説明

電線処理システム

【課題】端子圧着装置から排出された電線を電線収容部に速やかに収容させ、且つ加工される電線の長さに拘らず、確実に収容させることが可能な電線処理システムを提供する。
【解決手段】所定の間隔で送り方向に一列で配置された複数の送りローラ58と、所定長さの電線が排出されるまで、複数の送りローラ58を回転させ、排出された電線を、送りローラ58上で直線状に維持させる送り制御手段と、送りローラ58の側方に配置され、軸方向が送り方向と略平行になるように回動可能に支持された回動部材75と、回動部材75から延出されて夫々の送りローラ58の間に配置され、送りローラ58上で直線状に維持された電線に対し、下方から当接させることが可能な複数の当接部77と、複数の当接部77を、電線Lよりも下方の初期位置、及び電線に当接させ電線を直線状態のまま送りローラ58から逸脱させる払出位置とを通って変位させる払出制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線処理システムに関するものであり、特に、電線の端部に端子を圧着する圧着機構、及び圧着された所定長さの電線を排出する排出機構を備えた端子圧着装置と、排出機構によって排出された電線を受取り収容する電線搬送収容装置とを具備する電線処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、端末処理装置として、電線の端部の被覆材を除去し、その端部に端子を圧着するとともに、電線を所定の長さに切断する端子圧着装置が知られている。この端子圧着装置の中には、電線の先端部と後端部の両方に端子を圧着することのできるものもある。
【0003】
具体的には、図6に示すように、端子圧着装置101は、電線Lの先端側及び後端側に端子を圧着させるための第一圧着機構103及び第二圧着機構104と、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構105と、電線Lの先端側を第一圧着機構103に送り込む電線送込み機構106と、切断後の電線Lを保持し電線Lの後端側を第二圧着機構104に送り込むチャック機構(図示しない)とを備えている。
【0004】
第一圧着機構103と第二圧着機構104とは基本的な構成が等しく、端子を圧着するためのアプリケータ109がフレーム部材110に取付けられている。つまり、フレーム部材110の側面には、切欠きが形成され、その切欠き内にアプリケータ109が取付けられている。
【0005】
また、端子圧着装置101に排出機構120を備えたものがある。排出機構120は、加工された電線、すなわち圧着端子が圧着された電線を、所定の位置に排出させるものであり、例えば電線の先端を挟持し、所定の位置まで移動させるものである。ところで、加工される電線の長さは様々であり、長い場合には1mを越える場合もある。そして、このような長い電線は、端子圧着装置101上では収容することができず、また、たとえ収容することができたとしても、これらの電線を排出するには、排出機構120に備えられた可動部121の移動量が極めて大きくなり、排出機構120が大型化してしまう。
【0006】
そこで、端子圧着装置101の排出側に、電線搬送収容装置125として、必要に応じた長さのベルトコンベア126を端子圧着装置101とは独立して配設するようにしたものがある。このベルトコンベア126(以下、単に「コンベア」と称す)は、ベルトの側方に、搬送方向と並行して配置された電線収容部127を備えており、排出機構120では、電線の後端を挟持部によって挟持するとともに、挟持したまま電線収容部127側に移動させることが可能となっている。つまり、加工された電線の先端がコンベア126のベルト上に載置されると、コンベア126に従って搬送方向に搬送されることとなるが、その後、電線の後端を排出機構120の挟持部によって電線収容部127側に移動させることにより、電線は、直線状態のまま後端側から順に電線収容部127側に案内されることになる。そして、電線の先端側が電線収容部127まで移動したときに、電線の後端が挟持部から放され、電線は電線収容部127の所定位置に直線状態のまま収容される。
【0007】
【特許文献1】特開2005−166399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の電線搬送収容装置では、電線の後端を挟持して移動させることから、所定の長さに加工された電線が全てコンベア上に排出されるまで、すなわち所定長さの電線がコンベア上で真直ぐ伸びた状態となるまで、挟持部を電線収容部側に向って変位させることができなかった。また、電線収容部では、電線の後端から順に収容されることとなるため、電線の先端が収容されるまでには(すなわち所定長さの電線が完全に収容されるまでには)、比較的長い時間を要していた。このため、譬え、端子圧着装置の処理能力が極めて優れたものであっても、端子圧着装置での処理が、電線搬送収容装置での処理能力によって制限されることとなり、生産性を高めることが困難となっていた。
