説明

電線固定具

【課題】建造物、装置類などに固定可能なボルト等の棒状の支持部材に串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材から成る電線固定具であって、個々のケーブル保持部材、特に中間位置にあるケーブル保持部材により保持されたケーブルだけを着脱交換することが可能であり、しかもケーブル保持部材を交換せずに径寸法の異なるケーブルを着脱交換することを可能とした電線固定具を提供する。
【解決手段】連結棒2と、連結棒により串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材10と、を備え、各ケーブル保持部材は、連結棒に挿通される挿通孔12を備えると共に該挿通孔を挟んで対向する2つの外側面に夫々支持凹所13を備えたコア片11と、該各コア片の支持凹所との間でケーブルを保持するための支持凹所21を有し且つ該各コア片に対して着脱される着脱片20と、を有し、両支持凹所間でケーブルを連結棒と交差する方向へ支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近接して配線される複数本のケーブルを集約して保持すると共に、隣接する他の固定具によって邪魔されずに個々の固定具や、ケーブルを着脱交換することができる電線固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話システムの基地局に設置されるアンテナ、その他の装置類に対して複数本の給電線用同軸ケーブルを接続、配線する場合には、複数本のケーブルを集約して保持するための固定具が使用される。
例えば、特許文献1、2、3には半円形状凹部を有する複数個のブロック体を積み重ねて連結させることによって、隣接する2つのブロック体に形成された半円形状凹部間に形成される空間内にケーブルを保持するようにした給電線支持具が開示されている。
しかし、特許文献1、2、3の給電線支持具にあっては、ブロック体間が連結されており、二つのブロック体間に挟まれた中間のブロック体のみを取り外して別のブロック体と交換することができない。このため、該中間のブロック体により保持されたケーブルを着脱するためには、隣接する他のブロック体を開放した上での作業が必要となり、作業性が悪化するという問題があった。
次に、特許文献4には直列状に配列された3個の凹部を備えた2つのブロック体を一括して開閉自在に構成することにより、各ブロック体が備える凹部間にケーブルを保持するようにした給電線支持部具が開示されている。
しかし、特許文献4の給電線支持具にあっては、ブロック体間が連結されており、一つの給電線支持具を構成する個々のブロック体によって保持されたケーブルのうちの一本のみを交換することができず、特定のケーブルを交換するためには、全ブロック体を開放した上での操作が必要となるという問題がある。
【0003】
また、上記何れの従来技術においても、一つの給電線支持具を構成する個々のブロック体が保持可能なケーブルの径が予め決まっているため、特定のブロック体によって保持されていたケーブルを径の異なる他のケーブルと交換することができず、その場合には給電線支持具全体を交換する必要があった。
また、近年、連結された複数個のブロック体のうちの一つをボルト等の棒状部材により貫通し、個々のブロック体によってケーブルを保持するようにした支持具(特許文献5)や、重ね配置された複数個のブロック体をボルト等により串刺し状に貫通して連結させた支持具が知られており(名伸電機株式会社)、これらのタイプの支持具は二本のケーブルを保持可能なブロック体を棒状部材により集約することができ、支持具を取付け対象物に設置する作業性という点で優れている。しかし、これらの支持具にあっても2つのブロック体の間に位置するブロック体のみを交換したり、この中間位置にあるブロック体により支持されたケーブルだけを着脱することができないという問題があった。また、特定のブロック体によって保持されていたケーブルを径の異なる他のケーブルと交換することができず、その場合には給電線支持具全体を分解する煩雑な作業が必要があった。
特に、名伸電機株式会社製「電線固定具」にあっては、全てのブロック体構成要素が棒状部材に串刺し状態で挿通されているため、棒状部材から抜き取る作業を経ることなく特定のブロック体の構成要素だけを着脱することができず、その結果個々のケーブルを簡単な作業によって着脱交換することはできなかった。
特許文献1乃至4に開示された各支持具は棒状部材に対して串刺し状に支持されるタイプではないため、鉄骨その他の取付け対象物に取付ける際の手数が増大するという問題があった。
【特許文献1】特開2002−84640公報
【特許文献2】特開2002−186158公報
【特許文献3】特開2002―233013公報
【特許文献4】特開2002−247742公報
