させている。
なお、半田付き熱収縮チューブは、両側のリング状の接着剤に変えて、中央と同様なリング状の半田を設け、熱収縮チューブ21の内周面全面に接着剤を塗布した構成でもよい。
【0032】
前記のように、電線Wの端末に近接した位置で、電線Wの絶縁被覆12にスリットを入れ、該スリットを挟む一方の絶縁被覆を一方側へ引っ張って移動して皮寄せし、芯線11に中間露出部15を形成する。
ついで、電線Wの端末側から前記半田付き熱収縮チューブ30を被せていき、中間露出部15および該中間露出部15の両側の絶縁被覆12の外周に被せる。
其の際、リング状の半田20は芯線の中間露出部15の外周に位置させ、両側のリング状の接着剤25を絶縁被覆12の外周面に位置させ、熱収縮チューブ21の両側を中間露出部15を挟む両側の絶縁被覆12の外周面に被せて位置させる。
【0033】
ついで、熱収縮チューブ21の収縮温度で加熱する。この加熱によりリング状に硬化させていた半田20が溶融し、芯線の中間露出部15の外周面および内部の隙間へと浸透し、隙間なく充填していく。かつ、両側のリング状の接着剤25も軟化溶融して熱収縮チューブ21と絶縁被覆12とを強固に固着する。
其の後、所要時間経過すると、溶融した半田20は硬化し、芯線の中間露出部15は複数の素線10が半田20で一体化された止水部8となる。
該止水部8は熱収縮チューブ21で被覆されていることにより、絶縁保護され、かつ、防水される。
【0034】
前記のように、本発明では、ECU1と接続されるワイヤハーネスW/Hは、ECU1と接続するユニット結合用のコネタク3の直近位置で電線Wに止水部8を設けている。よって、止水部8から離れた位置で電線Wの絶縁被覆12に損傷が発生し、または、該電線Wの他端末のコネクタ側で浸水が発生し、絶縁被覆12内の芯線11の素線10の隙間を毛細管現象でコネクタ3との接続側へ水が伝わってきても、止水部8には素線10間の隙間に半田20を充填しているため、止水部8で水を確実に遮断することができる。したがって、コネクタ3とECU1のコネクタ2の接続部を通して電線W側からECU1の内部に浸水が発生するのを防止できる。
【0035】
図6に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、芯線の中間露出部15の外周面に密着させた熱収縮チューブ21の外周面に、振動吸収性を有する弾性シートからなる発泡シート24を巻き付けている。なお、発泡シートに変えて、ゴムシート、ウレタンシートでもよく、振動吸収性を有する弾性シートであればよい。
【0036】
前記芯線11の中間露出部15では半田20で素線10を固着しているため、比較的硬い状態となっている。よって、前記熱収縮チューブ21の外周面に弾性シートからなる発泡シート24を巻き付けると、車両振動を発泡シート24で吸収でき、半田20で固着した止水部8の共振を抑制できる。その結果、振動により半田20にクラックが発生し、止水性が低下するのを防止できる。
【0037】
前記振動吸収性を有する弾性シートを巻き付ける方法に変えて、図7(A)に示すように、スリット入りチューブからなる弾性被覆材26を設け、該弾性被覆材26を止水部8に軸直角方向から被せてもよい。
【0038】
さらに、図7(B)に示すように、スリット入りチューブからなる弾性被覆材27の外周面に周方向に間隔をあけて振動吸収フィン27aを設けてもよい。該振動吸収フィン27aは長さ方向の中央部に向けて漸次フィンの長さを大きくしていき、長さ方向の中央の前記半田20の外周側に当たる位置ではフィンを最も長くしている。このように振動吸収フィン27aを設けると、車両振動の発生時に振動吸収フィン27aが振動し、止水部へ伝達する振動をほぼ吸収することができる。特に、半田20が含浸して固くなる芯線の中間露出部の外周で振動吸収フィン27aを大としているため、振動減衰効果を高めることができる。
【0039】
前記第1実施形態では、ECU1をエンジン燃料制御ユニットとしているが、エンジン制御ユニット、ABS制御ユニット、エアバック制御ユニット、走行安全制御ユニット、車両レーダー制御ユニット、暗視カメラ制御ユニットにワイヤハーネスをコネクタ接続する場合にも好適に用いられる。
また、前記ECUはライト、ウオッシャ、ドアロック、防盗用ホーン、スターター等の安全走行用の機器を制御する場合にも好適に用いられる。
さらに、本発明の止水方法により形成された止水部を有する電線を集束したワイヤハーネスは、自動車に限らず、オートバイの被水領域でコネクタ接続する場合に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 ECU(電子制御ユニット)
2 ECU側のコネクタ
3 ワイヤハーネス側のコネクタ
5 メス端子
8 止水部
10 素線
11 芯線
12 絶縁被覆
20 半田
21 熱収縮チューブ
30 半田付き熱収縮チューブ
24 発泡シート
27a 振動吸収フィン
W 電線
W/H ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配線される電線の止水構造であって、
前記電線の端末の端子接続部に近接した位置で、絶縁被覆層が除去されて芯線が露出した中間露出部を備え、
前記中間露出部に熱収縮チューブが被覆され、かつ、該熱収縮チューブで被覆されている前記中間露出部の芯線を構成する複数の素線が半田で固着されている止水部を備えていることを特徴とする電線の止水構造。
【請求項2】
電子制御ユニットに接続される端末側に前記止水部を有する請求項1に記載の電線の止水構造。
【請求項3】
前記芯線の中間露出部の外周面に密着させた前記熱収縮チューブの外周面に、発泡シート、ゴムシートまたはウレタンシートからなる振動吸収性を有する弾性シートを巻き付けている請求項1に記載の電線の止水構造。
【請求項4】
前記弾性シートの外周面に振動吸収フィンを設けている請求項3に記載の電線の止水構造。
【請求項5】
請求項1に記載の電線の止水構造の形成方法であって、
前記電線の端末に接続する端子と近接する位置で、前記絶縁被覆層を中間剥離して芯線を露出させて中間露出部を設け、
ついで、前記芯線の中間露出部および該中間露出部を挟む両側の絶縁被覆層にかけた長さを有し、その内周面の中間部分に半田が固着されている両側部に接着剤が塗布されている熱収縮チューブを用い、該熱収縮チューブの半田固着部分を前記芯線の中間露出部の外周に位置させると共に両側の接着剤塗布部分を前記両側の絶縁被覆層の外周に位置させ、 前記熱収縮チューブを加熱して収縮させると共に、前記半田および接着剤を溶融し、前記半田を前記芯線の中間露出部の素線間に浸透させて半田一体部からなる止水部を設け、かつ、前記接着剤で前記熱収縮チューブの両端縁と前記絶縁被覆層の外周面との間の隙間を遮断している電線の止水構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−119038(P2011−119038A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272699(P2009−272699)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】