【0009】
また、電線の排出中に、電線の先端がコンベアから逸脱すると、電線の先端を搬送方向に送ることができなり、電線は撓んだり丸まったりして、直線状に維持されなくなる。このため、従来の電線搬送収容装置では、コンベアの横幅を比較的広く形成し、電線の排出方向がばらついても電線の先端がコンベアから逸脱しないようにしている。しかしながら、これによれば、電線を電線収容部に収容させるまでの時間がさらに増加し、端子圧着装置における稼働率の低下が助長されていた。しかも、コンベアの大型化により電線搬送収容装置の配設スペースを確保することが困難となる場合もあった。
【0010】
さらに、加工される電線の長さが長い場合には、電線の先端を電線収容部に収容させることが困難となっていた。つまり、コンベアの長さを長くすれば、比較的長い電線でも直線状態に維持させることが可能になるが、これによれば、排出機構の挟持部を電線収容部側に変位させても、すなわち電線の後端を電線収容部に移動させても、電線の長さに対する変位量の割合が極めて少ないことから、電線の先端が電線収容部に収容される前に、電線の長さ方向とコンベアの搬送方向とが略一致し、電線の先端を移動させることができなくなる。つまり、電線を確実に収容させることができず、散らばった状態となる虞がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、端子圧着装置から排出された電線を電線収容部に速やかに収容させ、且つ装置全体を小型化し、しかも加工される電線の長さに拘らず、確実に電線収容部に収容させることが可能な電線処理システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる電線処理システムは、「電線の端部に端子を圧着する圧着機構、電線を所定の長さに切断する切断機構、及び端子が圧着された所定長さの電線を外部に排出する排出機構、を備える端子圧着装置と、
所定の間隔で送り方向に一列で配置されるとともに、夫々回転可能に支持され、回転力が付与されることにより、前記排出機構から排出される電線を前記送り方向に搬送可能な複数の送りローラ、
所定長さの電線が前記排出機構から排出されるまで、前記複数の送りローラを回転させ、排出された電線を、前記複数の送りローラ上で直線状に維持させる送り制御手段、
前記送りローラの側方に配置され、軸方向が前記送り方向と略平行になるように回動可能に支持された回動部材、
該回動部材から延出されて夫々の前記送りローラの間に配置され、前記送りローラ上で直線状に維持された電線に対し、下方から当接させることが可能な複数の当接部、
前記回動部材に回転力を付与し、前記複数の当接部を、電線よりも下方の初期位置と、電線に当接させ該電線を直線状態のまま前記送りローラから逸脱させる払出位置とを通って変位させる払出制御手段、
及び、前記複数の送りローラの側方に並行して配置され、前記複数の当接部によって払出された電線を直線状態のまま受止めて収容する収容部材
を備える電線搬送収容装置と
を具備することを特徴とする」ものである。
【0013】
ここで、「回動部材」は夫々の当接部に対応して個別に設けられていてもよく、一体的に形成されていてもよい。なお、一体的に形成した場合、または夫々別々に形成し軸方向において連結した場合には、一つの駆動源によって回動させることが可能になる。また、「当接部」の形状は特に限定されるものではないが、例えば棒状の延出部材とすることが可能である。なお、当接部を回動部材と一体的に形成することも可能である。
【0014】
また、「直線状に維持」とは、略直線状であればよく、例えば送りローラ同士の間での電線の撓み(全体としては波形状の変形)による湾曲があっても除外されるものではない。また、言うまでもないが電線の曲り癖等を許容するものである。
【0015】
本発明の電線処理システムによれば、端子圧着装置では、電線の端部に端子が圧着されるとともに、電線が所定の長さに切断される。端子が装着された電線は、排出機構によって排出される。
【0016】