【特許文献5】特開平09−051629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の給電線支持具にあっては、ケーブルを保持するブロック体を隣接して配置していたため、特定のブロック体、特に中間位置にあるブロック体により保持されたケーブル一本だけを簡単な作業によって着脱交換することができなかった。また、個々のブロック体によって保持可能なケーブルのサイズが予め一義的に確定されているため、径サイズが異なる他のケーブルを新たに保持するためには、支持具全体を当該サイズのケーブルに見合った形状を有した別物と交換する必要があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、建造物、装置類などに固定可能なボルト等の棒状の支持部材に串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材から成る電線固定具であって、個々のケーブル保持部材、特に中間位置にあるケーブル保持部材により保持されたケーブルだけを着脱交換することが可能であり、しかもケーブル保持部材を交換せずに径寸法の異なるケーブルを着脱交換することを可能とした電線固定具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る電線固定具は、連結棒と、連結棒により串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材と、を備えた電線固定具であって、前記各ケーブル保持部材は、前記連結棒に挿通される挿通孔を備えると共に該挿通孔を挟んで対向する2つの外側面に夫々支持凹所を備えたコア片と、該各コア片の支持凹所との間でケーブルを保持するための支持凹所を有し且つ該各コア片に対して着脱される着脱片と、を有し、前記コア片の支持凹所と前記着脱片の支持凹所との間で前記ケーブルを前記連結棒と交差する方向へ支持することを特徴とする。
本発明のケーブル保持部材は、連結棒によって挿通支持されるコア片と、連結棒により挿通されずコア片に対して着脱可能な着脱片と、から構成したため、複数個のケーブル保持部材を連結棒により串刺し状に保持した状態において、複数のケーブル保持部材を連結棒から離脱させる煩雑な作業を行う必要なく、特定の着脱片だけを着脱することにより特定のケーブル保持部材によって保持されたケーブルを着脱、交換することができる。
【0006】
請求項2の発明に係る電線固定具は、請求項1において、個々の前記ケーブル保持部材は、前記連結棒に対して独立別個に着脱自在な構成を有していることを特徴とする。
任意の複数のケーブル保持部材を連結しておいてもよいし、全てのケーブル保持部材を独立別個の構成としてもよい。
請求項3の発明に係る電線固定具は、請求項1、又は2において、個々の前記ケーブル保持部材は、前記連結棒を中心として互いに相対的に回動可能に構成されていることを特徴とする。
連結棒を回転中心とした個々のケーブル保持部材の回転角度を任意に調整することにより、非並行な姿勢で配線されるケーブルを一つの電線固定具によって集約して保持することができる。
請求項4の発明に係る電線固定具は、請求項1乃至3の何れか一項において、前記コア片の支持凹所、又は/及び、前記着脱片に設けた支持凹所に対して着脱されるサイズ調整用のアダプタを備えたことを特徴とする。
径の異なるケーブルを集約して保持する場合に、アダプタを用いることによってコア片、着脱片を交換せずに対応することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、連結棒と、連結棒により串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材と、を備えた電線固定具において、連結棒に挿通される挿通孔を備えると共に該挿通孔を挟んで対向する2つの外側面に夫々支持凹所を備えたコア片と、該各コア片の支持凹所との間でケーブルを保持するための支持凹所を有し且つ該各コア片に対して着脱される着脱片と、を有し、コア片の支持凹所と着脱片の支持凹所との間で前記ケーブルを前記連結棒と交差する方向へ支持するようにしたので、個々のケーブル保持部材、特に中間位置にあるケーブル保持部材により保持されたケーブルだけを着脱交換することが可能であり、しかもケーブル保持部材を交換せずに径寸法の異なるケーブルを着脱交換することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の第1の実施形態に係る電線固定具の組付け状態を示す正面図、側面図、及び平面図であり、図2(a)及び(b)は電線固定具の分解図、及び個々のケーブル保持部材の分解斜視図である。
この電線固定具1は、例えば、携帯電話システムの基地局に設置されるアンテナ、その他の装置類に対して複数本の給電線用同軸ケーブルを接続、配線する場合に、複数本のケーブルを集約して保持するために使用される手段である。