一方、電線搬送収容装置では、複数の送りローラが所定の間隔で一列に配置されており、排出機構から排出される電線を送り方向に搬送可能となっている。つまり、夫々の送りローラに回転力を付与すると、排出機構から排出される電線は、停留することなく一定の方向に搬送され、ひいては複数の送りローラの上で略直線状態に維持される。ところで、送りローラの側方には、軸方向が送り方向と略平行となる回動部材が配置され、さらに回動部材から各送りローラの間に向って複数の当接部が延出されている。そして、払出制御手段は、排出された電線が複数の送りローラの上に載置された後、回転部材に回転力を付与し、回動部材から延出された複数の当接部を、電線よりも下方の初期位置から上昇させる。すると、複数の当接部が所定の間隔で電線に当接し、電線をすくい上げるように変位する。これにより、電線は、直線状態のまま送りローラから離れ浮き上がった状態となる。そして、回動部材をさらに回動させれば、電線を支持することができなくなり、電線は送りローラの側方に直線状態のまま払出される。なお、複数の送りローラの側方には、収容部材が配置されているため、払出された電線は、収容部材によって受止められ、収容される。
【0017】
このように、本発明によれば、送りローラ同士の間に配置された複数の当接部、すなわち全体として櫛状に配置された複数の当接部を回動させることにより、電線全体を送りローラからすくい上げて払出させるため、収容部材に対し電線を極めて短時間で収容させることが可能となる。また、排出される電線がいくら長い場合でも、配置される送りローラ及び当接部の数を増やせば、確実に収容部材へ排出することが可能になる。
【0018】
また、本発明の電線処理システムにおいて、「夫々の前記送りローラの両側端面には、前記当接部が初期位置の際に前記送りローラの周面から前記電線が逸脱することを阻止するためのフランジが設けられている」ように構成してもよい。
【0019】
本発明の電線処理システムによれば、送りローラの両側端面にフランジが形成されているため、送りローラの周面からの電線の逸脱が阻止される。換言すれば、送りローラの幅が比較的狭くても、複数の送りローラにわたって電線を真直ぐ送ることが可能となる。すなわち、電線搬送収容装置を小型化することが可能となる。なお、本発明では、電線全体を送りローラからすくい上げて払出させるため、送りローラの両端にフランジを設けた場合でも、電線を確実に収容させることが可能になる。
【0020】
また、本発明の電線処理システムにおいて、「前記端子圧着装置は、前記電線の排出が完了したことを示す情報を、前記電線搬送収容装置に送信する情報送信手段を備え、
前記電線搬送収容装置の前記送り制御手段は、前記情報送信手段から送信された前記情報に基づいて前記送りローラの回転を停止し、
前記払出制御手段は、前記送りローラの停止後、前記複数の当接部を前記初期位置から前記払出位置に変位させる」ように構成してもよい。
【0021】
本発明の電線処理システムによれば、端子圧着装置は、電線の排出が完了すると、そのことを示す情報を電線搬送収容装置に送信する。電線搬送収容装置では、端子圧着装置から電線の排出が完了した情報を受信すると、まず送りローラの回転を停止させ、その後、回動部材を回転させ、複数の当接部を初期位置から払出位置まで変位させる。つまり、電線における搬送方向への動きを確実に停止させてから、電線をすくい上げるように制御する。このため、複数の当接部を電線に当接させるタイミングが多少ばらついても、電線を直線状態に維持したまま安定して払出すことが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明の電線処理システムによれば、端子圧着装置から排出された電線を短時間に収容させることができ、ひいては端子圧着装置の稼働率を高めることができる。また、排出される電線の長さに拘らず、収容部材に対し電線を確実に収容させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態である電線処理システムについて、図1乃至図5に基づき説明する。図1は本実施形態の電線処理システムの構成を示す斜視図であり、図2は電線処理システムにおける電線搬送収容装置の構成を示す斜視図であり、図3は電線搬送収容装置の構成を示す平面図であり、図4は電線搬送収容装置の動作状態を示す斜視図であり、図5は電線処理システムにおける機能的構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の電線処理システム1は、電線Lの端部に端子を圧着する端子圧着装置2と、端子圧着装置2から排出された電線Lを受取り所定の部位に収容する電線搬送収容装置3とを具備して構成されている。
【0025】
端子圧着装置2は、電線Lの送り込み、被覆材の除去、端子の圧潰、電線Lの切断、及び電線Lの排出を一連の動作として行い、例えば、両端に端子が圧着された所定長さの電線Lを連続して生成するものである。
【0026】
詳細に説明すると、端子圧着装置2は、供給される電線Lの曲がり癖等を矯正するための電線癖取装置5と、電線Lの先端側に端子を圧着させるための第一圧着機構6と、電線Lの後端側に端子を圧着させるための第二圧着機構7と、電線Lを切断するとともに電線Lの端部の被覆材を除去する切断機構8と、電線Lの先端側を第一圧着機構6に送り込む電線送り機構9と、切断後の電線Lを保持し電線Lの後端側を第二圧着機構7に送り込むチャック機構(図示しない)と、端子を圧着し終えた電線Lを外部へ排出する排出機構11とを備えている。本例の端子圧着装置1は、加工中の電線Lの向きを変えることなく、直線状に電線Lを送りながら加工することのできるものである。ここで、第一圧着機構6および第二圧着機構7が、本発明の圧着機構に相当する。
【0027】
第一圧着機構6と第二圧着機構7とは基本的な構成が等しいため、以下、第一圧着機構6について説明し、第二圧着機構7についての詳細な説明は省略する。第一圧着機構6は、電線Lに端子を圧着するアプリケータ15を取付けるフレーム部材16を備えており、このフレーム部材16の側面には、切欠き17が形成され、その切欠き17内にアプリケータ15が取付けられている。詳しくは、切欠き17の上方にはアプリケータ15の上側ユニット18が、また、切欠き17の下方には、アプリケータ15の下側ユニット19が夫々取付けられており、第一圧着機構6には、アプリケータ15の上側ユニット18および下側ユニット19を別々に昇降させる昇降機構(図示しない)が備えられている。
【0028】
このアプリケータ15は、上側ユニット18と、下側ユニット19とに互いに分離されており、個々に交換可能な状態で取付けられている。上側ユニット18には押圧部材(図示しない)が、下側ユニット19にはアンビルが夫々取付けられており、上側ユニット18及び下側ユニット19を互いに接近する方向に移動させることで、押圧部材とアンビルとの間に位置する端子を圧潰可能としている。なお、下側ユニット19には、端子をアンビル上に搬送する端子搬送機構20が備えられている。
【0029】
また、アプリケータ15の上側ユニット18および下側ユニット19には、それらを特定するための識別情報が書込まれたICチップ(図示しない)が夫々備えられており、端子圧着装置2に備えられた読書き手段(図示しない)によりICチップの情報を読取ることで、アプリケータ15の上側ユニット18および下側ユニット19に対応した位置設定、電線Lの加工内容、あるいは、端子圧着装置2に取付けられた上側ユニット18や下側ユニット19が正しいものか否か、などを端子圧着装置1において制御することが可能となり、それらの設定などにかかる時間を短縮したり、設定ミスなどを防止することができる。
【0030】
一方、切断機構8は、第一圧着機構6と第二圧着機構7との間に配置され、電線Lの切断や、電線Lの端部の被覆材を除去するものであり、電線Lの被覆材を除去するために上下方向に配置された一対の切込刃(図示しない)と、電線Lを切断するために上下方向に配置された一対の切断刃(図示しない)とを備えている。それらの切込刃および切断刃は、夫々独立して開閉することができ、ステッピングモータを有した開閉手段により、開閉駆動するようになっている。
【0031】
電線送り機構9は、電線取込みガイド24、電線Lの長さを測長するエンコーダ25、所定距離離間して配置される一対のローラ26、及びガイドパイプ27等から構成されている。なお、一対のローラ26は、互いに接近および離反するように移動可能とされ、また、ローラ26がローラ駆動手段(図示しない)により回転駆動され、回転方向及び回転数を制御することにより、電線Lを任意の長さ送るとともに、エンコーダ25によるフィードバック制御を可能にしている。また、ガイドパイプ27は、図示しないガイドパイプ駆動手段により、そのパイプの先端をアプリケータ15や切断機構8の近傍に位置させて、端子の圧着、切断や、被覆材の除去の際に電線Lが振れたりするのを防止するものである。
【0032】
また、チャック機構は、第一,第二圧着機構6,7および切断機構8を挟んで、電線送り機構9とは反対側に配置されている。このチャック機構10は、図示しないが、上下方向に対向配置された一対の把持部と、一対の把持部を開閉するチャック開閉機構と、把持部とともにチャック開閉機構を電線の送り方向に移動するチャック移動手段とを具備して構成されている。このチャック機構の把持部は、V字形状をしており、特に、下側の把持部により、電線Lを受けるとともに、把持部を閉動作することで、電線Lが把持部の中心に移動し、電線Lの軸心を保つことができる。このチャック機構は、切断機構8で切断された電線Lを把持するとともに、電線Lの後端部の加工の際に電線Lをその軸方向に移動させることが可能になっている。
【0033】
排出機構11は、チャック機構の側方に配置され、チャック機構から電線Lを受け取る受取機構(図示しない)と、受取機構を移動させて電線Lをチャック機構から移動させる移動機構(図示しない)とを備え、加工された電線Lを順次外部に排出させるものである。つまり、加工された所定長さの電線Lが、先端側から順に電線搬送収容装置3に向って排出されるようになっている。
【0034】