電線固定具1は、金属製の連結棒2と、連結棒2により串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材10と、を備えている。
連結棒2は複数本のケーブルCが集中して配線される建造物の鉄骨、壁部、管体や、装置類に固定可能な構成をとるために、螺子棒状に構成され、その両端部をナット3により締結される。
【0009】
各ケーブル保持部材10は、連結棒2に挿通される挿通孔12を備えると共に挿通孔を挟んで対向する2つの外側面に夫々支持凹所13を備えたコア片11と、各コア片11の支持凹所13との間でケーブルCを保持するための支持凹所21を有し且つ各コア片に対して着脱される着脱片20と、を有する。そして、各コア片11の支持凹所13と着脱片20の支持凹所21との間でケーブルを連結棒2と交差する方向へ支持するようにしている。コア片11及び着脱片20は、ケーブルを長期間にわたって保持可能な材質であればどのような材質であってもよいが、絶縁性を有した硬質樹脂材料等ができれば好ましい。
各支持凹所13、21は、同軸ケーブル等のケーブルCの円筒状の外面形状と整合可能な円弧状の内周面を有し、支持凹所13、21によって保持したケーブルCは連結棒2の軸方向と交差(直交)する方向へ延びるように構成されている。
つまり、本発明の電線固定具にあっては、連結棒2に挿通されることにより隣接配置(積層)される個々のコア片11の積層方向Aを回避したコア側面(連結棒の軸方向と並行な面)に対して着脱片20を着脱するように構成したので、着脱片20を着脱する作業に際して隣接する他のコア片11、或いは他の着脱片20が邪魔となることがない。
【0010】
本例では独立した構成を備えた3個のコア片11に対して夫々2個ずつの着脱片20を、夫々に設けた螺子穴11a、20aを利用して螺子止め固定することによって着脱するように構成されているが、連結棒2に対して取付け可能なケーブル保持部材10の個数、コア片と着脱片との固定方法は種々選定可能である。例えば、一方に設けた弾性係止片を他方に設けた係止穴に対して弾性的に係止する所謂パッチン止め形式であってもよい。
個々のケーブル保持部材10は互いに独立しているばかりでなく、図示のように連結棒2に対して組み付けた状態において互いに相対的な回転も可能となっている。このため、平行な方向へ延びるケーブルのみならず延びる方向が異なるケーブルをも集約的に支持することが可能となる。
【0011】
また、本例では、3個の着脱片20を独立別個の部材としているが、同じ側に位置する3個の着脱片20を連結させることにより、取扱性を高めるようにしてもよい。そのためには、例えば図2(b)に示すようにコア片11の両端面に挿通孔12の外周側に同心円状にラッチ用凹凸部15を形成し、隣接するコア片11の凹凸部15同士を噛み合わせることによって各コア片間の回転角度を仮固定できるように構成するのが好ましい。
このように本実施形態に係る電線固定具1によれば、連結棒2に対して複数個のケーブル保持部材10を串刺し状態に保持する際に、コア片11だけを串刺し状態とし、コア片との間でケーブルを保持するための着脱片は連結棒に干渉されずに着脱自在に構成したので、個々のケーブル保持部材10によって保持されたケーブルを他のケーブル保持部材を連結棒から取り外す必要なく独立して着脱することができる。このため、ケーブルの着脱交換作業性を高めることができる。
【0012】
次に、図3(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る電線固定具の構成を示す組付け状態説明図、及び分解図であり、図4(a)はコア片及び着脱片の断面図であり、(b)はコア片の内面図である。また、図5(a)(b)及び(c)はサイズ調整用アダプタの内面図、平面図、及び側面図である。また、図6(a)及び(b)はコア片と着脱片に対して夫々アダプタを取り付けた状態を示す断面図、及び内面図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
第1の実施形態に係る電線固定具のケーブル保持部材10にあっては、ケーブルを保持するためにコア片11と着脱片20に夫々形成された支持凹所13、21の寸法が特定サイズのケーブルに適合するように確定されているため、支持凹所のサイズと適合しないサイズの他のケーブルを支持するためには当該ケーブル保持部材を別の物と交換する必要が生じる。
これに対して本発明の第2の実施形態では、コア片11の支持凹所13、又は/及び、着脱片20に設けた支持凹所21に対して夫々着脱されるサイズ調整用のアダプタ30を用いてケーブル径の変更に対応できるようにしている。
【0013】