次に、電線搬送収容装置3について説明する。電線搬送収容装置3は、端子圧着装置2から排出された電線を直線状に維持させながら搬送するとともに、直線状態のまま収容部材53内に収容させるものである。図2及び図3に示すように、電線搬送収容装置3は、ベース板50上に配置され電線Lを真直ぐ送ることが可能な搬送機構51と、搬送機構51によって所定位置まで送られた電線Lをすくい上げて側方に払出す払出機構52と、払出機構52によって払出された電線Lを受け止め収容する収容部材53とを具備して構成されている。なお、ベース板50の底面四隅には、搬送機構51の高さを、端子圧着装置2の排出機構11の高さに一致させるための脚部55が設けられ、さらにその下端にはキャスタ56が取付けられている。
【0035】
搬送機構51には、送り方向に対し所定の間隔で一列に配置された複数の送りローラ58が設けられており、排出機構11から排出された電線を送り方向に搬送させることが可能となっている。なお、夫々の送りローラ58が配置される間隔は、電線Lの搬送中に、互いに隣合う送りローラ58同士の間に電線Lが入込まない間隔、すなわち、搬送される電線Lの先端が、上流側の送りローラ58から離れた後、その下流側の送りローラ58によって受け止められる間隔に設定されている。また、夫々の送りローラ58の両側端面にはフランジ57が形成されており、送りローラ58の周面から電線Lが逸脱することを阻止している。これにより、送りローラ58の幅が比較的狭くても、複数の送りローラ58にわたって電線を真直ぐに送ることが可能になる。
【0036】
複数の送りローラ58は、ベース板50から立設され互いに対向した左側壁部59及び右側壁部60に対して回転可能に支持されている。つまり、送りローラ58の回転軸64が、左側壁部59及び右側壁部60に穿設された貫通孔(図示しない)を挿通して軸支されており、回転軸64の端部側に取付けられた内側プーリ66及び外側プーリ67を介して回転力が付与されるようになっている。具体的に説明すると、夫々の送りローラ58に対して内側プーリ66及び外側プーリ67が同芯軸上に配設されており、先端側(図3では右端)から数え、奇数番目の外側プーリ67とその次の外側プーリ67、及び、偶数番目の内側プーリ66とその次の内側プーリ66とに、夫々無端のベルト68が巻き掛けられている。また、先端側の送りローラ58における回転軸64は、外側プーリ67よりも外方に突出され、その先端部分には、従動プーリ69が取付けられており、搬送用モータ70の駆動プーリ71とベルト72を介して連結されている。このため、搬送用モータ70が動作すると、駆動プーリ71及び従動プーリ69を介して先端側の回転軸64が回転し、さらに、夫々の回転軸64に取付けられた内側プーリ66及び外側プーリ67がベルト68を介して回転する。つまり、搬送用モータ70の動作によって全ての送りローラ58が一斉に回転するようになっている。
【0037】
一方、払出機構52は、送りローラ58の側方に配置され軸方向が送り方向と略平行になるように回動可能に支持された棒状の回転軸76と、回転軸76において軸方向に所定の間隔で形成された円筒状の回動部材75と、回動部材75から延出されて夫々の送りローラ58の間に配置され、送りローラ58上で直線状態に維持された電線Lに対し下方から当接させることが可能な当接部77とを具備して構成されている。なお、回転軸76は、右側壁部60を送り方向に貫通して設けられており、回動部材75は、右側壁部60において所定の間隔で形成された間隙部61内に位置するように配置されている。また、回転軸76の先端側には従動プーリ78が取付けられ、ベース板50に設けられた払出用モータ79には駆動プーリ80が取付けられており、従動プーリ78及び駆動プーリ80にはベルト81が巻き掛けられている。このため、払出用モータ79が動作すると、駆動プーリ80及び従動プーリ78を介して、回転軸76に回転力が付与され、回動部材75及び当接部77が回転軸76を軸心として一定方向に回動する。この際、複数の当接部77は、送りローラ58上に配置された電線Lよりも下方となる初期位置と、電線Lに当接し、その電線Lを直線状態のまま送りローラ58から逸脱させる(即ち払出させる)払出位置と、を通って回動するようになっている。
【0038】
収容部材53は、板状部材を折り曲げて形成されており、右側壁部60の外側側面に取付けられている。特に、収容部材53は下り勾配(例えば45°)に形成され、下端部分が上方に折り曲げられている。つまり、払出機構52によって排出された電線Lを収容部材53の勾配に従って下端側に案内し、下端部分に集めるように構成されている。また、図3及び図4に示すように、収容部材53における傾斜面には、当接部77が挿通可能な大きさのスリット73が切欠かれて形成されており、これにより、当接部77を一回転させることが可能となっている。すなわち、棒状の当接部77を、初期位置と払出位置との間で往復運動させるのではなく、払出位置から、回動部材75の下方を通って初期位置に戻すことが可能となっている。このため、初期位置に戻る途中で、送りローラ58上の電線Lと交差することがなくなり、ひいては、当接部77が初期位置に戻る前から、すなわち送りローラ58上の電線Lがすくい上げられたときから、送りローラ58へ新たな電線Lを排出することが可能になる。換言すれば、当接部77による払出及び復帰動作と、新たな電線Lを送りローラ58に排出させる動作とを同時に行うことが可能になり、電線Lの排出及び払出速度を高め、ひいては端子圧着装置2及び電線搬送収容装置3の稼働率を一層高めることが可能になる。
【0039】
次に、電線処理システム1の制御装置における機能的構成を、図5のブロック図を基に説明する。端子圧着装置2の制御装置は、一連の動作を行う運動制御手段83を有する。運動制御手段83は、演算及び制御を行う中央情報処理装置(CPU)と、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなる補助記憶装置とを備えており、予め入力されたプログラムに従って圧着端子の圧潰動作を連続して行う。運動制御手段83の入力ポートには、操作装置40(図1に示す)に配設された調整値設定部84、電線長さ設定部85、圧着個数設定部86、及び運転スイッチ87が接続されている。
【0040】
調整値設定部84は、第一圧着機構6または第二圧着機構7における圧潰時間や、切断機構8における刃の間隔や、排出機構11における排出速度等の調整値を設定するものである。電線長さ設定部85は、電線Lの必要な長さを設定するものであり、ここで設定された長さの電線Lが、電線送り機構9及び切断機構8等の動作により生成される。また、圧着個数設定部86は、端子が圧着される電線Lの生産本数を設定するものであり、ここで設定された本数の電線Lが生産されるまで、一連の動作が繰り返される。運転スイッチ87は、一連の動作の開始を指示するためのものである。
【0041】
運動制御手段83の出力ポートには、動力機構制御部82、電線搬送制御部91、電線切断制御部93、電線移動制御部94、及び電線排出制御部95が接続されている。動力機構制御部82は、第一圧着機構6及び第二圧着機構7の動力部を制御するものであり、運動制御手段83の出力に基づいて、第一圧着機構6の第一電動機89と、第二圧着機構7の第二電動機90とを駆動する。電線搬送制御部91は、電線送り機構9を制御するものであり、運動制御手段83の出力に基づいて、ローラ駆動手段92を駆動する。また、電線切断制御部93は、運動制御手段83の出力に基づいて切断機構8を制御し、電線Lの切断、または被覆材の除去を行う。また、電線移動制御部94は、運動制御手段83の出力に基づいてチャック機構10を制御し、電線Lを保持して移動させる。電線排出制御部95は、運動制御手段83の出力に基づいて排出機構11を制御し、電線Lを端子圧着装置2の外部に排出させる。
【0042】
また、運動制御手段83には、通信制御部96が接続されている。通信制御部96は、電線搬送収容装置3に備えられた通信制御手段97と双方向の通信を行うものである。ここで、通信制御部96が本発明の情報送信手段に相当する。
【0043】
一方、電線搬送収容装置3の制御装置は、端子圧着装置2から送信された情報、特に端子圧着装置2側において電線Lの排出が完了した旨の情報を受信する通信制御手段97と、搬送用モータ70を動作させ複数の送りローラ58によって電線Lを真直ぐ搬送するとともに、通信制御手段97によって受信した情報に基づいて搬送用モータ70を停止させる送り制御手段98と、搬送用モータ70の停止後(すなわち送りローラ58の停止後)、払出用モータ79を動作させ、当接部77を初期位置から一回転させる払出制御手段99とを備えている。
【0044】
続いて、電線処理システム1の動作について説明する。はじめに、操作装置40から、所望とする製品、つまり、端子付電線Lの情報を入力し、加工に必要にアプリケータ15を取付ける。このとき、アプリケータ15の上側ユニット18および下側ユニット19に夫々設けられたICチップの識別情報を読み取ることで、上側ユニット18および下側ユニット19が間違えていないかを自動的に検出する。そして、上側ユニット18および下側ユニット19に間違いがなければ、端子圧着装置2が可動可能となる。
【0045】
まず、電線Lは、電線送り機構9のローラ26が回転することで、電線Lの先端が切断機構8へと送られ、電線Lの先端が切込刃から所定量、すなわち、電線Lの被覆材の除去長さ分突出した位置で停止する。このとき、ガイドパイプ27も、切断機構8近傍まで前進する。そして、ステッピングモータの駆動により一対の切込刃が電線Lの芯線まで切込んだ後に、電線Lから離れない程度に若干後退する。これにより、芯線に傷が付くのを防ぐとともに、小さい力で引抜くことができる。その後、電線送り機構9のローラ26が逆回転し、電線L先端の被覆材が除去されるとともに、電線Lの先端は、第一圧着機構6におけるアプリケータ15の押圧部材とアンビルとの間まで後退する。