図3に示した例では、連結棒2により保持された3個のケーブル保持部材10は同一形状であり、外側に位置する2個のケーブル保持部材10は本来の適合サイズである大径ケーブルCを保持しているが、中間位置にあるケーブル保持部材10によって小径のケーブルC1を保持するために、コア片と着脱片の各支持凹所13、21内にアダプタ30を装着している。
アダプタ30は、図5に示すように各支持凹所13、21の内面形状に適合した外面形状と、保持しようとするケーブルの径寸法に適合した内面形状を有した本体31と、本体31の外面から突出した取り付け用の突起(取付け部)32と、を有している。アダプタ30は、コア片と着脱片に共通の形状、構成とすることができる。また、アダプタの内面には滑り止め用の微小な凹凸33を適宜設ける。
【0014】
一方、アダプタ30の取付け対象物となるコア片と着脱片の支持凹所13、21には、アダプタ側に設けた突起32を着脱自在に支持するための穴(取付け部)34が形成されている。各穴内34に突起32を圧入することにより、コア片と着脱片の各支持凹所13、21内にアダプタ30を係止することが可能となり、アダプタ30の内面形状に適合した形状、サイズのケーブルを保持することが可能となる。なお、アダプタ側に穴を設け、各支持凹所13、21側に突起を設けても良い。
なお、各支持凹所13、21に対するアダプタの取付け構造は、突起と穴以外の構成、例えば、各支持凹所の軸方向に延びる溝内にアダプタ側に設けた凸部をスライド自在に着脱させるような構成であってもよい。
【0015】
この実施形態によれば、コア片と着脱片側には最大径サイズを有したケーブルに見合った支持凹所13、21を予め設けておく一方で、ケーブル径の変更に対してはアダプタを用いて対応することが可能となり、ケーブルサイズ毎にケーブル保持部材を製作、準備することによる製品コストの増大、部品管理手数の増大を防止することができる。
なお、連結棒2は必ずしも直線状である必要はなく、L字状、コ字状等々任意の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の第1の実施形態に係る電線固定具の組付け状態を示す正面図、側面図、及び平面図である。
【図2】(a)及び(b)は電線固定具の分解図、及び個々のケーブル保持部材の分解斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の第2の実施形態に係る電線固定具の構成を示す組付け状態説明図、及び分解図である。
【図4】(a)はコア片及び着脱片の断面図であり、(b)はコア片の内面図である。
【図5】(a)(b)及び(c)はサイズ調整用アダプタの内面図、平面図、及び側面図である。
【図6】(a)及び(b)はコア片と着脱片に対して夫々アダプタを取り付けた状態を示す断面図、及び内面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…電線固定具、2…連結棒、3…ナット、10…ケーブル保持部材、11…コア片、11a…螺子穴、12…挿通孔、13…支持凹所、15…ラッチ用凹凸部、20…着脱片、21…支持凹所、30…アダプタ、31…本体、32…突起、33…凹凸、34…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結棒と、連結棒により串刺し状に挿通支持される複数個のケーブル保持部材と、を備えた電線固定具であって、
前記各ケーブル保持部材は、前記連結棒に挿通される挿通孔を備えると共に該挿通孔を挟んで対向する2つの外側面に夫々支持凹所を備えたコア片と、該各コア片の支持凹所との間でケーブルを保持するための支持凹所を有し且つ該各コア片に対して着脱される着脱片と、を有し、
前記コア片の支持凹所と前記着脱片の支持凹所との間で前記ケーブルを前記連結棒と交差する方向へ支持することを特徴とする電線固定具。
【請求項2】
個々の前記ケーブル保持部材は、前記連結棒に対して独立別個に着脱自在な構成を有していることを特徴とする請求項1に記載の電線固定具。
【請求項3】
個々の前記電線固定具は、前記連結棒を中心として互いに相対的に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の電線固定具。
【請求項4】
前記コア片の支持凹所、又は/及び、前記着脱片に設けた支持凹所に対して着脱されるサイズ調整用のアダプタを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電線固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154677(P2010−154677A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330672(P2008−330672)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】