【0046】
次に、第一圧着機構6において、上側ユニット18が下降し、その後、下側ユニット19が上昇することで、上側ユニット18の押圧部材と下側ユニット19のアンビルとで端子が圧潰され電線Lの先端に端子が圧着される。そして、電線Lの先端に端子が圧着されると、上側ユニット18および下側ユニット19が夫々上昇および下降し、電線Lを開放して互いに遠ざかる。
【0047】
続いて、電線送り機構9のローラ26が回転し電線Lが所定長さ送られる。なお、電線Lの長さは、エンコーダ25により測長されており、所定長さに達するとローラ26の回転が停止する。すると、チャック機構10が作動し電線Lの後端を一対の把持部により把持し、切断機構8の切断刃が閉駆動して、電線Lが所定長さに切断される。
【0048】
電線Lが切断されると、チャック機構10は、電線Lを把持したまま、電線Lの後端が切断機構8の切込刃から所定量となるように電線の送り方向と逆方向に移動する。そして、切込刃により切込まれた後、電線の送り方向に移動すると、電線Lの後端の被覆材が除去されるとともに、電線Lの後端は、第二圧着機構7におけるアプリケータ9の押圧部材とアンビルとの間まで移動する。
【0049】
第二圧着機構7でも、第一圧着機構6と同様の動作が行われ、電線Lの後端に端子が圧着される。両端に端子が圧着された電線Lは、チャック機構10から排出機構11へと受け渡され、電線Lを受け取った排出機構11は、その電線Lを端子圧着装置2の外部に配置された電線搬送収容装置3に排出する。なお、アプリケータ15では、端子が圧潰されると、下側ユニット19における端子搬送機構により次の端子がアンビル上に搬送される。
【0050】
一方、電線搬送収容装置3では、排出機構11から電線Lを排出する際、全ての送りローラ58に回転力が付与され、排出機構11から排出される電線は、停留することなく一定の方向に搬送され、ひいては複数の送りローラ58の上で直線状態に維持される。そして、排出された電線Lが複数の送りローラ58上に載置された後、回動部材75に回転力が付与され、複数の当接部77を、電線Lよりも下方の初期位置から上昇させる。すると、複数の当接部77が所定の間隔で電線Lに当接し、電線Lをすくい上げるように変位する。これにより、電線Lは、直線状態のまま送りローラ58から離れ浮き上がった状態となる。そして、回動部材75をさらに回動させると、当接部77は電線Lを支持することができなくなり、電線は送りローラの側方に直線状態のまま払出される。そして、払出された電線は、収容部材53によって受止められ、収容される。
【0051】
このように、本例の電線処理システム1によれば、送りローラ58同士の間に配置された複数の当接部77を回動させることにより、電線L全体を送りローラ58からすくい上げて払出すため、収容部材53に対し電線Lを極めて短時間で収容させることができる。また、排出される電線Lが長い場合でも、配置される送りローラ58及び当接部77の数を増やせば、確実に収容部材53へ払出すことが可能である。さらに、送りローラ58の両側端面にはフランジ57が形成されているため、送りローラ58の周面からの電線Lが逸脱することを阻止できる。換言すれば、送りローラ58の幅が比較的狭くても、複数の送りローラ58にわたって電線Lを真直ぐ送ることができる。
【0052】
また、本例の電線処理システム1によれば、排出機構11によって電線Lが排出されると、電線Lにおける搬送方向への動きを確実に停止させてから、電線Lを払出すため、複数の当接部77を電線Lに当接させるタイミングが多少ばらついても、電線Lを直線状態に維持したまま払出すことができる。
【0053】
さらに、本例の電線処理システム1によれば、収容部材53の傾斜面にスリット73が形成されているため、当接部77を一回転させることが可能となり、当接部77による払出及び復帰動作と、新たな電線Lを送りローラ58に排出させる動作とを同時に行うことが可能になる。したがって、電線Lの排出速度及び払出速度を高め、ひいては端子圧着装置2及び電線搬送収容装置3の稼働率を一層高めることができる。
【0054】
以上、本発明を実施するための最良の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0055】
すなわち、上記実施形態の電線処理システム1では、当接部77として棒状の部材を示したが、回動部材75を回動させた際に、当接部77から回動部材75側へ電線Lが移動しないように当接部を鉤状に形成するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態の電線処理システム1では、電線Lの両端に端子を圧着させるものを示したが、一端のみに圧着させるものであってもよい。なお、この場合には第二圧着機構7及びチャック機構10等を省略することが可能である。
【0057】
また、上記実施形態の電線処理システム1では、端子圧着装置2においてチャック機構10及び排出機構11を備えるものを示したが、チャック機構10によって電線Lを排出するように構成してもよい。つまり、チャック機構及び排出機構の動作を一つの装置で実現してもよい。
【0058】
また、上記実施形態の電線処理システム1では、当接部77を一回転させることにより初期位置に戻すものを示したが、初期位置と払出位置との間で当接部77を往復運動させるように構成してもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態の電線処理システム1では、電線搬送収容装置3を一台のみ備えるものを示したが、複数の電線搬送収容装置3を直列に配置するようにしてもよく、これによれば、加工される電線Lの長さが極めて長い場合であっても、容易に収容させることができる。つまり、機械的な連結や電気的な接続をしなくても、直列に並べるだけで、どのような長さの電線にも対処することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態の電線処理システムの構成を示す斜視図である。
【図2】電線処理システムにおける電線搬送収容装置の構成を示す斜視図である。
【図3】電線搬送収容装置の構成を示す平面図である。
【図4】電線搬送収容装置の動作状態を示す斜視図である。
【図5】電線処理システムにおける機能的構成を示すブロック図である。
【図6】従来の電線処理システムの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 電線処理システム
2 端子圧着装置
3 電線搬送収容装置
6 第一圧着機構(圧着機構)
7 第二圧着機構(圧着機構)
8 切断機構
11 排出機構
51 搬送機構
52 払出機構
53 収容部材
58 送りローラ
77 当接部
96 通信制御部(情報送信手段)
98 送り制御手段
99 払出制御手段
L 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に端子を圧着する圧着機構、電線を所定の長さに切断する切断機構、及び端子が圧着された所定長さの電線を外部に排出する排出機構、を備える端子圧着装置と、
所定の間隔で送り方向に一列で配置されるとともに、夫々回転可能に支持され、回転力が付与されることにより、前記排出機構から排出される電線を前記送り方向に搬送可能な複数の送りローラ、
所定長さの電線が前記排出機構から排出されるまで、前記複数の送りローラを回転させ、排出された電線を、前記複数の送りローラ上で直線状に維持させる送り制御手段、
前記送りローラの側方に配置され、軸方向が前記送り方向と略平行になるように回動可能に支持された回動部材、
該回動部材から延出されて夫々の前記送りローラの間に配置され、前記送りローラ上で直線状に維持された電線に対し、下方から当接させることが可能な複数の当接部、
前記回動部材に回転力を付与し、前記複数の当接部を、電線よりも下方の初期位置と、電線に当接させ該電線を直線状態のまま前記送りローラから逸脱させる払出位置とを通って変位させる払出制御手段、
及び、前記複数の送りローラの側方に並行して配置され、前記複数の当接部によって払出された電線を直線状態のまま受止めて収容する収容部材
を備える電線搬送収容装置と
を具備することを特徴とする電線処理システム。
【請求項2】
夫々の前記送りローラの両側端面には、前記当接部が初期位置の際に前記送りローラの周面から前記電線が逸脱することを阻止するためのフランジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電線処理システム。
【請求項3】
前記端子圧着装置は、前記電線の排出が完了したことを示す情報を、前記電線搬送収容装置に送信する情報送信手段を備え、
前記電線搬送収容装置の前記送り制御手段は、前記情報送信手段から送信された前記情報に基づいて前記送りローラの回転を停止し、
前記払出制御手段は、前記送りローラの停止後、前記複数の当接部を前記初期位置から前記払出位置に変位させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−52986(P2008−52986A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226610(P2006−226610)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(593098646)株式会社小寺電子製作所 (22)
【Fターム(参考)】